本発明者は、オルガノアルコキシシラン類から生ずるシロキサン結合により生じるガラス皮膜は強度が大きく被膜保護機能を有するとともに撥水性等の安全性の高い環境性能を有することを発見して本発明に想到したものであり、本発明は成形性、撥水性や機械的特性などがプラスチックとほぼ同等の機能を与えることが可能であり、プラスチック代替品として使用できる。また、難燃性、高温変形がないことに加えて塗工性に優れているので、高級感を保たせることで、プラスチック製品より持続性、循環経済上優れている。
図1は、本発明の実施形態を示す図であり、第1面(表面または上面とも記載)および第2面(裏面または下面とも記載)を持つ基材11の第1面および/または第2面上に、オルガノアルコキシシラン系液剤等のシラン系コート液剤(以下、オルガノアルコキシシラン系液剤と記載)またはオルガノアルコキシシラン系液剤を含む液剤からなる層(オルガノアルコキシシラン系液剤層とも言う)12を積層する。すなわち、オルガノアルコキシシラン系液剤またはオルガノアルコキシシラン系液剤と他の液剤の混合液剤を作成し、このオルガノアルコキシシラン系液剤等を種々の塗布手段(後述)により、基材11の面上に積層(塗布)し、オルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を形成し、必要なら重ねて塗布することもできる。基材11は混合液剤を塗布する前に加熱処理または乾燥しても良い。たとえば、40~60℃、乾燥した大気中、不活性ガス中(たとえば、N2、希ガス)で2~10時間で乾燥する。オルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を塗布積層した後、適切な熱処理を行ないオルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を固化して固化層12を形成する。(塗布層(液剤層)とその固化層であるので同じ符号を付す。)重ね塗布の場合、それらの間に加熱処理または自然乾燥して固化層をその都度形成しても良い。本発明では、基材11と固化層12の構造材を合わせて複合材10と呼ぶ。(尚、基材本体形成用の液剤(ゲル状物質も含む)にオルガノ系液剤等を加えた混合液剤で形成したオルガノ系液剤等を含む混合液剤が固化した基材、すなわちオルガノ系液剤等の固化層を含む基材も複合材と呼ぶ。)
尚、基材11とオルガノアルコキシシラン系液剤との間に下地塗工膜を積層しても良い。塗布手段は、オルガノアルコキシシラン系液剤等の塗布手段と同じで良い。下地塗工膜は、たとえば、澱粉糊、漆、膠、柿渋、ゼラチン、コンスターチ、片栗粉、葛、セルロースナノファイバー、ビスコース等、あるいはこれらの複数(2種以上)からなる動植物由来の材料を水に混ぜて溶かして加熱(加温)したα化(糊化)した糊状物質である。塗工膜の厚みは特に限定されないが、薄くても良く、たとえば1μm~1mmである。付加する水分量や環境湿度や熱乾燥などの基材の状態や熱処理条件は求める機能と基材の状態により決定する。加熱処理により塗工膜が基材中に殆ど浸透する場合もある。塗布後の熱処理は基材により変化するが、たとえば50℃~150℃で10分~60分、自然乾燥(常温で約半日~1日)でも良い。また、炭水化物などはβ化(老化)しないように高温になりすぎないよう熱処理条件を選択する。オルガノアルコキシシラン系液剤による固化層を形成後は、この糊状物質の固化層が基材とオルガノアルコキシシラン系液剤による固化層の間に存在し、また基材の表面および/または基材中にこの糊状物質の浸透層の固化層が存在する。熱処理により、糊状物質の一部は基材中に浸透しオルガノアルコキシシラン系液剤による機能(強度、撥水性等)を向上させる。特に基材が紙や布等の多孔質材料の場合基材中への糊状物質の浸透が加速され、その効果が発揮される。オルガノアルコキシシラン系液剤が下地塗工膜に浸透し、乾燥処理または熱処理により下地塗工膜とオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層(シリコン化合物)とはシロキサン結合により強固に結合する。
基材11は、有機系材料または無機系材料、またはこれらの混合 材料である。有機系材料は、主として有機物から構成される材料であり、たとえば、生分解性プラスチック、ゴム(特に天然ゴム)、皮、革、布・木綿・織物・編物等の布帛、織布、不織布、紙(和紙、洋紙、機能紙、板紙、一般紙等)・木材・ベニヤ・段ボール・コルク・竹・パルプモールド・セロファン・セルロースナノファイバー等のセルロース系素材、カーボン繊維、その他各種繊維類等、これらの混合材料が挙げられる。ここで混合材料とは、これらの材料が積層したもの、これらの材料がモザイク状に混合したもの、あるいはこれらの材料が混合して混然一体となったものなどを指す。無機系材料は、主として無機物から構成される材料であり、たとえば、金属、金属繊維、ガラス、ガラス繊維、半導体、有機物以外の絶縁体、粘土、土(陶土、珪藻土を含む)、陶器、石、岩、ガラス、コンクリート、セラミックス、無機繊維等、これらの混合材料が挙げられる。あるいは、有機系材料と無機系材料の混合材料でも良い。また、これら有機系材料または無機系材料の多孔質体でも良い。基材11の形状は、板状、角状、棒状、お椀状、皿状、円錐状、球状、楕円状、その他種々の曲線形状体、シート状、フィルム状等が挙げられ、この状態で破壊せずには変形できないものや変形可能なものも含まれる。
変形可能な例として、たとえば紙・布等のシートやフィルムのように折り曲げたり、丸めたりできるものが挙げられる。たとえば、基材は、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品でも良い。あるいは、自然に曲線形状体となったものでも良い。たとえば、木(折れ木、枯れ木を含む)、植物(枯れたもの、落下したものも含む)、動物(死体、皮、骨も含む)、化石でも良い。あるいは建造物、各種構造物、それらの壊れ物、遺跡でも良い。あるいは、複合材を形成後に各種加工をした加工製品にすることもできる。たとえば、板状、シート状、フィルム状等の基材を用いた複合材を作製後に、複合材を型押し、造形し、折り曲げ、その他各種変形や成形をした加工製品でも良い。基材の厚さは特に限定されないが、シート状やフィルム状の場合にはたとえば5μm~10mm、板状の場合はたとえば50μm~100mmである。基材の第1面・第2面の面積は特に限定されず、任意の大きさを選択できる。また、基材の面の数は特に限定されず、多面体でも(多)曲面体でも良く、それらの面の一部または全部、あるいは各面の一部または全部にオルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層の固化層が形成されている。
具体的な製品として、ストロー(紙製、大麦製、小麦製、コピー紙製)、カード、ラップ・レジ袋・袋・風呂敷・包装紙などの包装品、ペットボトルやコップなどの容器、皿・椀・箸・スプーン・フォークなどの食事用・食卓用品、調理器具、台所用器具、浴用・洗濯用・掃除用器具、トレイ(紙製、ダンボール製)、紙蓋、パッキング剤、文具、玩具類、スポーツ・レジャー用品、眼鏡・薬の包装・レントゲンフィルムなどの医療品、電気・電子製品のボディー、車の部品、住宅・建材・家具、車や飛行機な部品、歯磨き粉、洗顔粉、農業用ハウスやプランター、漁具、安全眼鏡や防護面、おむつ・生理用品等が挙げられる。
本発明で用いるオルガノアルコキシシラン系液剤について説明する。オルガノアルコキシシラン系液剤は、(a)オルガノアルコキシシラン類、その加水分解物、およびその重縮合物の群から選ばれた少なくとも1種を主成分として含む。(a)オルガノアルコキシシラン類としては、式(1);R1 Si(OR2 )3 (式中、R1 は炭素数1~8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1~5のアルキル基および/または炭素数1~4のアシル基および/または炭素数5~7のアルケニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(1)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物が挙げられる。(a)成分は、エマルジョン(コロイド状も含む)でも、溶剤系でもよい。また、(a)オルガノアルコキシシラン類には、式(2);R12 Si(OR2)2(式中、R1 は同一または異なり、炭素数1~8の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1~5のアルキル基および/または炭素数1~4のアシル基および/または炭素数1~8のアルケニル基又はフエニル基を表す)で表されるオルガノアルコキシシラン(以下「オルガノアルコキシシラン(2)」ともいう)、その加水分解物、あるいはその重縮合物を(a)成分中、50重量%以下程度併用することができる。
オルガノアルコキシラン類は、水の存在により酸またはアルカリの存在下もしくは非存在下で加水分解および重縮合して高分子量化するものであり、その塗膜は加熱下または常温下で硬化または固化する。オルガノアルコキシシラン類の加水分解触媒となる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸なとどが挙げられる。また、加水分解触媒となる塩基としては、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。なお、これらの通常の触媒を用いる場合には、加水分解の際に、反応水を共存させる。このように、オルガノアルコキシラン系液剤等のシラン系コート液は、触媒及び反応水を含むものである。ただし、通常使用する場合には特に問題は生じないが、これを長期保存する場合、反応水によってコート液がゲル化し易い、という問題がある。これを解決するためには、上記したような通常の触媒ではなく、触媒として加水分解可能な有機金属化合物を用いると良い。加水分解可能な有機金属化合物を使用すれば、反応水を共存させる必要はなくなり、長期保存安定性が良くなる。有機金属化合物として、たとえば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、白金または錫を含むものや、これらの金属を2種以上含むものも挙げられる。
オルガノアルコキシシラン(1)は、前記式中のR1 が炭素数1~8の有機基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基などのアルキル基、そのほかγ-クロロプロピル基、ビニル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メタクリルオキシプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-アミノプロピル基などであり、また式中のR2 は同一または異なり、炭素数1~5のアルキル基および/または炭素数1~4のアシル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、アセチル基、エポキシ基、グリシジル基などである有機シラン化合物である。
これらのオルガノアルコキシシラン(1)の具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルエトキシシラン、γ-アミノプロピルメトキシシラン、γ-アミノプロピルエトキシシランなどを例示できる。
これらのオルガノアルコキシシラン(1)は、1種の単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。好ましくは、メチルトリメトキシシランおよび/またはメチルトリエトキシシランを使用する。また、(a)成分としては、このオルガノアルコキシシランを、あらかじめ酸またはアルカリの存在下もしくは非存在下で加水分解した加水分解物、該加水分解物をさらに熟成して重縮合した重縮合物を使用することもできる。重縮合の度合いとしては、2~10分子程度の重縮合体が挙げられる。
(a)成分を構成するオルガノアルコキシシラン(2)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどや、これらの化合物の2~10分子程度の重縮合体を例示することができる。オルガノアルコキシシラン(2)の使用量は、(a)成分中に50重量%以下程度であり、50重量%を超えると、オルガノアルコキシシラン(1)とうまくシロキサン結合が生成せず好ましくない。オルガノアルコキシシラン(2)の使用量は、(a)成分中に、50重量%以下、好ましくは5~40重量%、さらに好ましくは10~30重量%程度ある。(a)成分中に、オルガノアルコキシシラン(2)を併用すると、得られる塗膜に柔軟性を付与することができる。
本発明の(a)成分は、オルガノアルコキシシラン類を水の存在下で、加水分解触媒として、酸や塩基などを用いて、加水分解、重縮合させるから、得られる(a)成分は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その重縮合物の混合物となり、反応水と生成するアルコール類の混合系であって、その形態は、溶剤系、エマルジョン、もしくはコロイド状である。本発明の(a)成分は、オルガノアルコキシシラン類を水の存在下で、加水分解触媒として、酸や塩基などを用いて、加水分解、重縮合させるから、得られる(a)成分は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その重縮合物の混合物となり、反応水と生成するアルコール類の混合系であって、その形態は、溶剤系、エマルジョン、もしくはコロイド状である。
(a)成分の加水分解、重縮合には、有機金属化合物を触媒として用いることもできる。この例示としては、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウムあるいはスズの錯体であり、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられる。
オルガノアルコキシシラン系液剤は、親水性有機溶剤を含んでも良く、この親水性有機溶剤は(a)オルガノアルコキシシランの加水分解調整剤として使用する。ここでの親水性有機溶剤は、(a)成分を構成するオルガノアルコキシシランの加水分解で生成するアルコールも含む。本発明で使用する親水性有機溶剤は、アルコール類、グリコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類などである。アルコール類としては、炭素数1~8の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-n-ペンタノールなどが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールが挙られる。エステル類としては、前記アルコール類およびグリコール類のギ酸、酢酸、プロピオン酸などのエステル、具体的にはギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどを例示できる。
エーテル類として、前記アルコール類およびグリコール類のアルキルエーテルなど、具体的にはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
オルガノアルコキシシラン系液剤中の親水性有機溶剤の配合割合は、たとえば、10~60重量%、好ましくは10~50重量%である。有機溶剤の配合割合が、10重量%未満では液の粘度が上昇しすぎ、保存安定性が低下し、一方60重量%を超えると保存安定性は向上するものの、コート液中の固形分濃度が小さくなり得られる塗膜の乾燥速度および加水分解速度が低下し、硬化に長時間を要するので好ましくない。
オルガノアルコキシシラン系液剤には、(a)オルガノアルコキシシランの加水分解剤として水(H2O)が含まれる。この水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、基材内水分のOH基成分を使用できる。また、(a)アルキルアルコキシシランの加水分解により生成する水も包含される。また、空気中の水分を利用する場合もある。オルガノアルコキシシラン系液剤中の水の配合割合は、たとえば2~50重量%であり、好ましくは5~20重量%である。水の配合割合が、2重量%未満では、(a)オルガノアルコキシシランの加水分解が十分に生起し難く、一方50重量%を超えるとコート液の安定性が低下し、また塗膜の乾燥速度が低下するので好ましくない。
また、オルガノアルコキシシラン系液剤には、その他の充填材を配合することもできる。これらの他の充填材としては、例えば有機顔料もしくは無機顔料などの非水溶性の一般的な顔料または顔料以外の粒子状もしくは繊維状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物の1種または2種以上のものである。具体的には鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化銅、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化セリウム、酸化バリウム、酸化アンチモン、水酸化クロム、モリブデン赤、モリブデン白、マンガンバイオレット、紺青、エメラルドグリーン、タングステンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のオルガノアルコキシシラン系液剤中には、上記のように、酸を添加することが好ましい。酸は、コート液のpHを7未満の弱酸性領域に調整し、(a)成分の加水分解を促進するとともにコーティング後の塗膜の硬化促進の働きをするものである。この種の酸としては、硝酸、塩酸などの無機酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、マレイン酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、グルタル酸、グリコール酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸を挙げることができる。これらの酸のうち、特に酢酸が好ましい。これらの酸は、1種または2種以上を併用することができる。酸の組成物中の配合割合は、オルガノアルコキシシラン系液剤中、(a)成分を構成するオルガノアルコキシシランに対し、たとえば0.1~3重量%程度である。これにより、コート液のpHを7未満、好ましくは3.5~5.5に調整することが可能となる。酸の含有量が、0.1重量%未満では(a)オルガノアルコキシシランの加水分解およびコーティング後の塗膜の硬化が充分でなくなり、一方3重量%を超えると塗膜になったとき残存酸が多くなり好ましくない。
さらに、本発明のオルガノアルコキシシラン系液剤には、各種界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、金属アセチルアセチアネート、またナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩、チヌビン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などの安定剤などの従来公知のその他の添加剤を添加することもできる。ホウ酸などの機能剤を添加することで、難燃性、抗菌性、防蟻性を付与する事もできる。また、木酢油が放つ独特の臭気を緩和する消臭剤や心地良い臭いを出して木酢油が放つ独特の臭気をマスキングする芳香剤を加えることもできる。前記成分および必要に応じて酸などの添加剤を含み、そのpH7未満の酸性領域での固形分濃度が10~40重量%、好ましくは10~30重量%のエマルジョンあるいはコロイダル状の液状組成物である。固形分が10重量%未満では、1回の塗布で十分な厚さの塗膜が得られず作業性が悪化したり、塗膜強度が低すぎたりし、一方40重量%を超えるとゲル化し易く粘度が上昇し、密着性が悪化し、さらには均一な膜厚の塗膜が得られ難くなり好ましくない。本発明のオルガノアルコキシシラン系液剤は、例えば溶液系、あるいはエマルジョン系もしくはコロイド状の(a)成分(親水性有機溶剤や水を含む)に、必要に応じて酸成分や他の充填剤を加え、ロールミル、ボールミル、攪拌機などを用いて十分に分散させて調製することができるが、この調製方法に限定されるものではない。
基材表面へのオルガノアルコキシシラン系液剤等の積層塗布は、ヘラ、刷毛、スピンコート、刷毛塗り、スプレー、散布、吹き付け、ディッピング(浸漬)、ロールコート、印刷、スキージなどの塗布手段を用いることができる。必要なら、液剤層を何層か重ねて積層しても良い。積層塗布後に加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等を行ない、液剤層を固化または硬化する。1回の塗布で所定量または所定厚みの液剤層を形成できないときは、複数回の塗布または積層を行なっても良く、その場合、上記塗布方法を組み合わせて使用することもできる。また重ね塗布の場合、1回毎、または複数回毎に加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等を行なっても良い。この場合固化層は複数の液剤層の集まり(積層体)である。加熱処理は、不活性ガス(たとえば、窒素、アルゴン等)や空気雰囲気で、また減圧下・加圧下・常圧下で、温度約50℃~200℃、湿度約10~70%にて5分~120分間程度行なうのが良く、また常温乾燥の場合は、およそ塗工量により異なるが半日~6日間の放置で良い。重ね塗布の場合における中間熱処理・中間乾燥処理等では、液剤層は充分に固化しなくても、最終熱処理で充分に乾燥固化すれば良い。尚、最終熱処理でも固化が不十分でも自然放置で混合液剤層を時間をかけて十分に固化することもできる。また、用途によっては液剤層は十分に固化しなくても良い場合もある。また、加熱処理および/または乾燥処理および/または湿度調整処理等は、液剤層12の状態(厚み、量、固化や液化程度等)、あるいは製造条件や作業条件等によって適宜変更することができる。
このように、液剤層を熱処理・乾燥処理等を行なうと、オルガノアルコキシシラン系液剤を含む層は、シロキサン反応により(3段階の反応式(i)Si-OR+H2O→Si-OH+ROH、(ii)Si-OH+HO-Si→Si-O-Si+H2O、(iii)Si-OH+RO-Si→Si-O-Si+ROH)固化し、ガラスの基本骨格であるシロキサン結合が生成され、(すなわち、シロキサンネットワークポリマーが形成され)、硬化層が形成される。(特許文献2)このアルコキシシランのシロキサン結合反応により、基材の持つOH基に、あるいは空気中のOH基に反応してシロキサン結合ができ基材と強固に結合したオルガノアルコキシシラン系液剤を含む液剤の固化層12が形成される。すなわち、基材11の周囲を耐候性や強度に優れるオルガノアルコキシシラン系液剤を含む液剤の固化層であるシリコン化合物(主成分SiO2は上記のようにシリコン酸化物であり、地球上の至る所に存在し人体にとって無害である)が結合被覆しているので、基材が単独で存在するよりも外力や環境変化に対して強固であり、各種プラスチック製品と同程度の耐久性を示す。
すなわち、オルガノアルコキシシラン系液剤は非常に浸透性が高いので、この液剤を基材に塗布すると液剤は基材表面できれいに伸びて塗りあがる。熱処理や乾燥により、アルコキシシランのシロキサン結合反応により、基材の持つOH基に、あるいは空気中のOH基に反応してシロキサン結合ができ、基材とオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層が強固に結合し剥離しにくく、長期間外力や環境変化に対しても基材を保護する。基材11が多孔性の繊維等である場合は、液剤の一部はそれらの孔を通して繊維11の内部に浸透して固化する。(図1(b)の破線矢印13で示す。)従って、液剤による固化層(硬化層)12は基材11の内部と基材11の表面に形成される。このため基材11の表面に形成される液剤による固化層12は基材11との密着性が特に良い。さらに、(シロキサン結合)ガラス皮膜は、難燃性(基本的には燃えない)・耐熱性を有するので、基材が燃えやすいもの(たとえば、木材(木の器))であっても、熱から製品を守る。また、ガラスの絶縁性能も生成する
オルガノアルコキシシラン類が固化(硬化)したオルガノポリシロキサンは強固な膜であるから、外部からの衝撃等に対しても強く、傷がつきにくい。さらに、オルガノポリシロキサンの層は酸やアルカリ、水分等に対しても耐性があるので、耐環境性も優れている。また製品も食洗機や乾燥機の使用もでき、電子レンジで製品に入れた品物を暖めても変質やひび割れを起こさない。高温の物を基材上の固化層上に置いても固化層は変色もせず、また固化層の膜強度が強く製品を重ねても損傷することもない。すなわちプラスチック容器並みの取り扱いも可能である。
耐熱性はプラスチックに勝り、さらに、環境変化による塗膜剥離も起きないし、防菌・防カビ性も有している。また、木酢液剤等の植物由来の防虫・防カビ効果を持つ液剤をオルガノアルコキシシラン系液剤と一緒に混合して固化すればその効果は薬剤機能の滲出性を長期保持する。固化層は基材とのシロキサン結合により密着性が高いので、従来は適用できなかった基材、たとえば、城壁やビルディング等のコンクリート等の保護剤ともなる。路面のアスフアルト、コンクリートなどに、撥水性と強度を付与し雨水や温度変化による割れや、軟化の防止にもなる。また、鉄筋コンクリートの建築物のエポキシ樹脂で充填されていたコンクリート亀裂は、超越ガラス液剤の粘度が小さく浸透性が高いことから、容易に注射針状注入器で注入出来るため、コンクリート亀裂の200μm以下の物にも従来出来なかった補強液剤注入が出来、エポキシなどの樹脂に勝り、建造物の安全性・保全性を高める事ができる。陶器表面に液剤を塗布固化して固化層を形成して、陶器を保護することもできる。陶器の焼成温度の半分以下で製作出来、超越(オルガノアルコキシシラン系)液剤ガラスコートは釉の代替となり、CO2の削減にもつながる。
図2は、本発明を用いたオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を表面に有する複合材(紙製)ストローを示す図である。純粋に紙だけで作製されるストローは、水等の液体に浸かっているとふやけたりしてその形状を保持することができず最悪は飲んでいる最中に飲料が外に飛び出す危険性もある。特に暖かい液体ではふやけ度が進み膨潤も速い。本発明の紙製ストローは図1に示すように基材である紙製シート(たとえば、シート状のカートン用紙)の両面にオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布し、オルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を形成し、その塗布層を熱処理または乾燥処理をして固化層12を形成し、複合材シート12を作製する。オルガノアルコキシシラン系液剤の紙への塗布は、工業的には浸漬(ディッピング)法やスキージ法、またはロールコート法で塗布するのが良い。紙製シートは多孔質体であるためオルガノアルコキシシラン系液剤の一部または全部が紙の内部に浸透し、その内部で固化する。すなわち、紙の繊維とシロキサン結合をしてオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層は基材である紙と強固に密着する。塗布層を形成する前に紙製シート上に、または複合材シートを形成後に複合材シートのオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層12上にフレキソグラフィー印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの各方式を用いることで、その表面に印刷処理を施すことも可能である。また、前述したように、基材とオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層12との間に糊状物質層を挟んでも良い。(以下も同様である。)オルガノアルコキシシラン系液剤(超越液剤)は、反応膜層が高密度になるものを塗工する。
複合材(紙製)シートに必要な裁断加工が行われ、所定形状となった裁断紙20をストローの形状に成形する。図2(a)は裁断紙20の平面図を示す図で、図2(b)は裁断紙20の短辺側断面図、図2(c)は裁断紙20の長辺側断面図である。カートン紙21の周囲にオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層22が積層付着している。裁断した側面には裁断直後は固化層32は付着していないが、裁断後の処理で固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層22を形成することができる。尚、ストローに成形後に固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層22を形成することもできる。次に長方形形状の裁断紙20を丸めてシーラーで繋ぎ目を熱圧着(必要なら接着剤を用いて)して、図2(d)に示すように本発明の複合材(紙製)ストロー23が完成する。尚、リボン形状の細長い裁断紙を螺旋状に巻いてストロー形状を形成することもできる。
成形後に固化層のない側面が露出する場合には、その部分にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層22を形成する。あるいは、カートン紙を裁断してストローを作製した後に、ストローの周囲(外側および内側)にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層22を形成し、オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を(周囲)表面に有する紙ストローを作製することもできる。この場合のオルガノアルコキシシラン系液剤等の塗布法として、たとえば、スプレー(吹き付け)法、デッィプ(浸漬)法やロールコート法を用いることができる。紙製ストローの周囲に強度、撥水性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性に優れたシリコン化合物が積層被覆しているので、内側の紙が直接水等の液体に触れることがない。従って、液体への長時間浸漬によっても複合材(紙製)ストローがふやけることはほとんどなく、オルガノアルコキシシラン系液剤等のシリコン化合物はその構成元素がSi、O、C、Hであるから人間が口に触れても安全である。
図3は、本発明を用いたオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を表面に有する複合材(紙製)トレイを示す図である。本発明の紙製トレイは図1に示すように基材である紙製シートの両面にオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布し、オルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を形成し、その塗布層を熱処理または乾燥処理をして固化層12を形成し、複合材シート12を作製する。オルガノアルコキシシラン系液剤の紙への塗布は、工業的には浸漬(ディッピング)法やスキージ法、またはロールコート法で塗布するのが良い。紙製シートは多孔質体であるためオルガノアルコキシシラン系液剤の一部または全部が紙の内部に浸透し、その内部で固化する。すなわち、紙の繊維とシロキサン結合をしてオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層は基材である紙と強固に一体化する。
複合材(紙製)シートに必要な裁断加工が行われ、所定形状となった裁断紙30をトレイ形状に成形する。図3(a)は裁断紙30の平面図を示す図で、図3(b)は裁断紙30の短辺側断面図、図3(c)は裁断紙30の長辺側断面図である。紙シート31の周囲にオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層32が積層付着している。裁断した側面には裁断直後は、固化層32は付着していないが、裁断後の処理で固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層32を形成することができる。尚、トレイに成形後に固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層32を形成することもできる。次に長方形形状の裁断紙30を押し型を用いて自然乾燥、あるいは熱処理しながらトレイ形状に成形し、図3(d)に示すように本発明の複合材(紙製)トレイ33が完成する。図3(e)はトレイ断面図である。尚、押し型を用いず折り紙のように折って必要な部分を接着(必要なら接着剤を用いる)して複合材(紙製)トレイ33を作製することもできる。成形後に固化層のない側面が露出する場合には、その部分にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層32を形成する。
あるいは、紙シートを裁断して成形してトレイを作製した後に、トレイの周囲(表側、裏側、側面)にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層32を形成し、オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を(周囲)表面に有する複合材(紙製)トレイ33を作製することもできる。この場合のオルガノアルコキシシラン系液剤等の塗布法として、たとえば、スプレー(吹き付け)法、デッィプ(浸漬)法やロールコート法を用いることができる。紙製トレイの周囲に強度、耐水性、耐油性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性に優れたシリコン化合物が積層被覆しているので、内側の紙が直接水等の液体に触れることがない。また、複合材(紙製)トレイ表面のオルガノアルコキシシラン系液剤等のシリコン化合物はその構成元素がSi、O、C、Hであるから人間に取って安全である。従って、本発明の複合材(紙製)トレイは、魚や野菜等の生鮮食品や水分を含む漬物類、暖かいお惣菜類や天ぷら等の食品容器として安心して使用できる。
図4は、本発明を用いたオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を表面に有する複合材(紙製)コップを示す図である。本発明の複合材(紙製)コップは図1に示すように基材である紙製シート11の両面にオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布し、オルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を形成し、その塗布層を熱処理または乾燥処理をして固化層12を形成し、複合材(紙製)シート12を作製する。オルガノアルコキシシラン系液剤の紙への塗布は、工業的には浸漬(ディッピング)法やスキージ法、またはロールコート法で塗布するのが良い。紙製シートは多孔質体であるためオルガノアルコキシシラン系液剤の一部または全部が紙の内部に浸透し、その内部で固化する。すなわち、紙の繊維とシロキサン結合をしてオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層は基材である紙と強固に密着する。紙製シート11にオルガノアルコキシシラン系液剤等からなる層12を形成する前または形成した後に、必要な印刷をしても良い。
複合材(紙製)シートに必要な裁断加工が行われ、所定形状となった裁断紙(側面用)40および裁断紙(底蓋用)43をコップ形状に組み立て成形する。図4(a)は裁断紙(側面用)40の平面図を示す図で、図4(b)は裁断紙(側面用)40の断面図、図4(c)は裁断紙(底蓋用)43の平面図を示す図で、図4(d)は裁断紙(底蓋用)43の断面を示す図である。裁断紙(側面用)40の紙シート41の周囲にオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層42が積層付着している。裁断した側面には裁断直後は固化層42は付着していないが、裁断後の処理で固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層42を形成することができる。尚、コップに組立成形後に固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層42を形成することもできる。裁断紙(底蓋用)43の紙シート44の周囲にオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層45が積層付着している。裁断した側面には裁断直後は固化層45は付着していないが、裁断後の処理で固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層45を形成することができる。尚、コップに組立成形後に固化層のない側面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層45を形成することもできる。
次に裁断紙(底蓋用)43の周囲を内側に折り曲げて淵枠をとり、これに扇形形状の裁断紙(側面用)40を丸めながら裁断紙(底蓋用)43の周囲の淵枠に熱圧着(必要なら接着材を用いて)し、オルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を表面に有する複合材(紙製)コップ46を作製する。複合材(紙製)コップ46の開口側の淵を丸めて口が接触しても違和感を持たないようにしても良い。成形後に固化層のない底蓋が露出する場合には、その部分にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層32を形成する。尚、オルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層のない紙製シートを裁断して、裁断紙(底蓋用)および、裁断紙(側面用)を作製してそれらを組立成形して紙製コップを作製した後に、その紙製コップの周囲表面にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層を形成しても良い。この塗布方法として、スプレー(吹き付け)法、デッィプ(浸漬)法やロールコート法を用いることができる。本発明の複合材(紙製)コップは、紙製コップの周囲に強度、撥水性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性に優れたシリコン化合物が積層被覆しているので、内側の紙繊維が直接水等の液体に触れることがない。また、複合材(紙製)トレイ表面のオルガノアルコキシシラン系液剤等のシリコン化合物はその構成元素がSi、O、C、Hであるから人間に取って安全である。従って、本発明の複合材(紙製)コップは、冷水はもちろん熱い水等の液体で安全安心に使用できる。
セルロースナノファイバーを溶かした水を漉きあげて圧延ロールで薄くて透明な紙(フィルム)ができる。(セルロースナノファイバーは繊維幅が小さいほど透明になりやすく、好適には15nm以下の繊維幅が望ましい。)この透明な紙はセルロースナノファイバーでできているので強固なフィルムであるから、プラスチック(たとえば、ポリエチレン)製ラップフィルムと同じように食品等の包装が可能である。しかし、強固なフィルムと言っても水等の液体には弱く水に一定時間接触すると強度が低下してしまう。そこで、薄い透明な紙(フィルム)上にオルガノアルコキシシラン系液剤等を薄く塗布して固化して薄いオルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層(薄膜)を積層する。この固化層(薄膜)で被覆した薄い透明な紙(フィルム)は耐水性、耐熱性および難燃性を有する。(オルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層はガラス質であり、可視光に対して透明である。)従って、オルガノアルコキシシラン系液剤等の固化層(薄膜)を積層したセルロースナノファイバー製の薄い透明な紙はプラスチック(たとえば、ポリエチレン)製ラップフィルムの代替品として使用できる。しかも材料は自然由来であるから、地中や海水や湖水等の自然環境で完全分解し、地球環境に負荷を与えず、また動植物にとっても安心安全である。
また、動植物由来の樹脂として透明な材料としてセロファン紙がある。この材料上にオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布積層し固化層を形成しても透明なシートやフィルムができ、これらも耐水性、耐熱性および難燃性等を有するので、たとえばプラスチック(たとえば、ポリエチレン)製ラップフィルムの代替品として使用できる。
<セルロースナノファイバー、セルロース繊維、紙粘土および樹脂粘土(から選択される1種以上の材料>に、水および/または糊剤等(でんぷん糊、漆、片栗粉、コンスターチ、葛、膠、松脂、柿渋、ゼラチン、片栗粉等の動植物由来)を混ぜて攪拌した混合液剤は、型枠などに流し込んで押圧して乾燥すれば型枠通りの容器や物体ができるので、種々の形状を有するものを作製可能である。しかし、このままの状態では水にもろい組成物が劣化しやすく、最初の形状を保持できないので、食器等の容器や置物などには使用できない。そこで、これらの容器や物体にオルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布して固化層を形成することによって、これらの容器や物体の周囲表面がこの固化層で被覆される。オルガノアルコキシシラン系液剤等を塗布は、種々の方法で可能であり、たとえば、ディップ(浸漬)法、スプレー(吹き付け)法、ロール法、絶乾法で塗布できる。オルガノアルコキシシラン系液剤等のシリコン化合物の固化層は強度、撥水性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性を有するので、食器や食品包装容器、その他の種々の製品に適用できる。しかもこれらの複合材製品は自然界に存在するもので構成されているので、環境に負荷を与えず、人間の健康にも影響を与えない。
<セルロースナノファイバー、セルロース繊維、紙粘土、および糊剤等(でんぷん糊、漆、コンスターチ、葛、膠、松脂、柿渋、ゼラチン、片栗粉等の動植物由来)から選択される1種以上の材料>にオルガノアルコキシシラン系液剤等および/または有機溶剤(たとえば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類)および/または水を混ぜて攪拌すると、プラスチック樹脂と同様に反応固化体は成型可能な三次元高分子固体となる。しかも常温~50℃の温度で混合することが可能である。この液剤を混合して基材に、塗布し、成形して上述した種々の形状を有する紙製製品を作製できる。たとえば、圧延ロールで乾燥や熱処理してシート状(ガラスシートと呼んでも良い)またはフィルム状(ガラスフィルムと呼んでも良い)製品にもできるし、型で押圧して乾燥や熱処理して種々の形状の容器や置物等も作製できるし、型枠に流し込んで押圧(プレス加工)してアルコール類を除去して乾燥や熱処理すれば、型枠通りの種々の製品を作製できる。また、シート状製品を用いて、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品とすることもできる。これらの製品では、セルロース繊維やセルロースナノファイバーの周りをシリコン化合物が被覆した状態になり、これらがシロキサン結合により強固に結合している。従って、製品は強度、撥水性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性を有して、水等の液体と接触しても容易に変化せず、また環境変化にも強い。しかもこれらの複合材(紙製)製品は自然界に存在するもので構成されているので、環境に負荷を与えず、人間の健康にも影響を与えない。従って、食品保存容器、食品包装等の種々の用途に使用できる。
<リグニン、または土>にオルガノアルコキシシラン系液剤および/または有機溶剤(たとえば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類)および/または水を混ぜて攪拌すると、プラスチック樹脂と同様に成形加工可能な高分子となる。しかも常温~100℃の温度で混合することが可能である。この混合液剤を成形して上述した種々の形状を有する複合材製品を作製できる。たとえば、圧延ロールで乾燥や熱処理してシート状またはフィルム状製品にもできる。型で押圧して乾燥や熱処理して種々の形状の容器や置物等を作製できるし、型枠に流し込んで押圧して水分等を除去して乾燥や熱処理すれば、型枠通りの種々の製品を作製できる。透明シートや透明フィルムを作製することもできる。また、シート状製品を用いて、型押し、造形し、または折り曲げをした加工製品とすることもできる。これらの製品では、リグニンの組成物をシリコン化合物(ポリシリロキサン等)が取り込んだ結合状態になり、これらがシロキサン結合により強固に結合している。従って、製品は強度、撥水性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、および防虫性を有して、環境変化にも強い。しかもこれらの複合材製品は自然界に存在するもので構成されているので、環境に負荷を与えず、人間の健康にも影響を与えない。従って、食品保存容器、食品包装等の種々の用途に使用できる。
ガラス繊維とオルガノアルコキシシラン系液剤を溶媒(ポリメチルシロキサン・エタノール・イソプロピルアルコール等)および有機金属触媒など)を混ぜてシート(ガラスシート)を合成して(ガラス質の固形濃度はポリシロキサン液剤重量の約15~40%が良い)、自然乾燥するか、自然乾燥後100℃~150℃で1時間の乾燥処理を行ない、生乾き状態でプレス型で挟み込んで乾燥させるとプレス型通りにガラスシートが乾燥固化した形状のガラス製品を作製することができる。このガラス製品はガラスのSiO2とオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層であるシリコン酸化物(SiO2)が科学的反応で一体となっている。
オルガノアルコキシシラン系液剤の他の用途として、建物解体時のアスベスト飛散防護対策として、本発明のオルガノアルコキシシラン系液剤を事前に建物内のアスベスト製品に噴霧または散布してアスベストをオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層であるシリコン化合物で覆っておけば、シリコン化合物が微小サイズ(たとえば、2~7μm)のアスベスト粒子とシロキサン結合により繊維が強く一体化して連結反応合成でき、結合体を簡単に、剥がすことが可能になり、アスベストの飛散防止ができる。(尚、プラスチック系樹脂では塗膜がアスベスト上に被るだけで、株の細かな繊維の補足や包含はできず、またプラスチックの発泡膜は廃棄も環境汚染につながる。)
以上詳細に説明した様に、基材自体に、または基材上にオルガノアルコキシシラン系液剤の固化層を有する複合材は、強度、撥水性、耐油性、耐熱性、耐候性、難燃性、防汚性、電気絶縁性、および防虫性に優れたシリコン化合物がその表面を積層被覆しているので、プラスチックの代替品として使用できる。また本発明の複合材製品は、その構成材料が自然界に存在するもので構成されているとともに、その構成材料はそのままでも分解してからで毒性を有するものはなく、仮に廃棄された場合でも微生物等により分解されて残るのは、また焼却しても結合被覆部分が燃えても焼却灰はガラス(シリコン酸化物)であり(オルガノアルコキシシラン系液剤を熱処理して得られるシロキサン類(一般式:R3SiO-(R2SiO)n-SiR3))、無害である。従って、地球環境に負荷は与えず、動植物や人体に悪影響を及ぼさない。建築用シート類(PVC、ウレタン、ポリカーボネート他)に超越ガラスコート膜を生成することで、膜の裂傷防護、可燃性のリスク低減、膜強度UP、酸性雨の劣化防止、塩害の機能低下防止、などの効果が生まれる。
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超越ガラス液剤は単独でも材料や製品を作製でき、また他の用途について以下に説明する。
接着剤の殆どはプラスチック樹脂系(たとえば、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系)であるが、上述したプラスチックに関する種々の問題の他に人体に有害なガスを出すものもあり、できるだけプラスチック量を減少させることが望ましい。本発明のオルガノアルコキシシラン系液剤(超越液剤と呼ぶ)を用いた接着剤(超越液剤接着剤)にすれば、プラスチック量を大幅に低減できる。たとえば、オルガノアルコキシシラン系液剤(3官能酸化剤)15~25%、アクリル酸エステル共重合体10~20%、アルコール15~25%、チタン粉末1~5%、水30~50%(以上、重量%)を常温付近で攪拌混合して作製した接着剤は、プラスチック樹脂系接着剤と同様の接着力を持つ。すなわち、主原料であるオルガノアルコキシシラン系液剤のガラス形成時の化学反応(シロキサン反応)によりチタン粉末体(粒子径15~30μm)が接着効果を増強する。さらに、耐湿性、耐候性、耐熱性、透光性、抗菌性、耐摩耗性、抗カビ性等のオルガノアルコキシシラン系液剤の特徴を合わせ持つ。しかもプラスチック量を半分以下に低減できる。さらに、上記のプラスチック成分(アクリル酸エステル共重合体)を非プラスチック成分(たとえば、でんぷん系)で置換することによって、プラスチック接着剤と同様の特性を有する完全な非プラスチック系接着剤を作製することもできる。尚、超越液剤接着剤の粘度は約2500C/P~4500C/P(センチポイズ))であり高粘度である。樹脂系の接着剤は人体に有害なガスを発することがあるが、超越液剤で作製した接着剤は、人体に無害で安全である。
オルガノアルコキシシラン系液剤の種類や製法を適宜選択することによって、単独でも繊維や樹脂、フィルムを作製することができる。成型加工も可能なので、種々の形状を有する製品(シリコン化合物製品と言う)にすることもできる。これらの製品は一部の特性が弱い(たとえば、強度や耐熱性)ものもあるが、別のオルガノアルコキシシラン系液剤や異なる製法で作製したシリコン化合物が、その欠けた特性について優れた性能を有するので、複数のシリコン化合物でお互いの欠けた特性を補った製品を作製することができる。たとえば、強度は強いが撥水性に弱いシリコン化合物製品に、撥水性に優れたオルガノアルコキシシラン系液剤を塗布して固化膜を形成すれば、全体として強度が強く撥水性が良好な製品を作製できる。
オルガノアルコキシシラン系液剤(超越液剤とも言う)の高濃度で粘度が高いものを多数の細い孔から吹き出ししながら常温~100℃で固化させるとオルガノアルコキシシラン系のシリコン化合物の繊維(これを超越ガラス繊維と呼ぶ)ができる。この超越ガラス繊維を編んで種々の布を作製できる。尚、絹糸や綿糸等の(従来の)繊維に超越液剤を混ぜて、従来繊維の一本一本にも薄い超越ガラス膜を被覆できるので、従来品の性質を有する繊維や布等に超越ガラス膜の特性を加えた特徴ある繊維や布等を作製することもできる。これらの超越ガラス繊維等は従来のプラスチック繊維の代替となるとともに、プラスチック繊維にはない超越ガラス膜の特性(たとえば、耐摩耗性、耐熱性、抗菌性)を有する特徴ある繊維である。
オルガノアルコキシシラン系液剤の低濃度液剤をロール圧延等で薄く延ばして固化すると薄いフィルム(1μm~1mm)を作製できる。(このフィルムを超越ガラスフィルムと呼ぶ。)固化温度は常温~約150℃である。溶剤により濃度調整は自由にでき、塗りやすさや加工しやすさを調整可能である。固化条件や液剤量をコントロールして種々の厚みのフィルムができる。オルガノアルコキシシラン系液剤の濃度を高くすると厚い膜を作製することもできる。このフィルムは透明なので、ポリエチレン製等のプラスチックラップフィルムの代替品となるとともに、撥水性、耐熱性、耐水性、抗菌性、抗カビ性等の特性を有するので食品包装等に最適である。
二官能基のオルガノアルコキシシラン系液剤を用いて、側鎖に柔らかさを維持する機能材料を入れた調合液剤を固化すると柔軟性に富む柔らかなガラス固化体を作製できる。また四官能基のオルガノアルコキシシラン系液剤を用いて硬いガラス固化体を作製することもできる。四本の官能基が、がっちりと手を組むように反応するので、硬いガラスとなる。これらのガラス固化体を超越ガラス樹脂と呼ぶ。さらに、超越ガラスの重縮合反応を利用し、様々な機能剤を側鎖に入れてやると、ゴムのように伸び縮みするシートを作製することもできる。(このゴム状物質を超越ガラスゴムと言う。)このゴム状シートはプラスチックとゴムを合成したような特徴のあるシートである。たとえば、アクリル酸エステル共重合体に三官能のオルガノアルコキシシラン系液剤(超越液剤とも言う)、TNIVIN、IPAなどを加えて常温付近で合成すると、ガラス骨格を持つゴムが出来ます。その混合比は、たとえば10:3:1:1である。
カーボン繊維や金属繊維にもオルガノオキシシラン系液剤(超越液剤)を塗布できる。塗布法は、たとえばコート・刷毛塗り、ローラーコート、ディッピング、グラビアコートである。基材中のOH基、あるいは空気中のOH基により塗布された超越液剤は、縮合反応をし、浸透した部分も含めガラス固化膜を生成する。常温で乾燥後、乾燥機に入れて加温すれば、固化反応が促進される。超越液剤の多くは低粘度であるから、液剤は容易に塗布可能である。また超越液剤に、たとえばタングステン粉体(粒径約3.5μm)を混合した混合液剤は高粘度の液剤となり、シート等に塗布して固化することによって、放射線遮蔽シートを作製できる。建築用・屋外用の木材塗工用の紫外線防護用超越液剤の場合は、粘度が約1500C/P(センチポウズ)と高粘度であるから、塗工時は塗布しやすくするためにアルコール希釈を行なう。
このように、超越液剤は多種多様な機能を生み出すことが可能なガラス生成液剤であり、プラスチック代替品として充当可能な材料や製品を造ることができる。超越液剤の固化体は薬剤の混合により柔らかくも硬くもなるので、用途に合わせて自由に液剤を作製できる。すなわち、二官能、三官能、四官能などの骨格を板やフィルムなどのようにガラス固化体に生成したり、基材への液剤塗工時は基材とのガラス質反応結合効果を考慮して、液剤の薬剤配合を適宜自由に変えることができ、二官能、三官能、四官能基の側鎖に機能性材料を入れて固化するガラス体の性質や機能を変えることができる。たとえば、機能性材料としてホウ酸を超越液剤に混ぜたものは、難燃性が向上するので、建築材等の木材や壁紙の塗布材料として使用できる。四官能期の超越液剤であれば、さらに表面の強度も増し、丈夫な製品ができる。このように、液剤の合成段階で官能基を変化させることにより、ガラス膜を柔らかくも硬くもすることができる。超越液剤で生成されたガラス膜は、O-Si―Oの骨格を有するが、普通のガラスのように割れたときに破片が飛散することがなく安全である。また超越ガラス技術で生成したコート膜で覆われた建築物は、内部から化学物質が気化することが非常に少ないという特徴を有する。構成元素にハロゲン元素やホウ素(ホウ酸を用いない場合)を含まないので環境安全性が極めて高い。このように超越液剤に種々の機能を有する機能性材料を付加した混合液剤によって作成された材料や製品は超越液剤としての特性の他に機能性材料の有する特性を合わせ持つ材料や製品となる。
尚、本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。また本発明で使用されるオルガノアルコキシシラン系物質や組成については他の文献に記載された内容も含まれることは言うまでもない。