JP3239618U - 緩み止めナット - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な緩み止め性能を有する環状平板リング付きナットを提供する。【解決手段】緩み止めナットは、両端に位置する2つの面を貫通する雌ねじを有するナット本体(10)と、ナット本体の一面に固定された環状平板リング(20)とを備える。環状平板リングは、径方向内方に突出し、雌ねじに螺合するボルトの雄ねじのねじ山に弾性的に摩擦係合する複数の羽根部(21)と、隣接する羽根部間に位置する切り込み部(22)とを有する。羽根部(21)の最内周の円周方向長さをAとし、羽根部(21)の根元を通過する円周方向長さをBとすると、羽根部は、A≧Bの関係が成立する形状となっている。【選択図】図2
Description
この考案は、緩み止めナットに関し、特にナット本体の一面に固定された環状平板リングを備える緩み止めナットに関するものである。
道路、橋梁、鉄道などのインフラシステムや、自動車、二輪車、鉄道車両など交通に関る様々な分野で締結部品は使用されている。
上述のインフラシステムや車両などに用いられる締結部品には、常に「振動」という因子が作用する。この振動は、締結部品による締結を緩めるように作用する。
最も一般的な締結部品は、ボルトとナットとの組合せである。従来から、このボルトとナットとの組合せに対して、様々な緩み止め対策が講じられている。
一つの例は、ナットの側面などに孔をあけ、この孔にワイヤを通して被締結部材に縛り付けるワイヤロック方式である。このワイヤロック方式では、ワイヤが破断しない限り締結部品に緩みが生じないが、事前にナットへの孔あけという熟練技能を必要とする機械加工を行わなければならないこと、さらにワイヤをナットの孔に通して被締結部材に縛り付けるという作業が必要になること、縛り付け作業のための作業工具が必要になること等から、作業性や経済性の点で問題がある。
他の緩み止め対策の例として、互いの座面に面圧がかかるようにダブルナットで締め付ける方式がある。この方式では、ナットを2つ締め付けるという手間があり、また部品点数も増えるという問題がある。
例示的に記載した上記の緩み止め対策構造では、作業性や経済性で問題があると言わざるを得ない。
上記の問題点を解消し得る緩み止め対策構造が、実開昭56-42521号全文明細書(特許文献1)に開示されている。
図1は、特許文献1に開示された緩み止めナットを図示している。図示するように、緩み止めナットは、雌ねじを有するナット本体1と、ナット本体1の上面に固定して取り付けられた環状平板リング2,3とを備えている。環状平板リング2,3は、ばね性を有する金属薄板で作られた摩擦リングである。
図1(a)に示す環状平板リング2は、径方向内方に突出した2個の羽根部2aを有し、図1(b)に示す環状平板リング3は、径方向内方に突出した3個の羽根部3aを有している。
環状平板リング2,3の羽根部2a,3aの最内周部は、ナット本体1に螺合するボルトの雄ねじのねじ山に係合し、それに伴って各羽根部2a,3aが弾性的にねじれ撓み変形し、ナット本体1の緩み止め作用を発揮する。
図1に示した構造の緩み止めナットであれば、ボルトとの締結に際し他の部材を追加使用することはなく、また特殊な作業工具も必要としない。
図1(a)に示す環状平板リング2では、各羽根部2aの円周方向長さはほぼ90度の中心角となる大きさであり、図1(b)に示す環状平板リング3では、各羽根部3aの円周方向長さはほぼ60度の中心角となる大きさである。また、各羽根部2a,3aの円周方向の側端を通って径方向に延びる延長線は、ナット本体1のほぼ中心を通過する。
図1に示す従来の環状平板リング付きの緩み止めナットでは、各羽根部2a,3aの最内周の円周方向長さをAとし、羽根部の根元を通過する円周方向長さをBとすると、必ずA<Bの関係が成立している。また、2枚の羽根部2a(図1(a))の最内周を通過する円全体の円周長さに対して、2枚の羽根部2aの最内周の円周方向長さの合計長さは、40~60%程度となっている。同様に、3枚の羽根部3a(図1(b))の最内周を通過する円全体の円周長さに対して、3枚の羽根部3aの最内周の円周方向長さの合計長さも40~60%程度となっている。
図1に示した緩み止めナットでは、構造上、前述のワイヤロック方式やダブルナット方式に比べると緩み止め効果がやや劣ることは否めない。
摩擦リングとして作用する環状平板リングを備えた緩み止めナットにおいて、緩み止め効果をより高めることが望まれる。
昨今では、ナット等の締結具に対して、耐食性や美観への要求も高まってきており、従来から使用されてきた鉄材表面に亜鉛メッキを施した締結具から、ステンレス鋼製の締結具の使用への変換が進んでいる。ここで問題なのは、ステンレス鋼の熱伝導率が鉄の約1/3程度と低いことから、ステンレス鋼製ボルトとナットとの締結構造では、締結時の摩擦による発生熱が締結部材全体に拡散されにくく、荷重の掛かるねじ表面が局所的に高温になり、最終的には溶着してしまう(焼き付き現象)。完全な焼き付きに至らない場合でも、ねじ表面が荒れて締め付け抵抗、すなわちトルク係数が増大し、使用しづらくなる状態になる(カジリ)。
焼き付きやカジリを防止するために、ねじ表面等に油を塗布したり、二硫化モリブデンやフッ素樹脂を含む潤滑剤を塗布する方法があるが、締め付け作業以外の作業が増え、しかも潤滑剤等のコストも掛かるようになる。また、インフラ分野では屋外の作業が中心となるが、雨天時に油や潤滑剤のねじ面への付着を阻害し、十分な効果を発現できなくなる懸念がある。
本考案は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、良好な緩み止め性能を有する環状平板リング付きナットを提供することである。
本考案の他の目的は、焼き付き防止性能を高めた緩み止めナットを提供することである。
本考案に係る緩み止めナットは、両端に位置する2つの面を貫通する雌ねじを有するナット本体と、ナット本体の一面に固定された環状平板リングとを備える。
環状平板リングは、径方向内方に突出し、雌ねじに螺合するボルトの雄ねじのねじ山に弾性的に摩擦係合する複数の羽根部と、隣接する前記羽根部間に位置する切り込み部とを有する。
羽根部の最内周の円周方向長さをAとし、羽根部の根元を通過する円周方向長さをBとすると、羽根部は、A≧Bの関係が成立する形状となっている。
好ましくは、複数の羽根部の最内周の円周方向長さの合計長さをCとし、複数の羽根部の最内周を通過する円全体の円周長さをDとすると、C/Dの比率が80%以上となっている。
好ましくは、羽根部の根元の角部は、丸みをもって凹んだ湾曲形状となっている。さらに好ましくは、切込み部は、径方向内端から径方向外端に向かって幅寸法が順次広がる形状となっている。
1つの好ましい実施形態では、ナット本体の雌ねじの切り上がり位置が、複数の羽根部のなかの一つの羽根部の円周方向中央位置領域を通過するように、ナット本体と環状平板リングとの位置関係が選ばれている。
好ましい実施形態では、ナット本体の材質はステンレス鋼である。この場合、ナット本体の表面に、ステンレス鋼の表面酸化層の活性化を行うプライマ材料層と、プライマ材料層の表面に位置し、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散する機能材料層と、機能材料層の表面に位置し、擦れ合う表面の摩擦を軽減するとともに美観を維持するための機能性化粧材料層とが形成されている。
上記の実施形態において、例えば、プライマ材料層は、厚みが0.2μm以上1μm以下のニッケル層であり、機能材料層は、厚みが4μm以上12μm以下の銅層であり、機能性化粧材料層は、厚みが5μm以上10μm以下のスズ層である。
環状平板リングの材質は、例えば、ステンレス鋼である。
本考案によれば、摩擦リングとして作用する環状平板リングの各羽根部は、最内周の円周方向長さに比べて羽根部の根元を通過する円周方向長さが同じか、より短い長さとなっているので、従来の環状平板リングの羽根部に比べて弾性的にねじり撓み変形し易くなり、良好な緩み止め性能を発揮する。
特に、各羽根部が弾性的にねじれ撓み変形し易い形状であるので、ボルトの雄ねじのねじ山に接触する複数の羽根部の円周方向長さの合計を全円周長さの約80%以上にすることが可能となり、摩擦力を高めて良好な緩み止め性能を発揮できる。
さらに、耐食性および美観の向上のためにナット本体をステンレス鋼製とした場合、ナット本体の表面にプライマ材料層、機能材料層および機能性化粧材料層を順次形成すれば、優れた緩み止め性能に加えて、優れた焼き付き防止性能も発揮できる。
図2および図3は、本考案の一実施形態に係る緩み止めナットを示している。緩み止めナットは、両端に位置する2つの面を貫通する雌ねじを有するナット本体10と、ナット本体10の一面(図では上面)に固定された環状平板リング20とを備える。ナット本体10は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼材でできており、摩擦リングとして作用する環状平板リング20は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼薄板でできている。材質については、耐食性および美観の観点からステンレス鋼が望ましいが、鉄等の他の材質のものであってもよい。
環状平板リング20は、図3に示すように、ナット本体10の上端部分の一部11をプレス装置でかしめ加工することによってナット本体10の一面(図では上面)に固定されている。
[環状平板リングの特徴]
図示した実施形態では、環状平板リング20は、径方向内方に突出する4枚の羽根部21と、隣接する羽根部21間に位置する切り込み部22とを備える。環状平板リング20の内径寸法は、相手部材となるボルトのねじの谷径寸法よりやや小さい。そのため、ボルトは、その雄ねじのねじ山によって環状平板リング20の内径部を押し上げながらナット本体10内にねじ込まれる。ナット本体10にボルトが螺合締結すると、環状平板リング20の各羽根部21は、ボルトの雄ねじのねじ山に摩擦係合し、雄ねじのねじ山に沿うように弾性的にねじれ撓み変形する。この弾性的なねじれ撓み変形によって生じる弾性復元力によって、ナット本体10とボルトとの締結状態の緩みを抑制する。
図示した実施形態では、環状平板リング20は、径方向内方に突出する4枚の羽根部21と、隣接する羽根部21間に位置する切り込み部22とを備える。環状平板リング20の内径寸法は、相手部材となるボルトのねじの谷径寸法よりやや小さい。そのため、ボルトは、その雄ねじのねじ山によって環状平板リング20の内径部を押し上げながらナット本体10内にねじ込まれる。ナット本体10にボルトが螺合締結すると、環状平板リング20の各羽根部21は、ボルトの雄ねじのねじ山に摩擦係合し、雄ねじのねじ山に沿うように弾性的にねじれ撓み変形する。この弾性的なねじれ撓み変形によって生じる弾性復元力によって、ナット本体10とボルトとの締結状態の緩みを抑制する。
隣接する羽根部21間に位置する切り込み部22は、好ましくは、径方向内端の切り込み口から径方向外方に向かって幅寸法が順次広がる形状となっている。図示した実施形態では、切り込み部21は、切り込み口に対面する径方向外端部の中央位置に径方向内方に向かって僅かに突出した突出部を有している。
図6に示した他の実施形態では、環状平板リング30は、4枚の羽根部31と、隣接する羽根部31間に位置する切り込み部32とを有している。図2に示した環状平板リング20と図6に示した環状平板リング30とは、切込み部22,32の形状が異なるだけである。環状平板リング30の切り込み部32は、径方向内端の切り込み口から径方向外方に向かって幅寸法が順次広がる形状となっているが、切り込み口に対面する径方向外端部の中央領域には突出部が形成されておらず、ほぼ直線的になっている。
図2および図6に示した実施形態では、羽根部21,31の数は4枚であるが、その数に制約はない。ボルトのねじ山に対する摩擦係合力を高める観点からすると、各羽根部21,31の円周方向長さを大きくするのが望ましい。しかし、単純に羽根部の円周方向長さを大きくすると、羽根部がねじれ撓み変形しがたくなる。そこで、図示した実施形態では、隣接する羽根部21,31間に、径方向内端の切り込み口から径方向外方に向かって幅寸法が順次広がる切り込み部22,32を設けている。
上記形状の切り込み部22,32を設けることにより、各羽根部21,31は、最内周の円周方向長さをAとし、羽根部21,31の根元部の根元を通過する円周方向長さをBとすると、A≧Bの関係が成立するようになっている。このように根元部の寸法を小さくすることにより、各羽根部21,31はねじれ撓み変形し易くなり、ボルトのねじ山に対する摩擦係合力を高めることができる。
各羽根部21,31がねじれ撓み変形する際に、局所的に応力が集中するのを避けるために、各羽根部21,31の根元の角部は丸みをもって凹んだ湾曲形状となっている。
各羽根部21,31の円周方向長さを大きくする観点から、隣接する羽根部間に位置する切込み22,32の切り込み口の幅をできるだけ小さくすることが望ましい。具体的には、複数の羽根部21,31の最内周の円周方向長さの合計長さをCとし、複数の羽根部21,31の最内周を通過する円全体の円周長さをDとした場合、C/Dの比率を80%以上にするのが好ましく、さらに90%以上にするのが望ましい。
ボルトの雄ねじの先端のねじ山が環状平板リング20と同じ高さに達するとき、その先端が最初に当接する羽根部21の円周上のどの位置にあるかによって、環状平板リング20を持ち上げる度合いが変わる。持ち上げる度合いが小さすぎると、緩み止め作用が期待できない。逆に持ち上げる度合いが大き過ぎると、羽根部21が弾性変形の限度を超えて塑性域に入る可能性があり、その場合にも弾性復元力(ばね性)が低減し、緩み止め作用が期待できない。
ボルトの雄ねじの先端のねじ山と環状平板リング20の羽根部との当接位置は、ナット本体10に切られた雌ねじの切り上がり位置と、環状平板リング20の切り込み部との相対位置すなわち角度に影響される。本願考案者らは、研究を重ねて、ナット本体10の雌ねじの切り上がり位置が、複数の羽根部21のなかの一つの羽根部の円周方向中央位置領域を通過するように、ナット本体10と環状平板リング20の位置関係を選ぶことが望ましいことを見出した。実用的には、図4に示した4枚の羽根部21を有する環状平板リング20の場合、許容差を考慮して、ナット本体10の雌ねじの切り上がり位置を1枚の羽根部21の中央位置(45度の回転角度位置)を中心として15度の広がりを持たせた範囲、すなわち回転角度の範囲が30度~60度となるように設定した。
[表面処理被膜の特徴]
耐食性や美観の要求に応えるために、ナット本体10および環状平板リング20の材質をステンレス鋼とするのが望ましい。既述したように、ステンレス鋼の熱伝導率が鉄の約1/3と小さいことから、締結時に焼き付きやカジリが発生する懸念がある。
耐食性や美観の要求に応えるために、ナット本体10および環状平板リング20の材質をステンレス鋼とするのが望ましい。既述したように、ステンレス鋼の熱伝導率が鉄の約1/3と小さいことから、締結時に焼き付きやカジリが発生する懸念がある。
本考案の好ましい実施形態では、上記の懸念を払拭するために、締結時にねじ面で発生した熱をナット本体10の全面に逃がし、ねじ面が局所的に高温になるのを抑制する表面処理被膜を形成している。
図5に示すように、好ましい実施形態では、ステンレス鋼製のナット本体10の表面に、ステンレス鋼の表面酸化層の活性化を行うプライマ材料層41と、プライマ材料層41の表面に位置し、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散する機能材料層42と、機能材料層42の表面に位置し、擦れ合う表面の摩擦を軽減するとともに美観を維持するための機能性化粧材料層43とが形成されている。熱を吸収拡散する機能材料層42を形成する材料としては、銅、アルミニウム、銀、またはそれらの合金等、ステンレス鋼に比べて十分に熱伝導率が高い金属または合金を用いるのが望ましい。
ナット本体10の表面処理の一例を以下に記載する。
まず、下地処理としてナット本体10を脱脂洗浄する。その後、ナット本体10の表面に、第1層のプライマ材料層として電気メッキ法によりニッケル(Ni)を0.2μm以上1μm以下の厚みで堆積し、次に第2層の機能材料層として電気メッキ法により銅(Cu)を4μm以上12μm以下の厚みで堆積し、次に第3層の機能性化粧材料層として電気メッキ法によりスズ(Sn)を5μm以上10μm以下の厚みで堆積した。
上記の3層被膜は、ナット本体10のねじ面のみならずナット本体10の全表面に形成した。3層被膜をナット本体10の全表面に施すのは、第2層に用いた熱伝導率の大きな銅によって、ねじ面で発生した熱を速やかにナット本体10の全体へ逃がすことによりねじ面が局所的に高温になるのを抑制するためである。
表面処理のタイミングとしては、環状平板リング20をかしめ固定する前のナット本体10に施すのが好ましい。環状平板リング20をかしめ固定した後に表面処理を施すことも可能であるが、かしめ部に電気メッキの薬液が浸透し、その洗浄に多大な手間と時間を要するからである。実際、予め表面処理を施したナット本体10に環状平板リング20をかしめ固定したが、被膜剥がれや傷付きなどの毀損は確認されなかった。
[本考案の実施形態に係る緩み止めナットの性能試験]
(1)振動衝撃試験
NAS3350-3354に規定される軸直角方向振動衝撃試験を実施した。使用したナット本体は六角ナットタイプのものであり、雌ねじのサイズはM10の並目である。締付けの相手部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製六角ボルトM10であり、表面処理は施していない。
(1)振動衝撃試験
NAS3350-3354に規定される軸直角方向振動衝撃試験を実施した。使用したナット本体は六角ナットタイプのものであり、雌ねじのサイズはM10の並目である。締付けの相手部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製六角ボルトM10であり、表面処理は施していない。
ナット本体および環状平板リングの材料は、本考案の実施形態と同様に、オーステナイト系ステンレス鋼である。ナット本体の表面に施した表面処理によって、ナット本体の表面にはニッケル層、銅層およびスズ層の三層構造被膜が形成されている。
試験条件は、振幅福11.4mm、周波数30Hzで、30,000回の振動と衝撃を付加した後のナットの戻り回転角を調査した。判定基準としては、戻り回転角360°までを合格とすることが一般的である。
締付トルクは、発生軸応力がボルト実質耐力値の50%となる28.6N・mとした。
振動衝撃試験の結果を下記の表1に示すが、10個のテスト試料の全部において、戻り回転角が許容値の半分の180°以下であり、合格であった。
締付トルクが28.6N・mの試験では全てのテスト試料が合格であったので、締付トルクを半減させて、発生軸応力がボルトの実質耐力値の25%となる14.3N・mとして同様の試験を実施した。試験の結果を下記の表2に示すが、戻り回転角が増加したものの、全てのテスト試料の戻り回転角が360°以下であり、合格であった。
(2)締付試験
JIS B 1054-1に規定されるA2-50の規格耐力値の75%が負荷される軸力、すなわち9500Nの軸力が発生する時の締付トルクおよびトルク係数を測定した。
JIS B 1054-1に規定されるA2-50の規格耐力値の75%が負荷される軸力、すなわち9500Nの軸力が発生する時の締付トルクおよびトルク係数を測定した。
その他の試験条件は、以下の通りである。
a)1組のボルト・ナットにつき、5回の繰り返し試験を行う。
b)1回締付ける毎に丸座金を新しいものに交換する。
c)ボルト・ナットは、試験前に適切な有機溶剤で脱脂する。
締付試験の結果を下記の表3に示す。一般にトルク係数が約0.4を超えると焼き付きの可能性が格段に高くなると言われているが、テスト試料のトルク係数は0.2~0.3の範囲に入っており、焼き付きの可能性は低いことが認められた。
(3)反復ねじ込み試験
試験を行ったナット本体および相手材のボルトは、共にオーステナイト系ステンレス鋼でできている。本考案の実施例であるテスト試料a1~a5のナット本体には表面処理を行って3層構造被膜(Ni/Cu/Sn)を形成した。比較例であるテスト試料b1~b5のナット本体には表面処理を施していない。
試験を行ったナット本体および相手材のボルトは、共にオーステナイト系ステンレス鋼でできている。本考案の実施例であるテスト試料a1~a5のナット本体には表面処理を行って3層構造被膜(Ni/Cu/Sn)を形成した。比較例であるテスト試料b1~b5のナット本体には表面処理を施していない。
M10×100の六角ボルトの頭部を治具で固定し、各試料のナット本体を座面同士が接触するまでねじ込んだ後、ナット本体を六角ボルトの先端から外れる直前までねじ戻した。なお、相手材を含めた各試料は有機溶剤で脱脂したものを用い、試験時は潤滑剤などを使用しなかった。
上記の操作を10回繰り返して、焼き付きやカジリの有無を確認した。その結果を下記の表4に示す。表4から明らかなように、本考案の実施例であるテスト試料a1~a5(表面処理あり)では、全て、焼き付きやカジリの発生はなかった。それに対して、比較例であるテスト試料b1~b5(表面処理なし)ではカジリが発生した。この結果から、本考案の表面処理被膜は、焼き付き防止効果を発揮していることが認められた。
(4)塩水噴霧試験
本考案の実施例である表面処理被膜付きのナット本体の耐食性能を調査するために、塩水噴霧試験を実施した。4000時間経過するまでの錆の発生状況を下記の表5に示した。表面処理被膜は、ナット本体の表面にニッケル膜、その上に銅膜、その上にスズ膜を形成した3層構造である。約4000時間経過後も、最外層に用いたスズ層の表面にスズ特有の白錆が見られたが、中間層の銅層には銅の腐食生成物、いわゆる緑錆(緑青)の発生は見られなかった。この結果から、スズの化粧効果が有効であったことが認められる。
本考案の実施例である表面処理被膜付きのナット本体の耐食性能を調査するために、塩水噴霧試験を実施した。4000時間経過するまでの錆の発生状況を下記の表5に示した。表面処理被膜は、ナット本体の表面にニッケル膜、その上に銅膜、その上にスズ膜を形成した3層構造である。約4000時間経過後も、最外層に用いたスズ層の表面にスズ特有の白錆が見られたが、中間層の銅層には銅の腐食生成物、いわゆる緑錆(緑青)の発生は見られなかった。この結果から、スズの化粧効果が有効であったことが認められる。
なお、塩水噴霧試験480時間は屋外曝露10年に相当するという説がある。その説によれば、4000時間は約83年に相当することになる。
以上、本考案の実施形態を図面を参照して例示的に説明したが、本考案は図示した実施形態の構造や形状に限定されるものではなく、本考案と同一の範囲内または均等の範囲内で種々の変更が可能である。
本考案は、緩み止めナットとして有効に利用され得る。
1 ナット本体、2 環状平板リング(摩擦リング)、2a 羽根部、3 環状平板リング(摩擦リング)、3a 羽根部、10 ナット本体、11 かしめ部分、20 環状平板リング、21 羽根部、22 切り込み部、30環状平板リング、31 羽根部、32 切り込み部、41 プライマ材料層、42 機能材料層、43 機能性化粧材料層。
Claims (8)
- 両端に位置する2つの面を貫通する雌ねじを有するナット本体と、
前記ナット本体の一面に固定された環状平板リングとを備え、
前記環状平板リングは、径方向内方に突出し、前記雌ねじに螺合するボルトの雄ねじのねじ山に弾性的に摩擦係合する複数の羽根部と、隣接する前記羽根部間に位置する切り込み部とを有し、
前記羽根部の最内周の円周方向長さをAとし、前記羽根部の根元を通過する円周方向長さをBとすると、前記羽根部は、A≧Bの関係が成立する形状となっている、緩み止めナット。 - 前記複数の羽根部の最内周の円周方向長さの合計長さをCとし、前記複数の羽根部の最内周を通過する円全体の円周長さをDとすると、C/Dの比率が80%以上となっている、請求項1に記載の緩み止めナット。
- 前記羽根部の根元の角部は、丸みをもって凹んだ湾曲形状となっている、請求項1に記載の緩み止めナット。
- 前記切込み部は、径方向内端から径方向外端に向かって幅寸法が順次広がる形状となっている、請求項1に記載の緩み止めナット。
- 前記ナット本体の雌ねじの切り上がり位置が、前記複数の羽根部のなかの一つの羽根部の円周方向中央位置領域を通過するように、前記ナット本体と前記環状平板リングとの位置関係が選ばれている、請求項1に記載の緩み止めナット。
- 前記ナット本体の材質はステンレス鋼であり、
前記ナット本体の表面に、ステンレス鋼の表面酸化層の活性化を行うプライマ材料層と、前記プライマ材料層の表面に位置し、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散する機能材料層と、前記機能材料層の表面に位置し、擦れ合う表面の摩擦を軽減するとともに美観を維持するための機能性化粧材料層とが形成されている、請求項1に記載の緩み止めナット。 - 前記プライマ材料層は、厚みが0.2μm以上1μm以下のニッケル層であり、
前記機能材料層は、厚みが4μm以上12μm以下の銅層であり、
前記機能性化粧材料層は、厚みが5μm以上10μm以下のスズ層である、請求項6に記載の緩み止めナット。 - 前記環状平板リングの材質は、ステンレス鋼である、請求項1に記載の緩み止めナット。
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R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
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