JP3204278B2 - マイクロホン装置 - Google Patents

マイクロホン装置

Info

Publication number
JP3204278B2
JP3204278B2 JP06934693A JP6934693A JP3204278B2 JP 3204278 B2 JP3204278 B2 JP 3204278B2 JP 06934693 A JP06934693 A JP 06934693A JP 6934693 A JP6934693 A JP 6934693A JP 3204278 B2 JP3204278 B2 JP 3204278B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
microphone
sound
output
circuit
signal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP06934693A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06261390A (ja
Inventor
徹 佐々木
仁 大久保
崇行 水内
薫 行徳
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP06934693A priority Critical patent/JP3204278B2/ja
Publication of JPH06261390A publication Critical patent/JPH06261390A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3204278B2 publication Critical patent/JP3204278B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば、カメラ一体
型VTRに搭載するマイクロホンやスピーチ用マイクロ
ホン、会議収録用マイクロホンなど広範囲に利用できる
マイクロホン装置に関する。
【0002】
【従来の技術】背景音をできるだけ排除して、希望する
音のみを収音するようにするため、単一指向性など指向
性を有するマイクロホンを使用することが多い。
【0003】また、適応雑音低減装置を応用して、不要
な騒音などを排除して、希望音声のみを得ることができ
るようにする試みもある。適応雑音低減装置について、
以下に説明する。
【0004】図10において、1は主要入力端子、2は
参照入力端子であって、主要入力端子1を通じて入力さ
れた信号は遅延回路3を介して合成回路4に供給され
る。また、参照入力端子2を通じて入力された信号は、
適応フィルタ回路5を介して合成回路4に供給され、遅
延回路3からの信号から減算される。この合成回路4の
出力は、適応フィルタ回路5に帰還されると共に、出力
端子6に導出される。
【0005】この雑音低減装置においては、主要入力端
子1には、希望信号sと、これと無相関の雑音信号n0
とが加算されたものが入力される。一方、参照入力端子
2には、雑音信号n1 が入力される。この参照入力の雑
音信号n1 は、希望信号sとは無相関であるが、雑音信
号n0 とは相関があるようにされている。
【0006】適応フィルタ回路5は、参照入力雑音信号
n1 をフィルタリングして、雑音信号n0 に近似する信
号yを出力する。この適応フィルタ回路5の出力信号y
として、雑音信号n0 と逆相、等振幅の信号を得るよう
にすることもできる。遅延回路3は、適応フィルタ回路
5での処理時間を考慮して、減算処理する信号の時間合
わせをするためのものである。
【0007】適応フィルタ回路5における適応のアルゴ
リズムは、合成回路4の出力である減算出力(残差出
力)eを最小にするように働く。すなわち、適応フィル
タ回路5では、残差出力eと参照入力とから適応フィル
タ係数の更新量を、その演算手段により求め、適応フィ
ルタ係数を更新する。
【0008】今、s,n0 ,n1 ,yが統計的に定常で
あり、平均値が0であると仮定すると残差出力eは、 e=s+n0 −y となる。これを二乗したものの期待値は、sがn0 と、
また、yと無相関であるから、 E[e2 ]=E[s2 ]+E[(n0 −y)2 ]+2E[s(n0 −y)] =E[s2 ]+E[(n0 −y)2 ] となる。適応フィルタ回路5が収束するものとすれば、
適応フィルタ回路5は、E[e2 ]が最小になるよう
に、適応フィルタ係数を更新するものである。このと
き、E[s2 ]は影響を受けないので、 Emin [e2 ]=E[s2 ]+Emin [(n0 −y)2 ] となる。
【0009】すなわち、E[e2 ]が最小化されること
によってE[(n0 −y)2 ]が最小化され、適応フィ
ルタ回路5の出力yは、雑音信号n0 の最良の推定量に
なる。そして、合成回路4からの出力の期待値は、希望
信号sのみとなる。すなわち、適応フィルタ回路5を調
整して全出力パワーを最小化することは、減算出力e
が、希望音声信号sの最小二乗推定値になることに等し
い。
【0010】なお、適応フィルタ回路5はアナログ信号
処理回路で実現する場合とデジタル信号処理回路で実現
する場合の、いずれでも可能である。
【0011】この適応雑音低減装置において、図10に
示すように、主要入力端子1に主要入力用マイクロホン
7の出力音声信号を供給し、参照入力端子2に参照入力
用マイクロホン8の出力音声信号を供給する。
【0012】そして、この場合に、希望音声到来方向を
ARとしたときに、主要入力用マイクロホン7は、図1
1に示すような無指向性のマイクロホンを用いる。ある
いは、単一指向性のマイクロホンを、その主指向軸を希
望音声到来方向ARに向けて配置する。
【0013】また、参照入力用マイクロホン8は、図1
1に示すように、単一指向性のマイクロホンを、排除し
たい音声入力方向に感度を有し、希望音声到来方向AR
が指向性のヌル方向となるように配置して使用する。排
除したい音声の到来方向が希望音声到来方向に対して9
0度の方向の場合には、双指向性マイクロホンを、希望
音声到来方向ARが指向性のヌル方向となるように配置
して使用するようにしてもよい。
【0014】このような適応雑音低減装置を応用したマ
イクロホン装置によれば、適応雑音低減動作をさせる
と、装置出力としては希望音声に極めて近い信号が得ら
れ、実質的に超指向性マイクロホンと同等以上の良好な
収音品質が、超指向性マイクロホンのような大型の装置
でなく、小型の装置として実現することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の指向
性を有するマイクロホンを、屋外などの自由音場におい
て、音圧−周波数特性が平坦になるように設計しても、
このマイクロホンを用いて室内などの響きのある音場
(残響音場または拡散音場)で収音を行うと、周囲の音
声や騒音などの低音域が誇張されたように収音され、大
変聞きづらくなることが知られている。
【0016】このような有指向性マイクロホンの周波数
特性に対応するため、マイクロホンが使用される環境が
予め決められている場合には、その使用環境に合わせて
低音域の感度が低くなるようにマイクロホンを設計する
ことが行われている。しかし、これでは汎用性がないの
で、マイクロホン装置に、手動式に周波数特性を切り替
えるスイッチを設けて、使用環境に応じて使用者に適宜
周波数特性を選択させる構成も採用されている。
【0017】しかしながら、スイッチにより手動式にマ
イクロホンの周波数特性を切り替える方法では、収音音
場によって細かく周波数特性を切り替えるといったこと
が、操作上、困難で、通常は2通りの切り替えモードの
うち1つを選択するという自由度しか得られない。
【0018】また、多くの場合、スイッチを切り替える
ことを使用者が忘れてしまうことがあり、用意されてい
る周波数特性の切り替えモードが役に立たないことがあ
る。
【0019】さらに、カメラ一体型VTRを使用してい
るマイクロホン装置の場合においては、屋外から屋内
(またその逆)へ移動しながらの収音のような場合、ス
イッチを切り替えることが困難な状況が多く、しかも収
音中にスイッチを切り替えることで不要な雑音が混入し
たり、音質の急激な変化が不自然であったりする。
【0020】また、適応雑音低減装置を利用したマイク
ロホン装置を使用する場合に、自由音場もしくはそれに
近い響きの少ない音場で収音するときには、マイクロホ
ンユニットに入射する音波は、これに直接入射する音波
だけと考えて差支えないので、マイクロホン7の出力レ
ベルの方が、マイクロホン8の出力レベルよりも大きい
か等しい。
【0021】ところが、拡散音場に近い響きの多い音場
で、適応雑音低減装置を利用したマイクロホン装置によ
り収音する場合には、マイクロホン7、8には、直接入
射する音波以外に間接的に入射する音波が多くなり、時
として、間接音の方が多い場合もよく見られる。このよ
うな状況では、マイクロホン7の出力レベルがマイクロ
ホン8の出力レベルを下回るようになり、上述した指向
性マイクロホンユニットの響きの多い音場での周波数特
性から、特に低音域において、これが顕著になる。
【0022】このように、使用する音場が拡散的で、響
きが多くなったり、暗騒音(伝送信号の有無に関係なく
存在するシステムの全雑音)のレベルが希望入力音声の
レベルと同等以上の大きさになると、適応雑音低減装置
の性質として、不要な騒音などの排除率が制限されてし
まい、良好な収音品質が得にくくなってしまう。
【0023】この発明の第1の目的は、指向性を有する
マイクロホンの出力の周波数特性を、収音音場によって
自動的に変化させることで、上記の問題点を解決するこ
とである。
【0024】また、この発明の第2の目的は、適応雑音
低減装置を利用したマイクロホン装置において、拡散音
場に近い響きの多い音場での収音品質の劣化を軽減する
ことである。
【0025】
【課題を解決するための手段】自由音場において周波数
特性が平坦になるようにマイクロホンを設計しても、残
響音場または拡散音場においては、無指向性マイクロホ
ンの場合と、有指向性マイクロホンの場合とでは、周波
数特性に変化が生じる。すなわち、無指向性マイクロホ
ンの場合には残響音場または拡散音場においても周波数
特性は自由音場と殆ど変化ないが、有指向性マイクロホ
ン場合には、残響音場または拡散音場においては音場感
度が低音域において高くなる。
【0026】この発明は、このように、有指向性マイク
ロホンと、無指向性マイクロホンとで、その使用音場で
の周波数特性に違いが生じることを利用して、上記第1
及び第2の目的を達成するものである。
【0027】すなわち、この出願の請求項1のマイクロ
ホン装置は、後述する図1の実施例の参照符号を対応さ
せると、有指向性の第1のマイクロホン11と、無指向
性の第2のマイクロホン21と、第1及び第2のマイク
ロホン11及び21の出力のレベルを比較する比較手段
24と、第1のマイクロホン11の出力に対して設けら
れる高域通過フィルタ13とを備え、高域通過フィルタ
13から装置出力信号が取り出されるとともに、比較手
段24の出力に基づいて、高域通過フィルタ13の周波
数特性が変化するようにしたことを特徴とする。
【0028】また、上記第2の目的を達成するために、
この出願の請求項に記載のマイクロホン装置は、希望
音声を収音するための第1のマイクロホンと、上記希望
音声の到来方向の感度が低い指向性の第2のマイクロホ
ンと、上記第2のマイクロホンからの音声信号が供給さ
れる適応フィルタ手段と、上記適応フィルタ手段の出力
信号を第1のマイクロホンの音声信号から減算する減算
手段と、上記減算手段の出力パワーが最小化されるよう
に適応フィルタ手段を調整する手段と、有指向性の第3
のマイクロホンと、無指向性の第4のマイクロホンと、
上記第3及び第4のマイクロホンの出力音声信号のレベ
ル比を検出するレベル比検出手段と、上記レベル比検出
手段で検出されたレベル比と既定値との偏差に基づい
て、適応フィルタ手段の適応動作を制限する手段とを備
えることを特徴とする。なお、第3及び第4のマイクロ
ホンは、第1及び第2のマイクロホンとは別個に、ある
いは第1及び第2のマイクロホンと共通に構成すること
ができる。
【0029】
【作用】残響音場または拡散音場において、有指向性マ
イクロホンの音場感度が低音域において高くなること
を、コンデンサマイクロホンの場合を例にとって以下に
説明する。
【0030】図12は、コンデンサマイクロホンの等価
回路を表す。図12において、S0は振動板のスティフ
ネス、R0は振動板と背極との間の粘性抵抗、M0は振
動板の質量、S1は背気室のスティフネス、R1は後部
入射孔の制動抵抗、P0は振動板前面での音圧、P1は
ユニット後部での音圧を表す。
【0031】このマイクロホンの振動板前面と後部入射
孔との音響二端子間距離をd、振動板面積をSとすれ
ば、正弦波状の入射音波に対して音圧P0と音圧P1と
の関係は、次の数1に示す式(1)で表される。
【0032】
【数1】 ここで、ω=2πfで角周波数、Cは音速、θは入射角
を表す。このとき正面からの入射音圧に対する振動板の
変位Xsは、次の数2に示す式(2)で表される。
【0033】
【数2】 一方、拡散音場においては、振動板前面と後部入射孔と
の両入力端子に入射する音波の音圧レベルは等しいが、
互いに無相関である。振動板前面に入射する音圧をN
0、ユニット後部での音圧をN1とすれば、このときの
振動板の変位Xdは、次の数3に示す式(3)で表され
る。
【0034】
【数3】 拡散音場における振動板の変位を、正弦波状の入射音波
に対する振動板の変位で正規化すると、次の数4に示す
式(4)のように表される。
【0035】
【数4】 この式(4)において、 α=R1・C/S1・d …(5) とおけば、式(4)は、次の数5の式(6)のように記
述できる。
【0036】
【数5】 ここで、αは指向性を表す量で、 α=0のとき双指向性 α=1のとき単一指向性 α=∞のとき無指向性 となる。
【0037】上記の式(6)から、自由音場におけるマ
イクロホンユニットの音圧周波数特性が平坦であるとし
たときの、拡散音場における周波数特性を知ることがで
きる。
【0038】例えば、ユニットが無指向性であるとき、
α=∞であるから、周波数に依存しない、つまり平坦な
周波数特性となることがわかる。
【0039】また、ユニットが単一指向性であるときに
は、α=1であるから、高域は平坦であるが、低音域で
その感度が周波数に反比例して上昇する周波数特性であ
ることがわかる。ユニットが双指向性であるときには、
α=0であるから、式(6)から単一指向性と同様の周
波数特性を示すことが分かる。
【0040】以上は、コンデンサマイクロホンの場合と
して説明したが、他のタイプのマイクロホンの場合に
も、同様の特性を示すものである。
【0041】この発明は、以上説明したマイクロホンの
性質を利用したものである。すなわち、有指向性の第1
のマイクロホンと、無指向性の第2のマイクロホンの自
由音場での周波数特性が等しいものとすると、この発明
によるマイクロホン装置の収音音場が自由音場もしくは
それに近い響きの少ない音場である場合には、収音され
る音声はマイクロホンに直接入射する音波だけと考えて
差し支えないので、比較手段に入力される両マイクロホ
ンのレベル比は、指向性の違いにのみ応じた既定値とな
る。したがって、比較手段において、レベル比と既定値
との偏差が小さいと検知されたときは、収音音場が自由
音場もしくはそれに近い響きの少ない音場であると認識
される。
【0042】一方、収音音場が拡散音場に近い響きの多
い音場である場合には、前述したように有指向性の第1
のマイクロホンは低音域の音圧感度が高くなって、比較
手段に入力される両マイクロホンの出力のレベル比が、
自由音場のときと変わる。すなわち、上記レベル比と既
定値との偏差が大きくなり、比較手段においては、収音
音場が拡散音場に近い響きの多い音場であると認識され
る。
【0043】こうして、両マイクロホンの出力のレベル
比から収音音場が認識されて、高域通過フィルタは、そ
のロールオフ周波数が適当な値に制御され、良好な収音
品質の出力音声信号が得られるものである。
【0044】
【実施例】図1は、この発明によるマイクロホン装置の
一実施例を示す構成ブロック図である。
【0045】11は、収音した音声出力信号を得るため
の第1のマイクロホンで、これは例えば自由音場におい
て音圧−周波数特性が平坦な特性の、有指向性のマイク
ロホンである。このマイクロホン11としては、単一指
向性、双指向性、また、超指向性のマイクロホンを用い
ることができる。この第1のマイクロホン11の出力音
声信号は、アンプ12及び高域通過フィルタ13を介し
て出力端子14に導出される。
【0046】21は、第1のマイクロホンと共に収音音
場を認識するための第2のマイクロホンである。この第
2のマイクロホン21としては、自由音場において第1
のマイクロホン11と同じ音圧−周波数特性、この例で
は音圧−周波数特性が平坦な特性の、無指向性マイクロ
ホンが用いられる。
【0047】この第2のマイクロホン21の出力音声信
号は、アンプ22を介してレベル検出回路23に供給さ
れ、レベル検出される。そして、そのレベル検出信号が
レベル比較回路24に供給される。また、アンプ12か
らの第1のマイクロホン11の出力信号が、レベル検出
回路25に供給され、レベル検出され、そのレベル検出
信号がレベル比較回路24に供給される。
【0048】レベル比較回路24では、第1のマイクロ
ホン11の出力レベルと第2のマイクロホン21の出力
レベルとのレベル比が求められる。この比較回路24で
検出されたレベル比は、制御信号形成回路26に供給さ
れる。制御信号形成回路26は、上記レベル比から、高
域通過フィルタのロールオフ周波数を決定するための制
御信号を形成する。
【0049】この例の場合には、高域通過フィルタ13
は、コンデンサ131と、可変インピーダンス素子とし
てのトランジスタ132とで構成され、制御信号形成回
路26からは、トランジスタ132のベース電圧が、制
御信号として供給される。
【0050】以上の構成においては、収音音場が自由音
場であるときには、マイクロホン11及びマイクロホン
21は、これに直接入射する音声のみを収音するので、
比較回路24で検出される両マイクロホン11、21の
出力のレベル比は、予め既知の両マイクロホンの指向性
に応じた既定値であるレベル比に近い値となる。このと
きは、制御信号としてトランジスタ132には、これが
非導通となる電圧が供給される。したがって、高域通過
フィルタ13はロールオフ周波数が0、あるいは非常に
低い周波数とされ、マイクロホン11の出力音声信号
は、ほぼそのままの周波数特性で出力端子14に導出さ
れる。
【0051】また、収音音場が拡散音場に近い響きの多
い音場であるときには、マイクロホン11の出力レベル
が、前述したように、大きくなり、レベル比較回路24
において、それが検知される。つまり、レベル比は既定
値より所定値以上の偏差を有するものとなり、制御信号
形成回路26では、この求められたレベル比と既定値と
の間の偏差に応じたベース電圧が制御信号として形成さ
れ、これにより高域通過フィルタ13のロールオフ周波
数が上記偏差の大きさに応じて高い周波数側に変化す
る。
【0052】このため、収音音場が拡散音場に近い響き
の多い音場であるときには、マイクロホン11の低域の
レベルが高くなるが、高域通過フィルタ13のロールオ
フ周波数の高い側への変化により、出力端子14に得ら
れる出力音声信号としては、ほぼ平坦な周波数特性とす
ることができ、良好な収音品質の出力音声信号を得るこ
とができる。
【0053】図2は、この発明によるマイクロホン装置
の他の実施例を示す構成ブロック図である。この例にお
いては、アンプ12とレベル検出回路25との間及びア
ンプ22とレベル検出回路23との間に、低域通過フィ
ルタ27及び28をそれぞれ挿入して、マイクロホン1
1及び21の出力信号の低域成分のみについてレベル比
を比較検出するようにする。そして、高域通過フィルタ
13をそのレベル比に応じて上述の例と同様に制御す
る。その他の構成は、図1の例と全く同様である。
【0054】上記のように、収音音場の違いによる周波
数特性の変化が主として低音域で見られるので、この図
2の例の構成によれば、レベル比の検出/比較の精度が
向上し、より適切な動作が得られる。
【0055】なお、図2の例において、低域通過フィル
タ27、28の代わりに、帯域通過フィルタを用いるよ
うにしてもよい。
【0056】図3は、この発明によるマイクロホン装置
の他の例で、図1の例とは、高域通過フィルタ13の構
成及びこのフィルタの制御の仕方が異なり、高域通過フ
ィルタの減衰特性の急峻度を変化させるものである。
【0057】すなわち、この例の高域通過フィルタ13
は、それぞれコンデンサCと可変インピーダンス素子と
してのトランジスタTrとからなり、ロールオフ周波数
が例えば100Hzの3個の高域通過フィルタ133、1
34、135を縦続に接続して構成される。そして、比
較回路24の出力信号が制御信号形成回路29に供給さ
れ、この制御信号形成回路29から、各フィルタ13
3、134、135のトランジスタTrのベースに対し
て制御信号を供給する。
【0058】この例においては、収音音場が自由音場で
あるときには、比較回路24で検出されたレベル比は、
既定値に近いものとなり、制御信号形成回路29は、3
個のフィルタ133〜135のすべてのトランジスタT
rに、これを非導通状態とするような制御信号を供給す
る。すると、アンプ12を通じたマイクロホン11の出
力音声信号は、ほぼそのままの周波数特性で、出力端子
14に導出される。
【0059】収音音場が自由音場でなく、響きが多くな
り、第2のマイクロホン21の出力レベルが大きくなる
と、比較回路24で、そのことが両マイクロホン11と
21の出力レベル比として検出される。そして、制御信
号形成回路29は、第1のマイクロホン11の出力レベ
ルが第2のマイクロホン21の出力レベルに比較して大
きくなるほど、高域通過フィルタ13の減衰特性の急峻
度が大きくなるように制御する。
【0060】すなわち、響きが少ない音場では、両マイ
クロホン11、21のレベル比は、自由音場の時の既定
値に対する偏差は小さい。このときは、制御信号形成回
路29からは、フィルタ133のトランジスタTrに
は、ロールオフ周波数が100Hzになるような、所定の
インピーダンスを有するように、ベース電圧が供給さ
れ、他のフィルタ134及び135のトランジスタTr
には、これを非導通とするベース電圧が供給される。こ
の結果、アンプ12の出力側には、1段の高域通過フィ
ルタが挿入されることとほぼ等しくなり、例えばその減
衰特性は、6dB/octとされる。
【0061】そして、響きがより多くなると、検出され
た両マイクロホン11、21のレベル比の既定値に対す
る偏差が大きくなり、2段目のフィルタ134のトラン
ジスタTrが、100Hzのロールオフ周波数となるよう
なインピーダンスを有するように、制御信号形成回路2
9からの制御信号により制御され、この結果、アンプ1
2の出力信号に対しては、2段の高域通過フィルタが挿
入されることとほぼ等しくなり、例えばその減衰特性
は、12dB/octとされる。
【0062】さらに、収音音場が拡散音場に近く、響き
の多い場合には、上記レベル比の既定値に対する偏差が
さらに大きくなり、3段目のフィルタ135のトランジ
スタTrが、100Hzのロールオフ周波数となるような
インピーダンスを有するように、制御信号形成回路29
からの制御信号により制御され、この結果、アンプ12
の出力信号に対しては、3段の高域通過フィルタが挿入
されることとほぼ等しくなり、例えばその減衰特性は、
18dB/octとされる。
【0063】こうして、この例においては、収音音場に
応じて高域通過フィルタの減衰特性の急峻度が変えられ
ることにより、響きの多い収音音場においても、収音品
質が常に良好となるように、自動的に制御されるもので
ある。
【0064】この例においても、図2の例のように、ア
ンプ12とレベル検出回路25との間及びアンプ22と
レベル比較回路23との間に低域通過フィルタあるいは
帯域通過フィルタを挿入して、マイクロホン出力の低音
域のみのレベル比に基づいて、高域通過フィルタ13を
制御するようにしてもよい。
【0065】なお、この例において、フィルタ133〜
135を出力信号に対して挿入する際のトランジスタT
rのベース電圧を変えることにより、ロールオフ周波数
をも合わせて制御するようにすることも可能である。
【0066】以上の例においては、有指向性マイクロホ
ン11を構成する方法はひとつではない。すなわち、そ
の指向性を有するマイクロホンユニットをそのまま使用
してもよいし、複数個のマイクロホンユニットの組合せ
によって目的の指向性を得るようにしてもよい。
【0067】例えば、2個の無指向性マイクロホンユニ
ットをわずかに離して配置すれば、単一指向性や両指向
性出力を得ることができる。
【0068】図4及び図5を用いて、無指向性のマイク
ロホンユニットを2個用いて単一指向性のマイクロホン
を実現する例を説明する。図4に示すように、この例で
は、無指向性のマイクロホンユニット30及び31は、
わずかな距離dだけ離れて配置される。そして、図5に
示すように、一方のマイクロホンユニット30の出力音
声信号は、図示を省略したアンプを介して減算回路32
に供給される。他方のマイクロホンユニット31の出力
音声信号は、同様に図示を省略したアンプ及びフィルタ
回路33を介して減算回路32に供給される。フィルタ
回路33は、この例では、抵抗器34とコンデンサ35
とから構成される。
【0069】この場合、抵抗器34の抵抗値をR1 、コ
ンデンサ35の容量をC1 としたとき、 C1 ・R1 =d/c (ただし、cは音速である)となるように抵抗値R1 及
び容量C1 が選定されている。
【0070】そして、この例では、減算回路32の出力
は、周波数特性を平坦にするための積分器など周波数特
性補正回路36を介して出力端子37に出力音声信号が
導出される。後述するように、この周波数特性補正回路
36は、必要に応じて設けられるものであって、これは
設けなくてもよい。
【0071】この例のマイクロホンの動作について説明
する。図4に示すように、音源が2個のマイクロホンユ
ニット30,31の配列方向に対してθなる角度の方向
にあって、これら2個のマイクロホンユニット30,3
1に入射しているとした場合に、各ユニット30,31
の出力をP0 ,P1 とすると、出力P1 は、 P1 =P0 ε−jω(d/c)cosθ となる。なお、ωは角周波数である。
【0072】マイクロホンユニット31の出力はフィル
タ回路33を通じて減算回路32に供給されるので、減
算回路32の出力信号Paは、次の数6に示すようなも
のとなる。
【0073】
【数6】 なお、数6において、Aはフィルタ回路33のフィルタ
関数を表わし、また、ω・d/c<<1である。
【0074】そして、数6において、次の数7を満足す
れば、出力Paは単一指向性を示すものとなる。
【0075】
【数7】 つまり、この数7の式を満足すると、前記数6は、 Pa=P0 ・jω(d/c)(1+cosθ) となり、角度θに関して単一指向性となる。
【0076】ところで、フィルタ回路33のフィルタ関
数Aは、上記の例の場合、 A=1/(1+jωC1 ・R1 ) で表され、C1 ・R1 =d/cとなるように構成されて
いるので、 A=1/(1+jωd/c) となり、数7の式から図4の実施例のマイクロホンは単
一指向性になることは明らかである。ただし、このマイ
クロホンの周波数特性は右上がり(高域ほどレスポンス
が大)の特性になる。この例では、周波数特性補正回路
36が、この右上がりの特性を平坦に補正するために設
けられている。
【0077】なお、図5の例において、フィルタ回路3
3、減算回路32、さらには周波数特性補正回路36
は、デジタルフィルタや処理プログラム(ソフトウエ
ア)によっても実現することができる。例えば、フィル
タ回路33は、図6のように、加算器41と、遅延回路
42と、伝達関数Aの帰還アンプ43とからなるデジタ
ルフィルタで構成することができる。
【0078】同様にして、背向あるいは対向させて配置
した2個の単一指向性マイクロホンユニットにより、自
由に無指向性や両指向性出力を得ることができる。
【0079】図7は、その場合の一実施例のブロック図
である。この例は2チャンネルステレオマイクロホンの
場合の例で、51Rは右チャンネル音声の収音用、51
Lは左チャンネル音声の収音用の、それぞれ単一指向性
のマイクロホンである。これらは、自由音場において音
圧−周波数特性が平坦な特性のマイクロホンとされ、近
接して設けられると共に、マイクロホン51Rは右チャ
ンネル音声の方向を主指向軸が向くように、マイクロホ
ン51Lは左チャンネル音声の方向が主指向軸を向くよ
うに、それぞれ配置されている。
【0080】そして、マイクロホン51Rの出力信号
は、アンプ52Rを介して高域通過フィルタ53Rに供
給され、この高域通過フィルタ53Rからの信号が出力
端子54Rに導出される。また、マイクロホン51Lの
出力信号は、アンプ52Lを介して高域通過フィルタ5
3Lに供給され、この高域通過フィルタ53Lからの信
号が出力端子54Lに導出される。これら高域通過フィ
ルタ53R及び53Lは、上述した高域通過フィルタ1
3と同様に、ロールオフ周波数や減衰特性を可変にでき
るもので構成されている。
【0081】そして、アンプ52R及び52Lの出力信
号がそれぞれ加算回路55に供給されて加算される。す
ると、この加算回路55からは、指向特性がほぼ無指向
性のマイクロホンで収音したのと等価の出力信号が得ら
れる。この加算回路55の出力信号は、レベル検出回路
56に供給されて、レベル検出され、その検出出力がレ
ベル比較回路57に供給される。
【0082】また、アンプ52R及び52Lの出力信号
がそれぞれ減算回路58に供給されて減算される。する
と、この減算回路55からは、指向特性がほぼ8字型の
双指向性のマイクロホンで収音したのと等価の出力信号
が得られる。この減算回路58の出力信号は、レベル検
出回路59に供給されて、レベル検出され、その検出出
力がレベル比較回路57に供給される。
【0083】そして、レベル比較回路57からは、両入
力信号のレベル比の出力信号が制御信号形成回路50に
供給される。そして、この制御信号形成回路50からの
制御信号により、フィルタ53R及び53Lが上述の例
と同様にして、ロールオフ周波数あるいは減衰特性が、
前記レベル比と既定値との偏差に応じて可変制御され
る。これにより、良好な収音音質のステレオ信号が得ら
れる。
【0084】なお、この図7の例においてもレベル検出
回路56及び59の入力側に低域通過フィルタあるいは
帯域通過フィルタを設けて、低音域成分のみのレベル比
から収音音場の判別を行うようにすることにより、その
判別がより確実になる。
【0085】以上の例は、高域通過フィルタとしてアナ
ログフィルタを用いた例であるが、例えば1次や2次の
IIRデジタル高域通過フィルタを用いることもでき
る。その場合には、IIRデジタルフィルタのフィルタ
係数をマイクロホン11と21との出力レベル比に応じ
て設定することにより、ロールオフ周波数や、減衰特性
を制御することができる。
【0086】なお、この場合、アンプ12の出力信号を
デジタル信号に変換してデジタル高域通過フィルタに供
給し、フィルタ出力をアナログ信号に戻すようにする必
要がある。また、レベル比を検出、比較する手段や、制
御信号形成回路の回路構成も、ディジタル式の回路構成
でも実現できる。
【0087】以上のようにして、収音音場の響きの多少
によって適宜マイクロホン出力の低音の量を調整するこ
とができるので、音声などの収音品質を良好なものと
し、不明瞭にならずに出力することができる。
【0088】しかも、マイクロホンの移動などによって
収音音場の響き具合が変化しても、その調整は自動的に
行われるので、違和感のない収音品質が得られる。ま
た、使用者がその調整に神経を使うことなく、他の作業
に集中でき便利である。
【0089】次に、適応雑音低減装置を応用したマイク
ロホン装置の実施例について、以下に説明する。
【0090】このタイプのマイクロホン装置において
は、前述したように、収音音場が拡散的で、響きが多く
なったり、暗騒音のレベルが希望音声などのレベルと同
等以上になると、適応雑音低減システムの性質として不
要な騒音の排除率が制限されてしまうので、上述のマイ
クロホン装置の例と同様にして、無指向性マイクロホン
と、有指向性マイクロホンの出力レベルの比から、収音
音場がどのような環境であるのかを判別し、その判別結
果に応じて適応処理を制御するようにする。
【0091】上述の例と同様に、有指向性マイクロホン
出力は、単一指向性でも両指向性でも、また超指向性で
もよく、無指向性でなければすべてこの発明の課題を解
決するために利用できる。
【0092】以下、図8、図9を参照しながら、このタ
イプのマイクロホン装置の一実施例について説明する。
【0093】図8において、61は希望音声を収音する
ための主要入力用マイクロホン、71は雑音として除去
したい方向の不要音声や周囲騒音を収音するための参照
入力用マイクロホンである。この例は、前述の図11と
同様に、希望音声の到来方向は、主として、図11にお
いて矢印ARで示すように、図上、上方から下方に向か
う方向(以下正面方向という)であり、この方向と逆方
向(以下背面方向という)からの音を雑音として収音し
ないようにするマイクロホン装置を実現する例である。
【0094】この例の場合には、主要入力用マイクロホ
ン61は、図11に示すような無指向性のマイクロホン
で構成される。このマイクロホン61は、この例におい
ては、自由音場では音圧−周波数特性が平坦なもので、
この例では収音音場の判別用の無指向性マイクロホンと
しても使用される。
【0095】一方、参照入力用マイクロホン71は、図
1に示すように、希望音声到来方向に感度を有せず、
背面方向にのみ感度を有する単一指向性のマイクロホン
で構成される。このマイクロホン71は、自由音場では
マイクロホン61と等しい音圧−周波数特性とされ、こ
の例では音圧−周波数特性が平坦なもので、この例では
収音音場の判別用の有指向性マイクロホンとしても使用
される。なお、このマイクロホン71は、前述したよう
に、無指向性マイクロホンユニットを複数個使用して構
成することもできる。
【0096】そして、主要入力用マイクロホン61によ
り収音され、電気信号に変換されて得られた音声信号S
61は、増幅器62を介してA/D変換器63に供給され
て、デジタル信号に変換され、遅延回路64を介して減
算回路65に供給される。
【0097】また、参照入力用マイクロホン71により
収音され、電気信号に変換されて得られた音声信号S71
は、増幅器72を介してA/D変換器73に供給され
て、デジタル信号に変換され、適応フィルタ回路74に
供給される。
【0098】この実施例では、適応フィルタ回路74
は、図9に示すような、FIRフィルタ型の適応線形結
合器300と、この線形結合器300を適応制御する演
算回路、この例ではLMS演算回路320から構成さ
れ、A/D変換器73からのデジタル信号は、線形結合
器300を介して減算回路65に供給される。この適応
フィルタ回路74は、マイクロプロセッサからなるDS
P(デジタルシグナルプロセッサ)により構成すること
ができる。
【0099】減算回路65の出力信号は、この適応フィ
ルタ回路74の演算回路320に帰還されると共に、D
/A変換器66によりアナログ信号に戻され、出力端子
67に導出される。
【0100】なお、D/A変換器66を省いて、減算回
路65の出力信号をデジタル信号のままで出力端子67
に導出するようにしてもよい。また、遅延回路64は、
適応フィルタ回路74での伝播時間や適応処理のための
演算に要する時間遅れなどの時間遅延を補償するための
ものである。
【0101】適応フィルタ回路74では、主要入力音声
信号中に含まれる雑音成分に、参照入力音声信号が近似
するように制御される。これにより、主要入力用マイク
ロホン61で収音された音声中の希望音声と雑音とが無
相関であるとすると、減算回路65では、主要入力用マ
イクロホン61の音声信号から、参照入力用マイクロホ
ン71の音声信号(雑音)が減算されて除去され、減算
回路65からは、希望音声信号のみが得られる。
【0102】すなわち、この実施例の構成は、主要入力
として主要入力用マイクロホン61の出力音声信号が供
給され、参照入力としての雑音として参照入力用マイク
ロホン71の出力音声信号が供給された適応型雑音低減
システムの構成となっている。
【0103】適応フィルタ回路74の一実施例を、適応
のアルゴリズムとして、いわゆるLMS(最小平均自
乗)法のアルゴリズムを使用した場合の例を図9に示
す。
【0104】図8に示すように、この例では、適応フィ
ルタ回路74には、FIRフィルタ型の適応線形結合器
300を使用する。これは、それぞれ単位サンプリング
時間の遅延時間Z-1を有する複数個の遅延回路DL1,
DL2,……DLm(mは正の整数)と、入力信号n1
及び各遅延回路DL1,DL2,……DLmの出力信号
と加重係数との掛け算を行う加重回路MX0,MX1,
MX2,……MXmと、加重回路MX0〜MXmの出力
を加算する加算回路310を備える。加算回路310の
出力はyである。
【0105】加重回路MX0〜MXmに供給する加重係
数は、例えばマイクロコンピュータからなるLMS演算
回路320で、減算回路65からの残差信号eから形成
される。このLMS演算回路320で実行されるアルゴ
リズムは、次のようになる。
【0106】今、時刻k における入力ベクトルXk を、
図9にも示すように、 Xk =[x0k1k2k ・・・xmkT とし、出力をyk 、加重係数をwjk(j=0,1,2,…m )と
すると、入出力の関係は、次の数8に示すように、
【0107】
【数8】 となる。
【0108】そして、時刻k における加重ベクトルWk
を、 Wk =[w0k1k2k ・・・wmkT と定義すれば、入出力関係は、 yk =Xk T ・Wk で与えられる。希望の応答をdk とすれば、出力との誤
差ek は次のように表される。 ek =dk −yk =dk −Xk T ・Wk LMS法では、加重ベクトルの更新を、 Wk+1 =Wk +2μ・ek ・Xk なる式により行っていく。ここで、μは適応の速度と安
定性を決める利得因子(ステップゲイン)である。
【0109】こうして、出力端子67には、雑音、この
例では背面方向からの不要音声信号が選択的に除去され
て、結果的に、希望音声信号が残って出力される。換言
すれば、実質的に超指向性が実現されたことになる。し
かも、正面方向以外の方向から、近傍で音声を発して
も、適切に抑圧されるので、さらに良好な収音品質が得
られる。
【0110】ところで、上述のように適応処理により参
照入力を用いて主要入力中の雑音を低減するには、前述
したように、希望音声と参照雑音とは無相関である必要
がある。このため、従来、この種の適応型雑音低減シス
テムでは、参照入力としては希望音声を収音しないよう
に、参照入力用マイクロホンに防音の工夫を凝らした
り、雑音源のできるだけ近くに設置し、主要入力用マイ
クロホンから離しておくなどの対策を取ることが行われ
ている。しかし、これではシステムが大きくなり、移動
も困難である。
【0111】これに対して、この例の場合、音声の到来
方向によって希望音声と雑音とを区別する。そして、主
要入力用マイクロホン61は、希望音声到来方向からの
音声を収音できる指向特性(無指向性を含む)を有する
ような構成とすると共に、参照入力用マイクロホン71
は、希望音声到来方向に感度を有しない、あるいは低い
感度の指向性とする構成として、主要入力用マイクロホ
ン61で収音された音声中の希望音声と、参照入力用マ
イクロホン71で収音された雑音とは無相関となるよう
にしている。
【0112】したがって、この例の場合には、主要入力
用マイクロホンと参照入力用マイクロホンの指向性のみ
を考えればよく、両マイクロホンを近接して配置するこ
とも可能であり、従来のマイクロホンシステムに比べ
て、小型にできる。そして、雑音信号は主要入力から良
好に除去され、その結果、雑音入力到来方向に感度の低
い、あるいは感度がない指向性のマイクロホン装置を簡
単に実現することができる。
【0113】しかし、前述したように、収音音場が拡散
的で響きの多いものであったり、暗騒音のレベルが希望
音声などと同等以上の大きさになると、適応雑音低減処
理が所期の目的を達成できず、良好な収音品質を得にく
くなる。
【0114】これを改善するため、この実施例では、レ
ベル比検出回路81が設けられる。このレベル比検出回
路81には、増幅器62,72とA/D変換器63,7
3を介して、各マイクロホン61,71からの音声信号
S61,S71が供給されて、両マイクロホン61、71か
らの音声信号のレベルが比較される。レベル比検出回路
81の出力信号は、制御信号として、適応フィルタ回路
74の演算回路320に供給される。
【0115】演算回路320では、マイクロホン61と
71との指向性に応じて定まる既定のレベル比と、レベ
ル比検出回路81で検出されるレベル比とが比較され、
既定値からの偏差に応じて適応処理を制限するようにす
る。具体的には、適応フィルタの係数更新を制御する。
【0116】すなわち、主要入力信号に対する参照入力
信号のレベル比(S71/S61)と既定値との偏差が所定
値以下であれば、適応フィルタ回路74では、上述のよ
うな通常の適応処理を行なうようにする。
【0117】そして、この入力信号レベル比(S71/S
61)と既定値との偏差が所定値より大きくなった場合に
は、レベル比検出回路81の出力により、適応フィルタ
回路74の加重係数の更新について制限を加える。この
制限の方法としては、次の3種が考えられる。
【0118】(1)ステップゲインμ=0とする。つま
り、係数更新を行わず、直前の係数に固定するものであ
る。 (2)ステップゲインμを、通常の値より小さくして更
新量を小さくする。例えばステップゲインを1/10に
する。 (3)ステップゲインμ=0とすると共に、フィルタ係
数値を予め用意したデフォルト値にセットする。
【0119】(1)、(2)の方法は、適応フィルタ回
路74での係数更新を停止または抑制することで、不要
な騒音の排除が行われないという状況から脱することが
できる。(3)の方法では、例えば指向性としてハイパ
ーカーディオイドを形成するような係数を適応フィルタ
にセットして、不要信号の平均的抑圧を行うものであ
る。この場合には、不要な騒音は、ハイパーカーディオ
イドという一次音圧傾度型マイクロホンの中で、最も鋭
い指向性のマイクロホンとして排除される。
【0120】以上のようにして、図8の例によれば、マ
イクロホン61及び71の出力レベル比から収音音場の
響きの多少あるいは暗騒音レベルの相対的大小が推定で
き、それに応じてシステム出力の指向性を制御すること
ができる。例えば、暗騒音レベルが大きい場で収音する
ときに、不要な騒音の排除がほとんど行われないという
状況から脱し、少なくともハイパーカーディオイドのよ
うに指向係数が最小となる指向性で収音が続行できる。
【0121】この図8の例においても、マイクロホン6
1及び71の出力音声信号の低音域のみのレベル比から
収音音場の状況を判別することにより、レベル比の検出
精度が向上し、より正確に収音音場の状況を判別して適
切な動作が得られる。
【0122】また、主要入力用マイクロホン61は、希
望音声到来方向に指向軸が向くように配置された単一指
向性マイクロホンとしてもよい。この場合には、収音音
場の判別用の無指向性マイクロホンは、この主要入力用
マイクロホン61と参照入力用マイクロホン71との出
力を加算して、無指向性のマイクロホン出力を得ること
ができる。
【0123】なお、以上の例においては、主要入力用マ
イクロホン61と参照入力用マイクロホン71とを、収
音音場の判別用としても使用するようにしたが、これら
収音音場の判別用として、無指向性マイクロホンと、有
指向性マイクロホンとを別個に設けてもよい。有指向性
マイクロホンは、前述したように複数個の無指向性マイ
クロホンユニットで構成できる。
【0124】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、収音音場の響きの多少によって適宜低音の量を調整
できるので、音声などの収音品質を良好なものとし、不
明瞭にならずに出力することができる。
【0125】しかも、マイクロホンの移動などによって
収音音場の響き具合が変化しても、その調整は自動的に
行われるので、違和感のない収音品質が得られる。した
がって、使用者がその調整に神経を使うことなく、他の
作業に集中でき便利である。
【0126】また、この発明によれば、収音音場の響き
の多少によって、適宜、適応雑音低減装置の係数更新を
制御できるので、収音音場が響きの多い場であったり、
暗騒音レベルが相対的に大きな場で、本来の適応雑音低
減装置の効果が期待できない状況であっても、適切にシ
ステムの指向性を制御し、音声などの収音品質を良好な
ものとし、不明瞭にならずに出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるマイクロホン装置の一実施例の
構成を示すブロック図である。
【図2】この発明によるマイクロホン装置の他の実施例
の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明によるマイクロホン装置の他の実施例
の構成を示すブロック図である。
【図4】複数個のマイクロホンユニットによりマイクロ
ホンを構成する例を説明するための図である。
【図5】複数個のマイクロホンユニットによりマイクロ
ホンを構成する例を示す図である。
【図6】図8の例の一部の他の構成例を示す図である。
【図7】この発明によるマイクロホン装置の他の実施例
の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明によるマイクロホン装置の他の実施例
の構成を示すブロック図である。
【図9】図8の例の適応フィルタ回路の一例を示す図で
ある。
【図10】従来のマイクロホン装置の一例を説明するた
めの図である。
【図11】マイクロホンの配置例を説明するための図で
ある。
【図12】コンデンサーマイクロホンの等価回路を示す
図である。
【符号の説明】
11 有指向性マイクロホン 13 高域通過フィルタ 14 出力端子 21 無指向性マイクロホン 24 レベル比較回路 25 制御信号形成回路 27、28 低域通過フィルタ 61 主要入力用マイクロホン 65 減算回路 71 参照入力用マイクロホン 74 適応フィルタ回路 81 レベル比検出回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 行徳 薫 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−207587(JP,A) 特開 平5−134679(JP,A) 特開 平3−106299(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04R 3/00 320 G10K 15/12 H03H 21/00 H04R 1/40 320

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有指向性の第1のマイクロホンと、 無指向性の第2のマイクロホンと、 上記第1及び第2のマイクロホンの出力のレベルを比較
    する比較手段と、 上記第1のマイクロホンの出力に対して設けられる高域
    通過フィルタとを備え、 上記高域通過フィルタから装置出力信号が取り出される
    とともに、 上記比較手段の出力に基づいて、上記高域通過フィルタ
    周波数特性が変化するように制御されるマイクロホン
    装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のマイクロホン装置におい
    て、上記高域通過フィルタは、上記比較手段の出力に基づい
    て、そのロールオフ周波数あるいは 減衰特性の急峻度
    少なくとも一方を変化させるようにしたことを特徴とす
    るマイクロホン装置。
  3. 【請求項3】請求項1に記載のマイクロホン装置におい
    て、 上記第1及び第2のマイクロホンの出力からそれぞれ低
    音域を取り出し上記比較手段に供給する低域通過フィル
    タを さらに備えることを特徴とするマイクロホン装置。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ
    ホン装置において、 第1及び第2のマイクロホンを形成するために、近接し
    て配置した2個の無指向性マイクロホンユニットを使用
    することを特徴とするマイクロホン装置。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロ
    ホン装置において、 第1及び第2のマイクロホンを形成するために、近接し
    て配置した2個の単一指向性マイクロホンユニットを使
    用することを特徴とするマイクロホン装置。
  6. 【請求項6】希望音声を収音するための第1のマイクロ
    ホンと、 上記希望音声の到来方向の感度が低い指向性の第2のマ
    イクロホンと、 この第2のマイクロホンからの音声信号が供給される適
    応フィルタ手段と、 この適応フィルタ手段の出力信号上記第1のマイクロ
    ホンの音声信号とを合成する合成手段と、 この合成手段の出力パワーが最小化されるように上記適
    応フィルタ手段を調整する手段と、 有指向性の第3のマイクロホンと、 無指向性の第4のマイクロホンと、 上記第3及び第4のマイクロホンの出力のレベルを比較
    する比較手段とを備え上記比較手段の出力 に基づいて、上記適応フィルタ手段
    の適応動作を制限するようにしたマイクロホン装置。
  7. 【請求項7】請求項6に記載のマイクロホン装置におい
    て、 第3及び第4のマイクロホンは、上記第1及び第2のマ
    イクロホンと共通に構成したことを特徴とするマイクロ
    ホン装置。
  8. 【請求項8】 請求項6または7のいずれかに記載のマイ
    クロホン装置において、 上記適応フィルタ手段の適応動作を制限するとき、上記
    適応フィルタ手段のステップゲインを0または通常の値
    より小さい値に設定することを特徴とするマイクロホン
    装置。
  9. 【請求項9】 請求項6または請求項7のいずれかに記載
    のマイクロホン装置において、 上記適応フィルタ手段の適応動作を制限するとき、上記
    適応フィルタ手段の適応フィルタ係数値を所定値に設定
    することを特徴とするマイクロホン装置。
JP06934693A 1993-03-04 1993-03-04 マイクロホン装置 Expired - Fee Related JP3204278B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP06934693A JP3204278B2 (ja) 1993-03-04 1993-03-04 マイクロホン装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP06934693A JP3204278B2 (ja) 1993-03-04 1993-03-04 マイクロホン装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06261390A JPH06261390A (ja) 1994-09-16
JP3204278B2 true JP3204278B2 (ja) 2001-09-04

Family

ID=13399901

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP06934693A Expired - Fee Related JP3204278B2 (ja) 1993-03-04 1993-03-04 マイクロホン装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3204278B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102591204B1 (ko) * 2022-01-04 2023-10-19 재단법인대구경북과학기술원 희토자석용 중희토 확산물질 분사 장치

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006096959A1 (en) * 2005-03-16 2006-09-21 James Cox Microphone array and digital signal processing system
JP4051408B2 (ja) * 2005-12-05 2008-02-27 株式会社ダイマジック 収音・再生方法および装置
WO2008126343A1 (ja) * 2007-03-29 2008-10-23 Dimagic Co., Ltd. 収音方法および装置
JP5267982B2 (ja) * 2008-09-02 2013-08-21 Necカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 音声入力装置、雑音除去方法及びコンピュータプログラム
JP5360904B2 (ja) * 2009-12-15 2013-12-04 Necカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 音声処理装置、音声処理方法、及び、プログラム
JP5756907B2 (ja) * 2010-07-02 2015-07-29 パナソニックIpマネジメント株式会社 指向性マイクロホン装置及びその指向性制御方法
CN102411936B (zh) * 2010-11-25 2012-11-14 歌尔声学股份有限公司 语音增强方法、装置及头戴式降噪通信耳机
CN102780947B (zh) * 2011-05-13 2015-12-16 宏碁股份有限公司 降低手持式电子装置录音噪音的系统及其方法
CN104468930B (zh) * 2013-09-17 2018-08-31 南京中兴软件有限责任公司 一种放音响度调整方法及装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102591204B1 (ko) * 2022-01-04 2023-10-19 재단법인대구경북과학기술원 희토자석용 중희토 확산물질 분사 장치

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06261390A (ja) 1994-09-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5654513B2 (ja) 音識別方法および装置
CA2560034C (en) System for selectively extracting components of an audio input signal
EP0569216B1 (en) Microphone apparatus
US7010134B2 (en) Hearing aid, a method of controlling a hearing aid, and a noise reduction system for a hearing aid
KR101164299B1 (ko) 소리 입력 장치
JP3321170B2 (ja) テレコンファレンスシステムのためのマイクロホンシステム
AU601861B2 (en) Electronic telephone terminal having noise suppression function
JP2002540696A (ja) ノイズ音響に満ちた環境でのオーディオ信号の受信と処理のための方法
JPWO2004034734A1 (ja) アレイ装置および携帯端末
JP3204278B2 (ja) マイクロホン装置
JPS6159599B2 (ja)
JP3226121B2 (ja) 通話装置
US20050286727A1 (en) Apparatus for expanding sound image upward
CN114762361A (zh) 使用扬声器作为传声器之一的双向传声器系统
Ballou et al. Microphones
US20220345814A1 (en) Transducer apparatus: positioning and high signal-to-noise-ratio microphones
JP3064685B2 (ja) マイクロホン装置
JP3277954B2 (ja) 可変指向型マイクロホン装置
JPH0690493A (ja) 音声入力装置及びこれを用いた撮像装置
JPH06153289A (ja) 音声入出力装置
JP2684792B2 (ja) 収音装置
JP3301445B2 (ja) 音声入力装置
JPH0564290A (ja) 収音装置
JP3189555B2 (ja) マイクロホン装置
JPH06292293A (ja) マイクロホン装置

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees