JP3204873B2 - ロール状孔版原紙の製造方法 - Google Patents

ロール状孔版原紙の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はロール状孔版原紙の製造
法に関し、さらに詳しくはロール状に巻き取った孔版
原紙の表面平滑性の低下を防止することができるロール
状孔版原紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】孔版原紙は、例えば、熱可塑性樹脂フィ
ルムと多孔性支持体を接着剤で貼り合わせ、熱可塑性樹
脂フィルム表面にフィルム融着防止のために離型剤を塗
布することにより製造される。今日では、孔版印刷用原
紙の製版にはサーマルプリンティングヘッド(TPH)
が用いられているが、孔版原紙の表面に凹凸が存在する
と、製版時にTPHとフィルムとの密着状態にばらつき
が生じるため、穿孔されやすいところと穿孔され難いと
ころが発生し、原稿通りの穿孔ができず、良好な印刷画
像が得られない。このため、従来では、表面平滑性に優
れた多孔性支持体を用いることにより孔版原紙の表面平
滑性を確保する方法が採られていた。
【0003】しかし、近年の孔版印刷では、操作性向上
のためにロール状に巻き取ったロール状孔版原紙を用い
る場合が多いため、シート状態で孔版原紙の表面平滑性
が優れていても、ロール状に巻き取る際の巻き圧力(通
常は0.1〜1.2kg/cm2 )によって経時的に
表面平滑性が低下してシート状態時と同様の表面平滑性
が維持できないという問題点が生じている。ロール状に
巻かれた孔版原紙の表面平滑性の低下は、熱可塑性樹脂
フィルムの多孔性支持体繊維で支持されていない部分
が、ロール状に積層された孔版原紙の巻き圧力を受けて
経時的にくぼんでしまうために発生するものである。
【0004】この問題を解決する方法として、ロールの
巻き密度を調節して孔版原紙の表面平滑性の低下を防止
する方法が提案されている(特開平6−239048号
公報)。しかしながら、ロールの巻き密度を調節するだ
けでは、部分的に高い圧力で巻かれたところ、特にロー
ルの芯近傍では、孔版原紙の平滑性の低下を防止するこ
とはできない。またこれを避けるためにロールの巻き圧
を緩めると製品としての取扱性が低下するという問題が
生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来技術の問題点を解決し、表面平滑性の低下による画
像性の低下を防止して良好な印刷画像を得ることがで
、かつ取扱性に優れたロール状孔版原紙の製造方法を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に鑑み、鋭意検討した結果、孔版原紙の圧縮弾性率が高
いとロール状に巻き取った場合でも原紙表面の平滑性の
低下が防止されること、およびインキ通過性を阻害する
ことなく孔版原紙の圧縮弾性率を高くするためには、孔
版原紙を製造した後にカレンダー処理を施せばよいこと
を見いだし、本発明に到達した。本願で特許請求される
発明は以下の通りである。 (1)熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体を貼り合わ
せて孔版原紙を製造し、該孔版原紙にカレンダー処理を
施して該孔版原紙の圧縮弾性率を32kg/cm 2 以上
とした後、該孔版原紙をロール状に巻きとることを特徴
とするロール状孔版原紙の製造方法。
【0007】本発明において、ロール状孔版原紙は、公
知の方法で熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼
り合わせてシート状の孔版原紙とし、これにカレンダー
処理を施し、その圧縮弾性率を32kg/cm 2 以上と
した後、通常の方法でロール状に巻き取られる。熱可塑
性樹脂フィルムとしては、例えば、塩化ビニル−塩化ビ
ニリデン共重合体のフィルム、ポリアミドフィルム、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレン
フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステ
ル系フィルムなどの公知のものが用いられる。これらの
うち、特にサーマルヘッドへの適性や作業性の点から、
ポリエステル系フィルムが好ましい。熱可塑性樹脂フィ
ルムの厚さは通常0.5〜10μmである。多孔性支持
体にも特に制限はなく、例えば、コウゾ、ミツマタ、ガ
ンピ、マニラ麻、亜麻等の天然繊維、ポリエステル、ビ
ニロン、アクリル、レーヨン等の合成繊維などを単独で
または混合して製造した抄紙、シルク、ナイロン、ポリ
エステルなどを単独でまたは混合して製造した紗などが
用いられる。多孔性支持体の厚さは通常20〜60μm
である。また、支持体には必要に応じて薬剤加工が施さ
れていてもよい。
【0008】熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体を貼
り合わせる方法には特に制限はなく、通常は接着剤が用
いられるが、熱可塑性樹脂フィルムや多孔性支持体に接
着性が保持されている場合には接着剤を使用する必要は
ない。接着剤としては、例えば、酢酸ビニル系、飽和ポ
リエステル系、塩化ビニル系、塩化ビニリデン共重合
系、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン系、アクリル系、アクリレート系、メタアクリレート
系、ポリウレタン系、エポキシ系、ポリオール系などの
樹脂が使用され、溶剤に溶解して用いられるものでも、
樹脂単体で用いられるものでも、また水分、光、電子線
などで硬化させるものであってもよい。接着剤の使用量
は通常0.3〜5g/m2 である。孔版原紙の熱可塑性
樹脂フィルムには性能を低下させない範囲で、離型処
理、滑り処理、静電気処理などの一般的な処理を施して
もよい。離型剤としては、シリコーン、フッ素樹脂、界
面活性剤等が用いられる。離型処理は、通常孔版原紙を
製造した後に離型剤を塗布することにより行われるが、
フィルム、支持体または接着剤に離型剤を含有させる等
して離型性を持たせてもよい。
【0009】本発明において、カレンダー処理は、孔版
原紙を通常の方法で製造した後に施される。このカレン
ダー処理により、インキ通過性を阻害せずに孔版原紙の
圧縮弾性率を32kg/cm 2 以上に高くすることがで
きるため、通常のロール加工における巻き圧力(0.1
〜1.2kg/cm2 )で孔版原紙を巻き取っても原紙
の表面平滑性の経時的な低下が防止され、良好な印刷画
像を得ることができる。なお、カレンダー処理を孔版原
紙を製造する前の多孔性支持体に施しても、圧縮弾性率
は高くすることができるが、多孔性支持体の密度が高く
なってインキの通過が阻害されたり、フィルムとラミネ
ートした場合にフィルムと支持体との接着点が増えてし
まい、穿孔が阻害されたりして得られる印刷物の画像性
に悪影響を生じる。カレンダー処理により得られる孔版
原紙の圧縮弾性率は32kg/cm 2 以上であることが
必要であり、より好ましくは巻き圧力を高くしてロール
状孔版原紙の取扱性を向上させても画像劣化を起こさな
い等の点から、37〜75.6kg/cm2 の範囲であ
る。
【0010】カレンダー処理には従来公知のカレンダー
装置を用いることができる。カレンダー処理条件として
は、インキ通過性を阻害せずに圧縮弾性率を向上させる
ことができるよう、多孔性支持体の種類等に応じてカレ
ンダー圧力を適宜選択することが好ましい。例えば、多
孔性支持体として麻と合成繊維の混合抄和紙を用いた孔
版原紙(圧縮弾性率34.4kg/cm2 )では、線圧
60〜210kg/cm、速度10〜30m/分でカレ
ンダー処理を行うと、インキ通過性を阻害することなく
圧縮弾性率を39〜44kg/cm2 に向上させること
ができる。またカレンダー処理は加温して行ってもよい
が、通常はフィルムのガラス転移点および収縮開始温度
を考慮して室温程度で行うのが好ましい。またカレンダ
ーのロール材質、段数などはカレンダーの条件に合わせ
て任意の構成とすることができる。
【0011】なお、本発明において、圧縮弾性率はJI
S K7220に準じて測定したが、試験片が孔版原紙
であることから測定条件の一部を次のように変更して測
定した。 (1) 試験片幅および長さ:30±1mm (2) 高さ:孔版原紙を〔1枚の厚み×40〕で計算した
値を高さとした。 (3) 試験速度:1mm/分 (4) 圧縮歪み:試験片の元の高さに用いる値を〔1枚の
厚み×40〕として計算した。なお、試験片(孔版原
紙)の厚みの測定法はJIS P8118によった。 (5) 圧縮弾性率:積層した孔版原紙間の間隙の影響を排
除するため、直線上の2点間の応力差として、圧縮応力
−歪み曲線の最初の直線部分ではなく、60kg応力を
越えた時点での直線部分の応力差を使用して計算した。
【0012】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1〜5および比較例1 多孔性支持体として麻と合成繊維(PET)からなる厚
さ44.5μmの混抄和紙および熱可塑性樹脂フィルム
として厚さ2μmのポリエステルフィルムを用い、これ
らをエポキシアクリレート系接着剤(塗布量0.6g/
2 )で貼り合わせてシート状の孔版原紙を製造した。
得られたシート状の孔版原紙を表1に示すそれぞれのカ
レンダー条件でカレンダー処理を行った。カレンダー処
理はプラスチックまたはコットン製の弾性ロールと鋼製
のチルトロールの組み合わせによる2本ロールを用い、
室温で1段処理とした。
【0013】カレンダー処理前の孔版原紙(比較例1)
とそれぞれの条件でカレンダー処理を施した孔版原紙
(実施例1〜5)の圧縮弾性率を測定し、その結果を表
1に示したが、カレンダー処理を施すことにより孔版原
紙の圧縮弾性率が向上することが確認された。また各孔
版原紙の厚さ(μm)、およびカレンダー率の測定結果
を表1に示した。なお、カレンダー率は〔処理後の孔版
原紙の厚さ/処理前の孔版原紙の厚さ〕×100により
測定した。
【0014】次に各孔版原紙を用いて製版印刷機(リソ
グラフGR275、理想科学工業社製商品名)により製
版印刷を行い、得られた印刷物の画像性を調べた。ま
た、各孔版原紙を巻き圧力1kg/cm2 でロール状に
巻き取った後の孔版原紙についても上記と同様にして印
刷物の画像性を調べた。孔版原紙の巻取り前および巻取
り後の印刷物の画像性を目視で観察して3段階で評価
し、結果を表1に示した。画像性の最も良いものを3と
し、最も悪いものを1とした。
【0015】
【表1】 表1から、カレンダー処理を行った孔版原紙(実施例1
〜5)では、巻取り後の画像性の低下が比較例1に比し
て少ないため、これらの原紙をロール状に巻き取った場
合でも原紙の表面平滑性の低下が防止できることが分か
った。
【0016】実施例6および比較例2 実施例1において、多孔性支持体として厚さ42.3μ
mの麻繊維からなる和紙を用い、かつカレンダー条件を
表2に示す条件として孔版原紙を製造し、さらに製版印
刷機としてリソグラフRA225(理想科学工業社製商
品名)で用いた以外は実施例1と同様にして印刷物の画
像性等を調べ、結果を表2に示した。なお、カレンダー
処理を施さない孔版原紙を比較例2とした。
【0017】
【表2】 表2から、本発明の孔版原紙は、巻取り後の画像性の低
下が少ないことから、これらをロール状に巻き取った場
合でも経時的な原紙の表面平滑性の低下を防止できるこ
とが分かった。
【0018】本発明のロール状孔版原紙の製造方法に
れば、孔版原紙を製造した後にカレンダー処理を施すこ
とにより、孔版原紙の圧縮弾性率をインキ通過性を阻害
することなく向上させロール状に巻き取られた孔版原
紙の経時的な表面平滑性の低下による画像性の低下を防
止することができるため、良好な印刷画像を得ることが
できる、取扱性に優れたロール状孔版原紙が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−89396(JP,A) 特開 平6−227175(JP,A) 特開 平6−305015(JP,A) 特開 昭59−16790(JP,A) 特開 昭61−116595(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41N 1/24 102

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体を
    貼り合わせて孔版原紙を製造し、該孔版原紙にカレンダ
    ー処理を施して該孔版原紙の圧縮弾性率を32kg/c
    2 以上とした後、該孔版原紙をロール状に巻きとるこ
    とを特徴とするロール状孔版原紙の製造方法。
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