JP3213776B2 - 加熱定着方法 - Google Patents

加熱定着方法

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JP3213776B2 JP06139193A JP6139193A JP3213776B2 JP 3213776 B2 JP3213776 B2 JP 3213776B2 JP 06139193 A JP06139193 A JP 06139193A JP 6139193 A JP6139193 A JP 6139193A JP 3213776 B2 JP3213776 B2 JP 3213776B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真法、静電記録
法、磁気記録法に用いられる熱定着に適した静電荷像現
像用トナーを加熱により定着する加熱定着方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真法としては米国特許第
2,297,691号明細書、特公昭42−23910
号公報及び特公昭43−24748号公報等に記載され
ている如く多数の方法が知られているが、一般には光導
電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的
潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、
必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、
加熱、圧力、加熱加圧或いは溶剤蒸気などにより定着し
複写物を得るものであり、そして感光体上に転写せず残
ったトナーは種々の方法でクリーニングされ、上述の工
程が繰り返される。
【0003】近年このような複写装置は、単なる一般に
いうオリジナル原稿を複写するための事務処理用複写機
というだけでなく、コンピュータの出力としてのプリン
ターあるいは個人向けのパーソナルコピーという分野で
使われ始めた。
【0004】そのため、より小型、より軽量そしてより
高速、より高信頼性が厳しく追及されてきており、機械
は種々な点でよりシンプルな要素で構成されるようにな
ってきている。その結果、トナーに要求される性能はよ
り高度になり、トナーの性能向上が達成できなければよ
りすぐれた機械が成り立たなくなってきている。
【0005】例えばトナー像を紙などのシートに定着す
る工程に関して種々の方法や装置が開発されているが、
現在では熱定着方式がその主流をなしている。なかで
も、一対のローラーを用いるヒートロール定着方式は熱
効率が良い等の理由から、多く採用されている。その基
本的な構成は図15に示すごとくである。すなわち、図
において1は、加熱ローラーであり、2は、加圧ローラ
ーである。加熱ローラー1は加熱源としてのハロゲンヒ
ーター1cを中央に備え、芯金1bの外層には離型性の
よい樹脂で形成されるオフセット防止層からなる表層1
aを有している。一方、加圧ローラー2は芯金2b上に
弾性体層2aが施されている。加熱ローラー1の表面温
度をサーミスタ4で検知し、それが一定の温度領域には
いるようにハロゲンヒーター1cをON/OFFする。
加熱ローラー1と加圧ローラー2は圧接しており、適当
な挟圧部(ニップ部とも呼ばれる)をもって対をなして
いる。このローラーは駆動手段(図示せず)により本体
から駆動を受けて回転する。未定着画像は、転写材が定
着ガイド3を経て、この一対のローラーの挟圧部に進入
してそこを通過する際に、熱及び圧力で転写材に定着さ
れる。
【0006】このように加熱ローラーを介した加熱方式
はトナーに対し離型性を有する材料で表面を形成した加
熱ローラーの表面に被定着シートのトナー像面を接触さ
せながら通過せしめることにより定着を行なうものであ
り、加熱ローラーの表面と被定着シートのトナー像とが
接触するため、トナー像を被定着シート上に融着する際
の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことが
でき、電子写真複写機において非常に有効である。
【0007】そこで、ヒーターの熱をトナーにより効率
的に伝えるために、加熱ローラーの芯金の厚さはなるべ
く薄くすることが望ましい。
【0008】しかし、芯金が薄いと、加熱ローラー全体
の熱容量も小さくなるので、被定着シートが通過する時
に加熱ローラーから熱をうばわれやすくなるため、それ
を補うためにハロゲンヒーターがONになっている時間
が必然的に長くなる。連続通紙時には通紙部の加熱ロー
ラーの温度を一定領域に保つために非通紙部にも過剰の
熱量が供給される。そのためにそこだけ加熱ローラーの
温度が高くなりすぎて次に通過したトナー像の一部が加
熱ローラーに付着転移して被定着シートを汚すいわゆる
オフセット現象を生じることがある。
【0009】また、複写機等の電源のみがONになって
いる状態の時にも、ハロゲンヒーターはON/OFFを
繰り返しているが、熱容量が小さいと、このON/OF
Fによる加熱ローラーの温度の振れが大きい。また、こ
の時加圧ローラーの温度は下がっているので、ちょうど
加熱ローラーの温度が最も低くなった時に被定着シート
が定着器を通過すると、トナーに十分に熱が伝わらず、
定着性が悪くなることがある。
【0010】このようなことから、加熱ローラーの芯金
を薄くするるためには、非オフセット、定着温度領域の
広いトナーにすることが必要不可欠である。しかし、そ
のためには、トナーのバインダー樹脂、離型剤等のさら
なる改良がなければ実現することが困難である。
【0011】特開昭59−38772号公報に経時的に
弾性が増大するトナーを用いて、加熱ローラーの芯金を
薄くする技術が開示されているが、それでも低温での十
分な定着性、非オフセット性を得るには至っていない。
【0012】トナー中に離型剤としてワックスを含有さ
せることは知られている。例えば、特開昭52−330
4号公報、特開昭52−3305号公報、特開昭57−
52574号公報等の技術が開示されている。
【0013】また、特開平3−50559号公報、特開
平2−79860号公報、特開平1−109359号公
報、特開昭62−14166号公報、特開昭61−27
3554号公報、61−94062号公報、特開昭61
−138259号公報、特開昭60−252361号公
報、特開昭60−252360号公報、特開昭60−2
17366号公報などにワックス類を含有させる技術が
開示されている。
【0014】ワックス類は、トナーの低温時や高温時の
耐オフセット性の向上や、低温時の定着性の向上のため
に用いられている。しかしながら、これらの性能を向上
させる反面、耐ブロッキング性を悪化させたり、複写機
等の昇温などによって熱にさらされると現像性が悪化し
たり、また長期放置時にワックスがブルーミングして現
像性が悪化したりする。
【0015】従来のトナーでは、これらの面をすべてを
満足するものは無く、何らかの問題点が生じていた。例
えば、高温オフセットや現像性は優れているが低温定着
性が今一歩であったり、低温オフセットや低温定着性に
は優れているが、耐ブロッキング性にやや劣り、機内昇
温で現像性が低下するなどの弊害があったり、低温時と
高温時の耐オフセット性が両立できなかったりしてい
た。
【0016】また、低分子量ポリプロピレン(例えば、
三洋化成工業(株)製のビスコール550P、660
P、等)を含有するトナーが市販されているが、さらに
低温オフセット性の向上及び定着性の向上したトナーが
待望されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
のごとき問題点を解決したトナーの加熱定着方法を提供
することにある。
【0018】すなわち、本発明の目的は、ウエイトタイ
ムが短く、熱効率が良くしかも確実に定着を行うことの
できる加熱定着方法を提供することにある。
【0019】更に、本発明の目的は、低温時の定着性、
耐オフセット性に優れた加熱定着方法を提供することに
ある。
【0020】更に、本発明の目的は、高温時の耐オフセ
ット性に優れた加熱定着方法を提供することにある。
【0021】更に、本発明の目的は、耐ブロッキング性
に優れ、長期間放置しても現像性が劣化しない画像形成
方法を提供することにある。
【0022】更に、本発明の目的は、機械本体の昇温に
対する耐久性に優れた画像形成方法を提供することにあ
る。
【0023】本発明の主たる目的は、上記の目的を矛盾
することなく合い成り立たせる加熱定着方法を提供する
ことにある。
【0024】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、示差
走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温
時の吸熱ピーク及び降温時の発熱ピークに関し、吸熱の
オンセット温度が50〜110℃の範囲にあり、温度7
0〜130℃の領域に少なくとも1つの吸熱ピークP 1
があり、該吸熱ピークP 1 のピーク温度±7℃の範囲内
に降温時の最大発熱ピークがある、特性を満足する炭化
水素系ワックス及び結着樹脂を含有する静電荷像現像用
トナーで形成されたトナー像を、加熱ローラーの芯金の
厚さが1mm未満である定着器を用いて、転写材に接触
加熱定着することを特徴とする加熱定着方法に関する。
【0025】 また、本発明は、好ましくは、該トナー
が、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線におい
て、昇温時の吸熱に関し、吸熱ピークにおける立ち上
がり温度が80℃以上であり、吸熱ピークにおけるオン
セット温度が105℃以下であり、吸熱ピーク温度が1
00〜120℃の範囲にあり、降温時の発熱ピークに
関し、発熱ピーク温度が62〜75℃の範囲にあり、発
熱ピークの強度比が5×10-3以上である特性を満足す
ることを特徴とする。
【0026】更に本発明に関し詳しく説明する。
【0027】本発明においてトナーは、接触加熱定着手
段により、普通紙またはオーバーヘッドプロジェクター
(OHP)用透明シートのごとき転写材へ加熱定着され
る。
【0028】接触加熱定着手段として、本発明において
は、加熱加圧ロール定着装置を用い、特に加熱ローラー
の芯金の厚さが1mm未満であることを特徴とする。芯
金の厚さが1mm未満であることにより、ヒーターの熱
が効率よく、かつ迅速に加熱ローラーの表面に伝達され
るので、ウエイトタイムを短縮することができ、ファー
ストコピーのクイックスタートを可能にする。加熱ロー
ラーに十分な強度を与えるために、芯金の材質として
は、鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム、ニッケ
ル鋼、クロム鋼等を用いることが好ましい。
【0029】また、従来加熱ローラーの芯金の厚さを小
さくすることにより生じていた問題は、本発明のトナー
を用いることにより解決される。
【0030】以下、本発明のトナーに関し詳しく説明す
る。
【0031】トナーを、示差走査熱量計により測定した
データを解析することにより熱とトナーの間の挙動を知
見することができる。すなわち、該データにより、トナ
ーへの熱のやり取りとトナーの状態の変化を知ることが
できる。例えば、オフセット現象を防止できるかといっ
たことや、保存時や実際に使用時の熱の影響、例えば耐
ブロッキング性はどうであるとか、昇温による現像性へ
の影響はどの程度かを知ることができる。
【0032】昇温時には、トナーに熱を与えた時の状態
の変化を見ることができ、ワックス成分の転移、溶融、
溶解に伴う吸熱ピークが観測される。本発明は、吸熱ピ
ークの立ち上がりが80℃以上であることを特徴とし、
耐ブロッキング性に優れている。80℃未満であるもの
は、比較的低温からトナーが長時間レンジでの塑性変化
をしはじめ、保存性に劣ったり、昇温に対して現像性の
劣化を生じやすい。更に、吸熱のオンセット温度が10
5℃以下(好ましくは、90〜102℃の範囲)である
ことを特徴とし、これにより、低温定着性に優れてい
る。105℃を超える場合には、短時間レンジでの塑性
変化の温度が高くなり、耐低温オフセットや定着性が劣
るようになる。
【0033】また、吸熱ピーク温度が100〜120℃
(好ましくは、102〜115℃)の範囲にあることを
特徴とし、これにより、良好な定着性と、耐高温オフセ
ット性が得られる。100℃未満では、高温にならない
うちに結着樹脂中にワックス成分が溶解してしまい、高
温時に十分な耐オフセット性を得ることが困難である。
120℃を超える場合には、十分な定着性が得られにく
い。
【0034】すなわち、熱定着に用いられるトナー用結
着樹脂は、およそ100℃付近から定着可能な粘弾性領
域に入るので、この温度領域でワックス成分が融解する
ことは、樹脂への可塑効果を増大し、定着性を向上さ
せ、更に離型効果を十分に発揮することができ耐オフセ
ット性を向上させることができる。したがって、定着ロ
ーラに巻きつくこともなく、分離爪に頼ることもないの
で爪跡などもつきにくく、加圧ローラーを汚すこともな
く、加圧ローラーヘの巻きつきも発生しない。上記の条
件が満たされていれば、他の領域にもピークが存在して
も構わない。
【0035】降温時には、トナーの常温下での状態や冷
却時の状態の変化を見ることができ、ワックス成分の転
移、凝固、結晶化に伴う発熱ピークが観測される。本発
明は、発熱ピーク温度が62〜75℃(好ましくは65
〜72℃)の範囲内にあることを特徴とし、これによ
り、良好な定着性と耐ブロッキング性を示す。一方、7
5℃を超える場合には、ワックスの溶融状態にある温度
範囲が狭くなり定着性に劣るようになる。62℃未満の
場合には、ブロッキング、融着などを生じやすく、ま
た、結着樹脂へ可塑効果が低温時まで持続し、排紙部で
画像部に爪跡がついたり排紙トレイ上で転写材の接着が
生じることがある。
【0036】ピーク強度比が5×10-3以上(好ましく
は10×10-3以上であり、特に好ましくは15×10
-3以上)であることを特徴とする。ピーク強度比が大き
い方が、ワックス成分が高密度であったり、結晶化度が
高く硬度が高くなり、ブロッキングも生じにくく、ま
た、摩擦帯電性に優れている。5×10-3未満の場合に
は、耐ブロッキング性が悪化したり、現像性に影響が出
たりし、特に昇温時の現像性の劣化が見られるようにな
り、特にピーク温度が低くなった時に現われやすい。ま
た、感光体上への融着も発生しやすくなる。
【0037】本発明におけるDSC測定では、トナーの
熱のやり取りを測定しその挙動を観測するので、測定原
理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で
測定する必要がある。例えば、パーキンエルマー社製の
DSC−7が利用できる。
【0038】測定方法は、ASTM D3418−82
に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回
昇温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/min、
温度0〜200℃の範囲で降温、昇温させた時に測定さ
れるDSC曲線を用いる。各温度の定義は次のように定
める。 トナーにおける吸熱ピーク(プラスの方向を吸熱とす
る) トナーにおけるピークの立ち上がり温度(LP):ベー
スラインより明らかにピーク曲線が離れたと認められる
温度。すなわち、ピーク曲線の微分値が正で、微分値の
増加が大きくなりはじめる温度あるいは微分値が負から
正になる温度をいう。(図1及び図3乃至図6に具体的
な例を示す。) トナーにおける吸熱のオンセット温度(OP):ピーク
曲線の微分値が最大となる点において曲線の接線を引き
接線とベースラインとの交点の温度(図1に具体的な例
を示す。)ワックスを含有するトナーにおいては、温度
70℃以上にピークを有する吸熱ピークを対象とする。
【0039】トナーにおける吸熱ピークの温度(P
P):ピークトップの温度(120℃以下の領域での最
大のピーク。) トナーにおける発熱ピーク(マイナスの方向を発熱とす
る) トナーにおける発熱ピークの温度:最大のピークのピー
クトップの温度 トナーにおける発熱ピーク強度比:上記のピークのピー
クトップ前後の曲線の微分値が極大及び極小となる点に
おいてそれぞれ曲線の接線を引き各接線とベースライン
交点の温度差をΔTとし、単位重量あたりのベースライ
ンからピークトップまでの高さをΔH(測定されたピー
クの高さを測定試料の重量で割った値mW/mg)とし
た時のΔH/ΔT(図2及び図7乃至図10にΔH、Δ
Tの具体的な例を示す)。すなわち、この値が大きいと
いうことは、ピークがシャープであることを示してい
る。
【0040】本発明に用いられる炭化水素系ワックス
は、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下
でチーグラー触媒で重合した低分子量のアルキレンポリ
マー、高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得ら
れるアルキレンポリマー、一酸化炭素及び、水素からな
る合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留
残分を水素添加して得られる合成炭化水素などから、特
定の成分を抽出分別した炭化水素ワックスが用いられ
る。プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留を利用した分別結
晶方式により炭化水素ワックスの分別が行われる。すな
わちこれらの方法で、低分子量分を除去したもの、低分
子量分を抽出したものや、更にこれらから低分子量分を
除去したものなどである。
【0041】母体としての炭化水素は、金属酸化物系触
媒(多くは2種以上の多元系)を使用した、一酸化炭素
と水素の反応によって合成されるもの、例えばジントー
ル法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、あるいは
ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒
床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭
化水素(最終的には、水素添加し目的物とする)や、エ
チレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合し
た炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長鎖直鎖
状炭化水素であるので好ましい。特に、アルキレンの重
合によらない方法により合成された炭化水素ワックスが
その構造や分別しやすい分子量分布であることから好ま
しいものである。また、分子量分布で好ましい範囲は、
数平均分子量(Mn)が550〜1200,好ましくは
600〜1000、重量平均分子量(Mw)が800〜
3600,好ましくは900〜3000、Mw/Mnが
3以下好ましくは2.5以下,特に好ましくは2.0以
下である。また、分子量700〜2400(好ましくは
分子量750〜2000、特に好ましくは分子量800
〜1600)の領域にピークが存在することである。こ
のような分子量分布を持たせることにより、トナーに好
ましい熱特性を持たせることができる。すなわち、上記
範囲より分子量が小さくなると熱的影響を過度に受けや
すく、耐ブロッキング性、現像性に劣るようになり、上
記範囲より分子量が大きくなると、外部からの熱を効果
的に利用できず、優れた定着性、耐オフセット性を得る
ことができない。
【0042】その他の物性としては、25℃での密度が
0.95(g/cm3 )以上、針入度が1.5(10-1
mm)以下、好ましくは1.0(10-1mm)以下であ
る。これらの範囲をはずれると、低温時に変化しやすく
保存性、現像性に劣りやすくなってくる。
【0043】また、140℃における溶融粘度が、10
0cP以下、好ましくは50cP以下、特に好ましくは
20cP以下である。溶融粘度が100cPを超えるよ
うになると、可塑性、離型性に劣るようになり、優れた
定着性、耐オフセット性に影響を及ぼすようになる。ま
た、軟化点が130℃以下であることが好ましく、特に
好ましくは120℃以下である。軟化点が130℃を超
えると、離型性が特に有効に働く温度が高くなり、優れ
た耐オフセット性に影響を及ぼすようになる。
【0044】更に酸価が2.0mgKOH/g未満、好
ましくは1.0mgKOH/g未満である。この範囲を
超えると、トナーを構成する成分の1つである結着樹脂
との界面接着力が大きく、溶融時の相分離が不充分にな
りやすく、そのため良好な離型性が得られにくく、高温
時の耐オフセット性が良好でなく、また、トナーの摩擦
帯電特性に悪影響を与え、現像性、耐久性に問題が出る
ことがある。
【0045】これら炭化水素系ワックスの含有量は、結
着樹脂100重量部に対し20重量部以内で用いられ、
0.5〜10重量部で用いるのが効果的である。
【0046】本発明において炭化水素系ワックスの分子
量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(G
PC)により次の条件で測定される。
【0047】(GPC測定条件)装置:GPC−150
C(ウォーターズ社) カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製) 温度:135℃ 溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添
加) 流速:1.0ml/min 試料:0.15%の試料を0.4ml注入 以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単
分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲
線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度
式から導き出される換算式でポリエチレン換算すること
によって算出される。
【0048】本発明におけるワックス類の針入度は、J
IS K−2207に準拠し測定される値である。具体
的には、直径約1mmで頂角9゜の円錐形先端を持つ針
を一定荷重で貫入させた時の貫入深さを0.1mmの単
位で表した数値である。本発明中での試験条件は試料温
度が25℃、加重100g、貫入時間5秒である。
【0049】また、溶融粘度は、ブルックフィールド型
粘度計を用いて測定される値であり、条件は、測定温度
140℃、ずり速度1.32rpm、試料10mlであ
る。
【0050】酸価は、試料1g中に含まれる酸基を中和
するために必要な水酸化カリウムのmg数であり、JI
S K5902に準ずる。密度は25℃でJIS K6
760、軟化点はJIS K2207に準じて測定され
る値である。
【0051】 また、本発明は、前述の如く、少なくと
も結着樹脂及び端か水素系ワックスを含有する静電荷像
現像用トナーにおいて、該炭化水素系ワックスが下記特
性、即ち、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線
において、昇温時の吸熱ピーク及び降温時の発熱ピーク
に関し、吸熱のオンセット温度が50〜110℃の範囲
にあり、温度70〜130℃の領域に少なくとも1つの
吸熱ピークP1あり、該吸熱ピークP1のピーク温度±
℃の範囲内に降温時の最大発熱ピークがある、特性
満足することを特徴とする静電荷像現像用トナーによっ
て達成される。
【0052】昇温時には、ワックスに熱を与えた時の変
化を見ることができワックスの転移、融解に伴う吸熱ピ
ークが観測される。吸熱のオンセット温度が50〜11
0℃(好ましくは、50〜90℃、さらに好ましくは6
0〜90℃)の範囲内にあることにより現像性、耐ブロ
ッキング性、低温定着性を満足することができる。ピー
クのオンセット温度が、50℃未満の場合は、ワックス
の変化温度が低過ぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、昇
温時の現像性に劣るトナーになり、110℃を超える場
合には、ワックスの変化温度が高過ぎ、十分な定着性が
得られなくなる。70〜130℃の範囲内に、好ましく
は70〜120℃、より好ましくは95〜120℃の範
囲に、特に好ましくは97〜115℃の範囲内に、吸熱
ピークが存在することにより、良好な定着性、耐オフセ
ット性を満足できる。70℃未満のみにピーク温度が存
在する場合には、ワックスの融解温度が低過ぎ、十分な
耐高温オフセット性が得られず、130℃を超える領域
のみにピーク温度が存在する場合は、ワックスの融解温
度が高過ぎ十分な耐低温オフセット性、低温定着性が得
られない。すなわちこの領域に、ピーク温度が存在する
ことで、耐オフセット性と定着性のバランスを取りやす
くなる。ここで、70℃未満のピークが最大のピークと
なると、この領域のみにピークがある場合と同様な挙動
を示すので、この領域のピークが存在しても良いが、そ
の場合は、70〜130℃の領域のピークより小さい必
要がある。
【0053】 降温時には、ワックスの冷却時の変化や
常温時の状態を見ることができ、ワックスの凝固、結晶
化、転移に伴う発熱ピークが観測される。降温時の発熱
ピークで、最大の発熱ピークは、ワックスの凝固、結晶
化に伴う発熱ピークである。この発熱ピーク温度と近い
温度に昇温時の融解に伴う吸熱ピークが存在すること
は、ワックスの構造、分子量分布などワックスがより均
質であることを示しており、その差が7℃以内であり、
特に好ましくは5℃以内である。すなわちこの差を小さ
くすることで、ワックスをシャープメルト、つまり、低
温時には硬く、融解時の溶融が早く、溶融粘度の低下が
大きく起こることで、現像性、耐ブロッキング性、定着
性、耐オフセット性をバランス良くなり立たせることが
できる。最大発熱ピークは温度85〜115℃(好まし
くは90〜110℃)の領域にあることが良い。
【0054】ワックスのDSC測定は、前述のトナーの
場合に準じ、各温度の定義は次のように定める。 ワックスの吸熱ピーク(プラスの方向を吸熱とする) ワックスの吸熱のオンセット温度:曲線の微分値が極大
となる温度の最低の温度。したがって、トナーの吸熱の
場合のオンセット温度と定義が異なる。
【0055】ワックスの吸熱ピークの温度:ピークトッ
プの温度 ワックスの発熱ピーク(マイナスの方向を発熱とする) ワックスの発熱ピークの温度:最大のピークのピークト
ップの温度 これら炭化水素系ワックスの含有量は、結着樹脂100
重量部に対し20重量部以内で用いられ、0.5〜10
重量部で用いるのが効果的であり、悪影響を与えない限
り他のワックス類と併用しても構わない。
【0056】本発明のトナーまたは炭化水素系ワックス
が以上のような特徴を持っていることから、芯金の厚さ
が1mm未満の加熱ローラーの、その特性を生かした使
用が可能となったのである。すなわち、小サイズ紙を連
続通紙した際の非通紙部の昇温に伴うオフセットを発生
することもなく、コピー間隔が開いて下ローラーの温度
が下がった状態でも定着性が悪化することもない。よっ
て、広い非オフセット、定着領域が得られ、その結果芯
金の厚さを薄くした上で十分な定着性、耐オフセット性
を維持しつつ、なおかつ従来よりも設定温度を低くして
ウエイトタイムをさらに短くすることが可能となったの
である。
【0057】一方本発明のトナーに使用される結着樹脂
としては、下記の結着樹脂の使用が可能である。
【0058】例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロル
スチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびそ
の置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共
重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン
−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エ
ステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重
合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合
体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−
ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチ
ルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共
重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イ
ソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−イン
デン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニ
ル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹
脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹
脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリエステル
樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エ
ポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テ
ルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが
使用できる。好ましい結着物質としては、スチレン系共
重合体もしくはポリエステル樹脂がある。
【0059】スチレン系共重合体のスチレンモノマーに
対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、
アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸
−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリ
ル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニト
リル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのよう
な二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換
体;例えば、マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン
酸メチル、マレイン酸ジメチルなどのような二重結合を
有するジカルボン酸およびその置換体;例えば塩化ビニ
ル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのようなビニルエ
ステル類;例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど
のようなエチレン系オレフィン類;例えばビニルメチル
ケトン、ビニルヘキシルケトンなどのようなビニルケト
ン類;例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエー
テル、ビニルイソブチルエーテルなどのようなビニルエ
ーテル類;等のビニル単量体が単独もしくは2つ以上用
いられる。
【0060】スチレン系重合体またはスチレン系共重合
体は架橋されていても良く、またそれらの混合樹脂でも
良い。
【0061】結着樹脂の架橋剤としては、主として2個
以上の重合可能な二重結合を有する化合物を用いてもよ
い、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンな
どのような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリ
コールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリ
レート、1,3−ブタジオールジメタクリレートなどの
ような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビ
ニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィ
ド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および3
個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合
物として用いられる。
【0062】本発明のトナーは、荷電制御剤を含有して
も良い。
【0063】トナーを負荷電性に制御するものとして下
記物質がある。
【0064】例えば有機金属錯体、キレート化合物が有
効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯
体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボ
ン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシ
カルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金
属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノ
ール誘導体類などがある。
【0065】トナーを正荷電性に制御するものとして下
記物質がある。
【0066】ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性
物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ
−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウ
ムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、
及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム
塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及
びこれらのレーキ顔料、(レーキ化剤としては、りんタ
ングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモ
リブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェ
リシアン化物、フェロシアン化物など)高級脂肪酸の金
属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサ
イド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガ
ノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチル
スズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジ
オルガノスズボレート類;これらを単独で或いは2種類
以上組合せて用いることができる。これらの中でも、ニ
グロシン系、四級アンモニウム塩の如き荷電制御剤が特
に好ましく用いられる。
【0067】本発明のトナーにおいては、帯電安定性、
現像性、流動性、耐久性向上の為、シリカ微粉末を添加
することが好ましい。
【0068】本発明に用いられるシリカ微粉末は、BE
T法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2 /g
以上(特に50〜400m2 /g)の範囲内のものが良
好な結果を与える。トナー100重量部に対してシリカ
微粉体0.01〜8重量部、好ましくは0.1〜5重量
部使用するのが良い。
【0069】また、本発明に用いられるシリカ微粉末
は、必要に応じ、疎水化、帯電性コントロール、などの
目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、
シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン
カップリング剤、官能基を有するシランカップリング
剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤で、あるいは
種々の処理剤で併用して処理されていることも好まし
い。
【0070】他の添加剤としては、例えばテフロン粉
末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリ弗化ビニリデン粉末の
如き滑剤粉末、中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい。
あるいは酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸
ストロンチウム粉末等の研磨剤、中でもチタン酸ストロ
ンチウムが好ましい。あるいは例えば酸化チタン粉末、
酸化アルミニウム粉末等の流動性付与剤、中でも特に疎
水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、あるいは例
えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化アンチ
モン粉末、酸化スズ粉末等の導電性付与剤、また逆極性
の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量
用いることもできる。
【0071】さらに本発明のトナーは、二成分系現像剤
として用いる場合には、キャリア粉と混合して用いられ
る。この場合には、トナーとキャリア粉との混合比はト
ナー濃度として0.1〜50重量%、好ましくは0.5
〜10重量%、更に好ましくは3〜10重量%が良い。
【0072】本発明に使用しうるキャリアとしては、公
知のものが使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト
粉、ニッケル粉の如き磁性を有する粉体、ガラスビーズ
等及びこれらの表面をフッ素系樹脂、ビニル系樹脂ある
いはシリコーン系樹脂等で処理したものなどが挙げられ
る。
【0073】さらに本発明のトナーは更に磁性材料を含
有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性
材料は着色剤の役割をかねることもできる。本発明にお
いて、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグ
ネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コ
バルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のア
ルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、
亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウ
ム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングス
テン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等
が挙げられる。
【0074】これらの強磁性体は平均粒子が2μm以
下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好まし
い。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100重
量部に対し約20〜200重量部、特に好ましくは樹脂
成分100重量部に対し40〜150重量部が良い。
【0075】また、10Kエルステッド印加での磁気特
性が抗磁力比(Hc)20〜300エルステッド、飽和
磁化(σs)50〜200emu/g、残留磁化(σ
r)2〜20emu/gのものが好ましい。
【0076】本発明のトナーに使用し得る着色剤として
は、任意の適当な顔料又は染料があげられる。トナーの
着色剤としては、例えば顔料としてカーボンブラック、
アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイ
エロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリ
ンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダン
スレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を
維持するのに必要充分な量が用いられ、樹脂100重量
部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10
重量部の添加量が良い。また同様の目的で、更に染料が
用いられる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染
料、キサンテン系染料、メチン系染料等があり樹脂10
0重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは0.
3〜10重量部の添加量が良い。
【0077】本発明に係る静電荷像現像用トナーを作製
するには結着樹脂、ワックス、金属塩ないしは金属錯
体、着色剤としての顔料、又は染料、磁性体、必要に応
じて荷電制御剤、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキ
サー、ボールミル等の混合機により充分混合してから加
熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機
を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に
金属化合物、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せし
め、冷却固化後粉砕及び分級を行って本発明に係るとこ
ろのトナーを得ることが出来る。
【0078】さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェ
ルミキサー等の混合機により充分混合し、本発明に係る
静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0079】
【実施例】以下具体的実施例によって本発明を説明する
が、これによって本発明が限定されるものではない。
【0080】最初に、本発明に用いられる炭化水素系ワ
ックスについて述べる。
【0081】アーゲ法により合成された炭化水素系ワッ
クスD(比較例)とし、これからワックスA(本発
明)、ワックスB(本発明)を分別結晶化により得た。
ワックスA(本発明)の昇温時のDSC曲線を図11に
示し、降温時のDSC曲線を図12に示し、ワックスD
(比較例)の昇温時のDSC曲線を図13に示し、降温
時のDSC曲線を図14に示す。チーグラー触媒を用い
て、エチレンを低圧重合し、比較的低分子量のワックス
E(比較例)を得、分別結晶化により低分子量成分をあ
る程度除去したワックスC(本発明)を得た。これらの
物性を表1、表2及び表3に示す。
【0082】(製造例1) スチレン−ブチルアクリレート共重合体 100重量部 (共重合重量比=80:20;数平均分子量約10000) 磁性酸化鉄 80重量部 (平均粒径0.25μm;10Kエルステッド下で 飽和磁化80emu/g、残留磁化10emu/g、 抗磁力120エルステッド) ニグロシン 2重量部 ワックスA 4重量部 上記材料を予備混合した後、130℃に設定した、2軸
押し出し機によって溶融混練を行った。混練物を冷却
後、粗粉砕し、ジェット気流を用いた粉砕機によって微
粉砕し、更に風力分級機を用いて分級し、重量平均粒径
8μmのトナー1を得た。
【0083】このトナー100重量部と、正帯電疎水性
コロイダルシリカ微粉末0.6重量部とを混合(外添)
してトナー粒子表面にコロイダルシリカ微粉末を有する
トナーを現像剤とした。このトナー1のDSC測定結果
を表4に示し、トナー1の昇温時のDSC曲線を図1
に、降温時のDSC曲線を図2に示す。また、ブロッキ
ング試験の結果を表4に示す。ブロッキング試験は、約
20gの現像剤を100ccポリコップに入れ、50℃
で3日間放置した後、目視で評価した。表4中、 優 :凝集物は見られない。
【0084】良 :凝集物が見られるが容易に崩れる。
【0085】可 :凝集物が見られるが振れば崩れる。
【0086】不可:凝集物をつかむことができ容易に崩
れない。 を示す。
【0087】(製造例2乃至5)ワックスB乃至Eを使
用することを除いて、製造例1と同様にしてトナー2乃
至5を調製した。これらのトナーのDSC測定結果を表
4に示す。また、それぞれのトナーのブロッキング試験
の結果を表4に示す。
【0088】実施例1 電子写真複写機NP−1215(キヤノン社製)の加熱
ローラーの芯金を、厚さ0.7mmの鉄に変更した改造
機を作製した。その他の定着器構成を以下に示す。
【0089】加熱ローラー ローラー径 32mm 表面層 PTFE焼成 表層膜厚 25μm 加圧ローラー ローラー径 30mm 材質(ゴム層) シリコンゴム、5.0mm ゴム硬度(JIS−A) 25° 表面層 PFAチューブ 表層膜厚 50μm ヒーター 900W Nip 4.0mm プロセススピード 100mm/sec 線圧 0.5Kg/cm 前記改造機を用いて、定着器の温度設定を180℃とし
て電源投入後のウエイトタイムの測定を行った。更に、
前記改造機を用いて製造例1で得られたトナー1の定着
性、現像性の評価を下記のようにして行った。それらの
結果を表5、表6に示す。
【0090】定着及びオフセット試験 まず、定着器の温度を120〜250℃の温度範囲で5
℃おきに温調して定着開始温度、170℃における濃度
低下率、低温オフセットフリー始点、高温オフセットフ
リー終点の測定を行った。
【0091】低温オフセット、及び定着性の試験には、
80g/m2 紙を用いた。高温オフセットの試験には、
52g/m2 紙を用いて評価した。定着性は、定着画像
を50g/cm2 の荷重をかけシルボン紙[lenz
cleaning paper“dasper(R)”
(Ozu Paper Co.Ltd)]で擦り、擦り
前後の濃度低下率が10%未満になる温度を定着開始点
とした。オフセットは、目視でオフセットのでなくなる
温度を低温オフセットフリー始点とし、温度を上げ、オ
フセットのでない最高温度を高温オフセットフリー終点
とした。試験結果を表5にまとめる。表5には、定着開
始温度、170℃における濃度低下率、低温オフセット
フリー始点、高温オフセットフリー終点、非オフセット
領域を記載する。
【0092】更に、電源投入後のスタート時の定着試
験、コピー間隔をあけた時の定着試験、連続通紙後のオ
フセット試験を行った。温度15℃の環境で、十分に複
写機が冷えた状態から電源投入後、20秒後に未定着ト
ナー像をコピーして前記方法と同様に擦り前後の濃度低
下率を測定した。また、ウエイトタイム終了直後から3
0秒間隔で2枚ずつ200枚までコピーして、すべての
擦り前後の濃度低下率を測定し、その中の10枚目、2
00枚目及び最悪値を記録した。また、B5の転写紙を
連続で200枚コピーした直後にA3の転写紙をコピー
して、目視でオフセットの評価を行った。その結果を表
6にまとめる。
【0093】現像性試験 約100gの現像剤を500ccのポリエチレン製コッ
プに入れ、45℃で3日放置した後、現像性を評価し
た。その試験の結果(画像濃度、かぶり)を表5に記
す。この試験により、機械昇温に対する耐久性及び長期
放置による安全性を見るシュミレーションとすることが
できる。
【0094】実施例2 厚さ0.7mmの18−8ステンレス鋼よりなる芯金を
用いて、実施例1と同様に改造機を作製し、電源投入後
のウエイトタイムを測定した。更に、その改造機を用い
て、製造例2で得られたトナー2の定着性、現像性の評
価を行った。それらの結果を表5、表6に示す。
【0095】実施例3 厚さ0.8mmの鉄よりなる芯金を用いることを除い
て、実施例1と同様にしてウエイトタイムの測定、定着
性及び現像性の評価を行った。それらの結果を表5、表
6に示す。
【0096】実施例4 厚さ0.7mmの炭素鋼よりなる芯金を用いることを除
いて、実施例1と同様にしてウエイトタイムの測定、定
着性及び現像性の評価を行った。それらの結果を表5、
表6に示す。
【0097】実施例5 製造例3で得られたトナー3を用いることを除いて、実
施例1と同様にして定着性及び現像性の評価を行った。
それらの結果を表5、表6に示す。
【0098】比較例1 厚さ1.5mmの鉄よりなる芯金を用いることを除い
て、実施例1と同様にしてウエイトタイムの測定、定着
性及び現像性の評価を行った。それらの結果を表5、表
6に示す。
【0099】比較例2 厚さ2.0mmのアルミニウムよりなる芯金を用いるこ
とを除いて、実施例2と同様にしてウエイトタイムの測
定、定着性及び現像性の評価を行った。それらの結果を
表5、表6に示す。
【0100】比較例3 製造例4で得られたトナー4を用いることを除いて、実
施例1と同様にして定着性及び現像性の評価を行った。
それらの結果を表5、表6に示す。
【0101】比較例4 製造例5で得られたトナー5を用いることを除いて、実
施例3と同様にして定着性及び現像性の評価を行った。
それらの結果を表5、表6に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【発明の効果】本発明は、特定の炭化水素系ワックスを
含有したトナーを、特定の加熱ローラーで構成される定
着器を用いて転写材に接触加熱定着することにより、次
のような優れた効果を発揮する。
【0109】本発明は、ウエイトタイムが短く、熱効率
が良くしかも確実に定着を行うことのできる加熱定着方
法を提供し得る。
【0110】本発明は、低温時の定着性、耐オフセット
性に優れた加熱定着方法を提供し得る。
【0111】本発明は、高温時の耐オフセット性に優れ
た加熱定着方法を提供し得る。
【0112】本発明は、耐ブロッキング性に優れ、長期
間放置しても現像性が劣化しない画像形成方法を提供し
得る。
【0113】本発明は、機械本体の昇温に対する耐久性
に優れた画像形成方法を提供することにある。
【0114】本発明は、上記の効果を矛盾することなく
合い成り立たせる加熱定着方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナー1の昇温時のDSC曲線を示す
図である。
【図2】本発明のトナー1の降温時のDSC曲線を示す
図である。
【図3】昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク部分を示す図
である。
【図4】昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク部分を示す図
である。
【図5】昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク部分を示す図
である。
【図6】昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク部分を示す図
である。
【図7】降温時のDSC曲線の発熱ピーク部分を示す図
である。
【図8】降温時のDSC曲線の発熱ピーク部分を示す図
である。
【図9】降温時のDSC曲線の発熱ピーク部分を示す図
である。
【図10】降温時のDSC曲線の発熱ピーク部分を示す
図である。
【図11】本発明に係るワックスAの昇温時におけるD
SC曲線を示す図である。
【図12】本発明に係るワックスAの降温時におけるD
SC曲線を示す図である。
【図13】ワックスD(比較例)の昇温時におけるDS
C曲線を示す図である。
【図14】ワックスD(比較例)の降温時におけるDS
C曲線を示す図である。
【図15】定着装置の断面図を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱ローラー 2 加圧ローラー 3 定着ガイド 4 サーミスタ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 示差走査熱量計により測定されるDSC
    曲線において、昇温時の吸熱ピーク及び降温時の発熱ピ
    ークに関し、吸熱のオンセット温度が50〜110℃の
    範囲にあり、温度70〜130℃の領域に少なくとも1
    つの吸熱ピークP1があり、該吸熱ピークP1のピーク温
    度±℃の範囲内に降温時の最大発熱ピークがある、特
    性を満足する炭化水素系ワックス及び結着樹脂を含有す
    る静電荷像現像用トナーで形成されたトナー像を、加熱
    ローラーの芯金の厚さが1mm未満である定着器を用い
    て、転写材に接触加熱定着することを特徴とする加熱定
    着方法。
  2. 【請求項2】 該トナーが、示差走査熱量計により測定
    されるDSC曲線において、昇温時の吸熱に関し、吸
    熱ピークにおける立ち上がり温度が80℃以上であり、
    吸熱ピークにおけるオンセット温度が105℃以下であ
    り、吸熱ピーク温度が100〜120℃の範囲にあり、
    降温時の発熱ピークに関し、発熱ピーク温度が62〜
    75℃の範囲にあり、発熱ピークの強度比が5×10-3
    以上である特性を満足する請求項1に記載の加熱定着方
    法。
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