JP3217457B2 - 積層クッション体の製造法 - Google Patents

積層クッション体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車用座席(シー
ト)等とするための積層クッション体の製造法に関し、
詳しくは、クッション特性の異なる各パッド材を積層接
着して所定形状のクッション体を得る、積層構造クッシ
ョン体の製造法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】最近の自動車用座席のクッション体とく
にハイグレードの自動車用座席のクッション体は、着座
時の感触、手で触れた時の感触、乗り心地あるいは座り
心地などの性能を満足させるため、たとえば図8及び図
9に示す座部のクッション体41,51あるいは図10
に示す背もたれのクッション体61のように、クッショ
ン性の異なる複数のパッド材を積層接着して形成してい
る。すなわち、図8の42と43の部分、図9の52,
53,54,55,56,57の部分、及び図10の6
2,63,64,65,66,の部分はクッション性の
異なる各パッド材が接着されている。
【0003】また、最近のパッド材は繊維質弾性体が用
いられる。繊維質弾性体はポリエステル繊維と、前記ポ
リエステル繊維より融点が低くかつ加熱により溶融する
低融点ポリエステルのバインダ繊維とを絡め、適度の嵩
高性を有する繊維群よりなるものであり、弾性を有し、
加熱成形可能である。なお、この繊維質弾性体は、たと
えばクラレ株式会社より「ソフィット」の商品名で市販
されている。繊維質弾性体のパッド材は予じめ所定の形
状の成形した層体とされていて、クッション体の製造の
際は、これを積層し接着する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た従来の自動車用座席のクッション体はパッド材を積層
接着して製造するため、製造工程数が多く、手間がかか
り、かつクッション体の出来ばえ(仕上り)が良くない
問題があった。
【0005】そこで、本発明の課題は、この問題点を解
決せんとしたものであって、製造工程数を少くし得て、
手間の省力化ができ、かつ出来ばえの良いクッション体
が得られる、座席等用の積層クッション体の製造法を提
供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した課題を達成する
ために、請求項1記載の発明は、熱溶融するバインダを
含む繊維質よりなり、かつクッション性を異にするため
の配合にされた複数のパッド材を、下型成形面に所定の
積層状に配置した後、上型成形面を重ね、加熱圧締して
一体形に成形し、クッション性の異なる複数のパッド
材が積層接着されたクッション体を得る方法において、
前記パッド材はホットメルトフィルムにて包み込んだ一
方のパッド材とホットメルトフィルムにて包まない他方
のパッド材とからなり、前記下型成形面に積層状に配置
する際前記一方のパッド材を前記他方のパッド材の内側
に位置させることを特徴とする。
【0007】また、上記課題を達成するための、請求項
2記載の発明は、前記請求項1の発明において、前記一
方のパッド材は、ホットメルトフィルムで形成された袋
体に前記繊維質を充填してなることを特徴とする。
【0008】前記バインダは加熱に対して溶融する熱可
塑性樹脂の粉末あるいは熱可塑性の繊維、あるいは加熱
に対して溶着作用を有する加工繊維であってよい。ま
た、前記繊維質体は繊維群よりなりかつバインダが配合
された繊維質弾性体、あるいはバインダを配合したフェ
ルト、あるいはバインダを配合したロックウールなどの
繊維構造のものを用いることができる。前記下型及び上
型の加熱圧締は、蒸気あるいは熱風を吹出す手段を成形
面に設けた下型あるいは上型,あるいはこの両者を用い
て行ない得る。また、加熱圧締は加熱した下型と上型に
てもなし得る。
【0009】
【作用】請求項1の発明及び請求項2の発明は、下型と
上型の圧締状態において、各パッド材が加熱される。す
なわち加熱によりパッド材のバインダは溶けてパッド材
の非溶融の繊維質を接着する。また、包んだホットメル
トフィルムは薄層であり、加熱により溶融し、フィルム
両側に位置するパッド材の繊維質を接着する。かくし
て、所定形のクッション体が成形される。請求項1の発
明、請求項2の発明においてホットメルトフィルムは加
熱により溶融して接着剤の作用をなす。
【0010】
【実施例】次に、本発明の一実施例として自動車用座席
の座部用のクッション体を得る場合について、図1〜図
7を参照して説明する。まず、図4に示す下型1と上型
11が用意される。この下型1上型11はクッション体
用のキャビティを成形するための凹凸状の成形面2,1
2を有している。なお、図4において、下型1成形面2
の両凹部3はクッション体30の両側の突出部31とな
る部分であり(図6、図7参照)、下型1成形面2の両
凸部4はクッション体30の意匠溝32となる部分であ
る(図6、図7参照)。また、上型11成形面12の両
凸部14はクッション体30裏面のフレーム溝34とな
る部分である(図6参照)。図4に示すように、下型1
は内部に蒸気室5が設けられている。成形面2は蒸気を
吹だすための細径の吹出し孔(図示せず。)が全面に多
数設けられ、蒸気室5の蒸気吹込み口6より吹込んだ蒸
気は成形面2の各吹出し孔より噴出するようにされてい
る。上型11の内部は中空室15を有し、成形面12に
は蒸気の吹出し孔が設けられていない。
【0011】一方、クッション体30とするための図3
に示す各パッド材(パッド材パーツ)21A,21B,
22A,22B,23A,23Bが用意される。パッド
材21A〜23Bは図3に示すように、クッション体3
0の中央部に配置する幅広のものと、中央の側部に配置
する円柱形のもの、及び、これらを被うためにスラブ状
に加工したものよりなる。
【0012】本例の繊維質弾性体24はクラレ株式会社
製造の不織布「ソフィット」を用いた。ソフィットは伸
度50%で12デニールのポリエステル繊維と、ポリエ
ステルの芯繊維の外周を前記ポリエステル繊維より低融
点の変性ポリエステルで被着した、伸度50%で4デニ
ールのバインダ繊維とよりなり、ポリエステル繊維80
部とバインダ繊維20部の混合体の繊維群よりなる。ソ
フィットの繊維群は適度の弾性を有し、加熱によりバイ
ンダ繊維が溶融する。なお、繊維質弾性体24には必要
により、低融点熱可塑性樹脂粉末などの追加バインダー
が混合される。パッド材21A,21B,22A,22
Bは繊維質弾性体24を、ホットメルトのフィルム袋2
5にて包んだ構造にされている。フィルム袋25はポリ
エチレンあるいはエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂など
の加熱で溶融する低融点の熱可塑性樹脂のホットメルト
フィルムよりなり、適度な通気性を有するものを用い
る。
【0013】パッド材21A,21B,22A,22B
は、たとえば図2に示す工程にて形成されている。図2
はパッド材22Aの場合を示し、適度な通気性を有する
ホットメルトフィルムよりなるフィルム袋25に吹込み
ノズル26を挿入し、繊維質弾性体24の所定量を吹込
んだ後、吹込みノズル26を抜き、ノズル挿入孔部分を
適宜手段にて閉じて形成される。なお、繊維質弾性体2
4の吹込みの際、吹込む繊維質弾性体24の密度や繊維
の種類を変更することによって、所望のクッション特性
のパッド材21A〜22Bとすることができる。スラブ
状のパッド材23A,23Bは前記繊維質弾性体24の
層体よりなり、ホットメルトのフィルム袋に包んでな
い。前記中央部と側部のパッド材21A,21B,22
A,22Bはスラブ状のパッド材23A,23Bより繊
維密度を高くしかつバインダ繊維の量を多くしてある。
【0014】しかして、図1に示すように、下型1の成
形面2には所望の構造となるように各パッド材21A〜
21Bを積層する。すなわち、成形面2にはスラブ状の
パッド材23Aを配置し、この上に中央部用のパッド材
21A,21Bを二枚重ねる。また、このパッド材21
A,21Bの両側には側部用のパッド材22A,22B
を配置した後、これらを被うように、他のスラブ状のパ
ッド材23Bを配置する。なお、中央部と両側部の各パ
ッド材21A,21B,22A,22Bの形状や配置位
置は必ずしも正確であることを要せず、おおよその位置
及び、形状になっていればよい。
【0015】次いで、図5に示すように下型1に上型1
1を圧締し、所定形状になる様に加圧する。しかる後、
下型1の蒸気吹込み口6から蒸気室5に蒸気を圧送す
る。下型1の蒸気室5に導入された蒸気は各吹出し孔よ
り成形面2に至り、キャビティに積層配置した各パッド
材21A〜23Bを加熱する。このため、各パッド材2
1A〜23Bのバインダ繊維(及びバインダ)及びフィ
ルム袋25が溶融し各パッド材21A〜23Bをキャビ
ティの形状に接着する。そして、所定の時間の加熱圧締
後は、蒸気の供給を止め、所定の時間冷却し、ホットメ
ルト及び溶融したバインダ繊維(及びバインダ)を固化
させる。
【0016】その後、下型1上型11を開き、脱型して
図6及び図7に示す成形品すなわちクッション体30を
得る。このクッション体30はバインダ繊維(及びバイ
ンダ)、とホットメルトの固化(接着)により、成形形
状が保持されていて、かつ成形面2,12の凹凸形状が
鮮明に形出された仕上りの美しいものであった。すなわ
ち、クッション体30は図6,図7に示すように、両側
突出部31の盛り上がり形状良好であり、意匠溝32及
び鋭角凸部33は繊維密度が一定で、鮮明な形状とな
り、フレーム溝34も美しい仕上がりのものであった。
【0017】なお、前記した実施例は自動車座席の座部
用のクッション体30の場合について説明したが、本発
明はこれに限るものではなく、自動車用座席の背もたれ
あるいは自動車用以外の積層構造のクッション体の製造
に広く適用することができる。
【0018】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、出来ばえの良
い積層クッション体を加熱圧締の一工程にて製造するこ
とができ、パッド材を順次接着してクッション体を得る
従来製法に較べ、製造工程数を少くし得て手間の省力化
ができて都合がよい。また、請求項2の発明によれば、
ットメルトフィルムの袋体は請求項1の発明と同様に
加熱圧締においてパッド材を接着する作用をなすので、
前記した請求項1と同じ作用効果を達成し得る。すなわ
ち、請求項1及び請求項2記載の発明によれば、部分的
にクッション性を異にした座席用等の良好なクッション
体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例における下型上型の圧締前状態
図。
【図2】パッド材を得る加工工程図。
【図3】クッション体の成形に使用する各パッド材の斜
視図。
【図4】下型及び上型の構造図。
【図5】下型上型の圧締工程図。
【図6】脱型した成形品の拡大した断面形状図。
【図7】成形品の斜視図。
【図8】積層タイプクッション体の従来図。
【図9】積層タイプクッション体の他の従来図。
【図10】背もたれ用の積層タイプクッション体の従来
図。
【符号の説明】
1 下型 2,12 成形面 5 蒸気室 11 上型 21A,21B,22A,22B,23A,23B パ
ッド材 24 繊維質弾性体 25 フィルム袋 30 クッション体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−292991(JP,A) 特開 平3−170112(JP,A) 特開 平3−170111(JP,A) 特開 平5−220278(JP,A) 特開 昭61−279280(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 65/00 - 65/82 A47C 27/12 B68G 1/00 - 7/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱溶融するバインダを含む繊維質よりな
    り、かつクッション性を異にするための配合にされた複
    数のパッド材を、下型成形面に所定の積層状に配置した
    後、上型成形面を重ね、加熱圧締して一体形に成形
    し、クッション性の異なる複数のパッド材が積層接着さ
    れたクッション体を得る方法において、前記パッド材は
    ホットメルトフィルムにて包み込んだ一方のパッド材と
    ホットメルトフィルムにて包まない他方のパッド材とか
    らなり、前記下型成形面に積層状に配置する際前記一方
    のパッド材を前記他方のパッド材の内側に位置させるこ
    を特徴とした積層クッション体の製造法。
  2. 【請求項2】 前記一方のパッド材は、ホットメルトフ
    ィルムで形成された袋体に前記繊維質を充填してなるこ
    とを特徴とした請求項1に記載の積層クッション体の製
    造法。
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