JP3193850U - スタータクラッチ機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】最小限の仕様の変更のみで、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチに交換することが可能な、スタータクラッチ機構の構成を提供する。【解決手段】スタータドリブンギヤ8と、ワンウェイクラッチ11と、フランジ(軸継手)19と、を備え、スタータドリブンギヤの軸部がワンウェイクラッチの内輪として機能するスタータクラッチ機構であって、スタータドリブンギヤの歯車部8bは、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの歯車部と同じ大きさであり、スタータドリブンギヤの軸部8aは、スプラグ式のワンウェイクラッチのスプラグ保持器9の内径部分に適合する大きさに形成され、フランジは、スプラグ式のワンウェイクラッチの外輪10に適合する形状に形成されている。【選択図】図2

Description

本考案は、自動二輪車のエンジンを始動させるために用いられるスタータクラッチ機構に関する。
自動二輪車には、通常、エンジンを始動させるために用いられるスタータクラッチ機構が設けられている。このスタータクラッチ機構は、スタータモータ(セルモータ)等の始動装置からのトルクを、アイドルギヤを介してスタータドリブンギヤへ伝達し、次いで、ワンウェイクラッチを介してクランクシャフト(エンジンの出力軸)へ伝達して、エンジンを始動させる。
ここで、ワンウェイクラッチは、径方向に離隔配置された内輪と外輪とを備えており、外輪に対して内輪が所定の一方向に回転した場合に限り、トルクを伝達することができるようにされている。
従来、ワンウェイクラッチとしては、カム式のもの(例えば、特許文献1参照)が用いられていた。カム式のワンウェイクラッチにおいては、外輪にカム面を有するポケットが形成され、当該ポケット内にはローラが配置されている。また、ローラは、内輪の外周面に接触するようにスプリングによって付勢されている。そして、外輪に対して内輪が所定の一方向に回転した場合には、ローラと内輪との接触圧及び摩擦力が大きくなって、内輪と外輪との間でトルクが伝達される。一方、外輪に対して内輪が逆回転した場合には、ローラと内輪との接触圧及び摩擦力が小さくなって、内輪と外輪との間でトルクが伝達されなくなる。
しかし、カム式のワンウェイクラッチでは、トルクの伝達時に、ローラが内輪の外周面の同一箇所に常に圧接された状態となり、内輪の外周面にローラによる圧接痕や破損が生じる虞があった。
そこで、最近、本考案者は、かかるワンウェイクラッチの破損を回避するために、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチ(例えば、特許文献2、3参照)に交換することを考えついた。スプラグ式のワンウェイクラッチは、内輪と外輪との間にスプラグと呼ばれる「だるま形の輪留め」が組み込まれた構造を有するものである。そして、外輪に対して内輪が所定の一方向に回転した場合には、内輪と外輪との間でスプラグ(輪留め)が噛み合って、内輪と外輪との間でトルクが伝達される。一方、外輪に対して内輪が逆回転した場合には、スプラグの噛み合いが外れて、内輪と外輪との間でトルクが伝達されなくなる。
特開2011−085245号公報 特表2010−533267号公報 特開2011−236978号公報
ところで、カム式のワンウェイクラッチにおいては、外輪にカム面を有するポケットが形成され、当該ポケット内にはローラが配置される関係上、外輪の内径が小さくなっている。このため、内輪の外径、すなわち、外輪の内径部分に嵌め込まれるスタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径も小さくなっている。
一方、スプラグ式のワンウェイクラッチにおいては、スプラグを保持する円環状のスプラグ保持器の内径が大きくなっている。このため、内輪の外径、すなわち、スプラグ保持器の内径部分に嵌め込まれるスタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径も大きくなっている。
従って、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチに交換するに際しては、少なくともスタータドリブンギヤ、及び、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされる部材であるフランジ(軸継手)をも一緒に交換する必要があるが、スタータクラッチ機構を構成する部品の仕様の変更は最小限に抑えることが望ましい。
本考案は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、最小限の仕様の変更のみで、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチに交換することが可能な、スタータクラッチ機構の構成を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本考案に係るスタータクラッチ機構の構成は、
(1)円筒状の軸部と、円環状でかつ周縁にギヤが形成された歯車部と、が一体化されたスタータドリブンギヤと、
径方向に離隔配置された内輪と外輪とを備え、前記外輪に対して前記内輪が所定の一方向に回転した場合に限り、トルクを伝達することができるワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチの前記外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジ(軸継手)と、を備え、
前記スタータドリブンギヤの前記軸部が前記ワンウェイクラッチの前記内輪として機能するスタータクラッチ機構であって、
前記歯車部は、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの歯車部と同じ大きさであり、
前記軸部は、スプラグ式のワンウェイクラッチのスプラグ保持器の内径部分に適合する大きさに形成され、
前記フランジは、前記スプラグ式のワンウェイクラッチの外輪に適合する形状に形成されていることを特徴とする。
本考案において、スタータドリブンギヤは、NC旋盤を用いてSCM415材(クロムモリブデン鋼鋼材)から精密に削り出し、歯切り後、熱処理を行ない、ワンウェイクラッチへの取付部分(軸部)を円筒研磨した部品である。
本考案のスタータクラッチ機構の上記(1)の構成によれば、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径を、スプラグ式のワンウェイクラッチのスプラグ保持器の内径部分に適合するように大きくし、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジを、スプラグ式のワンウェイクラッチの外輪に適合する形状とするだけで(つまり、最小限の仕様の変更のみで)、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチに交換することが可能となる。さらに、スタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径が大きくなると、トルクも大きくなるため、スタータモータ(セルモータ)からの駆動力を、容易にクランクシャフトに伝達することが可能となる。
本考案のスタータクラッチ機構の上記(1)の構成においては、以下の(2)のような構成にすることが好ましい。
(2)前記軸部と前記歯車部とが鋳造又は電子ビーム溶接によって一体化されている。
上記(2)の好ましい構成によれば、強度が高く精密なスタータドリブンギヤを備えたスタータクラッチ機構を提供することができる。
本考案によれば、最小限の仕様の変更のみで、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチに交換することが可能な、スタータクラッチ機構の構成を提供することができる。
図1は、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の主要部の構成を示す分解斜視図である。 図2は、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の主要部の構成を示す一部を破断した分解側面図である。 図3は、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の主要部を組み立てた状態を示す一部を破断した側面図である。 図4は、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の主要部の一構成部材である、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジ(軸継手)を示す斜視図である。 図5は、本考案の実施の形態1、2におけるスタータクラッチ機構の主要部の一構成部材であるスタータドリブンギヤ(a)と、カム式(旧式)のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ(b)と、を示す斜視図である。 図6は、本考案の実施の形態1における、スタータクラッチ機構を備えたACジェネレータの構成を示す分解斜視図である。 図7は、本考案の実施の形態2におけるスタータクラッチ機構の主要部の構成を示す分解側面図である。 図8は、本考案の実施の形態2におけるスタータクラッチ機構の主要部を組み立てた状態を示す側面図である。 図9は、本考案の実施の形態2におけるスタータクラッチ機構の主要部の一構成部材である、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジ(軸継手)を示す斜視図である。
以下、好適な実施の形態を用いて本考案をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本考案を具現化した例に過ぎず、本考案はこれに限定されるものではない。
[実施の形態1]
[ACジェネレータの全体構成]
まず、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構を備えたACジェネレータの全体構成について、図6を参照しながら説明する。
図6は、本考案の実施の形態1における、スタータクラッチ機構を備えたACジェネレータの構成を示す分解斜視図である。
自動二輪車は、プラグに火花が飛ばないとエンジンがかからず、ヘッドライトやウィンカなどの灯火系でも電気が使用される。その電気は、通常はバッテリから供給されるが、バッテリからの電気も使い切ってしまえば無くなってしまう。そのため、常にバッテリを充電する必要がある。このバッテリを充電するための電気は、ACジェネレータによって発生される。
図6に示すように、ACジェネレータ1は、フライホイールマグネットロータ(磁石部分)2と、当該フライホイールマグネットロータ2の内側に配置されるマグネットステータ(コイル部分)3と、を備えており、フライホイールマグネットロータ2は、ボルト12を用いてエンジンの出力軸であるクランクシャフト4に直付けされている。また、マグネットステータ3は、クランクケースカバー15の内側に複数のソケットボルト17を用いて固定されている。クランクケースカバー15は、マグネットステータ3が固定された状態で複数のボルト18を用いてクランクケース16に取り付けられ、これにより、マグネットステータ3がフライホイールマグネットロータ2の内側に配置された状態となる。このため、ACジェネレータ1は、エンジンの始動(クランクシャフト4の回転駆動)と同時に、マグネットステータ3の周りをフライホイールマグネットロータ2が回転して発電を開始し、その電気は、ACジェネレータワイヤ5とレギュレータ(図示せず)を介してバッテリ(図示せず)に送られる。その結果、バッテリは常に充電された状態となる。
フライホイールマグネットロータ2の裏側(クランクケース16側)には、スタータクラッチ機構6が設けられている。
[スタータクラッチ機構の構成]
次に、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の具体的構成について、図1〜図4をも参照しながら説明する。
図1は、本考案の実施の形態1におけるスタータクラッチ機構の主要部の構成を示す分解斜視図、図2は、当該スタータクラッチ機構の主要部の構成を示す一部を破断した分解側面図、図3は、当該スタータクラッチ機構の主要部を組み立てた状態を示す一部を破断した側面図、図4は、当該スタータクラッチ機構の主要部の一構成部材である、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジ(軸継手)を示す斜視図である。
図6に示すスタータクラッチ機構6は、始動装置であるスタータモータ(セルモータ)の出力軸に形成されたスタータドライブギヤ(図示せず)のトルクを、アイドルギヤ7を介してスタータドリブンギヤ8へ伝達し、次いで、ワンウェイクラッチ11(図1〜図3参照)を介してクランクシャフト(エンジンの出力軸)4へ伝達して、エンジンを始動させる。
図1〜図3に示すように、ワンウェイクラッチ11としては、スプラグ式のものが用いられている。スプラグ式のワンウェイクラッチ11は、内輪8aと外輪10との間にスプラグと呼ばれる「だるま形の輪留め」が組み込まれた構造を有するものである。そして、外輪10に対して内輪8aが所定の一方向に回転した場合には、内輪8aと外輪10との間でスプラグが噛み合って、内輪8aと外輪10との間でトルクが伝達される。一方、外輪10に対して内輪8aが逆回転した場合には、スプラグの噛み合いが外れて、内輪8aと外輪10との間でトルクが伝達されなくなる。ここで、スプラグは、円環状のスプラグ保持器9に保持されており、当該スプラグ保持器9は、外輪10の内径部分に組み付けられている。
図1〜図4に示すように、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10は、フランジ(軸継手)19に固定されている。当該フランジ19は、円盤部20とボス部21とからなっており、円盤部20には、外輪10を嵌め込むための凹所20aが形成されている。また、円盤部20の外周縁部には、複数の貫通孔23が形成されており、外輪10の外周縁部には、各貫通孔23に対応させて複数のボルト孔22が形成されている。そして、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10を円盤部20の凹所20aに嵌め込み、貫通孔23側からボルト孔22にボルト24を捩じ込むことにより、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10が、フランジ(軸継手)19に固定される。尚、フランジ19のボス部21には、凹所20aに連通する円筒孔21aが形成されている。
フランジ19の円盤部20には、貫通孔23よりも内周側に位置して複数のボルト孔25が形成されている。また、フライホイールマグネットロータ2には、各ボルト孔25に対応させて複数の貫通孔2bが形成されている。さらに、フライホイールマグネットロータ2には、フランジ19のボス部21を挿通させるための円孔2aが形成されている。そして、フランジ19のボス部21をフライホイールマグネットロータ2の円孔2aに挿通し、貫通孔2b側からボルト孔25にソケットボルト13を捩じ込むことにより、フランジ19がフライホイールマグネットロータ2の裏面に固定されている。
図3、図6に示すように、フランジ19は、ボス部21の円筒孔21aをクランクシャフト4に挿通し、ボルト12をクランクシャフト4に捩じ込むことにより、当該クランクシャフト4に直付けされている。これにより、ワンウェイクラッチ11のトルクを、フランジ19を介してクランクシャフト4へ伝達して、エンジンを始動させることができるようにされている。
ここで、エンジン始動時には、ワンウェイクラッチ11が回転して、スタータドリブンギヤ8の回転を、フランジ19を介してクランクシャフト4へ伝達できるが、エンジンが始動すると、ワンウェイクラッチ11の内輪8aの回転数よりも外輪10の回転数が高くなり、外輪10は内輪8aを追い越して空転する。そして、エンジン始動後は、スタータモータ(セルモータ)が停止して内輪8aが静止状態となり、外輪10のみが回転する。これにより、スタータモータ(セルモータ)の過回転による破損が防止される。
図1〜図3、図6に示すように、スタータドリブンギヤ8は、円筒状の合金鋼からなる軸部(ボス部)8aと、円環状でかつ周縁にギヤが形成された炭素鋼又は合金鋼からなる歯車部8bと、が鋳造や電子ビーム溶接によって一体化されたものである。そして、スタータドリブンギヤ8の軸部(ボス部)8aは、ワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に嵌め込まれている。すなわち、本実施の形態においては、スタータドリブンギヤ8の軸部(ボス部)8aがワンウェイクラッチ11の内輪として機能し、これにより、スタータモータ(セルモータ)の出力軸に形成されたスタータドライブギヤのトルクを、スタータドリブンギヤ8を介してワンウェイクラッチ11へ伝達できるようにされている。
図5に、本実施の形態におけるスタータクラッチ機構6のスタータドリブンギヤ8と、カム式(旧式)のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14と、を示している。
カム式のワンウェイクラッチにおいては、外輪にカム面を有するポケットが形成され、当該ポケット内にはローラが配置される関係上、外輪の内径が小さくなっている。このため、スタータドリブンギヤとしては、図5(b)に示すような、外径の小さい円筒状の合金鋼からなる軸部(ボス部)14aと、円環状でかつ周縁にギヤが形成された炭素鋼又は合金鋼からなる歯車部14bと、が鋳造や電子ビーム溶接によって一体化されたスタータドリブンギヤ14が用いられていた。
これに対し、本実施の形態で用いられるスプラグ式のワンウェイクラッチ11(図1〜図3参照)においては、スプラグを保持する円環状のスプラグ保持器9の内径が大きくなっている。このため、本実施の形態で用いられるスタータドリブンギヤ8においては、図5(a)に示すように、スタータドリブンギヤ14に比べて軸部(ボス部)8aの外径が大きくなっている。尚、本実施の形態で用いられるスタータドリブンギヤ8の歯車部8bは、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14の歯車部14bと同じ大きさである。すなわち、本実施の形態のスタータドリブンギヤ8は、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14において、軸部(ボス部)の外径を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に適合するように大きくしたものである。そして、スタータドリブンギヤ8とフランジ(軸継手)19を用いれば、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチ11に交換することが可能となる。
以上のように、本実施の形態のスタータクラッチ機構6の構成によれば、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に適合するように大きくし、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフト4に直付けされるフランジ(軸継手)を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11の外輪10に適合する形状とするだけで(つまり、最小限の仕様の変更のみで)、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチ11に交換することが可能となる。さらに、スタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径が大きくなると、トルクも大きくなるため、スタータモータ(セルモータ)からの駆動力を、容易にクランクシャフト4に伝達することが可能となる。
[実施の形態2]
次に、本考案の実施の形態2におけるスタータクラッチ機構の具体的構成について、図7〜図9をも参照しながら説明する。
図7は、本考案の実施の形態2におけるスタータクラッチ機構の主要部の構成を示す分解側面図、図8は、当該スタータクラッチ機構の主要部を組み立てた状態を示す側面図、図9は、当該スタータクラッチ機構の主要部の一構成部材である、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジ(軸継手)を示す斜視図である。
本実施の形態のスタータクラッチ機構は、始動装置であるスタータモータの出力軸に形成されたスタータドライブギヤのトルクを、アイドルギヤ7を介してスタータドリブンギヤ8へ伝達し、次いで、ワンウェイクラッチ11(図7、図8参照)を介してクランクシャフト(エンジンの出力軸)4へ伝達して、エンジンを始動させる(図6参照)。但し、本実施の形態のスタータクラッチ機構は、ACジェネレータとは別個に設けられている。
図7、図8に示すように、ワンウェイクラッチ11としては、上記実施の形態1と同様に、スプラグ式のものが用いられている(図1参照)。スプラグ式のワンウェイクラッチは、内輪8aと外輪10との間にスプラグと呼ばれる「だるま形の輪留め」が組み込まれた構造を有するものである。そして、外輪10に対して内輪8aが所定の一方向に回転した場合には、内輪8aと外輪10との間でスプラグが噛み合って、内輪8aと外輪10との間でトルクが伝達される。一方、外輪10に対して内輪8aが逆回転した場合には、スプラグの噛み合いが外れて、内輪8aと外輪10との間でトルクが伝達されなくなる。ここで、スプラグは、円環状のスプラグ保持器9(図1参照)に保持されており、当該スプラグ保持器9は、外輪10の内径部分に組み付けられている。
図7〜図9に示すように、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10は、フランジ(軸継手)26に固定されている。当該フランジ26は、円盤部27とボス部28とからなっており、円盤部27には、外輪10を嵌め込むための凹所27aが形成されている。また、円盤部27の外周縁部には、複数の貫通孔29が形成されており、外輪10の外周縁部には、各貫通孔29に対応させて複数のボルト孔22が形成されている。そして、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10を円盤部27の凹所27aに嵌め込み、貫通孔29側からボルト孔22にボルト30を捩じ込むことにより、スプラグ保持器9が組み付けられた外輪10が、フランジ(軸継手)26に固定される。尚、フランジ26のボス部28には、円筒孔28aが形成されている。
フランジ26は、ボス部28の円筒孔28aをクランクシャフト4に挿通し、ボルトをクランクシャフト4に捩じ込むことにより、当該クランクシャフト4に直付けされている(図6参照)。これにより、ワンウェイクラッチ11のトルクを、フランジ26を介してクランクシャフト4へ伝達して、エンジンを始動させることができるようにされている。
ここで、エンジン始動時には、ワンウェイクラッチ11が回転して、スタータドリブンギヤ8の回転を、フランジ26を介してクランクシャフト4へ伝達できるが、エンジンが始動すると、ワンウェイクラッチ11の内輪8aの回転数よりも外輪10の回転数が高くなり、外輪10は内輪8aを追い越して空転する。そして、エンジン始動後は、スタータモータが停止して内輪8aが静止状態となり、外輪10のみが回転する。これにより、スタータモータの過回転による破損が防止される。
図7、図8に示すように、スタータドリブンギヤ8は、円筒状の合金鋼からなる軸部(ボス部)8aと、円環状でかつ周縁にギヤが形成された炭素鋼又は合金鋼からなる歯車部8bと、が鋳造や電子ビーム溶接によって一体化されたものである(図1参照)。そして、スタータドリブンギヤ8の軸部(ボス部)8aは、ワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に嵌め込まれている。すなわち、本実施の形態においては、スタータドリブンギヤ8の軸部(ボス部)8aがワンウェイクラッチ11の内輪として機能し、これにより、スタータモータの出力軸に形成されたスタータドライブギヤのトルクを、スタータドリブンギヤ8を介してワンウェイクラッチ11へ伝達できるようにされている。
図5に、本実施の形態におけるスタータクラッチ機構のスタータドリブンギヤ8と、カム式(旧式)のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14と、を示している。
カム式のワンウェイクラッチにおいては、外輪にカム面を有するポケットが形成され、当該ポケット内にはローラが配置される関係上、外輪の内径が小さくなっている。このため、スタータドリブンギヤとしては、図5(b)に示すような、外径の小さい円筒状の合金鋼からなる軸部(ボス部)14aと、円環状でかつ周縁にギヤが形成された炭素鋼又は合金鋼からなる歯車部14bと、が鋳造や電子ビーム溶接によって一体化されたスタータドリブンギヤ14が用いられていた。
これに対し、本実施の形態で用いられるスプラグ式のワンウェイクラッチ11(図1、図7、図8参照)においては、スプラグを保持する円環状のスプラグ保持器9の内径が大きくなっている。このため、本実施の形態で用いられるスタータドリブンギヤ8においては、図5(a)に示すように、スタータドリブンギヤ14に比べて軸部(ボス部)8aの外径が大きくなっている。尚、本実施の形態で用いられるスタータドリブンギヤ8の歯車部8bは、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14の歯車部14bと同じ大きさである。すなわち、本実施の形態のスタータドリブンギヤ8は、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤ14において、軸部(ボス部)の外径を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に適合するように大きくしたものである。そして、スタータドリブンギヤ8とフランジ(軸継手)26を用いれば、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチ11に交換することが可能となる。
以上のように、本実施の形態のスタータクラッチ機構の構成によれば、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11のスプラグ保持器9の内径部分に適合するように大きくし、ワンウェイクラッチの外輪が固定され、かつ、クランクシャフト4に直付けされるフランジ(軸継手)を、スプラグ式のワンウェイクラッチ11の外輪10に適合する形状とするだけで(つまり、最小限の仕様の変更のみで)、既存の自動二輪車に装着されているカム式のワンウェイクラッチをスプラグ式のワンウェイクラッチ11に交換することが可能となる。さらに、スタータドリブンギヤの軸部(ボス部)の外径が大きくなると、トルクも大きくなるため、スタータモータからの駆動力を、容易にクランクシャフト4に伝達することが可能となる。
尚、上記実施の形態1、2においては、軸部(ボス部)8aと歯車部8bとが鋳造や電子ビーム溶接によって一体化されている場合を例に挙げて説明したが、本考案は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。軸部(ボス部)8aと歯車部8bとを一体化する手段は、いかなるものであってもよい。例えば、電子ビーム溶接や鋳造以外の溶接によって一体化してもよく、物理的な嵌合手段を用いて一体化してもよい。
4 クランクシャフト(エンジンの出力軸)
6 スタータクラッチ機構
7 アイドルギヤ
8 スタータドリブンギヤ
8a 軸部(ボス部)(内輪)
8b 歯車部
9 スプラグ保持器
10 外輪
11 ワンウェイクラッチ
12、24、30 ボルト
19、26 フランジ(軸継手)
20、27 円盤部
20a、27a 凹所
21、28 ボス部
21a、28a 円筒孔
22、25 ボルト孔
23、29 貫通孔

Claims (2)

  1. 円筒状の軸部と、円環状でかつ周縁にギヤが形成された歯車部と、が一体化されたスタータドリブンギヤと、
    径方向に離隔配置された内輪と外輪とを備え、前記外輪に対して前記内輪が所定の一方向に回転した場合に限り、トルクを伝達することができるワンウェイクラッチと、
    前記ワンウェイクラッチの前記外輪が固定され、かつ、クランクシャフトに直付けされるフランジと、を備え、
    前記スタータドリブンギヤの前記軸部が前記ワンウェイクラッチの前記内輪として機能するスタータクラッチ機構であって、
    前記歯車部は、カム式のワンウェイクラッチと共に用いられるスタータドリブンギヤの歯車部と同じ大きさであり、
    前記軸部は、スプラグ式のワンウェイクラッチのスプラグ保持器の内径部分に適合する大きさに形成され、
    前記フランジは、前記スプラグ式のワンウェイクラッチの外輪に適合する形状に形成されていることを特徴とするスタータクラッチ機構。
  2. 前記軸部と前記歯車部とが鋳造又は電子ビーム溶接によって一体化されている、請求項1に記載のスタータクラッチ機構。
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