JP3193893B2 - 熱成形物のシートからの切り出し方法 - Google Patents

熱成形物のシートからの切り出し方法

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JP3193893B2
JP3193893B2 JP28601697A JP28601697A JP3193893B2 JP 3193893 B2 JP3193893 B2 JP 3193893B2 JP 28601697 A JP28601697 A JP 28601697A JP 28601697 A JP28601697 A JP 28601697A JP 3193893 B2 JP3193893 B2 JP 3193893B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチックシートの
圧空成形、真空成形その他の熱成形おいて、開口部にア
ンダーカットを有していてよい一次成形物からフランジ
を備えた成形品を切り出すための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、熱成形品、特に開口部にアンダー
カットを有する熱成形品、例えば照明カバー等において
は、成形品を余剰シートから切り出すに際しては、一次
成形品を一旦取り出した後で余剰シート部分を切断して
いた。しかしながら、幅の狭く深いアンダーカットを有
する成形品にあっては、開口部付近で余剰シートを切断
除去するには技術的制約があった。すなわち、補強のた
め開口部周囲に平面シート部分よりなるフランジが残る
ように切断を行うには、一次成形品の幅の狭く深いアン
ダーカット部分に何らかの支持部材を挿入してシートを
支え、これに対して環状の刃を押し当てる等の方法をと
れれることが好ましい。しかしながら、成形後硬化した
樹脂をそのような方法で切断するには非常に大きな圧力
を要し、シートを支える支持部材に大きな強度が必要と
なるにも関わらず、アンダーカット部分が狭く且つ深い
と、満足な強度を支持部材に持たせることが困難であ
り、そのような切断方法は実現できなかった。また、フ
ランジが残るように切断するには、他にも鋸や加熱ワイ
ヤ等の使用も不可能ではないものの、狭い領域であるた
め工程が複雑化するのみならず、非効率的であり、切断
部位の変形等の問題も生じ得るため最終製品形状にも悪
影響を与えるなど、好ましい方法ではなかった。
【0003】このため、開口部にフランジが残るよう一
次成形品の開口部周囲の平面部分において余剰シートを
切断するという方法は従来行われておらず、これまでの
照明カバー等に用いる深いアンダーカット部分を有する
一次成形品からの余剰シートの切断では、一般にアンダ
ーカットの底の部分を、開口部と平行な面で鋸等により
切断しており、従って、従来製品のアンダーカットのあ
る開口部にはフランジが備わっておらず、筒状の切断面
に終わっていた。
【0004】また従来の切断方法では、成形と余剰シー
トの切断除去とが、中間に一次成形品の取り出し工程を
挟んで別個の工程として行われるため、生産効率上無駄
が多く、しかも得られる成形品には開口部にフランジが
無いため開口部の強度が不足し容易に撓むために、実用
的に十分な強度の成形品を製造するには、シートの厚み
を増すことが不可欠であった。これは成形品あたりの樹
脂使用量を増大させ、原料コストに直接反映するととも
に、得られる製品の重さを増大させてしまう結果となっ
ていた。更には、このような従来品では、半径方向の外
力に対する開口部の抵抗力が弱く、撓み易いため、例え
ば照明カバーの場合等には、照明器具本体への取付けに
際して開口部に別途、金具やプラスチック製の枠等を取
付け、それらの剛直な支持によって初めて、照明器具本
体に安定に取付けられるようにしていた。この事もま
た、成形品の使用に際して部品点数を増やし、余分なコ
ストにつながっていた。
【0005】従って、熱成形において、取り分け、深く
且つ狭いアンダーカットを有する場合に、一次成形品か
ら迅速に且つ変形を生じることなく、フランジを備えた
成形品を切り出すための方法に対する潜在的要求があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来方法の
問題点を解消し、熱成形において、たとえ深く狭いアン
ダーカットを有する一次成形品からでも、迅速に且つ変
形を生じることなく、精密に制御された形状のフランジ
を備えるように成形品を切り出すことのできる、効率の
優れた方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、一次成形品
を型から一旦取り出すことなく、切断すべきシート部分
がまだ軟らかいうちに、不要な余剰シート部分を裁断す
る方法を求めて検討を行った。
【0008】熱成形の工程においては、シートはクラン
プ枠によってエアタイトにクランプされて型の外面に固
定され、次いで空気圧(圧空又は真空)その他を利用し
て成形が行われる。このとき型面との接触による冷却に
伴って樹脂が収縮しようとするために、成形直後にクラ
ンプ枠の内側で余剰シート部分を単に裁断すると、クラ
ンプ枠による支持を失って、シートが収縮し、裁断部位
が成形品本体側方向に変位して、寸法に大きな誤差が生
じ得ることが、本発明者により見出された。
【0009】更にまた、一次成形品から張り出した余剰
シートがまだ軟らかいうちにこれを単に裁断しようとす
ると、近傍の樹脂が刃先に引かれて延びて変形したり裁
断部位にバリが残り易く、これらも成形品の寸法精度に
悪影響を及ぼしたりバリ取りの工程を必要とする等の不
利益をもたらす要因となることが判明した。
【0010】本発明者は、これらの問題点を解決するた
めに検討を重ねた結果、クランプ枠の内側における裁断
に際して、裁断位置より内側の、フランジを形成すべき
環状のシート領域を、裁断位置に沿った金属製の環状押
付部材を用いて型外面に押付けて固定すると共に該部材
により押付部分のシートの冷却硬化を促すことによっ
て、裁断直後フランジ領域のシートが成形品の収縮応力
に引かれて内方へ変位するのを防止でき、そのため、シ
ートが硬化しきる前に余剰シート部分を裁断することが
可能となることを見出した。
【0011】更には、環状の雄型刃を、型外面に設けた
環状溝で受けて裁断するようにすることにより、雄型刃
の通るシート領域だけを環状溝上に型との接触を避けて
保持することで、その領域の冷却を周囲より遅らせて相
対的に軟らかな状態を保つことによって、裁断時におけ
る刃の通過を容易にし裁断に要する圧力を極度に減少で
きることを見出した。
【0012】加えて、前記金属製の環状押付部材による
シートの押付を、環状溝の直ぐ内側の領域で行うことに
より、クランプ枠と環状の金属製押付部材との間に張ら
れた余剰シートの裁断に際してバリが生じにくいことを
見出した。
【0013】更に加えて、好ましくは、環状溝の内周縁
と、これに合致する環状の、刃先をその環の内周側に有
する雄型刃とによって裁断を行うことにより、裁断に際
し変形やバリの問題が実質上完全に解決できることを見
出した。
【0014】本発明は、これらの知見を元に、そのよう
な方法の実施を可能にする手段につき更に検討を重ねて
完成させたものである。
【0015】すなわち本発明は、シート状プラスチック
の熱成形により得られる、開口部の周囲に余剰シートを
有する一次成形物から、成形後型からの取り出しに先立
って、該一次成形物の開口部の周囲にフランジを備える
ように該余剰シートから成形品を切り出すための方法で
あって、(1)成形前シートを該型の外面にその開口部
を包囲するようにエアタイトに押さえ付けるクランプ枠
を用意しておくことと、(2)該型外面の、成形前シー
トとの接触面に、該クランプ枠の押し付け位置より内側
に位置した環状溝を設けておくことにより、該シートが
該環状溝上において該型に接触しないようにすること
と、(3)(a)該環状溝と協働して裁断するよう構成
され配置された、熱成形時にはシートに接触しない高さ
の環状の雄型刃と、(b)該雄型刃の内側に配置され
た、その先端面が該雄型刃の先端と同じ高さ乃至先端よ
りも突出しているがしかし熱成形の最中にはシートを押
さえ付けない高さに位置ししかもその先端面が該雄型刃
の先端の高さよりも後退することができるようバネに担
持されて配置されている金属製の環状押付部材とを、一
体となって運動する共通の基盤に備えておくことと、
(4)前記雄型刃の先端が前記環状溝の底に突き当たる
のを該共通の基盤と該型との間の接近を所定限度に止め
ることにより防止する停止機構を、該共通の基盤と該型
との間で構成しておくことと、(5)該環状溝に該雄型
刃を正確に位置合わせするための、該型と該共通の基盤
との間の位置決め機構を設けておくことと、そして
(6)熱成形後、該環状溝上のシート領域が硬化する前
に、前記基盤を該型外面へ向けて押し該基盤を該型外面
へ接近させ、それにより、該環状押付部材の該シートへ
の押付けと該雄型刃によるシートの裁断、及び該停止機
構による該基盤と該型との間の接近停止を、順次行わせ
ることを特徴とする方法を提供する。
【0016】本発明によれば、熱成形後、まだ型とクラ
ンプ枠とに保持された一次成形品の余剰シート部分にお
いて、刃が押し込まれることとなる環状溝の領域ではシ
ートが型に接触していないため、その領域の冷却が抑制
され、該領域が他のシート部分に比して軟らかい間に裁
断を実行できるため、裁断に要する圧力が僅かで済み、
裁断を行う刃を支持する構造に要求される強度もごく小
さくて済む。このため、アンダーカットのない一次成形
品はもとより、従来不可能であった深く且つ狭いアンダ
ーカットのある一次成形品においさえても、アンダーカ
ットのある開口部周囲に筒状の刃を当てて型外面との間
で余剰シートを簡単に裁断除去して、開口部付近にフラ
ンジを備えた最終成形品を得ることが可能となり、成形
と最終成形品の切り出しとを同一装置内一連の一体化し
た工程として実施することができる。同時に、これによ
り、深く且つ狭いアンダーカットのある開口部に高い寸
法精度のフランジを備えた、従来技術では困難であった
形態の成形品を、容易に製造することができる。
【0017】加えて本発明によれば、裁断前に、刃の内
側に配置された金属製の環状押付部材が成形シートに押
し当てられることによって、裁断位置の内側でシートが
力学的に固定されると同時にその部位の冷却硬化が促さ
れるため、裁断後に成形品本体側の収縮応力によって裁
断領域が内方へ変位し成形品が変形するような不都合が
起こらず、開口部周囲のフランジ部分に優れた寸法精度
を保証することができる。
【0018】更にまた、本発明によれば、環状溝上に維
持されたシートを裁断するに当たって、シートは、クラ
ンプ枠と、そして裁断位置の内側のシート領域を金属製
の環状押付部材とによって固定されているため、これら
の間にシートが張られた格好となり、裁断が円滑に達成
でき、裁断部位にバリや変形が生じにくく、直ちに完成
品を取り出すことができる。
【0019】更に加えて、本発明によれば、アンダーカ
ットのある開口部をフランジで補強した成形品が得ら
れ、開口部の変形に対する抵抗力が飛躍的に増大する。
このため、例えば照明カバー等においては、アンダーカ
ット部分の底に更に適宜の突出部を追加的に形成してお
くこと等により、当該突出部を従来の照明カバーにおけ
る様々な取付け金具や取付け枠等に代わるものとして十
分の強度をもって機能させることができるようになる。
従って、従来品のような取付け金具や取付け枠が不要と
なり、この点からも、生産全体のコスト効率を著しく改
善することができる。
【0020】更に、本は発明によればフランジによって
開口部の強度が著しく増すため、シートの肉厚を相対的
に薄くすることが可能となり、この点もまた生産のコス
ト効率を改善する。
【0021】
【発明の実施の態様】本発明において、「フランジ」
は、成形品の開口部から外方に張り出しており、その張
出距離に特に制限はない。但し、一次成形品がアンダー
カットを有するものであり且つ開口部からフランジの張
り出し距離がアンダーカットの深さより短くそのためア
ンダーカット内においてシートの裁断をしなければなら
ない場合に、本発明は取り分け有利である。
【0022】本発明において、クランプ枠は弾性材料を
用いて構成されていてもよい。その場合、雄型刃と環状
押付部材とが備えられている、一体となって運動する共
通の基盤にクランプ枠をも備えておけば、該基盤を型外
面に向けて押すだけで、クランプ枠を弾性変形させて該
環状押付部材の該シートへの押付けと該刃によるシート
の裁断、及び該停止機構による該基盤と該型との間の接
近停止を、順次行わせることができ、装置が構造上単純
化できるため、コスト上有利である。
【0023】クランプ枠を弾性材料を用いて構成すると
き、「弾性材料」は、クランプ枠がシートをエアタイト
にクランプでき、圧空成形・真空成形等の熱成形がなさ
れた後、クランプ枠、環状押付部材及び環状の雄型刃の
配置された共通の基盤を型外面に対して更に押し付けて
相互に更に接近させる事ができる材質・構造のものであ
ればよい。従ってクランプ枠は、その全体が弾性材料で
形成されていてもよく、また非弾性の枠部分を弾性の枠
部分で支持したもので、またその逆でもよく、任意に選
択すればよい。弾性材料の例としてはシリコンゴムが挙
げられるが、これらに限定されない。
【0024】本発明において、「環状溝」は、対応する
雄型刃を受け入れることができる幅及び深さを有するも
のであればよい。また、更に好ましくは、環状溝はその
内周縁の部分で雄型刃と協働してシートを裁断する働き
をするように構成されており、この場合、対応する環状
の雄型刃はその環の内周側に刃先を備えたものである。
なお、ここに「環状」は、円環状に限定されず、楕円、
多角形その他任意の閉曲線を構成する形態を包含する。
【0025】金属製の「環状押付部材」は、雄型刃の先
端と同じ高さであるか又はこれより幾分突出するように
バネによって担持されて、前記共通の基盤上に配置され
ている。但しこの「同じ高さ」は、厳密に等しい高さの
みに限らず、雄型刃の刃先がシートに食い込み裁断を完
了する迄に環状押付部材がシートをしっかりと押付けて
固定することができるものである限り、刃先より僅かに
低いものも包含する。
【0026】前記共通の基盤上の環状押付部材は、やは
り基盤上の雄型刃と共にシートに接近してこれに当接
し、雄型刃が更に前進してシートを裁断するとき、バネ
の圧縮によりシート上に止まってこれを押し続けて固定
する。従って、バネは、熱成形時にはシートを押し付け
ることがないがしかし裁断時にはシートを型外面に固定
する強さで環状押付部材をシートに押し付けることがで
きる寸法及び強さであればよく、つる巻きバネ、板バネ
その他任意のバネを用いてよい。
【0027】また環状押付部材は、金属であり、フラン
ジ部分のシートの冷却・硬化を促進するため、裁断後に
フランジ部分をその位置に保持するのが一層容易とな
る。この作用を増強するには、環状押付部材は、それが
押付ける領域の樹脂量の2倍以上の熱容量を有するもの
であることが好ましく、4倍以上の熱容量を有するもの
であることが更に好ましい。押付られたシートから熱を
受け取った環状押付部材は、工程の他の時間帯の間に自
然に放熱させて、次の押付工程に備えることができる。
また放熱を促進させようとする場合には、例えば環の内
周面等に突起、フィン等を適宜形成又は取付ける等して
表面積を増大させてもよい。
【0028】「停止機構」は、基盤と型外面との間の接
近を一定限度に止めるためのものであり、これにより雄
型刃が環状溝の底に突き当たるのを簡便に防止して刃先
を守る。停止機構は、基盤と型との間で構成されてお
り、その形態は種々であってよい。典型的には、基盤と
型外面との間おいて何れか若しくは双方に設けられた、
又はこれらの中間に挿入支持された所定厚みのブロック
(以下「停止ブロック」という。)が挙げられるが、そ
のような形態に限らず、例えば、基盤から(又は型か
ら)立ち上がった棒状、板状等の突起その他適宜の形態
であってよい。例えば棒状の突起を用いる場合、それら
の突起が挿入される穴を対向する型に(又は基盤に)設
けておいてもよく、それにより型と基盤間の横方向の位
置合わせが同時にできるようにしてもよい。一次成形物
が、幅の狭い深く入り込んだアンダーカットを有する場
合には、アンダーカットに対応する部分の型の厚みが薄
いため環状溝の深さも浅くせざるを得ず、環状刃挿入の
深さの制御も許容誤差を極力小さくしなければならな
い。その場合でも、停止機構として、これら例示したよ
うな機械的な停止機構を用いれば、基盤と型外面との間
の接近限度が極めて精度よく確実に、且つ簡便に制御で
き、問題が生じない。
【0029】アンダーカットを有する成形品の場合、ア
ンダーカット部分を形成する型は、アンダーカットから
出入りする方向に動かすことのできる可動割型として構
成される。該型と前記共通の基盤との間の位置決め機構
は、これら可動割型の外面に設けた前記環状溝に、前記
雄型刃を常に正確に位置合わせするために重要である。
該型と前記共通の基盤との間の位置決めは、当業者に既
知の適宜の方法を用いて行えばよいが、精密且つ簡便な
方法として特に好ましいのは、該型と該共通の基盤との
間の相互の物理的接触を利用するものである。これは一
例としては、該型(又は該共通の基盤)に設けたガイド
穴に該共通の基盤(又は該型)より突出する位置決め棒
を密着摺動可能に通すことによって行うことができる
が、他にも、適当なガイドを用いた任意の形式が可能で
ある。型と基盤との間の接触による位置決めによれば、
可動割型と雄型刃との相対的位置の精密な決定が容易
で、雄型刃と環状溝内周縁との衝突が確実に防止できて
円滑な裁断が可能となる。
【0030】シートの裁断は、環状溝上に位置するシー
ト領域が硬化する前に行われる。これにより、裁断に要
する圧力が、著しく減少できる。これを行う時の該領域
の温度には厳密な制限はないが、好ましくはその樹脂の
ガラス転移点の下方20℃を下回らない温度、より好まし
くはガラス転移点の下方10℃を下回らない温度で行われ
る。例えばガラス転移点が90〜105℃のアクリル樹脂の
場合、裁断は環状溝上に位置するシート領域が70℃を下
回らないうちに行うのが好ましく、80℃を下回らないう
ちに行うのがより好ましい。これにより、裁断の容易さ
と能率の向上との双方を満足させることができる。この
温度範囲で裁断が行われるようにするには、例えば非接
触型の赤外線温度計を用いて裁断部分のシート温度を測
定して、各サイクルにおいて裁断時にその部分が所定の
温度範囲に入るように予めシート加熱条件、各工程の時
間その他の条件を設定しておき、以後それらの条件に従
って成形・裁断を行うようにすればよい。
【0031】
【実施例】以下に本発明の典型的な実施例を挙げること
により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例
の細部によっては限定されない。 〔実施例1〕図1は、圧空成形、真空成形などの熱成形
により製造された、従来技術によるアンダーカットのあ
る成形品の開口部の典型的形状を示す側方断面図であ
る。図に示すように、開口部の縁Eは筒状の断面に終わ
っており、フランジが備えられていないため、強度に劣
る。
【0032】図2は、アンダーカットを有する閉じた型
において圧空成形又は真空成形が行われた後の、本発明
の方法によるプラスチックシート裁断の直前の状態を模
式的に表す。図の装置の位置関係は上下が逆であっても
よい。図において、1は余剰シートであり素材は例えば
アクリル樹脂でその厚みは例えば1.8mmである。2
は、余剰シート1を含む一次成形品に形成された開口
部、4は図において水平方向に可動性である割型5に沿
って形成されたアンダーカット部である。6は、該開口
部を取り囲んでシートを割型外面にエアタイトに固定し
ている環状のクランプ枠であり、本実施例ではシリコン
ゴムで形成されている。
【0033】図3は、成形時におけるアンダーカット部
付近の拡大図である。割型5の外面には環状溝8が形成
されており、環状溝の内周縁とかみ合うよう先端の位置
決めされた雄型刃10が、基盤12に固定されている。
基盤12には、雄型刃の内側に隣接して金属製の環状押
付部材14が、バネ16によって支持されている。環状
押付部材14の上面は、雄型刃10の先端と実質的に同
じ高さか又はこれより突出している。但し、雄型刃10
の先端がシートを完全に裁断する迄に環状押付部材14
がシートを十分に押付けることができる限り、環状押付
部材14の上面は、雄型刃10の先端から僅かに後退し
ていてもよい。熱成形に際しては、シートの変形を妨害
しないよう、環状押付部材14の上面とシートとの間は
離れている。
【0034】基盤12には停止ブロック18が設けられ
ており、これは割型5との間に、隙間20を有する。割
型5にはガイド穴22が形成されており、これに、先端
にテーパを有する位置決め棒24(本実施例では停止ブ
ロックから延びている)が摺動可能に挿入されており、
ガイド穴22と位置決め棒24とによって位置決め機構
が構成されている。ガイド穴22の下周縁に位置決め棒
24のテーパに対応した下方向かって広がる漏斗状斜面
を更に設けてもよい。このような、物理的接触による位
置決め機構により、可動の割型5に設けられた環状溝8
が基盤12に設けられた雄型刃に対して常に正しく位置
決めされる。
【0035】図4に示すように、シートの成形に続いて
基盤12が、例えば油圧シリンダー等の駆動装置により
割型5に向けて移動される。この移動は、クランプ枠が
弾性材料、ここではシリコンゴムで形成され、圧縮によ
り変形可能であるために行うことができる。この移動に
より、環状押付部材14がシートに当たりこれを割型5
の外面に押付けて固定する。金属製の環状押付部材は、
その部位のシートから熱を奪い硬化を早める。これに対
して、環状溝8上に位置するシート領域は、割型5に接
触していないため、冷却が相対的に遅れ、相対的に軟ら
かい状態を維持している。本実施例では、雄型刃10が
シートを裁断するときこの領域がガラス転移点の下方1
0℃を下回らないように、予め工程の諸条件が調整され
ている。
【0036】次いで図5に示すように、更に基盤12が
割型5に向けて更に移動されると、雄型刃10が環状溝
8の内周縁とかみ合ってシートを裁断する。この部分は
上記の通り冷却が遅れており相対的に軟らかいため、冷
却後の場合に比べ、著しく小さい圧力で簡単に裁断する
ことができる。成形品のアンダーカット部にフランジを
設けようとすると、その部分で大きな裁断圧力を支える
ことが困難であるため、従来はこのような位置での裁断
を行う実用的な方法がなかったのに対し、本発明では、
この部位での裁断圧力を非常に小さくすることにより、
そのような裁断を可能にしている。また樹脂が軟らかい
段階で切断を実行できるのは、環状押付部材により裁断
部位の内側で樹脂が型に押付けられて固定され、裁断後
の変形が防止できるためである。
【0037】シートがクランプ枠6と環状押付部材14
とにより固定されその間で裁断されるため、特に、環状
押付部材によるシートの固定が裁断位置の内側に隣接し
て行われているため、裁断が確実であり、バリも生じな
い。またこうして形成されるフランジは、環状押付部材
14により割型5の外面に押し付けられた状態で硬化す
るため、反り等の変形が起こらず、完成品の寸法精度が
高い。
【0038】裁断後は、位置決め棒24がガイド穴22
から脱するまで基盤12を割型5から相対的に遠ざける
よう移動させ、次いで割型5を油圧シリンダーその他適
宜の駆動手段によって図面において左右に移動させてア
ンダーカット部分から抜くことにより、フランジを有す
る最終成形品を型から取り出すことができる。
【0039】図6は、雄型刃10及び環状押付部材14
の一例の側方断面図を模式的に示す。図において、雄型
刃10に沿って配置された環状押付部材14は、つる巻
きバネ16によって担持されている。バネ16は、環状
押付部材14をその環に沿った複数の点で支持するよ
う、複数個が基盤12上に備えられている。バネ16に
担持された環状押付部材14の図面左右方向の変位を阻
止して変位を上下方向に限定するために、基盤12に固
定されたロッド28が、環状押付部材に設けられた穴に
密着してスライド可能に嵌合している。
【0040】図7は、上記の工程により得られた成形品
30を断面図で示す。この成形品30は、アンダーカッ
トのある開口部にフランジ32を備え、これにより開口
部の強度が高められている。
【0041】〔実施例2〕図8は、アンダーカットのな
い、別の実施例の一次成形物の裁断を示す側方断面図で
ある。この実施例における、裁断に関与する各部分の構
成及び機能並びに作動順序は、実施例1と同様であり、
同様に、フランジを備えた成形品を容易且つ効率的に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のアンダーカットのある熱成形品の開口
部の典型的形状を示す側方断面図。
【図2】 本発明による成形直後の、余剰シート裁断前
における、アンダーカットを有する一時成形品の状態を
示す側方断面図。
【図3】 図1の部分拡大図。
【図4】 基盤の移動により環状押付部材によりシート
を割型に押し付けている状態を示す側方断面図。
【図5】 基盤の更なる移動によりシートが裁断された
状態を示す側方断面図。
【図6】 雄型刃及び環状押付部材付近の側方断面図。
【図7】 得られた成形品の側方断面図。
【図8】 本発明による成形直後の、余剰シート裁断前
における、アンダーカットを有しない一時成形品の状態
を示す側方断面図。
【符号の説明】
1=余剰シート、2=開口部、4=アンダーカット部、
5=割型、6=クランプ枠、8=環状溝、10=雄型
刃、12=基盤、14=環状押付部材、 16=バネ、
18=停止ブロック、20=隙間、22=ガイド穴、2
4=位置決め棒、28=ロッド、30=成形品、32=
フランジ

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シート状プラスチックの熱成形により得ら
    れる、開口部の周囲に余剰シートを有する一次成形物か
    ら、成形後型からの取り出しに先立って、該一次成形物
    の開口部の周囲にフランジを備えるように該余剰シート
    から成形品を切り出すための方法であって、(1)成形
    前シートを該型の外面にその開口部を包囲するようにエ
    アタイトに押さえ付けるクランプ枠を用意しておくこと
    と、(2)該型外面の、成形前シートとの接触面に、該
    クランプ枠の押し付け位置より内側に位置した環状溝を
    設けておくことにより、該シートが該環状溝上において
    該型に接触しないようにすることと、(3)(a)該環
    状溝と協働して裁断するよう構成され配置された、熱成
    形時にはシートに接触しない高さの環状の雄型刃と、
    (b)該雄型刃の内側に配置された、その先端面が該雄
    型刃の先端と同じ高さ乃至先端よりも突出しているがし
    かし熱成形の最中にはシートを押さえ付けない高さに位
    置ししかもその先端面が該雄型刃の先端の高さよりも後
    退することができるようバネに担持されて配置されてい
    る金属製の環状押付部材とを、一体となって運動する共
    通の基盤に備えておくことと、(4)前記雄型刃の先端
    が前記環状溝の底に突き当たるのを該共通の基盤と該型
    との間の接近を所定限度に止めることにより防止する停
    止機構を、該共通の基盤と該型との間で構成しておくこ
    とと、(5)該環状溝に該雄型刃を正確に位置合わせす
    るための、該型と該共通の基盤との間の位置決め機構を
    設けておくことと、そして(6)熱成形後、該環状溝上
    のシート領域が硬化する前に、前記基盤を該型外面へ向
    けて押し該基盤を該型外面へ接近させ、それにより、該
    環状押付部材の該シートへの押付けと該雄型刃によるシ
    ートの裁断、及び該停止機構による該基盤と該型との間
    の接近停止を、順次行わせることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】シート状プラスチックの熱成形により得ら
    れる該一次成形物が、開口部より側方へ広がった被成形
    部を有するアンダーカットのある一次成形物であり、該
    開口部からの該フランジの張り出し距離が該アンダーカ
    ットの深さより短くてよいものである、請求項1の方
    法。
  3. 【請求項3】該環状押付部材が該雄型刃の内側に隣接し
    て配置されていることを特徴とする、請求項1又は2の
    方法。
  4. 【請求項4】前記クランプ枠を弾性材料を用いて構成し
    且つ前記共通の基盤上に備えておくことにより、工程
    (6)において、熱成形後、該環状溝上のシート領域が
    硬化する前に、前記基盤を該型外面へ向けて押し、該ク
    ランプ枠を弾性変形させることにより該基盤を該型外面
    へ更に接近させ、それにより、該環状押付部材の該シー
    トへの押付けと該刃によるシートの裁断、及び該停止機
    構による該基盤と該型との接近停止を、順次行わせるこ
    とを特徴とする、請求項1乃至3の何れかの方法。
  5. 【請求項5】前記環状溝の内周縁を前記フランジの外周
    縁に一致するよう構成し且つ前記環状の雄型刃の刃先を
    その環の内周側に形成しておくことにより、該環状溝の
    内周縁と該雄型刃の刃先とで裁断を行わせることを特徴
    とする、請求項1乃至4の何れかの方法。
  6. 【請求項6】該環状押付部材が、これが押付ける領域の
    樹脂の2倍以上の熱容量を有することを特徴とする、請
    求項1乃至5の何れかの方法。
  7. 【請求項7】該型と該共通の基盤との間の位置決め機構
    が、該型と該基盤との間の接触に依る位置決め機構であ
    ることを特徴とする、請求項1乃至6の何れかの方法。
  8. 【請求項8】工程(6)において該環状溝上のシート領
    域がガラス転移点の下方20℃を下回る前にシートの裁
    断を行わせることを特徴とする、請求項1乃至7の何れ
    かの方法。
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