JP3207609B2 - 4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩の製造方法 - Google Patents

4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩の製造方法

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康彦 永井
靖士 中山
寅之助 斉藤
博記 角町
大志郎 岸本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱性、力学物性、電気
的特性、および耐薬品性に優れた芳香族ポリスルホンを
重合し得るモノマーとして使用し得る、4−クロロ−
4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン
アルカリ金属塩の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリスルホンは優れた特徴を有す
るエンジニアプラスチックとして、電子材料、自動車部
品、機械部品、および医療用材料など幅広い分野で利用
されている。しかし近年さらに過酷な条件下での利用が
増加しており、特に耐熱性については少なくともハンダ
耐熱温度である260℃以上の性能が要求されている。
【0003】優れた耐熱性を有する芳香族ポリスルホン
として、下記式(II)で示される4−クロロ−4’−
(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンを重合
して得られる芳香族ポリスルホンが知られている。
【0004】
【化3】
【0005】この芳香族ポリスルホンは熱可塑性樹脂と
しては最も高いガラス転位温度(285℃)を示す。し
かし、この芳香族ポリスルホンの重合反応は220℃か
ら300℃という高温条件下で行われるため、炭酸カリ
ウムを反応剤として用いる通常の重合方法ではSUS製
重合槽が腐食されるという欠点を有している。このため
耐腐食性のあるチタン、ニッケルなどの高価な重合槽を
用いる必要があった。
【0006】この問題を解決する方法としては、化合物
(II)をあらかじめナトリウムまたはカリウムなどのア
ルカリ金属の水酸化物で処理して、下記式(I)で示さ
れる4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジ
フェニルスルホンアルカリ金属塩にしてから重合を行う
方法がある。
【0007】
【化4】
【0008】この方法によれば反応温度を低下させるこ
とができるため、SUS製重合槽の腐食が抑制される。
工業化されている該芳香族ポリスルホンは、現在この方
法を用いて製造されている。
【0009】この、化合物(II)とアルカリ金属水酸化
物との反応は一般に水および/またはアルコール中で行
われる。しかし、得られるアルカリ金属塩(I)の、水
やアルコールへの溶解度が高いのに対し、化合物(II)
はその溶解度が極度に低い。そのためアルカリ金属塩
(I)の生成を促進させるためには当量の2倍以上のア
ルカリ金属水酸化物の存在下で化合物(II)と該アルカ
リ金属水酸化物とを反応させることが必要である。従来
の芳香族ポリスルホンの合成の場合、このアルカリ金属
水酸化物の添加量は、1.1当量程度なので、得られた
アルカリ金属塩は、冷却して析出させるかまたは加熱に
より溶剤を除去する方法(特公昭48−8280号公
報)により取り出し得る。しかし上記のアルカリ金属塩
(I)の場合は、このような方法では未反応のアルカリ
金属水酸化物を取り込んでしまうため、十分な精製が困
難である。ここで取り込まれたアルカリ金属水酸化物を
除去するために、水および/またはアルコールで洗浄を
行うと、未反応のアルカリ金属水酸化物は除去される
が、同時にアルカリ金属塩(I)から化合物(II)への
逆反応が起こり、目的とするアルカリ金属塩(I)を得
ることは困難である。
【0010】このように4−クロロ−4’−(p−ヒド
ロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩
(I)の単離精製が困難であるため、得られるアルカリ
金属塩(I)を用いる重合反応にも影響を及ぼす。未反
応のアルカリ金属水酸化物が存在すると、目的とする重
合反応を阻害する副反応が誘起されて高分子量の重合体
が得られず、他方化合物(II)の存在によって重合反応
の当量関係が合わなくなり、やはり高分子量の重合体が
得られない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の欠
点を解決するものであり、耐熱性、力学物性、電気的特
性、および耐薬品性に優れた芳香族ポリスルホンを重合
し得るモノマーとして使用し得る、4−クロロ−4’−
(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカ
リ金属塩の、単離および精製法を包含する製造方法を提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、未反応のアル
カリ金属水酸化物を析出、除去させることにより、精製
度の優れた4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニ
ル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩を単離し得るこ
とを見いだし、本発明に至った。
【0013】本発明の、下記式(I)で示される4−ク
ロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルス
ルホンアルカリ金属塩の製造方法は、水およびアルコー
ルからなる群から選択される少なくとも一種の第1の溶
媒中で、下記式(II)で示される4−クロロ−4’−
(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンと、ア
ルカリ金属水酸化物とを反応させる工程;該反応で得ら
れる、式(I)で示される4−クロロ−4’−(p−ヒ
ドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩
を含有する溶液を、ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、およびN−メチル−2−ピロリドンからな
る群から選択される少なくとも一種の第2の溶媒と混合
する工程;および析出した未反応のアルカリ金属水酸化
物を除去する工程;を包含する。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】本発明の製造方法で、化合物(II)とアル
カリ金属水酸化物との反応でアルカリ金属塩(I)を合
成する際に用いられる第1の溶媒は、水またはアルコー
ル、または両者の混合溶媒である。ここで用いられるア
ルコールとしては、メタノール、エタノールまたはプロ
パノールなどが挙げられるが、アルカリ金属水酸化物お
よびアルカリ金属塩(I)の溶解度が大きいため、メタノ
ールが好ましい。これらのアルコールを水との混合溶媒
として用いる場合には、任意の比率で該アルコールと水
とを混合し得る。アルカリ金属水酸化物としては、水酸
化ナトリウムまたは水酸化カリウムが、反応速度が大き
いため、好適に用いられる。
【0017】化合物(II)に対してのアルカリ金属水酸
化物の添加当量は、2倍当量以上が好ましい。2倍当量
未満では、反応速度が遅すぎて実用的ではない。溶媒に
対しての、化合物(II)およびアルカリ金属水酸化物の
合計濃度は、50重量%未満であることが好ましい。5
0重量%を越えると、反応により得られるアルカリ金属
塩(I)の反応溶媒中での濃度が増加し、結果として反
応が進まないため好ましくない。反応を行う際の温度は
高温であることが好ましく、50〜80℃が好ましい。
反応溶液が還流している状態で行うことが、最も好適で
ある。反応時に系内に酸素が存在すると酸化反応が起こ
るため、反応は不活性ガス下で行うことが望ましく、窒
素またはアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0018】本発明の製造方法で、アルカリ金属塩
(I)を含有する反応溶液中から、未反応のアルカリ金
属水酸化物を析出させるために用いられる第2の溶媒と
しては、アルカリ金属水酸化物を溶解せず、アルカリ金
属塩(I)を溶解する有機溶媒が好ましい。ジメチルホ
ルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはN−メチル
−2−ピロリドンが好適に用いられる。これらの溶媒は
混合して用いてもよい。これらの溶媒は後述するように
アルカリ金属塩(I)をさらに単離する際に、加熱して
除去され得る。そのため比較的低温で除去可能なジメチ
ルホルムアミドが特に好ましい。アルカリ金属塩(I)
を含有する反応溶液と第2の溶媒とを混合して未反応の
アルカリ金属水酸化物を析出させる際には、大量の第2
の溶媒中に、アルカリ金属塩(I)を含有する反応溶液
を投入することが好ましい。
【0019】本発明の製造方法で析出した未反応のアル
カリ金属水酸化物を除去する方法としては、濾別が好ま
しい。濾別方法は特に限定されず、析出物を除去し得る
フィルターなどであれば使用可能である。アルカリ金属
塩(I)を含有する濾液からさらに目的とするアルカリ
金属塩(I)を単離するために、使用した第1の溶媒お
よび第2の溶媒は加熱および/または減圧などの方法に
より除去し得る。あるいは、これらの溶媒と相溶性で、
かつアルカリ金属塩(I)を溶解しない第3の溶媒中で
再沈させてアルカリ金属塩(I)を析出、単離させるこ
ともできる。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。
【0021】(実施例1)4−クロロ−4’−(p−ヒ
ドロキシフェニル)ジフェニルスルホン90mmol、
水酸化カリウム280mmolを還流塔を備えた反応容
器中に投入し、窒素置換した後、メタノール250ml
を加えた。反応系を攪拌しながら65℃まで加熱し、メ
タノール還流下で1時間反応を行った。反応溶液は黄色
の透明溶液であった。この溶液を室温まで冷却した後、
大量のジメチルホルムアミド中に投入し、未反応の水酸
化カリウムを析出させた。析出物をガラスフィルターを
用いて濾別し、黄色透明の濾液を得た。得られた濾液を
エバポレータで加熱し、メタノールおよびジメチルホル
ムアミドを蒸発させ、黄色の粉末状固形物を得た。この
粉末状固形物の元素分析を行った結果、カリウムの含有
量は10.2重量%であり、理論値に一致し、未反応の
水酸化カリウムが残存していないことが確認された。
【0022】(実施例2)実施例1と同様の方法で黄色
透明の濾液を得、これをさらに大量のアセトン中に投入
して析出した黄色の粉末状固形物を濾別した。この固形
物中のカリウム量を元素分析で定量したところ、10.
2重量%となり、理論値と一致しており、未反応の水酸
化カリウムが残存していないことが確認された。
【0023】(実施例3)反応溶媒として水およびメタ
ノール(1/1)の混合溶媒を用いた以外は実施例と同
様の方法で固形物を得た。得られた固形物の元素分析の
結果、カリウム含有量は10.2重量%であり理論値と
一致していた。
【0024】(実施例4)アルカリ金属水酸化物として
水酸化ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様の方法
で固形物を得た。得られた固形物の元素分析の結果、ナ
トリウム含有量は6.3重量%であり理論値と一致して
いた。
【0025】(比較例1)4−クロロ−4’-(p-ヒド
ロキシフェニル)ジフェニルスルホン180mmol、
水酸化カリウム560mmolを用い、実施例1と同様
の反応を行った。反応溶液を氷浴にて冷却し、黄色の粉
末状固形物を析出させた。得られた固形物を濾別するこ
とにより取り出した後、元素分析を行ったところ、カリ
ウム含有量は12.0重量%であり、理論値を上回り、
未反応の水酸化カリウム含んでいることが確認された。
【0026】(比較例2)比較例1と同様にして粉末状
固形物を析出させた後、水洗を行い、未反応の水酸化カ
リウムを除去した。元素分析を行ったところ、カリウム
含有量は4.5重量%であり、理論値より少なく、これ
は洗浄によって脱カリウム反応が起こったためと考えら
れる。
【0027】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、4−クロロ
−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホ
ンと過剰量のアルカリ金属水酸化物とを反応させた後、
未反応のアルカリ金属水酸化物を除去することにより、
十分に精製された4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシ
フェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩(I)を
選択的に、かつ効率よく得ることができる。この結果、
SUS製重合槽の腐食の防ぐことができる上に、得られ
たアルカリ金属塩(I)をモノマーとして用いる重合反
応の制御、および分子量制御が容易になる。得られたア
ルカリ金属塩(I)を用いて耐熱性、力学物性、電気的特
性、および耐薬品性に優れた芳香族ポリスルホンを得る
ことができるため、工業的利用価値が大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岸本 大志郎 大阪府茨木市三島丘2丁目24番23号サン ハイツ三島丘306 (56)参考文献 特開 平2−49748(JP,A) 特開 昭56−2955(JP,A) 特公 昭48−8280(JP,B1) 特公 昭50−1020(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 317/22 C07C 315/04 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式(I)で示される4−クロロ−4’
    −(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアル
    カリ金属塩の製造方法であって、 水およびアルコールからなる群から選択される少なくと
    も一種の第1の溶媒中で、下記式(II)で示される4−
    クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニル
    スルホンと、アルカリ金属水酸化物とを反応させる工
    程;該反応で得られる、式(I)で示される4−クロロ
    −4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホ
    ンアルカリ金属塩を含有する溶液を、ジメチルホルムア
    ミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチル−2−
    ピロリドンからなる群から選択される少なくとも一種の
    第2の溶媒と混合する工程;および析出した未反応のア
    ルカリ金属水酸化物を除去する工程;を包含する、製造
    方法。 【化1】 【化2】
JP12024693A 1993-05-21 1993-05-21 4−クロロ−4’−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホンアルカリ金属塩の製造方法 Expired - Fee Related JP3207609B2 (ja)

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