さや管を用いて柱脚の下端部をコンクリート基礎内に埋め込む構造において、柱脚を施工する際には、途中まで打設したコンクリート基礎の所定位置までさや管を運び、これを位置決めする必要がある。さや管は鋼製であり、重量が大きいため、重機によって所定位置まで運ぶ必要がある。したがって、さや管を運搬・位置決めするための手間がかかると共に、重機が入れない場所にはさや管を運ぶことができないという問題があった。
また、さや管はコンクリート基礎内に埋め込まれてしまうため、これを再利用することもできないという問題もある。
さらには、さや管を用いる場合、さや管を設置する前にコンクリートを打設して硬化させ、その後、さや管を埋設するようにコンクリートを打設して硬化させるという工程が必要である。すなわち、コンクリート基礎の形成のためにコンクリートを2回に分けて打設する必要があり、工数が増加するという問題もあった。
本考案は前記課題を鑑みてなされたものであり、柱脚の下端部を埋め込む固定穴をコンクリート基礎に容易に形成することのできる軽量で再利用可能な柱脚施工具及びそれを用いた柱脚施工方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1の考案に係る柱脚施工具は、コンクリート基礎内に柱脚の下端部を埋込固定するための固定穴を形成する柱脚施工具であって、
前記固定穴の内形状を規定する型体を有し、該型体は少なくとも前記固定穴の内側面に沿う側面部材を有し、該側面部材は、前記コンクリート基礎が打設された状態で前記固定穴の内側面から剥離可能とされたことを特徴として構成されている。
請求項1に係る考案によれば、固定穴を形成するための型体を複数の部品で構成することができ、重機等を用いることなく型体を容易に所定位置に配置することができる。また、コンクリート基礎の打設後には固定穴の内側面から剥離可能であるため、型体を再利用することができる。
また、請求項2の考案に係る柱脚施工具は、土台部材をさらに有し、前記型体は前記土台部材上に載置されることを特徴として構成されている。
請求項2に係る考案によれば、コンクリート基礎をある程度の厚みとしつつ所定深さの固定穴を型体により形成することができる。
さらに、請求項3の考案に係る柱脚施工具は、前記型体は前記側面部材に囲まれた中央部に空間部を有し、該空間部に中央部材が配置されて前記側面部材の内側面に当接することを特徴として構成されている。
請求項3に係る考案によれば、中央部材により側面部材を型体の中央側から支持することができ、コンクリートの打設時に側面部材が受ける圧力に対抗して側面部材の変形を防止し、正確な形状の固定穴を形成することができる。
さらにまた、請求項4の考案に係る柱脚施工具は、前記型体は4つの側面を有し、前記側面部材は、互いに対向する2つの側面をなす第一側面部材と、該第一側面部材の両側部を渡すように設けられ互いに対向する残りの2つの側面をなす第二側面部材とからなることを特徴として構成されている。
請求項4に係る考案によれば、固定穴の側面ごとに側面部材が設けられ、形成された固定穴から第二側面部材、第一側面部材の順に容易に各部材を剥離することができる。
そして、請求項5の考案に係る柱脚施工具は、前記第一側面部材は、前記型体の側面を構成する平板状に形成されることを特徴として構成されている。
請求項5に係る考案によれば、第一側面部材を単純な形状として低コストに形成することができる。
また、請求項6の考案に係る柱脚施工具は、前記第二側面部材は、前記型体の側面を構成する側面部と、該側面部と対向し前記型体の中央に向かう方向に沿って下り傾斜状の斜面部とを有し、2つの前記第二側面部材間に前記斜面部同士が対向する空間部が形成され、該空間部に前記中央部材が配置されることを特徴として構成されている。
請求項6に係る考案によれば、空間部が下に行くほど狭くなるように形成されるので、コンクリートの打設後に中央部材を抜けやすくすることができる。
さらに、請求項7の考案に係る柱脚施工具は、前記中央部材は、互いに対向する前記斜面部にそれぞれ当接する傾斜側面部を両側に有することを特徴として構成されている。
請求項7に係る考案によれば、中央部材の傾斜側面部が第二側面部材の斜面部に当接し、中央部材によって確実に第二側面部材を支持できる。
さらにまた、請求項8の考案に係る柱脚施工具は、前記第二側面部材は前記型体の底面を構成する側方下面部を有し、前記中央部材は前記型体の底面を構成する中央下面部を有し、該中央下面部と前記側方下面部が連続状となることを特徴として構成されている。
請求項8に係る考案によれば、側方下面部と中央下面部によって、型体の底面を平面状とできるので、その他の部材を設けることなく、固定穴の底面を平面状に形成することができる。
そして、請求項9の考案に係る柱脚施工具は、前記第二側面部材は前記型体の天面を構成する側方上面部を有し、2つの前記第二側面部材の前記側方上面部間を渡すように押さえ部材が設けられ、該押さえ部材は前記土台部材に対し固定されることを特徴として構成されている。
請求項9に係る考案によれば、コンクリートの打設時に第二側面部材が浮き上がることを防止することができる。
また、請求項10の考案に係る柱脚施工具は、前記中央部材は、前記型体の天面を構成する中央上面部を有し、該中央上面部と前記側方上面部が連続状となることを特徴として構成されている。
請求項10に係る考案によれば、コンクリートの打設時に、押さえ部材によって第二側面部材と共に中央部材についても浮き上がることを防止することができる。
さらに、請求項11の考案に係る柱脚施工具は、前記型部材の上部には前記固定穴の上縁部を構成する縁部材が設けられ、該縁部材は前記コンクリート基礎の上面に露出する縁上面部を有することを特徴として構成されている。
請求項11に係る考案によれば、縁部材によって固定穴の縁部分を補強して、角部分の欠けなどを防止することができる。
さらにまた、請求項12の考案に係る柱脚施工具は、前記縁上面部には前記柱脚に当接する位置決め面を有した位置決め部材が設けられることを特徴として構成されている。
請求項12に係る考案によれば、固定穴に下端部を挿入した柱脚について、挿入後に精密な位置決めを行うことができる。
そして、請求項13の考案に係る柱脚施工具は、前記位置決め部材は、前記位置決め面を有し前記縁上面部上を摺動自在な本体部と、該本体部に対して回動自在な回動部とを有し、該回動部は、前記縁上面部に対して固定する締結具を挿通する長孔部を有することを特徴として構成されている。
請求項13に係る考案によれば、位置決め部材が締結具の位置を基準に一つのプレートで任意の方向に移動することができ、少ない部品数で直線方向及び回転方向の移動を可能とすることができる。
また、請求項14の考案に係る柱脚施工具は、前記回動部は前記本体部の2箇所に設けられ、前記縁上面部は前記締結具を固定可能な固定孔を2つの前記回動部に対応して有することを特徴として構成されている。
請求項14に係る考案によれば、位置決め部材の回転方向における移動の自由度をより大きくすることができる。
さらに、請求項15の考案に係る柱脚施工具は、複数の前記側面部材が互いに離隔し、前記固定穴の内側面に沿う中間部材を介して連続するように配置されることで、前記型体を形成することを特徴として構成されている。
請求項15に係る考案によれば、形成しようとする固定穴の一辺の長さが異なる場合には、中間部材のみを変更することで、型体の一辺の長さを変更することができ、側面部材は共通して用いることができるので、様々な大きさの固定穴を形成する場合に、柱脚施工具の部品の種類を少なくすることができ、コスト削減及び運搬の容易化などを図ることができる。
さらにまた、請求項16の考案に係る柱脚施工具は、複数の前記側面部材はいずれも同形状に形成されることを特徴として構成されている。
請求項16に係る考案によれば、側面部材の種類を一つにすることができ、部品の製造を容易化し、コスト削減を図ることができる。
そして、請求項17の考案に係る柱脚施工具は、前記型体は4つの側面を有し、前記側面部材は4つが設けられ、それぞれの前記側面部材は、それ以外の側面部材と対向する3つの対向面部を有することを特徴として構成されている。
請求項17に係る考案によれば、各側面部材間に対向面部同士が対向する隙間が形成されるので、固定穴の形成後に、側面部材を隙間方向に傾倒させることで、これを確実に剥離させることができる。
また、請求項18の考案に係る柱脚施工具は、前記側面部材は、前記固定穴の深さ方向において一方側から他方側に向かって断面積が大きくなるように形成されることを特徴として構成されている。
請求項18に係る考案によれば、固定穴の形成後に、その内側面から側面部材を剥離しやすい形状とすることができる。
さらに、請求項19の考案に係る柱脚施工具は、前記中間部材は長尺板状に形成され、前記側面部材は前記中間部材の幅方向端部を保持する保持部を有することを特徴として構成されている。
請求項19に係る考案によれば、中間部材を単純な板形状とすることができ、製造や運搬を簡単にすることができる。
さらにまた、請求項20の考案に係る柱脚施工具は、前記型部材の上部には前記固定穴の上縁部を構成する縁部材が設けられ、該縁部材は前記コンクリート基礎の上面に露出する縁上面部を有し、
前記側面部材は、それぞれ前記型体の天面を構成する上面部を有し、隣接する2つの側面部材の上面部間を渡すように押さえ部材が設けられ、該押さえ部材は前記縁上面部に対して固定される高さ調整固定部材に対して固定され、該高さ調整固定部材は、前記押さえ部材を前記縁部材から所定の高さ範囲内で固定することを特徴として構成されている。
請求項20に係る考案によれば、型部材の高さを大きく形成しておいても、押さえ部材を固定穴の深さに応じて高さを調整し縁部材に対し固定することができる。すなわち、異なる深さの固定穴を一つの型部材で形成することができる。
本考案に係る柱脚施工具によれば、柱脚の下端部を埋め込む固定穴をコンクリート基礎に容易に形成することのでき、しかも軽量で再利用可能なものとすることができる。
本考案の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。本実施形態では、建物の基礎となるコンクリート基礎2に柱脚4を立設した構造、柱脚4をコンクリート基礎2に立設するために用いられる柱脚施工具10、及び柱脚4をコンクリート基礎2に立設する施工方法について、それぞれ説明する。
まず、建物の基礎となるコンクリート基礎2に柱脚4を立設した構造について説明する。図1には、コンクリート基礎2の平面図を示している。コンクリート基礎2には、柱脚4の下端部を埋設固定するための固定穴3を有する柱脚基礎部2aが、所定間隔おきに配置され、各柱脚基礎部2a間は梁部2bによってつながれている。埋設された柱脚4は、これに作用する軸方向、せん断、及び曲げモーメントをコンクリート基礎2に伝達するため、柱脚4を支える柱脚基礎部2aは、梁部2bよりも太くなるように形成されている。ただし、柱脚基礎部2aは梁部2bと同幅であってもよい。
さらに、コンクリート基礎2の周縁部に配置される柱脚4からの各モーメントを受けるために、コンクリート基礎2の端部には、梁部2bの延長上に張出部2cがそれぞれ形成されている。これにより、コンクリート基礎2の周縁部について、柱脚4からの大きな力を受けるための強度を確保することができる。
図2には、柱脚4の下端部を位置決めしたコンクリート基礎2の断面図を示している。コンクリート基礎2は、コンクリート土台1上に形成されている。コンクリート土台1は、地面上の建物を建てる領域に薄く打設されて平滑面を形成するものであり、建物を建てる面を平滑にすると共に、墨出しの基準としても使われる。なお、地盤が弱い場合などには、予め地面に杭が打ち込まれており、そこにコンクリート土台1が形成される。また、地盤が強固な場合などには、地盤改良などにより地面を平滑にして、そこに直接コンクリート基礎2を形成することもある。本実施形態の柱脚施工具10は、そのような場合であっても使用することができる。
コンクリート基礎2には、前述のように固定穴3が形成されており、この固定穴3に柱脚4の下端部が納められる。固定穴3は、柱脚4よりも一回り大きく形成されており、柱脚4の側面と固定穴3の内側面との間には、隙間が形成される。固定孔3の底面には、金属製の底部材33が設けられている。底部材33は、固定孔3の底面のうち中央部分を構成している。また、柱脚4の下端部にはスペーサー部材14が設けられる。スペーサー部材14は、ネジ部14aと台座部14bとを有し、柱脚4の下端部に予め設けられている固定用ナット14cと螺合される。台座部14bは固定穴3の底面に載置されるので、ネジ部14aと固定用ナット14cによって、柱脚4の下端面の固定穴3に対するレベル調整をすることができる。また、台座部14bは、下面側が曲面状に形成されていて、この曲面部分が固定孔3の底面に設けられた底板材33に対して当接する。これにより、柱脚4を所定の位置及び角度に調整する際に、台座部14bが底板材33上を摺動することができ、円滑に位置決め調整を行うことができる。また、台座部14bが当接する底板材33は金属製なので、台座部14bが底板材33上を摺動した際に、固定穴3を傷付けるなどすることを防止できる。ネジ部14aには、さらに柱脚4の下端面側にズレ防止用ナット14dが設けられている。ネジ部14aと固定用ナット14cによってレベル調整を行ったら、ズレ防止用ナット14dを締めることにより、スペーサー部材14が固定される。これにより、固定穴3の底面と柱脚4の下面との間にも、所定の隙間が形成される。柱脚4の施工時には、柱脚4の下端部を図2のように固定穴3内に位置決めした上で、固定穴3にグラウト5を注入し、硬化させることで柱脚4を固定する。その後、コンクリート基礎2上には、床仕上げコンクリート6が打設される。
柱脚4の下端部には、側面に板バネ部材15が設けられている。板バネ部材15は、柱脚4の各側面に設けられており、固定穴3の内側面に対し弾性的に当接する。この板バネ部材15により、柱脚4の位置決め時において、柱脚4の下端部が振れることを防止することができる。
固定穴3の上縁部には、断面略L字状の縁部材24が配置されている。縁部材24は、コンクリート基礎2の上面に露出する縁上面部24aと、固定穴3の内側面に露出する縁側面部24bとを有している。また、縁部材24からコンクリート基礎2内に伸びるアンカー部24dを有している。このアンカー部24dがコンクリート基礎2に埋設されていることで、縁部材24がコンクリート基礎2に対し強固に固定されている。縁部材24は、固定穴3の開口部分を補強する機能を有すると共に、柱脚4の位置決めのために設けられる位置決め部材13を固定することができる。
縁部材24には、位置決め部材13が複数取付けられる。位置決め部材13は、柱脚4の側面に対し当接する位置決め面41を有すると共に、コンクリート基礎2に固定された縁部材24に対して一定範囲で移動可能となるように構成されており、柱脚4のコンクリート基礎2に対する位置決めを行うことができる。その詳細については後述する。
次に、柱脚4をコンクリート基礎2に立設するために用いられる柱脚施工具10について説明する。図3には、コンクリート土台1上に取付けられた柱脚施工具10の正面図を示している。柱脚施工具10は、コンクリート土台1上に固定される土台部材11と、土台部材11の上に載置される型体12と、型体12の上端縁部に固定される前述の縁部材24と、コンクリート打設時に型体12が浮き上がらないように固定する押さえ部材25と、コンクリート基礎2を基準に柱脚4を位置決めするための位置決め部材13とを有している。このうち、型体12と位置決め部材13及び押さえ部材25は、固定穴3が形成された後にコンクリート基礎2から取り外されるので、再利用が可能である。
土台部材11は、アンカー部材32によりコンクリート土台1に固定される横部材30aと、横部材30aに固定される縦部材30bとからなる土台部30と、土台部30の上部に固定され型体12を載置可能な載置部31とを有している。土台部材11の部品は、いずれも金属製のアングル材によって構成されている。
載置部31に載置される型体12は、固定穴3の内側面に沿う第一側面部材20及び第二側面部材21と、第一側面部材20と第二側面部材21により形成される空間部に取付けられる中央部材22とを有している。なお、図3では、本来は第一側面部材20が型体12の正面を構成するが、その記載を省略している。
型体12は、図中正面と背面にそれぞれ平板状の第一側面部材20を有し、図中左右側面にそれぞれ第二側面部材21を有している。これらと中央部材22によって、型体12は略直方体状の外形状を有している。したがって、型体12によって形成される固定穴3も、内形状が略直方体状となる。型体12の第一側面部材20と第二側面部材21及び中央部材22は、樹脂材または金属材によって構成することができる。
縁部材24は、第二側面部材21と締結具53により連結固定されている。縁部材24の縁側面部24bには、締結具53を挿通するための孔及びそれに対応してナット50が予め設けてあり、第二側面部材21との連結が可能となるように形成されている。縁部材24の縁上面部24aには、位置決め部材13を固定するためのナット51が設けられている。また、土台部材11の載置面31cにも、ナット52が予め設けてあり、押さえ部材25から挿通された締結具54がナット52に螺合される。これにより、押さえ部材25を土台部材11と固定し、型体12の浮き上がりを防止することができる。
第二側面部材21は、型体12の側面を構成する垂直面からなる側面部21aと、側面部21aと対向し型体12の中央に向かう方向に沿って下り傾斜状の斜面部21bとを有している。互いに対向する2つの第二側面部材21の斜面部21bにより、第二側面部材21間には下方に向かって幅が狭くなる断面台形状の空間部が形成される。このため、中央部材22も断面台形状となるように形成されている。中央部材22は、型体12の中央部分を埋めるように設けられるので、コンクリート打設時に第一側面部材20や第二側面部材21が受ける圧力に対抗し、型体12の側面が変形することを防止できる。
コンクリート基礎2を形成するコンクリートは、縁部材24の縁上面部24aと面一状となる位置まで打設される。したがって、柱脚施工具10を構成する土台部材11及び型体12はコンクリート内に埋設された状態となる。コンクリートが硬化したら、型体12をコンクリート基礎2から取り外すことで、コンクリート基礎2に固定穴3が形成される。その工程の詳細については後述する。
次に、柱脚4をコンクリート基礎2に立設する施工方法について説明する。本実施形態では、コンクリート土台1は予め形成されているものとする。まず、コンクリート土台1上に土台部材11を設置する。図4には土台部材11の分解斜視図を、図5には土台部材の平面図を、図6には土台部材11の正面図を、それぞれ示している。
土台部30の横部材30aと縦部材30bは、いずれも断面略L字状のアングル部材によって構成されている。横部材30aは、前述のようにアンカー部材32によってコンクリート土台1に固定されている。また、縦部材30bは、溶接接合によって横部材30aと一体化されている。縦部材30bは、1本の横部材30aあたり2本が固定されており、縦部材30bの間隔は2本の横部材30aで同じとなるように配置されている。
土台部材11を構成する載置部31は、2本の固定横部材31aと、2本の載置横部材31cとが、方形状をなすように組まれている。固定横部材31aは、断面略L字状のアングル部材によって構成されており、鉛直となる側の面が土台部30との固定面31bとなっている。固定面31bは土台部30を構成する縦部材30bに当接し、溶接接合により両者が一体化される。
載置横部材31cは、断面略L字状のアングル部材によって構成されており、2本の固定横部材31aの端部間を渡すようにそれぞれ配置される。載置横部材31cは、型体12を載置する載置面31dと、載置面31dから垂直方向に伸びる垂直面31fとを有し、載置面31d上の両端部近傍には、それぞれ押さえ部材25から挿通された締結具54を螺合するナット52が取付けられている。また、載置横部材31cの両端部には、それぞれ側面31eが形成されている。側面31eは、断面略L字状の載置横部材31cを構成する各面の端部間をつなぐ辺を有した略三角形状に形成されている。
図5に示すように、土台部材11は、載置部31によって四周に枠組みされた枠内に、土台部30の縦部材30bが配置されるようになっている。また、載置部31を構成する両側の載置横部材31cによって形成される側面31eと垂直面31fによって囲まれた領域は、方形状をなしており、この領域に対して破線で示すように型体12が配置される。
土台部材11を設置したら、その上に型体12を載置する。施工現場では、型体12を構成する第一側面部材20と第二側面部材21及び中央部材22は、分解された状態で運ばれてきており、これらを土台部材11の上に順次載置していくことによって、型体12が形成される。
まずは、土台部材11に対して第一側面部材20及び第二側面部材21が載置される。図7には、型体12を構成する第一側面部材20と第二側面部材21とを組んだ状態の平面図を示している。第一側面部材20は、平板状に形成されており、型体12のうち互いに対向する2つの側面をなす側面部20aを有している。これら第一側面部材20間を渡すように、両側に第二側面部材21が配置されている。
第二側面部材21は、型体12のうち第一側面部材20によって形成される2つの側面以外の側面を構成する側面部21aを有し、さらに側面部21aと対向するように斜面部21bを有している。斜面部21bは、型体12の中央側に向かって下り傾斜状となっており、2つの第二側面部材21間に、斜面部21b同士が対向する断面台形状の空間部が形成される。
次に、第二側面部材21間に形成される空間部に中央部材22が配置される。図8には、型体12を構成する第一側面部材20及び第二側面部材21と中央部材22との分解断面図を示している。2つの第二側面部材21間に形成される空間部には、断面台形状の中央部材22が配置される。中央部材22は、両側に傾斜側面部22aを有し、傾斜側面部22aが第二側面部材21の斜面部21bに対して当接する。
また、中央部材22は、台形の短い底辺を構成する中央下面部22cと、台形の長い底辺を構成する中央上面部22dとを有している。中央下面部22cは、中央部材22が空間部に配置されることで、第二側面部材21の側方下面部21cと面一状となり、中央上面部22dは、中央部材22が空間部に配置されることで、第二側面部材21の側方上面部21dと面一状となる。したがって、中央部材22を空間部に配置することにより、型体12は全体として略直方体状となる。
型体12の外形状は、コンクリート基礎2に形成される固定穴3の内形状となるが、固定穴3に注入されるグラウトによる柱脚4の固定強度を大きくするために、型体12の外形状は以下のように工夫されている。
第二側面部材21の側面部21aは、僅かに上辺が短く下辺が長い台形状に形成されている。このため、第二側面部材21の側面部21aは、両側の縦辺が若干傾斜状となっている。第一側面部材20は、側面部21aの傾斜に沿って若干傾斜した状態とされる。これにより、型体12は両側の第一側面部材20間を渡すように切った断面が僅かに台形状となる。型体12の形状に対応して形成される固定穴3も、下側の幅が広い台形状をなすことになる。
固定穴3の下側の幅が広いことにより、特に柱脚4に固定穴3から抜ける方向の大きな力が加わった場合にも、グラウトが下側に行くほど厚みを増すために、柱脚4の固定強度が十分に確保される。ただし、型体12は必ずしも台形状でなくてもよい。
また、第一側面部材20の側面部20a及び第二側面部材21の側面部21aには、それぞれ微小な凹凸が形成されている。凹凸は、上下方向に沿って凹と凸とが繰り返される形状を有している。これにより、固定穴3の表面にも、上下方向にそって凹と凸とが繰り返される形状が形成されることとなる。固定穴3の内面に凹凸が形成されていると、グラウトとコンクリート基礎2との間に働く剪断力に対する強度が大きくなり、柱脚4の固定強度を大きくすることができる。
もし、型体12全体をコンクリートの打設後にコンクリート基礎2から引き抜く施工方法であった場合には、型体12の側面に凹凸が形成されていると、コンクリート基礎2から引き抜くことは困難であるから、凹凸の形成ができないが、本実施形態では、型体12を構成する第一側面部材20や第二側面部材21は、コンクリート基礎2から剥離させるため、凹凸があっても容易に離型が可能である。すなわち、側面に凹凸の形成をして柱脚4の固定強度向上を図ることができる。ただし、型体12の側面に凹凸は必ずしも形成されていなくてもよい。
図9には、土台部材11上に第一側面部材20及び第二側面部材21を載置したものと中央部材22との分解斜視図を示している。型体12は、前述のように、土台部材11の上に載置される。この際、土台部材11を構成する載置部31には、載置横部材31cに側面31eが形成されていることにより、型体12を土台部材11に対して確実に位置決めすることができ、載置した後に位置がずれることを防止することができる。
第二側面部材21間の空間部に納められる中央部材22は、第二側面部材21の斜面部21bに対応して配置される傾斜側面部22aと、それらと直交する方向における側面である垂直側面部22bとを有している。垂直側面部22bは、平板状に形成された第一側面部材20の内面側に当接する。したがって、空間部に納められた中央部材22は、第一側面部材20及び第二側面部材21に対して内面側から当接する。
中央部材22には、後で抜けやすくするために、傾斜側面部22aに剥離剤を塗布しておくことが望ましい。剥離剤としては、油性タイプ、水溶性乳化タイプ、ラッカータイプなどがあり、いずれでも用いることができる。
土台部材11上に型体12を載置したら、型体12の上端縁部に縁部材24を取付ける。図10には、土台部材11上に型体12を載置したものと縁部材24との分解斜視図を示している。縁部材24は縁上面部24aが方形枠状をなすように形成されており、その内側縁が型体12の外形状に適合している。したがって、型体12の上端部は縁部材24の内周側に包まれることになる。また、縁部材24の上面部24aは型体12の上面と略面一状となる。
縁部材24は、前述のように第二側面部材21に対してナット50及び締結具53を用いて固定される。縁部材24には、4つの角付近にそれぞれ位置決め部材13を固定するための固定孔部42cが設けられている。また、縁部材24をコンクリート基礎2に対し強固に固定するためのアンカー部24dは、縁部材24の各辺中央部付近に設けられている。
型体12に縁部材24を取付けたら、縁部材24に対して押さえ部材25を取付ける。図11には、土台部材11上に型体12が載置され縁部材24が固定されたものと押さえ部材25との分解斜視図を示している。押さえ部材25は、それぞれ型体12の第一側面部材20が配置される辺に沿う方向を向いて、型体12の上面に当接し、前述のように固着される。第二側面部材21には、上面に押さえ部材25を固定するための締結具54を挿通するための孔部21eが形成されている。孔部21eの直下には、載置部31のナット52が配置され、このナット52に締結具54が螺合される。なお、図11では押さえ部材25を固定する型体12の四隅のうち1つについてのみ符号を付し、締結具54及びナット52を示しているが、他の三隅についても同様である。型体12を構成する第二側面部材21の側方上面部21dと中央部材22の中央上面部22dとは面一状となっているので、押さえ部材25により両部材の上面を上から押さえておくことができ、コンクリート基礎2の打設時において、浮力により型体12が浮き上がることを防止することができる。
ここまでの工程で、柱脚施工具10は図3に示した状態となる。この状態で、コンクリート土台1の上方にコンクリートを打設する。コンクリートは、縁部材24の縁上面部24aの位置まで打設され、硬化される。これによって、土台部材11と型体12はコンクリートの中に埋設された状態となる。
コンクリートが硬化したら、まず押さえ部材25を取り外す。次に、型体12を構成する中央部材22を引き抜く。中央部材22は、コンクリートが打設された際の圧力を受けているが、傾斜側面部22aによって上方ほど幅が広くなるように形成されていること、及び傾斜側面部22aに剥離剤が塗布されていることにより、型体12から容易に引き抜くことが可能である。
次に、コンクリート基礎2から第二側面部材21を取り除く。図12には、コンクリート基礎2から第二側面部材21を剥離する工程の断面図を示している。第二側面部材21は、コンクリート基礎2に形成された固定穴3の側面から剥離させることで、容易に取り除くことが可能である。第二側面部材21を取り除いたら、第一側面部材20もコンクリート基礎2から剥離させて取り除く。これにより、コンクリート基礎2に固定穴3が形成される。
型体12を構成する第一側面部材20と第二側面部材21及び中央部材22は、このように固定穴3を形成後にコンクリート基礎2から取り外されるので、その後、再利用することが可能である。
コンクリート基礎2に固定穴3を形成したら、位置決め部材13を縁部材24に取付ける。位置決め部材13の詳細について説明する。図13には、位置決め部材13の平面図(図13(a))及び図13(a)のA−A断面図(図13(b))を示している。位置決め部材13は、プレート状に形成された本体部40と、本体部40に対して回動自在な2つの回動部45とを有している。
本体部40は、第一延出部40aと第二延出部40bとが互いに直角をなす方向に伸びるように形成されている。本体部40の内周側は略L字状をなし、本体部40の外周側は、L字の角部が角落ちした形状を有している。本体部40の内周側の辺は、柱脚4の外周面角部に対して当接する位置決め面41となっている。
本体部40は、第一延出部40aと第二延出部40bのそれぞれに円形状の穴部42を有し、この穴部42に回動部45が嵌め込まれている。図13(b)に示すように、穴部42の内周面には、全周に渡る凹状の溝部43が形成されている。一方、回動部45の外周面には、溝部43に適合する突部47が鍔状に形成されている。突部47が溝部43に挿入されていることで、回動部45は本体部40に対して回動自在となっている。
各回動部45には、中央部に長孔部46が形成されている。回動部45が本体部40に対して回動自在であることにより、長孔部46も本体部40に対して回動することができる。回動部45には、位置決め部材13を縁部材24に対して固定するための締結具55が挿通される。
図14には、縁部材24に位置決め部材13を取付けた状態の平面図を示している。なお、本図以降では位置決め部材13の固定に用いる締結具55の頭部は省略している。縁部材24の上面部24aには、前述のように角部に固定穴部24cが形成されており、位置決め部材13の固定のための締結具55が挿通される。締結具55を挿通した段階では、位置決め部材13は縁部材24に対して仮止めされている状態であり、まだ固定されていないので、位置決め部材13を回動部45の長孔部46に沿って移動させることができる。
図15には、図14の状態から位置決め部材13を図中横方向に移動させた状態の平面図を示している。図15では、位置決め部材13の2つの回動部45は、いずれも長孔部46が図中横方向に沿うように配置されており、また、縁部材24に挿入された締結具55は、縁部材24に対する位置が不変である。さらに、図14の状態では締結具55が2つの長孔部46のそれぞれ中央位置にあるから、位置決め部材13をそれよりも図中横方向に移動させることが可能である。これに伴い、位置決め部材13の位置決め面41も図中横方向に移動させることができる。
図16には、図14の状態から位置決め部材13を図中縦方向に移動させた状態の平面図を示している。図16では、位置決め部材13の2つの回動部45は、いずれも長孔部46が図中縦方向に沿うように配置されている。このため、図15の場合と同様、位置決め部材13を図14の位置から図中縦方向に移動させることが可能である。これに伴い、位置決め部材13の位置決め面41も図中縦方向に移動させることができる。
図17には、図14の状態から位置決め部材13を回転方向に移動させた状態の平面図を示している。この図に示すように、位置決め部材13の2つの回動部45の角度を変えて、長孔部46同士が異なる角度を向くように配置することで、いずれかの締結具55の位置を中心に位置決め部材13を縁部材24に対し回動させることもできる。これに伴い、位置決め部材13の位置決め面41も回動方向に移動させることができる。
図18には、柱脚4が位置決め部材13により位置決めされた状態における平面図を示している。柱脚4の位置決めを行う際には、予め縁部材24の少なくとも2つの角に、それぞれ位置決め部材13を締結具55によって仮止めしておく。このとき、位置決め部材13は、それぞれの位置決め面41が柱脚4の角部の位置に配置されるように、コンクリート基礎2を基準としてできるだけ正確に位置決めをしておくことが望ましい。
位置決め部材13を仮止めしたら、柱脚4の下端部を固定穴3内に挿入する。挿入したら、柱脚4の少なくとも2つの角部を位置決め部材13の位置決め面41に当接させ、最初の位置決めを行う。柱脚4を挿入したら、残りの位置決め部材13を縁部材24に対して仮止めし、位置決め面41を柱脚4の角部に当接させる。
続いて、固定穴3に挿入した柱脚4を、コンクリート基礎2を基準に正確に位置決めする。位置決めの際、位置決め部材13を前述のように直線方向及び回転方向に移動させつつ、柱脚4の位置を微調整することができる。正確な位置決めができたら、4つの位置決め部材13の締結具55を縁部材24に対して固定し、柱脚4がそれ以上移動しないように固定する。この段階で、柱脚4の平面方向における位置は確定する。続いて、柱脚4の傾きを調整する。その上で、固定穴3内にグラウトを注入し、硬化させる。
グラウトが硬化することで柱脚4がコンクリート基礎2に固定されたら、位置決め部材13は縁部材24から取り外すことができる。したがって、位置決め部材13は再利用することが可能である。
以上のように、本実施形態の柱脚施工具10は、固定穴3の内形状を規定する型体12を有し、型体12は固定穴3の内側面に沿う第一側面部材20と第二側面部材21とを有し、第一側面部材20及び第二側面部材21は、コンクリート基礎2が打設された状態でそれぞれ固定穴3の内側面から剥離可能とされたことにより、型体12を複数の部品で構成することができ、重機等を用いることなく型体12を容易に所定位置に配置することができる。また、コンクリート基礎2の打設後には固定穴3の内側面から剥離可能であるため、型体12を再利用することができる。
また、柱脚施工具10は、2つの第二側面部材21間に中央部材22が設けられることにより、コンクリート打設時に第一側面部材20や第二側面部材21が受ける圧力に対抗し、型体12側面の変形を防止することができる。第二側面部材21は、側面部21aと対向し型体12の中央に向かう方向に沿って下り傾斜状の斜面部21bを有し、2つの第二側面部材21の斜面部21b間に、両側に傾斜側面部22aを有する中央部材22が配置されることにより、固定穴3の形成後に型体12を取り外す際、周囲から圧力を受けた状態の中央部材22を容易に抜くことができる。
また、柱脚4のような部材を位置決めする場合、プレート状の位置決め部品を設けることがある。位置決めのためには、任意の方向への移動や回転方向の移動が必要となるが、従来は、複数方向への移動が可能な位置決め部品としては、複数枚のプレートを重ねて、各プレートには、異なる方向に移動できるようにそれぞれ異なる方向に長い長孔を設けたものが知られていた。
しかし、複数のプレートを重ねて位置決め部品を形成した場合、部品数が多くなると共に、プレートごとに移動できる方向が規定されるため、任意の方向への移動及び回転は不可能であった。
そこで、本実施形態の位置決め部材13は、位置決め面41を有する本体部40と、本体部40に対して回動自在な回動部45とを有し、回動部45は、締結具55を挿通する長孔部46を有するようにしたことで、位置決め部材13が締結具55の位置を基準に一つのプレートで任意の方向に移動することができる。さらに、回動部45は本体部40の2箇所に設けられ、それぞれ長孔部46を有していることで、位置決め部材13の回転方向における移動の自由度をより大きくすることができる。
また、予め形成されたコンクリート土台1に土台部材11を固定し、固定穴3の内形状を規定する型体12を土台部材11上に載置し、型体12は、固定穴3の内側面に沿う側面部材20,21を有し、土台部材11上に型体12を載置した状態で、コンクリートを打設してコンクリート基礎2を形成し、打設したコンクリート基礎2から側面部材20,21を剥離して除去することで固定穴3を形成し、形成された固定穴3に柱脚4の下端部を挿入して位置決めし、固定穴3内にグラウトを注入して柱脚4を固定するという柱脚4の施工方法により、柱脚4の下端部を埋設するための固定穴3を容易に形成することができる。さらに、コンクリート基礎2の打設を1回とすることができるので、コンクリート基礎2の打設が2回必要となる、さや管を用いる施工方法に比べて、工数を少なくすることが可能である。
以上、本考案の実施形態について説明したが、本考案の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
例えば、本実施形態では側面部材として第一側面部材20と第二側面部材21を用い、それぞれが型体12の4つの側面を構成する側面部20a,21aを有するように構成したが、側面部材は形成した固定穴3から剥離できるように構成されていればよく、固定穴3の2つ以上の辺にまたがるように形成されていてもよい。その例として、図19には変形例にかかる側面部材60の平面図を示している。
本変形例の側面部材60は、固定穴3の二辺のうちそれぞれ半分ずつを構成することができる。図19に示すように、側面部材60は第一腕部61と第二腕部62とを有し、ヒンジ部62を介して互いに回動自在となるように形成されている。第二腕部62は、第一腕部61に対して破線で示すように最大90度の角度まで開くことができる。また、第一腕部61の先端部61aと第二腕部62の先端部62aは、いずれも他の部分と比べて厚みが半分となるように形成されている。
図20には、側面部材60を組み合わせた状態の平面図を示している。この図に示すように、第一腕部61と第二腕部62が90度の角度をなすように開いた状態の4つの側面部材60が、方形状となるように組み合わされる。これにより、型体12の4つの側面を形成することができる。また、固定穴3の形成後は、それぞれの側面部材60を閉じるように動かすことにより、側面部材60を固定穴3の側面から容易に剥離することができる。
また、この場合には、側面部材60によって囲まれた空間部が直方体状となっているため、中央部材を空間部に挿入した場合に、コンクリート打設後に引き抜くための構造が必要となる。
図21には、側面部材60内に本変形例の中央部材70を配置した平面図を示している。本変形例の中央部材70は、可撓性及び伸縮性を有する素材によって形成されている。中央部材70の内部は、隔壁部71によって複数の区画に仕切られた中空状となっており、その中空内部には空気を充填することができる。空気の充填前の状態における中央部材70は、4つの側面部材60によって形成された空間部よりも小さい外形状を有している。
図22には、中央部材70の内部に空気を充填した状態の側面部材60の平面図を示している。この図に示すように、中央部材70は空気を充填することにより膨張し、空間部を満たすと共に、側面部材60の内側面に対して圧接した状態となる。中央部材70によって側面部材60が内側から押圧されていることにより、側面部材60はコンクリート打設時の圧力に対抗することができる。
コンクリートを打設して固定穴3が形成されたら、中央部材70の内部に充填された空気を抜くことで、中央部材70は再び図21のような状態となるから、側面部材60によって形成された空間部から容易に取り除くことができる。中央部材70を取り除いたら、側面部材60を固定穴3の内側面から剥離してこれも取り除くことができる。
なお、本変形例では、側面部材60に囲まれた領域内で中央部材70を膨張させるようにしているが、中央部材70の膨張した形状を精度よく形成し、中央部材70のみで固定穴3の形状を規定できるのであれば、側面部材60を用いることなく、中央部材70のみで型体を構成してもよい。これにより、柱脚施工具の部品数が少なく、また、施工も簡単にすることができる。
また、土台部材11の構成としては、コンクリート土台1上に固定され型体12を載置することができるものであればよく、本実施形態に挙げたものには限られない。
また、第一側面部材20として、本実施形態では板状の部材を用いたが、シート状の部材とし、第二側面部材21及び中央部材22を取り囲んでこれらを一体化し、型体12を形成するようなものであってもよい。
さらに、本実施形態では、1つの型体12で固定穴3を形成しているが、複数の型体12を組み合わせてより大きな固定穴3を形成するようにしてもよい。大きい固定穴3を形成する場合に、固定穴3の大きさを有する1つの型体12を用いてもよいが、その場合、重量が大きくなって、現場に運搬するために重機等が必要となることも考えられる。型体12を複数組み合わせることで、一つ一つの型体12を人が持ち運び可能な程度の重量及び大きさとすることができる。
図23には複数の型体12を組み合わせた場合の平面図を、図24には複数の型体12を組み合わせた場合の正面図を、それぞれ示している。この例では、型体12を平面方向に4個、高さ方向にそれぞれ2個、合計で8個の型体12を組み合わせて、全体としては直方体状の大型体を形成している。この大型体を土台部材(これら各図では図示しない)の上に載置し、押さえ部材25によって上部から押さえておくことで、大型体の大きさを有する固定穴3を形成することができる。
この場合に型体12は、形成したい固定穴3の大きさに合わせて、平面方向及び高さ方向に任意の個数を組み合わせることができる。
次に、本考案の別の実施形態について説明する。図25には、コンクリート土台1上に取付けられた別の形態の柱脚施工具80の正面図を示している。本形態の柱脚施工具80において、土台部材11の構成は、第1の形態の柱脚施工具10と同様であり、型体81の構成が異なっている。本形態の型体81は、側面の四周方向の長さを変更することが可能となるように形成されている。また、型体81の高さは、より大きい固定穴3も形成することができるように、第1の形態よりも大きく形成されている。
型体81は、側面部材82同士が互いに離隔して対向するように配置され、側面部材82間には中間部材83が配置されて一体化されている。離隔して対向する側面部材82は、同じ形状を有するブロック状の部材であり、上下互い違いとなるように配置されることで、一方の側面部材82の第1対向面部82eと、他方の側面部材82の第2対向面部82fとが、互いに対向している。第1対向面部82eと第2対向面部82fの間の隙間は、上下方向に傾斜状となっており、この隙間を埋めるように中間部材83が傾斜状に配置される。
本実施形態において、型体81は形成する固定穴3の深さよりも高く形成されているので、押さえ部材25は縁部材24よりも上方に位置する。押さえ部材25を縁部材24に対して固定するため、縁部材24と押さえ部材25の間には、高さ調整固定部材84が設けられる。その詳細については後述する。
型体81を構成する側面部材82についてさらに説明する。図26には、型体81を構成する側面部材82と中間部材83のうちそれぞれ1つの斜視図を示している。本形態では、直方体状の型体81を形成するために、同形状の4つの側面部材82が必要となる。4つの側面部材82及び4つの中間部材83を組み合わせることによって、図26において破線で表された直方体状の型体81が形成される。
側面部材82は、互いに対向し高さ方向に面する第1平面部82a及び第2平面部82bと、型体81の側面を構成する第1側面部82c及び第2側面部82dと、型体81を構成する他の3つの側面部材82と対向する第1対向面部82e、第2対向面部82f、及び第3対向面部82gを有している。第1側面部82cと第2側面部82dは互いに直交し、かつ、いずれも第1平面部82a及び第2平面部82bとも直交する。また、第1対向面部82e、第2対向面部82f、及び第3対向面部82gは、それぞれ傾斜面状に形成されている。これにより、側面部材82は、形成される固定穴3の深さ方向において、一方側から他方側に向かって断面積が連続的に大きくなる形状となっている。これにより、側面部材82の向きを変えて配置することで、各側面部材82間に均等な隙間を形成しつつ、全体として直方体状の型体81を形成することができる。
側面部材82には、第1側面部82cと第2側面部82dの各端部に、中間部材83の幅方向端部を保持する保持部82hが形成されている。長尺板状に形成された中間部材83の幅方向端部を保持部82h内に納めることにより、中間部材83の表面と第1側面部82c及び第2側面部82dとが連続状となる。したがって、側面部材82と中間部材83とを組み合わせることで、固定穴3の内側面を形成する型体81の側面が、連続した一つの面として形成される。
また、側面部材82には、第1平面部82aから第2平面部82bまで貫通するネジ挿通部82iが形成されている。ネジ挿通部82iには、押さえ部材25からの締結具54が挿通される。
図27には、4つの側面部材82及び4つの中間部材83で形成された直方体状の型体81の平面図を示している。このように、上下逆向きにした側面部材82を互い違いに配置し、側面部材82間に中間部材83を配置することで、側面部材82の第1側面部82cは中間部材83を介して隣接する側面部材82の第2側面部82dと連続状となり、側面部材82の第2側面部82dは中間部材83を介して隣接する側面部材82の第1側面部82cと連続状となる。また、側面部材82の第1対向面部82eは隣接する側面部材82の第1対向面部82eと対向し、側面部材82の第2対向面部82fは隣接する側面部材82の第2対向面部82fと対向し、側面部材82の第3対向面部82gは対角上に配置された側面部材82の第3対向面部82gと対向する。
本形態の型体81は、側面部材82は共通のものを用い、中間部材83のみを変更するだけで、形成しようとする固定穴3の大きさに応じて、一辺の長さを変えることができる。図28には、一辺の長さを大きくした型体81の平面図を示している。この図において、用いられている4つの側面部材82は、いずれも図27のものと同じである。一方、各側面部材82間の隙間は大きくなっており、中間部材83も幅が大きくなっている。このように、幅の大きい中間部材83とすることで、型体81の一辺の大きさを大きくすることができる。逆に、中間部材83の幅を小さくすれば、型体81の一辺の大きさを小さくすることもできる。
図29には、土台部材11上に載置された型体81の斜視図を示している。この図のように、4つの側面部材82と中間部材83により、全体として直方体状の型体81が形成される。型体81は、縁部材24よりも上方に突出している。このため、型体81の上面に取付けられる押さえ部材25は、縁部材24に対して直接固定することができない。そこで、押さえ部材25を縁部材24に固定するための高さ調整固定部材84が設けられる。
図30には、押さえ部材25を高さ調整固定部材84によって縁部材24に固定した斜視図を示している。高さ調整固定部材84は、縁部材24に対して固定される縁部材固定部84aと、押さえ部材25を固定する押さえ部材固定部84bとが、略L字状をなすように形成されている。押さえ部材固定部84bには、高さ方向に沿う長孔84cが形成されている。この長孔84cを介して押さえ部材25に対し締結具84dを締結固定することにより、押さえ部材25を、その高さ方向位置を調整しながら固定することができる。つまり、形成する固定穴3の深さが、型体81の高さよりも浅い場合に、高さ調整固定部材84を用いることで、型体81の上面位置に応じて押さえ部材25を縁部材24に対して固定することが可能となる。これにより、型体81の高さを大きめに形成しておけば、様々な深さの固定穴3を形成する際に、側面部材82及び中間部材83は共通したものを用いることができ、部品の共用化によるコスト削減及び運搬の容易化などを図ることができる。
型体81を押さえ部材25により土台部材11に対し押さえつけた状態で、コンクリートを打設し硬化させることで、固定穴3が形成される。型体81を構成する側面部材82と中間部材83は、組み合わされているだけで固定はされておらず、また、側面部材82間には隙間があるので、コンクリートが硬化した後、それぞれを順次剥離して取り除くことができる。
以上のように、本形態の柱脚施工具10によれば、複数の側面部材82を離隔配置し、それぞれの側面部材82を中間部材83で連続させるようにしたことで、形成しようとする固定穴3の一辺の長さが異なる場合には、板状の中間部材83のみを変更することで、型体81の一辺の長さを変更することができ、側面部材82は共通して用いることができるので、様々な大きさの固定穴3を形成する場合に、柱脚施工具10の部品の種類を少なくすることができ、コスト削減及び運搬の容易化などを図ることができる。