JP3212459B2 - 小型乗用車用空気入りタイヤ - Google Patents

小型乗用車用空気入りタイヤ

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タイヤのビード部に起
因するタイヤの破壊圧(タイヤの安全率)の低下を招く
ことなく、タイヤのビード部構造を改良することで操縦
安定性を改善し、かつ余分なビードワイヤの使用を抑え
てコストの低減および生産効率の向上を図った小型乗用
車用空気入りタイヤおよびビードコアに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】空気入りタイヤのビード部におけるビー
ドコアは、カーカスプライを形成する繊維や鋼線のコー
ド端部を巻付け固定するとともに、タイヤ本体の内周の
寸法を規定し、ホイールリムとの嵌め合いを確保してい
る。
【0003】このように、ビードコアは空気入りタイヤ
において極めて重要な構成要素であり、従来より、種々
のビード部の構造が提案されている。
【0004】例えば、図4に示すように数本のワイヤを
横一列にゴムに埋設し、得られた帯状のゴム−ワイヤ複
合体を所定の型に巻付けて束ねることによりビードコア
を得る手法(実開昭61−110406号)や、同一円
形断面を有するワイヤの周囲に生ゴムを一定の厚さで付
着してビードワイヤとし、これを所定の型に巻つけてモ
ノストランドビードコアを得る手法(特開平2−286
407号)等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の空気入
りタイヤにおいては、ビードコアのワイヤの巻始端と巻
終端との重なり長さとタイヤの破壊圧(タイヤの安全
率)との関係が不明であったため、ビード部におけるタ
イヤの破壊圧が不十分であったり、ビードワイヤを余分
に使用してコストの上昇や生産効率の低下を招くといっ
た問題があった。
【0006】また、上述の、帯状のゴム−ワイヤ複合体
を所定の型に巻付けて束ねることにより得られるビード
コアや、従来のビードコアを有する空気入りタイヤを製
造する場合、成型、加硫時に、積層された上記複合体の
段列の乱れが大きく、タイヤ周方向および径方向の均一
性を保持することが困難であり、この結果、製造される
空気入りタイヤの操縦安定性が損なわれるという問題が
あった。
【0007】そこで本発明の目的は、かかる従来のビー
ドコアによる問題点を解決し、タイヤの破壊圧(タイヤ
の安全率)の低下を招くことなく、ビードコアによるタ
イヤ周方向および径方向の均一性の乱れを抑えることで
操縦安定性を改善し、かつ余分なビードワイヤの使用を
抑えてコストの低減および生産効率の向上を可能にする
小型乗用車用空気入りタイヤおよびビードコアを提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の小型乗用車用空気入りタイヤは、トレッド部
の両側で連なる一対のサイドウォール部の内周に夫々形
成された一対のビード部を備えた小型乗用車用空気入り
タイヤにおいて、 (イ)上記ビード部のビードコアが、ゴムで被覆された
円形断面ワイヤを螺旋状に旋回し束ねることによって形
成されるモノストランドビードコアであって、その断面
は3〜10本のワイヤで形成される最密ユニットであ
り、 (ロ)上記ワイヤの直径(D)が1.2〜2.2mmで
あり、かつ隣接する上記ワイヤの中心間距離(H)の上
記ワイヤ直径(D)に対する比(H/D)が1.01〜
1.2であり、 (ハ)上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり長さL
(mm)が次式、 L≧4.0×10×πr2(f/A) (式中、rはワイヤ断面の半径(mm)、fはワイヤの
抗張力(kgf/mm2)およびAは被覆ゴムからのワ
イヤの引き抜き力(kgf)を示す)で表される関係を
満足することを特徴とするものである。また、本発明の
ビードコアは、 (イ)ゴムで被覆された円形断面ワイヤを螺旋状に旋回
し束ねることによって形成されるモノストランドビード
コアであって、その断面は3〜10本のワイヤで形成さ
れる最密ユニットであり、 (ロ)上記ワイヤの直径(D)が1.2〜2.2mmで
あり、かつ隣接する上記ワイヤの中心間距離(H)の上
記ワイヤ直径(D)に対する比(H/D)が1.01〜
1.2であり、 (ハ)上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり長さL
(mm)が次式、 L≧4.0×10×πr 2 (f/A) (式中、rはワイヤ断面の半径(mm)、fはワイヤの
抗張力(kgf/mm 2 )およびAは被覆ゴムからのワ
イヤの引き抜き力(kgf)を示す)で表される関係を
満足することを特徴とするものである。
【0009】
【作用】本発明の小型乗用車用空気入りタイヤにおいて
は、ビードコアをモノストランドビードコアの最密ユニ
ットとし、その断面が3〜10本のワイヤで構成される
ようにする。断面のワイヤが3本未満では、最密ユニッ
トを構成することができず、一方、10本を超えると重
量増およびリム組の困難さという問題を生じる。
【0010】また、かかるワイヤの直径(D)が1.2
〜2.2mmであり、かつ図1に示す、隣接する上記ワ
イヤの中心間距離(H)の上記ワイヤ直径(D)に対す
る比(H/D)が1.01〜1.20の範囲内となるよ
うにする。これは、ワイヤの直径(D)が1.2mm未
満ではビードコアの鋼性および強度が十分に得られず、
一方、2.2mmを超えると重量増およびリム組の困難
さという問題を生じ、また上記比(H/D)が1.01
未満ではビードコアリングの構造剛性が高くなり過ぎ、
リム組性が悪化し、一方、1.20を超えると成型、加
硫時のコアの変形が大きくなり、タイヤの均一性を損な
うことになるからである。好ましくは、ワイヤの直径
(D)が1.2〜1.8mmであり、上記比(H/D)
が1.05〜1.15の範囲内である。
【0011】本発明において、モノストランドビードコ
アの巻始端と巻終端の重なり長さ(L)とは、図2に示
す長さのことであり、この長さLが上記式、より好まし
くは次式、 1.0×102 ×πr2 (f/A)≧L≧5.0×10×πr2 (f/A) で表される関係を満足することを要する。ここで、被覆
ゴムからのワイヤの引き抜き力(kgf)を示すAは、
具体的にはサンプル長さを50mmとし、引き抜き速度
200mm/分でASTMに準拠して測定して得られた
値である。
【0012】Lが4.0×10×πr2 (f/A)未満
の場合には、破断時に巻終端が引き抜けてしまい、巻終
端ワイヤがビードコアの総強力へ参加できず、ビードコ
アの強力利用率の低下を招くことになる。この結果、タ
イヤの安全率の低下あるいはビード部の重量増加は免れ
得なくなる。
【0013】一方、Lが1.0×102 ×πr2 (f/
A)を超えると、ビードコアの強力利用率は変わらず
に、重量、ひいてはコストが増大しかつユニフォミティ
ーの悪化を招くことになる。
【0014】
【実施例】次に本発明を実施例および比較例により具体
的に説明する。本実施例においては、ビードコアのタイ
ヤ軸方向に沿った断面形状が図4の(イ)に示す構造
(構造)と、図3の(イ)に示す構造(構造)と、
図3の(ロ)に示す構造(構造)と、図3の(ハ)に
示す構造(構造)とを採用して、夫々のビードワイヤ
の線径、抗張力、ビードワイヤの中心間距離(H)の上
記ワイヤ直径(D)に対する比(H/D)、被覆ゴムか
らのビードワイヤの引き抜き力Aおよびワイヤの巻始端
と巻終端との重なり長さLを夫々表1および表2に示す
ように変え、これらのビードコアのリム組性、操縦安定
性、破壊圧Pmax 、ビードコアの理論総強力、強力利用
率を求めた。
【0015】リム組性 各種供試ビードコアを用いてサイズ155/65R12
および175/70R13のタイヤを試作し、これらタ
イヤを夫々12×4.00Bおよび5J−13のリムに
対して各10本リム組した後、1本にかかる平均所要時
間t(sec)を求めた。比較例1のコントロールの所
要時間をt0 としたとき、各タイヤのリム組性を、式
(t0 /t)×100より求め、指数で表示した。指数
値が大きいほど結果が良好であることを示す。但し、指
数値が80以上であれば問題ない。
【0016】操縦安定性 実車走行を行い、テストドライバーによるフィーリング
により評価した。比較例1のコントロールタイヤを10
0として指数にて評価した。指数値が大きいほど結果が
良好であることを示す。
【0017】タイヤ破壊圧 各種供試ビードコアを用いてサイズ175/70R13
のタイヤを試作し、水圧によるビード部破壊時の圧力を
maX として求めた。
【0018】ビードコアの理論総強力 ビードコアの断面ワイヤ本数をN、ワイヤ1本の破壊強
力をfとしたときに、理論総強力ΣfをΣf=N×fよ
り求めた。
【0019】強力利用率 強力利用率をPmax /Σfより求めた。この値は、ワイ
ヤの総強力をどれだけ効率的に破壊圧に変換しているか
を示す値である。下記の表中においては、カッコ内にコ
ントロールタイヤを100として指数評価も行った。指
数値が大きいほど結果が良好であり、より少量のワイヤ
で必要破壊圧を発現し得ることを表している。得られた
結果を下記の表1および表2に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明の小型乗
用車用空気入りタイヤにおいては、一対のビード部のビ
ードコアを特殊構造のモノストランドビードコアとした
ことにより、タイヤの破壊圧(タイヤの安全率)および
リム組性の低下を招くことなく、操縦安定性を改善する
ことができ、しかも余分なワイヤの使用を抑えてコスト
の低減および生産効率の上昇を得ることが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ビードコアのワイヤの中心間距離
(H)とワイヤ直径(D)との関係を示す説明図であ
る。
【図2】図2は、ワイヤの巻始端と巻終端の重なり長さ
(L)を示すモノストランドビードコアの部分断面図で
ある。
【図3】図3は、実施例において使用した各種ビードコ
アのタイヤ軸方向に沿った断面形状を示す断面図であ
る。
【図4】(イ)は、上記ビードコアのタイヤ軸方向に沿
った断面形状を示す断面図である。(ロ)は、従来のビ
ードコアのストランド構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ 2 ゴム

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トレッド部の両側で連なる一対のサイド
    ウォール部の内周に夫々形成された一対のビード部を備
    えた小型乗用車用空気入りタイヤにおいて、 (イ)上記ビード部のビードコアが、ゴムで被覆された
    円形断面ワイヤを螺旋状に旋回し束ねることによって形
    成されるモノストランドビードコアであって、 その断面は3〜10本のワイヤで形成される最密ユニッ
    トであり、 (ロ)上記ワイヤの直径(D)が1.2〜2.2mmで
    あり、かつ隣接する上記ワイヤの中心間距離(H)の上
    記ワイヤ直径(D)に対する比(H/D)が1.01〜
    1.2であり、 (ハ)上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり長さL
    (mm)が次式、 L≧4.0×10×πr2(f/A) (式中、rはワイヤ断面の半径(mm)、fはワイヤの
    抗張力(kgf/mm2)およびAは被覆ゴムからのワ
    イヤの引き抜き力(kgf)を示す)で表される関係を
    満足することを特徴とする小型乗用車用空気入りタイ
    ヤ。
  2. 【請求項2】 上記ワイヤの直径(D)が1.2〜1.
    8mmである請求項1記載の小型乗用車用空気入りタイ
    ヤ。
  3. 【請求項3】 上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり
    長さL(mm)が次式、 1.0×102×πr2(f/A)≧L≧5.0×10×πr2(f/A) (式中、r、fおよびAは上記のものと同じものであ
    る)で表される関係を満足する請求項1または2記載の
    小型乗用車用空気入りタイヤ。
  4. 【請求項4】 上記ビード部のビードコアの断面が5本
    のワイヤで構成され、ベース側が2本でそのタイヤ半径
    方向外側が3本である請求項1〜3のうちいずれか一項
    記載の小型乗用車用空気入りタイヤ。
  5. 【請求項5】 上記ビード部のビードコアの断面が5本
    のワイヤで構成され、ベース側が本でそのタイヤ半径
    方向外側が本である請求項1〜3のうちいずれか一項
    記載の小型乗用車用空気入りタイヤ。
  6. 【請求項6】 上記ビード部のビードコアの断面が7本
    のワイヤで構成された正六角形の最密構造である請求項
    1〜3のうちいずれか一項記載の小型乗用車用空気入り
    タイヤ。
  7. 【請求項7】 (イ)ゴムで被覆された円形断面ワイヤ
    を螺旋状に旋回し束ねることによって形成されるモノス
    トランドビードコアであって、その断面は3〜10本の
    ワイヤで形成される最密ユニットであり、 (ロ)上記ワイヤの直径(D)が1.2〜2.2mmで
    あり、かつ隣接する上記ワイヤの中心間距離(H)の上
    記ワイヤ直径(D)に対する比(H/D)が1.01〜
    1.2であり、 (ハ)上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり長さL
    (mm)が次式、 L≧4.0×10×πr2(f/A) (式中、rはワイヤ断面の半径(mm)、fはワイヤの
    抗張力(kgf/mm2)およびAは被覆ゴムからのワ
    イヤの引き抜き力(kgf)を示す)で表される関係を
    満足することを特徴とするビードコア。
  8. 【請求項8】 上記ワイヤの直径(D)が1.2〜1.
    8mmである請求項7記載のビードコア。
  9. 【請求項9】 上記ワイヤの巻始端と巻終端との重なり
    長さL(mm)が次式、 1.0×102×πr2(f/A)≧L≧5.0×10×πr2(f/A) (式中、r、fおよびAは上記のものと同じものであ
    る)で表される関係を満足する請求項7または8記載の
    ビードコア。
  10. 【請求項10】 断面が5本のワイヤで構成され、ベー
    ス側が2本でそのタイヤ半径方向外側が3本である請求
    項7〜9のうちいずれか一項記載のビードコア。
  11. 【請求項11】 断面が5本のワイヤで構成され、ベー
    ス側が本でそのタイヤ半径方向外側が本である請求
    項7〜9のうちいずれか一項記載のビードコア。
  12. 【請求項12】 断面が7本のワイヤで構成された正六
    角形の最密構造である請求項7〜9のうちいずれか一項
    記載のビードコア。
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