JP3235981B2 - インクジェットインキ、それを用いた卵殻へのマーキング方法、ならびにマーキングした卵 - Google Patents

インクジェットインキ、それを用いた卵殻へのマーキング方法、ならびにマーキングした卵

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、卵殻表面にマーキ
ングするのに適したインクジェットインキ、それを用い
た卵殻表面へのマーキング方法、ならびにマーキングし
た卵に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、製造年月日、賞味期限等の食品類
への表示が必要とされる状況において、食品の通常は食
べないような部分、例えば鶏卵の卵殻に、製造年月日等
をマーキングすることが要請されている。鶏卵の卵殻へ
の製造年月日等の表示は、鶏卵の生産、流通、販売段階
での細菌汚染の対策に役立ち、購買者へ安心感を与える
ことにもなる。一方、従来より、食品等の缶詰、パック
に製造年月日やロット番号を記録するためにインクジェ
ットプリンターや熱転写プリンターが使われている。こ
れらのプリンターは、可変情報をダイレクトに記録でき
るため印刷の版を作成する必要がなく、コンピューター
による情報の変更が容易であり、生産現場において種々
の用途展開がなされている。
【0003】特に、インクジェットプリンターは、高速
での印字ができ、必要なインキを吐出させるだけで消耗
品の量が少量で済むことから、極めて広い範囲において
使用されている。また、非接触で印字できるため卵殻へ
のマーキングに適している。インクジェットプリンター
に用いられるインキとしては、食品添加物着色料である
水溶性染料を水に溶解したものがあるが、充分な印字濃
度が得られなかった。また、耐水性が劣り、水に接触す
る食品には使用できなかった。特に、鶏卵の場合は、水
中で煮沸して茹で卵とすることもあり、煮沸時に卵殻表
面のマーキングから水溶性染料が溶出して鶏卵および卵
白を汚染し、卵の商品価値を著しく損なう恐れがあっ
た。
【0004】これに対して、耐水性に優れ、卵殻の表面
に印字するのに適したインクジェットインキとして、特
開昭53−127010号公報に、バインダがセラック
であり、水およびアルコールから成る溶剤と鉄クロロフ
ィリンナトリウムまたは(および)銅クロロフィリンナ
トリウムを着色剤として含む緑色インク組成物が開示さ
れている。しかし、該インク組成物は、インクジェット
プリンターのノズル周辺にセラックの堆積を生じ、ノズ
ルの目詰まりを起こすため、長期間にわたり安定して印
字することができなかった。
【0005】また、耐水性に優れたインクジェットイン
キとしては、油溶性染料をメチルエチルケトン、エタノ
ール等の揮発性の溶剤に溶解したものや、さらにこれに
塩酢ビ、キシレン樹脂、ブチラール樹脂等を溶解したイ
ンキもあり、速乾性インキとして広く用いられている。
これらのインキは、耐水性に優れ、擦っても落ちないよ
うな耐性を有しているが、食品添加物で構成されていな
いため、食品に触れるような用途には使えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、長期間の連
続印字を行ってもインクジェットプリンターのノズルの
目詰まりを生じず、卵殻にマーキングした場合に水に濡
れたり、煮沸等の調理操作を行っても着色料の溶出が少
なく、見た目の嫌悪感を生じさせないようなインクジェ
ットインキの提供を目的とする。また、本発明は、水に
濡れたり、煮沸等の調理操作を行っても着色料の溶出に
よる鶏卵および卵白の汚染が少なく、見た目の嫌悪感を
生じさせないようなマーキングした卵、および卵殻への
マーキング方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鉄クロロ
フィリンナトリウムおよび/または銅クロロフィリンナ
トリウムと水とを含むインクジェットインキに、カルボ
キシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ
糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、デンプ
ングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナ
トリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレングリ
コール脂肪酸エステルおよびメチルセルロースから選択
される1種または2種以上の粘度調整剤を添加すること
により、卵殻表面に耐水性、耐摩擦性に優れ、印字濃度
が高いマーキングができ、インクジェットプリンターに
よる吐出安定性に優れたインクジェットインキが得られ
ることを見出し、本発明に至った。
【0008】すなわち、本発明は、鉄クロロフィリンナ
トリウムおよび/または銅クロロフィリンナトリウム
と、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキ
シメチルセルロースナトリウム、グリセリン脂肪酸エス
テル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステ
ル、デンプングリコール酸ナトリウムおよびデンプンリ
ン酸エステルナトリウムから選択される1種または2種
以上の粘度調整剤と、水とを含むことを特徴とするイン
クジェットインキに関する。また、本発明は、卵殻表面
に、上記インクジェットインキを用いて、インクジェッ
ト方式によりマーキングすることを特徴とする卵殻への
マーキング方法に関する。さらに、本発明は、卵殻表面
に、上記インクジェットインキを用いてマーキングして
なることを特徴とするマーキングした卵に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】鉄クロロフィリンナトリウムおよ
び銅クロロフィリンナトリウムは、卵殻表面に対して強
固な親和性を示す水溶性色素であり、防黴、抗菌性も有
している。したがって、卵殻表面に、水に浸漬したり水
中で煮沸しても溶出することのない耐水性、耐摩擦性の
良好なマーキングを行うことができる。また、コンティ
ニュアスタイプのインクジェットプリンターで連続運転
する場合でも、インキに黴が発生しないため、黴に起因
するノズルの目詰まりを起こすことがない。
【0010】鉄クロロフィリンナトリウムおよび/また
は銅クロロフィリンナトリウムは、インキ中に、0.1
〜5重量%の範囲で含まれることが好ましい。含有量が
0.1重量%より少ないと、印字濃度が不十分であり、
また、コンティニュアスタイプのインクジェットプリン
ターで連続運転する場合に、黴の発生を充分に抑制する
ことができず、ノズルの目詰まりを生じることがある。
一方、含有量が5重量%を越えると、インキの安定性が
悪くなる傾向にある。
【0011】カルボキシメチルセルロースカルシウム、
カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン脂
肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプ
ンリン酸エステルナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウ
ム、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびメチル
セルロースから選択される1種または2種以上の粘度調
整剤は、水に溶解してインキの粘度を上昇させる働きを
するもので、鉄クロロフィリンナトリウムおよび/また
は銅クロロフィリンナトリウムと併用することにより、
濃度の高いマーキングが可能になる。
【0012】上記特定の粘度調整剤は、セラック等の水
溶性樹脂と異なり、インクジェットプリンターのノズル
周辺に堆積することがなく、コンティニュアスタイプの
インクジェットプリンターで連続運転する場合にも、ノ
ズルの目詰まりを生じることがない。上記特定の粘度調
整剤は、インキ中に、0.05〜5重量%の範囲で含ま
れることが好ましい。含有量が0.05重量%より少な
いと、適度な粘度が得られないため印字濃度が不充分で
あり、マーキング表面の滑らかさに欠ける。一方、含有
量が5重量%を越えると、インキの粘度が高すぎるため
ノズルからの吐出性が悪くなる。本発明のインキの媒体
である水としては、金属イオン等を除去したイオン交換
水または蒸留水を用いる。水は、インキ中に、50〜9
9.85重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0013】本発明のインクジェットインキには、イン
キのノズルでの乾燥を防止するために、乳酸ナトリウム
を、インキ中に0.5〜10重量%の範囲で含有させる
ことが好ましい。乳酸ナトリウムは、インキをコンティ
ニュアスタイプのインクジェットプリンターに用いる場
合に、インキの導電性を調整する働きもする。乳酸ナト
リウムの含有量が0.5重量%より少ないと保湿性が不
充分であり、充分な導電性が得られない。一方、含有量
が10重量%を越えると、過度な保湿作用のため乾燥不
良を招く。
【0014】また、本発明のインクジェットインキに
は、インキのノズルでの乾燥を防止するために、プロピ
レングリコールおよび/またはグリセリンを、インキ中
に1〜20重量%の範囲で含有させることが好ましい。
含有量が1重量%より少ないと、乾燥防止効果が不十分
でノズルの目詰りの原因となり、20重量%を越えると
マーキング面の乾燥が遅くなり、容器の汚れ等の悪影響
を与える。
【0015】乳酸塩と、プロピレングリコールおよび/
またはグリセリンとを含有させる場合には、本発明のイ
ンクジェットインキは、鉄クロロフィリンナトリウムお
よび/または銅クロロフィリンナトリウム0.1〜5重
量%、上記特定の粘度調整剤0.05〜1重量%、乳酸
ナトリウム0.5〜10重量%、プロピレングリコール
および/またはグリセリン1〜20重量%、および水6
4〜98.35重量%から構成されることが好ましい。
【0016】本発明のインクジェットインキは、鉄クロ
ロフィリンナトリウムおよび/または銅クロロフィリン
ナトリウム、上記特定の粘度調整剤、水、および必要に
応じて乳酸ナトリウム、プロピレングリコールおよび/
またはグリセリン、色素の安定な溶解性を維持するため
のpH緩衝剤などを混合攪拌したのち、0.2〜3.0
μmのメンブランフィルターで濾過することにより、製
造することができる。混合攪拌は、通常の羽根を具備し
た攪拌機のほか、高速の分散機、乳化機により行うこと
もできる。
【0017】本発明のインクジェットインキの25℃に
おける粘度は、1.3〜20cpsの範囲に調整するこ
とが好ましい。粘度が低すぎると、卵殻表面でのインク
のドットの形成が不良となり、印字濃度が低くなる。一
方、粘度が高すぎると、吐出の不良、乾燥不良に問題が
出てくる。表面張力は、プリンターとの適性もあるが、
30〜50mN/cmの範囲に調整することが好まし
い。また、コンティニュアスタイプのプリンターにより
マーキングする場合には、インキの電導度は、0.3〜
10mS/cmの範囲に調整することが好ましい。
【0018】卵殻へのマーキングは、卵殻表面に、本発
明のインクジェットインキを用いてインクジェット方式
によりマーキングすることにより行われ、マーキングし
た卵が得られる。インクジェット方式には、コンティニ
ュアス方式(多値偏向、2値偏向)、ドロップオンデマ
ンド方式(バブルジェット方式、ピエゾ方式、電磁弁方
式等)等が挙げられるが、高速でのマーキングおよび卵
殻のような曲面へのマーキングは、コンティニュアス方
式が適している。インクジェットプリンターのノズル孔
径は、8〜200μmであることが好ましい。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞ
れ示す。(実施例1)下記の原料を混合、溶解したの
ち、0.8μmのメンブランフィルターで濾過し、イン
クジェットインキを調製した。 鉄クロロフィリンナトリウム 1.50部 カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.14部 乳酸ナトリウム 3.00部 プロピレングリコール 14.00部 精製水 81.36部
【0020】(実施例2〜9)表1に示す原料と適当量
(100部から表1に示す原料の合計量を引いた量)の
精製水を混合、溶解したのち、0.8μmのメンブラン
フィルターで濾過し、インクジェットインキを調製し
た。
【0021】
【表1】
【0022】*1 グリセリン脂肪酸エステル *2 ショ糖脂肪酸エステル *3 ソルビタン脂肪酸エステル *4 カルボキシメチルセルロースカルシウム *5 デンプングルコール酸ナトリウム *6 デンプンリン酸エステルナトリウム *7 カルボキシメチルセルロースナトリウム
【0023】(比較例1)下記の原料を混合、溶解した
のち、0.8μmのメンブランフィルターで濾過し、イ
ンクジェットインキを調製した。 食用赤色105号 1.0部 カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1部 乳酸ナトリウム 1.0部 プロピレングリコール 5.0部 精製水 92.9部
【0024】(比較例2)カルボキシメチルセルロース
ナトリウム0.14部を精製水0.14部に代えた以外
は、実施例1と同様にしてインクジェットインキを調製
した。
【0025】(比較例3)下記の原料を混合、溶解した
のち、0.8μmのメンブランフィルターで濾過し、イ
ンクジェットインキを調製した。 銅クロロフィリンナトリウム 1.5部 シェラック樹脂の水/エタノール溶液 12.5部 (岐阜セラック製造所社製「ドラッグBA−40E」、固形分40%) 乳酸ナトリウム 3.0部 プロピレングリコール 14.0部 精製水 69.0部
【0026】実施例および比較例で得られたインキにつ
いて、25℃における粘度(cps)、表面張力(mN
/cm)および電導度(mS/cm)を測定した。な
お、粘度の測定は粘度計(YAMAICHI社製「デジ
タルビスコメイト」)を用いて行い、表面張力の測定は
表面張力計(KYOWA INTERFACE社製「サ
ーフェイステンシオメーター」)を用いて行い、電導度
の測定は電導度計(HORIBA社製「コンダクティビ
ティメーター」)を用いて行った。また、実施例1〜9
および比較例1〜3で得られたインキをコンティニュア
スタイプのインクジェットプリンターのインクタンクに
入れて、卵殻表面にマーキングし、得られたマーキング
物について下記の評価を行った。また、3ヶ月間連続し
てマーキングを行い、ノズル目詰まりの発生の有無およ
びインキ循環系での黴の発生の有無を評価した。さら
に、3時間連続してマーキングを行い、吐出安定性を評
価した(良:吐出の停止なし、不良:吐出の停止あ
り)。結果を表2に示す。
【0027】・印字濃度 マーキング物の印字濃
度をマクベスの濃度計で測定した。 ・乾燥性 マーキング面を指触し、色素取れの
有無を目視で確認した。(良:色素取れなし、不良:色
素取れあり) ・色素の水溶出 マーキング物を水に浸し、色素の溶
出を目視で確認した。 ・色素の煮沸溶出 マーキング物を15分間熱湯中に浸
し、色素の溶出を目視で確認した。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】本発明のインクジェットインキは樹脂を
含有せず、防黴性を有しているため、本発明のインクジ
ェットインキを用いることにより、プリンターのノズル
目詰まりを起こすことなく、長期間連続してマーキング
できるようになった。また、本発明のインクジェットイ
ンキを用いることにより、卵殻表面に強固に染着し、水
または熱湯中に浸しても殆ど溶出しないマーキング物が
得られるようになった。本発明のインクジェットインキ
は、食品に用いることのできる食品添加物からのみ構成
することができるため、食品へのマーキングに適してい
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−230071(JP,A) 特開 昭53−127010(JP,A) 特開 平9−124984(JP,A) 特開2000−191969(JP,A) 特許3155732(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 11/00 - 11/20

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄クロロフィリンナトリウムおよび/また
    は銅クロロフィリンナトリウムと、カルボキシメチルセ
    ルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナト
    リウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エス
    テル、ソルビタン脂肪酸エステル、デンプングリコール
    酸ナトリウムおよびデンプンリン酸エステルナトリウ
    ら選択される1種または2種以上の粘度調整剤と、水
    とを含むことを特徴とするインクジェットインキ。
  2. 【請求項2】さらに、乳酸ナトリウムを含むことを特徴
    とする請求項1記載のインクジェットインキ。
  3. 【請求項3】さらに、プロピレングリコールおよび/ま
    たはグリセリンを含むことを特徴とする請求項1または
    2記載のインクジェットインキ。
  4. 【請求項4】鉄クロロフィリンナトリウムおよび/また
    は銅クロロフィリンナトリウム0.1〜5重量%と、粘
    度調整剤0.05〜5重量%と、水50〜99.85重
    量%とを含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれ
    か1項に記載のインクジェットインキ。
  5. 【請求項5】卵殻表面に、請求項1ないし4いずれか1
    項に記載のインクジェットインキを用いて、インクジェ
    ット方式によりマーキングすることを特徴とする卵殻へ
    のマーキング方法。
  6. 【請求項6】卵殻表面に、請求項1ないし4いずれか1
    項に記載のインクジェットインキを用いてマーキングし
    てなることを特徴とするマーキングした卵。
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