JP3232348U - 保冷容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で、必要とされる保冷性能を確保することができ、被輸送物を安定的に収容する保冷容器を提供する。【解決手段】保冷容器1は、発泡樹脂製であり、上面に開口を有する容器本体2と、容器本体2の開口を施蓋する蓋体3と、を備える。容器本体2は、被輸送物4が収容される保冷室20Aと、保冷室20Aの側方に設けられ保冷剤5が収容される保冷剤収容室20Bと、保冷室20Aと保冷剤収容室20Bとを区分けする隔壁部27と、を有する。蓋体3は、保冷室20Aに嵌め込まれる突出部34を有し、隔壁部27は、保冷室20Aと保冷剤収容室20Bとを通気させる縦溝29を有し、突出部34と隔壁部27との間には、所定の隙間Sが設けられている。【選択図】図7
Description
本考案は、新型コロナウイルスワクチンといった保冷を要する被輸送物が収容される発泡樹脂製の保冷容器に関する。
新型コロナウイルス感染症(COVID−19)は、2019年12月初旬に中国で第1例目の感染者が報告されてから、わずか数ケ月ほどの間にパンデミックと呼ばれる世界的な流行となった。この脅威に対抗すべく、世界各国の医薬メーカーや研究機関でワクチン開発が進められ、2020年末には英国や米国の一部で、ワクチン接種が開始されるに至った。
日本において、ワクチン供給を受けることが決まっているのは、米国ファイザー社、米国モデルナ社、英国アストラゼネカ社であり、例えば、ファイザー社製ワクチンの保管温度は−75℃(±15℃)、モデルナ社製ワクチンの保管温度は−20℃(±5℃)とされている。これらは、mRNAタイプのワクチンと呼ばれ、構造が壊れ易い遺伝子で作られているため、低温を維持し、且つ振動や衝撃を与えない状態で保管しなければ、ワクチンの効果が失われる虞がある。このようなワクチンや医薬品等といった温度管理を要する被輸送物を収容する保冷容器として、収容部の周囲に保冷剤を配置できるように構成された運搬容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、日本でのワクチン接種が進められているファイザー社製ワクチンは、海外工場から空輸された後、国内倉庫のディープフリーザーで保管され、各地域の医療機関や接種会場には、約1000回接種分を1単位として、保冷ボックスとドライアイスを利用して輸送することになっている。しかしながら、接種会場ごとに接種数の規模は異なり、規模の小さな会場では約1000回分もの接種を行うことができない。そのため、現実的には、ワクチンが封入されたバイアル瓶を小分けして、各接種会場に搬送することになる。ところが、従来の運搬容器では、上記目的に特化したものではないので、ワクチンが封入されたバイアル瓶を安定的に収容することができない虞がある。
本考案は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながら、必要とされる保冷性能を確保することができ、ワクチンが封入されたバイアル瓶といった被輸送物を安定的に収容することができる保冷容器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本考案は、上面に開口を有する容器本体と、前記容器本体の開口を施蓋する蓋体と、を備えた発泡樹脂製の保冷容器であって、前記容器本体は、被輸送物が収容される保冷室と、前記保冷室の側方に設けられ保冷剤が収容される保冷剤収容室と、前記保冷室と前記保冷剤収容室とを区分けする隔壁部と、を有し、前記蓋体は、前記保冷室に嵌め込まれる突出部を有し、前記隔壁部は、前記保冷室と前記保冷剤収容室とを通気させる縦溝を有し、前記突出部と前記隔壁部との間には、所定の隙間が設けられていることを特徴とする。
上記保冷容器において、前記保冷室は、円筒形状の被輸送物が嵌め込まれる保持穴を有することが好ましい。
上記保冷容器において、前記保持穴は、その内周面に内方に突出した保持突起を有することが好ましい。
上記保冷容器において、前記隔壁部の上縁は、前記容器本体の開口より低く、前記蓋体は、前記隔壁部の上縁に向けて突出し前記突出部と段違いになるよう形成された段状部を有することが好ましい。
上記保冷容器において、前記保冷室内において前記突出部と前記被輸送物との間に緩衝材が挟持されることが好ましい。
本考案に係る保冷容器によれば、断熱性の高く且つ弾力性のある発泡樹脂で構成されているので、簡易な構成ながら、保冷室の温度を一定に維持することができ、振動や衝撃から被輸送物を保護することができる。また、蓋体の突出部と隔壁部との間には、所定の隙間が設けられるので、保冷剤収容室の冷気は、縦溝を介して隔壁部を通過し、突出部と隔壁部との間の隙間を通って、保冷室に流入する。これにより、冷気が適切に保冷室に行き渡り、被輸送物に必要とされる保冷性能を確保することができる。また、突出部が保冷室に嵌め込まれているので、突出部によって被輸送物の上方への移動が規制され、被輸送物を安全に輸送することができる。
本考案の一実施形態に係る保冷容器について、図面を参照して説明する。図1(a)(b)及び図2(a)乃至(f)に示すように、本実施形態の保冷容器1は、上面に開口20を有する容器本体2と、容器本体2の開口20を施蓋する蓋体3と、を備える。なお、以下の説明において、図1(b)に示した保冷容器1の左下側の面(図中矢印方向からの視点)を正面とし、右下側の面を右側面とする。
容器本体2及び蓋体3は、いずれも発泡樹脂製であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂といった発泡合成樹脂製であり、本実施形態では、発泡ポリスチレン(EPS(expanded polystyrene))により成型される。容器本体2、蓋体3は、夫々同じ樹脂材料により構成されていてもよいが、夫々発泡倍率(密度)や硬さが異なるものが用いられてもよい。
容器本体2は、上面に開口20を有する有底箱形状の容器であり、その内部に円筒形状の被輸送物4(ワクチンを封入したバイアル瓶が想定される)や保冷剤5が収容される。また、被輸送物4上には、ウレタン等の緩衝材6が配置されることが望ましい。保冷容器1は、平面視で一方の辺が他方の辺よりも長い略長方矩形であり、そのサイズは、例えば、300mm×220mmである。容器本体2に蓋体3を積み重ねたときの高さは、例えば、190mmである。容器本体2の開口20のサイズは、例えば、220mm×140mmである。
図3(a)(b)及び図4(a)乃至(f)に示すように、容器本体2は、略長方矩形の底面21と、底面21の4辺に立設された正面22、左側面23、右側面24及び背面25と、を有する。底面21、正面22、左側面23、右側面24及び背面25の厚みは、例えば、30mm以上であることが望ましく、40mm以上であることが更に望ましい。容器本体2は、これらの5面によって所定の収容空間を形成する。この収容空間の最も深い位置から開口20の最も高い位置までの高さは、例えば、100〜150mm(図例は120mm)である。正面22、左側面23、右側面24及び背面25の上縁には、開口20の周縁を成すように、蓋体3の凹枠部35と篏合する凸枠部26が設けられている。なお、図示を省略しているが、底面21の外側面は平坦面である。
容器本体2は、被輸送物4が収容される保冷室20Aと、保冷室20Aの側方に設けられ保冷剤5が収容される保冷剤収容室20Bと、保冷室20Aと保冷剤収容室20Bとを区分けする隔壁部27と、を有する。保冷室20Aは、容器本体2内の収容空間の中央に位置し、正面22及び背面25の内側面と、両側の隔壁部27の4面で囲われている。保冷剤収容室20Bは、保冷室20Aの側面23、24方向の両側にそれぞれ隔壁部27を介して配置されている(特に、図4(c)参照)。
保冷室20Aは、平面視において開口20の長手方向の辺が、短手方向の辺よりも僅かに小さい略正方矩形であり、保冷室20Aの底面21のサイズは、例えば、130mm×140mmとされる。そして、保冷室20Aの底面21には、円筒形状の被輸送物4が嵌め込まれるように複数の保持穴28が形成されている。本実施形態では、保持穴28は、格子状に5×5の25個、配置されている。保持穴28の口径は、例えば、円筒形状の被輸送物4(バイアル瓶)の外径と概ね等しくなるように設定される。また、保持穴28の深さは、被輸送物4の下部を保持し、被輸送物4の上部は保持穴28から上方に突出するように設定される。例えば、保持穴28の口径は最大箇所で16.5mm、深さは17mmとされ、この場合、隣り合う保持穴28の間隔は、各保持穴28の中心から25mmとされる。
図4(d)に示すように、保持穴28は、その内周面に保持穴28の内方に突出した保持突起28aを有する。本実施形態では、保持突起28aは、保持穴28の内周面の4箇所にそれぞれ設けられる。保持突起28aによって保持穴28の最小口径は、被輸送物4の外径よりも僅かに小さくなることが望ましい。容器本体2は、弾力性のある発泡樹脂で成型されているので、保持穴28に被輸送物4が嵌め込まれた際に、保持突起28aは押し潰されて被輸送物4に圧着し、被輸送物4を保持穴28に安定的に保持する。
隔壁部27は、その上縁が容器本体2の開口20より低くなるように形成されている(図4(e)参照)。また、隔壁部27は、保冷室20Aと保冷剤収容室20Bとを通気させる縦溝29を有する(図4(f)参照)。縦溝29は、一方の隔壁部27につき3箇所、設けられている。縦溝29は、例えば、幅20mm、隣り合う縦溝29との間隔が25mmとなるよう配置されている。また、縦溝29は、その最も深い箇所が、保冷室20Aの底面21よりも高い位置になるように形成されている。
図5(a)(b)及び図6(a)乃至(e)に示すように、蓋体3は、保冷容器1の上面を成す板状部材である。蓋体3の上面31は平坦面であり、その中央に肉抜きのための凹部32が設けられている。蓋体3の下面33には、保冷室20Aに嵌め込まれる突出部34が形成されている。また、蓋体3の下面33には、突出部34を囲うように、容器本体2の凸枠部26と篏合する凹枠部35が設けられている。突出部34の側面34aのうち正面側の面及び背面側の面は、凹枠部35の内溝面と連続した鉛直面として構成される(図5(b)参照)。
突出部34は、保冷室20Aの形状に対応した箱形の出っ張りであり、後述する段状部36の底面36bから膨出した4つの側面34aと、下面33と平行な底面34bと、を有する。隣り合う側面34aの成す角部や側面34aと底面34bとの成す角部は、夫々緩やかに丸みを帯びるように面取りされている。底面34bは、例えば、平面視において保冷室20Aより僅かに小さな略正方矩形である(図6(c)参照)。突出部34(側面34a)の高さは、蓋体3の下面33から、例えば、68mmとされ、保冷室20Aの殆どの容量は、突出部34によって埋められることになる。また、蓋体3の上面31に設けられた肉抜きのための凹部32は、突出部34及び段状部36に対応するように、段状に形成されている。なお、蓋体3は、凹部32によって蓋体3で最も薄くなった箇所でも、その厚みは30mm以上である(図6(d)(e)参照)。
蓋体3は、隔壁部27の上縁に向けて突出し突出部34と段違いになるよう形成された段状部36を有する。段状部36は、蓋体3の下面33から膨出した4つの側面36aと、蓋体3の下面33と平行な底面36bと、を有する。段状部36は、保冷剤収容室20Bの上方には設けられていない。そのため、保冷剤収容室20Bは、その高さが容器本体2の底面21から蓋体3の下面33まであり、保冷容器1で高さ方向に最も大きな収容空間を持ち、大きな保冷剤5を収容することができる。また、段状部36の側面36aのうち、左側面23側の面及び右側面24側の面は、保冷剤収容室20Bに収容される保冷剤5に面し、保冷剤5の水平方向の移動を規制する(後述する図7参照)。一方、段状部36の側面36aのうち、正面側の面及び背面側の面は、容器本体2の正面22及び背面25の内面と接しており、容器内の気密性を高めている(図2(d)参照)。
本実施形態の保冷容器1は、断熱性の高く、且つ弾力性のある発泡樹脂で構成されているので、簡易な構成ながら、保冷室20Aの温度を一定に維持することができ、振動や衝撃から被輸送物4を保護することができる。また、保冷容器1は、蓋体3の突出部34が、隔壁部27で挟まれた保冷室20Aよりも僅かに小さくなるように形成されているので、図7に示すように、突出部34と隔壁部27との間には、所定の隙間Sが設けられる。なお、容器本体2の正面22及び背面25の各内面と突出部34との間にも、所定の隙間Sがある(図2(d)参照)。
上記構成によれば、保冷剤収容室20Bにおいて保冷剤5で冷やされた冷気は、縦溝29を介して隔壁部27を通過し、突出部34と隔壁部27との間を通って、保冷室20Aに流入する。これにより、保冷剤5の冷気は適切に保冷室20Aに行き渡り、被輸送物4に必要とされる保冷性能を確保することができる。突出部34と隔壁部27との間の隙間Sは、5〜15mmであることが好ましく、10mm前後であることが最も好ましい。5mm以下となると通気性が悪くなり、15mm以上となると保冷室20Aに無駄なスペースが生じてしまうため、好ましくない。
また、容器本体2の隔壁部27の上縁と、蓋体3の段状部36の間にも、隙間があるので(図7参照)、保冷剤5の冷気は、この隙間からも保冷室20Aに流入する。従って、保冷剤収容室20Bに高さのある大きな保冷剤5を収容した場合にも、その冷気を適切に保冷室20Aに行き渡らせることができ、より高い保冷性能を得ることができる。
また、突出部34が保冷室20Aに嵌め込まれているので、保冷室20A内の無駄な空間が減り、保冷剤5による冷却効率が高まると共に、容器本体2に蓋体3を施蓋した際に、保冷室20A内の空気が押し出されるので、空気中の水分による結露を低減することができる。更に、保冷室20Aと保冷剤収容室20Bとが隔壁部27で区分けされ、通気用の縦溝29の最も深い箇所でも、保冷室20Aの底面21よりも高い位置にあるので、保冷剤5の周囲で結露により水滴が発生した場合であっても、水滴が保冷室20Aに流入することを抑制できる。なお、発泡樹脂製の保冷容器1は、所定の通気性を有しているので、保冷剤5としてドライアイスを用いた場合に、ドライアイスが昇華して発生した二酸化炭素を緩やかに排出することができる。
また、保冷室20Aには、円筒形状の被輸送物4の形状に対応した保持穴28が設けられ、被輸送物4は、保持穴28の内周面に内方に突出した保持突起28aによって保持穴28に圧着されるので、被輸送物4を安定的に収容し、輸送の際の振動や衝撃からも被輸送物4を保護することができる。更に、突出部34が保冷室20Aに嵌め込まれているので、仮に被輸送物4が保持穴28から外れた場合でも、突出部34によって被輸送物4の上方への移動が規制されるので、被輸送物4が保冷室20A内で散乱することもなく、被輸送物4を安全に輸送することができる。また、図1(a)及び図7に示したように、突出部34と被輸送物4との間に緩衝材6を挟持させれば、振動や衝撃から被輸送物4を保護することができ、より効果的である。
なお、本考案は、上記実施の形態の構成に限られず、考案の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。上記実施形態では、保冷室20Aの2方向に保冷剤収容室20Bを設けた構成を示したが、被輸送物4の収容数が増えて、保冷室20Aの容積が大きくなった場合には、例えば、保冷室20Aの4方向に保冷剤収容室20Bを設けてもよい。また、保冷容器1の全高を高くし、保冷室20Aに被輸送物4を2段積みできるように構成されてもよい。
1 保冷容器
2 容器本体
20 開口
20A 保冷室
20B 保冷剤収容室
27 隔壁部
28 保持穴
28a 保持突起
29 縦溝
3 蓋体
34 突出部
36 段状部
4 被輸送物
5 保冷剤
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Claims (5)
- 上面に開口を有する容器本体と、前記容器本体の開口を施蓋する蓋体と、を備えた発泡樹脂製の保冷容器であって、
前記容器本体は、被輸送物が収容される保冷室と、前記保冷室の側方に設けられ保冷剤が収容される保冷剤収容室と、前記保冷室と前記保冷剤収容室とを区分けする隔壁部と、を有し、
前記蓋体は、前記保冷室に嵌め込まれる突出部を有し、
前記隔壁部は、前記保冷室と前記保冷剤収容室とを通気させる縦溝を有し、
前記突出部と前記隔壁部との間には、所定の隙間が設けられていることを特徴とする保冷容器。 - 前記保冷室は、円筒形状の被輸送物が嵌め込まれる保持穴を有することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
- 前記保持穴は、その内周面に内方に突出した保持突起を有することを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
- 前記隔壁部の上縁は、前記容器本体の開口より低く、
前記蓋体は、前記隔壁部の上縁に向けて突出し前記突出部と段違いになるよう形成された段状部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の保冷容器。 - 前記保冷室内において前記突出部と前記被輸送物との間に緩衝材が挟持されることを特徴とする請求項乃至請求項4のいずれか一項に記載の保冷容器。
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