JP3200204B2 - Iii−v族単結晶の製造方法 - Google Patents

Iii−v族単結晶の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高圧下で液体封止引上
法により、III−V族単結晶を引上げて製造する方法
に係わり、特に、GaP 単結晶の製造に好適する。
【0002】
【従来の技術】GaAs,GaPやInP などの高分解化合物半導
体結晶の製造方法の一例として、液体封止引上法(Liqui
d Encapsulation Czocholalski法以下LEC 法と記載す
る) が知られている。
【0003】このLEC 法は、図1に示すように、周囲に
加熱体1を配置したるつぼサセプタ(Sucepter)2内に原
料収納用るつぼ3を設置し、ここに製造する単結晶用原
料ならびに封止剤B 2 O 3 などを投入する。
【0004】このるつぼ3は容器4内に配置後、容器4
を加圧した不活性ガスで置換し、加熱源によりるつぼ3
を加熱して原料などを溶融する。次ぎに原料融液5を覆
う液体封止剤6を貫通して種結晶7を回転しながら接触
後、その周りに単結晶8を成長させる。
【0005】種結晶7は上軸シャフト9に、るつぼサセ
プタ2は下軸シャフト10に取付け、シャフト9、10
の回転により種結晶7ならびに原料融液5が回転するこ
とにより単結晶8が成長する。
【0006】なお、容器4には、熱シ−ルド11、高圧
容器4に設置する貫通部をシ−ルする高圧シ−ル12な
らびにるつぼ底部に温度測定用熱伝対13を設置する。
【0007】このような構造の設備により単結晶8を引
上げるが従来は、成長結晶の縦方向中央部から最後尾に
かけて多結晶が発生する。この多結晶の生じ易さは、引
上げの界面形状と関係があることが、最近の研究により
判明した。
【0008】ここで、界面形状の典型的な2例を示す
と、一つは”M字型”とでも呼ぶものであり、もう一つ
は、”U字型”である。
【0009】前者は、結晶成長時の固液界面を結晶径方
向から見ると図2に示すように中央部aが下凸となり、
その中心から外周部に向かうbはゆるやかに上向きやが
て下向きに転じてそのまま外周部まで達し、LEC 法によ
る結晶成長での典型的な育成界面の形状である。
【0010】これに対して”U字型”の界面形状が発生
する場合は、結晶成長時の固液界面を結晶の径方向から
見ると、図3に示すように中央部cが凸で、中心から外
周部に向かうにつれて常に緩やかに上向きのままであ
る。
【0011】このような”U字型”方式は、単結晶の直
胴部における多結晶化を制御することを目指して発展し
てきた。
【0012】一方、特開平2−120297号公報は、
封止剤B 2 O 3 にIII族またはV族元素の酸化物、珪
酸塩またはりん酸塩の一種または複数種を添加すること
により、封止剤B 2 O 3 を不透明の状態とすることを要
旨とする。
【0013】更に、特開平3−197386号公報で
は、原料融液と種結晶の界面を含む封止剤B 2 O 3 中に
リング状の反射板14(図4参照)を設置する方法が採
られている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】以上の説明の通り、”
M字型”の固液界面形状により形成する単結晶では、直
胴部後半部分において多結晶化し易いのに対して、”U
字型”の界面形状により形成する単結晶では、直胴部後
半部分おいて多結晶化し難いという知見が得られた。
【0015】また、GaP 単結晶を封止剤B 2 O 3 を利用
するLEC 法により引上げるに際しては、るつぼ3に所定
量の封止剤B 2 O 3 とGaP 多結晶を設置後容器内に配置
して加熱源の稼働により溶融する。しかし、通常カ−ボ
ン製加熱源を使用するので、GaP の融点付近に到達する
には多少の時間が必要になる。ここで、引上げに適する
温度にるつぼ3を調整後、引上工程に移行するが、容器
に付随する回転機構を稼働するのは勿論である。しか
し、このような封止剤B 2 O 3 だけを使用する際には、
その表面に被膜は形成されないことを付記する。
【0016】また、前記公開公報により開示された技術
では、界面形状がU字型化しており、単結晶長も伸びる
ので、LEC 法III−V族単結晶長尺化にとって極めて
重要な技術である。しかし、封止剤B 2 O 3 中にリング
状の反射板を設置するには、特別な設備が必要になり、
特別な設備でなく浮力により浮かべる時にはリング状の
反射板が時々刻々と微妙に変化する。
【0017】更に封止剤B 2 O 3 に不純物を添加して不
透明とするには、市販品でなく別に造ることが必要とな
り手間が要りコストアップの基になる。その外には、育
成する単結晶中に封止剤B 2 O 3 中不純物が混入する恐
れがある。
【0018】本発明は、このような事情により成された
もので、特に、封止剤B 2 O 3 中にリング状の反射板
と、不透明な封止剤B 2 O 3 と同じ状態を極めて容易な
方法で達成可能な新規なGaP 単結晶の製造方法を提供す
ることを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】B 2 O 3 を液体封止剤と
して用い、液体封止チョコラルスキ−法によりV族をP
とする単結晶を製造するに当たり,多結晶原料の溶融
後、るつぼ内のV族がPから成る溶融液の表面がV族がP
から成るIII−V族化合物の融点より最低 25 ℃以
上の温度で 30 分以上保持してから、溶融液温度を適温
に下げて、結晶引上げを行うことに本発明に係わるII
I−V族単結晶の製造方法の特徴がある。更にまた、前
記多結晶原料の溶融後、るつぼ内のV族がP から成るI
II−V族化合物の表面がその融点より最低 50 ℃以上
の温度で 60 分以上保持してから、溶融液温度を適温に
下げて、結晶引上げを行う点にも特徴がある。
【0020】
【作用】封止剤B 2 O 3 を用い、LEC 法によりGaP 単結
晶を製造するに当たり、GaP 単結晶の引上げに先行し
て、るつぼに充填したGaP 多結晶原料を溶融する工程を
設ける。GaP 多結晶原料の融点より十分に高い温度に長
時間保持すると封止剤B 2O 3 が不透明になりかつ表面
に透明度の悪い被膜が形成されるとの知見を得た。この
ような封止剤B 2 O 3 の不透明化と、封止剤B 2 O 3
不透明な被膜が形成される現象はGaAs単結晶の引上げに
は見られず、V族がP より成るIII−V族化合物固有
な現象と思われる。
【0021】引上げ工程中の封止剤B 2 O 3 が不透明な
状態であればある程、引上げ工程が終了して室温までの
冷却後に濃い黄褐色をしていることから、不透明化の原
因はP化合物の形成によるものと判断できる。封止剤B
2 O 3 表面に生ずる被膜は、反射板としての役割を果た
し、また、不透明化は、特開平2−120297に開示
した不透明なB 2 O 3 と同様な役割を果たすことが期待
できる。
【0022】次ぎに実際の引上工程においては、封止剤
B 2 O 3 表面に形成する被膜は、引上げが進行して結晶
の肩部が封止剤B 2 O 3 を抜ける時に付着被膜が一緒に
引上げられる(図4参照)。
【0023】しかし、封止剤B 2 O 3 表面に形成する被
膜は、引上工程中常に存在していない。即ち、封止剤B
2 O 3 表面上の被膜は、結晶の引上げが進行して、その
肩部が溶融封止剤B 2 O 3 表面から抜出る時に、その肩
部に付着した被膜が一緒に引上げられるので、後の引上
工程では、被膜なしの状態(第4図参照)で進行する。
この段階では、るつぼ内に単結晶が形成されているた
めに封止剤B 2 O 3 融液の深さが以前より大きくなって
おり(第4図参照)、固液界面形状の”U字型”効果は
結晶成長初期に較べると大きくなっている。従って溶融
封止剤B 2 O 3表面に不透明な被膜が存在しなくても引
上げる単結晶の固液界面形状は”U字型”化されている
ので多結晶化が抑制できる。
【0024】また、GaP 多結晶原料の溶融後、GaP の融
点より十分高い温度で長時間保持することにより、封止
剤B 2 O 3 表面に不透明な被膜を十分に形成させると共
に封止剤B 2 O 3 融液を一層不透明化することができ
る。これにより引上げ単結晶の固液界面の形状を”U字
型”化して、直胴部途中での多結晶化不良を大幅に減ら
すことができる。
【0025】
【実施例】本発明に係わる実施例を図面を参照して説明
する。本実施例は、(100) 方位のGaP 単結晶の製造であ
り、図1に示した単結晶引上装置を利用して行われる。
【0026】4″Φの石英るつぼ3に多結晶GaP 1kg
と、液体封止剤として機能する B2O 3 240grをチ
ャ−ジして、直胴部の平均直径が56mmΦとなるよう
にした。また引上工程は各条件(後述する)で3回ずつ
行った。引上げ中の温度制御は、るつぼ底部に取付けた
熱伝対13をモニタ−として利用し、加熱源1パワ−の
増減によるるつぼ底部の温度変化は、GaP 融液や B2 O
3 の温度変化にほぼ対応する。
【0027】実験は、以下の5条件により行った。
【0028】1.多結晶 GaPの溶融完了後、るつぼ底部
の温度を引上工程時の適温( GaP融液表面の中央部分
は、 GaP融点に近い値になっている)より25℃程度高
い温度に上げてから徐々に温度を下げながら引上げ用適
温を探って引上工程を行う。
【0029】2.多結晶 GaPの溶融完了後、るつぼ底部
の温度を引上用適温より25℃程度高い温度で30分間
保持後、徐々に温度を下げながら引上げ用適温を探って
引上工程を行う。
【0030】3.多結晶 GaPの溶融完了後、るつぼ底部
の温度を引上げの適温より50℃程度高い温度で30分
間保持後、徐々に温度を下げながら引上げ用適温を探っ
て引上工程を行う。
【0031】4.多結晶 GaPの溶融完了後、るつぼ底部
の温度を引上げの適温より50℃程度高い温度で60分
間保持後、徐々に温度を下げながら引上げ用適温を探っ
て引上工程を行う。
【0032】5.多結晶 GaPの溶融完了後、るつぼ底部
の温度を引上げの適温より75℃程度高い温度で60分
間保持後、徐々に温度を下げながら引上げ用適温を探っ
て引上工程を行う。なお封止剤 B2 O 3 をチャ−ジする
のは勿論である。
【0033】上記条件の中1は従来例であり、2〜5は
多結晶 GaPの溶融完了後高温長時間保持プロセスが入っ
ており、2〜5と進むにつれてより高温でより長時間の
工程になる。各工程の高温・長時間保持後の封止剤 B2
O 3 には、表面に不透明な被膜がまた B2 O 3 融液に濁
り生じていることを確認しかつ、番号が増えるに従って
その程度が増す事実が確認できた。図5には、液状封止
剤 B2 O 3 6の表面に不透明な被膜15(図に点線で表
示)が形成した状態を示しており、また引上げる単結晶
8の肩が液状封止剤6からでていない例である。これに
対して図6は逆に単結晶8の肩が液状封止剤6からでて
おり、不透明な被膜15は、単結晶8の肩に付着して液
状封止剤 B2 O 3 6の表面から除去されて図5のように
液状封止剤6表面に形成されない。次ぎに結果を明らか
にする。先ず単結晶の固液界面について述べると、形成
するM字型の程度を表す量を導入しておく。固液界面
は、図5に示すように基本型としてM字型をしており、
これは固液界面形状が中心から外周方向即ち径方向に見
るとゆるやかに上向きの状態が続いてから下向きに反転
する。
【0034】この反転部と結晶外周部との距離を、M字
型の程度を表す量としてM型度と名付ける。図7には、
前記条件で引上げた結晶M型度を縦軸に、固化率を横軸
に採り両者の関係を各条件毎に示した。結晶M型度の程
度は、条件1>条件2>条件3>条件4>条件5となる
ことが明らかにされている。従って多結晶原料溶融後の
高温・長時間保持のプロセスは、高温であればある程ま
た長時間であればある程固液界面形状の結晶M型度を抑
制して”U字型”に近ずける効果がある。
【0035】次ぎに各条件で引上げた単結晶のシングル
率を図8に示す。この数値は、各条件で3回ずつ行った
値の平均値をプロットしており、シングル率は条件1>
条件2>条件3>条件4>条件5となる。即ち、結晶M
型度の減少と共にシングル率が向上し、条件4、5では
夫々3本の結晶すべてが全部単結晶であった。
【0036】各条件の各3回のシングル率を表1にまと
めて記載する。
【0037】
【表1】 以上のように多結晶原料 GaP溶融後の融液の高温・長時
間保持により固液界面形状の結晶M字型を緩和すること
ができる上に、容易にシングル率を向上することが判明
した。本実施例は、 GaPについて説明したが、V族がP
であるIII−V族化合物例えばInP に対しても、本発
明の製造方法は十分有効であると思われる。
【0038】
【発明の効果】本発明は、 B2 O 3 を液体封止剤として
用いて、多結晶原料の溶融後に原料溶融液を融点より高
温で一定時間保持するだけで、LEC 法によるV族がPで
あるIII−V族化合物単結晶のシングル率を、製造装
置の改良なしで大幅に上げることができる。このように
本発明は、従来の引上げプロセスをわずかに改良するだ
けでシングル率を、大幅に上げることができその効果は
絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に適用する単結晶引上装置の概略を
示す断面図である。
【図2】LEC 法単結晶の典型的な固液界面形状を示す図
である。
【図3】LEC 法単結晶の典型的な他の固液界面形状を示
す図である。
【図4】B2 O 3 に反射板を設置した図である。
【図5】引上げた単結晶の肩が B2 O 3 外にでていない
時に不透明被膜が形成する状態を示す図である。
【図6】引上げた単結晶の肩が B2 O 3 外にでている時
に不透明被膜が形成する状態を示す図である。
【図7】M型度と固化率の関係を示す図である。
【図8】条件におけるシングル率を示す図である。
【符号の説明】
1:加熱源、 2、るつぼサセプタ、 3、るつぼ、 4:容器、 5:溶融液、 6:封止剤 B2 O 3 、 7:種結晶、 8:単結晶、 9:上軸シャフト、 10:下軸シャフト、 11:熱シ−ルド、 12:シ−ル、 13:熱伝対、 14:反射板、 15:不透明膜。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 B 2 O 3 を液体封止剤として用い、液体
    封止チョコラルスキ−法によりV族をP とする単結晶を
    製造するに当たり,多結晶原料の溶融後、るつぼ内のV
    族がP から成る溶融液の表面がV族がP から成るIII
    −V族化合物の融点より最低 25 ℃以上の温度で 30 分
    以上保持してから、溶融液温度を適温に下げて、結晶引
    上げを行うことを特徴とするIII−V族単結晶の製造
    方法
  2. 【請求項2】 前記多結晶原料の溶融後、るつぼ内のV
    族がP から成るIII−V族化合物融液の表面がその融
    点より最低 50 ℃以上の温度で 60 分以上保持してか
    ら、溶融液温度を適温に下げて、結晶引上げを行うこと
    を特徴とするIII−V族単結晶の製造方法
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