JP3216327U - ハイブリッド・キャパシタバッテリ - Google Patents
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Abstract
【課題】過剰な手間とコストを要することなく総合性能に優れたハイブリッド・キャパシタバッテリを提供する。【解決手段】間に電解質液100を有して対向した1対の負極板の鉛板12と正極板の二酸化鉛板11によるバッテリ要素を少なくとも1以上有してなるバッテリセル20Aの複数個が、バッテリケース3A内を複数並列に仕切って形成した収納室3b,3d,3f内に各々収装された状態で直列に接続されてなるバッテリにおいて、少なくとも1以上のキャパシタ41を有してなるキャパシタセル10Aが、各バッテリセル20Aに対しその上方又は側方に配置されながら各々1個並列に接続されており、そのキャパシタセル10Aが充放電時における所定のタイミングで接続されたバッテリセル20Aを機能的に補助する。【選択図】図1
Description
本発明は、バッテリとキャパシタを複合化したハイブリッド・キャパシタバッテリに関する。
近年、従来から使用されている二次電池よりもエネルギー密度・出力密度の高いニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池が広く普及しており、ハイブリッド車や電気自動車の蓄電デバイスとして利用されている。しかし、これらは材料が高価であることに加え製造に手間を要することから、従来の二次電池と比べてコスト高となりやすいため、車両用や太陽光発電等の分野では安価な鉛蓄電池がいまだに主流の地位にある。
また、最近では実用新案登録第3181140号公報にも見られるように、充放電性能に優れた電気二重層キャパシタと安価な鉛蓄電池を端子結合で接続したキャパシタバッテリも多数試作されている。このように、鉛蓄電池にキャパシタを接続することで充放電時間が短縮されることに加え、急激な充放電の際には鉛蓄電池に加わる過剰な負担をキャパシタで受け持つ機能を発揮するため、サルフェーション等による電極板の劣化を軽減して電池寿命の向上が期待できるとされている。
しかし、キャパシタと鉛蓄電池を端子結合した結果、装置の大型化を招きやすくなることに加えその接続線の長さに応じた抵抗が生じて、キャパシタ側への出入力の切り換えがスムースに行われにくくなるとともに電力ロスを伴うため、これによる鉛蓄電池の負担軽減は充分とは言い難い。そこで、キャパシタとバッテリを一体的に融合したハイブリッドバッテリとも言える蓄電デバイスとして、鉛ベース負極と二酸化鉛ベース正極に加えてコンデンサ負極を設けて鉛蓄電池部分と非対称コンデンサ部分を構成し、高電流の充電・放電が行われる間は非対称コンデンサ部分で電荷の受入れ・放出を優先的に行う方式が、特表2007−506230号公報に提案された。また、キャパシタ正極と共通負極及びリチウム含有金属化合物を含む電池正極を備えてバッテリとしての総合性能を高めたものも特開2009−141181号公報に提案されている。
このように、キャパシタとして電荷を蓄える部分を蓄電池内に設けて一体化(ハイブリッド)したことにより、この部分が電池電極部分と比べて内部抵抗が小さく高電流の充放電を優先的且つ急速に行うことから、単にこれらを端子結合したものと比べて小型化が容易になることに加え、接続線が存在しないことと相俟って耐久性と出力密度の大幅な向上が期待される。そのため、これらは車両におけるブレーキ制動時回生電力の充電や、発電量が時々刻々と変化する太陽光発電・風力発電の蓄電デバイスとしての利用が想定されている。
ところが、前者のハイブリッド式鉛蓄電池では、そのキャパシタによる電荷を蓄える部分の面積が正・負の電極面積と比較して小さく、全体容量に対するキャパシタ機能の貢献割合は実に小さいことから、バッテリとしての総合性能の改善は全体的にはさほど大きくない。また、後者のハイブリッドバッテリは安定した商品化が難しい等の理由から、量産化が実現されていないのが現状である。
これに対し、本願発明者らは、先に特開2013−247101号公報において、図9に示すようなハイブリッドバッテリを提案している。即ち、負極板の二酸化鉛板11と負極板の鉛板12を交互に並べた状態で電解質100に浸漬して鉛蓄電池を構成したものであるが、隣り合う正極板と負極板が対をなしその間に電解質200を挟装したユニットでキャパシタセルを構成した電極体20とし、この複数の電極体20が正極板と負極板が向かい合って並ぶ配置として、その向かい合う正極板と負極板が中間の電解液100とともに各々バッテリセルを構成するものとした。これにより、電池を構成する部分に対しキャパシタで電荷を溜める部分の割合を拡大しながら、優れた充放電性能を実現可能なものとしている。
しかしながら、そのキャパシタセルを構成している電極体20の内部側は、正極板になる二酸化鉛板11と負極板になる鉛板12で挟装されて封止されてはいるものの、薄板状の二酸化鉛板11と鉛板12は充分なる強度・耐久性を有していないため、衝撃や腐蝕等によりその内部側が外部の電解液100側に連通・開放してキャパシタ機能が損なわれる畏れがある。また、このように電池電極とキャパシタを一体化することで負極板である二酸化鉛板11の劣化を早めることが分かっており、電池寿命の延長という点では不充分と言わざるを得ない。
一方、特開2014−175128号公報には、バッテリケース内を複数並列に仕切った部屋に、複数個の鉛バッテリセル及びキャパシタ等の蓄電素子を含む補助バッテリを各々収納し、その上端開口部を塞ぐ蓋の上で各鉛バッテリセルと単一の補助バッテリを並列に接続したものが提案されている。このように、鉛バッテリセルと補助バッテリを共通のケース内に収納するとともに比較的短い配線長でこれらを接続したことにより、補助バッテリと鉛バッテリセルとの間の抵抗を軽減しながら上述したハイブリッドバッテリに近い機能を発揮することが期待される。
ところが、このように単一の補助バッテリと複数個の鉛バッテリセルを並列接続する方式では、配線長を可能な限り短くしたものの、上述した電池電極とキャパシタを一体化した方式と比較すると、その配置において補助バッテリから離れた位置の鉛バッテリセルを繋ぐ配線による抵抗は軽微とは言い難く、バッテリセルの負担の軽減効果が部分的に減弱される畏れがある。また、各鉛バッテリセルは直列に接続されている関係で充放電時の各バッテリセルにおける負担は一様ではないため、単一の補助バッテリで状態の異なる各鉛バッテリセルを充分に補助することは困難である。
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、過剰な手間とコストを要することなく総合性能に優れたハイブリッドバッテリを得られるようにすることを課題とする。
そこで、本発明は、間に電解質を有して対向した1対の負極板と正極板によるバッテリ要素を少なくとも1以上有してなるバッテリセルの複数個が、バッテリケース内を複数並列に仕切って形成した収納室内に各々収装された状態で直列に接続されてなるバッテリにおいて、1以上のキャパシタを有してなるキャパシタセルが、前記各バッテリセルに対しその上方又は側方に配置されながら各々1個並列に接続されており、そのキャパシタセルが充放電時における所定のタイミングで接続されたバッテリセルを機能的に補助する、ことを特徴とするハイブリッド・キャパシタバッテリとした。
このように、バッテリに対し単一のキャパシタセルを単に端子結合したり、単一のキャパシタセルをバッテリを構成する各バッテリセルに接続したりした従来例の方式とは異なり、バッテリを構成している複数のバッテリセルに対し、各々1個のキャパシタセルをその上方又は側方に配置しながら並列接続するものとしたことで、特許文献5に記載のものよりも接続線を短縮した状態で近接して配置しやすくなることに加え、複数個のバッテリセルにおいて各々異なる状態に対応したバッテリ補助機能の発揮が可能となる。
この場合、その各キャパシタセルは、前記バッテリセルに対し接続線の途中で分岐部を有することなく直結されており、複数のキャパシタセル同士が接続線で直列に接続されていないものとされ、且つ、1つの前記キャパシタセルを構成するキャパシタが複数のものではキャパシタ同士が並列に接続されている、ことを特徴とするものとすれば、前述したバッテリ補助機能が一層顕著に発揮されるものとなる。
また、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリにおいて、そのバッテリは、鉛バッテリであってバッテリセルを少なくとも2個以上備えているとともに、各バッテリセルが少なくとも1対以上の二酸化鉛板と鉛板を備えており、且つ、前記総てのバッテリセルが密閉状態で前記バッテリケース内に収装されている、ことを特徴としたものとすれば、各バッテリセルに対し1個のキャパシタセルを近接配置しながら密閉式のものとしたことで、サルフェーションを含む電極板の劣化を回避可能としながら、長期間に亘って電池機能を充分に発揮できるものとなる。
さらに、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリにおいて、その複数個のキャパシタセルは、バッテリケースの上蓋上面に沿って横方向に並列した状態で配置されており、その端子側が並列配置されたバッテリセルのうち接続先のバッテリセルの端子の上方に位置するものとされている、ことを特徴としたものとすれば、キャパシタセルとバッテリセルを接続する接続線の長さを一層短縮することが可能となる。
さらにまた、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリにおいて、そのバッテリセルのうち、少なくとも直列接続の端部側でバッテリセルの端部側に位置する負極板の外面総てを覆うように銅板が面接続にて配設されており、この銅板が前記キャパシタセルに接続されていることを特徴としたものとすれば、バッテリとキャパシタを接続した場合に多発しやすい負極板の劣化を、銅板の存在により回避しやすいものとなる。
加えて、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリにおいて、そのバッテリセルからキャパシタセルのキャパシタとの間を接続している接続線の途中には、そのときの充放電の状態に応じてキャパシタにおける電流の出入力を制御する充放電制御手段が配設されている、ことを特徴としたものとすれば、キャパシタのバッテリ補助機能を一層有効に発揮しやすいものとなる。
そして、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリにおけるキャパシタセルの総てを所定形状のケースに収装しながら各キャパシタセルから延設した正負の接続端子がケース外面に露出してなるキャパシタ体であって、総てのバッテリセルをバッテリケース内の前記収納室に収装しながら各バッテリセルから延設した正負の接続端子が外部に露出している前記バッテリケース表面の連結面に対し、着脱操作可能な状態にて装着・固定され、その装着により各バッテリセルから延設した接続端子と各キャパシタセルから延設した接続端子が接続されて上述したハイブリッド・キャパシタバッテリとなる、ことを特徴としたものとすれば、キャパシタ体との接続手段を有して通常のバッテリ機能を発揮するバッテリに、このようなキャパシタ体を装着して接続するだけで、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリが得られるものとなる。
直列に接続された複数個のバッテリセルに対し各々1つのキャパシタセルを近接する位置にて各々並列接続した本発明によると、過剰な手間とコストを要することなく総合性能に優れたハイブリッドバッテリを得られるものである。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、隣接位置とは水平方向に隣り合う状態だけではなく上下方向に隣り合う状態も含むものとする。
図1は、本発明における第1の実施の形態のハイブリッド・キャパシタバッテリ1Aを示している。このハイブリッド・キャパシタバッテリ1Aは、上面が開口しているとともに内部が仕切られて6つに並列した収納室3a,3b,3c,3d,3e,3fを有してなるバッテリケース3Aを備え、その収納室3b,3d,3f内に正極板になる二酸化鉛板11と負極板になる鉛板12が対向しながら交互に配置されて間に電解質液100が浸潤するセパレータ(石綿)15を有してなるバッテリセル20Aが各々収納されており、これらの正負の端子22,21がバッテリ電極18,19間で接続線51,52により直列に接続されてバッテリ(鉛バッテリ)を構成している。
そして、そのバッテリセル20A,20A,20Aには、円筒状の部品であるキャパシタ41を3個並列に接続したキャパシタセル10A(図3(A)参照)が各々並列に接続されており、そのキャパシタセル10Aをケース10aに液密状態で収装してなるキャパシタ体4Aが、接続されるバッテリセル20Aに各々側方に隣接した位置になる収納室3a,3c,3eに収装されている。
即ち、本発明においては、キャパシタ体とバッテリを単に端子結合で接続した従来例とは異なり、バッテリ(鉛バッテリ)を複数に分割して直列に接続したバッテリセル20Aの各々に、その隣接位置に配置された1個のキャパシタセル10Aが並列に接続して個々にバッテリ補助機能を発揮する構成となっていることから、従来のハイブリッドバッテリとは一線を画した構成のハイブリッド・キャパシタバッテリと呼ぶべきものとなっている。
したがって、本実施の形態においては、キャパシタセル10Aとバッテリセル20Aを接続する接続線61,62,71,72,81,82が、特許文献1の場合よりも短くなってその抵抗が低減されることから、キャパシタセル10Aによるバッテリ補助機能の低下が最小限に抑えられるため、バッテリセル20Aにおけるサルフェーションを初めとする電極板の劣化を有効に抑制できるものとなる。また、複数個のバッテリセル20Aに対しキャパシタセル10Aを各々1個接続したことで、直列に接続されて個々に状態の異なりやすい各バッテリセル20Aに対し個別的に対応しながらバッテリ補助機能を有効に発揮しやすいものとしている。
さらに、本実施の形態では、そのキャパシタセル10Aについては、図3(A)に示すように、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等による大容量のキャパシタ41を複数本使用することを想定しており、特許文献3に記載されたようなバッテリ電極面にキャパシタ機能を賦与したものと比べ、キャパシタ容量が格段に大きくなるため、それによるバッテリ補助機能も顕著に拡大されて、充放電特性等のバッテリ性能の大幅な改善が期待できるものである。
図2は、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリ1Aの応用例としてのハイブリッド・キャパシタバッテリ1Bを示している。上述の例では、バッテリを構成するバッテリセル20Aは1セル約2Vであり、その3セルの直列により約6Vとなるが、この例では、同じ6部屋のバッテリケース3Aを用いながら、キャパシタ体4Bを収装する収納室が2つ、バッテリセル20Aを収装する収納室が4つの構成としたものであり、バッテリセル20Aを4セル直列の約8Vの定格となっている。
また、図3(B)は前述したキャパシタ体4Bの構成を示しているが、3個のキャパシタ42を並列に接続してなるキャパシタセル10Bを、1つのケース10b内に2個収装したものとなっており、各キャパシタセル10Bは隣接したバッテリセル20Aに最短距離で接続されている。このような構成を採用したことにより、前述と同サイズ(容積)のものでもバッテリの電圧と容量を拡大することができる。
図4は、本発明における第3の実施の形態であるハイブリッド・キャパシタバッテリ1Cの構成を示している。前述した実施の形態では、キャパシタセル10A,10Bを収装したキャパシタ体4A,4Bが、バッテリケース3A内でバッテリセル20Aと並列した状態で収装されており、その分だけバッテリセル20Aの数が減ってバッテリ全体の電圧と容量が減少したものとなっていたが、この実施の形態では、キャパシタセル10Cを有したキャパシタ体4Cがバッテリケース3Bに対して外付けの構成となっており、1個のバッテリセル20Aが約2Vの場合、全体で約12Vのバッテリとなる。
車載用の鉛バッテリを想定した場合、その上面側には比較的スペースに余裕があることから、バッテリケース3Bの上蓋上方で横長方形のケース4a内にキャパシタ43を3個並列に接続してなるキャパシタセル10Cが6個、前記上蓋上面に沿って横方向に並列して収装された状態のキャパシタ体4Cとしたものである。この場合、キャパシタ体4Cは、バッテリケース3Bの上面に対し着脱操作自在なものであることが好ましく、且つ、その鉛バッテリとしては、バッテリ液の漏出による接続線(図1に示す符号51,52,61,62,71,72,81,82および図2に示す符号54,55,56,63,64,73,74,83,84,93,94)の短絡事故を回避しながら優れたバッテリ機能を長期間に亘って維持するという観点から、密閉式のものであることが好ましい。
また、図4に示したように、各キャパシタセル10Cは、接続先のバッテリセル20Aの上方に位置しながら、その接続端子が、接続先の各バッテリセル20Aから延設されバッテリケース3Bの上蓋上面に露出した接続端子の上方に位置する配置としてあるため、その接続距離を最短に抑えられるようになっており、且つ、キャパシタ体4Cを固定する動作だけでキャパシタセル10Cとバッテリセル20Aがそのまま接続されるようになっている。
図5は、前述したハイブリッド・キャパシタバッテリ1Cの平面図を示している。図のように、一般的な鉛バッテリは、その上面に比較的広いスペースを有していることから、この面に密着するように薄型のキャパシタ体4Cを上置き式に配置することで、過剰なサイズアップや接続の際の過剰な手間を伴うことなく、鉛バッテリとキャパシタを複合化(ハイブリッド)することができる。この場合、バッテリ電極(ターミナル)18,19と液口栓36は、一方の長辺側に寄せた配置とすれば良い。
図6は、前述したハイブリッド・キャパシタバッテリ1Cの応用例としてのハイブリッド・キャパシタバッテリ1Dであるが、キャパシタ体4Dをバッテリケース上面に上置きで配置するのではなく、その側面に密着配置した構成となっており、このようにしても前述と同様の効果が期待できる。この場合、バッテリ電極(ターミナル)18,19と液口栓36は、本来の位置のままで良いが、取り付ける側のバッテリ側面には、キャパシタ体4Dを連結するための手段を設けるとともに、接続端子を接続可能にするための構造を設ける必要がある。
図7は、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリ1Cの応用例としてのハイブリッド・キャパシタバッテリ1Eを示している。この例では、キャパシタ体4Eが各キャパシタセル10Dから接続端子まで延設した接続線の途中に充放電制御手段である充放電制御回路49が配設されている点を特徴としたものであるが、この特徴部分による構成は、前述した総ての例においても適用することができる。
即ち、キャパシタ自体は内部抵抗が極めて低いため瞬時に大電流が出入力しやすい特性を有しているが、過大な電力の入力で損傷してしまう事態や必要時に充分に出力できない事態も懸念されることから、各キャパシタセル10Dにおける出入力量を適度な範囲内に制御したり、各バッテリセル20Aの充放電状態又は/及び電力の出入力状況に応じて、その出入力量を制御したりする機能を賦与したものである。
図8は、上述したバッテリセル20Aの応用例としてのバッテリセル20Bを示している。即ち、鉛バッテリとキャパシタを複合化した場合、バッテリセルの電極板、殊に、キャパシタ側に接続される端部側の負極板(鉛板)が比較的短期間で損傷を受けやすいという問題がある。そこで、その端部側の負極板である鉛板12の外面総てを覆うように銅板13を面接続にて配設した点を特徴としている。
この場合、キャパシタセルからの接続線は、その銅板13に接続することで鉛板の劣化を最小限に抑えることが可能となり、また、その銅板13は、カーボンナノチューブ等のナノカーボン材料を混入した導電性接着剤等で接続性を高めて面接続・固定することにより、接続箇所による抵抗・ロスを最小限に抑えながらその接続状態を長期間良好に維持しやすいものとなる。そして、斯かるバッテリセル20Bは、少なくともバッテリにおけるマイナスのバッテリ電極18に近接する位置のバッテリセルとして用いることが好ましい。
図10は、各蓄電デバイスの特性及び本発明の特性について、エネルギー密度と出力密度の図表上における分布で示したものである。即ち、電気二重層キャパシタとリチウムイオンキャパシタは、リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度が顕著に低いという難点を有している。これに対し、鉛蓄電池はエネルギー密度が公表30〜40Wh/kgであるものの、体積エネルギー密度は60〜75Wh/I、理論エネルギー密度は100Wh/kgを超えると言われている。
したがって、各バッテリセルに対し各々並列に接続するキャパシタセルのキャパシタとして、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタを使用することで、上述したキャパシタとバッテリの分布的複合化による効果も相俟って、大幅なエネルギー密度の改善とバッテリ性能の向上が期待され、且つ、バッテリ寿命の大幅な延長も期待できるものである。
図11は、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリの機能を検証するために作成した実験装置の写真である。この装置では、図4のハイブリッド・キャパシタバッテリと同様に2Vのバッテリセル6個を直列に接続してなる市販のバイク用バッテリ(12V)における各バッテリセルに、それぞれ1個(図4では3個)のキャパシタ(22F、耐電圧2.3V、端子間電圧2.1V)を並列に接続したものであり、その各バッテリセルとキャパシタセルを接続している接続線の途中に、モータ(負荷)に接続したバッテリ/キャパシタ切替用リレーと電流計測用のICを接続し、その計測値をシーケンサーに取り込んで、バッテリセルとキャパシタセルの間の電流CH1と、キャパシタセルとモータの間の電流CH2を計測するものとした。
(実験内容)
実験1:モータ起動から安定回転まで、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
実験2:モータを安定回転から停止させる際、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
実験3:モータの安定回転時にモータ軸に負荷をかけ、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
実験1:モータ起動から安定回転まで、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
実験2:モータを安定回転から停止させる際、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
実験3:モータの安定回転時にモータ軸に負荷をかけ、CH1とCH2の電流値の推移を観察した。
(結果)
実験1:モータ起動時、モータを実際に動かしているCH2は、瞬間的に770mAの電流が流れたのに対し、バッテリから流れるCH1は当初CH2の半分の350mAから始まり、その後、約30秒かけてCH2の電流値とほぼ同じ値を示した。
実験2:モータ停止時、CH2の電流は瞬時に0Aになったのに対し、CH2は、起動時の逆方向に流れ30秒〜1分かけて0Aとなった。
実験3:モータに安定時から負荷をかけると、CH2は770mAから急激に1000mAを超えたのに対し、CH1はCH2に遅れて追いかけるように電流が上昇した。
実験1:モータ起動時、モータを実際に動かしているCH2は、瞬間的に770mAの電流が流れたのに対し、バッテリから流れるCH1は当初CH2の半分の350mAから始まり、その後、約30秒かけてCH2の電流値とほぼ同じ値を示した。
実験2:モータ停止時、CH2の電流は瞬時に0Aになったのに対し、CH2は、起動時の逆方向に流れ30秒〜1分かけて0Aとなった。
実験3:モータに安定時から負荷をかけると、CH2は770mAから急激に1000mAを超えたのに対し、CH1はCH2に遅れて追いかけるように電流が上昇した。
(考察)
以上の実験結果から、急激な電流変化に対しキャパシタセルが即時に対応したことが分かり、その後、バッテリセルからゆっくりと電流が放出されることが分かった。したがって、急速な電流変化には即時に対応できないというバッテリの弱点を、バッテリセルごとに接続したキャパシタセルで充分に補完できる、ということを検証することができた。
以上の実験結果から、急激な電流変化に対しキャパシタセルが即時に対応したことが分かり、その後、バッテリセルからゆっくりと電流が放出されることが分かった。したがって、急速な電流変化には即時に対応できないというバッテリの弱点を、バッテリセルごとに接続したキャパシタセルで充分に補完できる、ということを検証することができた。
図12は、上述したハイブリッド・キャパシタバッテリの機能をさらに詳細に検証するために実施した実験の構成図であって、(A)は各キャパシタセルが各バッテリセルに接続線で接続されているとともに隣接するキャパシタから延設された接続線同士が接続されて分岐部を有した状態にてバッテリセルに接続されており、複数のキャパシタセル同士が直列に接続された状態の本願Aであり、(B)は各キャパシタセルが、各バッテリセルに接続線で分岐部を有することなく直結式に接続されており、複数のキャパシタセル同士が接続線で直列に接続されていない状態の本願Bであり、(C)はバッテリセル同士が直列に接続されキャパシタセルが接続されていない状態の対照例Cである。
この実施例では、バッテリは各々2Vのバッテリセルを3つ直列に接続してなる6V(4Ah)の鉛バッテリを用い、キャパシタセルは単一の電気二重層キャパシタ(1000F、2.5V、Rubycon社製)を用いた。試験方法としては、鉛バッテリが安定するまで鉛バッテリ単独で10サイクルの充放電を繰り返した後、キャパシタを各バッテリセルに接続して図12に示した各構成として、各々8回充放電を繰り返し、その各回における充電容量と放電容量を測定した。その測定結果を以下に示す。
(結果)
充電容量(Charge)の平均は、本願Aが2446.76mAh、本願Bが2177.7mAhであり、対照例Cの1810.21mAhに対し顕著に大きく、本願Aが最も大きかった。また、放電容量(Discharge)の平均は、本願Aが1943.21mAh、本願Bが2054.35mAhであり、対照例Cの1407.14mAhに対し顕著に大きく、本願Bが最も大きかった。
充電容量(Charge)の平均は、本願Aが2446.76mAh、本願Bが2177.7mAhであり、対照例Cの1810.21mAhに対し顕著に大きく、本願Aが最も大きかった。また、放電容量(Discharge)の平均は、本願Aが1943.21mAh、本願Bが2054.35mAhであり、対照例Cの1407.14mAhに対し顕著に大きく、本願Bが最も大きかった。
(考察)
本願A,Bにおいては、各バッテリセルに並列接続したキャパシタの容量分に応じて全体のキャパシティが大きくなるとともにキャパシタの充放電特性が発揮されたことで、キャパシタのない鉛バッテリに比して顕著に優れた充放電性能を発揮したものと思われる。殊に、放電容量については、キャパシタをバッテリに直結した構成の本願Bが、バッテリのみの対照例Cに対し約46%の増加、キャパシタが直列に接続された構成の本願Aに対し約6%の増加となった。その原因は今後検証すべきところではあるが、キャパシタセル同士を直列に接続しないでバッテリセルに直結したことでキャパシタからバッテリセルまで最短距離で接続されたことに加え、接続線に分岐部(分岐線)を有していないことを原因として、放電時における抵抗がより小さく抑えられた可能性が想定される。
本願A,Bにおいては、各バッテリセルに並列接続したキャパシタの容量分に応じて全体のキャパシティが大きくなるとともにキャパシタの充放電特性が発揮されたことで、キャパシタのない鉛バッテリに比して顕著に優れた充放電性能を発揮したものと思われる。殊に、放電容量については、キャパシタをバッテリに直結した構成の本願Bが、バッテリのみの対照例Cに対し約46%の増加、キャパシタが直列に接続された構成の本願Aに対し約6%の増加となった。その原因は今後検証すべきところではあるが、キャパシタセル同士を直列に接続しないでバッテリセルに直結したことでキャパシタからバッテリセルまで最短距離で接続されたことに加え、接続線に分岐部(分岐線)を有していないことを原因として、放電時における抵抗がより小さく抑えられた可能性が想定される。
尚、上述した実施の形態においては、二酸化鉛板11と鉛板12の組み合わせによる鉛バッテリの場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のメタルバッテリにおいても実施可能である。また、各バッテリセルは負極板と正極板を2対有している場合の図を用いて説明したが、それが1対のものであっても本発明に含まれるものであり、一般的にはこれらよりも多い3対以上の場合が想定される。さらに、キャパシタセルとバッテリセルの接続端子の接続部分や接続線の露出部分において、カーボンナノチューブ等のナノカーボン材料を含有した導電性接着剤をその接合面や導電体表面に塗布しておくことにより、接続箇所における導電ロスや導電部分における抵抗を低減することができる。
以上、述べたように、本発明により、過剰な手間とコストを要さずに総合性能に優れたハイブリッドバッテリが得られるようになった。
1A,1B,1C,1D,1E ハイブリッド・キャパシタバッテリ、3A,3B,3C バッテリケース、3a,3b,3c,3d,3e,3f 収納室、4A,4B,4C,4D,4E キャパシタ体、10a ケース、10A,10B,10C,10D キャパシタセル、11 二酸化鉛板、12 鉛板、13 銅板、15 セパレータ、20A,20B バッテリセル、18,19 バッテリ電極、21,22 端子、36 液口栓、41,42,43 キャパシタ、49 充放電制御回路、51,52,54,55,56,61,62,63,64,71,72,73,74,81,82,83,84,93,94 接続線、100 電解質液
Claims (7)
- 間に電解質を有して対向した1対の負極板と正極板によるバッテリ要素を少なくとも1以上有してなるバッテリセルの複数個が、バッテリケース内を複数並列に仕切って形成した収納室内に各々収装された状態で直列に接続されてなるバッテリにおいて、少なくとも1以上のキャパシタを有してなるキャパシタセルが、前記各バッテリセルに対しその上方又は側方に配置されながら各々1個並列に接続されており、前記キャパシタセルが充放電時における所定のタイミングで接続された前記バッテリセルを機能的に補助する、ことを特徴とするハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記各キャパシタセルは、前記バッテリセルに対し接続線の途中に分岐部を有することなく直結されており、複数の前記キャパシタセル同士が前記接続線で直列に接続されていないものとされ、且つ、1つの前記キャパシタセルを構成する前記キャパシタが複数のものでは前記キャパシタ同士が並列に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記バッテリは、鉛バッテリであって前記バッテリセルを少なくとも2個以上備えているとともに、前記各バッテリセルが少なくとも1対以上の二酸化鉛板と鉛板を備えており、且つ、前記総てのバッテリセルが密閉状態で前記バッテリケース内に収装されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記複数個のキャパシタセルは、前記バッテリケースの上蓋上面に沿って横方向に並列した状態で配置されており、その端子側が並列配置された前記バッテリセルのうち接続先の前記バッテリセルの端子の上方に位置するものとされている、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記バッテリセルのうち、少なくとも直列接続の端部側で前記バッテリセルの端部側に位置する前記負極板の外面総てを覆うように銅板が面接続にて配設されており、前記銅板が前記キャパシタセルに接続されている、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記バッテリセルから前記キャパシタセルのキャパシタとの間を接続している接続線の途中には、そのときの充放電の状態に応じて前記キャパシタにおける電流の出入力を制御する充放電制御手段が配設されている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリ。
- 前記キャパシタセルの総てを所定形状のケースに収装しながら前記各キャパシタセルから延設した正負の接続端子がケース外面に露出してなるキャパシタ体であって、総ての前記バッテリセルをバッテリケース内の前記収納室に収装しながら前記各バッテリセルから延設した正負の接続端子が外部に露出している前記バッテリケース表面の連結面に対し、着脱操作可能な状態にて装着・固定され、前記装着により前記各バッテリセルから延設した接続端子と前記各キャパシタセルから延設した接続端子が接続されて、請求項1,2,3,4,5または6に記載したハイブリッド・キャパシタバッテリとなる、ことを特徴としたキャパシタ体。
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