JP3202431B2 - スピーカコーン及びその製造法 - Google Patents

スピーカコーン及びその製造法

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JP3202431B2 JP23052393A JP23052393A JP3202431B2 JP 3202431 B2 JP3202431 B2 JP 3202431B2 JP 23052393 A JP23052393 A JP 23052393A JP 23052393 A JP23052393 A JP 23052393A JP 3202431 B2 JP3202431 B2 JP 3202431B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な素材からなるス
ピーカコーン及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のスピーカコーン用の材料として
は、天然木材パルプ、合成繊維或いは合成樹脂からなる
合成パルプ、天然繊維、合成繊維、炭素繊維、ガラス繊
維、或いは合成樹脂(例えばポリプロピレン)のフィル
ム等さまざまな素材があり、それぞれの素材の特徴を生
かしたスピーカコーンが製造されている。
【0003】天然木材パルプを原料とするスピーカコー
ンは、離解および叩解を行ったパルプに、必要に応じて
各種添加剤、例えば炭素の微粉末や樹脂等を添加して抄
紙用原料を調製し、この原料を抄紙用型枠によりスピー
カコーンの形状に抄紙したものを、さらに成形用の金型
に入れて加熱および加圧することにより製造されてい
る。
【0004】この製造法は、原料調製までの工程が長く
繁雑であるとともに、通常は、各種添加剤、例えば炭素
微粉末や樹脂等を添加するため、これら添加剤の飛散に
より作業環境に著しい悪影響を与えている。又、これら
の添加剤を含んだ排水や廃棄物が環境汚染の原因になっ
ている。また、前述のように、スピーカコーンは初めに
抄紙用型枠により抄紙されるため、成形して得られたス
ピーカコーンに厚みむらが生じやすいとともに、スピー
カコーン間で重量にばらつきが発生しやすく、品質管理
上、問題となっている。このような、厚み斑や重量のば
らつきをいかに少なくするかが、スピーカコーンの抄紙
工程における重要なポイントになっているが、現状では
まだ充分に改善されていない。
【0005】この問題を解決する方法の一つとして、ス
ピーカコーン用原料を抄紙して予めシート状に加工して
おき、このシートを、金型により加熱および加圧してス
ピーカコーンに成形する方法が考えられる。この方法で
は、スピーカコーンが立体的であるために、シートに延
伸力が作用するが、抄紙により得られたシートは、この
延伸力に充分に対応できずに、シートが部分的に切断さ
れたり引き延ばされたりする。
【0006】前記延伸力に対応できる強度をシートに与
えるためには、繊維長の長い繊維を使用することが必要
になるが、抄紙法によりシートを製造する場合、使用で
きる繊維長は1〜5mmであり、5mm以上、特に10
mm以上の繊維長を有する繊維から、抄紙法により均一
なシートを製造することは、非常に困難であった。従っ
て、抄紙法で得られたシートにより、前述のような金型
を用い、加熱および加圧する方法でスピーカコーンを成
形することは極めて困難である。
【0007】さらに、合成樹脂、例えばポリプロピレン
を原料とする場合は、原料樹脂のペレットをフィルムに
成形した後真空成形し、その後、スピーカコーン本体と
エッジ部との接着性を改善するために、プラズマ処理、
火炎処理、プライマー塗布等の工程を経て製造されてい
る。このように、原料にポリプロピレン等の合成樹脂を
使用する場合は、天然木材パルプ或いは合成パルプを原
料とする場合と比べて、抄紙工程までの作業は多少簡略
化さるが、スピーカコーン成形後に、プラズマ処理、火
炎処理、プライマー塗布等の繁雑な工程が必要である。
【0008】アクリル系合成繊維からなるパルプを原料
とするスピーカコーンは、繊維の内部に、その長さ方向
に沿って細長い空隙を多数有するアクリル系合成繊維を
叩解して合成パルプを製造し、これを抄紙して得られる
コーン紙からなるスピーカコーンが特開平3−1546
00号公報に開示されており、また木材パルプと多孔質
アクリル繊維とを混合して叩解し、この混合パルプを抄
紙した振動版からなるスピーカが特開昭57−1966
94号公報に開示されている。
【0009】特開平3−154600号公報に記載され
ている合成パルプからスピーカコーンを製造する場合、
スピーカコーンに成形するときに発生する皺は、天然パ
ルプに比較して少ないが、抄紙工程において、この合成
パルプの水中への分散性が悪いため、繊維塊の発生が避
けられず、得られるスピーカコーンの厚みむらや重量の
ばらつきが非常に大きい。さらに、抄紙速度が天然パル
プよりも遅く、生産性が極めて低い。
【0010】一方、特開昭57−196694号公報に
記載されている多孔質アクリル繊維パルプと木材パルプ
との混合物からスピーカコーンを製造する場合には、前
記の天然木材パルプからスピーカコーンを製造する場合
と同様の問題点を有している。さらに、アクリル系合成
繊維から製造したスピーカコーンは、屋外、自動車内な
どの高温、高湿度の環境で使用する場合、特に湿度の影
響を受け易く、スピーカコーンの形状が変形し、音質を
著しく悪くするなど、品質の劣化が激しいという問題点
がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のスピ
ーカコーンの製造工程を簡略化して、作業環境の改善を
行い、さらに廃棄物の発生を少なくするとともに、スピ
ーカコーンの厚みむら、スピーカコーン間の重量ばらつ
きが少なく、高温、高湿度環境においても形状変化の少
ないスピーカコーン、及びその製造法を提供することを
目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、長さ方
向に沿って延びる多数の細長い空隙を内部に有し、前記
空隙の横断面形状が不特定であるアクリル系合成繊維で
構成されるシートであって、該シートの表面に存在する
前記繊維の大部分は微細繊維に分割されており、該シー
トの内部には未分割の前記アクリル系合成繊維が大部分
存在し、これらの繊維が互いに交絡により一体化されて
なるシート(A)(以下、シート(A)という)と、熱
溶融性繊維からなるシート(B)(以下、シート(B)
という)との積層体がコーン状に成形されていることを
特徴とするスピーカコーンである。
【0013】また、本発明の第二は、上記シート(A)
と熱溶融性繊維からなるシート(B)との積層体を、温
度100〜250℃、圧力0.5〜30kg/cm2
コーン状に成形することを特徴とするスピーカコーンの
製造法である。上記シート(A)の表面〔シート(A)
の表側及び/又は裏側を意味する〕に存在するアクリル
系合成繊維は、その大部分、具体的には70重量%以上
(以下、%は特記しない限り重量%を示す)、好ましく
は90%以上の繊維が、その全長にわたってより細い多
数の微細繊維に分割しており、その長さ方向において部
分的に分割している繊維、さらには未分割の繊維が存在
していることもある。シート(A)の表面に未分割の繊
維が多く存在すると繊維相互の絡み合いが不十分とな
り、このシート(A)を含む積層体をスピーカコーンに
成形するとき、シート(A)の破損が発生するようにな
る。
【0014】このシート(A)の表面に存在する上記繊
維は、相互に絡み合っており、シート(A)の表面の繊
維層を形成している。また、上記シート(A)の表面の
繊維層に挟まれた内部に存在するアクリル系合成繊維
は、大部分、具体的には70%以上、好ましくは90%
以上の繊維が未分割の繊維であるが、部分的に分割した
繊維が存在することもあり、さらに分割した繊維が存在
することもある。これらの繊維は、相互に絡み合ってシ
ート(A)の中間の繊維層を形成している。さらに、こ
れら表面の繊維層及び中間の繊維層に存在する繊維は、
それぞれ相互に絡み合い、一体化してシート(A)を形
成している。
【0015】シート(A)の内部に存在する未分割のア
クリル系合成繊維からなる中間の繊維層は、スピーカコ
ーンの音響特性の一つである内部損失に影響を与え、こ
の繊維が有する特異な繊維構造によって、スピーカコー
ンの製造条件の変更、或いはスピーカコーンの、後加工
による内部損失の変化を、極めて少なくする特徴的な効
果を発現する。
【0016】上記、未分割のアクリル系合成繊維の横断
面の電子顕微鏡写真(4,000倍)を図1に、縦断面
の電子顕微鏡写真(4,000倍)を図2に示す。図1
において、黒い部分aが前記空隙の断面であり、その形
状は、ほぼ円形状のもの、偏平状のもの、その縁が屈曲
を繰り返しているものと様々であり、断面積も大きいも
の、小さいものと一定でなく、不特定な横断面を有する
多数の細長い空隙が繊維内に不規則に存在していること
が分かる。
【0017】図2において、同様に黒い部分bが前記空
隙であり、この各空隙が繊維の長さ方向に沿ってほぼ平
行に延びていることが分かる。上記、特殊な繊維構造を
有するアクリル系合成繊維は、この繊維に外力を作用さ
せることにより、繊維の長さ方向に沿ってより細い多数
の微細な繊維に分割する特異な性質を有しているが、こ
の分割を容易にするために、前述の細長い空隙の長さは
60μm以上であることが好ましい。
【0018】また、この細長い空隙はその隣合うもの同
士が、部分的に空孔により連結されていてもよい。さら
に、繊維の一横断面におけるこの細長い空隙の数は、前
述の外力による微細繊維への分割が容易になされるため
には、100個以上存在することが好ましい。このアク
リル系合成繊維は、アクリル系重合体から以下のように
して製造される。
【0019】アクリル系重合体は、50%以上のアクリ
ロニトリル単位(以下、『AN』と略称する)と、AN
と共重合可能な他のモノマーとの重合体、またはこれら
の重合体を混合した混合重合体である。ANが50%よ
り少ない場合は、アクリル系重合体が本来有する非溶融
性であり且つ熱可塑性であるという熱特性が失われ、シ
ート(A)とシート(B)との積層体を金型に入れ、加
熱および加圧してコーン状に成形する際に、形状の保持
が困難となる。ANの含有量には上限がなく、ANの1
00%重合体であってもよい。また、アクリル系重合体
が混合物である場合も、ANの含有量は、混合重合体の
重量を基準にして50%以上含まれていることが必要で
ある。
【0020】ANと共重合可能なモノマーは、従来より
知られている例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそ
のエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、酢酸ビニ
ル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メ
タクリルアミド、メタクリロニトリル、アリルスルホン
酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニル
ピリジン、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレー
トなどである。
【0021】上記、アクリル系重合体とポリアルキレン
グリコールを、従来より知られているアクリル系重合体
の溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルスルホキシド、ロダン塩濃厚水溶
液、塩化亜鉛濃厚水溶液、硝酸水溶液などの溶剤に溶解
して紡糸原液を調製する。紡糸原液中のアクリル系重合
体濃度は、溶剤によって最適濃度は異なるが、概ね10
〜30%が好ましい。
【0022】このポリアルキレングリコールの添加は、
アクリル系合成繊維に前述の細長い空隙を形成するため
の重要な要件である。このポリアルキレングリコール
は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとが重
量比で80:20〜20:80の範囲内で共重合された
ランダム型共重合体、或いはブロック型共重合体であ
り、その数平均分子量は5,000〜50,000、好
ましくは6,000〜20,000である。
【0023】数平均分子量が5,000より小さい場合
には、繊維の長さ方向に連続して延びる細長い空隙が形
成されず、ごく微細なほぼ球状の空隙を有する多孔質繊
維となる。一方、その数平均分子量が50,000を超
えると巨大な筋状の空洞を有する繊維となり、しかも、
繊維の横断面において多くても高々数十個の空洞部を有
する繊維となる。このような繊維は外力による微細繊維
への分割が困難となり、本発明のスピーカコーン用の繊
維には適さない。繊維の長さ方向に沿って延び、横断面
での断面形状が不特定の形状である細長い空隙を有する
繊維が得られるためには、数平均分子量が10,000
〜20,000であるものが特に好ましい。
【0024】さらに、上記ポリアルキレングリコールを
溶解して調製した紡糸原液は、その後、少なくとも4時
間熟成する。この紡糸原液の熟成が、繊維の長さ方向に
沿って連続した細長い空隙を多数有するアクリル系合成
繊維を得るために必要な条件である。この熟成は、上記
アクリル系重合体とポリアルキレングリコールとを溶解
して調製した紡糸原液を、激しく撹拌したり、振動した
りすることなく、例えば静置しておくことや穏やかに送
液することである。
【0025】このように、ポリアルキレングリコールを
添加した紡糸原液を熟成することにより、どの様な理由
で前述のような細長い空隙が形成されるのか定かではな
いが、以下のように推測される。即ち、紡糸原液の熟成
によりポリアルキレングリコールの凝集が生じ、紡糸原
液が管の中を通って紡糸口金の細孔からその凝固媒体中
へ紡糸されるときに、紡糸原液に剪断力が作用してポリ
アルキレングリコールの微細な筋が形成される。そし
て、アクリル系重合体は凝固し、ポリアルキレングリコ
ールは凝固しないという両者の凝固特性の相違により、
両重合体の相分離によって前記のような複雑な形状をし
た空隙が生じるものと考えられる。この熟成時間は、4
時間以上であればより長い時間であってもよいが、4〜
10時間であることが好ましい。
【0026】ポリアルキレングリコールの添加量は、ア
クリル系重合体に対して5〜20%、好ましくは10〜
15%である。その添加量が5%より少ない場合には、
前述の細長い空隙が少なくなり、20%を超えるとこれ
が多くなりすぎ、繊維の製造工程で繊維がより細い微細
繊維に分割されたり、安定な紡糸ができなくなる等の問
題を生じる。その添加量が10〜15%のとき、前記細
長い空隙の数、紡糸の安定性等において最もバランスが
とれるため好ましい。
【0027】前記紡糸原液を、紡糸口金を通して紡糸原
液の凝固媒体中に押し出して凝固糸条体を形成し、この
凝固糸条に水洗、延伸、乾燥、熱処理等の各種処理をお
こない、長さ方向に沿って延びる多数の細長い空隙を内
部に有するアクリル系合成繊維を製造する。紡糸原液に
添加されたポリアルキレングリコールは、凝固、水洗、
延伸等の過程で凝固糸条体から溶出する紡糸方法は、湿
式紡糸、乾式紡糸、或いは乾湿式紡糸等いずれの方法で
もよく、紡糸後は凝固糸条体からポリアルキレングリコ
ールを溶出するために、水性媒体中で延伸、水洗するこ
とが好ましい。
【0028】前述のアクリル系合成繊維は、外力の作用
により容易にその長さ方向に沿ってより細い多数の微細
繊維へ分割される。従って、この特性を利用して、スピ
ーカコーン用のシート(A)は上記アクリル系合成繊維
のウェブを、例えば、従来より公知である高圧水を用い
た柱状流パンチング処理により不織布とすることにより
得られる。この処理により、不織布の表面に存在するア
クリル系合成繊維の大部分、具体的には70%以上、好
ましくは90%以上の繊維は、その長さ方向に沿ってよ
り細い多数の微細繊維に分割される。この時、この不織
布の表面には、場合によっては、アクリル系合成繊維が
部分的に分割した繊維、さらには未分割の繊維が存在す
ることもあるが、不織布の表面に存在する全ての繊維が
分割した微細繊維であることが好ましい。これらの繊維
は、ある部分では分散してランダムに広がり、別の部分
では束状となって集合し、且つこれらの繊維は相互に交
絡している。
【0029】一方、不織布の内部に存在する大部分、具
体的には70%以上、好ましくは90%以上の繊維は未
分割のアクリル系合成繊維であり、場合によっては、部
分的に分割した繊維、さらには分割した微細繊維が存在
することもある。しかし、不織布の内部に存在する繊維
は、全ての繊維が未分割の繊維であることが好ましい。
【0030】上記、高圧水の柱状流パンチング処理によ
り、不織布表面付近に存在する繊維の分割と、分割した
微細繊維相互の絡み合いが同時に進行し、シート(A)
の表面の繊維層が形成される。また、この表面の繊維層
に挟まれた内部の繊維も同時に絡み合って内部の繊維層
が形成され、しかも、表面の繊維層及び内部の繊維層に
存在する繊維の相互が絡み合って一体化し、本発明のス
ピーカコーン用シート(A)が形成される。
【0031】アクリル系合成繊維の分割は、この繊維に
与える外力の大きさを変えることによりその程度を調節
することができ、また、得られた微細繊維の分散状態お
よび繊維相互の交絡程度も前記外力の大きさにより調節
することができる。シート(A)を構成する繊維の長さ
には特に制限はなく、長繊維、短繊維ともに使用できる
が、スピーカコーンの形状保持性の点で20〜150m
mの長さの繊維が好ましく、30〜60mmの繊維がよ
り好ましい。
【0032】前記不織布の目付量は、目的とするスピー
カコーンの用途、特性等により異なるが、通常は50〜
500g/m2であり、特に100〜300g/m2
好ましい。高圧水の柱状流パンチングに使用するノズル
径は通常は0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.
5mmであり、高圧水柱状流の圧力は20〜100kg
/cm2、好ましくは40〜80kg/cm2である。
【0033】本発明のスピーカコーンは、前記シート
(A)と熱溶融性繊維からなる不織布、編物、織物等の
シート(B)との積層体を加熱加圧成形したものであ
る。このシート(B)はシート(A)と積層して使用す
ることにより、スピーカコーンの形状保持性、強度及び
その取扱い性を改良し、高温、高湿度環境で使用したと
きのスピーカコーンの形状変化による品質劣化を防止す
るとともに、内部損失に変化を生じることなく他の音響
特性を変えることができ、より広範囲の音色に対応する
ことができる、などの効果をもたらすものである。
【0034】このシート(B)は、シート(B)の製造
及びこれとシート(A)との積層体の製造の容易性、ス
ピーカコーンの成形の容易性、その均一さ等から不織布
が好ましい。このシート(B)を形成する繊維は、スピ
ーカコーンの成形温度及び圧力で溶融する熱溶融性繊維
である。この繊維は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレ
ン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊
維、ポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊
維、塩化ビニル系繊維、塩化ビニリデン系繊維などであ
り、ポリオレフィン系繊維が好ましいが、特にポリプロ
ピレン繊維が好ましい。
【0035】上記熱溶融性繊維の繊度は、10デニール
以下が好ましいが、特に0.5デニール以下の極細繊維
がスピーカコーンの均一性の点で好ましい。これらの繊
維の長さは特に制限はなく、長繊維、短繊維ともに使用
することができる。上記繊維からなるシート(B)の目
付量は、高温、高湿度環境でのスピーカコーンの変形を
防止するために、通常は10〜300g/cm2、好ま
しくは20〜100g/cm2であり、スピーカコーン
におけるシート(B)の割合は5%〜50%、好ましく
は10〜30重量%である。
【0036】シート(B)の目付量が少なくなると、シ
ート(A)を形成するアクリル系合成繊維を固定する接
着強度が弱く、多くなるとその接着強度は強くなり、同
時にスピーカコーンの内部損失は殆ど変化することなく
ヤング率は高く、音速は早くなる。従って、熱溶融性繊
維からなるシート(B)の目付量を適宜選定することに
より、繊維の接着強度を容易に改善し、同時にスピーカ
コーンの音響特性を改良することができる。
【0037】シート(A)とシート(B)との積層体
は、シート(A)及び(B)を交互に積層した2層以上
の積層体である。この積層体は2層以上で有れば特に制
限はないが、シート(B)の両側をシート(A)で挟ん
だ3層の積層体が好ましい。本発明のスピーカコーン
は、この積層体を所定形状の金型内に入れ、所定温度お
よび圧力でコーン状に成形することにより製造すること
ができる。この成形温度は100〜250℃、好ましく
は150〜200℃であり、圧力は0.5〜30kg/
cm2、好ましくは1〜10kg/cm2、成形時間は1
〜60秒、好ましくは2〜10秒である。
【0038】成形温度が250℃を超えるとアクリル系
合成繊維の変性や分解が発生して成形が困難となり、圧
力が30kg/cm2 を超えるとシート(A)の各面に
おけるアクリル系合成繊維の融着が激しくなり成形が困
難となる。また、成形温度が100℃未満で圧力が0.
5kg/cm2 未満ではスピーカコーンの形状保持性が
悪くなる。
【0039】これらの条件を前記範囲内において適宜調
節することにより、種々の特性を有するスピーカコーン
を製造することができる。また、この金型は目的とする
スピーカコーンの形状等に合わせて適宜設計変更するこ
とが出来る。図3は、0.1デニールのポリプロピレン
繊維の不織布からなるシート(B)の両側を、シート
(A)で挟んだ3層の積層体を、金型により加圧加熱成
形して製造したスピーカコーン(実施例1)の内側面の
形態を示し、図4は、その外側面の形態を示す電子顕微
鏡写真(それぞれ236倍、234倍)である。
【0040】このスピーカコーンの内側面および外側面
に存在するアクリル系合成繊維は、その長さ方向に沿っ
てより細い微細繊維に分割されており、これらの繊維は
相互に交絡し、しかも、記号cで示したポリプロピレン
繊維の溶融物により固定されている。また、スピーカコ
ーンの内側面及び外側面に存在するこれらの微細繊維
は、緊密に密着しており、部分的に熱と圧力により融着
して接着しているところがある(図3において、黒くな
っている部分d)。
【0041】図5は、前述の図3および4で示したスピ
ーカコーンにおける断面の形態を示す電子顕微鏡写真
(177倍)である。図5において、上面はスピーカコ
ーンの内側面に相当し、下面は外側面に相当する。この
図5から分かるように、スピーカコーンとなったシート
の厚み方向における内部には、未分割のアクリル系合成
繊維が存在している。
【0042】この未分割の繊維は相互に交絡して中間の
繊維層を形成し、同時に、その表面の繊維層を形成する
分割された微細繊維とも交絡して、全繊維が一体的に結
合している。このシート(A)の内部に存在する未分割
のアクリル系合成繊維は、スピーカコーンに成形された
後でも、成形される前とほどんど変わらない構造のアク
リル系合成繊維である。
【0043】これらの厚み方向の内部に存在する未分割
の繊維および分割された微細繊維は、繊維相互が密着し
て単に強く圧着されているだけで、融着されてはいな
い。さらに、繊維間には多くの空間(例えばe)を含ん
でいる。本発明におけるスピーカコーン用のシート
(A)として、前述のアクリル系合成繊維からなる不織
布を製造する際に、他の繊維、例えば天然木材パルプ、
炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維或いは鉱物繊維等をス
ピーカコーンに要求される特性に応じて10%以下の量
で混合することができる。また、炭素粉末、樹脂粉末、
着色剤、セラミック等の添加剤を添加することも可能で
ある。さらに、成形したスピーカコーンに、樹脂含浸或
いはコーテイング、金属蒸着、着色等の加工をおこな
い、スピーカコーンの音響特性、意匠性に種々の特徴を
付与することができる。
【0044】
【作用】〔形状保持性について〕本発明のシート(A)
は、アクリル系合成繊維が特殊な繊維構造をしている、
このシート(A)そのものが特殊な構造を有している、
抄紙法によらないため繊維長の長い繊維を使用した均一
なシートである、等の要因により、シート(A)の引張
強度等の物性が大幅に改良されているという特徴を有し
ている。
【0045】上記シート(A)の有する構造的、物性的
要因とアクリル系合成繊維が本来有している、アクリル
系合成繊維は非溶融性ではあるが熱可塑性であるという
熱的特性とが相俟って、シート(A)とシート(B)と
の積層体を金型でスピーカコーンに成形する時、シート
(A)に対して作用する延伸力にシート(A)が充分対
応することができるのである。このため、上記積層体を
立体的な形状を有するスピーカコーンに成形する時、シ
ート(A)の破れ、歪みがなく均一なスピーカコーンに
成形することができるのである。また、この熱溶融性繊
維は、溶融してシート(A)を形成している繊維を強固
に結合するために、その形状保持性が著しく改善され
る。
【0046】スピーカコーンの表面の少なくとも一方の
面には、シート(A)の表面に存在する微細に分割した
アクリル系合成繊維(部分的に分割した繊維、未分割の
繊維を含むこともある)の融着部分が存在していてもよ
く、この場合、その形状保持性がさらに改善されるた
め、この融着部分が存在することが好ましい。上記、熱
溶融性繊維の溶融による繊維の結合とこの融着部分が、
スピーカコーンの形状保持性に大きく寄与しており、コ
ーン状に成形されたシート(A)の内部に未分割のアク
リル系合成繊維が存在し、繊維間には多くの空間を含ん
でいるのにもかかわらず、高湿度、高温環境において
も、スピーカコーン形状を強固に保持する大きな要因に
なっている。
【0047】上記、スピーカコーンの表面に存在する繊
維の融着部分は、シート(A)とシート(B)との積層
体を温度100〜250℃、圧力0.5〜30kg/c
2でスピーカコーンに成形することにより、その表面
の少なくとも一方の面に形成することができる。なお、
図6は、天然パルプから製造したスピーカコーンの内側
面の形態を示す電子顕微鏡写真(236倍)であるが、
この図と図3(本発明のもの)との比較から分かるよう
に、本発明のスピーカコーンにおける内側面の繊維に比
較して、パルプ繊維は太く、しかも繊維相互が融着して
いないことが分かる。
【0048】〔音響特性について〕本発明のスピーカコ
ーンは、スピーカコーンに成形された後でも、厚み方向
における内部に、成形される前とほどんど変わらない、
長さ方向に沿って延びる多数の細長い空隙を内部に有
し、前記空隙の横断面形状が不特定であるアクリル系合
成繊維を含んでいる。
【0049】また、本発明のスピーカコーンの表面に
は、前記アクリル系合成繊維が分割されてなる微細繊維
が、ある部分では分散して広がり、別の部分では束状に
集合した状態で存在している。これらのことと、アクリ
ル系合成繊維の本来有している熱的特性との相乗効果
が、スピーカコーンに要求される特性、特に内部損失に
対して以下のような作用をもたらす原因となっている。
【0050】即ち、天然パルプを用いたスピーカコーン
の内部損失は、その成形温度、圧力により変化し、樹脂
加工やアルミニウムなどの金属ラミネートによっても変
化し、さらに天然パルプに混合する繊維によっても変化
するが、本発明のスピーカコーンは、理想的とされてい
る天然パルプからなる内部損失と同等の値を有してお
り、しかもこの内部損失が、これらの加工によってほと
んど変化しない。
【0051】図7は、天然パルプから製造したスピーカ
コーンの組織の断面の形態を示す電子顕微鏡写真(17
6倍)であるが、前述のように、本発明のスピーカコー
ンは細かく、均一な空間を有しており、全体として緻密
な均一層を形成している(図5参照)のに対して、天然
パルプからなるスピーカコーンでは、図7から分かるよ
うに、粗く、不均一な空間を有しており、全体として粗
雑な不均一層を形成している。
【0052】本発明のスピーカコーンの内部に存在する
前記空間の大きさや分散状態は、成形時の圧力及び温度
を適宜変更することにより調節することができる。この
ことから、本発明のスピーカコーンでは、スピーカコー
ンのもう一つの特性である音速に対しては、成形圧力、
温度或いは金属ラミネート等の加工条件を変えることに
より変更することができる。この時、前述のように内部
損失はほとんど変化しない。
【0053】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。まず、スピーカコーン用のシート(A)を形成する
アクリル系合成繊維を以下のようにして製造した。ジメ
チルホルムアミドに、組成がAN95.0%、アクリル
酸メチル4.5%、及びメタリルスルホン酸ソーダ0.
5%である共重合体と、ポリエチレンオキシド−ポリプ
ロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドのブロック型
ポリエーテル(数平均分子量が10,000、重合比は
ポリエチレンオキシド:ポリエチレンオキシド=70:
30)とを溶解して、共重合体を23%、ブロック型ポ
リエーテルを2.3%含有する紡糸原液を調製した。
【0054】この紡糸原液をその後6時間静置した後、
直径0.08mmの細孔を有する紡糸口金を通して、3
5℃の、ジメチルホルムアミド75%と水25%の混合
物からなる水系凝固液中に押し出して凝固糸条体を製造
した。次いで、この凝固糸条体を水洗、沸騰水中で10
倍延伸、80℃の熱風中で乾燥、捲縮付与の工程を経た
後、76mmに切断してアクリル系合成繊維を製造し
た。
【0055】この繊維の単繊度は2dであり、引張強度
は3.2g/d、引張伸度は32%であった。この繊維
の横断面及び縦断面の状態を示す電子顕微鏡写真を、図
1及び図2(4,000倍)に示す。これらの図から分
かるように、この繊維はその長さ方向に沿って延びる細
長い空隙を極めて多数有していた。
【0056】この繊維を、紡績のカード機を用いて目付
け量100g/m2 のウェブに形成した。このウェブ
を、4m/分の速度で移動する金網に載置し、0.8m
m間隔で一列に配置した直径0.1mmの細孔を有する
ノズルから、60kg/cm2 の圧力で水を噴射して処
理した。この処理を、ウェブの表面及び裏面に交互に1
0回繰り返した後、得られた不織布を80℃の熱風中で
乾燥した。
【0057】上記方法により製造した不織布は、その表
面及び裏面に存在する繊維がより細い多数の微細繊維に
分割されており、そしてこの微細繊維が、ある部分では
分散して広がり、別の部分では束状に集合しており、ま
た、この不織布の表面と裏面との間には、未分割の前記
アクリル系合成繊維が存在しており、これらの繊維が互
いに交絡し、全体として繊維の交絡により不織布を形成
する全繊維の一体化がなされているものであった。
【0058】このようにして得られた上記不織布を使用
して、各種のスピーカコーンを成形した。
【0059】
【実施例1】前記不織布(シート(A))の間に、0.
5デニールのポリポリプロピレン繊維からなる目付け量
40g/m2の不織布を挟んだ3層の積層体を、スピー
カコーン製造用金型に入れ、温度150℃、圧力2kg
/cm2 で5秒間成形することにより多数のスピーカコ
ーンを製造した。
【0060】図3はその内側面を、図4はその外側面の
形態を示す電子顕微鏡写真(236倍、234倍)であ
る。また、図5は、上記のスピーカコーンの断面形態を
示す電子顕微鏡写真(177倍)である。図5におい
て、上面はスピーカコーンの内側面に相当し、下面は外
側面に相当する。スピーカコーンの厚み方向における内
部には未分割のアクリル系合成繊維が存在し、これらの
未分割アクリル系合成繊維相互が交絡し、且つ、分割さ
れた微細繊条とも交絡している。これらの厚み方向の内
部に存在する未分割のアクリル系合成繊維及び分割され
た微細繊維は、これら繊維相互が密着している。即ち、
スピーカコーンに成形された後でも、その厚み方向にお
ける内部には成形される前とほどんど変わらない構造
の、長さ方向に延びる細長い多数の空隙を有するアクリ
ル系合成繊維が存在している。また、ポリプロピレン繊
維は溶融して接着剤として作用している。このため、ス
ピーカコーンの形状保持強度が大きく改良されており、
その取扱い性が改善されるとともに、自動車、屋外等
の、高温、高湿度環境での使用に十分耐えられる強度を
有しているものであった。
【0061】さらに、成形時に、積層体の変形、破損等
の異常は認められず、成形性は極めて良好であった。各
スピーカコーン間の重量のばらつき及びポリポリプロピ
レン繊維の溶融物の付着ばらつきは、それぞれ±4%以
内、±3%以内であった。表1に、スピーカコーン(N
o.1〜3)の特性を示す。
【0062】
【実施例2】実施例1で製造したNo.1のスピーカコ
ーンの全面に、固形分を20%含有する変成シリカ系樹
脂溶液100Hクリアー(商品名、ロンケミカル株式会
社製)を塗布した後、自然乾燥してセラミック含有スピ
ーカコーンを製造した。各スピーカコーン間の重量ばら
つきは±4%以内であった。
【0063】表2に、スピーカコーン(No.4〜6)の
特性を示す。表2から分かるように、このスピーカコー
ンは内部損失は変わることなく、ヤング率及び音速が改
良されている。
【0064】
【実施例3】実施例1で製造したNo.1のスピーカコ
ーンに、厚さ50μmのアルミニウム箔を接着剤でラミ
ネート加工して多数のスピーカコーンを製造した。得ら
れた各スピーカコーン間の重量のばらつきは±4%以内
であった。表3に各スピーカコーン(No.7〜9)の特
性を示す。
【0065】表3から分かるように、このスピーカコー
ンは内部損失(tanδ)は天然パルプからなるスピー
カコーンと殆ど変わることなく、ヤング率及び音速が大
幅に改良されている。
【0066】
【比較例1】天然パルプから以下のようにしてスピーカ
コーンを製造した。原料パルプを膨潤処理後、解離、叩
解等の工程を経て原料調製を行い、この原料に、近代化
学工業(株)製「ペローザWS」(ロジン系樹脂)を添
加し、pH調整、濃度調整を行い、その後金網によりス
ピーカコーン形状に抄紙し、脱水、プレス加工を経て、
スピーカコーンの斜面部を形成した。この斜面部を裁断
した後、仕上げ加工を行い多数のスピーカコーンを製造
した。各スピーカコーンの重量のばらつきは±10%で
あった。
【0067】表4にこれらのスピーカコーンの一例(N
o.10)の特性を示す。
【0068】
【比較例2】前記アクリル系合成繊維を15mmに切断
し、この繊維10重量部を90重量部の水中に分散し
た。次いで、この繊維をデイスク間隔を0.1mmに調
整した製紙用デイスクリファイナーで濾水度450cc
になるまで叩解してアクリル系合成パルプ状繊維を製造
した。
【0069】このパルプは太い繊維の部分(元のアクリ
ル系合成繊維の幹)の表面に、この幹から枝分かれした
微細なヒゲ状繊維が多数発生していた。又、幹となって
いる繊維は部分的にその長さ方向に分割し細い繊維に分
離しているところがあった。このアクリル系合成パルプ
状繊維90部と天然木材パルプ(N−BKP)10重量
部とを水中に分散して通常の抄紙工程を通して抄紙した
後、85℃の熱風で乾燥し、300g/m2のシート状
物を製造した。
【0070】この製造工程において、アクリル系合成パ
ルプ状繊維の水への分散性が悪く、繊維塊が激しく発生
し、均一なシート状物を製造することができなかった。
このため、得られたシート状物は繊維塊の斑点が多くあ
るものであった。このシート状物を6kg/cm2、1
20℃、3秒の条件でスピーカコーン紙に成形したとこ
ろ、スピーカコーンの形態はある程度保持できたが、シ
ート状物の折れ曲がり部に部分的な破断が発生し、音響
特性を測定できるものではなかった。
【0071】以上の各実施例および比較例の結果から分
かるように、本発明のスピーカコーンでは、同一条件で
製造された各スピーカコーンにおける重量のばらつきが
±5%以内であり、天然パルプから得られた比較例1
(±10%)と比べて、半分以下にすることができる。
また、従来の天然パルプから製造したスピーカコーン
は、アルミニウム箔をラミネートすると、内部損失を表
すtanδの値が桁違いに大きく変化するが、本発明の
スピーカコーンでは、実施例3から分かるように、ta
nδの数値をさほど変えることなく、音速及びヤング率
を上げることができる。
【0072】また、比較例2から分かるように、本発明
のアクリル系合成繊維をパルプ状に加工した場合には、
従来の天然パルプを原料とする時よりもさらにシート状
物の製造が困難であり、スピーカコーンを製造すること
はできない。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】本発明のスピーカコーンは、特殊な構造
のアクリル系合成繊維で形成された特殊な構造のシート
(A)熱溶融性繊維からなるシート(B)との積層体を
スピーカコーンに成形したものである。従って、抄紙工
程を行わずにスピーカコーンを製造できるようになり、
スピーカコーン製造現場の作業環境を著しく改善すると
ともに、廃棄物の発生を抑えることができる。また、ス
ピーカコーンの厚みむらや製品間の重量のばらつきを少
なくすることができるため、品質の安定したスピーカコ
ーンを提供することができる。
【0078】さらに、高温、高湿度環境においても品質
の劣化が少ないスピーカコーンを提供することができ
る。また、従来技術において合成樹脂のフィルムを原料
とした場合には、成形後に、プラズマ処理、火炎処理、
プライマー塗布等の繁雑な工程が必要であるが、本発明
のスピーカコーンでは、このような処理を必要としな
い。
【0079】これに加えて、本発明のスピーカコーン
は、音響特性のうちの内部損失が、製造条件の変更、樹
脂加工や金属箔のラミネート加工等によりほとんど変化
しないため、音速等他の特性を、製造条件や加工条件を
変更することにより広い範囲にわたってバランスよく変
えることができるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピーカコーンを構成するアクリル系
合成繊維の横断面における繊維の形状を示す電子顕微鏡
写真(4,000倍)である。
【図2】本発明のスピーカコーンを構成するアクリル系
合成繊維の縦断面における繊維の形状を示す電子顕微鏡
写真(4,000倍)である。
【図3】本発明の実施例5で製造したスピーカコーンの
内側面の形態を示す電子顕微鏡写真(236倍)であ
る。
【図4】本発明の実施例5で製造したスピーカコーンの
外側面の形態を示す電子顕微鏡写真(234倍)であ
る。
【図5】本発明の実施例5で製造したスピーカコーンの
断面の形態を示す電子顕微鏡写真(177倍)である。
【図6】従来の天然パルプから製造したスピーカコーン
の内側面の形態を示す電子顕微鏡写真(236倍)であ
る。
【図7】従来の天然パルプから製造したスピーカコーン
の断面の形態を示す電子顕微鏡写真(176倍)であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−154600(JP,A) 特開 昭57−196694(JP,A) 特開 昭55−111234(JP,A) 特開 昭49−18323(JP,A) 特開 平6−141395(JP,A) 特開 昭58−87999(JP,A) 特開 昭53−5616(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04R 7/12 B32B 27/12 B32B 27/30 H04R 7/02 H04R 31/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長さ方向に沿って延びる多数の細長い空
    隙を内部に有し、前記空隙の横断面形状が不特定である
    アクリル系合成繊維で構成されるシートであって、該シ
    ートの表面に存在する前記繊維の大部分は微細繊維に分
    割されており、該シートの内部には未分割の前記アクリ
    ル系合成繊維が大部分存在し、これらの繊維が互いに交
    絡により一体化されてなるシート(A)と、熱溶融性繊
    維からなるシート(B)との積層体がコーン状に成形さ
    れていることを特徴とするスピーカコーン。
  2. 【請求項2】 長さ方向に沿って延びる多数の細長い空
    隙を内部に有し、前記空隙の横断面形状が不特定である
    アクリル系合成繊維で構成されるシートであって、該シ
    ートの表面に存在する前記繊維の大部分は微細繊維に分
    割されており、該シートの内部には未分割の前記アクリ
    ル系合成繊維が大部分存在し、これらの繊維が互いに交
    絡により一体化されてなるシート(A)と、熱溶融性繊
    維からなるシート(B)との積層体を、温度100〜2
    50℃、圧力0.5〜30kg/cm2 でコーン状に成
    形することを特徴とするスピーカコーンの製造法。
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