JP3199426U - 装飾印材 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝統工芸を利用した天然的、自然的な装飾感に富み、押印しやすい新たな装飾印材を提供する。【解決手段】印材10の周面11に形成されている、押印の際に字頭の目印となる指型面13に、貝殻を用いた螺鈿14や蒔絵15の装飾部を膨出する態様で形成する。印材10は高級感や自然的な装飾感に富んだ個性を備えた装飾印材1となり、利用者の選択性の幅が広がる。また、他の印材間での識別が容易である。さらに、膨出した指型面13の装飾部が押印するときの明確な目印となるので、印面12の字頭方向を確認し易い。また、指型面13は平坦面なので、弾力性に乏しい貝殻を接着し易い。また、指型面13はもともと印材10の構成要素であるので、装飾部形成のための平坦面を周面11に新たに設ける必要がなく、装飾印材1の製造の手間を省くことができる。【選択図】図1
Description
本考案は、装飾印材に関し、特に、例えば伝統工芸の螺鈿や伏せ彩色を利用した貝片装飾を形成して高級感や個性を付加し、かつ、この装飾部分が、押印するときの字頭の目印となるようにした装飾印材に関する。
従来、印刷や打抜き加工などで模様を施した化粧シールを表面に貼付し、その表面を透明塗料でコーティングした装飾性の高い印材が提案されている(特許文献1)。
また、図3は、別の従来の装飾印材を示す説明図であり、20は装飾印材、21は印材、22は印材21の周面、23は名字等を刻印する印面、24は周面22に施された蒔絵をそれぞれ示している。
装飾印材20は、印材21の周面22に蒔絵24の模様を施したものである。蒔絵24の模様は、印材21の周面22に漆やエポキシ系の接着剤を用いて模様を描き、それが乾燥する前に金、銀等の蒔絵粉を蒔いて仕上げている。
このように、従来の装飾印材は、化粧シールを貼付して装飾して目立たせたり、また、伝統工芸の蒔絵の手法を用いたものであっても、あくまで作成者が模様を描くといったいわば人為的な作業を前提とした上で、当該描画部分を蒔絵粉により目立たせている。そのため、天然的・自然的な装飾感の点で不満が残りやすいという問題点があった。
また、装飾部分を押印するときの字頭の目印とした場合に、この部分と印材の表面部分とは略同一面であるため、利用者が指で触っただけでは判断しづらく、装飾部分を目視して確認する必要であった。
そこで、本考案では、押印の際の利便性を確保しつつ、貝殻自体の模様を用いる螺鈿や伏せ彩色などの伝統工芸を利用した新たな装飾印材を提供し、自然な装飾感に富んだ印材の選択性の幅を広げることを目的とする。
また、螺鈿などの伝統工芸を身近な印材に応用することによって、馴染みが薄くなりつつある伝統工芸の利用分野を拡大してその維持・発展を図ることを目的とする。
本考案は、この課題を次のようにして解決する。
(1)文字や記号、図柄などの押印内容を刻印するための印面(例えば後述の印面12)、および当該印面以外の表面部分(例えば後述の周面11)を有する柱状の印材(例えば後述の印材10)において、
前記表面部分に、貝片を用いた装飾部(例えば後述の螺鈿14)を膨出する態様で形成する。
(2)上記(1)において、前記貝片の裏面部分に、彩色または箔貼りを施す。
(3)上記(1)または(2)において、前記装飾部を、前記表面部分の平坦面(例えば後述の指型面13)に形成する。
(4)上記(3)において、前記平坦面として、押印するときの目印となる指型面(例えば後述の指型面13)を用いる。
(5)上記(1)乃至(4)において、前記装飾部に蒔絵(例えば後述の蒔絵15)を施す。
(1)文字や記号、図柄などの押印内容を刻印するための印面(例えば後述の印面12)、および当該印面以外の表面部分(例えば後述の周面11)を有する柱状の印材(例えば後述の印材10)において、
前記表面部分に、貝片を用いた装飾部(例えば後述の螺鈿14)を膨出する態様で形成する。
(2)上記(1)において、前記貝片の裏面部分に、彩色または箔貼りを施す。
(3)上記(1)または(2)において、前記装飾部を、前記表面部分の平坦面(例えば後述の指型面13)に形成する。
(4)上記(3)において、前記平坦面として、押印するときの目印となる指型面(例えば後述の指型面13)を用いる。
(5)上記(1)乃至(4)において、前記装飾部に蒔絵(例えば後述の蒔絵15)を施す。
本考案によれば、上記(1)および上記(2)のように、種々の貝片からなる膨出態様の装飾部を例えば螺鈿や青貝,伏せ彩色,箔貼りなどの伝統工芸技法を利用して設けた、自然感あふれる新たな印材を提供する。
これにより、利用者が字頭の判断を簡単にできるようにし、また装飾印材の選択性の幅を広げ、他の印材との識別容易化も図っている。
さらに、例えば螺鈿や青貝,伏せ彩色,箔貼りといった伝統的な技法を身近な印材に応用することによって、伝統工芸の利用分野を広げるとともに、伝統工芸自体の普及にも貢献できる。
また、上記(3)のように、装飾部は、印材の表面部分の平坦面に形成するようにしたので、弾力性に乏しい貝片を例えば接着して装飾を形成することができる。
さらに、貝片をこの平坦部分に埋めるかたちにして、装飾部の周辺と印材の表面部分とが略同一面とすれば、使用中や保管中にこの装飾部が引っ掛かるといったことがなく、貝片が剥がれにくい。
また、上記(4)のように、貝片を用いた装飾部を指型面に形成したので、印材の表面部分を新たに加工して平坦面を形成する必要がなく、製造の手間を省くことができる。
さらに、装飾部が押印の目印となるため、利用者の目視による確認に加え、指で触ることで印面の字頭の方向を確認することができる。
さらに、上記(5)のように、印材の表面部分には貝片を用いた装飾部に加えて蒔絵を施したので、より装飾感あふれる個性的な印材とすることができる。
図1および図2を用いて本考案を実施するための形態を説明する。
図1は螺鈿などで模様を形成した装飾印材を示す説明図であり、図2はその製造手順を示す説明図である。
図1は螺鈿などで模様を形成した装飾印材を示す説明図であり、図2はその製造手順を示す説明図である。
図1において、1は装飾印材、10は円柱形の印材、11は印材10の周面、12は名字等を刻印する印面、13は印面12の名字等を押印するときの目印となる指型面、14は指型面13に形成された螺鈿、15は螺鈿14の周囲に形成された蒔絵、をそれぞれ示している。
図1に示すように、装飾印材1は、印材10の周面11に形成されている指型面13を螺鈿14,伏せ彩色,金箔貼りや蒔絵15などの各種手法により装飾したものである。
ここで、螺鈿14とは、貝殻の光沢ある部分を板状に薄く摺りおろし、種々の形に切ってこれを器等に接着して装飾としたもの、あるいはその技法である。古来より伝わる伝統工芸の一つであり、美麗で天然の貝殻を用いているため個性的で、また高級感がある。
また、伏せ彩色は、薄く摺りおろした貝片の裏面に膠や漆で色付けしてその色粉(胡粉、朱粉など)を貝片表面側に透かして見せる技法である。貝片の裏面に金箔を貼っても同様に透けて見える。もっともこの色粉や金箔の透けて見える程度は貝片表面をみるときの角度によって違ってくる。
図示の螺鈿14は、指型面13の3ヶ所に貝片を接着してこの個々の貝片自体の美しさを利用した装飾部である。
螺鈿14および蒔絵15からなる装飾部は、その中央部が周面11より膨出し、周辺部は周面11と段差のない略同一面となっている。
装飾部の膨出高さは、装飾部の大きさ・形状や印材10の直径などにより、周面11より約0.5mm〜3mmの範囲で設定される。
なお、この装飾部は、周面11より膨出していればよく、周面11との間に、段差や面の不連続があってもよい。
一方、周面11の任意の部分に複数(多数)の貝片を接着させて、この貝片全体で所定の装飾模様を形成するようにしてもよい。
このような螺鈿14や伏せ彩色の装飾部を設けた装飾印材1は、高級感や天然的・自然的な装飾感に富んだ個性を備えたものであり、他の印材と識別し易い。
指型面13は、もともと印材10の周面11の一部を削った平坦面であり、印面12の刻印文字の字頭方向を示している。これにより、印材10を持ったときに指型面13によって字頭方向が判り、印面12の文字を正順で押印することができる。
装飾印材1では、指型面13のその螺鈿14や蒔絵15の装飾部が押印の目印となるため、字頭の方向が一目瞭然で判り、また、この装飾部が膨出する態様となっているので、利用者が触ることだけでも字頭の方向を確認することができる。
図2は、印材10の指型面13に螺鈿14や伏せ彩色,蒔絵15を施して装飾印材1を製造するときの手順を示しており、その内容は次のようになっている。
(s01)鮑貝,メキシコ貝,夜光貝,白蝶貝,黒蝶貝などの貝殻の内面を砥石で約0.1mm〜3mmの厚さに削り、貝片を作成する。
(s02)この貝片の裏面に膠または漆で色付けする。
(s03)この色付け貝片を指型面13の装飾対象部分の大きさに合わせて切断する。
(s04)指型面13に刷毛で漆を塗布する。
(s05)漆塗布面に(s02)の切断後の貝片を接着する。
(s06)この接着貝片およびその周辺(指型面13の部分)に刷毛で漆を塗布する。
(s07)漆が乾燥した後、この塗布部分を木炭で磨いて接着貝片を研ぎ出す。
(s08)接着貝片およびその周辺(指型面13の部分)に綿で漆(特に粒子が細かい生漆)を塗布する。
(s09)漆が乾燥した後、この塗布部分をさらに研磨剤で磨いて接着貝片のこまかい傷を目立たなくする。
(s10)この磨き加工後の接着貝片の輪郭部分に筆で漆を付ける。
(s11)漆が乾く前に、この漆付け部分に金粉を蒔く。
(s12)この金粉と接着貝片の上に綿で漆を数回塗布する。
(s13)漆が乾燥した後、この塗布部分を研磨剤で磨いて光沢をだす。
(s01)鮑貝,メキシコ貝,夜光貝,白蝶貝,黒蝶貝などの貝殻の内面を砥石で約0.1mm〜3mmの厚さに削り、貝片を作成する。
(s02)この貝片の裏面に膠または漆で色付けする。
(s03)この色付け貝片を指型面13の装飾対象部分の大きさに合わせて切断する。
(s04)指型面13に刷毛で漆を塗布する。
(s05)漆塗布面に(s02)の切断後の貝片を接着する。
(s06)この接着貝片およびその周辺(指型面13の部分)に刷毛で漆を塗布する。
(s07)漆が乾燥した後、この塗布部分を木炭で磨いて接着貝片を研ぎ出す。
(s08)接着貝片およびその周辺(指型面13の部分)に綿で漆(特に粒子が細かい生漆)を塗布する。
(s09)漆が乾燥した後、この塗布部分をさらに研磨剤で磨いて接着貝片のこまかい傷を目立たなくする。
(s10)この磨き加工後の接着貝片の輪郭部分に筆で漆を付ける。
(s11)漆が乾く前に、この漆付け部分に金粉を蒔く。
(s12)この金粉と接着貝片の上に綿で漆を数回塗布する。
(s13)漆が乾燥した後、この塗布部分を研磨剤で磨いて光沢をだす。
指型面13は前述のように平坦面なので、弾力性に乏しい貝片が割れることなく接着し、螺鈿14を作成し易い。また、この螺鈿14が窪地状の指型面13を埋めるようなかたちとなるので、この部分とそれ以外の周面11との間の引っ掛かりが少なく、装飾印材1を使用中や保管中に螺鈿14が剥がれにくい。
また、上述の製造手順(s07)において、粒子の細かい生漆を接着貝片の表面に塗布することにより、この粒子が貝片の表面の細かい傷に入り込む。
なお、上述の貝の他、鸚鵡貝,青貝等種々の貝殻を用いてもよく、青貝,貝摺などの方法で模様を作成してもよい。
また、印材10には、一般的に用いられる黒水牛,白水牛などの角、象などの牙、柘植などの木材の他、石,水晶,金属などを用いてもよい。さらに、印材10の形状は円柱形に限らず楕円柱状や四角柱状,また三角柱状であってもよい。
また、印材10の指型面13以外の周面11に螺鈿や伏せ彩色,蒔絵の装飾を設けてもよく、その場合には、周面11の装飾を施す部分を削って平坦面を作成し、そこに前述の方法で貝片を接着する。
さらに、貝片をエポキシ系の接着剤や市販の瞬間接着剤を用いて接着してもよい。
また、蒔絵に使用する蒔絵粉には、銀粉,白金粉,青金粉などの金属粉や色粉などを用いることができる。また、金箔,銀箔などの箔を接着してもよい。
さらに、螺鈿を作成した上に重ねて蒔絵を施してもよい。
1:装飾印材
10:印材
11:周面
12:印面
13:指型面
14:螺鈿
15:蒔絵
20:装飾印材
21:印材
22:周面
23:印面
24:蒔絵
10:印材
11:周面
12:印面
13:指型面
14:螺鈿
15:蒔絵
20:装飾印材
21:印材
22:周面
23:印面
24:蒔絵
Claims (5)
- 文字や記号、図柄などの押印内容を刻印するための印面、および当該印面以外の表面部分を有する柱状の印材において、
前記表面部分に、貝片からなる装飾部を膨出する態様で形成したことを特徴とする装飾印材。 - 前記貝片の裏面部分に、彩色または箔貼りを施したことを特徴とする請求項1記載の装飾印材。
- 前記装飾部を、前記表面部分の平坦面に形成したことを特徴とする請求項1または2記載の装飾印材。
- 前記平坦面として、押印するときの目印となる指型面を用いたことを特徴とする請求項3記載の装飾印材。
- 前記装飾部に蒔絵を施したことを特徴とする請求項1乃至4記載の装飾印材。
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