JP3220572U - 基材並びに漆およびオルガノアルコキシシラン系材料の層を含む複合材 - Google Patents

基材並びに漆およびオルガノアルコキシシラン系材料の層を含む複合材 Download PDF

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Abstract

【課題】漆材料を保護するとともに安価で扱いやすい基材並びに漆およびオルガノアルコキシシラン系材料の層を含む複合材を提供する。【解決手段】基材11、基材11の表面に、漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層16を有する複合材であるか、基材11、基材11の表面にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層である第1層、並びに第1層上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層、あるいは第1層上に漆液剤の固化層である第2層を有する複合材であり、固化層上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を有し、漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層あるいは漆液剤の固化層は複数積層したものである。【選択図】図1

Description

本考案は、基材上に漆および耐候性等の機能を持つオルガノアルコキシシラン系材料を含む複合材に関する。
漆はウルシノノキ(漆の木)から採取した樹液を加工したウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料であり、塗料や接着剤などに使用されている。塗料として使用される漆として、たとえば黒く輝く漆塗りは伝統工芸でその独特の美しさや風合いを評価され、食器、高級家具や楽器などに使用されている。漆は古来縄文時代から使用されており、工芸職人などの専門家が作製する工芸品として日本各地で広く流通されていて、一般人も漆塗した漆器を作製したいという要求がある。しかし、漆は1本のウルシノノキから約200gしか樹液を採取できないため、高価であることやかぶれることなどから、一般人は敬遠して漆塗りを実践することは余りない。また漆塗りの作業条件として、たとえば乾燥は湿度が75%〜85%、温度が20℃〜30℃に保持された常温多湿の乾燥室(室(むろ)と呼ばれる)で行なっている。このように乾燥条件が特殊であり、しかも長時間の乾燥(長いもので10日間)が必要である。また、漆塗りの美しい塗膜を得るには、漆刷毛やヘラなどの多様な道具を用いて高度な技術を要する職人技が必要である。これらの問題を解決するために、特許文献1において、漆に0.05〜25重量%タンパク質およびアミノ酸を含むタンパク質加水分解物からなるタンパク質関連物質を添加して、漆かぶれおよび低温低湿度で硬化乾燥する改良漆が開示されている。
特開平10−73618 特開2016−056469
特許文献1に開示された改良漆は、漆の量が99.95〜75重量%存在するため価格は低減できない。この改良漆の塗布方法は従来の漆塗りで行なわないと漆の本来の美しさが出ず、依然として職人の技術が必要であり、一般人が簡単に取り組むにはハードルが高いという問題がある。添加されるタンパク質関連物質は強度が低いため漆を保護する材料とはならない。また、漆単独層の場合、その漆塗工品は、湿度が75%〜85%、温度が20℃〜30℃という狭い特殊な条件下で初めて漆は乾燥し、乾燥時間も10日を要する場合があり、生産性・効率が良くない。温度や湿度が高い場合は、急激に乾くために、表面の艶が無く曇った様な状態になり、また湿度が高すぎると成分が急激に固まるため、塗った表面が縮れてしまうので、乾燥時間を短くして生産性・効率を上げることも困難である。通常条件で乾燥処理等して出来上がった漆器は、90日〜数カ月後に硬さが出てきて安定するが、それまでは漆層が比較的柔らかいので傷つきやすいという問題もある。しかも漆塗布〜乾燥処理等までの製品の完成度は職人の長年の経験による所が多く、一般人が漆塗工品を作製するには困難がある。
本考案は、撥水性、強度および耐候性等に優れ、取り扱いが簡単なオルガノアルコキシシラン系材料と漆との混合漆剤で漆層を強化し、漆層の損傷を防止し環境から漆層を保護して長期寿命を持たせた構造を提供する。また一般人(素人)でも漆塗工品を安価にかつ容易に作製できる技術を提供するものである。具体的には以下の特徴を有する。
(1)本考案は、基材、前記基材の表面に、漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層を有する複合材であるか、基材、前記基材の表面にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層である第1層、並びに前記第1層上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層、あるいは前記第1層上に漆液剤の固化層である第2層を有する複合材であり、前記固化層上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を有することを特徴とする。
(2)本考案は、(1)に加えて、前記漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層あるいは漆液剤の固化層は複数積層したものであり、前記複数層の混合液剤の固化層の間に漆液剤の固化層が配置されており、前記混合液剤において、漆液剤の(オルガノアルコキシシラン系液剤+漆液剤)に対する割合は、5〜95重量%の範囲であることを特徴とする。
(3)本考案は、(1)および(2)に加えて、前記オルガノアルコキシシラン系液剤または前記混合液剤の固化層はシロキサン結合を有し、前記オルガノアルコキシシラン系液剤が、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、およびその重縮合物の群から選ばれた少なくとも1種からなり、前記オルガノアルコキシシランが、R1 Si(OR2 )3(式中、R1 は炭素数1〜8の有機基、R2 は同一または異なり、炭素数又は水素数1〜4のアルキル基および/または炭素数5〜7のアルケニル基を表す)で表されるシロキサン結合であり、また前記オルガノアルコキシシランには、さらにR12Si(OR2 )2(式中、R1 は同一または異なり、炭素数1〜8の有機基、R2 は同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基および/または炭素数1〜8のアルケニル基又はフエニル基)で表されるジオルガノジアルコキシシランを含むことを特徴とする。
(4)本考案は、(1)〜(3)に加えて、前記オルガノアルコキシシラン系液剤は、硬化および固化用の触媒を含む液剤であり、前記触媒は加水分解可能な有機金属化合物であり、前記有機金属化合物はチタン、ジルコニウム、アルミニウム、および錫からなる群から選択される1種以上の金属を含む有機金属化合物であり、また前記基材は、有機材料または無機材料またはこれらの混合材料であり、前記有機材料は、紙、木材、ベニヤ、段ボール、布、不織布、皮、革、プラスチック、高分子材料、またはこれらの混合材料であり、前記無機材料は、金属、セラミック、石、コンクリート、絶縁体、半導体、またはこれらの混合材料であり、また、前記基材は、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品であるか、あるいは前記複合材を形成後に型押し、造形し、折り曲げ、各種変形をした加工製品であり、さらに前記基材は、ピアノ、楽器、オーディオ製品の外装基材であることを特徴とする。
基材上に漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤の混合液剤で積層して固化した混合層を持つ複合材において、混合液剤の状態でも漆はオルガノアルコキシシラン系液剤と融合しており、さらに加熱処理・乾燥処理等により漆をオルガノアルコキシシラン系液剤が基材に重縮合し漆を加水分解不可能な置喚基側鎖に有した(シロキサン結合)ガラス皮膜類が被覆している状態となる。また、オルガノアルコキシシラン系液剤は、非常に浸透性が高いので、漆液剤と混合した場合にオルガノアルコキシシラン系液剤が漆液剤中に入り込むことで漆が均一に分散されて均質性の優れた漆+ガラス混合液剤が出来る。この混合液剤を基材に塗布すると、混合液剤は基材表面で綺麗に伸びて塗り上がる。基材ともシロキサン結合をしてしっかりとくっつく。これは、漆が単独で基材に物理的に付着するよりも強い化学結合を有するためであり、外力や環境変化に対しても強い。さらに混合液剤の塗工の厚さをコントロールすることが可能であり、漆の装飾性や高級感も得ることができる。塗工後は固化層がガラス化するので、塗層が非常に安定である。固化層のガラス化に要する時間は漆単体の従来の塗工より短時間であり、製作時間を短縮できる。
シロキサン結合ガラス皮膜は耐候性および耐熱性に優れているので、風雨や空気中の水分、また、食器などは、食洗器の洗浄温水等に触れても(シロキサン結合)ガラス皮膜に被覆された漆を含む層には殆ど影響を与えない。また(シロキサン結合)ガラス皮膜はシロキサン結合(Si−O−Si結合)を有するので機械的強度も強く、外部からの衝撃や外力に対して漆単体より優れた強度を持ち基材を保護する。また、(シロキサン結合)ガラス皮膜は、撥水性があり、水等による漆層のみの機能で生ずる割れや剥離を防止できる。基材へのガラス塗膜は、基材中のOH基との化学的結合に依る強度を持ち、漆層単体では不可能な多大な環境温度変化等により生ずる塗膜の割れや剥離をも防止でき、保存性が優れる。このように、本考案の複合材において、機械的にも環境的にも漆は保護されており、製品の寿命も長くなる。(シロキサン結合)ガラス皮膜は、難燃性(基本的には燃えない)・耐熱性を有するので、基材が燃えやすいもの(たとえば、木材、布、紙)であっても、耐熱性を上げ、更に熱による退色から製品を守る。本漆は稀少で高価な材料であるが漆の量を低減できるので、製品価格を低減できる。また、漆層が(シロキサン結合)ガラス皮膜類に反応保護されていること、あるいは、漆液剤がオルガノアルコキシシラン系液剤の混合液剤となっているため、漆にかぶれにくく一般人も安心して漆材料を扱うことができる。漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を用いた塗工層は、下地基材の自由度が大きく種々の基材に適用でき、漆の質感を容易に生かすことが出来る。さらに、漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を用いた塗工は、漆の風合いをそのまま維持しながら、ガラス質の基材へのシロキサン結合により、乾燥や紫外線にも寒暖の変化にも耐性が強く堅固であり、漆層や混合層の剥離や割れを起こさず、乾燥にも強いので、文化財の保護や、環境条件の厳しい中東、米国やアフリカ等の砂漠地帯でも使用できる。また、水洗も容易で耐湿性もあるので、たとえば製品の汚れも少なく、たとえ汚れても水洗等で製品をきれいに保持できるという効果もある。
図1は、基材上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層を有する複合材を示す図である。 図2は、基材上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層である第1層、並びに前記第1層上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層を有する複合材を示す図である。 図3は、最上層にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を有する複合材を示す図である。
本考案者は、オルガノアルコキシシランから生ずる(官能基側鎖に漆を混合する事で生ずるロキサン結合)ガラス皮膜は強度が大きく被膜保護機能を有することを発見して本考案に想到したものであり、本考案は、漆の良さを保持しつつ、漆の問題点を解決するものである。図1は、本考案の実施形態を示す図であり、第1面(表面または上面とも記載)および第2面(裏面または下面とも記載)を持つ基材11の第1面および/または第2面上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤(を含む液剤)等のシラン系コート液剤(以下、オルガノアルコキシシラン系液剤と記載)を混合した液剤(混合液剤または混合漆塗料ともいう)からなる層(混合層ともいう)16を積層する。すなわち、漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤との混合液剤(混合漆塗料)を作成し、その混合漆塗料を種々の塗布手段により、基材11の面上に積層(塗布)し、漆(液剤)およびオルガノアルコキシシラン系液剤を混合した液剤(混合液剤または混合漆塗料)からなる層16を形成し、必要なら重ねて塗布することもできる。基材11は混合液剤を塗布する前に加熱処理または乾燥しても良い。たとえば、40〜60℃、乾燥した大気中、不活性ガス中(たとえば、N2、希ガス)で2〜10時間で乾燥する。混合した液剤(混合液剤または混合漆塗料)からなる層16を塗布積層した後、適切な熱処理を行ない混合した液剤(混合液剤または混合漆塗料)からなる層の固化層16を形成する。重ね塗布の場合、それらの間に加熱処理または乾燥して固化層をその都度形成しても良い。本考案では、基材11と固化層16の構造材を複合材と呼ぶ。(尚、図2および図3で示す場合、本明細書に記載する基材上に複数の固化層を形成した基材とこれらの固化層を含む構造材も複合材と呼ぶ。)
基材11は、有機系材料または無機系材料、またはこれらの混合材料である。有機系材料は、主として有機物から構成される材料であり、たとえば、高分子材料、プラスチック、樹脂、ゴム、皮、革、布・織物・編物等の布帛、織布、不織布、紙(和紙、洋紙、機能紙、一般紙等)・木材・ベニヤ・段ボール・コルク等のセルロース系素材、その他各種繊維類等、これらの混合材料が挙げられる。ここで混合材料とは、これらの材料が積層したもの、これらの材料がモザイク状に混合したもの、あるいはこれらの材料が混合して混然一体となったものなどを指す。無機系材料は、主として無機物から構成される材料であり、たとえば、金属、半導体、有機物以外の絶縁体、石、岩、ガラス、コンクリート、セラミックス、無機繊維等、これらの混合材料が挙げられる。あるいは、有機系材料と無機系材料の混合材料でも良い。また、これら有機系材料または無機系材料の多孔質体でも良い。基材11の形状は、板状、角状、棒状、お椀状、円錐状、球状、楕円状、その他種々の曲線形状体、シート状、フィルム状等が挙げられ、この状態で破壊せずには変形できないものや変形可能なものも含まれる。
変形可能な例として、たとえば紙・布等のシートやフィルムのように折り曲げたり、丸めたりできるものが挙げられる。たとえば、基材は、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品でも良い。あるいは、自然に曲線形状体となったものでも良い。たとえば、木(折れ木、枯れ木を含む)、植物(枯れたもの、落下したものも含む)、動物(死体、皮、骨も含む)、化石でも良い。あるいは建造物、各種構造物、それらの壊れ物、遺跡でも良い。あるいは、複合材を形成後に各種加工をした加工製品にすることもできる。たとえば、複合材を作製後に、複合材を型押し、造形し、折り曲げ、その他各種変形をした加工製品でも良い。基材の厚さは特に限定されないが、シート状やフィルム状の場合にはたとえば5μm〜5mm、板状の場合にはたとえば50μm〜50mmである。また基材の第1面・第2面の面積は特に限定されず、任意の大きさを選択できる。本考案は、従来の漆単独を用いた漆器の代用にもなるものであるから、従来の漆器に用いられる材料にも適用できる。たとえば、木、竹、布、皮、紙、合成樹脂、ガラス、セラミックス、プラスチック等が挙げられる。基材11は混合液剤等を塗布する前に加熱処理または乾燥しても良い。たとえば、40〜60℃、乾燥した大気中、不活性ガス中(たとえば、N2、希ガス)で2〜10時間で乾燥しても良い。
本考案で用いる漆(液剤)について説明する。たとえば、樹液はウルシ科のウルシノキ(漆の木)やブラックツリーから採取する。これらの幹の表面に切り込みを入れて、染み出す樹液を容器に貯める。この樹液を「あらみ」と言う。樹液の採取は樹液を盛んに出す5月〜11月が適している。幹の太さにより取れる樹液の量は異なるが、1本の木から樹液は約200g取れる。あらみには、樹皮やゴミなどが混ざっているので、少し加熱して流動性を上げてからろ過をする。ろ過済みの樹液は「生漆(きうるし)」と言われる。次に生漆を精製する。生漆の精製工程は、「ナヤシ」と「クロメ」の2つの工程に区分される。ナヤシとは、攪拌機で良く摺り合わせて均一の状態にして塗膜を緻密で平滑にし、光沢を持たせたり艶を消したりする工程である。クロメとは、ナヤシをした漆から余計な水分を取り除くため40〜45℃で加熱して、3〜4時間攪拌し、残留水分をたとえば2〜3%にする工程である。これらの工程で用途や品質に合わせて油分や鉄分等の添加剤が加えられて精製漆となる。本考案で使用する漆(液剤)は、たとえばこれら2つの工程を経た精製漆が使用される。
精製時に鉄分を添加したものは黒漆(くろうるし)と呼ばれ、ウルシオールなどとの化学反応により、黒色を出すことができる。精製時に何も添加しないものは透漆(すきうるし)であり、色の薄い精製漆であり、この透漆に必要に応じて顔料(たとえば、朱色(辰砂)、酸化チタン系顔料(レーキ顔料))を加えて、色付けができる。本考案で使用する漆(液剤)は、これら黒漆(くろうるし)、透漆(すきうるし)、顔料添加透漆等各種漆液剤が使用される。また、精製漆には油(たとえば、天然の乾性油・ロジン)を添加した有油系と油を添加しない無油系の2系統がある。一般に有油系は発色・つやが良く加飾や上塗りに用いられる。無油系は研磨(研ぎ出しや蝋色仕上げなど)に向いている。本考案で使用する漆(液剤)は、有油系および無油系の両方が使用される。
次に、本考案で用いるオルガノアルコキシシラン系液剤について説明する。オルガノアルコキシシラン系液剤は、(a)オルガノアルコキシシラン類、その加水分解物、およびその重縮合物の群から選ばれた少なくとも1種を主成分として含む。(a)オルガノアルコキシシラン類としては、式(1);R1 Si(OR2 )3 (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基および/または炭素数1〜4のアシル基および/または炭素数5〜7のアルケニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(1)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物が挙げられる。(a)成分は、エマルジョン(コロイド状も含む)でも、溶剤系でもよい。また、(a)オルガノアルコキシシラン類には、式(2);R12 Si(OR2)2(式中、R1 は同一または異なり、炭素数1〜8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基および/または炭素数1〜4のアシル基および/または炭素数1〜8のアルケニル基又はフエニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(2)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物を(a)成分中、50重量%以下程度併用することができる。
オルガノアルコキシラン類は、水の存在により酸またはアルカリの存在下もしくは非存在下で加水分解および重縮合して高分子量化するものであり、その塗膜は加熱下または常温下で硬化または固化する。オルガノアルコキシシラン類の加水分解触媒となる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸なとどが挙げられる。また、加水分解触媒となる塩基としては、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。なお、これらの通常の触媒を用いる場合には、加水分解の際に、反応水を共存させる。このように、オルガノアルコキシラン系液剤等のシラン系コート液は、触媒及び反応水を含むものである。ただし、通常使用する場合には特に問題は生じないが、これを長期保存する場合、反応水によってコート液がゲル化し易い、という問題がある。これを解決するためには、上記したような通常の触媒ではなく、触媒として加水分解可能な有機金属化合物を用いると良い。加水分解可能な有機金属化合物を使用すれば、反応水を共存させる必要はなくなり、長期保存安定性が良くなる。有機金属化合物として、たとえば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、または錫を含むものや、これらの金属を2種以上含むものも挙げられる。
オルガノアルコキシシラン(1)は、前記式中のR1 が炭素数1〜8の有機基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−アミノプロピル基などであり、また式中のR2 は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基および/または炭素数1〜4のアシル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アセチル基、エポキシ基、グリシジル基などである有機シラン化合物である。
これらのオルガノアルコキシシラン(1)の具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシランなどを例示できる。
これらのオルガノアルコキシシラン(1)は、1種の単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。好ましくは、メチルトリメトキシシランおよび/またはメチルトリエトキシシランを使用する。また、(a)成分としては、このオルガノアルコキシシランを、あらかじめ酸またはアルカリの存在下もしくは非存在下で加水分解した加水分解物、該加水分解物をさらに熟成して重縮合した重縮合物を使用することもできる。重縮合の度合いとしては、2〜10分子程度の重縮合体が挙げられる。
(a)成分を構成するオルガノアルコキシシラン(2)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどや、これらの化合物の2〜10分子程度の重縮合体を例示することができる。オルガノアルコキシシラン(2)の使用量は、(a)成分中に50重量%以下程度であり、50重量%を超えると、オルガノアルコキシシラン(1)とうまくシロキサン結合が生成せず好ましくない。オルガノアルコキシシラン(2)の使用量は、(a)成分中に、50重量%以下、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%程度ある。(a)成分中に、オルガノアルコキシシラン(2)を併用すると、得られる塗膜に柔軟性を付与することができる。
本考案の(a)成分は、オルガノアルコキシシラン類を水の存在下で、加水分解触媒として、酸や塩基などを用いて、加水分解、重縮合させるから、得られる(a)成分は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その重縮合物の混合物となり、反応水と生成するアルコール類の混合系であって、その形態は、溶剤系、エマルジョン、もしくはコロイド状である。本考案の(a)成分は、オルガノアルコキシシラン類を水の存在下で、加水分解触媒として、酸や塩基などを用いて、加水分解、重縮合させるから、得られる(a)成分は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その重縮合物の混合物となり、反応水と生成するアルコール類の混合系であって、その形態は、溶剤系、エマルジョン、もしくはコロイド状である。
(a)成分の加水分解、重縮合には、有機金属化合物を触媒として用いることもできる。この例示としては、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウムあるいはスズの錯体であり、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられる。
オルガノアルコキシシラン系液剤は、親水性有機溶剤を含んでも良く、この親水性有機溶剤は(a)オルガノアルコキシシランの加水分解調整剤として使用する。ここでの親水性有機溶剤は、(a)成分を構成するオルガノアルコキシシランの加水分解で生成するアルコールも含む。本考案で使用する親水性有機溶剤は、アルコール類、グリコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類などである。アルコール類としては、炭素数1〜8の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−n−ペンタノールなどが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールが挙られる。エステル類としては、前記アルコール類およびグリコール類のギ酸、酢酸、プロピオン酸などのエステル、具体的にはギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどを例示できる。
エーテル類として、前記アルコール類およびグリコール類のアルキルエーテルなど、具体的にはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
オルガノアルコキシシラン系液剤中の親水性有機溶剤の配合割合は、たとえば、10〜60重量%、好ましくは10〜50重量%である。有機溶剤の配合割合が、10重量%未満では液の粘度が上昇しすぎ、保存安定性が低下し、一方60重量%を超えると保存安定性は向上するものの、コート液中の固形分濃度が小さくなり得られる塗膜の乾燥速度および加水分解速度が低下し、硬化に長時間を要するので好ましくない。
オルガノアルコキシシラン系液剤には、(a)オルガノアルコキシシランの加水分解剤として水(H2O)が含まれる。この水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、基材内水分のOH基成分を使用できる。また、(a)アルキルアルコキシシランの加水分解により生成する水も包含される。また、空気中の水分を利用する場合もある。オルガノアルコキシシラン系液剤中の水の配合割合は、たとえば2〜50重量%であり、好ましくは5〜20重量%である。水の配合割合が、2重量%未満では、(a)オルガノアルコキシシランの加水分解が十分に生起し難く、一方50重量%を超えるとコート液の安定性が低下し、また塗膜の乾燥速度が低下するので好ましくない。
また、オルガノアルコキシシラン系液剤には、その他の充填材を配合することもできる。これらの他の充填材としては、例えば有機顔料もしくは無機顔料などの非水溶性の一般的な顔料または顔料以外の粒子状もしくは繊維状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物の1種または2種以上のものである。具体的には鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化銅、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化セリウム、酸化バリウム、酸化アンチモン、水酸化クロム、モリブデン赤、モリブデン白、マンガンバイオレット、紺青、エメラルドグリーン、タングステンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本考案のオルガノアルコキシシラン系液剤中には、上記のように、酸を添加することが好ましい。酸は、コート液のpHを7未満の酸性領域に調整し、(a)成分の加水分解を促進するとともにコーティング後の塗膜の硬化促進の働きをするものである。この種の酸としては、硝酸、塩酸などの無機酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、マレイン酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、グルタル酸、グリコール酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸を挙げることができる。これらの酸のうち、特に酢酸が好ましい。これらの酸は、1種または2種以上を併用することができる。酸の組成物中の配合割合は、オルガノアルコキシシラン系液剤中、(a)成分を構成するオルガノアルコキシシランに対し、たとえば0.1〜3重量%程度である。これにより、コート液のpHを7未満、好ましくは3.5〜5.5に調整することが可能となる。酸の含有量が、0.1重量%未満では(a)オルガノアルコキシシランの加水分解およびコーティング後の塗膜の硬化が充分でなくなり、一方3重量%を超えると塗膜になったとき残存酸が多くなり好ましくない。
さらに、本考案のオルガノアルコキシシラン系液剤には、各種界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、金属アセチルアセトネート、またナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩、チヌビン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などの安定剤などの従来公知のその他の添加剤を添加することもできる。また、木酢油が放つ独特の臭気を緩和する消臭剤や心地良い臭いを出して木酢油が放つ独特の臭気をマスキングする芳香剤を加えることもできる。前記成分および必要に応じて酸などの添加剤を含み、そのpH7未満の酸性領域での固形分濃度が10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%のエマルジョンあるいはコロイダル状の液状組成物である。固形分が10重量%未満では、1回の塗布で十分な厚さの塗膜が得られず作業性が悪化したり、塗膜強度が低すぎたりし、一方40重量%を超えるとゲル化し易く粘度が上昇し、密着性が悪化し、さらには均一な膜厚の塗膜が得られ難くなり好ましくない。本考案のオルガノアルコキシシラン系液剤は、例えば溶液系、あるいはエマルジョン系もしくはコロイド状の(a)成分(親水性有機溶剤や水を含む)に、必要に応じて酸成分や他の充填剤を加え、ロールミル、ボールミル、攪拌機などを用いて十分に分散させて調製することができるが、この調製方法に限定されるものではない。
漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤との混合液剤における割合は、使用目的に応じて漆の効果や寿命等を最適化する組合せで適宜選択すれば良いが、重量%(漆液剤/(オルガノアルコキシシラン系液剤+漆液剤))で好適には5%〜95%の範囲である。5%未満では漆の風合い等の効果が薄れてしまい、95%を超えるとオルガノアルコキシシラン系液剤の効果が発揮されない。ただし、漆の効果やオルガノアルコキシシラン系液剤の効果を余り要求しない場合はこれらの範囲外の組成でも良い。漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤とを適量容器に投入して自動または手動で攪拌し、充分に混ぜ合わせて混合液剤を作成する。この時、アルコールやエーテル等の他の溶媒や漆液剤のうすめ液(たとえば、テレピン油、片脳油、樟脳)を加えても良い。基材表面への混合液剤の積層塗布は、スピンコート、刷毛塗り、スプレー、散布、吹き付け、ディッピング、ロールコート、印刷、スキージなどの塗布手段を用いることができる。このように、混合漆塗料の場合は、塗布方法も種々の手段を用いることができるので、職人だけでなく一般人も簡単に塗布でき、また生産性や効率性を簡単に上げることができる。また、高価な材料である漆の量を低減できるので、材料価格および製品価格を低減できる。もちろん、従来の漆液剤の塗布方法も使用できる。たとえば、ヘラ、刷毛、スプレー等を使い下塗り、中塗り、および上塗りをして、混合液剤層を形成する。これらの工程の前後に研ぎや磨きを入れたり、その他の手法(たとえば、蒔絵用金属粉を付ける・金箔を貼る等)を加えたりすることもできる。
これらの工程を繰り返し行い、必要なら、混合液剤層を何層か重ねて積層しても良い。積層塗布後に加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等を行ない、混合液剤層を固化または硬化する。1回の塗布で所定量または所定厚みの混合液剤層を形成できないときは、複数回の塗布または積層を行なっても良く、その場合、上記塗布方法を組み合わせて使用することもできる。また重ね塗布の場合、1回毎、または複数回毎に加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等を行なっても良い。この場合混合層は複数の混合層の集まり(混合層の積層体)である。加熱処理は、不活性ガス(たとえば、窒素、アルゴン等)や空気雰囲気で、また減圧下・加圧下・常圧下で、50℃〜200℃にて5分〜120分間程度行なうのが良く、また常温乾燥の場合は、およそ半日〜6日間の放置で良い。重ね塗布の場合における中間熱処理・中間乾燥処理等では、混合液剤層は充分に固化しなくても、最終熱処理で充分に乾燥固化すれば良い。尚、最終熱処理でも固化が不十分でも自然放置で混合液剤層を十分に固化することもできる。また、用途によっては混合液剤層は十分に固化しなくても良い場合もある。また、加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等は、混合液剤層16の状態(厚み、量、固化や液化程度等)、あるいは製造条件や作業条件等によって適宜変更することができる。このように、混合液剤層を熱処理・乾燥処理等を行なうと、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は、シロキサン反応により(3段階の反応式(i)Si-OR+HO→Si-OH+ROH、(ii)Si-OH+HO-Si→Si-O-Si+HO、(iii)Si-OH+RO-Si→Si-O-Si+ROH)固化し、ガラスの基本骨格であるシロキサン結合が生成され、(すなわち、シロキサンネットワークポリマーが形成され)、硬化層が形成される。(特許文献2)このアルコキシシランのシロキサン結合反応により、基材の持つOH基に、あるいは空気中のOH基に反応してシロキサン結合ができ基材と、そのシロキサンに漆が結合して、すなわちシロキサンネットワークポリマーに漆が取り込まれていると考えられ、混合(塗膜)層16が生成される。すなわち、混合(塗膜)層は基材とシロキサン結合してしっかりとくっつき、漆が単独で基材に物理的に付着する場合よりも強い結合であるから、外力や環境変化に対しても強い。
基材表面への混合液剤の積層塗布は、漆塗りの従来方法を用いて行なっても良い。たとえば、ヘラ、刷毛、スプレー等を使い下塗り、中塗り、および上塗りをして、混合液剤層16を形成する。これらの工程の前後に研ぎ、磨き、熱処理や乾燥処理等を入れたり、その他の手法(たとえば、蒔絵用金属粉を付ける・金箔を貼る)を加えたりすることもできる。さらに顔料入りや混錆入り等の漆液剤を混合して色づけもでき、各種の漆技法に用いられる従来技法も採用しても良い。これらの工程を繰り返し行い、必要なら、これらの層を何層か重ねて積層しても良い(混合層の積層体)。また、これらの混合液剤層(またはそれらの固化層)の間に漆液剤層の単独層を1層または複数層挿入することもできる。また、オルガノアルコキシシラン系液剤中の(a)成分を漆液剤に混ぜた後にオルガノアルコキシシラン系液剤中に含まれる成分を添加することもできる。あるいは、その他の方法(たとえば、ディップ(浸漬)、スクリーン印刷、スピンコーター)を用いて混合液剤層を塗布することもできる。この後加熱処理や乾燥を行ない、塗布した漆層を固化する。たとえば、乾燥条件は15℃〜30℃、湿度20%〜85%(雰囲気は空気中の湿度)で乾燥時間は1日〜10日である。乾き具合を見て適宜条件変更することもできる。また、重ね塗りの場合はその都度加熱処理や乾燥処理等を行なっても良い。図1に示す混合液剤層(の固化層)16はこれらの工程を経た層である。
混合液剤層(の固化層または混合層)16の厚みは、基材の厚さにもよるが、たとえば5μm〜5mmであるが、用途に応じて、また基材の位置に応じて適宜厚みを変更しても良い。1回の塗布で所定量または所定厚みの塗布層16を形成できないときは、複数回に分けて重ねて塗布層16を形成することもでき、その間および/または最後に加熱・乾燥処理・湿度調整処理等を行なっても良い。(この場合混合層の積層体となる)加熱処理は、たとえば20℃〜100℃、湿度30%〜90%、雰囲気は窒素、不活性ガス、空気であり、圧力は加圧、常圧、減圧で、時間は10分〜1日で行なうことができる。シロキサン結合混合液剤での好適な熱処理条件は、30℃〜80℃、湿度40〜80%、時間は30分〜5時間、最適には40℃〜60℃、湿度50〜70%、時間は90分〜3時間である。塗工後は、混合層はガラス化することで混合層内の塗が安定し、ガラス化に要する時間は、従来の漆単独に比べて1/2〜1/10と非常に短くなり、作業時間が大幅に短縮する。必要に応じて重ね塗りもできるが、同じ効果を得るのに漆単独の場合に比べて薄くすることもでき、また重ね塗りの回数も少なくて済む。漆剤液層単独の場合よりも加熱処理や乾燥条件の自由度が大きく、処理時間も短時間で済むので生産性が高く効率も良い。重ね塗りの場合の中間熱処理ではその塗布層を固化(硬化)しても良いし、固化がやや不十分な状態でも良い。また、1日〜1週間の自然乾燥を行なうこともできる。基材の変形温度が高い場合は、上記温度より高くすることもでき、短時間処理が可能となる。最終熱処理および最終処理により混合層は充分に固化することが望ましいが、用途によっては固化が十分でなくても良い。自然放置により時間経過で反応硬化は完成する。このように、混合漆塗料を使用して基材に混合漆塗料層を形成することによって、漆単独のときよりも熱処理条件の自由度が大きくてしかも短時間熱処理で混合漆塗料層を硬化することができる。従って、職人だけでなく一般人も簡単に加熱処理して製品作製ができ、また生産性や効率性を簡単に上げることができる。
これらの混合液剤では、混合液剤の状態すなわちミクロな状態で漆液剤がオルガノアルコキシシラン系液剤により被われた状態になっていると考えられる。すなわち、オルガノアルコキシシラン系液剤は非常に浸透性が高いので、漆液剤と混合した混合液剤ではオルガノアルコキシシラン系液剤が漆液剤中に入り込むことによって、漆が混合液剤中に均一に分散されて均質性の優れた漆とガラス液剤の混合液剤ができる。この混合液剤を基材に塗布すると混合液剤は基材表面できれいに伸びて塗りあがる。熱処理や乾燥により、アルコキシシランのシロキサン結合反応により、基材の持つOH基に、あるいは空気中のOH基に反応してシロキサン結合ができ、基材とそのシロキサンに漆が結合していると考えられ、混合塗膜16が生成される。すなわち、混合塗膜は基材とシロキサン結合してしっかりとくっつき、漆が単独で基材に物理的に付着する場合よりも強い化学結合であるから、外力や環境変化に対しても強い。混合塗膜の厚さも適当にコントロールできるので、漆の装飾性や高級感、風合い等も得られる。基材11が多孔性の繊維等である場合は、混合液剤の一部はそれらの孔を通して繊維11の内部に浸透して固化する。(図1(b)の破線矢印18で示す。)従って、混合液剤による固化層(硬化層)16は基材11の内部と基材11の表面に形成される。このため基材11の表面に形成される混合液による固化層16は基材11との密着性が特に良い。また、(シロキサン結合)ガラス皮膜は、難燃性(基本的には燃えない)・耐熱性を有するので、基材が燃えやすいもの(たとえば、木材(木の器))であっても、熱から製品を守る。また、漆かぶれに対しても漆液剤がオルガノアルコキシシラン系液剤により被われた状態になっているため、しかも漆のオルガノアルコキシシラン系液剤に対する割合が低いため、漆にかぶれにくく一般人も安心して混合液剤を扱うことができる。
オルガノアルコキシシラン類が固化(硬化)したオルガノポリシロキサンは強固な膜であるから、混合層による固化層(硬化層)16も強固となり外部からの衝撃等に対しても強く、傷がつきにくい。さらに、オルガノポリシロキサンの層は酸やアルカリ、水分等に対しても耐性があるので、耐環境性も優れている。以上のように混合漆塗料を使用することによって、簡単に誰でも漆層を基材に塗布して硬化でき、しかも安価である。また製品も食洗器や乾燥器の使用もでき、電子レンジで製品に入れた品物を暖めて(基材成分がセルロース系の場合は2分以内)も変質やひび割れを起こさない。高温の物を基材上の混合層上に置いても混合層は変色もせず、また混合層の膜強度が高いので、製品を重ねても損傷することもない。さらに、環境変化による塗膜剥離も起きないし、防菌・防カビ性も有している。このように、従来の漆単独層では不可能な処理も可能となる。混合層は基材とのシロキサン結合により密着性が大きいので、従来は適用できなかった基材、たとえば、城壁やビルディング等のコンクリート等の部分に混合液剤を塗布固化して混合層を形成し、漆の効果を発揮できる。本考案は、ピアノやオーディオ製品の外装や、インテリア製品や自動車の内外装にも適用でき、文化財の保護や、漆の持つ美感や高級感等の効果を発揮して付加価値を増大できる。たとえば、ピアノの蓋等の外装基材の塗膜として、従来のピアノブラック塗装に使用される塗料(たとえば、ウレタン塗料、ポリエステル塗料)の代わりに本考案の塗膜を使用して、従来以上の質感や高級感等の効果を出すこともできる。
図2は、本考案の別の実施形態を示す図で、基材11の表面の一部、または全部にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層である第1層22、並びに前記第1層22上の一部または全部に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層23を有する複合材を示す。基材11、オルガノアルコキシシラン系液剤、および漆液剤の組成、材質等は図1で説明した内容と同様である。基材の種類によっては基材と漆液剤との密着性が余り良くない場合もあり、あるいは、混合液剤のうちでも漆液剤の割合が高くなると漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層16が基材11から剥がれ等の問題が生じる恐れもある。一方、オルガノアルコキシシラン系液剤は基材の種類によらず密着性が良い(すなわち、基材とシロキサン結合して強固に基材と密着する)ので、基材11上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層22を形成し、その後漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層(混合層)23を形成する。第1層と第2層もシロキサン結合して強固に密着するので、基材11の種類によらず安定した漆の風合いを長期に保持することができる。図1において説明したように混合層は混合層の積層体でも良い。
基材11の表面に、(必要なら基材11を乾燥処理や熱処理、あるいは湿度調整処理等の前処理を行なった後に)オルガノアルコキシシラン系液剤(を含む液剤)等のシラン系コート液剤(以下、オルガノアルコキシシラン系液剤と記載)を積層する。オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層22の厚みは、かなり薄くてもその上の混合液剤の固化層23の密着性は向上するが、液剤の費用も考慮すると、5μm〜10mm程度が良く、好適には100μm〜5mmである。オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層の積層は、スピンコート、刷毛塗り、スプレー、散布、吹き付け、ディッピング、ロールコート、印刷、スキージなどの塗布手段を用いることができる。1回の塗布で所定量または所定厚みのオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を形成できないときは、複数回の塗布または積層を行なっても良く、その場合、上記塗布方法を組み合わせて使用することもできる。また重ね塗布の場合、1回毎、または複数回毎に加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理を行なっても良い。この場合オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は、複数のオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層が積層したオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層(その固化層を含む)の積層体となる。加熱処理は、不活性ガス(たとえば、窒素、アルゴン等)や空気雰囲気で、減圧下・加圧下・常圧下で、50℃〜200℃で5分〜120分間程度行なうのが良く、また常温乾燥の場合は、1〜6日間の放置で良い。重ね塗布の場合における中間熱処理・中間乾燥処理・湿度調整処理等では、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は充分に固化しなくても良く、最終熱処理で充分に固化すれば良い。尚、最終熱処理でも固化が不十分でも自然放置でオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を十分に固化することもできる。また、用途によってはオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は十分に固化しなくても良い場合もある。このように、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は熱処理・乾燥処理等を行なうと、シロキサン反応により(3段階の反応式(i)Si-OR+H2O→Si-OH+ROH、(ii)Si-OH+HO-Si→Si-O-Si+H2O、(iii)Si-OH+RO-Si→Si-O-Si+ROH)固化し、ガラスの基本骨格であるシロキサン結合が生成され、(すなわち、シロキサンネットワークポリマーが形成され)、硬化層22が形成される。(特許文献2)
次に、オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層(第1層)22上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤を積層し、熱処理等を行ない、混合液剤の固化層(第2層)23を形成する。この条件は図1で述べた内容と同様で良い。図1の説明でも述べたように混合液剤の固化層の間に複数層の漆単独層を含んでも良い。第1層と第2層に同じ材料であるオルガノアルコキシシラン系液剤が使用されて、第1層と第2層は強固なシロキサン結合が多く強固に密着しているので、第2層の厚みは図1に示した場合と比較して、同じ特性(たとえば、漆としての風合い)に対して、その厚みを減らすこともできる。従って、図1に示す混合液剤の固化層だけの場合に比べて(高価な)漆の量を減らすことができるので、漆液剤の材料費を低減できる。あるいは、第2層23はオルガノアルコキシシラン系液剤を含まない液剤、すなわち、漆液剤だけの固化層でも良い。漆は、粘度が高いので、必要に応じてうすめ液(たとえば、テレピン油、片脳油、樟脳)で薄めて塗りやすくすることもできる。ヘラ、刷毛、スプレー等を使い下塗り、中塗り、および上塗りをして、漆層を形成する。これらの工程の前後に研ぎや磨きを入れたり、その他の手法(たとえば、蒔絵用金属粉を付ける)を加えたりすることもできる。これらの工程を繰り返し行い、必要なら、漆層を何層か重ねて積層しても良い。第1層のオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層と漆の密着性や濡れ性は良く、また漆層を固化した後には漆層と下地のオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層とはシロキサン結合によりしっかりと固着しているので、従来用いられている漆層だけの層を薄くできる。たとえば、従来の漆層の半分以下にすることもでき、高価な漆の量を少なくできる。また、従来漆単独の重ね塗りしたものでも、半分以下の重ね塗りで済む。あるいは、その他の方法(たとえば、ディップ(浸漬)、スクリーン印刷、スピンコーター)を用いて漆層23を塗布することもできる。この後加熱処理や乾燥を行ない、塗布した漆層を固化する。たとえば、乾燥条件は15℃〜30℃、湿度75%〜85%(雰囲気は空気)で乾燥時間は1日〜10日である。乾き具合を見て適宜条件変更することもできる。また、重ね塗りの場合はその都度加熱処理や乾燥処理や湿度調整処理を行なっても良い。図2に示す漆層23はこれらの工程を経た漆の層である。漆層23の厚みは、たとえば5μm〜5mmであり、用途に応じて、基材の位置に応じて厚みを変える場合もある。
図3は、別の実施形態を示す図であり、最上層にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を備えた複合材を示す。図3(a)は、図1に示す構造、すなわち、基材11上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層16を形成した複合材にさらにオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層(混合層)24を形成した複合材を示す図である。図3(b)は、図2に示す構造、すなわち、基材11上に第1層22、第1層22上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層23を形成した複合材にさらにオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層25を形成した複合材を示す図である。これらの固化層24および25のオルガノアルコキシシラン系液剤の組成や形成条件等の内容はこれまでに記載したものと同様である。あるいは、第2層23が漆層である場合にも、この複合材の上にさらにオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層25を形成することもできる。尚、図3(a)に示す構造で、第1層目が漆層、第2層目(最上層)がオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層25でも良い。第1層目の漆層の形成は前述の記載したものと同様であり、下塗り、中塗り、上塗り等の重ね塗り(漆層の積層体)を使用することもできる。この場合、この後第2層でオルガノアルコキシシラン液剤を反応固化した固層(硬化層)で第1層を被い、第1層の漆層を保護するので、従来用いられている漆層だけの第1層を薄くできる。たとえば、従来の漆層の半分以下にすることもでき、高価な漆層の量を少なくできる。また、従来重ね塗りしたものでも、半分以下の重ね塗りで済む。基材11上に所定量または所定厚み(基材の場所により厚みが異なっても良い。)の漆層(第1層)を塗布し、漆層(第1層)を硬化する熱処理や乾燥処理や湿度調整処理等を行なって、漆層(第1層)を硬化した後に、漆層(第1層)上にオルガノアルコキシシラン系液剤(を含む液剤)等のシラン系コート液剤(本明細書では、オルガノアルコキシシラン系液剤とも記載)を積層(塗布)し第2の層(オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層)13を形成する。次に熱処理や乾燥処理等を行ないシラン系コート液剤の層を固化する。重ね塗り(積層塗布)した場合、その都度熱処理や乾燥処理等を行なっても良い。
オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を熱処理後または乾燥後は、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤の混合液剤の固化層(混合層)を被覆するように固化する。混合層が充分に固化せずにオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を積層し熱処理・乾燥した場合は、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層にも混合層が浸透し、混然一体となる場合もある。たとえば、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層に生じる気孔に混合層が浸透して固化する。オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を積層した後の熱処理・乾燥工程で、浸透性の強いオルガノアルコキシシラン系液剤が浸透した混合層を包み込み薄膜を形成する。すなわち、オルガノアルコキシシラン系液の重縮合により生成したシロキサン結合ガラス薄膜の内側に浸透した混合層を保持した状態となる。このように、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層(熱処理後または乾燥後において液状部分は殆どなくなるが、便宜上同じ名称で記載する)は、下地混合層16、23を被覆するだけでなく、浸透した混合層も浸透反応被覆する。従って、下地混合層と最上層との間はシロキサン結合で強固に結合している。尚、漆層の上にオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層を形成した複合材も加熱処理・乾燥処理・湿度調整処理等により漆層をシロキサン結合してできたガラス質薄膜が被覆している状態である。漆層の有するOH基等にもオルガノアルコキシシラン系液剤の層がシロキサン結合しているので漆層(固化層)とオルガノアルコキシシラン系液剤の層(固化層)の密着性は極めて良い。
硬化した漆層の硬度は、モース硬度で3〜4で比較的硬いが、小刀はもちろんのこと爪で傷つく場合もある。また混合層は漆単独層よりは硬いが、オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層(モース硬度で6〜7)よりは柔らかく、特に漆液剤の混合比率が低いほど混合層の硬度は低い。従って、混合層が最上層にある複合材は損傷しないように大事に扱う必要がある。しかし、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層24、25は固化(硬化)後ガラス質のシロキサン結合を有するので強固であり耐熱性や耐摩耗性や強度や硬度が大きく強靭であるので、本考案の構造、すなわち混合層をオルガノアルコキシシラン系液剤を固化したシロキサン結合のガラス層で被覆すれば、よほどの外圧でも傷つかないようにすることができる。また、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層24、25は固化後ガラス質のシロキサン結合を有するので耐環境性(耐光性、耐熱性、難燃性、撥水性、耐水性、耐酸性、耐酸化性等)も優れている。さらに、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層24、25の固化後のガラス質は可視光に対して透明であるから、下地の混合層12の風合いに影響しない。尚、最上層としての混合層の厚みは存在すればそれだけで効果があるが、好適には100μm〜5mmの厚みであれば良い。最上層であるオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層24、25の下層が漆層の場合も同様である。特に漆層単独層の場合は、混合層よりも柔らかいので傷がつきやすいが、本考案のように上層をオルガノアルコキシシラン系液剤を含む層で被覆することによって損傷しにくくなる。
従って、本考案の最上層にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を使用することによって、妖艶な美しさを保持しながら漆器等の漆材を長期間傷つかないように複合材を保護できる。しかも混合層等が最上層の場合は強度保持のため混合層の厚みをある程度厚くする必要があるが、本考案では混合層等の厚みを薄く、たとえば混合層等が最上層の厚みの半分程度に、塗布できるので、高価な漆層の材料費を低減できる。本考案の構造は、漆工芸技法の1つである蒔絵・金箔にも適用できる。蒔絵は、漆器の表面に漆(混合層)で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を「蒔く」ことで器面に定着させる技法であるが、この蒔絵の上に最上層となるオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布し、熱処理や乾燥を行ないオルガノアルコキシシラン系液剤の層を固化する。これによって、蒔絵や金箔をシロキサン結合のガラス質層で保護し、容易に傷つかないようにでき、長期間の使用でも劣化が小さく製品の長寿命化を実現できる。さらに、最上層のシロキサン結合を有するガラス質層は、難燃性および耐熱性を有するから、火災の危険性も小さい。
以上詳細に説明した様に、基材上に漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤との混合液剤で基材上に混合層を形成したり、基材上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を形成した後に混合層等を形成したり、あるいはこれらの複合材の最上層としてオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を形成したりすることによって、基材上に塗布積層した漆単独層の問題点を解決することができる。また、漆液剤とオルガノアルコキシシラン系液剤の混合液剤や、オルガノアルコキシシラン系液剤の浸透により、基材の内部あるいは空気中のOH基に重縮合反応し基材内部から生ずるシロキサン結合の堅固なガラス質が持つ科学的生成機能効果により、基材と混合層やオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層と基材とが強固に付着する。漆は自然界に存在する天然製であり、またオルガノアルコキシシラン系液剤を熱処理して得られるシロキサン類(一般式:R3SiO−(R2SiO)n−SiR3)も無害であるから、地球環境や人体に影響を与えないので、本考案で使用する材料は地球にやさしく、安心して使用できる材料である。燃焼時にも有害なガスの発生は無い。
尚、これまでに示した、漆およびアルコキシシランを含む層等を有する基材等を本考案では、基材を含めて複数の層を有するので複合材と呼ぶ。本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本考案の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。また本考案で使用される漆やオルガノアルコキシシラン系物質や組成については他の文献に記載された内容も含まれることは言うまでもない。
本考案は、漆類を用いるすべての製品へ適用することができる。
11・・・基材、16、23・・・漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む材料からなる層またはその固化層(混合層)、18・・・浸透、22、24、25・・・オルガノアルコキシシラン系液剤を含む材料からなる層またはその固化層


次に、本考案で用いるオルガノアルコキシシラン系液剤について説明する。オルガノアルコキシシラン系液剤は、(a)オルガノアルコキシシラン類、その加水分解物、およびその重縮合物の群から選ばれた少なくとも1種を主成分として含む。(a)オルガノアルコキシシラン類としては、式(1);R1Si(OR2) (式中、R1 は炭素数1〜8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基および/または炭素数1〜4のアシル基および/または炭素数5〜7のアルケニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(1)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物が挙げられる。(a)成分は、エマルジョン(コロイド状も含む)でも、溶剤系でもよい。また、(a)オルガノアルコキシシラン類には、式(2);R1 Si(OR2) (式中、R1 は同一または異なり、炭素数1〜8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基および/または炭素数1〜4のアシル基および/または炭素数1〜8のアルケニル基又はフエニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(2)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物を(a)成分中、50重量%以下程度併用することができる。




Claims (14)

  1. 基材、前記基材の表面に、漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層を有する複合材。
  2. 基材、前記基材の表面にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層である第1層、並びに前記第1層上に漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層である第2層、あるいは前記第1層上に漆液剤の固化層である第2層を有する複合材。
  3. さらに、前記固化層上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の複合材。
  4. 前記漆液剤およびオルガノアルコキシシラン系液剤を含む混合液剤の固化層、あるいは漆液剤の固化層は、複数積層したものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の複合材。
  5. 前記複数層の混合液剤の固化層の間に漆液剤の固化層が配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の複合材。
  6. 前記混合液剤において、漆液剤の(オルガノアルコキシシラン系液剤+漆液剤)に対する割合は、5〜95重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の複合材。
  7. 前記オルガノアルコキシシラン系液剤または前記混合液剤の固化層はシロキサン結合を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の複合材。
  8. 前記オルガノアルコキシシラン系液剤が、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、およびその重縮合物の群から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の複合材。
  9. 前記オルガノアルコキシシランが、R1 Si(OR2 )3(式中、R1 は炭素数1〜8の有機基、R2 は同一または異なり、炭素数又は水素数1〜4のアルキル基および/または炭素数5〜7のアルケニル基を表す)で表されるシロキサン結合であることを特徴とする、請求項8に記載の複合材。
  10. 前記オルガノアルコキシシランには、さらにR12Si(OR2 )2(式中、R1 は同一または異なり、炭素数1〜8の有機基、R2 は同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基および/または炭素数1〜8のアルケニル基又はフエニル基)で表されるジオルガノジアルコキシシランを含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の複合材。
  11. 前記オルガノアルコキシシラン系液剤は、硬化および固化用の触媒を含む液剤であり、前記触媒は加水分解可能な有機金属化合物であり、前記有機金属化合物はチタン、ジルコニウム、アルミニウム、および錫からなる群から選択される1種以上の金属を含む有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかの項に記載の複合材。
  12. 前記基材は、有機材料または無機材料またはこれらの混合材料であり、前記有機材料は、紙、木材、ベニヤ、段ボール、布、不織布、皮、革、プラスチック、高分子材料、またはこれらの混合材料であり、
    前記無機材料は、金属、セラミック、石、コンクリート、絶縁体、半導体、またはこれらの混合材料であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの項に記載の複合材。
  13. 前記基材は、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品であるか、あるいは前記複合材を形成後に型押し、造形し、折り曲げ、各種変形をした加工製品であることを特徴とする、請求項12に記載の複合材。
  14. 前記基材は、ピアノ、楽器、オーディオ製品の外装基材であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載の複合材。


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