JP3233446B2 - 磁歪材料の製造装置および磁歪材料の製造方法 - Google Patents

磁歪材料の製造装置および磁歪材料の製造方法

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JP3233446B2 JP13810692A JP13810692A JP3233446B2 JP 3233446 B2 JP3233446 B2 JP 3233446B2 JP 13810692 A JP13810692 A JP 13810692A JP 13810692 A JP13810692 A JP 13810692A JP 3233446 B2 JP3233446 B2 JP 3233446B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、RTM2 (RはYを含
む希土類元素であり、TMは遷移元素である)等の磁歪
材料の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性凝固で単結晶や柱状晶の合金を
製造するには、従来、米国特許第4609402号に記
載されているようなゾーンメルト法が知られている。こ
のゾーンメルト法は、希土類金属と鉄との合金であって
棒状の原料合金インゴットを鋳型に挿入し、この鋳型の
下部の外側にヒータを周回させ、そのヒータに電流を流
すことによって、上記原料合金を溶融し、鋳型に対して
ヒータを徐々に上昇させる方法である。
【0003】このゾーンメルト法によれば、ヒータに通
電したときに原料合金の最下部が溶融され、ヒータを徐
々に上昇することによってヒータが遠ざかるに従って、
溶融された部分の温度が低下し、この部分が所定の温度
勾配を持つようにヒータの上昇速度が設定されているの
で、原料合金の下の方から次第に一方向性凝固で単結晶
や柱状晶の合金が製造される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ゾーンメルト法に用い
る原料合金インゴットは、通常、低圧鋳造法により製造
される。低圧鋳造法では希土類元素の蒸発が多くなるた
め組成ずれが生じやすく、また、均等な加熱および冷却
が難しいので偏析しやすい。また、原料合金インゴット
を所定形状とするために研削などの加工が必要であるた
め、材料に無駄がでやすい。
【0005】また、ゾーンメルト法では、原料合金イン
ゴットよりも長い単結晶や柱状晶を連続的に製造するこ
とができない。
【0006】また、ゾーンメルト法によって一方向性凝
固で単結晶や柱状晶の合金を鋳造しようとすると、ヒー
タによって発生した熱のうちで原料合金を伝わって上に
向かう熱があり、この上に向かう熱が無駄に放散し、従
って、無駄な熱、つまり無駄な電力が消費されるという
問題がある。
【0007】また、従来のゾーンメルト法によれば、単
結晶や柱状晶の合金製造に必要なヒータから下に向かっ
て伝わる熱のみならず、原料合金を伝わって上に向かう
熱量をも考慮する必要があるので、熱量の調整が複雑で
あり、すなわち、供給電流の調整が複雑になるという問
題がある。
【0008】さらに、従来のゾーンメルト法によれば、
ヒータで溶融し溶湯領域を形成しているときに、溶湯領
域よりも上に存在していた原料合金が何らかの原因でま
とまって溶湯領域に降下した場合には、その溶湯領域の
温度が急激に低下するので、この場合にも、所定の温度
勾配を持たせるための温度管理が非常に煩雑である。し
かも、原料合金がまとまって溶湯領域に降下するタイミ
ングを予測し得ない点でも、温度管理が困難である。
【0009】良好な結晶を育成するためには冷却速度の
厳密な管理が必要であり、例えば、溶融帯の冷却速度が
速すぎると材料の表面と内部とで冷却速度に有意な差が
生じ、結晶の配列が乱れることがある。このため、従来
のゾーンメルト法において高周波誘導加熱用のコイルに
粗密を設け、巻きの密な領域で溶融帯を形成し、巻きの
粗な領域で凝固までの時間を制御することもできる。し
かし、最適な冷却速度は材料組成に大きく依存する。ま
た、冷却速度は、装置各部の条件、例えば熱伝導度等に
依存する。これらの各種条件を考慮する必要があるため
に単結晶製造装置は汎用性が低い。例えば、上記した粗
密を設けたコイルは、目的とする結晶組成に応じた専用
設計とする必要があるため、原料組成等の条件が変わっ
た場合には加熱装置自体を交換しなければならず、低コ
ストでの量産には不向きである。
【0010】本発明は、RおよびTMを含有しデンドラ
イト構造を有する単結晶の磁歪材料を製造する際に、連
続的に製造可能な長さの制限をなくし、また、材料の無
駄を抑え、また、無駄な電力の消費を抑え、また、ヒー
タの供給電流の調整を容易にすることを目的とし、さら
に、結晶配列の乱れのない良質で磁歪量の大きい結晶体
を低コストで製造することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(11)の本発明により達成される。 (1) R(RはYを含む希土類元素である)およびT
M(TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料を製造
する製造方法に用いる装置であって、原料を収容するホ
ッパーと、前記原料を単位時間に単位量づつ鋳型に連続
投入する連続投入手段と、前記鋳型に連続投入された原
料を溶融するヒータと、投入された原料に対して前記ヒ
ータを相対的に上昇させる上昇手段と、前記溶融された
原料の熱を放散させる放熱手段とを有し、前記鋳型の外
面が断熱部材により包囲されている磁歪材料の製造装
置。 (2) R(RはYを含む希土類元素である)およびT
M(TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料を製造
する製造方法に用いる装置であって、原料を収容するホ
ッパーと、前記原料を単位時間に単位量づつ鋳型に連続
投入する連続投入手段と、前記鋳型に連続投入された原
料を溶融するヒータと、投入された原料に対して前記ヒ
ータを相対的に上昇させる上昇手段と、前記溶融された
原料の熱を放散させる放熱手段とを有し、少なくとも前
記ヒータより下側に延在する移動断熱部材が前記鋳型を
包囲するように前記ヒータに設けられている磁歪材料の
製造装置。 (3) 前記鋳型の外面が断熱部材により包囲されてい
る上記(2)の磁歪材料の製造装置。 (4) 前記ホッパーから前記鋳型までの雰囲気がアル
ゴンガス雰囲気である上記(1)〜(3)のいずれかの
磁歪材料の製造装置。 (5) 上記(1)〜(4)のいずれかの製造装置を用
いて、R(RはYを含む希土類元素である)およびTM
(TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料を製造す
る方法であって、原料を連続投入する連続投入段階と、
前記原料を前記連続投入の前または後に溶融する溶融段
階と、前記連続投入されてしかも溶融された原料を徐々
に凝固する凝固段階とを有する磁歪材料の製造方法。 (6) 前記連続投入段階において、所定温度範囲に維
持された原料を単位時間に単位量づつ連続投入する上記
(5)に記載の磁歪材料の製造方法。 (7) 前記原料が、一方向性凝固によりデンドライト
構造が形成されるものである上記(5)または(6)に
記載の磁歪材料の製造方法。 (8) 粉体の原料を、先に投入されて溶融している原
料中に投入する上記(5)ないし(7)のいずれかに記
載の磁歪材料の製造方法。 (9) 前記原料がRおよびTMを含む合金であり、水
素吸蔵、水素排出およびアニールが行なわれた後に前記
原料を連続投入する上記(5)ないし(8)のいずれか
に記載の磁歪材料の製造方法。 (10) R(Fe1-yyx (ただし、xおよびy
は原子比を表わし、y=0〜0.4、x=1〜3であ
り、Tは、Fe以外の遷移元素の1種以上である)で表
わされる組成の磁歪材料が製造される上記(5)ないし
(9)のいずれかに記載の磁歪材料の製造方法。 (11) 前記連続投入段階と、前記溶融段階と、前記
凝固段階とを、アルゴンガス雰囲気中で行なう上記
(5)〜(10)のいずれかの磁歪材料の製造方法。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【作用および効果】本発明は、原料を鋳型に連続投入
し、鋳型内において溶融している原料を徐々に凝固し、
単結晶を製造する。このため、連続的に製造可能な長さ
は原理的に制限されず、所望の長さの結晶体が得られ
る。また、製造される磁歪材と同一組成の合金あるいは
磁歪材構成元素の金属を原料として、直接、溶解および
凝固するので、希土類元素の蒸発が少なく原料の利用率
が高い。
【0024】また、本発明により一方向性凝固で単結晶
合金を製造する場合、ヒータよりも上には原理的に熱の
放散がなく、従って無駄な電力が消費されず、また、消
費電流の調整が容易である。
【0025】また、本発明では、上に記した断熱部材や
移動断熱部材を設けるという簡易な方法で冷却速度を制
御できるので、結晶配列の乱れの少ない良質な結晶が低
コストで得られる。このため磁歪量の大きな磁歪材が得
られる。また、移動断熱部材を着脱可能に構成すること
が容易なので、様々な組成の結晶の製造に適用すること
が可能である。
【0026】
【具体的構成】図1は、本発明の一実施例を示す説明図
である。この実施例に示される製造装置には、原料1を
収容するホッパー10と、このホッパー10から原料1
を鋳型30に投入する通路を形成するパイプ21と、こ
のパイプ21の途中にロータリー弁22とが設けられて
いる。なお、ロータリー弁22が定速回転することによ
って原料1が鋳型30に連続投入される。つまり、原料
1が単位時間に単位量づつ鋳型30に連続投入される。
従って、ホッパー10とパイプ21とロータリー弁22
とは、原料を単位時間に単位量づつ鋳型に連続投入する
連続投入手段20を構成している。
【0027】また、ボール弁23がパイプ21の途中に
設けられ、このボール弁23は、ホッパー10から鋳型
30までの間の雰囲気を高真空にするために閉じる弁で
ある。なお、パイプ21とホッパー10とには均圧管2
4が取り付けられ、この均圧管24の途中に弁25が設
けられている。
【0028】筐体31は、パイプ21と鋳型30と水冷
板60とを囲むものであり、筐体31の内部は、真空ポ
ンプ32により10-2〜10-5Torr程度まで減圧され
る。
【0029】ヒータ40は、筐体31の外周を周回する
コイル41とコイル41に高周波電流を供給する高周波
発振器42とで構成されている。
【0030】モータ50は、ヒータ40を所定速度で上
昇させるものであり、鋳型30に対してヒータ40を相
対的に上昇させる手段の一例である。
【0031】水冷板60は、鋳型30の底部と接触し、
ヒータ40によって溶融された原料1を冷却するもので
あり、水冷板60の下部にベース61、62が設置され
ている。なお、水冷板60は、溶融された原料の熱を放
散させる放熱手段の一例である。
【0032】まず、上記実施例に使用される原料1は、
R(RはYを含む希土類元素である)およびTM(TM
は遷移元素である)を含有するものであれば特に制限は
ないが、磁歪材として用いる場合には特に下記式で表わ
される組成が好ましい。
【0033】式 R(Fe1-yyx
【0034】ただし、上記式においてxおよびyは原子
比を表わし、y=0〜0.4、x=1〜3であり、Tは
Fe以外の遷移元素である。Rとしては、Y、Ce、P
r、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Erおよび
Ybの1種以上が好ましいが、後述するデンドライト構
造を形成するためには、TbおよびHoの1種以上を必
須として含有することが好ましく、特にTbを必須とし
て含有することが好ましい。
【0035】また、Tとしては、Co、Ni、Mn、C
r、Mo、W、Zn、Rh、NbおよびCuの1種以上
が好ましい。
【0036】次に、上記実施例の動作について説明す
る。
【0037】まず、原料1をホッパー10内に投入す
る。原料1には、通常、合金粉体あるいは金属単体の混
合物の粉体を用いる。合金としては上に記した磁歪材組
成から選択すればよく、金属単体は上記磁歪材の構成元
素から適宜選択する。
【0038】原料投入後、ボール弁23を閉じ、弁25
を開け、次いで真空ポンプ32を動作させ、筐体31内
の雰囲気を高真空にした後に、筐体31の内部をアルゴ
ンで置換するかアルゴンガス気流を流し、その後、ボー
ル弁23を開く。なお筐体31の内部を高真空状態のま
まとしてもよい。
【0039】そして、ロータリー弁22を定速で回転さ
せ、原料1を連続的に投入する。原料の投入速度は装置
の規模に応じて適宜決定すればよいが、例えば10〜6
0g/h 程度とすればよい。
【0040】具体的には、まず、コイル41を鋳型30
の最下位置に存在させた状態で、渦電流の流れやすい粒
度の大きい原料1を予め鋳型30内へ投入しておき、高
周波発振器42を動作させてコイル41に高周波電流を
流す。これによって、鋳型30の底部に堆積された原料
1に渦電流が流れ、その原料1が短時間で溶解する。こ
のようにして、鋳型30の底部に堆積した原料1が溶湯
領域2を形成した状態で連続投入を開始する。図示例の
ように高周波誘導加熱を採用することにより、温度管理
は極めて容易となる。
【0041】その後、モータ50によって、ヒータ40
が徐々に上昇し、これとともにコイル41が上昇し、鋳
型30の底部からコイル41が次第に遠ざかる。このと
きに、鋳型30の底部に存在していた溶湯の温度が水冷
板60への放熱によって徐々に低下する。コイル41の
上昇速度(ヒータ40の上昇速度)は、一方向性凝固で
溶湯が所望の結晶に変化するような速度、すなわち、そ
のような温度勾配になるような速度に設定してある。
【0042】そして、所定時間経過後にヒータ40が所
定量上昇し、溶湯領域2であった領域が凝固領域3に変
化する。このようにして鋳型30の底部に、一方向性凝
固で単結晶の合金が製造される。上記動作を続行するこ
とによって、凝固領域3の高さが次第に高くなる。
【0043】溶湯領域2に粉体の原料1が落下して混入
すると、原料1は体積が非常に小さいので短時間に溶湯
に変化する。また、混入した原料1の量は溶湯領域2内
の溶湯の量に対し非常に少ないので、溶湯領域2の温度
はほぼ一定に保たれる。なお、ヒータ40として図示例
のような高周波誘導加熱手段を用いる場合、溶湯領域2
への混入前に、コイルで囲まれた領域内において原料粉
体が溶解するように構成してもよい。
【0044】例えば、原料の酸化を防ぐために体積の大
きな塊状の原料を用いる場合や原料の落下速度が大きく
なる場合、投入された原料が溶湯領域2の表面に留まら
ずに凝固領域3との界面を乱したり溶湯領域2の温度を
急激に下げたりすることがある。このような場合、投入
された原料塊を受けるための皿状体を鋳型30内のコイ
ル41で包囲された領域に設け、この皿状体の上で原料
塊を溶解した後、溶湯領域2に溶解した原料を注ぐ構成
としてもよい。前記皿状体には、高周波誘導加熱により
溶解せず、かつ溶融した原料と反応しない材質を用い
る。そして、皿状体の底部に原料塊が通過できない寸法
の孔を設け、この孔から溶解した原料を注ぐ構成とすれ
ばよい。なお、前記皿状体は、例えば上部から吊るして
コイル41と共に移動するように構成する。
【0045】ただし、原料からの希土類元素の蒸発を抑
えて組成ずれを防ぐためには、粉体の原料が溶湯領域2
に落下する構成とすることが好ましい。
【0046】原料の寸法は、通常、100μm 〜1mm程
度とするが、前記皿状体を設ける構成では、10〜15
mm角程度の寸法の大きな原料を用いることができる。コ
イル41に流す高周波電流の周波数は、原料粉体を構成
する原料粒子の寸法に応じて適宜決定すればよく、特に
限定されないが、通常、10kHz 〜3MHz 程度の範囲か
ら選択する。なお、原料粒子が小さいほど電流の周波数
を高くする必要がある。
【0047】高周波誘導加熱を利用する場合、コイル中
に冷却水通路を設けて、コイルの温度上昇を抑えること
が好ましい。コイルを水冷することにより、コイル温度
を、通常、60℃程度以下に保つことができる。
【0048】なお、上記動作中、弁25を開いておけ
ば、均圧管24によりパイプ21内の圧力とホッパー1
0内の圧力とが等しくなる。
【0049】上記のようにして、ヒータ40を鋳型30
に対して除々に上昇させていく過程で、たとえば、図2
に示すように、鋳型30の途中位置にコイル41が位置
したときに、ヒータ40によって発生される熱は、ホッ
パー10から投入され溶湯領域2に混入した原料1で吸
収され、その残りの熱は凝固領域3を経由して水冷板6
0に到達する。このときに、溶湯領域2表面はアルゴン
と接触しており、溶湯領域からアルゴンへは殆ど熱が逃
げないので、無駄な電力が消費されない。
【0050】また、溶湯領域2からアルゴンには殆ど熱
が移動しないので、ヒータ40への供給電流の調整が容
易である。すなわち、コイル41に供給する電流が一定
である限り、上記制御の過程でコイル41がどこに位置
しようと、コイル41内の温度は変化しない。このため
に、高周波発振器42が一定の電流を供給しさえすれ
ば、溶湯領域2の温度は常に一定に維持される。このよ
うに、電流管理(温度管理)が容易であるために、磁歪
材料の歩留まりがよい。
【0051】また、上記実施例においては、鋳型30の
断面が均一であるが、その鋳型30の替わりに、断面が
その高さによって異なる鋳型、つまり非柱状の鋳型を使
用してもよい。この場合、渦電流を利用して原料1を発
熱溶解しているので、その断面積が異なった場合に、必
要な発熱量が自動的に制御される。
【0052】なお、原料1は、通常、水素吸蔵、水素排
出、アニールを行なって粉体にされた後にホッパー10
に投入されるが、上記アニール後に、原料1を解砕、整
粒してから鋳型30に連続投入するようにしてもよい。
また、アニールを水素吸蔵の前に行なってもよく、この
場合さらに水素吸蔵後にアニールを行なってもよい。ま
た、上記水素吸蔵、水素排出、アニール、解砕、整粒の
工程の替わりに、通常の粉砕工程を採用してもよい。
【0053】この場合、図示しない温度維持手段によっ
て、ホッパー10内の原料1を所定温度範囲に維持して
もよい。このように所定温度に維持するのは、ヒータ4
0に一定の電流を流したときに溶湯領域2の温度を早く
一定に維持できるようにするためである。したがって、
その温度を一定に維持する限り、その温度は、室温でも
よく、それ以外の温度でもよい。たとえば、ホッパー1
0内の温度を原料1の融点以上の温度に保ち、原料1を
溶湯にして単位時間に単位量づつ投入してもよいが、希
土類元素の蒸散を考えると、粉体の原料を投入すること
が好ましい。
【0054】本発明では長さの制限なく連続的に単結晶
磁歪材の製造が可能である。例えば、ホッパー内に原料
を供給すると共に、装置下部から凝固した結晶体を取り
出す構成とすることにより、一定の凝固条件を保ったま
ま連続的に結晶体を製造することができる。この場合、
通常、コイルを固定し、投入された原料を下降させる。
すなわち、コイルを固定して凝固領域を下降させる。ま
た、この場合、装置内への原料の供給および装置からの
結晶体の取り出しは、アルゴンガス置換室を設けること
などにより、装置内を気密に保ったまま行なう。
【0055】なお、図示例ではヒータ40に高周波誘導
加熱用のコイルを用いた例を説明したが、他の加熱手
段、例えば、抵抗加熱用のコイルを用いることもでき、
その他、赤外集光加熱等の加熱手段を用いることもでき
る。
【0056】次に、本発明の他の態様について説明す
る。本発明の他の実施例を図3に示す。
【0057】同図に示される製造装置では、図1に示さ
れる製造装置の鋳型30と筐体31との間に、鋳型30
を包囲するように断熱部材71が設けられている。ま
た、ヒータ40より下側に延在する移動断熱部材72が
鋳型30を包囲するようにヒータ40に付設されてい
る。移動断熱部材72は溶湯領域2の底部付近から凝固
領域3を包囲するように設けられており、ヒータ40と
共に移動する。図示例では移動断熱部材72はコイル4
1の下側だけに存在するが、移動断熱部材72の一部が
コイル41を外側から覆う構成であってもよく、あるい
はコイル41と筐体31との間に移動断熱部材72の一
部が存在していてもよい。
【0058】断熱部材71は、対流を防いで筐体31内
の温度分布を安定に保つためのものである。また、断熱
部材71および移動断熱部材72は、溶湯の冷却速度を
制御する働きを有し、さらに、装置のエネルギー効率を
向上させる。これらの断熱部材は、溶湯の急激な冷却、
特に鋳型30側面からの放熱を抑制し、鋳型内の原料の
表面と内部とで冷却速度に有意な差が生じることを防
ぎ、結晶配列の乱れを防ぐ。また、溶湯領域2に近い凝
固領域3では固相反応が進行しているが、この固相反応
を制御する働きも有する。
【0059】均質な単結晶を得るための最適な冷却速度
は原料組成によって異なるため、断熱部材71や移動断
熱部材72の材質や形状、寸法等は、原料組成に応じて
適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。た
だし、例えば図示例のように、移動断熱部材72の厚さ
がコイル41から離れるにしたがって漸増するように構
成すれば、冷却速度をより遅くすることができる。
【0060】また、移動断熱部材72を着脱可能に構成
すれば、移動断熱部材72を換えるだけで溶湯領域2の
冷却速度を変更することができ、様々な組成の単結晶製
造に適用可能となる。従来の単結晶製造装置では、冷却
速度の変更が実質的に不可能であったが、移動断熱部材
72は低コストで製造可能であり、また、着脱可能な構
成とすることも容易なので、種々の組成の良質な単結晶
を低コストで製造することが可能となる。なお、移動断
熱部材72をコイル41に固定する手段は特に限定され
ず、例えば、接着やボルト等により固定すればよい。
【0061】断熱部材71および移動断熱部材72の構
成材料は特に限定されないが、通常、アルミナ、ジルコ
ニア、マグネシア、カルシア等を用いることが好まし
く、低コスト化のためには特にアルミナを用いることが
好ましい。
【0062】なお、断熱部材71や移動断熱部材72の
鋳型30側表面を鏡面化すれば、断熱効果がさらに高く
なるので好ましい。また、移動断熱部材72に、鏡面化
された金属板を用いた場合でも同様な効果が実現する。
【0063】他の各部材の構成材料は特に限定されず、
従来の通常の単結晶製造装置に準じて適宜選択すればよ
い。例えば、高周波誘導加熱を用いる場合、筐体31は
透明石英ガラスやパイレックスガラス、軟質ガラス等の
導電率の低い材料で構成すればよいが、熱膨張率が小さ
いことから特に石英ガラスを用いることが好ましい。ま
た、鋳型30は、溶融した原料と反応しにくい材料、例
えば、石英ガラス、BN、アルミナ、カルシア、マグネ
シア等で構成する。
【0064】なお、断熱部材71および移動断熱部材7
2は、少なくとも一方が設けてあればよいが、好ましく
は両方を設ける。
【0065】このようにして製造される磁歪材料のロッ
ドは、一方向性の凝固によりデンドライト構造が形成さ
れた結晶である。この構造は、METALLURGICAL TRANSACT
IONSA 223−231 18A 1987に開示されており、0.5〜
1.5mm程度の厚さでRTM2 化合物の<112>方向
に成長し{111}面をシート面とするシート状のデン
ドライトと、Rリッチでサブミクロンから数ミクロン程
度の厚さのシート状の包晶化合物の多結晶体ないし単結
晶体とが平行に配列された積層体である。このものは、
厳密には平行ツイン面が存在するので単結晶ではない
が、一般に単結晶と称されている。このような構造を有
することにより、大きな磁歪量が得られる。そして、本
発明は、このような構造の磁歪材料の製造に特に適す
る。
【0066】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0067】図1に示される製造装置、図3に示される
製造装置から移動断熱部材72を外した装置および図3
に示される製造装置を用いて、磁歪材を製造した。断熱
部材71と移動断熱部材72の有無を下記表1に示す。
【0068】原料には、Tb−Dy−Fe合金の粉末
(#32〜#100)を用いた。原料組成を表1に示
す。装置各部の寸法は以下のとおりとした。
【0069】コイル41:高さ40mm(4ターン) 鋳型30:石英ガラス製(円筒形) 内径13mm 厚さ1mm 高さ300mm 筐体31:石英ガラス製(円筒形) 内径26mm 厚さ2mm 高さ500mm 断熱部材71:アルミナ製(円筒形) 内径16mm 厚さ2mm 高さ300mm 移動断熱部材72:アルミナ製(円筒形) 内径32mm 厚さ4mm 高さ50mm
【0070】コイル41および移動断熱部材72の上方
への移動速度を表1に示す。
【0071】表1に、製造した磁歪材の磁歪量を示す。
磁歪量は、外部磁界強度0.4kOeおよび1kOe におい
てそれぞれ測定した。
【0072】
【表1】
【0073】表1に示される結果から、本発明の効果が
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】実施例において、磁歪材料を製造途中の状態を
示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 原料 2 溶湯領域 3 凝固領域 10 ホッパー 20 連続投入手段 21 パイプ 22 ロータリー弁 23 ボール弁 24 均圧管 25 弁 30 鋳型 31 筐体 32 真空ポンプ 40 ヒータ 41 コイル 42 高周波発振器 50 モータ 60 水冷板 61 ベース 62 ベース 71 断熱部材 72 移動断熱部材
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−173937(JP,A) 特開 平3−122229(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 C22C 1/00 - 49/14 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R(RはYを含む希土類元素である)お
    よびTM(TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料
    を製造する製造方法に用いる装置であって、 原料を収容するホッパーと、前記原料を単位時間に単位
    量づつ鋳型に連続投入する連続投入手段と、前記鋳型に
    連続投入された原料を溶融するヒータと、投入された原
    料に対して前記ヒータを相対的に上昇させる上昇手段
    と、前記溶融された原料の熱を放散させる放熱手段とを
    有し、 前記鋳型の外面が断熱部材により包囲されている磁歪材
    料の製造装置。
  2. 【請求項2】 R(RはYを含む希土類元素である)お
    よびTM(TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料
    を製造する製造方法に用いる装置であって、 原料を収容するホッパーと、前記原料を単位時間に単位
    量づつ鋳型に連続投入する連続投入手段と、前記鋳型に
    連続投入された原料を溶融するヒータと、投入された原
    料に対して前記ヒータを相対的に上昇させる上昇手段
    と、前記溶融された原料の熱を放散させる放熱手段とを
    有し、 少なくとも前記ヒータより下側に延在する移動断熱部材
    が前記鋳型を包囲するように前記ヒータに設けられてい
    る磁歪材料の製造装置。
  3. 【請求項3】 前記鋳型の外面が断熱部材により包囲さ
    れている請求項2の磁歪材料の製造装置。
  4. 【請求項4】 前記ホッパーから前記鋳型までの雰囲気
    がアルゴンガス雰囲気である請求項1〜3のいずれかの
    磁歪材料の製造装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの製造装置を用
    いて、R(RはYを含む希土類元素である)およびTM
    (TMは遷移元素である)を含有する磁歪材料を製造す
    る方法であって、 原料を連続投入する連続投入段階と、前記原料を前記連
    続投入の前または後に溶融する溶融段階と、前記連続投
    入されてしかも溶融された原料を徐々に凝固する凝固段
    階とを有する磁歪材料の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記連続投入段階において、所定温度範
    囲に維持された原料を単位時間に単位量づつ連続投入す
    る請求項5に記載の磁歪材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記原料が、一方向性凝固によりデンド
    ライト構造が形成されるものである請求項5または6に
    記載の磁歪材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 粉体の原料を、先に投入されて溶融して
    いる原料中に投入する請求項5ないし7のいずれかに記
    載の磁歪材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記原料がRおよびTMを含む合金であ
    り、水素吸蔵、水素排出およびアニールが行なわれた後
    に前記原料を連続投入する請求項5ないし8のいずれか
    に記載の磁歪材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 R(Fe1-yyx (ただし、xお
    よびyは原子比を表わし、y=0〜0.4、x=1〜3
    であり、Tは、Fe以外の遷移元素の1種以上である)
    で表わされる組成の磁歪材料が製造される請求項5ない
    し9のいずれかに記載の磁歪材料の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記連続投入段階と、前記溶融段階
    と、前記凝固段階とを、アルゴンガス雰囲気中で行なう
    請求項5〜10のいずれかの磁歪材料の製造方法。
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