JP3201669B2 - 紙塗被用組成物 - Google Patents

紙塗被用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、顔料混和安定性および
接着強度に優れた紙塗被用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系
不飽和酸単量体等を重合して得られるいわゆるカルボキ
シル変性共重合体ラテックスは、良好な接着性を有する
ため、各種の接着剤として使用されている。特に、白色
度、光沢、接着強度、印刷適性等の向上のため紙塗被用
バインダーとして多用されている。近年、紙塗工技術お
よび印刷技術の進歩にともない、生産性の向上、省力化
等の観点より、塗工および印刷の高速化の傾向にあり、
特に印刷時のインクの粘着力により塗工層の一部が剥離
するピッキング現象が問題となっている。即ち、バイン
ダーとして使用するラテックスの接着力の高強度化が大
きな課題となっており、また、接着強度の向上のために
は、バインダーである共重合体ラテックスの顔料に対す
る混和安定性の向上も重要な課題となる。従来、接着強
度の向上あるいは他の物性項目とのバランスにおいて接
着強度を維持、向上させる方法が種々提案されている。
連鎖移動剤の添加方法および二段重合法に関しては、例
えば特開昭61−63794号および特開平3−109
451号があり、単量体と連鎖移動剤を連続的に添加し
て重合する工程で、単量体と連鎖移動剤の単位時間当り
の添加重量比を連続的に変化させる方法が提案され、重
合の第一および第二段階で組成の異なる単量体を使用す
る方法との組み合せで例示されているが、前述の問題点
を十分に満足するものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、顔料混和安
定性、特に電解質安定性および接着強度に優れた紙塗被
用組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、この目的
を達成するために鋭意研究の結果、脂肪族ジエン系単量
体と他の共重合可能な単量体を特定の条件下で組み合わ
せて使用し、かつ特定範囲の量の連鎖移動剤を使用して
乳化共重合することにより、上記目標が達成されること
を見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本
発明は、 (a)脂肪族共役ジエン系単量体 20−60重量% (b)エチレン系不飽和単量体 30−79重量% (c)エチレン系不飽和酸単量体 0.5− 5重量% (d)親水性官能基含有エチレン系不飽和単量体 0.5− 5重量% からなる単量体混合物100重量部を乳化共重合して得
られる共重合体ラテックスであって、乳化共重合の第1
段階として上記単量体混合物の50−90重量部(単量
体混合物(1))を乳化共重合し、該ラテックスの存在
下で、第2段階として残りの単量体混合物(単量体混合
物(2))を乳化共重合するに際し、(A)連鎖移動剤
を単量体混合物(1)100重量部に対し0.5−3.
0重量部(連鎖移動剤(1))、単量体混合物(2)1
00重量部に対し0.1−2.0重量部(連鎖移動剤
(2))を連鎖移動剤(1)>連鎖移動剤(2)の条件
下で使用すること、および(B)乳化共重合の第1段階
で、(c)エチレン系不飽和酸単量体の全量および
(d)親水性官能基含有エチレン系不飽和単量体の全量
を使用すること、さらに該乳化共重合の第一段階を前段
/後段に二分割し、前段で(c)エチレン系不飽和酸単
量体の全量を使用し、かつ該前段の単量体混合物が全単
量体混合物100重量部に対し、15−85重量部であ
ることからなる共重合体ラテックスを顔料100重量部
に対し、5−20重量部含有することを特徴とする紙塗
被用組成物に関するものである。
【0005】以下、本発明を詳細に説明する。通常、共
重合体ラテックスが各種の接着剤として使用される際、
特に塗工紙用バインダーとして使用される場合、各種の
顔料に混合、配合して用いられる。従って、これら顔料
との混和安定性、即ち共重合体ラテックスの電解質安定
性が充分でなければ、顔料およびバインダーとして用い
た共重合体ラテックスの分散安定性が不良となり、更に
は凝集物が発生して、共重合体ラテックスが本来有する
接着力その他の特性、機能の発現が著しく阻害される。
本発明の共重合体ラテックスは、カルボキシル基、スル
ホン酸基等を有するエチレン系不飽和酸単量体の全量お
よびアミド基、N−置換アミド基、水酸基等の親水性官
能基含有不飽和単量体の全量を、乳化共重合の第一段階
で使用することにより、生成する共重合体ラテックスの
電解質安定性を大幅に向上させたものであり、これによ
り、共重合体ラテックスが本来有する接着強度の充分な
発現を助けるものである。一方、共重合体ラテックスの
接着強度は、例えば共重合体ラテックスが塗工紙用バイ
ンダーとして用いられる場合、顔料と共重合体ラテック
ス間の接着、共重合体ラテックス間の融着および共重合
体ラテックス粒子の内部凝集力等によって左右される
と、一般に考えられている。本発明の共重合体ラテック
スは、乳化共重合の第一段階で、連鎖移動剤を比較的多
く使用して分子量、架橋度の比較的低いポリマーを生成
させ、かつ乳化共重合の第二段階では連鎖移動剤の使用
量を低減して分子量、架橋度の高いポリマーを生成させ
ることにより、同一粒子中に分子量、架橋度の異なるポ
リマー相を複合して有する共重合体ラテックス粒子とし
たものである。ここで、第一段階で生成するポリマー成
分は主として接着性、融着性に寄与し、第二段階で生成
するポリマー成分は主として内部凝集力に寄与する。即
ち、本発明の共重合体ラテックスは、改善された電解質
安定性および分子量、架橋度の適度に異なるポリマー相
を複合して有する粒子構造ゆえに、接着強度の大幅な向
上を達成できるものと想像される。
【0006】本発明の共重合体ラテックスの製造に使用
する単量体について説明する。 (a)脂肪族共役ジエン系単量体の例としては、1,3
−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、2−
メチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができ、特
に1,3−ブタジエンが好適に使用される。単量体
(a)の使用量は全単量体に対し、20−60重量%で
ある。この使用量が前記範囲よりも少ない場合は十分な
接着強度が得られず、また多すぎると耐水性および接着
強度が低下して好ましくない。 (b)エチレン系不飽和単量体の例としては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチル
スチレン等の芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸
メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル
酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)
アクリロニトリル等のシアン化ビニル類等が挙げられ、
特に芳香族ビニル単量体としてはスチレンが、(メタ)
アクリルエステル類としてはメタアクリル酸メチルが、
シアン化ビニル類としてはアクリロニトリルが好適に使
用される。単量体(b)の使用量は、全単量体に対し、
30−79重量%である。この使用量が前記の範囲より
少ないと耐水性が劣り、また多すぎると共重合体が硬く
なりすぎ、接着力が低下して好ましくない。 (c)エチレン系不飽和酸単量体の例としては、アクリ
ル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸
類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン
酸類およびその無水物、ハーフエステル類、スチレンス
ルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有不飽和単量体
等が挙げられる。単量体(c)の使用量は、全単量体に
対し、0.5−5重量%であり、本発明の乳化共重合の
第一段階で全量使用することが必須である。前記条件の
範囲外では、共重合体ラテックスの電解質安定性、接着
強度が不十分であったり、また、共重合体ラテックスの
粘度が高くなりすぎ作業性に劣る場合がある。 (d)親水性官能基含有エチレン系不飽和単量体の例と
しては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メ
タ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸ア
ミドおよびそのN−置換化合物、(メタ)アクリル酸−
2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和単量体等が
挙げられる。単量体(d)の使用量は、全単量体に対
し、0.5−5重量%であり、本発明の乳化共重合の第
一段階で全量を使用することが必須である。前記条件の
範囲外では、共重合体ラテックスの電解質安定性、接着
強度が不十分であったり、また、共重合体ラテックスの
粘度が高くなりすぎ作業性に劣る場合がある。
【0007】本発明の共重合体ラテックスの製造に使用
する連鎖移動剤の例としては、n−オクチルメルカプタ
ン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプ
タン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化ア
ルキル類、α−メチルスチレンダイマー等乳化共重合反
応における分子量の調整に一般に用いられる連鎖移動剤
を単独あるいは二種以上の混合物として使用することが
できる。本発明の共重合体ラテックスの製造における連
鎖移動剤の使用量は、乳化共重合の第一段階で使用する
単量体混合物(1)100重量部に対して0.5−3.
0重量部(連鎖移動剤(1))および第二段階で使用す
る単量体混合物(2)100重量部に対して0.1−
2.0重量部(連鎖移動剤(2))であり、かつ連鎖移
動剤(1)>連鎖移動剤(2)の条件を満たすことが必
須である。さもなくば、接着強度が不十分で本発明の目
的が達成されない。さらに、連鎖移動剤(1)および
(2)の使用量は本発明の主旨に反しない限り、共重合
体ラテックスの組成、粒子径、第一段階/第二段階の単
量体量比、連鎖移動剤の種類および組み合わせ等によ
り、前述の範囲内で自由に変化させることができる。
【0008】本発明の共重合体ラテックスを製造する方
法は、前述の条件を満す限り、通常の乳化重合法に従え
ばよく、特に限定はない。本発明の乳化共重合に使用さ
れる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナト
リウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素
等の水溶性開始剤、あるいはこれらと重亜硫酸ナトリウ
ム、アミン類等の還元剤とを組み合わせたレドックス系
開始剤が好適であり、水溶性のアゾ系開始剤も使用でき
る。また、乳化共重合する際に、生成する共重合体ラテ
ックスの粒子径を調節するとともに、共重合体ラテック
スに充分な重合安定性を付与するために使用される乳化
剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル、アル
キルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、アル
キルジフェニルエーテルスルホン酸塩等のアニオン性界
面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル
型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型
等のノニオン性界面活性剤が単独あるいは二種以上の組
み合わせで使用できる。
【0009】本発明の共重合体ラテックスを製造する温
度は、本発明の主旨に反しない限り、特に限定はない
が、40−80℃の範囲が好ましい。さらに、本発明の
紙塗被用組成物中には、顔料成分として、例えばカオリ
ン、クレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、酸化チ
タン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛等
の無機顔料、ポリスチレン、SBR等の有機顔料が単独
あるいは二種以上の組み合わせで使用される他、顔料分
散剤、粘度調節剤、保水剤、耐水化剤、染料、蛍光染
料、滑剤、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、
その他助剤、添加剤類等を必要に応じて使用できる。
【0010】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。なお、実施例中、実施例3は比較例である。実施例
中の部および%は、特に指定のない限り、すべて重量部
および重量%を表す。 実施例1 オートクレーブ中に、水110部、ドデシルベンゼンス
ルホン酸ナトリウム0.2部、マレイン酸1.0部を仕
込み、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレー
ブ内温を70℃に昇温後、過硫酸カリウム1.2部を添
加し、表1に記載したAの組成の第一段階の前段の単量
体混合物5部の乳化物を添加して、乳化共重合を開始し
た。1時間後より、第一段階の残りの単量体混合物の乳
化物を約2時間かけて添加し、続いて第一段階の後段の
単量体混合物の乳化物を約4時間で添加したのち、オー
トクレーブの内温を70℃のまま1時間保持して、第一
段階の重合を終了する。引き続いて、第二段階の単量体
混合物の乳化物を約2時間で添加後、70℃でさらに5
時間保持したのち、冷却し、重合停止剤としてジエチル
ヒドロキシルアミン0.2部を添加して重合を終了し、
共重合体ラテックスAを得た。
【0011】該共重合体ラテックスに水酸化ナトリウム
水溶液を添加して、pH8に調整したのち、エバポレー
ターで共重合体ラテックスの固形分を50%に濃縮し
て、評価試験に用いた。評価試験の方法を以下に示す。 評価試験1 共重合体ラテックスの電解質安定性 固形分濃度50%の共重合体ラテックスA30部をと
り、攪拌下に5%塩化カルシウム水溶液を3ml/分の
速度で連続的に添加してゆき、該ラテックスに凝集物が
発生するか、または該ラテックスが増粘・クリーム化し
て流動性が失われるまでに要した5%塩化カルシウム水
溶液の体積を測定し、そのml数で表示した。この数値
が大きい程、共重合体ラテックスの電解質安定性は良好
である。
【0012】評価試験2 塗工紙物性/接着強度 下記処方により、固形分60%の塗工液を作成した。 クレー(ウルトラホワイト90) 65部 重質炭酸カルシウム(カービタル90) 30部 サチンホワイト 5部 分散剤(アロンT−40) 0.3部 スターチ(MS−4600) 5部 滑剤(ノプコートC−104) 0.5部 共重合体ラテックス A 12部 上記塗工液を上質紙上に塗工量約20g/m2になるよ
うに、アプリケーターバーを用いて塗被し、塗工後ただ
ちに、120℃の熱風乾燥機に入れて30秒乾燥した。
その後、スーパーカレンダーを用いて、チルドロール表
面温度50℃、線圧100kg/cmで塗被紙を2回通
してカレンダー処理を行って塗工紙を作成した。接着強
度の評価は、標準条件で調湿したのち、RI印刷適性試
験機を用いて、インクをベタ刷りした際に発生するピッ
キング(紙むけ)の状態を5点満点で目視で判定した。
評価結果は、表1に示す。
【0013】実施例2−7 表1に記載したB−Gの組成の単量体を使用して、実施
例1と同様の手順で重合し、共重合体ラテックスB−G
を得た。但し、重合の各段の単量体の添加時間は、全添
加時間を8時間として、これを各段の単量体の部数の全
単量体部数に対する割合で分割して設定した。得られた
共重合体ラテックスに水酸化ナトリウム水溶液を添加し
て、pH8に調整したのち、エバポレーターで共重合体
ラテックスの固形分を50%に濃縮して、実施例1と同
様、評価試験に用いた。評価結果は、表1に示す。 比較例1−7 表1に記載したa−gの組成の単量体を使用した以外
は、実施例2−7と同様の手順で重合し、共重合体ラテ
ックスa−gを得た。
【0014】得られた共重合体ラテックスに水酸化ナト
リウム水溶液を添加して、pH8に調整したのち、エバ
ポレーターで共重合体ラテックスの固形分を50%に濃
縮して、実施例1と同様、評価試験に用いた。評価結果
は、表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の共重合体
ラテックスは、向上した電解質安定性および接着強度を
有することが明かであり、特にこれを含有する紙塗被用
組成物は、その優れた接着強度ゆえに、塗工紙の製造に
極めて有用である。
フロントページの続き (72)発明者 山本 和男 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (56)参考文献 特開 昭57−51703(JP,A) 特開 昭57−153012(JP,A) 特開 平4−41512(JP,A) 特開 平4−41505(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21H 19/58 C08F 236/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)脂肪族共役ジエン系単量体 20−60重量% (b)エチレン系不飽和単量体 30−79重量% (c)エチレン系不飽和酸単量体 0.5− 5重量% (d)親水性官能基含有エチレン系不飽和単量体 0.5− 5重量% からなる単量体混合物100重量部を乳化共重合して得
    られる共重合体ラテックスであって、乳化共重合の第1
    段階として上記単量体混合物の50−90重量部(単量
    体混合物(1))を乳化共重合し、該ラテックスの存在
    下で、第2段階として残りの単量体混合物(単量体混合
    物(2))を乳化共重合するに際し、 (A)連鎖移動剤を単量体混合物(1)100重量部に
    対し0.5−3.0重量部(連鎖移動剤(1))、単量
    体混合物(2)100重量部に対し0.1−2.0重量
    部(連鎖移動剤(2))を連鎖移動剤(1)>連鎖移動
    剤(2)の条件下で使用すること、および (B)乳化共重合の第1段階で、(c)エチレン系不飽
    和酸単量体の全量および (d)親水性官能基含有エチレン系不飽和単量体の全量
    を使用すること、さらに該乳化共重合の第一段階を前段
    /後段に二分割し、前段で(c)エチレン系不飽和酸単
    量体の全量を使用し、かつ該前段の単量体混合物が全単
    量体混合物100重量部に対し、15−85重量部であ
    ることからなる共重合体ラテックスを、顔料100重量
    部に対し、5−20重量部含有することを特徴とする紙
    塗被用組成物。
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