JP3197082B2 - 高性能排煙脱硫方法 - Google Patents

高性能排煙脱硫方法

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徹 高品
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は石炭焚きボイラ排ガスの
如き硫黄酸化物を含む排ガスの脱硫方法に関するもの
で、特に処理排ガス中の硫黄酸化物濃度を従来技術で達
成し得なかった低濃度レベルにまで、経済的に脱硫でき
る高性能排煙脱硫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】湿式石灰法や湿式ソーダ法、湿式水酸化
マグネシウム法などの排煙脱硫装置は既に多数が実用に
供されている。例えば事業用火力発電所の大型排煙脱硫
装置として主流を占める湿式石灰・石膏法は特許第89
9234号(特公昭50−17318号公報)に記載さ
れているように、硫黄酸化物を含む排ガスを吸収塔に導
き、Ca化合物を含む吸収液と接触させて硫黄酸化物と
吸収除去するとともに、石膏を副生品として回収するも
ので、さらに具体的には吸収装置を2基設け、処理すべ
きガスは第1吸収装置から第2吸収装置に直列に通し、
吸収液は第2吸収装置から第1吸収装置に送るように
し、吸収液のpH値を第1吸収装置は4以下、第2吸収
装置は7以上にすることに加え、各々の吸収装置に吸収
液を供給するタンクに空気の微細な気泡を発生する機構
を設けて吸収液を酸化することによって脱硫性能を向上
させ総合脱硫率は90〜94%が達成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】地球環境保護がクロー
ズアップされている現在、とりわけ酸性雨問題は深刻で
あり、世界的に排煙脱硫の普及が進められており、経済
的で高性能な排煙脱硫技術の改良開発がなされてきた
が、従来技術では脱硫性能に限界があった。すなわち、
硫黄酸化物のうち、SO2 吸収率は前項にて記載の通り
90〜94%であり、SO3 除去に対してはそれを処理
する技術は組み入れられていない。それは硫黄酸化物の
うちSO2 が主体になっており、SO3 は考慮の対象外
として扱われるためであるが、現状実用に供されている
排煙脱硫装置の硫黄酸化物の排出濃度が数十ppmレベ
ルであることから僅かな濃度のSO3 は無視小と見なさ
れてきたことによるものである。
【0004】しかし、硫黄酸化物濃度1ppm以下の
レベルにまで脱硫しようとする場合はSO2 の吸収率を
さらに向上させるばかりでなく、SO3 の除去を考慮す
ることが必要となってくる。
【0005】本発明は将来的に酸性雨対策として必要に
なるSO2 とSO3 の両方の硫黄酸化物を経済的に高性
能に脱硫できる方法を提供するもので、排煙脱硫装置か
らの硫黄酸化物(SO2 とSO3 )の排出濃度レベルを
1ppm以下にすることができ極めて高い脱硫性能を発
揮する方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は次の(1)及び
(2)の態様を含むものである。 (1)硫黄酸化物を含む燃焼排ガスを、空気の微細気泡
を発生する吸収液の液溜を有する第1脱硫工程に導き、
Ca化合物を吸収剤とする吸収液で、排ガス中の硫黄酸
化物の大部分を除去した後、空気の微細気泡を発生する
吸収液の液溜を有し、かつ湿式電気集塵板付スプレー塔
である第2脱硫工程に排ガスを導き、アルカリ金属化合
物またはアンモニウム化合物を吸収剤とする吸収液で排
ガス中の硫黄酸化物の残部を除去するとともに、第2脱
硫工程から抜き出した硫黄酸化物を吸収した吸収液を第
1脱硫工程へ送液し、第1吸収工程の吸収液がCa化合
物とアルカリ金属化合物またはアンモニウム化合物を含
むようにすることを特徴とする高性能排煙脱硫方法。
【0007】(2)第1脱硫工程から石膏粒子とアルカ
リ金属化合物またはアンモニウム化合物を含む吸収液を
抜き出し、固液分離装置にて副生石膏を回収するととも
に、ろ過液は第1脱硫工程に循環して第1脱硫工程の吸
収液のイオン強度を高めて脱硫性能を向上させることを
特徴とする請求項1記載の高性能排煙脱硫方法。
【0008】SO2 の吸収率を高めるための手段とし
て、本発明は従来と全く異なった吸収液の利用方法を採
用したものである。すなわち、Ca化合物、例えばCa
CO3を吸収剤とした第1脱硫工程と、アルカリ金属
合物またはアンモニウム化合物、例えばNaOHを吸収
剤とした第2脱硫工程を直列に組み合わせることにあ
り、第1脱硫工程でのSO2 吸収はCaCO3 を利用し
て大部分のSO2 を吸収し第2脱硫工程では残りのSO
2 とSO3 をNaOHで吸収除去する方法である。
【0009】SO2 の大部分を吸収するために使うCa
CO3 も、吸収液の液溜でイオン強度の高い水溶液に懸
濁させるとCaCO3 の溶解速度が大きくなってSO2
の吸収効率が向上するので、第2脱硫工程から抜き出し
たNa化合物を第1脱硫工程へ送り、吸収液に混合す
る。
【0010】一方、第2脱硫工程はNaOHを含む吸収
液を噴霧して残りのSO2 をほゞ完全に吸収するととも
に湿式電気集塵板を設けてSO3 の除去を完全にする。
【0011】又、第1脱硫工程では液溜の吸収液に微細
な気泡を吹き込み吸収液を酸化することによって石膏を
生成させ、物質収支によって石膏粒子とNa2 SO4
含む吸収液を抜き出し、固液分離装置にて利用価値の高
い副生石膏を回収するとともに、ろ過液は第1脱硫工程
で循環使用することによって吸収液のイオン強度を高め
る。同様に、第2脱硫工程においても、液溜の吸収液に
微細な気泡を吹き込むようにする。
【0012】なお、第2脱硫工程で使用する吸収液はN
aOH以外にもKOH、NH4 OH、Na2 CO3 、K
2 CO3 、(NH4 2 CO3 、NaHCO3 、KHC
3、NH4 HCO3 などSO2 を吸収して酸化された
硫酸塩が水溶性の化合物になるものが代替使用できる。
【0013】
【作用】SO2 とSO3 を含む燃焼排ガスを第1脱硫工
程に導き、例えばCaCO3 を吸収剤として含有する吸
収液と接触させSO2 の大部分を吸収する。脱硫率は約
90%である。吸収液中に吸収されたSO2 はただちに
CaCO3 と反応して、CaSO3 を生成するが、吸収
液を空気酸化することによってCaSO4 ・2H 2 O石
膏結晶として晶析させる。石膏を含む吸収液は物質収支
に見合って第1脱硫工程から抜き取り固液分離装置へ送
って石膏結晶を分離回収しボード原料やセメント原料と
して用途価値の高い副生石膏を得るとともにろ過液は第
1脱硫工程の補給水として利用する。
【0014】第1脱硫工程を出た排ガスは僅かのSO2
とSO3 を含んでいるので、第2脱硫工程に導きSO2
とSO3 を完全に除去するが、第2脱硫工程から排出さ
れるガス中の硫黄酸化物(SO2 とSO3 )の濃度が1
ppm以下のレベルになるように、例えばNaOHを含
む吸収液を噴霧しながら、湿式電気集塵板間を通す。
【0015】本発明の特徴の1つは以上述べたように、
吸収装置を2基設け、各々、例えばCaCO3 とNaO
Hの吸収剤を別々に供給してSO2 とSO3 を完全に吸
収除去することにあるが、もう一つの特徴は第2脱硫工
程から抜き出した水溶性のアルカリ金属化合物を第1脱
硫工程に送りCaCO3 を含む吸収液のイオン強度を高
めるところにある。
【0016】イオン強度を高めると、(1)吸収剤であ
るCa化合物、例えばCaCO3 の溶解速度が向上する
こと、(2)吸収液のSO2 平衡分圧が低く抑えられる
ことの2つの効果が相乗して脱硫性能が向上するととも
に(3)空気の気泡の微細化が促進されるため、吸収液
の酸化効率も向上し高純度の副生石膏が回収できる。
【0017】
【実施例】本発明方法の1実施態様を図1によって説明
する。硫黄酸化物(SO2 とSO 3 )を含んだ排ガス1
は先ず第1脱硫工程2に導かれる。第1脱硫工程2には
経路3から送られるCa化合物(例えばCaCO3 )と
反応によって生成したCaSO4 ・2H2 Oと経路4か
ら送られるNa化合物(Na2 SO4 )とを含むスラリ
状吸収液がポンプ5によって循環されており、SO2
度の高い排ガスと気液接触させて脱硫する。
【0018】第1脱硫工程2での反応はSO2 の吸収反
応と酸化反応とCaCO3 の溶解反応とCaSO4 ・2
2 O晶析反応が併発している。この反応は液溜6に微
細気泡発生器7を設置することによって促進されるがス
ラリ状吸収液中にNa2 SO 4 を溶解させてイオン強度
を高めると空気の気泡の微細化が促進され、酸化反応が
完全に行なわれる。
【0019】この実施例では微細気泡発生器7として、
既存の回転式気体分散器を示してあり回転軸の下端に取
付けた攪拌棒の後方に形成する気相域に経路8から空気
を供給して微細気泡を発生させ、液中の亜硫酸イオンを
完全に酸化する。この酸化反応が完全であるほど吸収液
のSO2 平衡分圧が小さくなること及び酸化によって生
成した硫酸塩はCaCO3 と速く反応するようになるた
め、第1脱硫工程2での脱硫性能が向上する。
【0020】さらに、吸収液中のイオン強度を高くする
と水に溶け難いCaCO3 の溶解度が大きくなってCa
CO3 のCaSO4 ・2H2 Oへの転化率が向上するこ
と及び晶析によって生成するCaSO4 ・2H2 O結晶
もよく発達した良質のものが得られるようになる。この
ように吸収液は若干の未反応CaCO3 粒子と良質のC
aSO4 ・2H2 O結晶粒子を含むSO2 平衡分圧のな
いものとなり、ポンプ5を介して排ガスと気液接触させ
るべく循環されるが、その1部は脱硫量との物質収支に
見合って経路9から遠心分離機10に送られて副生石膏
11が回収される。分離ろ液はイオン強度バランスに見
合って経路12から第1脱硫工程2に送られ、一部は系
外へ抜き出される。
【0021】第1脱硫工程2を出た排ガスはダクト13
を通って第2脱硫工程14に導かれる。第2脱硫工程1
4には経路15からNaOH水溶液が供給されpHの高
い吸収能の高い吸収液がポンプ16によって循環されて
おり排ガス中のSO2 とSO 3 を完全に除去することを
主目的に反応が行われる。
【0022】この第2脱硫工程14には湿式電気集塵板
17が設けられており、ミスト状あるいは固形物粒子に
包含されているSO3 を完全に捕集する。また吸収液の
液溜18には微細気泡発生器19が設けてあり、液中の
亜硫酸イオンを完全に空気酸化してSO2 平衡分圧のな
い吸収液として循環しSO2 吸収性能を極めて高いもの
にする。Na2 SO4 を含む吸収液は物質収支に見合っ
て経路4から抜き出し、第1脱硫工程2でのCa化合物
による湿式脱硫性能を促進するために役立てる。
【0023】第2脱硫工程14でSO2 とSO3 を完全
に除去した清浄な処理ガスはダクト20を介して抜き出
され、通常、拡散をよくするために加熱された後、煙突
から大気中に放散されるが、極めて清浄度の高いガスで
あることから地球温暖化防止のためのアミン系吸収液に
よるCO2 吸収装置にそのまゝ導入し、アミン系吸収液
のSOxによる劣化を防止するのに役立てることもでき
る。
【0024】(実施例1)石炭燃焼排ガスについて本発
明方法を適用した試験を行い次の結果を得た。石炭燃焼
量25kg/Hの燃焼炉から発生する排ガス200m3
N/Hをアンモニア接触還元法による乾式脱硫装置に導
き、次いで熱交換器を通して150℃まで冷却し、乾式
集塵器で処理した後、図1に示した本発明方法より構成
される試験装置に排ガスを導いた。
【0025】〇第1脱硫工程 格子充填塔:200φ×6000H 吸収液循環流量:3,000リットル/H 吸収液中のCaSO4 ・2H2 O濃度:20wt% 吸収液中のCaCO3 濃度:1.0wt% 回転式スパージャー空気供給量:2m3 N/H 吸収液中のNa+ 濃度:0.10mol/リットル
【0026】〇第2脱硫工程 湿式電気集塵板付スプレー塔:250φ×1500H 吸収液循環流量:500リットル/H 吸収液中のNa+ 濃度:0.50mol/リットル 通気管固定式スパージャー空気供給量:0.2m3 N/
【0027】〇第1脱硫工程入口排ガス中のSO2
度:1,200ppm 〇第1脱硫工程入口排ガス中のSO3 濃度(ガス換算
値):18ppm 〇第1脱硫工程出口排ガス中のSO2 濃度:45ppm 〇第1脱硫工程出口排ガス中のSO3 濃度:14ppm 〇第2脱硫工程出口排ガス中のSO2 濃度:1ppm以
下 〇第2脱硫工程出口排ガス中のSO3 濃度:1ppm以
下 〇副生石膏組成(乾量基準)CaSO4 ・2H2 O:9
5wt%
【0028】諸数値は試験装置を約100時間連続運転
し、全系が定常状態運転に維持されている間の代表的デ
ータを示した。SO2 とSO3 の総合脱硫率は99%以
上であり、第2脱硫工程出口排ガス中の濃度は計測限界
の1ppm以下であった。
【0029】比較例として第2脱硫工程をバイパスし、
第1脱硫工程だけで排ガスを処理した試験では吸収液中
にNa+ は含まれないようになるため、第1脱硫工程出
口排ガス中のSO2 濃度は120ppm、SO3 濃度は
15ppmであった。
【0030】
【発明の効果】従来、湿式石灰石膏法排煙脱硫装置にお
けるSO2 吸収率は90〜94%であり、SO3 の除去
は全く考慮の対象外であったが、本発明方法によってS
2 とSO3 を含めた硫黄酸化物濃度は1ppm以下の
レベルにまで脱硫でき、脱硫率に換算すると99%以上
が達成できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様の説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沖野 進 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 高品 徹 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22 号 三菱重工業株式会社 広島研究所内 (72)発明者 岩下 浩一郎 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社本社内 (56)参考文献 特開 昭63−97216(JP,A) 特開 平1−94919(JP,A) 特開 昭60−7925(JP,A) 実開 昭62−140953(JP,U) 特公 昭50−17318(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/50 B01D 53/34 ZAB B01D 53/77

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫黄酸化物を含む燃焼排ガスを、空気の
    微細気泡を発生する吸収液の液溜を有する第1脱硫工程
    に導き、Ca化合物を吸収剤とする吸収液で、排ガス中
    の硫黄酸化物の大部分を除去した後、空気の微細気泡を
    発生する吸収液の液溜を有し、かつ湿式電気集塵板付ス
    プレー塔である第2脱硫工程に排ガスを導き、アルカリ
    金属化合物またはアンモニウム化合物を吸収剤とする吸
    収液で排ガス中の硫黄酸化物の残部を除去するととも
    に、第2脱硫工程から抜き出した硫黄酸化物を吸収した
    吸収液を第1脱硫工程へ送液し、第1吸収工程の吸収液
    がCa化合物とアルカリ金属化合物またはアンモニウム
    化合物を含むようにすることを特徴とする高性能排煙脱
    硫方法。
  2. 【請求項2】 第1脱硫工程から石膏粒子とアルカリ金
    属化合物またはアンモニウム化合物を含む吸収液を抜き
    出し、固液分離装置にて副生石膏を回収するとともに、
    ろ過液は第1脱硫工程に循環して第1脱硫工程の吸収液
    のイオン強度を高めて脱硫性能を向上させることを特徴
    とする請求項1記載の高性能排煙脱硫方法。
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