JP3239931B2 - 中空中子の造型方法 - Google Patents

中空中子の造型方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車エンジンの
製造等に使用される片端閉塞他端開口の中空中子の造型
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンの中空カムシャフトの鋳
造に用いられる中空中子は、例えば図4に示すような片
端閉塞他端開口の長尺な円柱状で、中心線に沿って非貫
通穴である中空穴2を有する。中空穴2は中空中子1の
造型時のガス抜き等を目的にして形成される細長い直線
状の穴で、中空中子1の閉塞先端から所定距離L1 の箇
所より中空中子1の開口基端まで所定長さL2 で形成さ
れる。
【0003】中空中子1を造型する装置例を図5に示し
説明すると、同図の造型装置は金型3、マンドレル5、
ブローノズル8を備える。金型3は、その上下面を貫通
する中空中子外形状のキャビティ4を有し、このキャビ
ティ4の下端側開口4aからキャビティ4の中心線に沿
ってマンドレル5が挿通される。マンドレル5は中空中
子内形状の丸棒で、固定されたシリンダ7で軸方向に上
下動する。マンドレル5の先端から所定の距離L2 の一
部にストッパ6が一体に形成され、シリンダ7でマンド
レル5をキャビティ4に所定の距離L2 だけ挿入すると
ストッパ6が金型3の下端に当接するようになってい
る。このときのマンドレル5の先端は、キャビティ4の
上端側の開口4bから所定距離L1 だけ下がった途中位
置で静止する。
【0004】ブローノズル8はブローヘッド10に固定
された下向きの円筒部材で、これの下端でキャビティ4
の上端側開口4bを囲って、開口4bからキャビティ4
内に中空中子の原料砂9を噴出する。原料砂9は熱硬化
性樹脂がコーティングされたレンジコーティングサンド
等で、キャビティ4内に噴出されてキャビティ4内に密
に充填される。この充填された原料砂9が金型3で直接
加熱されて硬化し、冷却後にキャビティ4からマンドレ
ル5がシリンダ7で引き抜かれて図4の中空中子1が造
型される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のように金型のキ
ャビティ内の途中位置までマンドレルを挿通してキャビ
ティ内に原料砂を充填し、これを加熱硬化させて中空中
子を造型する場合、キャビティ内でのマンドレルの先端
位置が安定しなくて、高寸法精度の中空中子を造型する
ことが難しかった。即ち、金型のキャビティ内に挿通さ
れるマンドレルが細長いものである程、キャビティ内で
のマンドレルの先端位置が安定せず、而も、キャビティ
に充填される原料砂との摩擦抵抗でマンドレルの先端位
置が変動する確率が高くなって、造型された中空中子の
閉塞先端部で不所望な肉薄部が発生して寸法精度が悪く
なることがあった。例えば自動車エンジンのカムシャフ
ト鋳造用中空中子を造型するマンドレルは、直径が3m
m前後、全長(キャビティ内の挿入長)が300〜40
0mmの細長いものであるため、キャビティ内でのマン
ドレル先端部の位置を安定させることが難しくて、上記
問題が発生する確率が高かった。
【0006】また、ブローノズルで金型のキャビティ内
に原料砂を噴出させる際に、キャビティ内の途中位置に
在るマンドレルの先端面に原料砂が当たって、キャビテ
ィ内での原料砂の流れがマンドレル先端面で阻害される
ことがある。このようなマンドレル先端面による砂流れ
の阻害は、キャビティとマンドレルの隙間で原料砂が詰
まる砂詰まり不良の要因となり、造型される中空中子の
品質劣化、歩留まり低下を引き起こしていた。
【0007】また、以上のマンドレル先端位置のキャビ
ティ内での変動に伴う問題は、中空中子の中空穴が細長
いものである程に発生する確率が高い。逆に、中空中子
の中空穴の穴径が大きくてマンドレルが太くなる程、マ
ンドレルが上記砂流れを阻害して砂詰まり不良を発生さ
せる確率が高くなる。これらのことから中空中子におい
ては、その中空穴の穴径の設定自由度が低い不具合があ
った。
【0008】本発明の目的は、中空穴の穴径の大小に関
係なく多品種の中空中子が常に良好に造型できる片端閉
塞他端開口の中空中子の造型方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、金型の中空中
子外形状のキャビティに中空中子内形状のマンドレルを
挿通し、このマンドレルの先端方向からブローノズルで
キャビティ内に原料砂を充填して、充填された原料砂を
金型で加熱して硬化させる中空中子の造型方法であっ
て、キャビティ内に原料砂を充填するブロー工程を次の
第1のブロー工程と第2のブロー工程の2段階で行うこ
とで、上記目的を達成するものである。
【0010】即ち、第1のブロー工程は、ブローノズル
内の定位置にマンドレル位置決め用貫通穴を有する位置
決め部材を配置して、金型のキャビティにブローノズル
内まで貫通させて挿通したマンドレルの先端部を位置決
め部材の貫通穴に嵌挿させて保持した状態で、ブローノ
ズルと位置決め部材の間からキャビティ内に原料砂を充
填して予備的に加熱硬化させる工程である。第2のブロ
ー工程は、マンドレルを位置決め部材の貫通穴から抜い
てマンドレル先端がキャビティ内の所定の途中位置に静
止したところで、ブローノズルから位置決め穴の貫通穴
を通して第1のブロー工程で予備成形された原料砂に形
成されたマンドレル抜け跡に原料砂を充填する工程であ
る。
【0011】ここで、金型のキャビティに原料砂を噴出
するブローノズル内に配置される位置決め部材は、中央
に貫通穴を有する円板や筒体で、ブローノズルの先端近
くの定位置に固定される。
【0012】第1のブロー工程においては位置決め部材
の貫通穴にマンドレルの先端部が嵌挿されているので、
原料砂がブローノズルの内面と位置決め部材の間の隙間
を通ってキャビティ内に噴出される。このとき、マンド
レルがキャビティをブローノズルまで貫通し、マンドレ
ル先端部が位置決め部材で位置決めされているので、キ
ャビティに噴出された原料砂はマンドレルの先端で流れ
が阻害されること無く常に良好にキャビティ内に充填さ
れる。このキャビティに充填された原料砂を予備的に加
熱し硬化させると、マンドレルが貫通した円筒中子が予
備的に造型される。
【0013】また、第2のブロー工程においては位置決
め部材の貫通穴からマンドレルが抜けているので、第1
のブロー工程でキャビティ内で造型された予備円筒中子
の先端部に形成されたマンドレル抜け跡(穴)に、ブロ
ーノズルの内面と位置決め部材の間の隙間から原料砂が
充填され、また一部の原料砂は位置決め部材の貫通穴か
らマンドレル抜け跡に充填される。この原料砂が予備円
筒中子の原料砂と共に最終的に加熱され硬化してマンド
レル抜け跡を埋め、片端閉塞他端開口の中空中子が造型
される。
【0014】
【発明の実施の形態】図4の中空中子1を造型する本発
明方法を、図1及び図2の具体的実施装置例を参照して
説明する。尚、図1及び図2の造型装置の図5造型装置
と同一又は相当する部分には、同一符号を付して説明の
重複を避ける。
【0015】図1(A)に示される造型装置は、ブロー
ノズル8の内部にマンドレル5の先端部を位置決め保持
する位置決め部材11を有する。位置決め部材11は、
例えば図1(B)に示すような耐熱性のリングで、中央
に板厚方向に貫通する貫通穴12を有する。位置決め部
材11の外周の離隔した複数箇所から一体に延在するピ
ン状の取付部材13の先端がブローノズル8の内周に固
定されて、位置決め部材11がブローノズル8の内部中
央の定位置に、ブローノズル8の内周との間に所定の隙
間gを形成して固定される。
【0016】また、図1(A)に示されるマンドレル5
は、そのストッパ6から先端までの長さが図5の場合よ
り長く設定される。つまり、中空中子造型のために金型
3にブローノズル8を取付け、キャビティ4にマンドレ
ル5を挿通してストッパ6を金型3に当接させて固定し
たとき、マンドレル5がキャビティ4を貫通してその先
端部がブローノズル8内の位置決め部材11の貫通穴1
2に嵌挿されるように、マンドレル5の全長が設定され
る。
【0017】本発明方法は、図1の造型装置を使用して
図4の中空中子1を、次の2回の第1と第2のブロー工
程を経て造型する。第1のブロー工程を図2(A)を参
照し、第2のブロー工程を図2(B)及び(C)を参照
して説明する。
【0018】まず、図1(A)に示すようにマンドレル
5をキャビティ4に挿通し、その先端部を位置決め部材
11の貫通穴12に嵌挿する。このようにするとマンド
レル5の先端部が位置決め部材11で位置決めされて、
キャビティ4内でのマンドレル5の先端位置変動が無く
なり、丸棒状のマンドレル5がキャビティ4の中心線に
沿う定位置に安定した姿勢で保持される。而して後、ブ
ローノズル8からキャビティ4に原料砂9を噴出させ
て、キャビティ4に原料砂9を充填し、充填した原料砂
9を金型3で予備的に加熱して硬化させる。この第1の
ブロー工程においては位置決め部材11の貫通穴12が
マンドレル5の先端部で塞がれているため、ブローノズ
ル8からキャビティ4に向けて噴出される原料砂9は、
ブローノズル8と位置決め部材11の隙間gだけを通っ
てキャビティ4に噴出される。このときの原料砂9の噴
出がスムーズに行われるように、隙間gのサイズ、形状
が設定される。
【0019】以上の第1のブロー工程の場合、キャビテ
ィ4とその中心線に沿って貫通するマンドレル5との間
に充填された原料砂9を予備的に加熱し硬化させること
で、円筒中子1’が予備的に造型される。この予備円筒
中子1’は、キャビティ4内でのマンドレル5の位置が
位置決め部材11で安定しているので、全長に亘り高寸
法精度で造型される。また、マンドレル5がキャビティ
4を貫通してマンドレル5の先端がブローノズル8内に
位置しているので、ブローノズル8からキャビティ4内
に噴出された原料砂9の流れがマンドレル5の先端で阻
害されることが無くなり、従って、キャビティ4内で原
料砂9がスムーズに流れて砂詰まり不良の発生が大幅に
減少する。
【0020】第1のブロー工程でキャビティ4に充填さ
れた原料砂9が金型3で加熱されて硬化を始めた時点か
ら所定の時間経過後に、即ち、予備円筒中子1’が十分
に硬化する前の予め設定された時間経過後に第2のブロ
ー工程が開始される。第2のブロー工程は、まず図2
(B)に示すようにマンドレル5をシリンダ7でキャビ
ティ4から所定距離だけ引抜く。この引抜き距離は、マ
ンドレル5の先端がキャビティ4の上端側の開口4bか
らキャビティ4内に距離L1 だけ退入する長さに設定さ
れる。マンドレル5の引抜きで予備円筒中子1’の先端
部の中央にマンドレル5の抜け跡14が形成される。
【0021】そして、図2(C)に示すようにマンドレ
ル5の引抜きとほぼ同時にブローノズル8から原料砂9
を再度噴出させると、大部分の原料砂が隙間gを通っ
て、また一部の原料砂が貫通穴12を通って抜け跡14
に充填される。抜け跡14を埋めた原料砂9は、予備円
筒中子1’を介して金型3で加熱されて硬化し、予備円
筒中子1’が十分に加熱され硬化した時点で抜け跡14
の原料砂9も十分に硬化して予備円筒中子1’と一体化
される。この段階で円筒中子1’の先端部が閉塞された
図4の片端閉塞他端開口の中空中子1が造型される。
【0022】なお、位置決め部材11に代わって例えば
図3(A)に示す非貫通穴のマンドレル位置決め用閉塞
穴16を有する位置決め部材15をブローノズル8内に
固定する構造も可能ではあるが、連続サイクルで造型し
た場合、閉塞穴16内に砂がこびりついて硬化し、マン
ドレル5の先端が閉塞穴16に入りきれずにマンドレル
5が曲がってしまうことがあるため、貫通穴12付の位
置決め部材11の方が好ましい。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、金型のキャビティをマ
ンドレルが貫通してその先端部がブローノズル内の位置
決め部材で位置決めされるので、第1のブロー工程でブ
ローノズルからキャビティに原料砂を充填する際にマン
ドレルが邪魔にならずに常に良好な原料砂の充填が行
え、第2のブロー工程ではマンドレルの抜け跡に原料砂
が充填され、また位置決め部材の貫通穴にはマンドレル
の先端部が挿脱を繰り返す結果原料砂のこびり付き硬化
が生じず、従って高寸法精度の中空中子が歩留まり良く
造型できるようになる。また、マンドレルが細長いもの
であっても、キャビティ内での位置を安定させた状態で
中空中子の造型が可能となるので、中子外径や中空穴の
穴径、全長の設計自由度の高い、従って多品種の中空中
子が高品質で造型できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明方法の実施装置例を示す造
型装置の縦断面図、図1(B)は図1(A)の造型装置
に使用されるマンドレル位置決め用位置決め部材の拡大
平面図。
【図2】図2(A)〜(C)は図1の造型装置の各動作
状態を示す断面図で、図2(A)は第1のブロー工程、
図2(B)及び(C)は第2ブロー工程の断面図。
【図3】図3(A)及び(B)は本発明方法で使用する
位置決め部材の有効性を説明するための別の位置決め部
材を使用した造型装置の各動作状態での断面図。
【図4】図4(A)は片端閉塞他端開口の中空中子の断
面図、図4(B)は図4(A)のX−X線断面図。
【図5】図4の中空中子を従来方法で造型する造型装置
の縦断面図。
【符号の説明】
1 中空中子 3 金型 4 キャビティ 5 マンドレル 8 ブローノズル 9 原料砂 11 位置決め部材 12 貫通穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丹羽 正博 大阪府池田市桃園2丁目1番1号 ダイ ハツ工業株式会社内 (72)発明者 山本 昇芳 大阪府池田市桃園2丁目1番1号 ダイ ハツ工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−313629(JP,A) 実開 昭62−146543(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22C 9/10 B22C 13/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型の中空中子外形状のキャビティに中
    空中子内形状のマンドレルを挿通し、このマンドレルの
    先端方向からブローノズルでキャビティ内に原料砂を充
    填して、充填された原料砂を金型で加熱し硬化させる中
    空中子の造型方法であって、 前記ブローノズル内の定位置にマンドレル位置決め用貫
    通穴を有する位置決め部材を配置して、金型のキャビテ
    ィにブローノズル内まで貫通させて挿通したマンドレル
    の先端部を位置決め部材の貫通穴に嵌挿させて保持した
    状態で、ブローノズルと位置決め部材の間からキャビテ
    ィ内に原料砂を充填して予備的に加熱硬化させる第1の
    ブロー工程と、マンドレルを位置決め部材の貫通穴から
    抜いてマンドレル先端がキャビティ内の所定の途中位置
    に静止したところで、ブローノズルから位置決め穴の貫
    通穴を通して第1のブロー工程で予備成形された原料砂
    に形成されたマンドレルの抜け跡に原料砂を充填する第
    2のブロー工程を有することを特徴とする中空中子の造
    型方法。
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