JP3199092U - 食用貝養殖器、及び食用貝養殖装置 - Google Patents

食用貝養殖器、及び食用貝養殖装置 Download PDF

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Abstract

【課題】水中に沈めて使用したときに、食用貝以外の水棲生物が生育部に着床することを防止し、生育部において食用貝を優先的に生育させることのできる構造を備えた食用貝養殖器及びこれを用いた食用貝養殖装置を提供する。【解決手段】食用貝が生育する生育部64を有する内部空間Aを形成する合成樹脂シート13を備え、合成樹脂シート13は、それぞれの平面積が1mm2以上60mm2以下である複数の開口部を有し、全ての開口部の開口平面積の和が全ての開口部を含む合成樹脂シート13全体の平面積に対して20%以上80%以下であることを特徴とする食用貝養殖器、及び複数の食用貝養殖器を縦に連ねてなる食用貝養殖装置。【選択図】図1

Description

本考案は食用貝養殖器及び食用貝養殖装置に関し、更に詳しくは、水中に沈めて使用したときに、食用貝以外の水棲生物が生育部に着床することを防止し、生育部において食用貝を優先的に生育させることができる構造を備えた食用貝養殖器、及び食用貝養殖装置に関する。
従来、アサリに代表される食用貝を養殖することが広く行われている。食用貝の養殖では、図5に示されるように、垂下式養殖法という方法を用いることが一般的である。垂下式養殖法の具体的な方法の一例について、非特許文献1には、「天然採苗したアサリ稚貝を平成22年から垂下式養殖に移すことにした(図5)。コンテナの中にはケアシェルと砂利を混ぜた基質と一緒にアサリの稚貝を入れ、食害防止の網フタを付けて筏から海中に吊り下げた」(非特許文献1、第91頁、第6〜12行)と開示されている。
水中、特に海水中には、フジツボ、ムラサキガイ、貝類、海草及び藻類等に代表される食用貝以外の水棲生物(以下、単に「水棲生物」と称することがある。)の幼生、卵又は種子等(以下、「幼生等」と称することがある。)が存在している。図5に示される垂下式養殖法において、海水中にコンテナ51を浸漬させておくと、上述した水棲生物の幼生等が、コンテナ51の側面や網蓋54に設けられた海水導通孔52を通ってコンテナ51の内部に侵入し、砂等が堆積された生育部53に付着する。生育部53に水棲生物の幼生等が大量に付着すると、食用貝を収穫する際に、食用貝とそれ以外の水棲生物とを区別しながら収穫しなければならない。従来は、食用貝と水棲生物とを手で分別しながら収穫作業を行っており、収穫作業が煩雑であり、収穫作業に時間が掛かるという問題がある。
また、コンテナの外面に水棲生物が大量に付着すると、付着した水棲生物の重みによって、コンテナの吊下げに用いられているロープ等の吊下部材が切れたり、コンテナ自体が重みに耐えきれず破損したりすることがある。
水棲生物がコンテナの外面に付着することによる上記問題を解決するために、従来は、定期的にコンテナを清掃する作業、及び稚貝の付着した生育部を新しいコンテナに移し替える作業などから採択された適宜の作業が行われている。例えば、非特許文献2には、「飼育コンテナにはポリプロピレン製容器(内寸50×32×深さ21cm)を使用し、容器の底にはアンスラサイト(粒径2〜3mm)を厚さ約10cmに敷き、稚貝を収容した後、容器上面に網蓋(目合2cm)をして、水深5〜6m層で垂下飼育した。フジツボ類、コケムシ類、ホヤ類等の付着生物が多い6〜10月までは1ヶ月毎に、付着生物が少ない11〜5月は2ヶ月毎に、飼育コンテナと網蓋をそれぞれ新しいものに交換し、網の目詰まりによってコンテナ内の海水交換率が低下しないよう配慮した」と開示されている(非特許文献2、第49頁、「材料と方法」欄における第7〜16行)。
上記作業を行うには、水中に垂下してあるコンテナ及び網蓋を一度地上に引き上げた後に、コンテナを清掃したり、砂利部を移し替えたりする必要がある。これらの作業は煩雑であり、特に、大量に吊下げたコンテナ群について一度に作業を行う場合には、多大な作業時間が必要となる。
浅尾 大輔、"カキ殻を有効活用した新しいアサリ養殖−種とり(天然採苗)から垂下式養殖まで−"、[online]、88頁〜95頁、三重県、[平成26年7月14日検索]、インターネット<URL:http://www.ninaite-genkinahama.com/contents/h25/toba.pdf> 藤原正夢、外4名、"垂下コンテナ飼育におけるアサリの成長"、[online]、京都府立海洋センター研究報告 第30号,2008 第49頁〜第53頁、[平成26年7月14日検索]、インターネット<URL:http://www.pref.kyoto.jp/kaiyo/documents/1211436367989.pdf>
本考案が解決しようとする課題は、水中に沈めて使用したときに、食用貝以外の水棲生物が生育部に着床することを防止し、生育部において食用貝を優先的に生育させることのできる構造を備えた食用貝養殖器、及び食用貝養殖装置を提供することである。
前記課題を解決するための本考案の手段は、
(1)食用貝が生育する生育部を有する内部空間を形成する合成樹脂シートを備え、
前記合成樹脂シートは、それぞれの平面積が1mm以上60mm以下である複数の開口部を有し、全ての開口部の開口平面積の和が全ての開口部を含む合成樹脂シート全体の平面積に対して20%以上80%以下であることを特徴とする食用貝養殖器であり、
(2)前記合成樹脂シートは、底面に補強用樹脂部材が配設されてなることを特徴とする前記(1)に記載の食用貝養殖器であり、
(3)前記生育部は、合成樹脂シートで形成される内部空間内に配置された、無機物粉体、繊維製シート状物、及び貝殻よりなる群から選択される少なくとも一種である前記請求項1又は2に記載の食用貝養殖器であり、
(4)前記生育部は、前記合成樹脂シートの内面である前記(1)又は(2)に記載の食用貝養殖器であり、
(5)前記生育部は、ホタテの貝殻である前記(1)又は(2)に記載の食用貝養殖器であり、
(6)2個以上10個以下の前記(1)から(5)までのいずれか一項に記載の食用貝養殖器が、上下方向に連ねて設けられてなることを特徴とする食用貝養殖装置、
である。
本考案における合成樹脂シートは上述のような開口部を有しており、水中に存在する食用貝以外の水棲生物の幼生等は合成樹脂シートの開口部を通過することがない。よって、本考案に係る食用貝養殖器を水中に沈めている場合に、この合成樹脂シートは、合成樹脂シートの外側に存在する水棲生物が合成樹脂シートの内部空間に設けられた生育部に侵入することを困難にする。
以上より、本考案によると、水中に沈めて使用したときに、食用貝以外の水棲生物が生育部に着床することを困難にし、食用貝を生育部において優先的に生育させることのできる構造を備えた食用貝養殖器を提供することができる。
また、本考案によると、合成樹脂シートにより形成される内部空間内に配置された生育部が、無機物粉体及び/又は繊維製シート状物で形成されていると、水棲生物を混在させずにアサリを効率良く製造することのできる食用貝養殖器及び食用貝養殖装置を提供することができる。
本考案によると、生育部がホタテの貝殻であると、水棲生物を混在させずにカキを効率良く製造することのできる食用貝養殖器及び食用貝養殖装置を提供することができる。
図1は、本考案に係る食用貝養殖器の一例を示し、図1(a)は合成樹脂シートの内部空間を透視した模式図であり、図1(b)は縦断面図であり、図1(c)は底面図である。 図2は、本考案に係る食用貝養殖装置の一例及び食用貝養殖装置を構成する食用貝養殖器の一例を示し、図2(a)は食用貝養殖装置における合成樹脂シートの内部空間を透視した模式図であり、図2(b)は図2(a)における食用貝養殖装置を構成する食用貝養殖器の縦断面図であり、図2(c)は食用貝養殖器の底面図である。 図3は、本考案に係る食用貝養殖器の他の一例を示し、図3(a)は合成樹脂シートの内部空間を透視した模式図であり、図3(b)は食用貝養殖器の一部を示す断面図である。 図4は、本考案に用いられる合成樹脂シートの拡大図を示し、図4(a)は平織状の合成樹脂シートの拡大図であり、図4(b)は綾織状の合成樹脂シートの拡大図であり、図4(c)は朱子織状の合成樹脂シートの拡大図である。 図5は、従来、食用貝の養殖に用いられている垂下式養殖法の一例を示す模式図である。 図6は、合成樹脂シートの一例を示す、斜視図である。 図7は、図6における合成樹脂シートが水中に浸漬される例を示す、説明図である。 図8は、図7におけるホタテの貝殻の拡大図である。
本考案における食用貝養殖器は、生育部と、合成樹脂シートとを備える。
合成樹脂シートの形状は、生育部を有する内部空間を形成することができる限りにおいて、特に制限されない。合成樹脂シートの形状として、例えば、図1(a)、(b)に示されるような略円柱形状、又は図2(a)、(b)に示されるような略円柱形状部の上部に円錐形状部が形成されてなる形状、言い換えると略円柱形状の天井面28が円錐の外側面によって形成されてなる形状などが挙げられる。合成樹脂シートのその他の形状として、例えば、略多角柱形状、略多角錐台形状、略円錐台形状、略多角錐形状、略円錐形状、及び略球形状等が挙げられる。また、合成樹脂シートは略同一の厚みを有するので、合成樹脂シートの内側に形成される内部空間の形状は、合成樹脂シートの外部全体形状と略同一に形成される。
合成樹脂シートを形成する合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテン等のポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、及び塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体樹脂等の塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂及びポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、並びにポリアミド樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィンが合成樹脂シートを形成する合成樹脂として好適である。なお、生分解性の樹脂、水溶性の樹脂は、本考案における合成樹脂シートは海水中に浸漬されて使用されるので、好ましくない。
前記合成樹脂シートの底面には、補強用樹脂部材が配設されてなることが好ましい。言い換えると、合成樹脂シートの底面の少なくとも一部には、補強用樹脂部材が含有されることが好ましい。合成樹脂シートの底面に補強用樹脂部材が配設されてなると、合成樹脂シートの底面の形状が変化しにくく、合成樹脂シートの内部空間の形状を安定的に保持させることができる。
補強用樹脂部材を形成する樹脂の種類は、合成樹脂シートよりも強度に優れ、かつ合成樹脂シートの形状を安定化させることができる限りにおいて特に制限されないが、繊維強化プラスチックが補強用樹脂の好適例である。繊維強化プラスチックとして、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(「GFRP」と称されることがある。)、カーボン繊維強化プラスチック(「CFRP」と称されることがある。)、アラミド繊維強化プラスチック(「AFRP」と称されることがある。)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(「DFRP」と称されることがある。)、ザイロン繊維強化プラスチック(「ZFRP」と称されることがある。)、ボロン繊維強化プラスチック(「BFRP」と称されることがある。)等が挙げられる。
補強用樹脂部材が合成樹脂シートの底面において配置される態様は、特に制限されないが、合成樹脂シートの底面形状が円形である例においては、補強用樹脂部材が円の中心を通る直径線上に配設されてなることが好ましい。さらに具体的には、図1(c)及び図2(c)に示されるように、円形状の底面の中心を通り、かつ直角に交わる2本の直径線上に補強用樹脂部材が設けられると、合成樹脂シートの底面形状が特に安定に保持されるので好ましい。また、図1に示されるように、合成樹脂シート13が柱体を形成する例においては、合成樹脂シートの底面19だけでなく、合成樹脂シートの天井面18にも補強用樹脂部材を配設することにより、合成樹脂シート13の形状をより一層安定に保持させることができる。
本考案に係る食用貝養殖器は、吊下部材を備えていてもよい。吊下部材は、その一端が食用貝養殖器と接続され、その他端が地上に設けられる係留杭等に繋がれることによって、食用貝養殖器を水中に吊下げる機能を有する。例えば、図1に示される例では、合成樹脂シート13の天井面18における円形状の中心近傍、及び天井面18の縁辺に沿って吊下部材15が設けられる。
また、図2に示される例では、合成樹脂シート23Aの天井面28を形成する円錐形状部の頂点近傍において吊下部材25Aが設けられる。吊下部材は食用貝養殖器を水中に沈めている間に切れない程度の強度を有する部材であればよい。また、操作者が係留杭等に結びつけやすいように、吊下部材は紐状、索状、細線状、又はロープ状などの長尺部材であることが好ましい。例えば、吊下部材の好適例として、ロープ、針金等が挙げられる。また、吊下部材の長さは特に制限されないが、通常、1m以上5m以下程度の長さであればよい。尚、図1(b)に示されるように、吊下部材15は、樹脂製の取付部材16等を介して、合成樹脂シート13の外面に取り付けられていてもよい。吊下部材は、合成樹脂シートにおける1つの取付箇所に1本ずつ設けられていてもよく、1つの取付箇所に複数本ずつ設けられていてもよい。
図2に示される食用貝養殖装置22は、上方から順に3個の食用貝養殖器21A、21B、及び21Cが上下方向に重ねて設けられてなる。食用貝養殖装置22においては、食用貝養殖器21Aにおける合成樹脂シート23Aの底面と食用貝養殖器21Bにおける合成樹脂シート23Bの天井面の頂点近傍とが吊下部材25Bによって繋げられ、合成樹脂シート23Bの底面と食用貝養殖器23Cにおける合成樹脂シート23Cの天井面の頂点近傍とが吊下部材25Cによって繋げられる。また、合成樹脂シート23Aの天井面の頂点近傍から延びる吊下部材25Aが、地上に設けられる係留杭等に繋がれることにより、食用貝養殖器21A、21B、及び21Cが水中に吊下げられることとなる。吊下部材25A、25B、及び25Cは、それぞれ別体として設けられてもよいし、一本の吊下部材が用いられてもよい。
また、図2における食用貝養殖器21A〜21Cは、それぞれ、円柱形状部と、円柱形状部の上面と面同一となる底面を有する円錐形状部とからなる。水中において食用貝養殖器21A〜21Cの形状を維持するために、合成樹脂シート23A〜23Cの底面には、補強用樹脂部材が配設されてなることが好ましく、図2(c)に示されるように、円形状の底面29の中心を通り、かつ直角に交わる2本の直径線上に位置する補強用樹脂部材71が設けられることが更に好ましい。さらに、合成樹脂シート23A〜23Cの天井面では、頂点近傍の一箇所のみに吊下部材25A〜25Cを設けることにより、合成樹脂シート23A〜23Cの天井面は頂点近傍を中心に上方へと引っ張られて、天井面が略円錐形状を形成する。さらに、円錐形状部の外側面、言い換えると天井面28に補強用樹脂部材を配設することによって、合成樹脂シート23A〜23Cの形状をより一層安定化することもできる。
生育部は、食用貝が定着し、生育することのできる部位であり、構成材料、形状、大きさ等は特に制限されない。生育部を形成する材料として、例えば、砂、活性炭、及び貝殻粉末よりなる群から選択される少なくとも一種(本明細書中において、「砂等」と称することがある。)を含む無機粉体、不織布、織物、編物等の繊維製シート状体、内部空間を形成する合成樹脂シート、並びに貝殻等の塊状体等が挙げられる。
これらの材料は一種のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。例えば、図1(b)に示される生育部64は、略円柱形状である合成樹脂シート13の底部に敷かれた不織布63と、不織布63の上に堆積された砂等62とによって形成される。図2(b)で示される例では、合成樹脂シート23Aの内側底面、つまり内部空間Aにおける床面を形成する合成樹脂シート23Aが、生育部64として機能する。図2(b)における食用貝養殖器21Aを水中に沈めると、食用貝が生育部74に定着、生育する。尚、図1に示される例においては、不織布63の上面に堆積された砂等62が合成樹脂シート13の側面における開口部から外部へと漏れ出さないように、合成樹脂シート13の下方側面部に、合成樹脂シート13よりも目の細かいメッシュ等を配置しておいてもよい。
また、生育部の形状としては、平面状、板状、シート状、塊状等が挙げられる。さらに、生育部の平面形状も特に制限されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。図1に示される例では、略円柱形状である合成樹脂シート13の底部において、不織布63及び不織布63の上に厚さが略一様となるように敷き詰められた砂等62によって生育部64が形成されるので、生育部64は平面形状が円形で一定の厚さを有する板状に形成される。また、図2に示される例では、内部空間Aを形成する合成樹脂シート23Aの内側底面が、円形の面状に形成された生育部64である。
生育部は、上記砂等を含む無機粉体を有することが好ましい。生育部に砂等の無機粉体が含有されていると、食用貝の稚貝が生育部に着床かつ定着しやすく、生育部に定着した食用貝が成長しやすいので、効率よく食用貝を養殖させることができる。例えば、砂を含む生育部はアサリの養殖に適しており、活性炭を含む生育部はミルガイの生育に適している。
また、砂等は、不織布の上に設けられてなることが好ましい。不織布の上に砂等を敷くことにより、合成樹脂シートの底面における開口部を通って砂等が外部に漏れ出ることを防止することができる。
貝殻粉末としては、採取された貝殻を粒径が砂と同程度になるまで細かく粉砕することによって得られる粉体が用いられる。食用貝の養殖に適する限りにおいて、用いられる貝殻の種類は特に制限されないが、好適例としてホタテの貝殻粉末が挙げられる。ホタテの貝殻粉末を含む生育部は、特にカキ類の養殖に適している。
前記砂等を含む無機粉体の粒径は、特に制限されないが、例えば平均粒径が0.05mm以上2mm以下程度であればよい。前記粒径が前記値の範囲内であると、食用貝が生育しやすく、かつ砂等が合成樹脂シートの開口部を通って外部へ漏れ出すことを防止することができる。
食用貝養殖装置は、前記食用貝養殖器を、上下方向に連ねて配列することによって形成され、2個以上10個以下の食用貝養殖器を上下に連ねて配列することが好ましい。食用貝養殖器同士は、ロープ等の吊下部材によって繋がれていればよい。例えば、図2に示される例においては、3個の食用貝養殖器21A〜21Cによって、食用貝養殖装置22を形成する。2個以上の食用貝養殖器を有する食用貝養殖装置は、それぞれの食用貝養殖器における生育部に異なった種類の食用貝を生育させることにより、一度に複数の異なる種類の食用貝を養殖することができる。また、2個以上の食用貝養殖器を有する食用貝養殖装置は、それぞれの食用貝養殖器における生育部に同じ種類の食用貝を生育させることにより、一度に多量の同種類の食用貝を養殖することができる。また、食用貝養殖器の数を10個以下とすることによって、食用貝養殖装置全体が大型化しすぎることを防止することができる。
図1及び図2には図示していないが、合成樹脂シートで形成される内部空間の中に、無機物粉体、不織布などの繊維状シート状物、貝殻等を装入するには、合成樹脂シートの一部にファスナーを設けておき、ファスナーを開いた状態において、無機物粉体、不織布などの繊維状シート状物、貝殻等を出し入れすることのできる構造を採用するのがよい。
図2に示されるように、食用貝養殖装置に設けられる複数の食用貝養殖器においては、異なる食用貝養殖器に異なる種類の生育部を設けるようにしてもよいし、全ての食用貝養殖器に同じ種類の生育部を設けるようにしてもよい。
図3に示されるように、食用貝養殖器31は、上下方向に3個繋げて設けられた養殖かご32A、32B、及び32Cと、3個の養殖かご32A〜32Cを内部空間Aに収容する合成樹脂シート33とを有する。養殖かご32A〜32Cは、上面が開口する有底円筒形状を有し、側面がメッシュ状に形成される。養殖かご32A〜32Cには、上面開口を形成する縁辺部と、底面部とに取付部材36が設けられ、この取付部材に設けられたロープ等の吊下部材35A〜35Cにより、養殖かご32A〜32Cが直列に接続される。合成樹脂シート33は袋状に形成され、内部空間Aに養殖かご32A〜32Cを収容し、袋状体における入口部は縛り部材37によって固く縛られ、食用貝以外の水棲生物の幼生等が袋状体の入口部を介して、内部空間Aに侵入することが防止されている。縛り部材37には吊下部材35Dが接続され、吊下部材35Dが地上における係留杭等に繋がれることにより、食用貝養殖器31が水中に沈められる。
次に、食用貝養殖器31の使用方法の一例について説明する。まず、養殖かご32A〜32Cの内側に、食用貝を収容させる。食用貝を収容した養殖かご32A〜32Cを、吊下部材35A〜Cにより接続し、袋状の合成樹脂シート33の内側に収容する。袋状の合成樹脂シート33における入口部を縛り部材37によって閉じた後、食用貝養殖器31は吊下げ部材35Dにより水中に吊下げられる。合成樹脂シート33により閉鎖された内部空間Aにおいて、食用貝は排卵期に卵を放出し、やがてこの卵が孵化して稚貝が生育するようになる。食用貝及び食用貝の稚貝は、内部空間Aにおいて、養殖かご32A〜32Cの内側面及び内側底面、並びに合成樹脂シート33の内側表面等に付着し、生育する。食用貝養殖器31においては、養殖かごの内側面、内側底面、及び合成樹脂シート33の内側表面等が生育部として機能する。合成樹脂シート33は、海水を通す一方で水棲生物の幼生等を通さないので、外部から水棲生物の幼生等が合成樹脂シート33を通って内部空間Aに侵入することが防止される。また、合成樹脂シート33は、内部空間Aへと排卵されたカキ等の食用貝の卵を通すことのできる大きさの開口部を有しておらず、これらの卵が合成樹脂シート33における開口部を通って外部へと漏れ出すことが防止される。養殖かご32A〜32Cとしては、市販の網かごを使用することができ、合成樹脂シート33と同じ素材により形成された有底円筒状体を使用することもできる。また、養殖かご32A〜32Cの上面開口には上蓋が設けられていてもよい。
また、図3で示される食用貝養殖器31は、水中において食用貝の稚貝収集器として使用することもできる。例えば、親ガキとなる成体のカキを入れた養殖かご32A〜32Cを、合成樹脂シート33に収容し、水中に長期間吊下げておくと、親ガキから排卵された卵が内部空間Aで孵り、カキの稚貝が合成樹脂シート33の内側表面に付着する。一方、水棲生物の幼生等が合成樹脂シート33の外側から内部空間Aへと浸入することは防止される。一定期間水中に浸漬した後に、食用貝養殖器31を水中から取り出すと、養殖かご32A〜32C及び合成樹脂シート33の内部には、水棲生物が着床しておらず、カキ等の食用貝の稚貝のみを効率的に採取することができる。
次に、図6〜8を用いて、食用貝養殖器を稚貝収集器として使用する他の例について説明する。
図6のように、合成樹脂シート73は、上面が開口する四角筒状に形成される。合成樹脂シート73によって形成される四角筒状体の底面における4つの縁辺には、それぞれ支持パイプ72が設けられる。支持パイプ72は、硬質の管状部材によって形成され、合成樹脂シート73の底面を四角形状に保つことができる。また、合成樹脂シート73によって形成される四角筒状体の天井開口面における縁辺には、複数の吊下部材76が設けられる。吊下部材76が地上に設けられた杭等に係留されることにより、合成樹脂シート73は海水中に浸漬される。また、吊下部材76において生じる引張力により、合成樹脂シート73が形成する四角筒状体の天井開口面は、四角形状に保たれる。
図7のように、合成樹脂シート73を海水中に吊下げる場合、列方向の筏部材74Aと行方向の筏部材74Bとを組み合わせた筏が用いられる。列方向の筏部材74Aでは、複数の丸太等の管状部材が一定の間隔を開けて略平行に設けられる。行方向の筏部材74Bでは、複数の丸太部材が一定の間隔を開けて平行に、かつ前記列方向の筏部材74Aとは略垂直方向に設けられる。列方向の筏部材74Aは、その下部が海水中に浸漬し、海水中に浮かびながら存在する。行方向の筏部材74Bは、列方向の筏部材74Aの上部に設けられ、海水面55とは接しない。前記合成樹脂シート73に設けられた吊下部材76は、前記行方向の筏部材74Bに繋がれる。合成樹脂シート73が形成する四角筒状体の開口端面78は、海水面55よりも上方に位置する。開口端面78を介した海水の内部空間Aへの侵入は防止される。
図7のように、合成樹脂シート73の内部空間Aには、ホタテの貝殻74と網かご77とが設けられる。ホタテの貝殻74には、吊下部材76Bが設けられる。吊下部材76Bが行方向の筏部材74Bに繋がれることにより、ホタテの貝殻74は海水中に浸漬される。また、網かご77には、吊下ロープ56が設けられ、この吊下ロープ56が行方向の筏部材74Bに繋がれることにより、網かご77は海水中に浸漬される。
図8のように、ホタテの貝殻74は中心部に孔が開けられ、複数のホタテの貝殻74における孔を貫通するように、吊下部材76Bが設けられる。1つの吊下部材76Bに設けられるホタテの貝殻の数は特に制限されない。
図7に示される合成樹脂シート73等の使用方法について説明する。まず、吊下部材76を行方向の筏部材74Bに繋げ、合成樹脂シート73を筏に係留する。合成樹脂シート73は、底面縁辺に設けられた支持パイプと、吊下部材76によって生じる引張力により、略四角筒状体を形成する。合成樹脂シート73によって形成される略四角筒状体の内側には、内部空間Aが形成される。また、合成樹脂シート73によって形成される略四角筒状体の開口端面78は、海水面55よりも上部に位置する。
次に、網かご77の内側に、成体のカキを収容する。網かご77は、成体のカキを通さない程度の大きさの網目を有する網状体によって形成されていればよい。この網かご77が内部空間Aにおける海水中に浸漬されるように、網かご77を行方向の筏部材74Bに係留する。同様に、ホタテの貝殻74が内部空間Aにおける海水中に浸漬されるように、吊下部材76Bを行方向の筏部材74Bに繋げる。
網かご77の内側における生体のカキは、排卵期において多数の卵を放出する。卵はやがて孵化し、多数の稚貝が生じる。これらの稚貝は、網かご77の網目から網かご77の外部へと移動し、合成樹脂シート73の内側面及びホタテの貝殻74の表面に付着、生育することができる。一方で、前記卵及び稚貝は、合成樹脂シート73における開口部を通過することができない。よって、卵及び稚貝が内部空間Aの外部へと流出することは防止されており、合成樹脂シート73の内側で効率よく稚貝を収集することができる。
また、海水への吊下中に、内部空間Aの外側に位置する水棲生物の幼生等は、合成樹脂シート73における開口部を通過することができない。よって、合成樹脂シート73、網かご77、及びホタテの貝殻74を海水中に吊下げている間に、内部空間Aへとカキ以外の水棲生物が着床することが防止される。
前記合成樹脂シートは、表面に微小な網目状の開口部を有する。合成樹脂シートにおける開口部は、それぞれの開口平面積が1mm以上60mm以下であり、かつ全ての開口部の開口平面積の和が、全ての開口部を含む合成樹脂シート全体の平面積に対して20%以上80%以下である。合成樹脂シートの開口部それぞれの開口平面積が前記上限値よりも大きいと、水棲生物の幼生等が開口部を通過することができ、合成樹脂シートの内部空間に設けられた生育部に水棲生物が付着してしまい、本考案の目的が達成されない。合成樹脂シートの開口部それぞれの開口平面積が前記下限値よりも小さいと、網目状に形成された開口部同士が詰まりすぎる構造になるので、食用貝養殖器を水中に浸漬しようとするときに、合成樹脂シートの内部空間における空気が外部へ抜け出にくく、食用貝養殖器を水中に沈めることが困難になる。また、合成樹脂シートにおける全ての開口部の開口平面積の和が全ての開口部を含む合成樹脂シート全体の平面積に対して20%未満であると、合成樹脂シートを流通する水の出入り具合が悪くなり、また80%を超えると合成樹脂シートを流通する水の出入り具合が良好になりすぎて、水棲生物の幼生等が開口部を通過しやすくなる。
合成樹脂シートの厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1mm以上1.0mm以下程度であればよい。合成樹脂シートの厚みが前記数値範囲内であると、合成樹脂シートの外部に浮遊する水棲生物が、合成樹脂シートの外表面において水棲生物が付着することを防止することができる。尚、合成樹脂シートにおける開口部のそれぞれの開口平面積が1mm以上60mm以下であるとともに、全ての開口部の開口平面積の和が、全ての開口部を含む合成樹脂シート全体の平面積に対して20%以上80%以下であり、かつ合成樹脂シートの厚みが0.1mm以上1.0mm以下であると、合成樹脂シートにおける開口部を介する水棲生物の幼生等の出入りを防止できるだけでなく、合成樹脂シートの表面及び開口部に水棲生物が定着しにくくなり、合成樹脂シートの外面において稚貝以外の水棲生物が付着、成長することを防止することもできる。
本考案に最適な合成樹脂シートは、JIS L1096Aに準拠して測定された引張強度が550kg/N〜650kgNであり、JIS L1096A−1に準拠して測定された引裂強度が55〜60kgNであることが望ましい。合成樹脂シートの引張強度が前記下限値未満であると、又は引裂強度が前記下限値未満であると、本考案に係る食用貝養殖器を浸水させて、水棲生物が合成樹脂シートの表面に大量に付着し重量が増加したときに、合成樹脂シートが破断する恐れがある。また、この合成樹脂シートの引張強度が前記上限値よりも大きいこと、又は引張強度が前記上限値よりも大きいことに応じて、技術的効果の向上が見込めないことがある。
前記合成樹脂シートの開口部の形態としては、前記合成樹脂シートが前記条件を具備する限り特に制限はなく、例えば、通常の方法により製造された合成樹脂製のシートに適宜の手段によって開口部に相当する穴をあけることにより得られる合成樹脂シート、及び合成樹脂製の長尺条体を格子状に配列し、長尺条体同士の交差部を融着又は接着して得られる格子状の合成樹脂シート等を挙げることができる。これらの合成樹脂シートの中でも、格子状の合成樹脂シートは、水棲生物の幼生が通過することがなく、引張強度及び引裂強度が大きい点で特に好適である。また、格子状の合成樹脂シートの中でも、長尺条体同士の交差部を熱融着して得られる合成樹脂シートは、外表面の凹凸を少なくすることができ、水棲生物が合成樹脂シートの外表面に付着しにくい点において更に好適である。
前記合成樹脂製の長尺条体としては、本考案における合成樹脂シートを製造するのに必要かつ十分な長さを有する糸、ヒモ、細幅長尺シートを挙げることができる。これらの中で、細幅長尺シートが、肉薄成形をすることができ、十分な機械的強度を得ることができ、また、製造しやすい点で特に好適である。
前記格子状の合成樹脂シートにおける長尺条体を縦横に組み合わせる態様としては、長尺条体が格子状に配列されていれば特に制限はなく、例えば、図4(a)〜(c)に示すような長尺条体を組み合わせた格子状形態を挙げることができる。図4(a)は平織状に形成された格子を示し、図4(b)は綾織状に形成された格子を示し、図4(c)は朱子織状に形成された格子を示す。図4に示される例においては、縦横に形成された長尺条体の内側に略矩形の開口部41が形成される。
前記長尺条体の幅及び各長尺条体の間隔については、上述した開口部の開口平面積及び合成樹脂シート全体の平面積に対する全ての開口部の開口平面積の和が本考案で規定する条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、例えば、上記長尺条体の幅は2mm以上4mm以下とすることができ、各長尺条体同士の間隔としては縦及び横それぞれ1mm以上5mm以下とすることができる。また、上記条件を満たしていれば、1枚のシートにおいて長尺条体の幅及び各長尺条体間の間隔が統一されていなくても、構わない。なお、格子状の配列は、縦の長尺条体と横の長尺条体とが直交して配列されている態様のみならず、縦の長尺条体と横の長尺条体とが斜行して配列されている態様を含む。
合成樹脂シートはまた、格子状の合成樹脂シートの複数を、一方の格子状合成樹脂シートにおける長尺条体と他方の格子状合成樹脂シートにおける長尺条体とが斜行するように、又は斜行せずに重なるように、重ね合わせた後で、一方の格子状合成樹脂シートと他方の合成樹脂シートとを融着して一体化してなる積層合成樹脂シートも、好ましく採用される。
合成樹脂シートの内部空間に生育部を備える態様は、上述した態様に限定されるものではない。例えば、皿状のトレイに砂等の粉体を入れて生育部を形成し、このトレイを合成樹脂シートの内部空間に封入してもよい。また、従来から食用貝の養殖に用いられている網かごの底部に砂等を堆積させて生育部とし、この網かごを合成樹脂シートの内部空間に封入してもよい。
次に、本考案に係る食用貝養殖器の作用について説明する。
食用貝を養殖する際には、本考案に係る食用貝養殖器を海水中に沈める。海水中に食用貝養殖器を沈める前に、予め、生育部に食用貝の稚貝を入れておけばよい。本考案に係る食用貝養殖器によって養殖される食用貝は、養殖が可能である従来公知の食用の貝類であれば特に制限はないが、例えば、アサリ、トリガイ、ミルガイ、ホタテ、カキ、ムール貝等が挙げられる。図1における食用貝養殖器11のように生育部64が砂等の粉体を備える例においては、アサリ又はトリガイ等の稚貝を砂等と一緒に不織布63上に堆積させればよい。また、図2における食用貝養殖器21Aのように、砂等を設けず合成樹脂シート23Aの表面を生育部とする例においては、合成樹脂シートの表面にカキ、又はムール貝等の稚貝を付着させればよい。
食用貝養殖器が海水中に沈められる過程で、合成樹脂シートにおける開口部を通って内部空間へと海水が浸入し、海水中に沈められた後には、合成樹脂シートの内部空間は海水で満たされる。
合成樹脂シートの外側における海水中には、食用貝以外の水棲生物の幼生等が多数浮遊している。これら水棲生物の幼生等は、食用貝養殖器の合成樹脂シートに設けられた開口部を通過することができない。よって、本考案に係る食用貝養殖器を水中に長期間沈めておいても、水中に浮遊する水棲生物の幼生等が合成樹脂シートの内部空間に侵入することを防止することができ、合成樹脂シートの内部空間に収容された生育部に水棲生物の幼生等が着床することはない。
一方で、合成樹脂シートの外側において存在し食用貝の餌となる微小なプランクトンは、合成樹脂シートに設けられた開口部を通過することができる。よって、本考案に係る食用貝養殖器を水中に長期間沈めておくと、水中に浮遊する微小なプランクトンは合成樹脂シートの内部空間に入り、これらのプランクトンを食用貝が餌として利用することにより、食用貝は成長を続けることができる。
次に、食用貝養殖器を水中に沈めてから一定期間が経過した後に、食用貝養殖器を海水中より地上に引き上げ、生育部を取り出すと、生育部には、食用貝は生育しているが、食用貝以外の水棲生物は着床していない。よって、生育部から食用貝を採取する際に、食用貝と食用貝以外の水棲生物とを選別する作業を行う必要がない。
例えば、図1における食用貝養殖器11の例では、合成樹脂シート13におけるファスナーを開けてファスナーの開口部から不織布63及び砂等62を取り出すことができる。また、合成樹脂シート13が袋状体を構成する場合には、巾着状に縛られた天井面18の中心部を緩めて袋状体の入口部を露出させ、この袋状体の入口部から不織布63及び砂等62を取り出すことができる。次に、篩等を用いて砂等と貝類とを選別することによって、食用貝のみを簡単に採取することができる。図2における食用貝養殖器21Aの例では、合成樹脂シート23におけるファスナーを開けてファスナーの開口部から生育部74を形成する合成樹脂シート23Aの内側底面に付着する貝類を、手作業により取り出すことができる。また、合成樹脂シート23が袋状体を構成する場合には、巾着状に縛られた天井面28の中心部を緩めて袋状体の入口部を露出させ、この袋状体の入口部から、貝類等を取り出すことができる。図3における食用貝養殖器31Aの例では、縛り部材37を緩め、合成樹脂シート33によって形成される袋状体の入口部から、養殖かご32A、32B、及び32Cを取り出すことによって、食用貝を採取することができる。
また、本考案に係る食用貝養殖器を長期間水中に沈めておいても、合成樹脂シートの開口部が上記数値範囲内にあるので、フジツボ等の水棲生物が外表面において安定して付着することが難しい。よって、本考案に係る食用貝養殖器を長期間水中に沈めた後においても、合成樹脂シートの外表面には水棲生物が殆ど付着していない。以上より、本考案によると、従来のように、水棲生物が付着したコンテナを清掃する作業や、砂利等によって形成された生育部を水棲生物の付着していない新しいコンテナに移し替える作業等を行う必要がなく、食用貝の養殖にかかる労力を軽減することができる。
(実施例1)
図3で示される食用貝養殖器を用いて、カキの稚貝を養殖かごの内側に定着させ、この養殖かごを袋状体である合成樹脂シートの内側に収容し、袋状体の入口部を縛り部材によって閉じた。この食用貝養殖器を、海水中に約半年間吊下げた。半年後、海水中から合成樹脂シートを取り出したところ、合成樹脂シートの外面にはフジツボ等の水棲生物が僅かに付着していた。合成樹脂シートの内部空間に入れられた養殖かごを取り出したところ、養殖かごの外周面及び養殖かごの内周面には、フジツボ等の水棲生物が殆ど付着していなかった。
(比較例1)
実施例1で用いた養殖かごにカキの稚貝を定着させ、養殖かごを合成樹脂シートの内側に収容することなく、養殖かごに網蓋をした後に、そのまま海水中に養殖かごを約半年間吊下げた。半年後、養殖かごを取り出したところ、養殖かごの外面にはフジツボ等の水棲生物が多数付着しており、養殖かごの底部に設けられた生育部にはカキとともに、フジツボ等の水棲生物が混在していた。
11 食用貝養殖器
13 合成樹脂シート
15 吊下部材
16 取付部材
18 天井面
19 底面
21A 食用貝養殖器
21B 食用貝養殖器
21C 食用貝養殖器
22 食用貝養殖装置
23A 合成樹脂シート
23B 合成樹脂シート
23C 合成樹脂シート
25A 吊下部材
25B 吊下部材
25C 吊下部材
28 天井面
29 底面
35A 吊下部材
35B 吊下部材
35C 吊下部材
35D 吊下部材
31 食用貝養殖器
32A 養殖かご
32B 養殖かご
32C 養殖かご
33 合成樹脂シート
36 取付部材
37 縛り部材
41 開口部
51 コンテナ
52 海水導通孔
53 生育部
54 網蓋
55 海水面
56 吊下ロープ
57 係留杭
58 養殖筏
61 補強用樹脂部材
71 補強用樹脂部材
64 生育部
72 支持パイプ
73 合成樹脂シート
74 ホタテの貝殻
74A 列方向の筏部材
74B 行方向の筏部材
76 吊下部材
76B 吊下部材
77 網かご
78 開口端面
62 砂等
63 不織布
A 内部空間

Claims (6)

  1. 食用貝が生育する生育部を有する内部空間を形成する合成樹脂シートを備え、
    前記合成樹脂シートは、それぞれの平面積が1mm以上60mm以下である複数の開口部を有し、全ての開口部の開口平面積の和が全ての開口部を含む合成樹脂シート全体の平面積に対して20%以上80%以下であることを特徴とする食用貝養殖器。
  2. 前記合成樹脂シートは、底面に補強用樹脂部材が配設されてなることを特徴とする請求項1に記載の食用貝養殖器。
  3. 前記生育部は、合成樹脂シートで形成される内部空間内に配置された、無機物粉体、繊維製シート状物、及び貝殻よりなる群から選択される少なくとも一種である前記請求項1又は2に記載の食用貝養殖器。
  4. 前記生育部は、前記合成樹脂シートの内面である前記請求項1又は2に記載の食用貝養殖器。
  5. 前記生育部は、ホタテの貝殻である前記請求項1又は2に記載の食用貝養殖器。
  6. 2個以上10個以下の請求項1から5までのいずれか一項に記載の食用貝養殖器が、上下方向に連ねて設けられてなることを特徴とする食用貝養殖装置。
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