JP3223679B2 - 高粘度材料の塗布方法および塗布装置 - Google Patents

高粘度材料の塗布方法および塗布装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車塗装におけるア
ンダーコート材、シーリング材等の高粘度材料に空気等
の気泡を混入する塗布方法および塗布装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】自動車のホイールハウス、床裏等のいわ
ゆるアンダーフロアは、走行中に跳ね上げる砂利等によ
るチッピング、また道路に散布された融雪塩の影響等に
より腐食を受けやすい。このためアンダーフロアには保
護塗膜が形成されるが、アンダーフロアは特に外観品質
を要する部位ではないために、自動車ボディ全体を電着
法により下塗り塗装した後、アンダーコート材(防音の
機能もあり防音塗装とも呼ばれる。)と呼ばれる高粘度
の塗料を用いて低回数の塗布で比較的厚い膜厚の塗膜を
形成する。図3は、自動車製造におけるアンダーコート
塗布の施工例を模式的に示す図面であり、自動車製造ラ
インにおいてハンガー50に懸架され搬送されてきた自
動車ボデイ51のホイールハウス部52および床裏53
に対し、下部側に配置された塗布ロボット54の先端に
位置する吐出ガン55よりエアレス方式によってアンダ
ーコート材56が塗布されている。
【0003】近年、燃費向上等の目的の上から、自動車
の軽量化が必要とされ、上記したようなアンダーコート
に関しても重量の削減が求められている。このような観
点から、上記したようなアンダーコート材の組成中に直
径20〜30μm程度の樹脂バルーンを混入し、低比重
化したものが提唱されている。図4はこの樹脂バルーン
を混入したアンダーコート材を塗布した状態を模式的に
示すものであり、図中57は鋼板(肉厚0.8mm)、
58はアンダーコート塗膜、59は樹脂バルーンであ
る。なお、アンダーコート塗膜58の膜厚は、従来、国
内向けのもので350μm程度、また使用条件の過酷な
輸出向けのもので500μm程度とされていた。シーリ
ング、アンダーコートについては、自動車工学全書 第
19巻 自動車の製造方法(昭和55年4月20日 株
式会社山海堂発行)の第196頁項目8.2.3 シー
リング、防音、防振なる記載に紹介がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように樹脂バルー
ンを混入して低比重化したアンダーコート材を用いるこ
とで、自動車の軽量化は図れるものの、樹脂バルーンを
混入することによりアンダーコート材の単位重量当りの
単価が上昇してしまうため、経済的な見地から問題の残
るものであった。
【0005】従って本発明は、軽量化された高粘度材料
塗膜を経済的に形成できる高粘度材料の塗布方法および
塗布装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の高粘度材料の塗布方法は、高粘度材料に
加圧下で気体を混合して高粘度材料中に微細な気泡を包
含させ、前記混合処理後塗布前まで気泡を包含させた高
粘度材料を中間貯溜槽内に加圧下に保持し、その後ノズ
ルより吐出させ被塗物に塗布するものである。
【0007】また本発明の高粘度材料の塗布装置は、高
粘度材料に微細な気泡を混入して塗布するための装置で
あって、高粘度材料と気体とを加圧下に混合する気体混
合装置と、該気体混合装置から吐出ノズルへと至る管路
と、該管路途中に設けられた中間貯溜槽と、該管路内お
よび中間貯溜槽内の圧力を所定の加圧条件下に保持する
圧力調整機構を有することを特徴とするものである。
【0008】
【作用】アンダーコート材、シーリング材等の高粘度材
料に、例えば空気等の気体を加圧下で混合すると高粘度
材料中に微細な気泡を包含させることができる。包含さ
れた気泡は、該高粘度材料が粘稠な液体であるために、
高粘度材料を大気中に曝しても、ある程度安定に存在し
得るが、長持間経過すると脱泡してしまう。また高粘度
材料中における気泡混入率を均一にするためには、気体
混合装置における材料通過量を常に一定に保てばよい
が、操業上実際には困難である。本発明においては、気
体混合装置を通過させた後、一端中間貯溜槽内に加圧下
に保持することで高粘度材料中に微細な気泡を包含させ
た状態を維持しつつかつ気泡混入率の均一化を図り、気
泡混入高粘度材料を安定した品質で使用(塗布)するも
のである。そして、このようにして形成された塗膜は、
微細な気泡を包含し単位体積当りの重量の軽減されたも
のとなる。
【0009】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明す
る。本発明において用いられる高粘度材料としては、自
動車製造において用いられるアンダーコート材、シーリ
ング材等が挙げられる。なお、これらの高粘度材料の組
成は、一般に使用されているものと同様のものでよい。
【0010】アンダーコート材は、例えば塩化ビニル樹
脂(PVC)に、可塑剤、充填剤、着色剤等を配合し、
3〜5重量%という少量の溶剤で液状化した粘度(20
℃)30000〜70000cps、より好ましくは5
0000〜70000cps程度のものである。
【0011】上記塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル
ホモポリマーのみならず、塩化ビニル−塩化ビニリデン
コポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化
ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸トリポリマー等の塩化
ビニルと他のモノマーとの共重合体が含まれ、その平均
重合度が1000〜1500程度(平均分子量5000
0〜100000程度)のものが用いられる。可塑剤と
しては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート
(DOP)、ジヘキシルフタレート(DHP)等のフタ
ル酸エステル類、トリクレジルホスフェート(TCP)
等のリン酸エステル類、エポキシ化植物油などの公知の
種々ものを単独であるいは組合せて使用できる。また、
充填剤および着色剤としても、タルク、亜鉛華、チタン
白、酸化アンチモン、カーボンブラック、クロムイエロ
ー、フタロシアニンブルーなどの公知のものが単独また
は組合せて適宜使用される。さらに、溶剤としては、メ
チルエチルケトン(MEK)やメチルイソブチルケトン
(MIBK)のようなケトン類、トルエンやキシレンな
どの芳香族炭化水素類、二酸化エタン、モノクロールベ
ンゾールなどの塩素化炭化水素やニトロパラフィン類、
ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、あるいは
酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類を単独または
組合せて使用する。なお、アンダーコート材としては、
トーカゾル(東京塗料化学(株)製)、サンダイン(日
本ゴム(株)製)等の市販のものも使用可能である。
【0012】またシーリング材は、例えば塩化ビニル樹
脂(PVC)に、可塑剤、充填剤等を配合し、2〜3重
量%という少量の溶剤でペースト化した粘度(20℃)
50000〜100000cps、より好ましくは60
000〜70000cps程度のものである。これらの
各成分については上記したものと同様のものが例示でき
る。また例えば、サンダイン1310、1320(日本ゴム
(株)製)、ペンギンシール1590P 、1590A (サンスタ
ー(株)製)、XS494 、XS519-5 (日立化成ポリマー
(株)製)、S904(セメダイン(株)製)などの市販品
がシーリング材として使用可能である。
【0013】一方、このような高粘度材料中に気泡とし
て包含させる気体としては、通常、空気が用いられる
が、不活性ガス(N2 )等も使用可能である。またこれ
らの気体は、形成される塗膜の防錆効果を考慮すると、
乾燥状態で使用されることが望ましい。
【0014】以下、アンダーコート材を塗布する場合を
例にとり、本発明を図面に基づき説明する。
【0015】図1は、本発明の高粘度材料の塗装装置の
一実施例であるアンダーコート材塗布装置の構成を示す
図面である。図1に示すように、この装置は、アンダー
コート材に空気を混入するエアーミックス装置1を備え
ており、このエアミックス装置1には、ライン2を通じ
て前記アンダーコート材が供給され、またエアコンプレ
ッサ3に接続されたライン4を通じて圧縮空気が供給さ
れる。ライン2の途中にはレギュレータ5が配してあ
り、90〜110kg/cm2 程度の圧力、この実施例
においては100kg/cm2 において搬送されてきた
アンダーコート材が気泡混入処理に適した40〜60k
g/cm2 程度の圧力、この実施例においては40kg
/cm2 に調整される。またライン4の途中には、圧力
計を備えたエアレギュレータ6が配してあり、エアコン
プレッサ3より送られてくる空気が60〜70kg/c
2 程度の圧力、この実施例においては50kg/cm
2 の圧力に調整される。
【0016】前記所定の圧力でアンダーコート材および
空気をエアミックス装置1内に供給することで、アンダ
ーコート材は多数の微細な気泡を包含することとなる。
なお、アンダーコート材と空気との混合比率は、特に限
定されるものではないが、1kg/cm2 、20℃の条
件に換算しての容積比(アンダーコート材:空気)が例
えば5:95〜40:60程度、より好ましくは10:
90〜30:70程度となるように調整することが望ま
しい。すなわち、容積比が10:90よりも低いと最終
的に得られるアンダーコート塗膜における気泡包含率が
低すぎて塗膜の軽量化、アンダーコート材使用量の低減
化という所望の効果が得られないためであり、一方、3
0:70よりも高いとアンダーコート塗膜における気泡
包含率が高くなりすぎ連通孔、巨大気泡が発生して防錆
効果等の塗膜本来の機能が低下する虞れがあるためであ
る。なお、この実施例においてはエアミックス装置1に
供給される空気の流量は0.4リットル/分、アンダー
コート材の流量は2リットル/分とした。
【0017】なお、このエアミックス装置1として具体
的には、例えば、米国 Nordson 社のFOAMMIX A/T SYST
EM(これは圧力容器の中で表面に矩形の突起のついたド
ラムが回転するタイプ)などの方式のものが用いられ
る。
【0018】またエアミックス装置1を通過してアンダ
ーコート材に包含された気泡の大きさは、加圧条件、ア
ンダーコート材の粘度等によって左右されるため一概に
規定できないが、最終的にアンダーコート材が大気中に
曝され塗膜を形成した際に0.05〜0.1mm程度の
大きさの気泡が形成されるよう調整することが望まれ
る。例えば、50kg/cm2 の加圧条件下において
は、気泡の大きさは、1〜2μm程度であることが望ま
れる。
【0019】このようにしてエアミックス装置1におい
て空気と混合され気泡を包含したアンダーコート材は、
ライン7を通って圧力計を備えた中間貯溜槽8へと送ら
れる。この中間タンク8は、所定の容量、例えば40〜
60リットル容程度の圧力容器により構成されている。
この中間タンク8内は、アンダーコート材中に包含され
た気泡が脱泡しないように加圧下に保つ必要があるが、
エアミックス装置1の通過圧力をそのまま維持する必要
はなく、レギュレータ9により10〜30kg/cm2
程度、より好ましくは10〜20kg/cm2 程度まで
減圧する。なお、この実施例においては10kg/cm
2 とした。エアミックス装置1を通過したアンダーコー
ト材は、使用されるまで一端この中間貯溜槽8に貯溜さ
れることで、エアミックス装置1における空気混入率の
経時的な変動が緩衝され、混入率が均一となる。また自
動車生産ラインにおけるアンダーコート塗布は、搬送さ
れてくる各自動車ボディに対して行なわれるために断続
的なものとなるが、このように中間貯溜槽8を設けるこ
とで、このようなアンダーコート塗布操作に連動してエ
アミックス装置1を断続的に運転・停止する必要がなく
なる。
【0020】なお、この実施例においては、中間貯溜槽
8には前記ライン4のエアレギュレータ6の後方より分
岐したライン10が別途開閉可能に接続されており、中
間タンク8内に貯溜されたアンダーコート材の空気混入
率が所望の値より低下した場合に、該ライン10を開い
て中間タンク内に空気を導入し空気混入率を補正するこ
とができるようにされている。
【0021】中間貯溜槽8から導出された気泡包含アン
ダーコート材は、ライン11を通って材料供給ポンプ
(またはブースター)12へと送られ、ここで例えば8
0〜100kg/cm2 程度の吐出圧力、この実施例に
おいては80kg/cm2 の吐出圧力へと加圧され、ラ
イン13を通り、さらにこのライン13より複数に分岐
したライン14によって、各吐出ガン、例えば図3に示
すような塗布ロボット54の先端に備えられた吐出ガン
56の複数個、へと送られ塗装に供せられる。
【0022】なお、中間貯溜槽8以降吐出ガンまでの経
路、すなわちライン11およびライン13、14におい
ても、塗装を停止している間も圧力を加えておかない
と、この部位に存在する気泡包含アンダーコート材の気
泡分散の均一性が崩れてしまう。しかしながら、前記し
たような高い吐出圧力をかけたまま生産ラインを停止す
ることは危険であり、より低圧にて保持することで十分
である。このため、本実施例では、ライン13において
材料供給ポンプ直後に開閉弁15を設けると共に、ライ
ン13の先端側に分岐ライン14とは別途減圧ライン1
6を設け、このライン16上に、例えば電磁ニードル弁
からなる圧力調節弁17を備えている。そして、塗装終
了後、開閉弁15を閉じると共に圧力調節弁17を開
き、ライン13、14内が前記中間貯溜槽8内と同様の
10〜20kg/cm2 程度の圧力、この実施例におい
ては10kg/cm2 となるまで減圧した後、再び圧力
調節弁17を閉じることで、所望の圧力下に保持する。
【0023】なお、生産終了に伴なう開閉弁15および
圧力調節弁の開閉操作、並びにエアーミックス装置1の
作動・停止は、例えば、演算機を組み込んだ制御ユニッ
ト18を用いて、自動制御することができる。
【0024】ライン14を通じて送られ、吐出ガン55
より吐出される気泡含有アンダーコート材は、従来のも
のと同様に、図3に示すように自動車ボディ51のアン
ダーフロア52、53に、350〜500μm程度の膜
厚で塗布され、その後、常法に基づき、120〜140
℃で10〜15分程度仮焼き後、中塗りオーブンにて1
30〜150℃で15〜20分程度かけて焼付けられ
る。
【0025】図2は、このようにして塗装した気泡含有
アンダーコートの状態を模式的に示すものであるが、鋼
板(肉厚0.8mm)20に被着されたアンダーコート
塗膜21中には、0.05〜0.1mm程度の微細な独
立気泡が多数存在しており、塗膜の単位体積当りの重量
軽減に寄与している。
【0026】以上は、アンダーコート材の場合を例にと
り、本発明を説明したが、シーリング材、その他の高粘
度材料の塗布に関しても、同様に適用可能である。
【0027】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、高粘
度材料中に均一かつ安定して気泡を包含させて塗装し、
微細な気泡を包含した高粘度材料塗膜を形成することが
できるため、塗膜の軽量化が図られ、かつ所定面積を所
定膜厚で塗装するのに要する高粘度材料の量が低減する
ために、材料費の節減がなされ経済的な効果も併せて得
られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高粘度材料の塗装装置の一実施例で
あるアンダーコート材塗布装置の構成を示す図面、
【図2】 本発明の高粘度材料の塗装方法により塗装し
た気泡含有アンダーコートの状態を模式的に示す断面
図、
【図3】 自動車製造におけるアンダーコート塗布の施
工例を模式的に示す図面、
【図4】 従来のアンダーコートの状態を模式的に示す
断面図。
【符号の説明】
1…エアーミックス装置、 2…アンダーコート材
供給ライン、 3…エアコンプレッサー、 4…空気供給ライン、 5,9…レギュレーター、 6…エアレギュレー
タ、 7,11,13,14…気泡含有アンダーコート材供給
ライン、 8…中間貯溜槽、 12…材料供給ポンプ、 15…開閉弁、 16…減圧ライン、 17…圧力調整弁、 18…制御ユニット、 20…鉄板、 21…アンダーコート塗
膜、 22…微細気泡、 50…ハンガー、 51…自動車ボディ、 52…ホイールハウス、 53…床裏、 54…塗布ロボット、 55…吐出ガン、 56…アンダーコート
材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木下 英也 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (72)発明者 津島 広明 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−87267(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05B 7/04 B05D 1/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高粘度材料に加圧下で気体を混合して高
    粘度材料中に微細な気泡を包含させ、前記混合処理後塗
    布前まで気泡を包含させた高粘度材料を中間貯溜槽内に
    加圧下で保持し、その後ノズルより吐出させ被塗物に塗
    布することを特徴とする高粘度材料の塗布方法。
  2. 【請求項2】 高粘度材料に微細な気泡を混入して塗布
    するための装置であって、高粘度材料と気体とを加圧下
    に混合する気体混合装置と、該気体混合装置から吐出ノ
    ズルへと至る管路と、該管路途中に設けられた中間貯溜
    槽と、該管路内および中間貯溜槽内の圧力を所定の加圧
    条件下に保持する圧力調整機構を有することを特徴とす
    る高粘度材料の塗布装置。
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