JP3219889B2 - セルローズの水溶性スルホアルキルヒドロキシアルキル誘導体ならびにその石膏含有混和物およびセメント含有混和物中における使用 - Google Patents

セルローズの水溶性スルホアルキルヒドロキシアルキル誘導体ならびにその石膏含有混和物およびセメント含有混和物中における使用

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JP3219889B2 JP03395193A JP3395193A JP3219889B2 JP 3219889 B2 JP3219889 B2 JP 3219889B2 JP 03395193 A JP03395193 A JP 03395193A JP 3395193 A JP3395193 A JP 3395193A JP 3219889 B2 JP3219889 B2 JP 3219889B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、新規な類の水溶性のイオン性セ
ルローズ誘導体に、また、その石膏含有混和物およびセ
メント含有混和物用の添加剤としての使用に関するもの
である。
【0002】水溶性セルローズエーテル、たとえばヒド
ロキシエチルセルローズ(HEC)、ヒドロキシプロピル
セルローズ(HPC)、メチルセルローズ(MC)およ
びその混合エーテルは、既に長期にわたり種々の建築材
料に不可欠な助剤である。その応用分野は外壁の石組み
系およびプラスター系から石膏プラスター、セメントプ
ラスターおよび接合充填剤を含んでナイフ塗り充填剤ま
での範囲にわたっている。
【0003】プラスター系の加工性の改良に使用される
セルローズエーテルは、本来、主として非イオン性であ
る。石膏系、石灰系およびセメント系の加工には、特に
メチルセルローズまたはそのヒドロキシアルキルセルロ
ーズ混合エーテルが使用される。この関連では、プラス
ター系における水分バランスが加工性、可塑性、硬化挙
動、接着性、“オープンタイム”、空気間隙含有量、非
たわみ性等に影響を与えるので、その制御に最高の重要
性が置かれている。
【0004】市販の非イオン性セルローズエーテル、た
とえばヒドロキシエチルセルローズのレオロジー的な性
質の様相を改良するためには、極めて多様な疎水化処理
が行われている(たとえば米国特許3,091,542、
米国特許3,272,640、米国特許3,435,02
7、DE−OS2,120,439を参照)。ヒドロキシ
エチルセルローズと長鎖のアルキル基または3−アルコ
キシ−2−ヒドロキシプロピル基を転移させる化合物と
の反応、およびその単独での、またはメチルセルローズ
誘導体と混合しての建築材料部門における使用(たとえ
ばDE−OS3020 689、DE−OS30 04
161、米国特許4,845,207、米国特許4,78
4,693、DE−OS39 09 070、EP0 36
2 769)は、レオロジー的な性質様相を改良する目
的に関しては、これまで所望の結果には到達していな
い。さらに、たとえば長鎖のアルキル基のセルローズ鎖
への、またはヒドロキシエチルセルローズへの固定は極
めて貧弱な収率を伴っており、とりわけ高い製品コスト
が結果として生じている。
【0005】イオン性のセルローズエーテルのモルタル
混和物、ナイフ塗り充填剤および/または石膏- および
/またはセメント基剤の混和物用の添加剤としての使用
それ自体は新規なものではない。米国特許2,844,4
80、EP0 269 015、米国特許4,707,18
7、米国特許4,462,837、米国特許3,446,7
95、米国特許4,707,188、米国特許2,852,
402およびDE−OS3 126 489からは、たと
えば、モルタル添加剤、水中コンクリート用の添加剤と
して、および地層用の水分減少剤として使用されるメチ
ルカルボキシメチルセルローズエーテルおよびカルボキ
シメチルヒドロキシアルキルセルローズが公知である。
したがって、たとえば0.05−1%のカルボキシメチ
ルヒドロキシエチルセルローズの添加はプラスター系の
加工性の改良につながり、このことは、市販のメチルヒ
ドロキシプロピルセルローズ(MHPC)、またはメチ
ルヒドロキシエチルセルローズ(MHEC)との比較
で、空気間隙含有量の減少を基礎に置いた、より容易な
加工性の形状で現れるはずである。しかし、この関連で
の欠点はプラスター系に対する強い液化作用である。し
たがって、ここで達成されるより容易な加工性は、通常
の市販の MHEC または MHPC との比較で決定的
に改悪された非たわみ性を伴うのである。 カルボキシ
メチルセルローズと酸化エチレン、酸化プロピレンまた
は塩化メチルとの反応は、確実に塩、アルカリおよび酸
に対する安定性の改良につながる。しかし、特に多価カ
チオン(たとえば Ca2+、Al3+)との一般的な非混和
性は完全には消し去ることができない。強いゲル化また
は凝集が起こり得る(ウルマン工業化学事典(Ullm
ann’s Encyclopedia of Ind
ustrial Chemistry)、巻5A、化学
出版(Verlag Chemie,Weinheim
/New York)、1986、479ページ以下の
ブラント(L.Brandt)の論文、またDE−OS
3 126 489およびドイツ染料時報(Dtsch.
Farben Ztschr.)25、1971、49
3ページ以下のハンジ(W.Hansi)の論文も参
照)のである。
【0006】したがって、目標は上記の欠点を回避し、
簡単に、かつ良好な収率で製造し得る、また、市販のセ
ルローズエーテル(HEC、MHEC、MHPC)と比
較して改良された水分保持値を有し、ひいては応用技術
変量(たとえば非たわみ性、“オープンタイム”等)の
改良が得られるセルローズエーテルを製造し、副次的な
物質として使用することである。
【0007】水溶性のスルホアルキル、ヒドロキシアル
キル置換セルローズ誘導体、特に付加的にヒドロキシエ
チル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、
ジヒドロキシプロピル基、アルキル基特にメチル基、ア
リール基特にフェニル基、アリールアルキル基特にベン
ジル基、および/またはアルコキシヒドロキシアルキル
基特に3-アルコキシ-2-ヒドロキシアルキル基を置換
基として有するセルローズのスルホエチル、ヒドロキシ
エチル-、スルホエチル、ヒドロキシプロピル-、スルホ
エチル、ヒドロキシブチル-、またはスルホエチル、ジ
ヒドロキシプロピル-誘導体が、通常の非イオン性メチ
ルセルローズ、ヒドロキシアルキルおよび/またはメチ
ルヒドロキシアルキルセルローズ誘導体を添加剤として
含有する石膏およびセメント混和物と比較して、驚くほ
ど改良された性質を有することがここに見いだされた。
【0008】本発明により特許請求されたセルローズ誘
導体は水に完全に溶解し、プラスター系の水分保持値を
決定的に改良し、以下に記載する方法の一つに従って、
セルローズエーテル(たとえばMC、HEC)を改質す
ることにより、またはセルローズから直接に製造するこ
とができる。以下の化合物はスルホアルキル、ヒドロキ
シアルキル置換セルローズ誘導体の合成に使用すること
ができる。
【0009】― ヒドロキシエチルセルローズ
(HEC)、 ― ヒドロキシプロピルセルローズ
(HPC)、 ― ヒドロキシブチルセルローズ
(HBC)、 ― ジヒドロキシプロピルセルローズ
(DHPC)、 ― メチルセルローズ
(MC)、 ― メチルヒドロキシプロピルセルローズ
(MHPC)、 ― メチルヒドロキシエチルセルローズ
(MHEC)、 ― メチルヒドロキシブチルセルローズ
(MHBC)、 ― エチルセルローズ
(EC)、 ― ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルローズ
(HPHEC)、 ― ヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルローズ
(HEHBC)、 ― カルボキシメチルセルローズ
(CMC)、 ― スルホエチルセルローズ
(SEC)。
【0010】単一、二元または三元セルローズエーテル
としての、および種々のセルローズエーテルの混合物と
しての上記の化合物は、スルホアルキル基、特にスルホ
エチル基を転移させる化合物により、かつ/またはヒド
ロキシアルキル基を転移させる反応剤により改質するこ
とができる。セルローズまたはセルローズ誘導体の改質
に使用する反応剤は、ウレタン、エステル、または特に
エーテル結合を通して基剤に結合している。
【0011】本発明により特許請求されているアニオン
性のセルローズ誘導体は、0.001−0.6の、好まし
くは0.01−0.5のスルホエチル基による平均置換度
(DS)を有している。アルキル基、アリール基、また
はアリールアルキル基による平均置換度(DS)は、D
S=0.0001−2.5、特に0.001−2.0であ
る。触媒量のアルカリ(たとえばエポキシド、グリシヂ
ルエーテル)と反応する化合物の平均置換度(MS)
は、MS=0.0001−5、特に0.001−4であ
る。セルローズ誘導体の平均重合度は約30ないし約
4,000、特に1,000ないし2,500である。
【0012】本発明記載のスルホアルキル、ヒドロキシ
アルキル置換セルローズ誘導体は、上記のセルローズエ
ーテルを基礎に置いて、特にスルホエチルセルローズ
(SEC)を基礎に置いて、好ましくは有機懸濁剤の存
在下に製造する。懸濁剤として使用されるものは、芳香
族および/または脂肪族の炭化水素、ケトン、スルホキ
シド、環状エーテルおよび1分子あたり好ましくは2−
5個の炭素原子を有する低級アルコール、ならびにこれ
らの溶媒の混合物である。好ましくはイソプロパノール
および/または2-メチル-2-プロパノール(第3ブタ
ノール)、またはこれらの混合物を使用する。
【0013】本発明記載のセルローズ誘導体はまた、セ
ルローズから直接に製造することもできる。疎水的に改
質されたヒドロキシエチルセルローズは、たとえば以下
のようにして製造することができる。まずセルローズを
不活性有機懸濁剤とアルカリ金属水酸化物との混合物に
添加し、ついで、スルホアルキル基を転移させる反応
剤、特にビニルスルホン酸ナトリウムを添加して上のア
ルカリセルローズと反応させる。反応が完了したところ
で、任意にアルカリを中和するか、または水性溶媒-有
機溶媒混合物で抽出する。しかし、使用したアルカリの
一部は任意に生成物中に残留していてもよく、その後の
反応に使用することができる。本件スルホアルキルセル
ローズ、特にスルホエチルセルローズは、任意に、セル
ローズ化学で公知の手法で後処理することができ(たと
えば、フーベン・ワイルの“高分子物質(Makrom
olekulare Stoffe)”、巻E20/I
II、2,051ページ以下、バース(A.Bart
h)、ファルベ(J.Farbe)編,ゲオルク・チー
メ出版(Georg ThiemeVerlag/St
uttgart 1987)のエンゲルスキルヒェン
(K.Engelskirchen)の論文を参照)、
任意に不活性有機懸濁剤とアルカリ金属水酸化物との混
合物中に懸濁させることもでき、酸化エチレンと反応さ
せることもできる。任意の引き続く疎水化剤 − たとえ
ば酸化プロピレン、n-ブチルグリシジルエーテル、塩
化メチルまたは塩化ベンジルのような − との反応は、
好ましくは同一の不活性有機懸濁剤中で行わせる。反応
が完了したのち、恐らくはなお存在する量のアルカリは
中和または有機溶媒-水性溶媒混合物で抽出することが
できる。生成物を公知の手法で後処理し、石膏含有組成
物およびセメント含有組成物用の添加剤として使用す
る。
【0014】このアニオン性の水溶性生成物は、0.0
01−0.6の、特に0.01−0.5のスルホアルキ
ル、特にスルホエチルの置換度を有する。スルホエチル
化セルローズ誘導体の流動性、または水分保持値は、基
本的にはスルホエチルの置換度により測定する。スルホ
エチル基に関する>0.6の置換度は、ここでは液化作
用を増加させ、同時にプラスター系の非たわみ性を損な
う可能性があるので、非たわみ性を必要とする系におけ
る応用には有用でない。
【0015】スルホアルキル基を転移させる好ましい化
合物は、クロロエタンスルホン酸、ブロモメタンスルホ
ン酸、ビニルスルホン酸およびその塩、特にそのナトリ
ウム塩である。
【0016】出発物質として使用されるものは、磨砕セ
ルローズ特にリンター、軟木亜硫酸セルローズ、軟木硫
酸セルローズまたは硬木セルローズである。市販のセル
ローズエーテル、たとえばヒドロキシエチルまたはヒド
ロキシプロピルセルローズ、メチルまたはメチルヒドロ
キシエチルまたはメチルヒドロキシプロピルセルローズ
エーテル、エチルヒドロキシエチルセルローズおよびエ
チルセルローズも同様に出発物質として使用可能であ
る。
【0017】スルホエチル、ヒドロキシアルキル置換セ
ルローズ誘導体の製造は、好ましくは適当な撹拌装置を
装備した、不均一な反応集合体の十分な相互混合を保証
する円筒状の反応容器中で実施する。この反応容器は、
反応を窒素雰囲気下で実施することを可能にするため
に、好ましくは密閉される。この容器を一定の温度にす
るための妥当な手段も、好適に導入し得る。
【0018】本件方法は、以下の各反応段階よりなるも
のである: a) セルローズまたはセルローズ誘導体とアルカリと
の、少なくとも1種のエーテル化剤(スルホアルキル化
剤 − たとえばビニルスルホン酸ナトリウムのような
− および/またはヒドロキシアルキル基を転移させる
化合物− たとえば酸化エチレンのような − および/
または疎水化剤 − たとえば塩化メチルのような)の存
在下における、少なくとも触媒量の塩基を必要とする反
応。
【0019】b) 任意に、少なくとも1種のエーテル
化剤(ヒドロキシアルキル基を転移させる化合物、スル
ホアルキル化剤、または疎水化剤)を用いるその上のエ
ーテル化。
【0020】c) 任意に、中和および水性溶媒-有機
溶媒混合物を用いる、または − 生成物が熱凝集点を有
するならば − 熱水を用いる抽出による後処理。
【0021】ヒドロキシアルキル基を転移させる化合物
として好適に使用されるものは、酸化エチレン(E
O)、酸化プロピレン(PO)、酸化ブチレン(BO)
およびグリシドールである。スルホアルキルエーテル化
剤として使用されるものは、ハロゲノエタンスルホン酸
またはビニルスルホン酸、特にビニルスルホン酸ナトリ
ウムである。疎水化剤はエポキシド(たとえば酸化プロ
ピレン、酸化ブチレン、酸化スチレン、酸化シクロペン
テン、酸化シクロヘキセン)、ハロゲン化アルキル(た
とえば塩化メチル、塩化エチル)、ハロゲン化アリール
アルキル(たとえば塩化ベンジル)およびアリールオキ
シ- またはアルコキシ-ヒドロキシアルキル基または -
ヒドロキシアルキルアリール基または -ヒドロキシアル
キルアリール基、特に3-アルコキシ-2-ヒドロキシプ
ロピル基を転移させる反応剤(たとえばイソプロピルグ
リシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、2-
エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジル
エーテル)である。
【0022】本件スルホエチル置換セルローズ誘導体は
5−60,000mPa・sの粘性(2重量%の水溶液
で、20℃、D=2.5毎秒の剪断速度で測定した値)
を有する。生成物の粘性度は、酸化性物質、たとえば空
気、H22または金属酸化物の排除または添加、および
使用する種々の平均重合度を有するセルローズの選択に
より修正することができる。
【0023】セルローズの、またはセルローズエーテル
のアルカリ化は、通常はアルカリ金属水酸化物、特に、
水酸化ナトリウムを用いて行い、これは固体形状または
溶解形状(たとえば18−50重量%のアルカリ金属水
酸化物の水溶液の形状)で使用する。
【0024】均一にエーテル化された生成物を得るため
には、また、局部過熱を避けるためには、セルローズ
の、またはセルローズエーテルのアルカリ化、および引
き続く少なくとも1種のエーテル化剤を用いて行う反応
は、好ましくは有機溶媒の存在下に実施する。
【0025】エーテル化剤(酸化アルキレン、ビニルス
ルホン酸ナトリウム、および疎水化剤)は同時に供給す
ることができ、最初は好ましくは10−60℃で、つい
で40−120℃で、0.5−6時間の反応時間でアル
カリと反応する。好ましくはビニルスルホン酸ナトリウ
ムを、好ましくは有機懸濁剤とともに、最初にアルカリ
セルローズと反応させることができ、続く混合エーテル
化は、第1の段階で生成したスルホエチルセルローズの
精製または中和を行うか否かに拘わらず実施することが
できる。特にアルカリの含有量は第1のエーテル化段階
ののちに、中和または水性溶媒-有機溶媒混合物を用い
る抽出により減少させて、なお存在する苛性ソーダ溶液
を第2のエーテル化段階に有利に使用する。その後の酸
化アルキレンまたは疎水化剤との反応は、有機懸濁剤の
存在下でも不存在でも、最初は10−60℃の、ついで
40−120℃の温度で、0.5−6時間の反応時間で
実施することができる。
【0026】他方、このエーテル化は、第1のエーテル
化段階においてセルローズを酸化アルキレンおよび疎水
化剤と反応させ、続いてビニルスルホン酸ナトリウムを
40−120℃で、好ましくは不活性有機懸濁剤、特に
イソプロパノールおよび/または第3ブタノール中で反
応させる方法により実施することもできる。引き続く余
分の酸化アルキレンおよび/または疎水化剤との反応も
任意に可能である。
【0027】上記のようにして得られる生成物は、任意
に中和し、任意に存在するスラリー媒体から分離し、副
生成物および任意になお存在する量のアルカリまたは付
着している塩を不活性有機溶媒または水性溶媒-有機溶
媒混合物、たとえばアルコール、アルコール-水混合
物、ケトンまたはケトン-水混合物で洗浄して除去す
る。エーテル化が2段階法または3段階法である場合に
は、精製は第1段階または第2段階ののちに、有機-水
性溶媒混合物を用いて実施することができる。化学量論
的量のアルカリ消費性の反応剤、たとえば塩化メチル、
塩化エチルまたは塩化ベンジルを用いることにより、中
和を省略することができる。第2段階または第3段階に
存在し得る触媒量のアルカリを保持するために、ここで
は過剰のアルカリを適当な不活性の、たとえば水性-ア
ルコール性の溶媒混合物で洗浄除去して中和を回避する
か、または、中和中に少量の塩を生成物中に残留させる
ことも、精製を省略することも可能である。
【0028】生成物が熱凝集点を有するならば、常圧ま
たは僅かな加圧での熱水を用いる精製が有利である。
【0029】本件スルホエチル、ヒドロキシアルキル改
質セルローズ誘導体は、カルボキシメチルセルローズ誘
導体とは対照的に、極めて良好な酸安定性およびアルカ
リ安定性を有し、多くの、特に多価のカチオン(たとえ
ば Ca+2、Al3+)と優れて混和性である。
【0030】本発明記載のスルホアルキル、ヒドロキシ
アルキル-、特にスルホエチル、ヒドロキシアルキル改
質セルローズ誘導体は、石膏含有混和物および石灰含有
混和物用の添加剤として使用される。石膏含有混和物お
よび石灰含有混和物に添加する生成物の量は、特定の応
用面に応じて異なる。石灰基剤のプラスター混和物にお
いては、添加する添加剤の量は好ましくは全乾燥混和物
に対して0.05−0.5重量%であり、他方、セメント
基剤のプラスター混和物においては全乾燥混和物に対し
て0.02−0.3重量%である。しかし、ナイフ塗り充
填剤に添加する量はより多量である。石膏基剤のナイフ
塗り充填剤においては0.1−2重量%の、セメント基
剤のナイフ塗り充填剤においては0.1−1重量%の範
囲である。
【0031】本発明記載のセルローズエーテルにおい
て、“DS"(置換度)および“MS”(モル置換度)
の表記は通常の意味を有する。
【0032】セルローズ分子の各無水ブドウ糖単位に 3
個のヒドロキシル基が存在する。
【0033】DS:セルローズ中の無水ブドウ糖単位あ
たりの、置換されたヒドロキシル基の平均数。
【0034】MS:無水ブドウ糖単位あたりの、セルロ
ーズと結合している反応剤の平均モル数。
【0035】以下に、操作の実施例を、また、比較例を
援用して本発明をより詳細に説明する。(指示される部
は常に重量部に関するものである。) ヒドロキシエチルセルローズを基剤とする、疎水的に改
質されたヒドロキシエチルスルホエチルセルローズの製
造(実施例1、2、3、4、5;実施例3に関する操
作) 8部のアセトンと2部の水との混合物約2,000部に
225部のヒドロキシエチルセルローズ(HEC、MS
=2.5、水分:5.1%)を添加する。12時間後にセ
ルローズエーテルを濾別し、約2,000部の純アセト
ンで洗浄する。このセルローズエーテルを強力に吸引し
ながら濾別し、残余の反応のために、適当に温度制御さ
れた、適当な撹拌装置を装備した円筒形の反応容器に装
入する。このセルローズエーテルを窒素雰囲気下で2,
180部の第3ブタノールに懸濁させる。96部の水、
169部の30.2重量%ビニルスルホン酸ナトリウム
水溶液および18.3部の疎水化剤(この場合にはイソ
プロピルグリシジルエーテル)を添加したのち、この混
合物を15分間、十分に相互混合する。15.7部の水
酸化ナトリウム粒を添加したのち、25℃で30分間ア
ルカリ化を行い、混合物を60分で75℃に加熱し、こ
の温度でエーテル化を180分間行う。等モル量の濃酢
酸を添加してこのバッチを中和し、生成物を濾別し、8
部のアセトンと2部の水との混合物2000部で4回、
ついで、さらに2000部の純アセトンで洗浄する。生
成物を空気循環乾燥キャビネット中、50℃で乾燥す
る。実施例1、2、3、4および5に関する生成物の製
造データは表1から明らかである。
【0036】針葉樹亜硫酸セルローズからのヒドロキシ
エチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルローズの製
造(実施例6) 87.1部の微細に磨砕し、漂白し、精製した針葉樹亜
硫酸セルローズ(水分:6.9%)を、壁に達するブレ
ード撹拌機を有する加圧反応器中で 1,066部の第3
ブタノールに懸濁させ、この反応器を窒素でパージす
る。12.9部の50.5重量%のビニルスルホン酸ナト
リウム溶液と137.6部の水とを添加し、この混合物
を15分間撹拌する。30部の水酸化ナトリウム粒を添
加する。25℃ における60分のアルカリ化ののち
に、11部の酸化エチレンと116部の酸化プロピレン
とを注入する。この反応混合物を100分かけて80℃
に加熱し、この温度を180分間維持する。等モル量の
濃酢酸で生成物を中和する。生成物を濾別し、8部のア
セトンと2部の水との混合物2,000部で3回、さら
に純アセトンで最終的に洗浄する。この生成物を空気循
環乾燥キャビネット中、50℃で乾燥する。
【0037】本発明記載のセルローズエーテルを、完全
に配合した石膏機械プラスター(無水石膏、石灰石砂、
水和石灰、遅延剤)で試験した。この石膏組成物系の組
成物は、アニオン性セルローズ誘導体以外に、さらにプ
ラスター系の性質およびレオロジー的な挙動を改良する
添加剤を含有していてもよい。たとえば遅延剤、硬化促
進剤、消泡剤、空気間隙形成剤および疎水化剤が添加剤
として使用可能である(“ウルマン工業化学事典(Ul
lmanns Encyclopaedieder t
echnischen Chemie)”、9巻、化学
出版(Verlag Chemie,Weinheim
/New York)、1974、312ページ以下の
シュラーゲ(I.Schrage)の論文およびそこに
引用されている文献も参照)。
【0038】以下に与える表において、表記した量は重
量部である。粘性はハーケ(Haake)回転粘度計、
RV100型、システムM500、DIN53 019
に従う測定手段MVで、D=2.5毎秒の剪断速度で、
20℃の温度で測定した。いずれの場合にも蒸留水中の
2重量%溶液を測定した。DIN 4188に従うふる
いを有するふるい別け装置を用いて、セルローズエーテ
ルをふるい別けした。ついで、以下の2個の分画をプラ
スター系に配分した: 45%<0.063mm 55%<0.25mm 試験のために配合済みの石膏機械プラスターを製造し、
DIN 18 555、2部に従って、延展度を測定して
粘稠度を測定した。水分保持値は DIN 18555、
7部に従って測定した。水-固体値を標準化した。本発
明記載のスルホエチル、ヒドロキシアルキル置換セルロ
ーズ誘導体を、それぞれ対応する粘性を有する市販のメ
チルヒドロキシエチルセルローズと比較した。
【0039】表1には製造条件が列記されており、表2
には置換度が、表3には種々のスルホエチル、ヒドロキ
シアルキル置換セルローズ誘導体の、同等の粘性を有す
る市販のメチルヒドロキシエチルセルローズ(ワロセル
(WalocelR)M)との比較での試験結果が列記
されている、これらの結果は、いずれの場合にも2回の
測定の平均値である。
【0040】
【表1】 表 1:スルホエチル-、ヒドロキシアルキル改質セルローズエーテル 製造データ 番号 1 2 3 4 5 6 第3ブタノール(部) 2.325 2.3251) 2.180 2.180 2.180 1.066 リンターセルローズ(部) − − − − − 87.12) セルローズエーテル HEC3)(部) 225 225 225 226 226 − SEC4)(部) − − − − − −VSSNa 溶液 5) (部) 59.5 59.5 169.2 169.2 169.2 12.9 (重量%) 51.6 51.6 30.2 30.2 30.2 50.5NaOH 溶液 (部) 15.7 15.7 15.7 15.7 15.7 30.0 (重量%) 100 100 100 100 100 100反応剤 6) IPGE(部) − − 18.3 54.8 73.0 − PO(部) − − − − − 116 BO(部) 339 113 − − − − EO(部) − − − − − 11 H2O(部) 13.6 13.6 96.0 96.3 96.3 137.6 アルカリ化時間(分) 30 30 30 30 30 60 加熱昇温時間(分) 60 60 60 60 60 100反応 時間(分) 60 300 180 180 180 180 温度(℃) 75 75 75 75 75 80 1) イソプロパノール 2) 針葉樹亜硫酸セルローズ 3) ヒドロキシエチルセルローズ(MS=2.5) 4) スルホエチルセルローズ 5) ビニルスルホン酸ナトリウム溶液 6) IPGE:イソプロピルグリシジルエーテル PO:酸化プロピレン BO:酸化ブチレン EO:酸化エチレン
【0041】
【表2】 表 2:スルホエチル、ヒドロキシアルキル改質セルローズエーテル 置換度番号 セルローズエーテル DSSE 1) MSHE 2) MSHP 3) MSHB 4) MSIP 5) 1 ヒドロキシエチルヒド ロキシブチルスルホエ 0.11 3.07 - - - 0.29 - - - チルセルローズ 2 ヒドロキシエチルヒド ロキシブチルスルホエ 0.16 3.17 - - - 0.34 - - - チルセルローズ 3 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 0.24 3.2 - - - - - - 0.058 ルスルホエチルセルロ ーズ 4 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 0.26 3.5 - - - - - - 0.21 ルスルホエチルセルロ ーズ 5 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 0.31 3.6 - - - - - - 0.295 ルスルホエチルセルロ ーズ 6 ヒドロキシエチルヒド ロキシプロピルスルホ 0.04 0.63 0.69 - - - - - - エチルセルローズ 1) = スルホエチル基による平均置換度 2) = ヒドロキシエチル基による平均分子置換度 3) = ヒドロキシプロピル基による平均分子置換度 4) = ヒドロキシブチル基による平均分子置換度 5) = 3-(2′-メチル)-エトキシ-2-ヒドロキシプ
ロピル基による平均分子置換度
【0042】
【表3】 表 3:スルホエチル、ヒドロキシアルキル改質セルローズエーテル 建築材料分野における応用技術試験 番号 セルローズエーテル 粘性1) W/F2) ABM3) WRV4) 対照試料 W/F2) ABM3) WRV4) (mPa・s) (mm) (%) (mm) (%) 1 ヒドロキシエチルヒド ロキシブチルスルホエ 13,020 0.46 168 93.8 0.46 166 92.0 チルセルローズ 2 ヒドロキシエチルヒド ロキシブチルスルホエ 10,150 0.46 173 93.2 0.46 166 92.0 チルセルローズ 3 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 25,083 0.46 163 98.2 0.46 166 94.6 ルスルホエチルセルロ ーズ 4 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 20,660 0.48 167 95.1 0.48 172 92.7 ルスルホエチルセルロ ーズ 5 3-(2′-メチル)-エト キシ-2-ヒドロキシプ ロピルヒドロキシエチ 21,020 0.48 159 93.7 0.48 172 92.7 ルスルホエチルセルロ ーズ 6 ヒドロキシエチルヒド ロキシプロピルスルホ 11,470 0.46 171 93.2 0.46 166 92.0 エチルセルローズ 1)= 20℃における2重量%溶液の粘性、 ハーケ粘度計RV100型により D=2.5毎秒の剪断速度で測定 2)= 水-固体係数 3)= 延展度 4)= 水分保持値 5)= メチルヒドロキシエチルセルローズ、ワルコセ
R M(ウォルフワルスローデ社 本発明の主なる特徴および態様は以下のとおりである。
【0043】1.0.001ないし0.6の、特に0.0
1ないし0.5のスルホアルキル、特にスルホエチルに
よる置換度(DS)を有する水溶性の、イオン性三元ス
ルホアルキル-、ヒドロキシアルキル改質セルローズ誘
導体。
【0044】2.上記の三元スルホアルキル、ヒドロキ
シアルキル改質セルローズ誘導体がスルホエチルヒドロ
キシエチルセルローズを基剤とするセルローズ誘導体で
あることを特徴とする1記載の混和物。
【0045】3.上記の三元スルホアルキル、ヒドロキ
シアルキル改質セルローズ誘導体がスルホエチルヒドロ
キシプロピルセルローズを基剤とするセルローズ誘導体
であることを特徴とする1記載の混和物。
【0046】4.上記の三元スルホアルキル、ヒドロキ
シアルキル改質セルローズ誘導体がスルホエチルヒドロ
キシエチルセルローズを基剤とするセルローズ誘導体で
あることを特徴とする1記載の混和物。
【0047】5.上記の三元スルホアルキル、ヒドロキ
シアルキル改質セルローズ誘導体がスルホエチルヒドロ
キシブチルするセルローズ誘導体であることを特徴とす
る1記載の混和物。
【0048】6.上記の水溶性スルホアルキルヒドロキ
シアルキルセルローズ誘導体が付加的にエポキシドおよ
び/またはハロゲン化アルキルおよび/またはハロゲン
化アリールアルキルおよび/または3-アルコキシ-2-
ヒドロキシプロピル基を転移させる反応剤と反応させた
ものであることを特徴とする1ないし5の1項に記載さ
れている混和物。
【0049】7.上記のスルホアルキル、特にスルホエ
チルセルローズを基剤とするセルローズ誘導体がセルロ
ーズとスルホアルキル基、特にスルホエチル基を転移さ
せる化合物、特にスルホン酸ビニルナトリウムとの反応
により製造したものであることを特徴とする1ないし6
の少なくとも1項に記載されている混和物。
【0050】8.石膏および/またはセメント含有混和
物用の添加剤としての、1ないし7の少なくとも1項に
記載された水溶性のスルホアルキル、ヒドロキシアルキ
ル改質セルローズ誘導体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ベルナー・ランゲ ドイツ連邦共和国デー2722フイツセルヘ ーフエデ・ヒンターデムシユツツエンホ ルツ12 (56)参考文献 特開 平5−301756(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 11/08 C04B 24/38 C04B 28/14 C04B 24:38 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】i) 0.001〜0.6の置換度(D
    S)でのスルホアルキル基、及び ii) ヒドロキシアルキル、アルコキシヒドロキシア
    ルキル、3−アルコキシ−2−ヒドロキシアルキル、ア
    リール、及びアリールアルキル基からなる群から選択さ
    れた少くとも2種の基、 でエーテル化されたセルローズを含む、水溶性、イオン
    性、三元セルローズエーテル。
  2. 【請求項2】 スルホアルキル置換度(DS)が0.0
    1〜0.5である請求項1記載のセルローズエーテル。
JP03395193A 1992-02-07 1993-02-01 セルローズの水溶性スルホアルキルヒドロキシアルキル誘導体ならびにその石膏含有混和物およびセメント含有混和物中における使用 Expired - Fee Related JP3219889B2 (ja)

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