JP3216195B2 - 導電性複合体の製造方法 - Google Patents

導電性複合体の製造方法

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JP3216195B2
JP3216195B2 JP01937092A JP1937092A JP3216195B2 JP 3216195 B2 JP3216195 B2 JP 3216195B2 JP 01937092 A JP01937092 A JP 01937092A JP 1937092 A JP1937092 A JP 1937092A JP 3216195 B2 JP3216195 B2 JP 3216195B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基材の表面に導電性を
付与することによる導電性複合体の製造方法に関する。
とくに本発明は、導電性が長時間持続し、気温や湿度な
どの環境変化に影響されない帯電防止用や電磁波遮断用
の材料を提供するものであり、電子・電気製品や建築分
野などに有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、電気・電子機器の急速な発展に伴
い、静電気や電磁波に敏感な部品類が多方面で使用され
るようになり静電気管理技術や電磁波遮断技術の重要性
が高まってきた。電気・電子機器本体やそれらが置かれ
ている室内の机や床に使用される汎用高分子やエンジニ
ヤリングプラスチックスのほとんどすべては本来絶縁性
の材料であるため、これら高分子材料に生じる静電気や
外部からの電磁波が電子部品の正常な動作を害するとい
う問題がクローズアップされている。特に、乾燥状態に
おいて高分子材料に生じる電位は大きく、環境に影響さ
れない導電性材料が望まれている。また、ブラウン管な
どの表示装置には透明な帯電防止材料が必要となる。
【0003】従来、樹脂に導電性を持たせるには、カー
ボンブラックやカーボン繊維を樹脂に添加する方法(例
えば、特公平3−50792号公報)、鉄、銅、ニッケ
ル、ステンレスなどの金属粉や繊維を樹脂に添加する方
法、カチオン系、アニオン系、非イオン系の各種界面活
性剤を樹脂に練り込む方法(例えば、特開昭58−12
5741号公報、特開昭64−24845号公報、特開
平1−135857号公報)などが知られている。
【0004】しかし、カーボンや金属を樹脂に添加する
方法は、透明性樹脂を得るのが困難であり、色相も制限
される。また、樹脂の機械的物性を低下させる原因とな
る。一方、界面活性剤を用いる方法は、湿度や温度など
の外部環境によって導電性が影響を受けやすく、その持
続性も劣る。
【0005】一方、導電性有機重合体の製造方法として
は、電解酸化重合法と化学酸化重合法が知られている。
電解酸化重合法は、適当な溶媒に指示電解質と重合しよ
うとするモノマーを溶解し、この溶液に挿入した電極間
に定電圧を印加して陽極上に導電性有機重合体を生成さ
せるものである。この方法によれば、10S/cm以上
の高い導電性を得ることが可能であるが、大量生産およ
び大型製品の生産が難しく製造費用も高い。さらに、基
材がすでに導電性でなければないないため、この方法の
利用範囲は狭い。
【0006】化学酸化法は酸化剤を使用してモノマーを
酸化し、重合する方法である。この一つの方法は、モノ
マーを適当な溶媒に溶かし、適当な酸化剤により重合す
る方法である。この方法は電解酸化重合法にくらべ、安
価に重合体が得られ大量生産性に富むが、一般に導電性
が低く、重合体が粉末で得られ、しかもその重合体は一
般に不溶不融であるため成形性に著しく劣るという欠点
を持つ。他の方法として、基材上に蒸着したモノマーを
酸化剤で重合し、導電性薄膜を形成する方法がある。し
かしながら、従来技術ではこの場合も生成した重合体の
導電率は高くなく、かつ生成被膜が基材から剥離しやす
い等の欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、基材への導
電性付与方法における問題点を解決し、基材の透明性あ
るいは色彩、機械的物性を損なうことなく、安定な導電
性を付与する方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明者ら
は、鋭意検討の結果、芳香族化合物、特に窒素、酸素、
硫黄等の異種原子を含有した複素環化合物を用い、これ
を溶液中で塩化ビニル共重合体からなるバインダーポリ
マーと混合し、高分子成形体表面に塗布し、化学酸化重
合法により高分子成形体表面に電子伝導性の層を形成さ
せることにより基材の透明性あるいは色彩、機械的物性
を損なうことなく、安定な導電性が付与されることを見
出し本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明は、酸化剤、塩化ビニル
含有量が5〜95重量%の塩化ビニル系共重合体および
酸化重合したとき共役鎖を有する高分子となるモノマー
(以下、モノマーAという)とを溶剤に溶解して得た溶
液を基材に塗布し、溶媒を蒸発する導電性複合体の製造
方法に関する。
【0010】本発明をさらに詳しく説明すれば、本発明
は、酸化剤とバインダーポリマーとして作用する塩化ビ
ニル系共重合体を同一の溶媒に溶解して得た溶液(a)
と酸化重合したとき共役鎖を有する高分子となるモノマ
ーAを溶媒に溶解して得た溶液(b)を調整し、溶液
(a)と(b)を混合した後、基材表面上に塗布し、し
かるのち基材表面上で酸化電位を制御しながらモノマー
Aを重合しバインダーポリマーと共役鎖で構成される高
分子との複合体を形成させるプロセスからなる。この
時、酸化剤濃度および酸化剤とモノマーAとの混合比、
並びに溶媒の選択によって酸化電位を制御することがで
き、これにより最終的に最適な導電性を有する薄膜を高
分子成形体表面に形成させることができる。溶液(a)
と(b)の混合は、混合液を基材表面に塗布する直前で
あることが望ましい。
【0011】本発明における塩化ビニル系共重合体と
は、分子内に塩化ビニルからなる結合単位を平均で5〜
95重量%含有するものである。この共重合体を構成す
る塩化ビニル以外のモノマーの具体的例としては、酢酸
ビニル、酪酸ビニル、ビニルプロピオン酸などのビニル
エステル類およびその鹸化物、ビニルエチルエーテルな
どのビニルエーテル類、マレイン酸、イタコン酸などの
不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸
などの不飽和ジカルボン酸無水物、メチルマレイミド、
ヘキシルマレイミドなどの不飽和ジカルボン酸イミド化
物、アクリル酸、アクリル酸メチルなどのアクリル酸誘
導体、メタクリル酸、メタクリル酸メチルなどのメタク
リル酸誘導体、2−または4−ビニルピリジン、N−ビ
ニル−2−ピロリドンなどのビニル複素環化合物などが
ある。
【0012】本発明でバインダーポリマーとして使用す
る塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニルおよび上記から
選ばれる少なくとも一種類以上のモノマーから構成され
る。塩化ビニル以外のモノマーは共重合体中に0.5〜
95重量%含まれればよい。このようなバインダーポリ
マーは、モノマーAに対して親和性を有し、且つ広範囲
の基材に対して良好な密着性を有する。特に、基材がポ
リ塩化ビニル系である場合にはその効果が大である。
【0013】本発明において使用される酸化重合したと
き共役鎖で構成される高分子となるモノマーAとして、
5員複素環化合物では、ピロール誘導体、フラン誘導
体、又はチオフェン誘導体が挙げられ、6員環芳香族で
は、アニリン、ベンジジン等が挙げられる。ピロール誘
導体としては、非置換ピロール、N−アルキルピロール
の如きN−置換ピロール、並びに3位又は3位と4位に
〜Cのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子
を有する3−アルキルピロール、3,4−ジアルキルピ
ロール、3−アルコキシピロール、3,4−ジアルコキ
シピロール、3−クロロピロール又は3,4−ジクロロ
ピロール等がある。フラン誘導体としては、非置換フラ
ン並びに3位又は3位と4位にC〜Cのアルキル
基、アルコキシ基、ハロゲン原子を有する3−アルキル
フラン、3,4−ジアルキルフラン、3−アルコキシフ
ラン、3,4−ジアルコキシフラン、3−クロロフラン
又は3,4−ジクロロフラン等がある。チオフェン誘導
体としては、非置換チオフェン並びに3位又は3位と4
位にC〜Cのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン
原子を有する3−アルキルチオフェン、3,4−ジアル
キルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3,4−
ジアルコキシチオフェン、3−クロロチオフェン又は
3,4−ジクロロチオフェン等がある。
【0014】本発明で使用される酸化剤としては、金属
系と非金属系とがあるが、反応媒体中で高導電性重合体
を生成する電解酸化重合法と同程度の酸化電位を有する
酸化剤が好適である。ピロール類、フラン類、チオフェ
ン類の金属系酸化剤としては、鉄(III)塩、モリブ
デン(V)塩、ルテニウム(III)塩などがある。ア
ニリンの金属系酸化剤としてはクロム酸(IV)塩、重
クロム酸(VI)塩および過マンガン酸(VII)塩等
がある。一方、非金属系酸化剤としては、過酸化水素、
過酸化ベンゾイル等の過酸化物、ペルオクソ二硫酸、ペ
ルオクソ二硫酸カリウム等のペルオクソ酸類、次亜塩素
酸、次亜塩素酸カリウム等の酸素酸類がある。ICトレ
ー、ICキャリアテープなど用途によっては、導電性被
膜でコートした高分子成形体を純水などで洗浄し、残留
する金属類を除くか、もしくは非金属系の酸化剤が用い
る必要がある。
【0015】本発明における基材としては、有機材料と
無機材料とがある。これらのうち、有機材料としては、
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも良く、特に限
定されない。熱可塑性樹脂の例を示すと、ポリオレフィ
ン類(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビ
ニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、
ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、
ナイロン12など)、ポリイミド、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(P
BT)、光学的異方性を示すポリエステルを含むポリエ
ステル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケト
ン、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリエ
チレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニ
レンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサル
フォン、ポリエーテルサルフォンなどがある。熱硬化性
樹脂の例としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステ
ル、エポキシ樹脂などがある。
【0016】これらの高分子には、安定剤、可塑剤、難
燃剤、滑剤などの添加剤、ガラス繊維、ウイスカーなど
の補強材、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、マイカ、
タルクなどの無機フィラーが添加されていてもよい。
【0017】本発明におけるプロセスの一例を示すと、
まず、酸化剤とバインダーポリマーを同一の溶媒に溶解
した溶液(a)またはこれらをそれぞれ別々の溶媒に
溶解した溶液(それぞれ、aとa)と、酸化重合し
たとき共役鎖を有する高分子となるモノマーAを単独あ
るいはこのモノマーAを溶媒に溶解させた溶液(b)と
が調製される。
【0018】ここで使用される溶媒としては、(a
と(b)あるいは(a)、(a)と(b)を混合し
た時に、酸化剤、バインダーポリマーあるいは上記モノ
マーAのいずれかが単離析出することがなければ、特に
限定されず、2種以上の溶媒を組み合わせて用いること
もできる。このような溶媒としては、メタノール、エタ
ノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの
脂肪族アルコール、ヘキサフルオロイソプロパノールな
どのようなハロゲン化アルコール、フェノール、クロロ
フェノール、クレゾール、フルオロフェノール等のフェ
ノール類、ジエチルエーテルなどの各種エーテル、メチ
ルイソブチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン
類、ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が望ましい。さ
らに、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シク
ロヘキサンなどの炭化水素、クロロホルムなどのハロゲ
ン化化合物などの非極性溶媒も候補として挙げることが
できる。ただし、酸化剤の酸化電位は溶媒の種類によっ
て大きく変化するので、溶媒の選択においてはこの点十
分に考慮する必要がある。
【0019】本発明で、酸化剤、バインダーポリマーお
よびモノマーAとを溶解して得た溶液を高分子成形体に
塗布場合の一般的な方法としては、上記の溶液(a
と(b)あるいは(a)、(a)と(b)とを混合
直後あるいは少し時間が経過してから高分子成形体に塗
布する。または、酸化剤、バインダーポリマー、モノマ
ーAを最初から一つの溶媒に溶解してもよい。酸化剤と
モノマーAを混合してから塗布するまでの時間は、5時
間以内が望ましい。それ以上時間が経過すると、溶液中
で反応が進みすぎてゲル状物が生成することがある。高
分子成形体への塗布方法として、刷毛、アプリケータ、
スピンコーティング、スプレー、ディップコーティング
法などを用いることができる。溶液塗布を施した成形体
を、空気あるいは窒素雰囲気中で、−10〜50℃、好
ましくは0〜40℃にて溶媒を蒸発除去する。
【0020】溶媒が除去され酸化剤濃度が高まるととも
に酸化反応が活発化し、モノマーAの重合が進行する。
最終的にバインダーポリマー中に導電性高分子のネット
ワークが生じ、被膜は溶媒に不溶となる。
【0021】本発明者らの検討によれば、基材表面に生
成した導電性重合体の導電性は酸化重合時の酸化電位に
大きく依存する。即ち、重合反応時における酸化電位の
制御は、溶媒の種類、酸化剤の酸化体/還元体比、温度
により可能である。溶媒としてメタノールを用いた場
合、酸化剤(たとえばFeCl)の還元体(FeCl
)の添加量は酸化体に対して50mol%以下、好ま
しくは0.01〜20mol%であり、この時、生成重
合体の導電率が大きくなる酸化電位が得られる。
【0022】また、基材に塗布する溶液において、酸化
剤の濃度は、重量比で、溶媒100に対して1〜30で
あることが望ましい。さらに、モノマーAと酸化剤の量
としては、両者を溶液中に混合した時モノマーA濃度が
酸化剤濃度の0.04〜0.5倍(重量比)になること
が望ましい。また、酸化剤とバインダーポリマーとの重
量混合比は、0.05〜10対1、好ましくは、0.1
〜2対1である。
【0023】さらに、上記溶液の組成は、重量比で、溶
媒100に対して、酸化剤が1〜30、モノマーAが
0.1〜12、バインダーポリマーが0.25〜100
であることが望ましい。また、バインダーポリマーに対
するモノマーAの重量比が0.1〜0.5であり且つ酸
化剤に対するモノマーAの重量比が0.04から0.5
であることが望ましい。
【0024】一方、酸化剤濃度が上記よりも大きくなる
と、基材上に塗布する前に溶液中で重合反応が急速に進
行し、粒状物(ゲル)が生成し、均一な表面被膜が得ら
れないことがあり、また、バインダーポリマーの重量混
合比が上記より少ない場合も、均一な表面被膜が得られ
にくく、多い場合は、最終的に得られる複合体の導電性
が不十分となるおそれがある。
【0025】本発明において、基材の色相や透明性を損
なう事なく導電性を付与するためには、表面に形成され
る導電性被膜の厚さは0.01μm〜20μmが望まし
く、さらに望ましくは0.05μm〜5μmである。被
膜の厚さがこれより薄いと十分な導電性が得られず、厚
すぎる場合は、透明性が悪くなったり成形時に被膜の切
断や剥離が生じ導電性が損なわれ易くなるなどの問題が
生じる。
【0026】さらに、本発明においては、上記酸化重合
により生じた導電性高分子を化学的あるいは電気化学的
に還元した後、化学酸化あるいは電解酸化により酸化す
ると共にドーピングを行うことにより帯電防止効果を一
層高めることができる。化学的還元に使用する還元剤と
しては、ヒドラジン、抱水ヒドラジン、フェニルヒドラ
ジン等のヒドラジン類、水素化リチウムアルミニウム、
水素化ホウ素ナトリウム等の水素化金属等を挙げること
ができる。化学還元剤は、通常、重合体の1窒素原子あ
たり1〜10倍モル使用されるが、必ずしもこれに限定
されるものではない。電解還元では、成形体表面を陰極
として0.01〜数十Vの印加電圧で電流を通じること
により脱ドープする。還元後、中性導電性高分子被膜
は、再度、化学的に酸化剤で再酸化されると共にドーピ
ングがなされる。このような再ドーピングに用いられる
ドーパントとしては、還元された中性重合体を再酸化す
るに十分な酸化力を有し、且つドーパントとして有効な
電子受容性を有する化合物ならすべて用いることができ
る。このような酸化剤としては、ヨウ素、臭素、塩素な
どのハロゲン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三
フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、塩化第二鉄、塩化第二ス
ズ、四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化第二銅等のルイス
酸、塩酸、硫酸およびその塩(例えば、硫酸水素カリウ
ム、硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カ
リウム、過塩素酸鉄等)、あるいはホウフッ化水素酸お
よびその塩(例えば、フッ化ホウ素ナトリウム、フッ化
ホウ素カリウム、フッ化ホウ素アンモニウム、フッ化ホ
ウ素テトラアルキルアンモニウム等)などを挙げること
ができる。
【0027】また、電気化学的に再度、酸化およびドー
ピングを行うことも可能である。この場合、指示電解質
として上記酸化剤を使用し、導電性高分子被膜を陽極と
して電流を通じればよい。
【0028】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を説明するが、
本発明はこれらの実施例により何等限定されるものでは
ない。
【0029】以下の実施例において、基材と導電性被膜
との密着性試験は、サンプルを室温で1週間放置後、ゴ
バン目カットを行い、セロテープを手指で強く圧着さ
せ、一気に剥すことにより行った。この時、剥がれずに
残った目の数により密着性の判定を行った。
【0030】実施例1 塩化第二鉄12g、塩化第一鉄12mgおよびバインダ
ーポリマーとして塩化ビニル/酢酸ビニル/無水マレイ
ン酸(重量比で70:29:1)共重合体(電気化学工
業(株)社製、商品名デンカビニール#1000CM
2)10gをアセトン/トルエン/酢酸エチル(重量比
で5:25:70)混合溶媒200gに溶解した。一
方、ピロールを窒素雰囲気下で蒸留精製し、その2gを
同じ混合溶媒10gに溶解した。両者を混合攪拌し、2
時間後、該混合溶液をスピンコーティング法により、基
材のポリ塩化ビニル板上に塗布した。ここで、ポリ塩化
ビニル板の組成は、塩化ビニル樹脂(東ソー(株)社
製、商品名リューロンTH800、重合度約800)
00部、DOP40部、重炭酸カルシウム50部、ステ
アリン酸バリウム2部、ステアリン酸亜鉛1.5部であ
った。
【0031】上記試料をデシケータ中室温で、窒素ガス
を流通させ、溶媒を蒸発除去した。溶媒の蒸発ととも
に、ポリ塩化ビニル板は薄い黄色から薄い緑色に変化し
たが、最後まで透明性は保たれた。試料を、十分乾燥
後、メタノールで12時間洗浄し、真空下、室温で24
時間乾燥させた。得られたポリ塩化ビニル板表面の導電
率は約10−4S/cmと帯電防止材料として十分な値
であった。また、導電率は温度や湿度により大きく変化
することはなかった。1か月放置後、セロテープによる
剥離試験では表面被膜の剥離は認められなかった。
【0032】比較例1 実施例1において、バインダーポリマーをポリ酢酸ビニ
ル(分子量20,000)とした他は、実施例1と同様
にポリ塩化ビニル基材上に導電性薄膜を形成させた。得
られた基材表面の導電率は約10−4S/cmと大き
く、導電率は温度や湿度により大きく変化することはな
かった。ところが、セロテープによる剥離試験では30
%程度の表面被膜の剥離が認められた。
【0033】実施例2 実施例1において、基材をポリエチレン板とした他は、
実施例1と同様に基材上に導電性薄膜を形成させた。得
られたポリエチレン板表面の導電率は約10-4S/cm
であり、導電率は温度や湿度により大きく変化すること
はなかった。また、セロテープによる剥離試験では表面
被膜の剥離は認められなかった。ここで、ポリエチレン
板は、ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロン
ハード5730)を成形金型の表面温度を230℃に設
定した加圧成形機((株)東洋精機製作所製、商品名ラ
ボプレス)に供給し、80kg/cm 2 の加圧下で15
分間加熱し、その後冷却し成形金型から取り出すことに
より作成したものである。
【0034】比較例2 実施例2において、バインダーポリマーをポリ酢酸ビニ
ル(分子量20,000)とした他は、実施例2と同様
にポリエチレン基材上に導電性薄膜を形成させた。得ら
れたポリエチレン基材表面の導電率は約10−4S/c
mであり、導電率は温度や湿度により大きく変化するこ
とはなかった。ところが、セロテープによる剥離試験で
は50%以上の表面被膜の剥離が認められた。
【0035】実施例3 実施例1において、基材をポリカーボネート(帝人化成
(株)製、Panlite L=1250(商品名))
板とした他は、実施例1と同様に基材上に導電性薄膜を
形成させた。得られたポリカーボネート板表面の導電率
は約10−4S/cmであり、導電率は温度や湿度によ
り大きく変化することはなかった。また、セロテープに
よる剥離試験では表面被膜の剥離は認められなかった。
【0036】実施例4 塩化第二鉄20g、塩化第一鉄5mgおよびバインダー
ポリマーとして塩化ビニル/ビニルプロピオン酸(重量
比で70:30)共重合体(東ソー(株)社製、商品名
リューロンQQC730)10gをトルエン/酢酸エチ
ル(重量比で30:70)混合溶媒200gに溶解し
た。一方、ピロールを窒素雰囲気下で蒸留精製し、その
2gを同じ混合溶媒10gに溶解した。両者を混合攪拌
し、2時間後、該混合溶液をスピンコーティング法によ
り、基材のエチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル
含量10%)板上に塗布した。ここで、エチレン・酢酸
ビニル共重合体板はエチレン・酢酸ビニル共重合体(東
ソー(株)製、商品名ウルトラセン543、酢酸ビニル
含量10%)を成形金型の表面温度を150℃に設定し
た加圧成形機((株)東洋精機製作所製、商品名ラボプ
レス)に供給し、80kg/cm 2 の加圧下で15分間
加熱し、その後冷却し成形金型から取り出すことにより
作成したものである。
【0037】上記試料をデシケータ中室温で、窒素ガス
を流通させ、溶媒を蒸発除去した。溶媒の蒸発ととも
に、エチレン・酢酸ビニル共重合体板は薄い黄色から薄
い緑色に変化した。試料を、十分乾燥後、メタノールで
12時間洗浄し、真空下、室温で24時間乾燥させた。
得られた基板表面の導電率は約5×10−5S/cmと
帯電防止材料として十分な値であった。また、導電率は
温度や湿度により大きく変化することはなかった。1か
月放置後、セロテープによる剥離試験では表面被膜の剥
離は認められなかった。
【0038】実施例5 実施例1で作成した導電性ポリ塩化ビニル板をフェニル
ヒドラジン200mgをエーテル10mlに溶かした溶
液に浸し、室温で撹拌しながら1時間反応させた。反応
後、フィルムをエーテルで洗浄し、真空乾燥した。この
フィルムを室温でデシケータ中、10時間ヨウ素蒸気に
さらすことにより酸化ドーピングした。このポリ塩化ビ
ニル板表面の導電率を測定したところ、0.1S/cm
となり導電率が増加することが確認された。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、高分子成形体への導電
性が容易に付与することができる。このとき表面の導電
性層を薄くすれば、元の材料の透明性や色相は、大きく
損なわれることはない。また、得られる導電性は長時間
持続し、気温や湿度にほとんど影響されない。従って、
本発明の方法を電子・電気製品や建築材料分野におい
て、半導体の静電気による損傷や放電による爆発事故を
防止のための帯電防止材料あるいは電磁波シールド材料
として極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 27/00 - 27/42 C08J 7/04

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化剤、塩化ビニル含有量が5〜95%の
    塩化ビニル系共重合体および酸化重合したとき共役鎖を
    有する高分子となるモノマーとを溶剤に溶解して得た溶
    液を基材に塗布し、溶媒を蒸発することを特徴とする導
    電性複合体の製造方法。
  2. 【請求項2】酸化剤と塩化ビニル系共重合体とを同一の
    溶媒に溶解して得た溶液に酸化重合したとき共役鎖を有
    する高分子となるモノマーを溶解した後、この溶液を高
    分子成形体に塗布することを特徴とする請求項1記載の
    導電性複合体の製造方法。
  3. 【請求項3】塩化ビニル系共重合体が、ビニルエステル
    類、ビニルエーテル類、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジ
    カルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸イミド化物、ア
    クリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、およびビニル複
    素環化合物から選ばれた少なくとも一種類以上のモノマ
    ーから導かれる構成成分を含む請求項1又は2に記載の
    導電性複合体の製造方法。
  4. 【請求項4】モノマーがピロール系、フラン系およびチ
    オフェン系化合物より選ばれる請求項1〜3いずれかに
    記載の導電性複合体の製造方法。
  5. 【請求項5】酸化剤が鉄(III)塩、モリブデン
    (V)塩またはリテニウム(III)塩である請求項4
    に記載の導電性複合体の製造方法。
  6. 【請求項6】モノマーがアニリン系およびベンジジン系
    化合物より選ばれる請求項1〜3いずれかに記載の導電
    性複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】酸化剤がクロム酸(IV)塩、重クロム酸
    (VI)塩または過マンガン酸(VII)塩である請求
    項6に記載の導電性複合体の製造方法。
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