JP3192278U - 植物栽培器具 - Google Patents
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Abstract
【課題】土を使用せずに植物を栽培することのできる植物栽培器具において、植物栽培器具の構成部品が少ない簡易な構造で、通気性と遮光性を有する植物栽培器具を提供する。【解決手段】植物栽培器具1は、上方が開口し、培養液40を貯める貯水タンク20と、貯水タンク20の上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、穴が形成された蓋10と、蓋10の穴に水密的に、着脱可能に嵌め込まれ、植物100を保持する筒型のホルダー30と、を備え、貯水タンク40と蓋10とホルダー30は、遮光性と非透水性を有する素材からなり、筒型のホルダー30は、蓋10の穴から上方に延在して外周方向に抜け止め拡大部を有する上部31と蓋10の穴から下方に延在して貯水タンク20内部に突出した下部33と、を有し、ホルダーの上部31は、遮光性を有する無機多孔質層を有し、蓋10は、蛇行又は屈曲した通気路11を有する。【選択図】図2(A)
Description
本考案は、土を使用せずに植物を栽培することのできる植物栽培器具に関する。
机やテーブルの上などに載せて、花や葉、実、枝ぶりなど植物の美しさを気軽に観賞できる小型の鉢植えの需要が増えている。このような小型の鉢植えは、インテリアとして楽しむことができ、また植物を育てる楽しさも堪能できる。しかし、小型の鉢植えは水やりや移動の際に、鉢植えの土を机やテーブルにこぼして汚すことや、水やりを忘れて枯らしてしまうこと等で手入れが面倒である。そこで、近年、土を使用せずに気軽に植物を栽培することのできる植物栽培器具が開発されている。
一般に植物の生長には空気中の酸素、窒素などの他にリン、カリウム、カルシウム、水素、炭素など、様々な元素が必要であるとされている。土を使用せずに植物を栽培するためには、植物の根に空気や上記の元素を含む養分を適した濃度で水に溶かしたもの(培養液)を液肥として与える必要がある。しかし、培養液栽培の欠点の一つにアオコ(青粉)等の微細藻類の発生がある。また、培養液栽培において養液の上部に培地を使用する場合には、培地の表面に養液が上昇浸潤し、そこにカビ等の菌類が繁殖する問題がある。そのため、アオコ等の藻類や菌類の発生を抑制する方法が必要とされている。アオコ等の発生を抑制する方法として、薬剤にて培養液を殺菌する方法があり、アオコの光合成による増殖を防ぐために光を遮断する方法がある。
特許文献1に開示されている小型の植物栽培器具は、土を使用せずに気軽に植物を栽培することのできる植物栽培器具の一例である。その器具は、吸水機能を有する微多孔質体から構成され、下端を液体に浸漬させた状態で植付部材を収容する収容部材と、収容部材内に植付部材を液体に浸漬させない高さ位置に配置するための支持部材を備えている。この植物栽培器具は、水分供給を均一かつ十分に行うことができ、衛生状態の良い栽培環境を長期間維持することができるとされている。
また、特許文献2に開示されている植物栽培方法は、栽培床に植え込まれた植物の根に、培養液と酸素が適度に混ざり合って供給され、培養液を栽培槽の中でほぼ静止状態に保つことができるため、培養液の循環装置や培養液への空気混入装置を可動させる必要がない。それにより、電力等のエネルギー供給設備の無い地域に養液栽培が可能になり、また、養液栽培装置の設備コスト、ランニングコストも低く抑えることができる。
特許文献1に開示されている植物栽培器具は、微多孔質体の収容部材により、その下端から自身の毛細管力により水分を吸い上げ、収容部材全体に水分が保持されるように構成し、植付部材の植物に水分を吸引させるとされているが、水の毛細管力は収容部材の状態や周囲の水の温度に依存する。そのため、温度が高ければ水の毛細管力も高いが、温度が低い状態では毛細管力も低く、室温を適度に保つ必要がある。また、養液浸透部が光に晒されれば、藻類や菌類が発生する。さらに根への通気が不足し、空気が充分に供給されない場合もあり得る。また、長期使用による植物栽培器具を構成する部材の劣化の対応も必要である。
特許文献2に開示されている植物栽培方法は、植物の根に培養液と酸素が適度に混ざり合って供給され、また、栽培槽の内壁や培養液内にアオコ等の藻類が発生しないようにするため、栽培槽には、遮光性のある材料を用いることが記載されている。しかし、栽培槽の上部に孔部が設けられており、そこからの光を遮断するのは難しく、培地表面に養液が上昇し浸潤した場合には、藻類や菌類が発生する。また、培地が充填された多孔性容器から根が通過する前に、根全体が、養液が浸潤した培地に覆われてしまうことがあり得、その場合には酸素が不足し、根の生長が阻害される。
本考案は、上記事情を鑑み、土を使用せずに植物を栽培することのできる植物栽培器具において、植物栽培器具を構成する部品が少ない簡易な構造で、かつ、空気を充分に入れながらも遮光性を有する植物栽培器具を提供することを目的とする。
本考案の1は、上方が開口し、培養液を貯める貯水タンクと、前記貯水タンクの上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、穴が形成された蓋と、前記蓋の穴に水密的に、着脱可能に嵌め込まれ、植物を保持する筒型のホルダーと、を備え、
前記貯水タンクと前記蓋と前記ホルダーは、遮光性と非透水性を有する素材からなり、
前記筒型のホルダーは、前記蓋の穴から上方に延在して外周方向に抜け止め拡大部を有する上部と、前記蓋の穴から下方に延在して前記貯水タンク内部に突出した下部と、を有し、前記ホルダーの上部は、遮光性を有する無機多孔質層を有し、前記蓋は、蛇行又は屈曲した通気路を有することを特徴とする植物栽培器具である。
前記貯水タンクと前記蓋と前記ホルダーは、遮光性と非透水性を有する素材からなり、
前記筒型のホルダーは、前記蓋の穴から上方に延在して外周方向に抜け止め拡大部を有する上部と、前記蓋の穴から下方に延在して前記貯水タンク内部に突出した下部と、を有し、前記ホルダーの上部は、遮光性を有する無機多孔質層を有し、前記蓋は、蛇行又は屈曲した通気路を有することを特徴とする植物栽培器具である。
本考案の2は、本考案の1に記載の植物栽培器具において、前記ホルダーは、更に前記無機多孔質層の下の下部にスポンジ層を有することを特徴とする植物栽培器具である。
本考案の3は、本考案の1又は2に記載の植物栽培器具において、前記ホルダーが前記蓋と一体化していることを特徴とする植物栽培器具である。
本考案の4は、上方が開口し、培養液を貯める貯水タンクと、前記貯水タンクの上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、植物を保持する筒型の蓋と、を備え、
前記貯水タンクと前記蓋は、遮光性と非透水性を有する素材からなり、前記蓋は、外周方向に拡大した上部と、前記貯水タンク内部に突出した下部と、を有し、前記上部は、通気路と、該通気路の上に遮光性を有する無機多孔質層と、を有し、該無機多孔質層と前記通気路が蛇行又は屈曲した通気路を形成することを特徴とする植物栽培器具である。
前記貯水タンクと前記蓋は、遮光性と非透水性を有する素材からなり、前記蓋は、外周方向に拡大した上部と、前記貯水タンク内部に突出した下部と、を有し、前記上部は、通気路と、該通気路の上に遮光性を有する無機多孔質層と、を有し、該無機多孔質層と前記通気路が蛇行又は屈曲した通気路を形成することを特徴とする植物栽培器具である。
本考案の5は、本考案の4に記載の植物栽培器具において、前記蓋は更に前記蓋の下部にスポンジ層を有することを特徴とする植物栽培器具である。
本考案の1の植物栽培器具によると、(1)植物栽培器具を構成する部品は、貯水タンクと蓋と筒型のホルダーのみであり、簡易な構造であるため、水やりや清掃などの手入れが楽である。(2)また、植物栽培器具1の部品の素材が遮光性を有することで、貯水タンク内の遮光性が保たれ、藻類の光合成による増殖を防ぐことができ、また、非透水性を有することで、貯水タンクの培養液の漏れを防ぐことができる。(3)貯水タンクの上方に水密的に蓋がされることにより、遮光性を有し、培養液の蒸発を防ぎ、毎日の水やりを必要としないため、通常の鉢植えの植物と比べて手間がかからない。(4)また、筒型のホルダーが、蓋の穴から上方に延在して外周方向に抜け止め拡大部を有することで、ホルダーが蓋の穴から下へ抜けずに固定される。それにより蓋の上に安定して植物を載置できる。(5)また、ホルダーの上部が、遮光性を有する無機多孔質層を有することにより、ホルダー内部が遮光され、ホルダーの下部にアオコ等の藻類や菌類の発生がない。(6)ホルダーが蓋の穴から下方に延在して突出した下部を有することで、植物の根を貯水タンク内の培養液に達するように植物を載置でき、植物を栽培することができる。(7)また、通気路を有するため、外部の空気を容易に入れることができる。それにより、貯水タンク内に培養液の循環装置や、培養液への空気混入装置を設置する必要がなく、設備費用や電力費用等を低く抑えることができる。また、空気混入装置を設置しないことにより、植物の根が揺らされることがなく、植物にとって好適な環境を保つことができる。(8)また、ホルダーの上部に培養液が浸潤しないため、ホルダーの上部にアオコ等の藻類や菌類の発生がない。(9)さらに、上記の通気路は光が入り込み難く形成された蛇行又は屈曲した通気路であるため貯水タンク内は遮光されて、ホルダーの下部や貯水タンク内での藻類や菌類の発生や光合成による増殖を防ぐことができる。
本考案の2の植物栽培器具によると、本考案の1の効果に加え、ホルダーは、更に上記無機多孔質層の下の下部にスポンジ層を有するため、植物の根を安定して支えることができる。また、無機多孔質層がスポンジ層で支えられるため、無機多孔質層を構成する軽石などがホルダー下部や貯水タンク内に落ちることがない。
本考案の3の植物栽培器具によると、本考案の1((1)以外の効果)又は2の効果に加え、ホルダーが蓋と一体化しているため、植物栽培器具を構成する部品は、貯水タンクと蓋のみであり、より簡易な構造であるため、清掃などの手入れが更に楽であり、手間がかからない。
本考案の4の植物栽培器具によると、本考案の1の(1)、(4)〜(6)、(8)(9)以外の効果に加え、(1)蓋が外周方向に拡大した上部を有することで、蓋の上部に無機多孔質層が形成でき、植物を安定して載置できる。(2)蓋が貯水タンク内部に突出した下部を有することで、植物の根を貯水タンク内の培養液に達するように植物を載置でき、植物を栽培することができる。(3)また、蓋の上部は、遮光性を有する無機多孔質層を有することにより、蓋の下部の内部が遮光され、蓋の下部の内部にアオコ等の藻類や菌類の発生がない。(4)また、蓋の上部に培養液が浸潤しないため、蓋の上部にもアオコ等の藻類や菌類の発生がない。(5)無機多孔質層と蓋の通気路が蛇行又は屈曲した通気路を形成するため、貯水タンク内は遮光されて、貯水タンク内で藻類や菌類の発生や光合成による増殖を防ぐことができる。(6)蓋の通気路は垂直に(直線的に)形成され、蛇行又は屈曲した通気路を形成する必要がないため、蓋の製造が容易である。(7)本考案の3と同様に、植物栽培器具を構成する部品は、貯水タンクと蓋のみであり、より簡易な構造であるため、清掃などの手入れが更に楽であり、手間がかからない。
本考案の5の植物栽培器具によると、本考案の4の効果に加え、蓋の下部は、更に無機多孔質層の下の下部にスポンジ層を有することで、植物の根を安定して支えることができ、また、無機多孔質層を構成する軽石などが蓋の下部や貯水タンク内に落ちることがない。
以下、本考案の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。
実施例1の植物栽培器具を図1と図2を用いて説明する。図1は植物栽培器具の斜視図であり、図2はその貯水タンクの正面断面図(A)、蓋の正面断面図(B)、ホルダーの平面図(C)と、蓋の平面透視図(D)である。図1に示すように、植物栽培器具1は、培養液を貯める貯水タンク20と、貯水タンクの蓋10と、蓋10の穴13に嵌め込まれ、植物100を保持する筒型のホルダー30からなる。
植物栽培器具1を構成する貯水タンク20と、蓋10と、ホルダー30は、遮光性と非透水性を有する素材、例えば、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリル樹脂からなる。または、遮光性と非透水性を有する焼き物(半磁器やせっ器)でもよい。これらの素材を植物栽培器具1に使用することで、遮光性が保たれ、藻類の光合成による増殖を防ぐことができ、また、非透水性を有することで貯水タンク20の培養液の漏れを防ぐことができる。植物栽培器具1の素材はこれらに限定されないが、藻類の光合成による増殖を防ぐために遮光性を有し、かつ非透水性を有し、植物にとって毒性のない素材であることが必要である。
本実施例では、貯水タンク20は半球状の形状をしているが、貯水タンク20の形状はこれに限定されない。本実施例の貯水タンク20は半球状であるため、安定して置くために支持脚21を付ける。支持脚21以外の方法で固定してもよい。蓋10は貯水タンク20の縁と同様の形状であり、蓋10の外径は貯水タンク20の縁の外径と同じ大きさである。貯水タンク20の形状が角筒の場合には、蓋10もその形状に合わせて製作される。
植物栽培器具1を使用する際には、まず、貯水タンク20から蓋10とホルダー30を外す。そして、貯水タンク20に植物の種類に応じた培養液40を入れて、蓋10を取り付ける。このとき、培養液40がホルダー30の底部に接しないようにする必要がある。なぜなら、培養液40がホルダー30内に浸潤してきて、藻類及び菌類の発生と増殖につながるからである。よって、培養液40の水位は、貯水タンク20の底部とホルダー30の底部の間隔高の約70パーセント(図2参照)を上限とし、根の生長に合わせて水位を調整することが望ましい。根が成長しすぎた場合には、貯水タンク20の大きさに合わせて根を裁断し、根が到達できる水位まで水位を上げる必要がある。また、貯水タンク20に培養液40を入れる際には、蓋10を外して入れてもよいが、蓋10を取り付けたまま、ホルダー30のみを蓋10の穴13から外して培養液40を入れてもよい。蓋10とホルダー30は培養液40の入れ替えなどで、必要に応じて着脱可能に取り付けられる。
図2(A)、(B)に示すように、蓋10を貯水タンク20に水密的に取り付けるため、貯水タンク20の縁22と嵌合するように、蓋10の外周に溝12が設けられている。それにより、貯水タンク20内の遮光性が保たれ、また、培養液の蒸発を防ぐこともできる。また、植物栽培器具1が揺れた場合であっても、蓋10が貯水タンク20からずれず、貯水タンク20に蓋10が安定して固定される。
また、図1に示すように蓋10には複数の通気路11が設けられている。本実施例では、通気路11の出入口は、長方形であるが円形でもよい。また、本実施例では、通気路11は蓋10の側面で設けているが、蓋10の表面に設けてもよいし両方に設けてもよい。通気路11は、図2(A)、(B)の蓋の正面断面図に示すように蓋10の側面の開口部から内部に入り、図2(D)の平面透視図に示すように、内部水平面でS字状に蛇行した通気路111を有して、蓋10の下面に垂直に降りて開口した形状になっている。このとき、蓋の側面の開口部と、下面の開口部が1対1に対応していなくてもよく、例えば蓋10の側面の2つ以上の開口部に対して下面に1つの開口部とつながるような通気路112を形成してもよい。このように通気路11を蛇行させて形成することにより、通気性を確保しながらも、外部の光が入りこみ難い構成となっている。本実施例では、通気路11は内部水平面で蛇行した形状をしているが、折り曲がった形状(屈曲させた形状)としてもよい。このような蛇行又は屈曲した形状の通気路11を有する植物栽培器具1は従来技術にはなく、通気性を確保しながらも貯水タンク20内は遮光されて、アオコ等の藻類の発生や光合成による増殖を防ぐことができる。
貯水タンク20に培養液が入り、蓋10がされた後、ホルダー30を穴13に嵌め込む。このとき、ホルダー30に予め植物100を入れておいてもよいし、ホルダー30を蓋10に嵌めた後に植物100を入れてもよい。本実施例では、ホルダー30を蓋10に嵌めた後に植物100を入れる。
図1、2に示すように本実施例では、ホルダー30は円筒状であるが、ホルダーの形状はこれに限定されず、角筒状であってもよい。ホルダー30は、図1に示すように、蓋10の上方外周に外周方向に拡大した上部31と、図2に示すように蓋10の穴から下方に延在して貯水タンク20内部に突出した下部33からなる。ホルダー30に外周方向に拡大した上部31があることで、ホルダー30が蓋10の穴から下へ抜けない。つまり、上部31が抜け止め拡大部となっている。また、蓋10の穴13はホルダーの形状に合わせて円筒形に形成され、穴13の上部外周に溝14を設けてもよい。それにより、上部30の外周の縁と溝14が嵌合してホルダー30を蓋10により水密的に取り付けることができる。
ホルダー下部33は、植物100の根101を保持するのに適した大きさの外径を有する。また、図2(A)に示すように、植物100の根101を安定して保持するために内部には粗目のスポンジが配置され、スポンジ層34が形成されている。植物100の根101の形状によっては、スポンジ層34を形成しなくてもよい場合もある。また、スポンジ層34を支持するために、ホルダー下部33の内部下方にスポンジストッパー35が取り付けられている。スポンジストッパー35は、例えば図2(C)のホルダー30の平面図に示すように、ホルダー下部33に均等に付けられている。スポンジストッパー35の形状や数は図2(C)に示すものに限定されないが、スポンジ層34を支持できる形状や数を有することが必要である。ホルダー30を蓋10に設置した後は、下部33が外観上視認できず、上部31のみ視認できる。
次にホルダー30に植物100の根101を入れ、保持させる。植物100は、草本植物及び木本植物のいずれであってもよい。木本植物では、いわゆる盆栽と同様に鑑賞の対象となるように仕立てることができる。また、植物100は根付の草花や球根など市販されているものを使用してもよいし、自分で育てた植物を使用してもよい。植物100の根101をホルダーの下部33に入れる際には、根101の大きさに合わせてスポンジ層34の大きさを調整して又は抜いて、根を保持する。
図2に示すように植物100の根101の大きさは、ホルダーの下部33にある程度の余裕を持って収まる大きさのものを使用することが好ましい。スポンジ層34を抜いてもホルダーの下部33に根101が収まらない場合や、収まってもきつい場合には、根101が圧迫され植物100の生長にも影響し得るからである。ただし、梅や松など盆栽に使用する植物に関しては、成長を抑制するために、敢えて根を窮屈にする場合もある。このようにしてホルダー30に保持された植物100の根101を、貯水タンク20の培養液40に浸漬させて、植物100を栽培することができる。
前述のように、貯水タンク20と蓋10の水密性が保たれているため、本実施例の植物栽培器具1は毎日の水やりを必要としない。例えば、植物100が盆栽の場合には、春から夏は1週間に1回程度、秋と冬は、1〜2カ月に1回程度の水やりをすれば足りる。よって、通常の鉢植えの植物や盆栽と比べて手間がかからずに栽培することができる。
また、植物100を載置する際には茎より上がホルダー30の上部31に出るようにする。ホルダー30の上部31は蓋10の穴13から外周に、外周方向に拡大しているため、植物100の茎の周りにスペースがある。茎はホルダー30の下部33のスポンジ34を使用して安定するが、上部31においても更に安定するように上部31のスペースに無機多孔質で非透光性の物体を配置して無機多孔質層32を形成する(図1参照)。それにより、茎が安定的に固定される。本実施例では無機多孔質の物体として軽石を使用するが、無機多孔質で非透光性の物体であれば、これに限定されず、発泡陶器ボールや多孔質セラミックス等でもよい。
蓋10の穴13周辺の無機多孔質層32は、スポンジ層34の上に形成されるため、ホルダー下部33や貯水タンク20に落ちず、また、ホルダー30内において、遮光性と通気性を保つことができる。以上のように植物を載置すると、外観上、植物100と無機多孔質層32の軽石しか見えず、見栄えのよいインテリアとなる。
また、本実施例の植物栽培器具1は、ホルダー30と蓋10が分離した構成となっているが、ホルダー30と蓋10が一体化している構成としてもよい。その場合、植物栽培器具1は、より簡易な構造であるため、清掃などの手入れが更に楽であり、手間がかからない。
次に本考案の第2の植物栽培器具を図3と図4を用いて説明する。図3は本実施例の植物栽培器具の斜視図であり、図4はその植物栽培器具の貯水タンクの正面断面図(A)、蓋の正面断面図(B)と、蓋の平面透視図(C)である。実施例1と同様に植物栽培器具1は、培養液を貯める貯水タンク20と、その蓋10と、蓋10の穴13に嵌め込まれ、植物100を保持する筒型のホルダー30から構成される。また、これらの構成部品の素材は実施例1と同様に遮光性と非透水性を有する素材からなる。
本実施例では、貯水タンク20は有底円筒の形状である。そのため、下部に支持脚21を付けなくても安定して置くことができるが、図3に示すように好みで支持脚21を付けてもよい。植物栽培器具1の使用方法(培養液40を貯水タンク20に入れることや、植物100を蓋10へ載置すること、無機多孔質層32やスポンジ層34を形成すること等)は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
本実施例の蓋10の複数の通気路11は、実施例1とは異なり、蓋10の表面から貯水タンク20に空気が入るように形成される。通気路11は、図4(A)、(B)の蓋10の正面断面図に示すように蓋10の表面の開口部から垂直に降りて内部に入り、図4(C)の平面透視図に示すように、内部水平面でS字状に蛇行した通気路111を有して、蓋の下面に垂直に降りて開口した形状になっている。このとき、蓋の表面の開口部と、下面の開口部が1対1に対応していなくてもよく、例えば蓋10の表面の2つ以上の開口部に対して下面に1つの開口部とつながるような通気路112を形成してもよい。
実施例1と同様に、このように通気路11を蛇行させて形成することにより、通気性を確保しながらも、外部の光が入りこみ難い構成となっている。本実施例では、通気路11は内部水平面で蛇行した形状をしているが、折り曲がった形状(屈曲させた形状)としてもよい。また、実施例1と同様に蓋10を貯水タンク20に水密的に取り付けるため、貯水タンク20の縁22と嵌合するように、蓋10の外周に溝12が設けられている。穴13の形状は実施例1とは異なり、ホルダー30の形状に合わせた円筒状となっている。
図3、4に示すようにホルダー30は、蓋10に嵌めた際に蓋10の上方に抜け止め拡大部311を有する上部31と、蓋10の穴から下方に延在して貯水タンク20内部に突出した下部33からなる。抜け止め拡大部311の外径は、ホルダー30の外径よりも大きく形成されている。ホルダー30が上部31に抜け止め拡大部311を有することで、ホルダー30が蓋10の穴から下へ抜けずに固定され、蓋の上に安定して植物を載置できる。それにより、ホルダー30の上部31と下部33を同じ外径の円筒状に形成することができ、ホルダーの製造をより簡単に行うことができる。また、抜け止め拡大部311の大きさを調整することで、上部31の円筒の外径を下部33の円筒の外径よりも小さく形成することもできる。
ホルダー30の内部には実施例1と同様に、スポンジ層34(図4(A)参照)が形成され、スポンジ層34を支持するスポンジストッパー35も備えられている。スポンジストッパー35の形状や数は実施例1の図2(C)と同様であるため、その説明と図面を省略する。また、本実施例の植物栽培器具1も実施例1と同様に、ホルダー30と蓋10が一体化している構成としてもよい。
本考案の第3の植物栽培器具を図5と図6を用いて説明する。図5は本実施例の植物栽培器具の斜視図であり、図6はその植物栽培器具の貯水タンクの正面断面図(A)と、蓋の底面図(B)(図6(A)のA方向から蓋を見た図)である。本実施例の植物栽培器具1は、培養液を貯める貯水タンク20と、その蓋10のみから構成される。これらの素材は実施例1、2と同様に、遮光性と非透水性を有する素材からなる。また、植物栽培器具1の使用方法(培養液40を貯水タンク20に入れることや、無機多孔質層32やスポンジ層34を形成すること、植物100を蓋10へ載置すること)は実施例1、2と同様であるため、その詳細は省略する。
図5、図6に示すように貯水タンク20は実施例2と同様に有底円筒の形状であり、支持脚21を付けてもよいし、付けなくても安定して置くことができる。蓋10は、貯水タンク20の上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、植物を保持する筒型である。蓋10は、外周方向に拡大した上部15と、貯水タンク20内部に突出した下部16からなる。本実施例では、上部15の外径は貯水タンク20の外径と同じ大きさであるが、貯水タンク20の外径よりも大きくてもよい。実施例1、2と同様に、蓋10には貯水タンク20の縁22と嵌合するように外周に溝12が設けられており、蓋10を水密的に貯水タンク20に取り付けることができる。蓋10の下部16は、実施例1、2のホルダー30の下部33と同様に、植物100の根を保持するのに適した大きさの径を有する。
実施例1、2と同様に、図6(A)に示すように、植物100の根101を安定して保持するために蓋10の下部16の内部には粗目のスポンジが配置され、スポンジ層34が形成されている。植物100の根101の形状によっては、スポンジ層34を形成しなくてもよい場合もある。また、図6(B)の平面図に示すように、蓋10の下部16の内部にスポンジ層34を支持するためのスポンジストッパー35が取り付けられている。
また、蓋10の上部15には、無機多孔質で非透光性の物体、例えば軽石を配置して無機多孔質層32を形成する。図6(A)に示すように、無機多孔質層32の下には、蓋10に複数の通気路11が形成されている。本実施例の蓋10の通気路11は、蓋10の表面の開口部から垂直に下降し、蓋の下面に開口した形状(直線的な形状)になっている。実施例1、2とは異なり、無機多孔質層32の下に通気路11が形成されていることにより、空気が内部に入り難くなることを考慮して、通気路11は蓋10の内部で蛇行又は屈曲せず、また、実施例1、2の通気路11の数よりも多くの数の通気路11が設けられている。しかしながら、無機多孔質層32に敷き詰められた軽石と、直線的な通気路11によって、蛇行又は屈曲した通気路(図示せず)が形成されているため、蓋10の下部16と貯水タンク20内の通気性と遮光性が保たれている。
本実施例の植物栽培器具1は、上記のように植物栽培器具1を構成する部品が貯水タンク10と蓋10のみであり、実施例1、2の分離型の植物栽培器具1と比べて簡易な構造であるため、清掃などの手入れが楽であり、手間がかからないという利点がある。一方、実施例1、2の場合に比べて蓋の上部15に無機多孔質層32を多く形成する必要がある。
以上、実施例で説明してきたように、本考案の植物栽培器具は、簡易な構造であるため、水やりや清掃などの手入れが楽である。また、蛇行又は屈曲した通気路を有することで、外部の空気を容易に入れることができ、かつ、貯水タンク内の遮光性が保つことができる。それにより、アオコ等の藻類やカビの発生、増殖を防ぐことができる。
なお、本考案の植物栽培器具は、前述した実施形態に限定されず、その形状等は、考案の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更可能である。また、使用方法として、上記実施例では、植物の苗を本考案の植物栽培器具に設置して栽培する場合について述べたが、本考案の植物栽培器具を使って種子から植物を栽培・成育することも可能である。
その場合には、以下の手順で栽培・育成する。まず、(1)ホルダー下部又は蓋の下部のスポンジ層表面に播種する。または、軽石等の無機多孔質層(以下、「軽石等」という)に播種してもよい。次に、(2)この種子の上に薄く軽石等を被せる(土耕栽培で種を蒔くときに種の上に土を被せるようにする。尚、種子の性質によっては、被せない場合もある)。
次に(3)ホルダー下部の底部に接し、かつ、軽石等表面まで水分が浸潤するに足りる位置に水位を設定する。この場合の水は、養分を含まない単なる水(純水又は井戸水などの自然水である必要はなく、通常の水道水など)を使用する。(4)発芽後、根がホルダー底部より下方に十分伸長し、かつ、当該植物が肥料負けしない程度に成長した段階で、単なる水から養液に切り替える。この段階では、ホルダー底部に養液面が接することがないようにする(前述のように藻類及び菌類の発生を防止するため)。上記(1)〜(3)は、植物栽培器具をそのまま使用してもよいし、ホルダーのみを外して行ってもよい。ホルダーを取り外して行う場合の水分補給は、水を必要量貯めたトレー等にホルダーを置いて行う。その後の植物の栽培方法は上記、実施例で説明した通りである。
1…植物栽培器具、10…蓋、11,111,112…通気路、12…蓋の下部外周の溝、13…蓋の穴、14…蓋の穴の上部外周の溝、15…蓋の上部、16…蓋の下部、20…貯水タンク、21…貯水タンクの支持脚、22…貯水タンクの縁、30…ホルダー、31…ホルダーの上部、32…無機多孔質層、33…ホルダーの下部、34…スポンジ層、35…スポンジストッパー、40…培養液、100…植物、101…植物の根、311…抜け止め拡大部。
Claims (5)
- 上方が開口し、培養液を貯める貯水タンクと、
前記貯水タンクの上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、穴が形成された蓋と、
前記蓋の穴に水密的に、着脱可能に嵌め込まれ、植物を保持する筒型のホルダーと、
を備え、
前記貯水タンクと前記蓋と前記ホルダーは、遮光性と非透水性を有する素材からなり、
前記筒型のホルダーは、
前記蓋の穴から上方に延在して外周方向に抜け止め拡大部を有する上部と、
前記蓋の穴から下方に延在して前記貯水タンク内部に突出した下部と、
を有し、
前記ホルダーの上部は、遮光性を有する無機多孔質層を有し、
前記蓋は、蛇行又は屈曲した通気路を有することを特徴とする植物栽培器具。 - 請求項1に記載の植物栽培器具において、前記ホルダーは、更に前記無機多孔質層の下の下部にスポンジ層を有することを特徴とする植物栽培器具。
- 請求項1又は2に記載の植物栽培器具において、前記ホルダーが前記蓋と一体化していることを特徴とする植物栽培器具。
- 上方が開口し、培養液を貯める貯水タンクと、
前記貯水タンクの上方に水密的に、かつ、着脱可能に取り付けられ、植物を保持する筒型の蓋と、
を備え、
前記貯水タンクと前記蓋は、遮光性と非透水性を有する素材からなり、
前記蓋は、
外周方向に拡大した上部と、
前記貯水タンク内部に突出した下部と、
を有し、
前記上部は、通気路と、該通気路の上に遮光性を有する無機多孔質層と、
を有し、
前記無機多孔質層と前記通気路が蛇行又は屈曲した通気路を形成することを特徴とする植物栽培器具。 - 請求項4に記載の植物栽培器具において、前記蓋は更に前記蓋の下部にスポンジ層を有することを特徴とする植物栽培器具。
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JP2018130033A (ja) * | 2017-02-13 | 2018-08-23 | 井上 義弘 | 墓用花立構造体 |
JP2019092426A (ja) * | 2017-11-22 | 2019-06-20 | 大東亜窯業株式会社 | 栽培用器具 |
JP2020156407A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 三協立山株式会社 | 植物栽培装置 |
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