JP3205672U - ガゼット付きキノコ栽培袋 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用中にフィルム層数が変化する部分におけるフィルム熱溶着部分が周囲からの牽引を受けても水漏れしないガゼット付きキノコ栽培袋を提供する。【解決手段】上方頂辺部に開口部13と,側フィルムを内側へそれぞれ折り込んだガゼット12a,12aと,前記開口部に対向する開口を熱溶着した熱溶着シール部16を備えプラスチックフィルムからなる袋体100にあって,このプラスチックフィルムは,インフレーション法のブロー比が2.5〜3.45の範囲で作製され,熱溶着シール部16は,一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部16aと,サイドシールに繋がって前記下方底辺部側へ傾斜した傾斜辺を有する折曲シール部16bを有し,折曲シール部内にあって,いずれかのガゼット内側端12a1,12a2が交差し,これらの交差した箇所は4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっている。【選択図】図1

Description

本考案は,ガゼット付きキノコ栽培袋に係り,さらに詳しくは,両サイドに折込み(以下,「ガゼット」ともいう。)を入れたプラスチックフィルムからなるガゼット付きキノコ栽培袋に関する。
ガゼット(gusset)付き袋は,別名マチ付き袋とも呼ばれており,ガゼットがない袋と比べて,大量のモノが収容できるので,家庭ゴミやキノコ栽培などの袋として,一般に広く使用されている。
一般的なガゼット付き袋は,頂辺部に略四角形状に拡口される開口部と,この開口部から下方の両サイドにそれぞれ所定深さ折り込んだ折り込み部(ガゼット)と,底辺部にあって前記開口部と対向する開口をヒートシールにより封鎖した底シール部とを備え,底シール部は,袋の全幅に亘って延びる略真っ直ぐな線形熱溶着部で形成されている。
この線形熱溶着部は,両サイドのガゼット部分において4層フィルムが溶着され,中央部分において2層フィルムが溶着されて,折り込み部の内側端と線形熱溶着部とが交差する箇所が4層フィルムから2層フィルムに変化した箇所となっている。
このようなガゼット付き袋は,袋に大量のモノが収容されると,線形熱溶着部において,ガゼット内側端と交差する箇所が,周囲から強い牽引力を受けて,ピンポイントの穴が開き或いは損壊するなどの課題がある。
この課題を解決するために,工夫された袋が提案されている。
例えば,下記特許文献1には,名称を側マチ付きプラスチックフィルム袋体と称した2種類の袋体が記載されている。一方の袋体は,プラスチックフィルムにより上部開口の四辺形袋体の両側辺を内側に折込んでマチ部を形成すると共に,下方の全幅に,ほぼ水平の熱溶着シール部を形成し,この熱溶着シール部はマチ部内側端と交差する個所に,下方に迂回する一対の凹状シール部を形成したものとなっている。
また,他方の袋体は,袋体の直線状の外側熱溶着シール部に代えて,凹状迂回シール部の外側熱溶着シール部を上方に傾斜する傾斜辺で形成したものである。
また,下記特許文献2に記載の包装袋は,インフレーション法によって製造されたガセット付きの樹脂フィルム偏平チューブをヒートシールした後,切断装置によって袋の長さに切断することにより製作されたものである。
この包装袋は,袋の下方に膨出する正面視形態の異形部を備えた単一の線形融着部を有し,この線形溶着部は,左右のマチ部の内側折り返し縁を横断して延びる唯一の異形部を袋の幅方向中央部に有し,異形部は,線形融着部の直線部分から緩やかに湾曲した左右の湾曲部と,左右の湾曲部の間に該湾曲部に連接して形成され且つ緩やかに湾曲した下方膨出部とからなり,下方膨出部の円弧状部分は,左右のマチ部の内側折返し縁を横断しており,4層フィルムの融着から2層フィルムの融着に変化する線形融着部の融着部分が内側折返し縁と下方膨出部との交点部分に形成されている。この交点部分は,また直線部分よりも袋の底縁に近い位置に位置して,内側折り返し縁の間に形成される袋の中央帯域には,2層フィルムを溶着してなる下方膨出部の円弧状融着部分が形成されたものとなっている。なお,この包装袋は,間欠運転の昇降式ヒートシール装置の使用には課題があることから,この昇降式ヒートシール装置に代えて,連続運転の回転式装置を用いて製造されたものとなっている。
実用新案登録第3072321号公報 特許第5400746号公報 特開2013−189247号公報
上記特許文献1に記載された2種類の袋体のうち,一方の袋体によれば,袋体に収容物を満杯に入れた場合,その引張力は従来のように一点に集中せずに,凹部の上端接着点及び他の迂回部に分散されるので,引っ張りによる穴開きを有効に回避することができ,また,他方の袋体によれば,袋体に廃棄物等を収納した場合,側マチ部分の引っ張りが斜め上方からになるので,袋体の迂回凹状シール部の耐引っ張り強度がより一層強固になる,と説明されている。
また,上記特許文献2に記載の包装袋によれば,内側折返し縁と線形融着部との交点部分は,下方に湾曲した下方膨出部に形成され,この交点部分は,直線状融着部よりも下方に変位した位置に配置されるので,直線状融着部から交点部分に伝達する力が緩和され,交点部分におけるフィルム融着部の破損を効果的に防止することができ,しかも,2層構造の中央帯域には,直線状融着部は形成されず,下方膨出部の両側には,袋の縁まで連続する比較的大きい長さの直線状融着部が形成されるので,袋の底辺部に作用する負荷を両側の直線状融着部に効果的に分散することができる,と説明されている。
本願の出願人は,キノコ栽培用袋の製袋業を営んでおり,上記特許文献1,2に記載の袋体をキノコ用にして,幾つかのキノコ栽培袋を試作し,それらに水を入れて水漏れ試験を実施したところ,幾つかが水漏れした。
この水漏れの原因は,以下の点にあるものと考えられる。
(a)上記特許文献1,2に記載の袋体と試作キノコ栽培袋とは構成が異なっていること
すなわち,上記特許文献1の袋体は,熱溶着シール部とマチ部内側端とが交差する個所が凹状シール部内の直線状の底辺部にあること,また,上記特許文献2には,フィルムの厚さが明記されていないが薄く(同出願人の上記特許文献3に記載された包装袋の厚さが13μm以上20μm以下。),回転式ヒートシール装置により熱溶着シールするものであること,などで試作キノコ栽培袋と構成の細部において異なっている。
(b)キノコ栽培工程に耐える仕様が必要であること
例えば,菌床シイタケ栽培工程は,袋体への培地詰め,高圧殺菌,放冷,接種,温度・湿度・光・期間を調節する培養,温度・(浸水,散水)水分管理する発生,収穫などとなっている。
これらの栽培工程にあって,袋体は,機械的ショックが加わり,高温に晒され,水びたしになり,膨れ上がり,栽培期間が長い,などの過酷な栽培環境で使用されるため,これらに耐えるものでなければならない。もし,これらの工程中に,袋体の破裂或いは水漏れが発生すると,キノコ栽培者のキノコ栽培が不調になり,栽培者は多大な損害を被ることになる。このため,キノコ栽培袋は,一般の袋体とは水漏れに関して高い信頼性が要求されている。
以上から,上記特許文献1,2に記載の袋体は,いずれもキノコ栽培袋と異なり,また,これまでキノコ栽培用のものは市場になく,その結果,キノコ栽培に適合するものでなく,使用できるものでないと言える。
本考案者らは,インフレーション法によるプラスチックフィルムは,インフレーションフィルム製造装置におけるブロー比及び引張り速度によって,縦方向と横方向とで引張り強度が異なることから,ブロー比を所定の範囲にしたフィルムを使用し,さらにこのフィルムの縦及び横方向間の所定の角度範囲内に熱溶着シール部とマチ部内側端とが交差する箇所を設けることによって,交差箇所の熱溶着が堅固になり,製造工程における製品不良率が格段に低下し,キノコ栽培及びこのような栽培環境下にある袋としても可能なことを検証して本考案を完成させるに至ったものである。なお,ブロー比は,インフレーションフィルム製造装置におけるダイのノズル径とチューブ状フィルムの直径との比となっている。
本考案の目的は,従来技術の課題,すなわち,袋体に大量のモノが収容されると,熱溶着シール部においてマチ部(ガゼット)内側端と交差する交差シール部が周囲から強い牽引力を受けて発生するピンポイントの穴開きや損壊の課題,を解消し,さらに,破裂や水漏れを確実に防止して,キノコ栽培及びこのような栽培環境下にある袋としても可能な袋であって,また製造工程における製品不良率を格段に低減できるガゼット付きキノコ栽培袋を提供することにある。
上記課題を解決するために,本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,所定大きさの表及び裏フィルムと,前記表及び裏フィルムの側縁間を左右で繋いだ側フィルムを有し,上方頂辺部に略四角形に拡口される開口部と,前記側フィルムを内側へそれぞれ所定深さ折り込んだ折り込み部と,下方底辺部にあって前記開口部に対向する開口を熱溶着した熱溶着シール部を備え,前記表及び裏フィルムはプラスチックフィルムからなり,少なくとも一方のフィルムに通気孔が形成されて,前記通気孔が内部への雑菌の侵入を防ぐ一方で空気を通過させるフィルターで塞がれたガゼット付きキノコ栽培袋において,
前記プラスチックフィルムは,インフレーション法のブロー比が2.5〜3.45の範囲で作製されたものからなり,前記熱溶着シール部は,一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部と,前記サイドシール部に繋がって前記下方底辺部側へ傾斜した傾斜辺を有する折曲シール部とを有し,前記折曲シール部において前記折り込み部のガゼット内側端が交差し,前記交差した箇所が4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっていることを特徴とする。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,前記折り込み部のガゼット内側端は前記折曲シール部の傾斜辺と交差し,前記交差した箇所が熱溶着されていることを特徴とする。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,前記傾斜辺は前記下方底辺部に対し角度θで傾斜ており,前記角度θは20〜80°の範囲または180°であることを特徴とする。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,前記下方底辺部側に,前記熱溶着シール部と所定の間隔をあけてサブ熱溶着部が設けられていることを特徴とする。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,前記プラスチックフィルムはポリエチレンフィルムであることを特徴とする。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,ブロー比が2.5〜3.45の範囲で作製されたものからなり,熱溶着シール部は,一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部と,このサイドシールに繋がって下方底辺部側へ傾斜した傾斜辺を有する折曲シール部とを有し,折曲シール部において折り込み部のガゼット内側端が交差し,交差した箇所が4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっているので,従来技術の課題,すなわち,袋体に大量の収容物が収容されると,熱溶着シール部においてガゼット内側端と交差する交差シール部が周囲から強い牽引力を受けて発生するピンポイントの穴開きや損壊の課題を解消し,さらに,破裂や水漏れを確実に防止して,キノコ栽培下での使用に好適なものであって,また製造工程における製品不良率を格段に低減できるガゼット付きキノコ栽培袋を提供できる。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,折曲シール部において折曲シール部の傾斜辺と折り込み部のガゼット内側端とが交差し,この交差した箇所が4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっているので,より確実に破裂や水漏れを確実に防止できる。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,傾斜辺は下方底辺部に対し角度θで傾斜ており,この角度θは20°〜80°の範囲または180°であるので,傾斜辺における交差シール部の引張強度を高くできる。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,下方底辺部側に,熱溶着シール部と所定の間隔をあけてサブ熱溶着部が設けられているので,下方底辺部側のシール強度が増大する。
本考案のガゼット付きキノコ栽培袋は,ポリエチレンフィルムであるので,袋を安価に作製できる。
本考案の実施形態1に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図1Aは正面図,図1Bは頂辺部開口の概略平面図,図1Cは底辺部の概略底面図である。 図2Aはインフレ―ションフィルム製造装置の概略図,図2Bはブロー比と引張り強さとの関係を示したグラフ,図2Cは引取速度と引張り強さとの関係を示したグラフである。 プラスチックフィルムの一部分の平面図である。 図1のIV部分の拡大正面図である。 図5Aは図1の袋体にモノを入れた状態の正面図,図5Bは図5AのV-V線の断面図である。 図6は本考案の実施形態2に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図6Aは正面図,図6Bは変形例に係るガゼット付きキノコ栽培袋の正面図である。 図7は本考案の実施形態3に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図7Aは正面図,図7Bは頂辺部開口の概略平面図,図7Cは底辺部の概略底面図である。
以下,図面を参照して本考案の実施形態に係るガゼット付きキノコ栽培袋を説明する。但し,以下に示す実施形態は,本考案の技術思想を具体化するためのガゼット付きキノコ栽培袋を例示するものであって,本考案をこれに特定することを意図するものではなく,実用新案登録請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
図1を参照して本考案の実施形態1に係るガゼット付きキノコ栽培袋の概要を説明する。なお,図1は本考案の実施形態1に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図1Aは正面図,図1Bは頂辺部開口の概略平面図,図1Cは底辺部の概略底面図である。
本考案の実施形態1に係るガゼット付きキノコ栽培袋10は,所定大きさの表及び裏フィルム11a,11bと,これらの表及び裏フィルム11a,11bの側縁間を左右で繋いだ側フィルムを有し,上方頂辺部に略四角形に拡口される開口部13と,各側フィルムを内側へそれぞれ所定深さ折り込んだ折り込み部12aと,下方底辺部15側にあって開口部13に対向する開口を熱溶着した熱溶着シール部16を有する袋体10を備え,表フィルム11aには通気孔11aが形成されて,この通気孔が内部への雑菌の侵入を防ぐ一方で空気を通過させるフィルター18で塞がれた構成となっている。
この袋体10は,各折り込み部(以下,「ガゼット」ともいう。)12a,12aが,それぞれ所定深さ折り込まれて,折曲端となるガゼット内側端12a,12aが空間14内へ入り込んでいる(図1B参照)。これらのガゼット内側端12a,12aは熱溶着シール部16と関係している。この点は後記する。
この袋体はプラスチックフィルム11(図3参照)からなり,このプラスチックフィルム11は,インフレーション法によるインフレーションフィルム製造装置において,ブロー比を所定範囲にして作製されている。
また,熱溶着シール部16は,一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部16aと,このサイドシール部に繋がって下方底辺部側へ折曲した傾斜辺16(図4参照)を有る折曲シール部16bと,所定長さの中間シール部16c,折曲シール部16b,他端側のサイドシール部16aで形成されている。各折曲シール部16b,16bの傾斜辺16は,下方底辺に対して所定の角度θ(図4参照)で傾斜している。これらの傾斜辺16は,折り込み部12a,12aのガゼット内側端12a,12aと交差しており,これらの交差箇所が熱溶着されている。なお,この熱溶着された交差箇所を以下の説明では交差シール部と言い,この交差シール部は4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっている。また,ブロー比及び角度θの範囲は後記する。
このガゼット付きキノコ栽培袋10によれば,袋体10に,大量のモノ,例えば培地が充填された場合,使用中にフィルム層数が変化する部分におけるフィルム熱溶着部分,すなわち交差シール部Oが周囲からの牽引を受けても,ピンポイントの穴が開き或いは損壊するのを防止できる。
以下,このガゼット付きキノコ栽培袋10の詳細を説明する。
袋体10は,インフレーション法(inflation)によって製造した筒状チューブを用いて製作されている。
まず,図2を参照して,インフレーション法によるフィルム製造装置を説明する。なお,図2Aはインフレ―ションフィルム製造装置の概略図,図2Bはブロー比と引張り強さとの関係を示したグラフ,図2Cは引取速度と引張り強さとの関係を示したグラフである。
インフレーションフィルム製造装置20は,溶融された樹脂を円形ダイ22によって円筒チューブ状にして押出す押出機21と,押出されたチューブに圧搾空気を吹き込み徐々に所定の幅に膨張させるエアリング23と,フィルムを冷却する冷却機24と,ニップルロール25に挟み込んで巻き取る巻取り機26とで構成されている。
このフィルム製造装置においては,フィルムの厚さは引取り方向のフィルムの伸びと,横方向の膨張による伸びによって決定され,また,この縦横方向の強さは,ダイのノズル径と円筒チューブの直径比(以下,ブロー比という。)によって,決定される。
そこで,本考案では,このブロー比を所定の範囲にして,プラスチックフィルム11を製造する。フィルム材は,熱軟化性プラスチックからなるものであり,特に有効なものはポリエチレンである。
インフレ―ションフィルム製造装置20で製造したフィルムは,以下の特性を有する。すなわち,図2B,図2Cを参照して,縦方向「ア」及び横方向「イ」における引っ張り強さは,ブロー比との関係においてブロー比が小さいときには両者の差が大きく,ブロー比が大きくなるにしたがってその差が小さくなる(図2B参照),また,引取速度との関係では速度が遅いときにはその差が小さく,速くなるにしたがって差が大きくなる(図2C参照)。
これらの特性を有するフィルムを用い,引っ張り強さを検証した。なお,図3はプラスチックフィルムの一部分の平面図である。
プラスチックフィルム110において,縦横及び斜め方向に所定の幅及び長さでフィルム片を切り抜いて,縦フィルム片11,斜めフィルム片11及び横フィルム片11をそれぞれ複数片作製した。なお,斜めフィルム片11は水平方向に対して略60°傾斜したものである。
これらのフィルム片11〜11をそれぞれ長さ方向の両端から引っ張ってみたところ,縦フィルム片11は長く伸ばしても切れ難く,横フィルム片11は長く伸びずに切れてしまった。一方,斜めフィルム片11は長く伸びる共に切れ難くかった。なお,斜めフィルム片は縦フィルム片よりも,長く伸び切れ難いものあった。その理由は,縦フィルム片は,製造工程において,引っ張り方向に分子が伸びきっていることにあると考えられる。これらの検証から,インフレーション法によって製造したフィルムは,斜め方向の引っ張り強度が高いことが分った。
インフレ―ションフィルム製造装置20におけるブロー比は,2.5〜3.45の範囲である。このブロー比は,2.5未満にすると,水漏れや破裂の発生率が高くなり,キノコ栽培用のものとして使用できない。また,3.45を超えると,同様に,水漏れや破裂の発生率が高くなる。
次に,図1,図4,図5を参照して,袋体を説明する。なお,図1は本考案の実施形態1に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図1Aは正面図,図1Bは頂辺部開口の概略平面図,図1Cは底辺部の概略底面図,図4は図1のIV部分の拡大正面図,図5Aは図1の培地などを入れた状態の正面図,図5Bは図5AのV−V線の断面図である。
袋体10は,インフレーション法によって製造した筒状チューブを所定長さに切断して製作されている。
この袋体10は,図1に示したように,所定大きさの表及び裏フィルム11a,11bと,これらの表及び裏フィルム間を繋いだ左右の側フィルムを有し,上方頂辺部に略四角形に拡口される開口部13と,この開口部からの下方両サイドを内側へそれぞれ所定深さ折り込んだ対向する一対の折り込み部(ガゼット)12a,12aと,下方底辺部側にあって開口部13に対向する開口を熱溶着した熱溶着シール部16と,内部に所定大きさの空間14を有している。表フィルム11aには,所定大きさの通気孔11aが形成されて,この通気孔が内部への雑菌の侵入を防ぐ一方で空気を通過させるフィルター18で塞がれている。
なお,通気孔は,表フィルムに限定されず,裏フィルムでもよく,少なくともいずれかのフィルムに通気孔を設ければよい。これらの通気孔には,それぞれフィルターが装着される。また,その大きさ及び形状などは袋体のサイズに応じて適宜決められ,その大きさ及び形状に合ったフィルターが装着される。
熱溶着シール部16は,図1A,図1Bに示したように,傾斜辺を有する折曲シール部を有し,この折曲シール部内で各ガゼット内側端12a,12aが交差し,この交差シール部は4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっている。なお,符号15は袋体の下方底辺部であって,切断辺となっている。プラスチックフィルム材は,熱軟化性のプラスチック材であって,例えばポリエチレンフィルムである。この袋体の寸法は,例えば,高さHは45cm,横幅Wは20cm,Wは6.3cm,Hは0.1cm,フィルムの厚さは50μmである。なお,WはWより若干長くなっている。
熱溶着シール部16は,図1に示したように,袋体10の一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部16aと,このサイドシール部から延び所定の形状に折曲した折曲シール部16bと,この折曲シール部に繋がって他端側へ延びた中間シール部16cと,折曲シール部16bと,他端側のサイドシール部16aとを有し,これらのシール部は連続している。なお,中間シール部16cを省き,後記する底辺で繋いでもよい。
この熱溶着シール部は,二つの折曲シール部を形成するバーを備えた所定形状のヒートシールバーを用い,昇降式のヒートヒール装置によって形成される。なお,シール幅tは,例えば1.5〜2.5mmである。2つの折曲シール部16b,16bは,同じ形状のものとなっている。
図4を参照して,一方の折曲シール部16bを説明する。この折曲シール部16bは,サイドシール部16aから下方底辺部側へ斜めに降下した傾斜辺16と,所定長さの底辺16と,一方の傾斜辺16と対向した他方の傾斜辺16とからなり,正面視で擂鉢断面形状に折曲して形成されている。なお,正面視擂鉢断面形状は,擂鉢を縦方向に切断し,その切断面の形状を表している。傾斜辺16は,底辺16の延長線との間で所定の角度θで傾斜している。なお,底辺16は,下方底辺部15と略平行になっている。
この折曲シール部16b内では,各ガゼット内側端12a,12aが交差し,これらの交差シール部は4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっている。
以下,これらの交差箇所のうち,ガゼット内側端12aで交差し,この箇所を始点として4枚のフィルムが熱溶着されている例を説明する。
この交差シール部分は図1A,図4及び図5において記号Oで示した。この交差シール部Oは,折り込み部12aのガゼット内側端12aと傾斜辺16とのフィルムが重畳された熱溶着箇所となっている。すなわち,この交差シール部Oは,傾斜辺16にあって,表及び裏フィルム11a,11b及びガゼット内側端12aが重畳された4枚のフィルムにより4層積層で熱溶着された箇所の始点となっている。なお,図1Cの幅Wは,4枚のフィルムが積層された幅となっている。また底辺16及び他方の傾斜辺16は,表及び裏フィルム11a,11bの2層積層で熱溶着されている。
傾斜角度θは,0°を超え90°未満の範囲内において,交差シール部形成の難易度や引張強度などを考慮して決定される。
傾斜角度θを90°にすると,傾斜辺16とガゼット内側端12a'との溶着箇所が多点乃至直線状に溶着されているようにみえるが,実際はこの溶着箇所が多点乃至直線状に溶着されずにムラの多い溶着となり,溶着不良が発生しがちで,剥がれ易いものとなる。また,傾斜角度θを0°にすると,インフレーション法で製造したフィルムは横方向の引張強度が縦方向に比べて弱くなるので,交差シール部でピンポイントの穴が開き或いは損壊する恐れがある。さらに,これらの角度0°及び90°を除き,0°を超え90°未満の範囲内にあっても,傾斜角度θを90°に近づけると,傾斜辺16は急峻となり,傾斜辺16が形成される水平方向の間隔Lが短くなり,交差シール部の形成が困難になる。さらにまた,傾斜角度θを0°に近づけるとフィルム強度が弱くなり,交差シール部分でピンポイントの穴が開き或いは損壊する恐れがある。
また,この傾斜角度θは,高さHを左右する。すなわち,傾斜角度θが45°を超え90°に接近すると傾斜辺16は急峻になり,底辺16との深さが深くなり,その分高さHが大きくなり,一方,傾斜角度θが45°未満であって0°に接近すると傾斜辺16がなだらかで,底辺16との深さが浅くなり,その分高さHが小さくなる。この高さHの大小は,切断辺となる下方底辺部15の長さの長短となり,使用するフィルム材料量の大小となって,コストの高低になる。特に,後記する2本の熱溶着シール部を設ける場合にこのコストの高低は重要になる。なお,底辺16との深さaは,例えば,傾斜角度θが63°のときは11.5mm,45°のときは7.5mm,27°のときは6.5mmであり,この深さaにより高さHを決める。
これら検討結果から,本考案では,傾斜角度θの範囲は20°〜80°であり,この範囲にあって最適範囲は40°〜70°が好ましい。なお,ガゼット内側端12aは底辺16にある。また,図4に示した折曲シール部の寸法は,例えばシール幅tは1.5〜2.5mm,高さaは前記,幅bは15〜25mmである。
図1Aに示した,2つの折曲シール部16b,16bは,同じ形状を有しているが,
交差シール部の位置は,同図の左右で異なっている。すなわち,熱溶着箇所は同図左では傾斜辺16に,同図右では傾斜辺16になっている。
これらの袋体の荷重試験を実施した。
(c)試験方法
・被試験袋体
4種類の袋体A〜D 袋体A:傾斜角度θは26.57°,袋体B;傾斜角度θは45°,袋体C:傾斜角度θは63.43°,袋体D;傾斜角度θは180°
袋体の寸法は,0.05×200/320×450mm
インフレーションフィルム製造装置のブロー比3.0
袋体A〜Dの枚数 各20枚
・袋体A〜D各20枚,それぞれに4℃の2リットルの水を入れ,上方の開口をしっかり縛って密封した。なお,水を入れた袋体の数は「個」と表現した。
・これらの袋体を秤(はかり)の上に載せてボール盤で圧縮。
・圧縮した荷重を測定。
(d)試験結果
Figure 0003205672
(e)評価
上記表1から,袋体A〜Dにおける20個平均の破損荷重は,袋体Aでは59.1Kg,袋体Bで85.7Kg,袋体Cで113.1Kg,及び袋体Dで113.1Kgであった。また,ガゼット内側端12aで交差した袋体の破損荷重は,袋体Dの破壊荷重(113.1Kg)より大であった。なお,従来技術の袋体は,9.6Kgで水漏れした。各袋体A〜Dと従来の袋体と対比すると,各袋体A〜Dは,いずれも従来技術の袋体と比べて破損荷重が高くなった。
その結果,各袋体A〜Dは,従来技術の袋体と比べて,破損荷重が高く,水漏れの安全度が高くなり,熱溶着シールの不良率を大幅の低減できる。すなわち,熱溶着シールは,例えばフィルム溶着温度250°±10°の範囲で実施されるが,このときの熱溶着シールは季節の寒暖などによって影響を受け,溶着不良を起すことがある。しかし,従来技術の袋体と比べて,破損荷重が高くなるので,不良率を低減できる。さらに,サブ熱溶着シール部を追加した袋体は,さらに耐圧が高くなった。
以上から,各袋体A〜Dは,キノコ栽培袋として最適なものとなる。
図6を参照して,本考案の実施形態2に係るガゼット付きキノコ栽培袋を説明する。なお,図6は本考案の実施形態2に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図6Aは正面図,図6Bは変形例に係るガゼット付きキノコ栽培袋の正面図である。
本考案の実施形態2に係るガゼット付きキノコ栽培袋10Aは,実施形態1のガゼット付きキノコ栽培袋10の袋体10に設けた熱溶着シール部16に加え,さらに,サブ熱溶着シール部(以下,サブシール部ともいう。)17を追加したものである。
以下,プラスチックフィルム袋10と共通する構成には同じ符号を付して,それらの説明を援用し省略することとし,異なる構成について説明する。
このガゼット付きキノコ栽培袋10Aは,熱溶着シール部16の各サイドシール部16a,16aの下方に,所定の距離離して,サブ熱溶着シール部17を付設したものである。サブ熱溶着シール部17を付設により,高さH11は,Hより若干高くなる。
各サブ熱溶着シール部17を各サイドシール部16aに併設することによって,下方底辺部側のシール強度が増大する。すなわち,交差シール部Oが強い牽引を受けても,この牽引力をサブシール部が分担して受けて,ピンポイントの穴が開きや,損壊を確実に防止できる。これは試験により確認されている。一方でまた,熱溶着シール部16の位置決め,熱溶着が容易になる。すなわち,ヒートシールバーで,略一本線状の熱溶着シール部16を形成するのは難しいが,サブシール部により2本線状の熱溶着となるので,位置決め及び熱溶着が容易になる。
変形例に係るガゼット付きキノコ栽培袋10A'は,図6Bに示したように,下方底辺部の全幅に亘ってサブ熱溶着シール部17'を設けたものである。これにより,サブ熱溶着シール部17'は,各サイドシール部,折曲シール部及び中間シール部との併設となるので,下方底辺部側のシール強度がさらに増大する。
図7を参照して,本考案の実施形態3に係るガゼット付きキノコ栽培袋を説明する。なお,図7は本考案の実施形態3に係るガゼット付きキノコ栽培袋を示し,図7Aは正面図,図7Bは頂辺部開口の概略平面図,図7Cは底辺部の概略底面図である。
本考案の実施形態3に係るガゼット付きキノコ栽培袋10Bは,実施形態1のガゼット付きキノコ栽培袋10の袋体10に設けた二つの折曲シール部を1個にして小型化したものである。この小型化により,実施形態1の袋体10と高さH及び幅W,Wが低く短くなる。また,この袋10Bは,袋10A,10A'に付設したサブ熱溶着シール部17,17'を設けてもよい。
10,10A,10A',10B ガゼット付きキノコ栽培袋
10 袋体
11 プラスチックフィルム
11〜11 フィルム片
11a 表フィルム
11a 通気孔
11b 裏フィルム
12a 折り込み部(ガゼット)
12a,12a ガゼット内側端
13 開口部
15 下方底辺部
16 熱溶着シール部
16a サイドシール部
16b 折曲シール部
16c 中間シール部
16 傾斜辺
16 底辺
16 傾斜辺
17,17' サブ熱溶着シール部
18 フィルター
20 インフレーションフィルム製造装置

Claims (5)

  1. 所定大きさの表及び裏フィルムと,前記表及び裏フィルムの側縁間を左右で繋いだ側フィルムを有し,上方頂辺部に略四角形に拡口される開口部と,前記側フィルムを内側へそれぞれ所定深さ折り込んだ折り込み部と,下方底辺部にあって前記開口部に対向する開口を熱溶着した熱溶着シール部を備え,前記表及び裏フィルムはプラスチックフィルムからなり,少なくとも一方のフィルムに通気孔が形成されて,前記通気孔が内部への雑菌の侵入を防ぐ一方で空気を通過させるフィルターで塞がれたガゼット付きキノコ栽培袋において,
    前記プラスチックフィルムは,インフレーション法のブロー比が2.5〜3.45の範囲で作製されたものからなり,前記熱溶着シール部は,一側端から内側へ所定長さ延びたサイドシール部と,前記サイドシール部に繋がって前記下方底辺部側へ傾斜した傾斜辺を有する折曲シール部とを有し,前記折曲シール部において前記折り込み部のガゼット内側端が交差し,前記交差した箇所が4層フィルムシールと2層フィルムシールとの境界となっていることを特徴とするガゼット付きキノコ栽培袋。
  2. 前記折り込み部のガゼット内側端は,前記折曲シール部の傾斜辺と交差し,前記交差した箇所が熱溶着されていることを特徴とする請求項1に記載のガゼット付きキノコ栽培袋。
  3. 前記傾斜辺は,前記下方底辺部に対し角度θで傾斜ており,前記角度θは20〜80°の範囲または180°であることを特徴とする請求項2に記載のガゼット付きキノコ栽培袋。
  4. 前記下方底辺部側に,前記熱溶着シール部と所定の間隔をあけてサブ熱溶着部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のガゼット付きキノコ栽培袋。
  5. 前記プラスチックフィルムは,ポリエチレンフィルムであることを特徴とする請求項1記載の側ガゼット付きキノコ栽培袋。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7076621B1 (ja) * 2021-10-25 2022-05-27 株式会社サカト産業 キノコ栽培袋

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