JP3223040B2 - 半導体薄膜の結晶化法 - Google Patents

半導体薄膜の結晶化法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非晶質等の様々な半
導体薄膜を結晶化させる方法に係り、特に、半導体薄膜
中における任意の位置に任意の大きさになった単結晶等
の結晶を簡単に形成できる半導体薄膜の結晶化法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、非晶質等の様々な半導体薄膜を結
晶化させる方法としては、例えば、半導体薄膜を加熱さ
せて結晶を固相成長させる固相成長法や、半導体薄膜に
レーザを照射させて結晶化させるレーザアニール法や、
半導体薄膜に交流磁場を印加させて渦電流による加熱に
より結晶化させる方法等が知られていた。
【0003】しかし、上記のような何れの方法であって
も、半導体薄膜中において結晶化させる位置やその大き
さを制御することが非常に困難であり、また結晶化させ
てデバイスを作製した場合に、このデバイス中に不均一
な結晶粒界が残ったりし、これによりデバイスの特性が
低下する等の問題があった。
【0004】また、従来においては、半導体薄膜の任意
の位置に任意の大きさになった単結晶等の結晶を形成す
るため、図1の(A),(B)に示すように、基板1上
に非晶質等の半導体薄膜2を形成した後、この半導体薄
膜2において結晶化させる部分を残すようにして、その
他の不必要な部分をエッチングによって取り除き、その
後、この半導体薄膜2に対して交流磁場を印加させ、渦
電流による加熱によって残った部分における半導体を溶
融させて結晶化させる方法が開発された。
【0005】しかし、このようにして半導体薄膜2の任
意な位置に任意の大きさになった結晶領域を形成する場
合、上記のようにエッチング等の複雑な工程が必要にな
り、その生産性が悪く、また半導体を溶融させて結晶化
させるため、結晶化する際に基板1から不純物がこの半
導体薄膜2内に混入されたり、図1の(C)に示すよう
に、溶融された半導体2cが基板1上において水滴状に
丸くなって固まる等の問題があった。
【0006】また、上記のように溶融された半導体2c
が水滴状に丸くなって固まるのを防止するため、前記の
ようにエッチングを行った後、残った半導体薄膜2の上
にSiO2 等の保護膜を設け、この状態で結晶化させる
方法も行なわれたが、この場合、保護膜を設ける工程が
更に必要となって、より生産性が悪くなり、製造コスト
が高くつく等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、非晶質等
の様々な半導体薄膜を結晶化させる場合における上記の
ような様々な問題を解決することを課題とするものであ
る。
【0008】すなわち、この発明においては、非晶質等
の様々な半導体薄膜中において、任意の位置に任意の大
きさになった単結晶等の結晶を簡単に形成できるように
することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明においては、上
記のような課題を解決するため、非晶質,微結晶または
多結晶の半導体薄膜中に導電率の異なる領域を設け、こ
の半導体薄膜に交流磁場を印加させて渦電流による加熱
を行い、この半導体薄膜において導電率の高くなった部
分を結晶化して固相成長させるようにしたのである。
【0010】ここで、上記の半導体薄膜として、この発
明においては、非晶質,微結晶,多結晶の半導体薄膜を
用いることができ、このような半導体薄膜において結晶
を固相成長させ、半導体薄膜に単結晶或いは結晶粒が大
きくて特性の良い多結晶を作成するようになっている。
【0011】また、この発明において、半導体薄膜中に
導電率の異なる領域を設けるにあたっては、半導体薄膜
中の任意の位置にリン,ボロン等の導電率を高める元素
を注入させて、導電率の高い領域を設けるようにした
り、エキシマレーザ等のレーザ光を半導体薄膜中の任意
の位置に照射させて、この部分における導電率を高める
ようにする。
【0012】さらに、このように半導体薄膜中に導電率
の異なる領域を形成する場合において、導電率を高める
元素の注入量を部分的に変更させて、半導体薄膜中にお
ける導電率を段階的に変更させ、例えば、中心部などに
局所的に上記のような元素を多く注入させて、高導電率
の部分を設けるようにしたり、また半導体薄膜中におい
て導電率を高める元素が注入された部分における適当な
位置にレーザ光を照射させて結晶核を形成し、この結晶
核部分における導電率だけをさらに高めるようにしても
良い。
【0013】また、上記のように導電率の異なる領域を
設けた半導体薄膜に交流磁場を印加させて渦電流による
加熱を行い、この半導体薄膜中において結晶を固相成長
させる場合、結晶化された結晶核の周囲が固相で結晶成
長するのに適し且つ新たな結晶核が発生しないような温
度で半導体薄膜が加熱されるように交流磁場の強さを調
整することが好ましい。
【0014】
【作用】この発明における半導体薄膜の結晶化法におい
ては、上記のように半導体薄膜中の適当な部分に、導電
率を高める元素の注入量を変更させたり、レーザを照射
させたりして、半導体薄膜中に導電率の異なる領域を設
け、この半導体薄膜に交流磁場を印加させるようにす
る。
【0015】このように導電率の異なる領域が設けられ
た半導体薄膜に交流磁場を印加させると、導電率の違い
により渦電流密度に差が生じ、渦電流による加熱によっ
て半導体薄膜中に温度勾配が生じ、まず導電率の高くな
った部分が渦電流による加熱によって結晶化され、引き
続き交流磁場を印加させると、結晶化された周囲が渦電
流により次第に加熱されて結晶が固相成長し、この交流
磁場の印加による加熱を制御することによって半導体薄
膜中の任意の領域における結晶化が行えるようになる。
【0016】また、上記交流磁場の強度を、結晶化され
た結晶核の周囲が固相で結晶成長するのに適し且つ新た
な結晶核が発生しないような温度になるように調整する
と、結晶核の周囲のみが結晶成長に適した温度となり、
選択的な結晶成長が行え、結晶粒界を含まない単一結晶
を半導体薄膜中の任意の領域に簡単に形成できるように
なる。
【0017】
【実施例】以下、この発明の実施例を添付図面に基づい
て具体的に説明する。
【0018】この実施例においては、図2の(A)に示
すように、熱CVD法により下記の表1に示すアモルフ
ァスシリコン膜形成条件で、基板1上にアモルファスシ
リコン膜2からなる半導体薄膜2を形成した。なお、こ
のアモルファスシリコン膜2は、その膜厚が2μm、導
電率が3〜5×10-11 S/cm2 であった。
【0019】
【表1】
【0020】次に、図2の(B)に示すように、上記の
ように形成したアモルファスシリコン膜2の上にプラズ
マ耐性を持つZnOからなるマスク3を設け、このマス
ク3にレーザを用いてエッチングを行い、同図の(C)
に示すように、このマスク3に大きさが10μm×10
μmになった種結晶作成用の開口部3aを形成した。な
お、上記のレーザとしては、波長308nm,パルス幅
20nsec,エネルギー密度0.5J/cm2 のXe
Clエキシマレーザを用いた。
【0021】そして、上記のようにマスク3に設けられ
た種結晶作成用の開口部3aを通して、イオンプラズマ
パッシベーションにより、下記の表2に示すドーピング
条件で、この開口部3aに対応したアモルファスシリコ
ン膜2の種結晶作成部2aに導電率を高める元素として
リンを注入させた。なお、このドーピングによる種結晶
作成部2aへのリンのドープ量は1×1020個/cm3
であった。
【0022】
【表2】
【0023】そして、このようにアモルファスシリコン
膜2の種結晶作成部2aに導電率を高めるリンを注入さ
せた後、上記種結晶作成用の開口部3aがほぼ中央にな
るようにして、その周辺部のマスク3を上記のようにレ
ーザを用いてエッチングし、図2の(D)に示すよう
に、マスク3に大きさが200μm×400μmになっ
た開口部3bを設け、その後、この開口部3bを通し
て、この開口部3bに対応したアモルファスシリコン膜
2の種結晶作成部2a及びその周辺における結晶化部2
bに、イオンプラズマパッシベーションにより下記の表
3に示すドーピング条件で、導電率を高めるリンを注入
させた。なお、このドーピングによる種結晶作成部2a
及び結晶化部2bへのリンのドープ量は1〜8×1019
個/cm3 であった。
【0024】
【表3】
【0025】このようにしてアモルファスシリコン膜2
の種結晶作成部2a及び結晶化部2bに導電率を高める
元素としてリンを注入させた結果、種結晶作成部2aに
おける導電率が1〜3×10-6S/cm2 、また結晶化
部2bにおける導電率が5×10-8〜3×10-7S/c
2 になった。
【0026】そして、上記のようにリンが注入されて導
電率が高くなった種結晶作成部2aと結晶化部2bとが
形成されたアモルファスシリコン膜2に対し、この実施
例においては、RF発信器に20〜300V,15〜2
5Aの電圧及び電流を加え、このRF発信器によって交
流磁場を印加させた。
【0027】このようにアモルファスシリコン膜2に交
流磁場を印加させると、このアモルファスシリコン膜2
に渦電流が発生し、リンが多くドープされて導電率が高
くなった種結晶作成部2aにおける渦電流密度が高くな
って、この種結晶作成部2aが他の部分より渦電流によ
って強く加熱され、図3の(A)に示すように温度勾配
が生じ、この種結晶作成部2aにおける温度が他の部分
より高くなって結晶化する温度に達し、この種結晶作成
部2aが結晶化されてアモルファスシリコン膜2に種結
晶が形成された。
【0028】そして、このように種結晶が形成されたア
モルファスシリコン膜2にさらに交流磁場を印加させて
渦電流による加熱を行うと、図3の(B)に示すよう
に、種結晶作成部2aの周囲において導電率が高くなっ
た結晶化部2bにおける温度が上昇して、種結晶が形成
された種結晶作成部2aの周囲から次第に結晶化部2b
の温度が結晶化する温度に達し、種結晶作成部2aの種
結晶が次第にその結晶化部2bに成長して結晶領域が拡
大し、約2時間の時間で結晶化部2bも結晶化されて、
アモルファスシリコン膜2に約200μm×400μm
の大きさになった結晶領域が形成された。なお、図3の
(A),(B)において、T1 以上は結晶化した部分の
温度であり、またT2 は結晶成長が起こる温度の下限で
あり、温度TがT1 >T>T2 の範囲で結晶が成長す
る。
【0029】ここで、この実施例においては、結晶化さ
せる半導体薄膜2にアモルファスシリコン膜2を用いた
例を示しただけであるが、その他の非晶質半導体膜や、
微結晶或は多結晶の半導体膜を用いることも可能であ
る。
【0030】また、この実施例においては、結晶化させ
る半導体薄膜2に導電率の異なる領域を設けるにあた
り、アモルファスシリコン膜2に導電率を高める元素と
してリンをドーピングさせるようにしたが、その他のボ
ロン等の導電率を高める元素をドーピングさせたり、ま
たエキシマレーザ等のレーザ光を半導体薄膜2に照射さ
せて、この部分における導電率を高めるようにしてもよ
い。
【0031】また、この実施例においては、図4の
(A),(B)に示すように、アモルファスシリコン膜
2の種結晶作成部2aにリンをドープさせた後、さらに
その周辺の結晶化部2bにリンをドープさせて、種結晶
作成部2aと結晶化部2bにおけるリンのドーピング量
を変化させたが、例えば、図5の(A)〜(C)に示す
ように、上記結晶化部2bの長辺方向において、その縁
部におけるリンのドーピング量を少なくし、リンのドー
ピング量を3段階に変更させるようにしたり、図6の
(A)〜(C)に示すように、上記結晶化部2bの周縁
部におけるリンのドーピング量を多くして、リンのドー
ピング量を3段階に変更させるようにしたり、さらには
図7の(A)〜(C)に示すように、結晶化部2bを設
けずに種結晶作成部2aにだけリンをドーピングさせる
ようにしてもよい。
【0032】ここで、図5に示すように、結晶化部2b
の長辺方向の縁部におけるリンのドーピング量を少なく
した場合、交流磁場を印加させて加熱を行った際におけ
る温度勾配が同図の(D)に示すようになり、結晶化部
2bの長辺方向の縁部における温度の上昇が遅くなり、
結晶化部2b全体を結晶化させるのに要する時間が長く
なるが、種結晶を核とした結晶成長がうまく行われて、
結晶化が困難な材料からなる半導体薄膜2であっても質
のよい結晶が形成されるようになった。
【0033】また、図6に示すように、結晶化部2bの
周縁部におけるリンのドーピング量を多くした場合、交
流磁場を印加させて加熱を行った際における温度勾配が
同図の(D)に示すようになり、結晶化部2bの周縁部
における温度の上昇が早まり、結晶化部2b全体を結晶
化させるのに要する時間が短くなった。
【0034】また、図7に示すように、種結晶作成部2
aにだけリンをドーピングさせた場合、交流磁場を印加
させて加熱を行った際における温度勾配が同図の(D)
に示すようになり、種結晶作成部2aだけが早く結晶化
されるようになった。
【0035】なお、上記の実施例においては、リンのド
ープ量を多くして導電率を高くした種結晶作成部2aを
設け、交流磁場の印加による加熱により、この種結晶作
成部2aにおいて種結晶を作成させるようにしたが、上
記のような種結晶作成部2aを設けずに、結晶化部2b
の適当な位置にエキシマレーザ等のレーザ光を照射させ
て結晶化部2bの一部に種結晶を作成し、その後、交流
磁場を印加させて上記の種結晶の周辺を加熱し、これに
より結晶を成長させて結晶化部2bを結晶化させるよう
にしてもよい。
【0036】以上詳述したように、この発明における半
導体薄膜の結晶化法においては、非晶質,微結晶または
多結晶の半導体薄膜中の適当な部分に、導電率を高める
元素を注入させたり、レーザを照射させたりして、半導
体薄膜中に導電率の異なる領域を設け、その後、この半
導体薄膜に交流磁場を印加させて渦電流による加熱を行
い、導電率の違いによる渦電流密度の差により、導電率
が高くなった部分の温度を上昇させて結晶化させ、次第
にこの結晶を固相成長させるようにしたため、半導体薄
膜に印加する交流磁場を制御することによって、半導体
薄膜中の任意の位置に任意の大きさになった結晶領域を
簡単に形成できるようになった。
【0037】また、上記のように半導体薄膜に交流磁場
を印加させるにあたり、この交流磁場の強度を、結晶化
された結晶核の周囲が固相で結晶成長するのに適し且つ
新たな結晶核が発生しないような温度になるように調整
することにより、結晶核の周囲において選択的な結晶成
長が行え、結晶粒界を含まない単一結晶を半導体薄膜中
の任意の領域に簡単に形成できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体薄膜の任意の位置に任意の大きさになっ
た結晶を形成する従来の方法を示した概略図である。
【図2】この発明の一実施例において、アモルファスシ
リコン膜にリンをドーピングさせて導電率が高くなった
種結晶作成部と結晶化部とを形成する工程を示した概略
図である。
【図3】この発明の一実施例において、種結晶作成部と
結晶化部とが形成されたアモルファスシリコン膜に交流
磁場を印加させて、渦電流による加熱を行った場合にお
けるアモルファスシリコン膜の温度状態の変化を示した
図である。
【図4】この発明の一実施例において、アモルファスシ
リコン膜の種結晶作成部と結晶化部とにリンをドーピン
グさせた場合におけるリンのドーピング量の変化を示し
た図である。
【図5】結晶化部の長辺方向の縁部におけるリンのドー
ピング量を少なくしたこの発明の他の実施例を示した図
である。
【図6】結晶化部の周縁部におけるリンのドーピング量
を多くしたこの発明の他の実施例を示した図である。
【図7】種結晶作成部にだけリンをドーピングさせたこ
の発明の他の実施例を示した図である。
【符号の説明】
2 半導体薄膜(アモルファスシリコン膜) 2a 種結晶作成部 2b 結晶化部

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非晶質,微結晶または多結晶の半導体薄
    膜中に導電率の異なる領域を設け、この半導体薄膜に交
    流磁場を印加させて渦電流による加熱を行い、この半導
    体薄膜において導電率の高くなった部分を結晶化して
    相成長させることを特徴とする半導体薄膜の結晶化法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の半導体薄膜の結晶化法
    において、半導体薄膜中に導電率を高める元素を注入さ
    せて、半導体薄膜中に導電率の異なる領域を設けること
    を特徴とする半導体薄膜の結晶化法。
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