JP3197576B2 - 紙のコーティング工程におけるブツの発生を防止するための装置及び方法 - Google Patents

紙のコーティング工程におけるブツの発生を防止するための装置及び方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紙のコーティング工程
におけるブツの形成を防止するための装置及び方法に関
する。
【0002】
【従来技術】コート紙の製造においては、紙表面への粗
塗りとその一様化を行うコーティングが1回以上未コー
ト紙に行われる。この場合、一般に過剰の液状塗布組成
物が塗布装置によってペーパーウェブに施される。ペー
パーウェブ上の塗膜の厚みを均一にするために、所謂ド
クターブレードが使用され、これは塗布装置から間隔を
おいた位置に配置され、ペーパーウェブの幅方向に沿っ
て延びている。生産性を向上させるためにペーパーウェ
ブの供給速度を高めると、ペーパーウェブの移動方向に
対してドクターブレードの下流側領域(所謂ドクターブ
レードのドライ側)に問題を生じることがかなり以前か
ら知られている。即ち、該領域に、ドクターブレードの
長さ方向にわたって、塗布組成物から成る液状ないし固
形状の「ブツ」が発生するのである。このブツには繊維
が混ざっていることもある。
【0003】技術文献によると、この様なブツの発生
は、石荀形成(stalagmite formation)、ブリーディング
(bleeding)、ウィスカリング(whiskering)、フェザリン
グ(fe-athering) 等と呼ばれている。以下、これをフェ
ザリングと呼ぶことがある。
【0004】ペーパーウェブの供給速度が速くなるにつ
れて、このようなフェザリングが多くなることが知られ
ている。現在において採用されているペーパーウェブの
供給速度は、1000〜1500m/分であり、将来は
さらに速くなることが予想される。また発生するブツの
量は、コーティングの組成によって異なる。この塗布組
成物の処方は紙メーカーによって独自のものであるが、
クレイ、チョーク等の顔料成分や、ラテックス、変性澱
粉等のバインダーを含んでいる点では共通している。一
般に、紙の質及び生産コストの両方の面から、固形分量
の高いコーティングを行うことが望ましいが、固形分量
が高いほど、フェザリングが著しく促進されることが知
られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ドクターブレードのド
ライ側のフェザリングは極めて望ましくない。何故なら
ば、このブツから塗布組成物の固まりが離れ、特にそれ
が大きい場合にはペーパーウェブに接触して紙表面に損
傷を与え、線条やキャビティを生じせしめる。また固い
ブツは、紙製造の工程において、塗布工程の後工程でペ
ーパーウェブが通過するロール表面に損傷を与える。特
に、紙表面を平滑にするために使用されるカレンダーロ
ールの表面は、この様な損傷を受ける。このようなロー
ルの交換は非常にコストがかかるものである。また紙製
造工程の後においてもコーティング組成物の固まりが存
在していると、紙に印刷を行う工程において、印刷不良
等の問題を生じる。さらにブツの発生(フェザリング)
は、コーティング組成物に使用される原材料を制限し、
紙の品質やその原料コストに大きな影響を与える。
【0006】上述した問題については、"Wochenblatt f
ur Papierfabrikation" における3つの報文、即ち、1
984年の vol. 6,184〜187頁、G.Engstromに
よる"Streichfarben mit hohem Festsoffgehalt −Rheo
logie und Verarbeitbarkeitbeim Bladestreichen "、
1986年のvol.8,261〜265頁、H.P.Hofmann と
A.von Raven の " Fabrikationsstorungendurch stalag
mitenformigen Streichfarbenaufbau an den Scha
bern schnell laufender Streichmaschinen "及び19
88年の vol. 10,400〜404頁、D. Eklund と
S. Forsの " Betrachtungen uber Stalagmitenbil
dung und Bladeuberkochen " に詳細に説明されてい
る。また1973年に "Tappi "で公表された2つの論
文には、フェザリングの悪影響がかなり以前から認識さ
れていたことが示されている。これらの論文は次の通り
である。1973年10月の No.10, Vol.56 ,70〜7
3頁、J.P. Modrak の "ブレードコーティングプロセス
における" カラー コーティング レオロジィーの影
響" 及び1973年1月の No.10, Vol.56 ,52〜55
頁、 E.J. Barbarの "カラー コーテイング作業におけ
るヒドロコロイドの影響とコート紙特性"
【0007】上述した論文等から、紙コーティング作業
において、ペーパーウェブの高速供給、コーティング組
成物の原材料、コートされる紙の特性及びコーティング
組成物の望ましい固形分含量に制限を与えることなく、
ブツの発生(フェザリング)を防止することは極めて重
要であることが理解されよう。従って本発明の目的は、
ドクターに沿って移動するペーパーウェブの速度、コー
ティング組成物の原材料及び固形分含量、並びにコート
される紙の特性とは全く無関係に、ブツの発生を十分に
抑制するかあるいは少なくとも絶対的に無害なレベルに
までブツの発生を減少するための方法及び装置を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ペーパ
ーウェブに塗布組成物の層を形成する工程と該ペーパー
ウェブをドクター上を通過せしめる工程から成るのコ
ーティング方法において、ペーパーウェブの移動方向に
対して前記ドクターの下流側とペーパーウェブとの境界
領域にブツの形成を抑制する水を含んだ流体をスプレー
手段で供給することによって有害なブツの形成を防止す
ることを特徴とする方法が提供される。
【0009】本発明において、ブツの発生を抑制する流
体としてはスチームを使用することが好適であるが、紙
の品質及びコーティングに悪影響を及ぼさない限りにお
いて、水或いはスチームと水もしくはエアーとの混合
物、その他の流体も使用することができる。
【0010】本発明によればさらに、ペーパーウェブに
塗布組成物の層を形成するための部材とペーパーウェブ
の幅方向に延びているドクターを備えた紙のコーティン
グを行う装置において、ペーパーウェブの移動方向に対
して前記ドクターの下流側とペーパーウェブとの境界領
域にブツの形成を抑制する水を含んだ流体を供給する
プレー手段が、該ドクターの下流側幅方向に沿って均等
に分布して設けられていることを特徴とする装置が提供
される。
【0011】驚くべきことに、本発明によれば、通常の
条件でコーティングを行って、コーティング組成物の組
成や特質に如何なる影響を与えることなく、ブツの発生
を抑制することができるのである。またドクターブレー
ドは、多量のブツが形成されることによって交換される
ことがないので、その作業寿命は向上する。例えば、ド
クターブレードは、その先端が摩耗した場合等の不都合
を生じた場合にのみ交換されるのであって、その場合に
もドクターブレードには全くブツは形成されていないの
である。ドクターとしては種々のものが知られており、
本明細書においては、最も簡単なものとしてドクターブ
レードを用いた態様を例にとって説明しているが、本発
明はこれに限定されるものではなく、ペーパーウェブの
幅方向に延びており且つブツ発生の問題を有しているも
のであるかぎりにおいて、任意のドクターを使用するこ
とができる。
【0012】また米国特許第3,152,918号明細
書には、ペーパーコーティング作業において、スプレー
オリフィスを備えたパイプを介して、塗布装置とドクタ
ーブレードとの間の領域に湿分を供給することにより、
コーティング組成物の特性に影響を与えることが記載さ
れている。しかしながら、固形分含量が高いコーティン
グ組成物がドクターブレードとともに使用される場合に
は、この原理は全く不適当であり、また固形分含量が高
い時には、ブツ発生の問題が極めて大きい。
【0013】
【実施例】本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基
づいて説明する。本発明による紙コーティング装置の斜
視図を示す図1において、1はロールであり、その表面
をペーパーウェブ2が通過する。このロール1は矢印で
示す方向に回転する。余剰のコーティング組成物を除去
し且つコーティング組成物の層を均一にするために、ド
クターブレード3が設けられている。このドクターブレ
ード3は幅方向にわたってブロック4に支持されてお
り、ロール1に対して位置調節可能となっている。この
装置全体の構造は、紙製造業においてよく知られている
ものであるので、これ以上の説明は必要としない。
【0014】既に述べた通り、コーティング組成物は、
ウェットあるいは乾燥したぼろぼろの固まり、即ち「ブ
ツ」を発生する。ブツは、ロール1の速度、即ちペーパ
ーウェブ2の供給速度が速くなるにしたがって、及びコ
ーティング組成物の固形分含量が高くなるにしたがっ
て、ドクターブレード3のドライ側(図において3’で
示す)に集中する。本発明によれば、このブツの発生が
パイプシステムを設けることによって防止される。この
パイプシステムは、3本のパイプ5、及びこれらの両端
に連結された共通のパイプ6,7とから成っており、パ
イプ7には、一定間隔でスプレーノズル8が設けられて
いる。パイプ5は、それぞれ、共通の供給パイプ6の一
方側端部にタップ9を介して連結されており、さらにパ
イプ5の他方側端部にはパイプ7が連結されている。こ
れらのパイプ6,5及び7を介して、スチーム、水、こ
れらの混合物あるいはその他の適当な流体が、蒸気また
は液体の形でスプレーノズル8により、ドクターブレー
ド3のドライ側3’とペーパーウェブ2によって限定さ
れる領域に供給される。この場合、スプレーノズルを使
用する代わりに、1またはそれ以上の吐出口を使用する
こともできる。この吐出口は複数のスロット形状であっ
てもよい。
【0015】上記流体の量はタップ9によって調整され
る。量の計測を正確に行うことができること及び紙製造
工程において多量のスチームが使用されていることか
ら、この流体はスチームであることが好適である。ドク
ターブレード3に対するパイプ7の正確な位置、吐出口
乃至スプレーノズル8の数及び形状、並びに流体の供給
圧力は、広範囲内で自由に選択できる。即ち、ペーパー
ウェブ2が高速で移動している結果として、ドクターブ
レード3のドライ側3’近傍では減圧状態となってお
り、そこに流体が吸引されるからである。これによっ
て、ブツの発生(フェザリング)は有効に防止される。
また当業者であれば、パイプ5、6、7の形状や数、そ
の他の変更は自明であろう。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、ドクターブレード上に
おけるブツの発生が、ペーパウェブの速度、コーティン
グ組成物の原材料あるいは組成、紙質等とは全く無関係
に、防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による紙コーティング装置の斜視図を
示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭62−148380(JP,U) 実開 平2−142665(JP,U) 実開 平2−57181(JP,U) 実開 平3−92800(JP,U) 米国特許3152918(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05C 11/04 B05D 1/40 D21H 23/32 - 23/44

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ペーパーウェブに塗布組成物の層を形成
    する工程と該ペーパーウェブをドクター上を通過せしめ
    る工程から成る紙のコーティング方法において、 ペーパーウェブの移動方向に対して前記ドクターの下流
    側とペーパーウェブとの境界領域にブツの形成を抑制す
    水を含んだ流体をスプレー手段で供給することによっ
    て有害なブツの形成を防止することを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 前記流体がスチームである請求項に記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 ペーパーウェブに塗布組成物の層を形成
    するための部材とペーパーウェブの幅方向に延びている
    ドクターを備えた紙のコーティングを行う装置におい
    て、 ペーパーウェブの移動方向に対して前記ドクターの下流
    側とペーパーウェブとの境界領域にブツの形成を抑制す
    水を含んだ流体を供給するスプレー手段が、該ドクタ
    ーの下流側幅方向に沿って均等に分布して設けられてい
    ることを特徴とする装置。
  4. 【請求項4】 前記流体供給スプレー手段が、前記領域
    側に少なくとも1個の開口を備え且つ前記ドクターと平
    行に延びているパイプであり、該パイプは、パイプシス
    テムを介して流体源に接続されている請求項に記載の
    装置。
  5. 【請求項5】 前記ドクターがドクターブレードである
    請求項3または4に記載の装置。
  6. 【請求項6】 前記流体源は、スチームを供給するもの
    である請求項3または4に記載の装置。
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