JP3205302B2 - 雑草繁殖防止工法 - Google Patents

雑草繁殖防止工法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、植物の生育基盤
における雑草の繁殖を防止する雑草繁殖防止工法、特
に、切土や盛土の傾斜面(法面)等に造成した植物の生
育可能な緑化基盤における雑草繁殖防止工法に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、土木工事等により生じる切土
や盛土等の傾斜面(法面)は、通常、種々の法面工法に
よって保護、補強されるが、開発事業等による自然破
壊、環境破壊等が社会問題ともなっており、緑化による
景観の向上や環境の保全、および自然保護の観点から、
植物の生育可能な厚さを持った生育基盤(緑化基盤)を
法面に造成し、この緑化基盤における植物の生育により
法面の緑化をはかることが、近年の開発事業等において
広く行われている。
【0003】法面の緑化をはかる工法として、たとえ
ば、緑化基盤をなす緑化基材に予め所定種植物の種子を
混合して、緑化基盤を造成した後にこの種子を発芽、生
育させるもの、あるいは造成した緑化基盤に所定種植物
の苗木をほぼ規則的に植栽するもの等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、法面におけ
る緑化工法として、たとえば、現地、あるいは現地近隣
で採取した表土(現地発生土)を緑化基材に使用する工
法が知られている(特開平09−041384号公報等)。この
工法は、現地発生土の有効利用をはかるとともに、混在
する埋土種子等の生育による自然形態の復元等を目的と
する場合が多く、雑草の生育も緑化の一部とした概念の
もとで行われることが多い。
【0005】しかし、所定種植物の苗木を緑化基盤にほ
ぼ規則的に植栽する緑化工法においては、緑化基盤で繁
殖する雑草が緑化基盤の美観を損なう原因となる虞れが
あり、また、この雑草が緑化基盤中の水分や栄養分を吸
収することで、苗木、つまりは植栽植物の生育を妨げる
虞れもある。
【0006】また、造成した緑化基盤に限らず、切土や
盛土等の法面における地の表土も、植物の生育基盤とい
えるため、この地の表土にも雑草は生育、繁殖する。し
かし、特に道路脇、あるいは鉄道の線路脇等の法面に生
育、繁殖した雑草が枯れると、この枯れた雑草が、法面
の美観を損ねるばかりでなく、たばこの投げ捨て等によ
り火災、延焼する虞れもある。
【0007】つまり、植栽植物による緑化の施された緑
化基盤や表土の露出した法面等においては、そこでの雑
草の繁殖を防止することが望まれる。雑草を除去する工
法として、たとえば、除草剤を使用する工法、あるいは
作業者の手による抜去作業等が考えられる。しかし、除
草剤は植栽植物にも悪影響を与えるとともに、ゴルフ場
等で問題となっている環境汚染を伴いやすいため使用で
きず、また、広範囲の傾斜面での作業となることから、
作業者による抜去作業も容易でない。
【0008】この発明は、植栽植物や環境に悪影響を与
えることなく雑草の繁殖を容易に防止でき、かつ法面の
緑化基盤において適用可能な雑草繁殖防止工法の提供を
目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、この発明においては、透水性、および完全遮光性の
ある遮光シートに着目している。そして、この遮光シー
トを、植栽植物の生育に悪影響を与えることなく使用す
ることで、緑化基盤での雑草の繁殖を防止しようとする
ものである。
【0010】この発明によれば、必要に応じて予め平坦
化した植物の生育基盤を、透水性、および完全遮光性の
ある遮光シートで被覆して、遮光シートを生育基盤に対
して固定するとともに、複数本の切れ目の組み合わせに
より遮光シートに形成した捲れ片を介して、所定種植物
の苗木を生育基盤に植栽する。そして、遮光シートと同
一種類のシートから、遮光シートの切れ目を覆う大き
さ、形状に形成された遮光パッチに、その周端からほぼ
中央にかかる切り込み1本のみを設け、この切り込みで
の部分的な分断を伴って、遮光パッチを苗木の茎部周り
に配置するとともに、遮光シートの切れ目に自己の切り
込みを合致させない位置、および向きで、この遮光パッ
チを遮光シートに重ねて固着している。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながらこの発
明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】この発明に係る雑草繁殖防止工法において
は、透水性、および完全遮光性のある遮光シート10を、
植物の生育基盤12に被せて使用することで、生育基盤で
の雑草の繁殖を防止しようするものである(図1、図2
参照)。
【0013】この発明において使用する遮光シート10
は、水分の透過を妨げない透水性を持つにも拘らず、光
の透過を100%遮断する、いわゆる完全遮光性を持つシ
ートであり、たとえば、「ダイテックスDT-50」(販売
元:ダイニックス株式会社)の商品名で市販されている
シートが、この遮光シートとして利用できる。
【0014】この遮光シート10は、土壌、つまり植物の
生育基盤12への光の侵入を完全に阻止し、土壌中での光
合成を不能とすることによって雑草の繁殖を防止するも
のである。そして、この遮光シート10は、一般に熱融着
性を持っており、特定温度以上での加熱のもとで、遮光
シート間が相互に溶着、固着可能となっている。
【0015】以下、法面11に造成した緑化基盤を、植物
の生育可能な生育基盤12として例示し、緑化基盤におけ
るこの発明の雑草繁殖防止工法を、その工程に沿って概
略説明する。
【0016】なお、法面11への緑化基盤(生育基盤)12
の造成工法自体はこの発明の趣旨でなく、またその工法
としては、特公平08−016329号公報等に開示の公知の工
法が利用できるため、ここでは詳細に説明しない。
【0017】この雑草繁殖防止工法においては、造成さ
れた緑化基盤12に既に雑草が生育している場合等の必要
に応じて、まず、雑草の伐採、除去等による緑化基盤の
平坦化を行う。次に、上記の遮光シート10でこの緑化基
盤12を覆い、被装した遮光シートを緑化基盤に対して固
定する。
【0018】この雑草繁殖防止工法においては、緑化基
盤12への光の侵入阻止を目的として、緑化基盤を遮光シ
ート10で覆うため、たとえば、図2に示すように、複数
枚の遮光シート(10-1〜10-9等)を、対応各辺での周縁
の重ね合わせを伴って、緑化基盤上に連続的に敷設し、
重ね合わせた周縁の熱融着のもとで、緑化基盤を隙間な
く全面的に覆う連続長に連結することが好ましい。
【0019】なお、この遮光シート10間の熱融着は、た
とえば溶着機等での加熱のもとで十分に行える。
【0020】そして、木製の棒状押え片14を、遮光シー
ト10の上から、緑化基盤12の、たとえば横方向に、等間
隔毎等で掛け渡し、アンカー16等でこの棒状押え片を固
定することにより、遮光シートを緑化基盤に対して固定
する。なお、棒状押え片14を固定したアンカー16の部分
を、対応する形状、大きさに裁断した遮光シートで部分
的に覆うとよい。この構成によれば、アンカー16を挿通
した部分からの光の侵入が確実に防止できる。
【0021】次に、図1に示すように、この発明におい
ては、複数本の切れ目18の組み合わせにより遮光シート
10に形成した捲れ片20を介して、所定種の苗木22を緑化
基盤12に植栽する(図2参照)。
【0022】複数本の切れ目18の組み合わせとして、た
とえば、図1に示すような略十文字形状が例示でき、こ
の十文字での組み合わせによりなる4片の捲れ片20の一
部、あるいは全部を捲ることによって、緑化基盤12へ
の、この捲れ片を介した苗木22の植栽が可能となる。
【0023】このように、この発明においては、捲れ片
20を介して苗木22を緑化基盤12に植栽するため、それ以
外の部分での遮光シート10の捲れ等は確実に防止でき
る。そして、苗木22の植栽後、苗木の茎部に沿った位置
に捲れ片20を戻せば、緑化基盤12の必要以上の露出が防
止できる。
【0024】なお、切れ目18の形成は、通常、遮光シー
ト10を敷設した後、緑化基盤12の状況等に合わせた個所
て適宜行うことが好ましいが、これに限定されず、たと
えば、切れ目を遮光シートに予め形成しておくことも可
能であることはいうまでもない。
【0025】ここで、苗木22の植栽後に、捲れ片20をほ
ぼ元の状態に戻すとはいえ、苗木の茎部が切れ目18を挿
通した形態で存在する以上、この茎部の径に相当する程
度の隙間が、この切れ目に生じることから、この隙間を
介した光の侵入は避けられない。そこで、この発明にお
いては、遮光シート10と同一種類のシート、つまり透水
性、および完全遮光性のある遮光シートから、遮光シー
トの切れ目18を覆う大きさ、形状の遮光パッチ24を形成
し、たとえば、その周端からほぼ中央にかけて設けた1
本の切り込み26での部分的な分断を伴って、この遮光パ
ッチを苗木22の茎部周りに配置するとともに、遮光シー
トの切れ目に切り込みを合致させない位置、および向き
で、この遮光パッチを遮光シートに重ねて、たとえば溶
着機での加熱による熱融着により固着している(図1の
一点鎖線参照)。
【0026】上記のように、この発明の雑草繁殖防止工
法によれば、遮光シートの切れ目18に、苗木22の植栽の
もとで隙間が生じても、この隙間を遮光パッチ24で覆
い、なおかつ熱融着のもとで遮光シート10に固着するた
め、緑化基盤12への光の侵入は確実に阻止できる。つま
り、たとえ緑化基盤12の土壌に雑草の埋土種子、根系等
が混入されていても、この遮光シート10での遮光のもと
で、緑化基盤での雑草の繁殖は確実に防止される。
【0027】そして、完全な遮光のもとで雑草の繁殖を
防止するとはいえ、遮光シート10の透水性のもとで緑化
基盤12には水分が浸透するとともに、苗木22自体は光を
受けるため、この遮光シートでの完全遮光が、苗木の生
育に悪影響を及ぼすこともない。
【0028】このように、この発明によれば、苗木22、
ひいては植栽植物に悪影響を与えることなく、緑化基盤
12での雑草の繁殖が防止できる。また、除草剤等とは無
縁の遮光シート10を使用する工法であるため、環境汚染
等の問題を招くことも全くあり得ず、環境、および自然
にやさしい工法であるといえる。
【0029】そして、この発明においては、緑化基盤12
の造成後、あるいは苗木22の植栽前に、遮光シート10を
緑化基盤上に敷設すれば足りるため、雑草の抜去作業等
のような煩雑な作業を行うことなく、雑草のない緑化基
盤を長期的に維持することができる。つまり、法面11に
造成した緑化基盤12に適用可能な雑草繁殖防止工法が、
この発明によれば容易に提供可能となる。
【0030】更に、遮光パッチ24を苗木22の茎部周りに
配置して遮光シート10に固着すれば足りるため、構成の
複雑化、作業性の低下を伴うことなく、確実な遮光が容
易に確保できる。
【0031】ここで、この発明の実施の形態において
は、遮光シート10を、周縁間の熱融着により連結した連
続長の構成として具体化しているが、これに限定され
ず、たとえば、熱融着することなく敷設する構成として
もよい。しかし、遮光シート10を周縁の熱融着のもとで
連続長に形成すれば、遮光シートのつなぎ目部分での隙
間の形成が確実に防止されるため、一層確実な遮光が可
能となる。
【0032】また、ここでは、熱融着による連結を具体
化しているが、これに限定されず、たとえば、両面テー
プや接着剤等を利用して、遮光シート10の周縁間を固着
してもよい。しかし、熱融着によれば、隙間の生じない
確実な密着が得られるため、この点においても、遮光の
確実性が向上する。そして、溶着機によって対応部分を
加熱すれば足りるため、作業性も向上する。
【0033】更に、この発明の実施の形態においては、
木製の棒状押え片14によって遮光シート10を押えている
が、遮光シートの全体的な捲れ等が防止できれば足りる
ため、この棒状押え片に限定されず、たとえば、複数個
のアンカー具等によって、遮光シートの要所、たとえば
四隅等を押える構成としてもよい。
【0034】しかし、この実施の形態のような棒状押え
片14によって、遮光シート10を押えれば、遮光シートが
点でなく線で押えられるため、風等に起因する遮光シー
トの捲れ、バタつきが確実に防止できる。従って、この
点からも、遮光シートでの遮光性が一層向上する。
【0035】なお、棒状であれば足りるため、木製に限
定されず、たとえば、金属製の棒材等を、棒状押え片14
として利用してもよい。しかしながら、この棒状押え片
14を木製とすることにより、経年による棒状押え片の腐
食、退化が期待できるため、自然形態の保護にも寄与で
きる。
【0036】なお、この発明の実施の形態においては、
棒状押え片14を緑化基盤12に対する横方向に掛け渡す構
成を具体化しているが、掛け渡す方向は横方向に限定さ
れず、たとえば、縦方向、斜め方向等に、棒状押え片を
掛け渡してもよい。
【0037】更に、この発明の実施の形態においては、
十文字形状での切れ目18の組み合わせによって捲れ片20
を遮光シート10に形成しているが、捲れ片を形成可能で
あれば足りるため、複数の切れ目の組み合わせはこの十
文字形状に限定されず、他の形状、たとえば、図3(A)
のクロス形状、図3(B) の略く字形状、あるいは図3
(C) の略コ字形状等に、複数の切れ目を組み合わせ、こ
れによって捲れ片を形成してもよい。そして、遮光パッ
チ24は、切り込み26を切れ目18に合致させることなく配
置すれば足りるため、図3(A) のクロス形状、図3(B)
の略く字形状、あるいは図3(C) の略コ字形状等におい
ては、図示のような向きに、遮光パッチは配置、固着さ
れる。
【0038】また、遮光パッチ24の形状として略正方形
を例示し、図示しているが、遮光シートの切れ目18を覆
う大きさ、形状であれば足りるため、これに限定され
ず、たとえば、他の多角形、あるいは円形等に、遮光パ
ッチを形成してもよい。
【0039】なお、上述したこの発明の実施の形態にお
いては、法面11に造成した緑化基盤12を植物の生育基盤
として例示しているが、これに限定されず、たとえば、
切土や盛土等の法面における地の表土も植物の生育基盤
であるといえることから、この表土面に、この発明を応
用してもよい。この法面の地の表土に対してこの発明を
行なう場合においては、通常、既に生育する雑草の伐
採、除去が、まず要求されるが、その後に遮光シート10
で表土面を覆うことで、この表土面での雑草の生育、繁
殖が確実に防止できるため、枯れた雑草に起因する火
災、延焼等が容易に予防できる。
【0040】また、法面11に限定されず、平地等におけ
る生育基盤、たとえば花壇や畑等に、この発明の雑草繁
殖防止工法を応用してもよい。
【0041】上述した発明の実施の形態は、この発明を
説明するためのものであり、この発明を何等限定するも
のでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施さ
れたものも全てこの発明に包含されることはいうまでも
ない。
【0042】
【発明の効果】上記のように、この発明に係る雑草繁殖
防止工法によれば、植物の生育基盤を透水性、および完
全遮光性のある遮光シートで覆うとともに、複数本の切
れ目の組み合わせにより遮光シートに設けた捲れ片を介
して、所定種植物の苗木を生育基盤に植栽しているた
め、生育基盤における雑草の繁殖が防止でき、なおか
つ、植栽植物の生育は確保される。つまり、植栽植物の
生育が、雑草の繁殖を伴うことなく確保でき、植栽後に
おける雑草除去作業等の煩雑な作業が省略できる。
【0043】従って、法面に造成した緑化基盤に適用可
能な雑草繁殖防止工法が、この発明によれば容易に提供
可能となる。
【0044】そして、雑草の繁殖を伴わないため、植栽
植物の生育への悪影響が確実に防止できるとともに、生
育基盤の美観が確実に向上する。更に、遮光シートで対
応部分を覆えば足りるため、環境汚染等を伴うことな
く、雑草の繁殖が容易に防止できる。
【0045】また、この発明においては、捲れ片のため
の切れ目を、遮光シートと同一種類の遮光パッチで覆っ
ているため、切れ目を介した光の侵入が確実に阻止され
る。従って、遮光シートによる遮光の確実性が増し、遮
光シートによる雑草の繁殖防止がより適切に行われる。
【0046】そして、切り込みを遮光シートの切れ目に
合致させることなく配置した位置で、遮光パッチを遮光
シートに固着すれば足りるため、構成の複雑化、作業の
煩雑化を伴うことはない。
【0047】更に、遮光パッチに周端からの切り込みを
設ければ、遮光パッチの部分的な分断が容易であるとと
もに、苗木の茎部周りへの配置も容易であるため、この
点からも、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る雑草繁殖防止工法の概略工程図
である。
【図2】この発明の雑草繁殖防止工法における、生育基
盤(緑化基盤)の概略部分斜視図である。
【図3】主に遮光シートの切れ目の変形例を示す、各平
面図である。
【符号の説明】
10 遮光シート 11 法面 12 緑化基盤(生育基盤) 14 棒状押え片 18 切れ目 20 捲れ片 22 苗木(植栽植物) 24 遮光パッチ 26 切り込み
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01G 13/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 必要に応じて予め平坦化した植物の生育
    基盤を、透水性、および完全遮光性のある遮光シートで
    被覆して、当該遮光シートを生育基盤に対して固定する
    とともに、複数本の切れ目の組み合わせにより遮光シー
    トに形成した捲れ片を介して、所定種植物の苗木を生育
    基盤に植栽し、 前記遮光シートと同一種類のシートから遮光シートの前
    記切れ目を覆う大きさ、形状に形成された遮光パッチ
    に、その周端からほぼ中央にかかる切り込み1本のみを
    設け、この切り込みでの部分的な分断を伴って、当該遮
    光パッチを前記苗木の茎部周りに配置するとともに、遮
    光シートの切れ目に自己の切り込みを合致させない位
    置、および向きで、この遮光パッチを遮光シートに重ね
    て固着する雑草繁殖防止工法。
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