JP3172476B2 - フェノール樹脂成形材料及びこれを用いた樹脂摺動部材 - Google Patents
フェノール樹脂成形材料及びこれを用いた樹脂摺動部材Info
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Description
成形材料及びこれを用いた樹脂摺動部材に関し、例えば
乾式の変速装置に用いられる高負荷伝動用Vベルト等の
ように相手材と摺動するものを対象とする。
ベルト式無段変速装置の開発が進められている。このベ
ルト式無段変速装置は、駆動軸及び従動軸の各々に溝間
隔が可変なプーリを取り付けるとともに、この2個のプ
ーリ間にVベルトを巻き掛け、上記各プーリの溝間隔を
調整して回転ピッチを変化させることにより、無段階に
変速するように構成されている。
レスの一対のゴム製の張力帯と、ベルト幅方向両側面に
この各張力帯を嵌合する嵌合溝及びプーリのベルト溝側
面と摺接する摺接部を有する樹脂製の多数のブロックと
で構成され、上記各張力帯の上下面及び各ブロックの嵌
合溝の上下面にそれぞれ形成された凹部及び凸部を互い
に係合させることにより、各ブロックが両張力帯にベル
ト長手方向全長に亘って所定ピッチで並んで取り付けら
れたいわゆるブロックVベルトと呼ばれる高負荷伝動用
Vベルトが知られている(例えば特開昭60―4915
1号公報参照)。
で用いられるものであり、プーリの側圧を各ブロックで
受けるとともに、動力伝達を張力帯で行うようになされ
ており、従来のゴムVベルトに比べて屈曲性が良く、高
側圧に耐え得るようにすることが可能であり、また、金
属Vベルトに比べて軽量化が図れて潤滑が不要になると
ともに、騒音が少ない等の多くの利点を有している。
部分をフェノール樹脂成形材料で成形したブロックVベ
ルトも知られている(例えば特開昭63−34342号
公報参照)。このフェノール樹脂成形材料は、フェノー
ル樹脂とゴム成分とからなるマトリックスに有機繊維や
無機繊維等の繊維質強化材が添加されているものであ
り、さらに、必要に応じて摩擦調節材が添加されてい
る。そして、このフェノール樹脂成形材料でブロックを
成形したブロックVベルトは、上記ブロックのベースが
フェノール樹脂であるため耐熱性が高くなっており、ま
た、上記ゴム成分と繊維質強化材が衝撃強度及び曲げ強
度に寄与していて、ブロックVベルトを高速,高温,高
荷重に耐え得るものにしている。
するためには、その耐久性や伝動性の向上といった観点
から、曲げ強度、衝撃強度、疲労強度、弾性率等の機械
的性質を向上させること、耐摩耗性の向上や摩擦係数の
調整といった摩擦摩耗特性の付与等が要求されることか
ら、これらの物性のさらなる改良が望まれる。
結晶構造がオニオン構造の炭素短繊維を採用し、特に高
強度及び高弾性率を付与したものも開発されている(例
えば特開平2−64132号公報及び特開平8−749
35号公報参照)。
造がオニオン構造の炭素短繊維は、高強度及び高弾性率
を付与することができる反面、添加量の増加に伴って摩
擦係数が低下する傾向にあり、高耐久化を実現するため
に上記炭素短繊維の添加量を大幅に増やすと摩擦係数が
大幅に低下してベルトがスリップし伝動性が悪くなると
いう問題がある。さりとて、上記炭素短繊維の添加量が
少ないと高強度及び高弾性率を付与することができなく
なる。
のであり、その目的とするところは、繊維質強化材とし
ての炭素短繊維を増量しても摩擦係数が低下し過ぎるこ
とがなく、しかも高強度でかつ高弾性率な物性を付与し
得るフェノール樹脂成形材料及びこれを用いた樹脂摺動
部材(例えばブロックVベルト)を提供しようとするこ
とである。
め、この発明は、フェノール樹脂の繊維質強化材として
炭素短繊維だけでなくテトラポット型酸化亜鉛ウィスカ
を併用したことを特徴とする。
は、フェノール樹脂成形材料に関するものであり、次の
ような解決手段を講じた。
ノール樹脂100重量部に対し結晶構造がオニオン構造
の炭素短繊維を25〜120重量部、三次元方向に展開
した形状を有する針状単結晶体からなるテトラポット型
酸化亜鉛ウィスカを3〜60重量部添加したことを特徴
とする。
変性タイプのノボラック、レゾール又はベンジリックエ
ーテル型のフェノール樹脂等が挙げられる。変性フェノ
ール樹脂としてはアルキル変性フェノール樹脂やトール
オイル変性フェノール樹脂等があるが、さらに好適なも
のとしては、カルドール等、すなわち、カシューオイル
やこれに含まれているカルドール、アナカルド酸及びカ
ルダノールの中から選ばれた少なくとも1種の化合物で
変性されたフェノール樹脂が挙げられる。これら変性及
び未変性のフェノール樹脂は単独で又は2種以上混合し
て使用でき、使用に際してはヘキサメチレンテトラミ
ン、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等が適量
添加される。
られるものであり、結晶構造がオニオン構造のものを採
用する。結晶構造がオニオン構造の炭素短繊維は、難黒
鉛化系(例えばPAN系)で得ることができるものであ
り、高い引張り強度と引張り弾性率により、成形体の曲
げ強度及び曲げ弾性率を高めることができる。この効果
を効果的に得るためには、炭素短繊維の添加割合をフェ
ノール樹脂100重量部に対し25〜120重量部に設
定することが好ましい。このような添加割合に設定した
のは、炭素短繊維が120重量部を超えると混練時に内
部発熱して硬化が進みペレット化し難くなるからであ
る。一方、炭素短繊維が25重量部未満であると摩耗係
数が大きくなり、高負荷伝動用Vベルトとして用いた場
合、ベルト走行時に発熱して耐久性が乏しくなるととも
に、騒音が発生するからである。
は、摩擦係数を低減し、かつピッチ系等で得られるラジ
アル構造のものに比べ、高荷重下においても良好な機械
的強度及び摩擦摩耗特性を維持する。つまり、ラジアル
構造の場合、高荷重下では繊維の一部が繊維の中心部か
らラジアル方向に欠け落ち易くて、機械的強度を維持し
難く、しかもこの欠けた部分とそうでない部分との境が
角張った形状になって、摩擦摩耗特性に悪影響を及ぼす
が、オニオン構造の場合、高荷重下においても、繊維の
断面形態が破壊され難いとともに、上記ラジアル方向へ
の繊維の欠け落ちの問題はなく、また、表面の一部が薄
く剥れても機械的強度や摩擦摩耗特性にはほとんど影響
がない。因みに、高い弾性率を有するものでもその結晶
構造がラジアルのものは、材料混練時の剪断力や摺動面
で受ける力により、繊維が破砕され角張った形状になる
ので、高い耐摩耗性を得ることは困難となる。
繊維、撚り糸、チップ状クロス及びクロス等の形状で使
用されるもので、その繊維の直径及び長さは特に限定さ
れないが、直径は10〜20μmが好ましい。このよう
な範囲に設定したのは、10μm未満では機械的強度が
低下する一方、20μmを超えると混練時に発熱が著し
く起こって加工安定性が損なわれるからである。また、
繊維長は0.5〜3.0mmが好ましい。このような範
囲に設定したのは、これ以上長くなると加工性、分散性
が悪くなって強度や衝撃性を阻害するという問題を生ず
る一方、これよりも短くなると補強効果がなくなる なお、撚り糸、チップ状クロス及びクロス形状の繊維は
そのまま使用してもよいが、接着剤で固めて使用すれ
ば、撚り糸、チップ状クロス及びクロス形状の繊維が材
料製造中に解けるのを防止し、また、これらの繊維の縦
方向、横方向への引張り強度や強力を高めることができ
て好ましい。
同様に繊維質強化材として用いられるものであり、三次
元方向に展開した形状を有する針状単結晶体からなるテ
トラポット型のものを採用する。例えば、商品名:パラ
テトラ(松下アムテック社製)である。このテトラポッ
ト型酸化亜鉛ウィスカは、それ単独でもフェノール樹脂
に対する補強性があり、上記炭素短繊維と同等の補強性
を発現することができるが、テトラポット型酸化亜鉛ウ
ィスカの単独使用では、成形体の摩擦係数が高過ぎて乾
式の変速装置に用いられる高負荷伝動用Vベルト(ブロ
ックVベルト)等の樹脂摺動部材としては適当でない。
一方、上記炭素短繊維は添加量が多くなり過ぎると摩擦
係数が必要以上に低減するため、その添加量には自ずと
限界がある。そこで、これら両者の特性を発揮させつつ
適度な摩擦係数を発現させるべく、フェノール樹脂に繊
維質強化材としてオニオン構造の炭素短繊維とテトラポ
ット型酸化亜鉛ウィスカとを併用したものであり、この
テトラポット型酸化亜鉛ウィスカの添加割合をフェノー
ル樹脂100重量部に対し3〜60重量部に設定するこ
とが好ましい。このような添加割合に設定したのは、テ
トラポット型酸化亜鉛ウィスカが60重量部を超えると
摩耗係数が大きくなり過ぎ、高負荷伝動用Vベルト(ブ
ロックVベルト)として用いた場合、ベルト走行時に発
熱して耐久性が乏しくなるとともに、騒音が発生する一
方、テトラポット型酸化亜鉛ウィスカが3重量部未満で
あると摩擦係数が低くなり過ぎてベルト走行時にプーリ
とベルトがスリップして伝動能力が低下するからであ
る。
結晶構造がオニオン構造の炭素短繊維とテトラポット型
酸化亜鉛ウィスカとにより、成形体の曲げ強度及び曲げ
弾性率が高まる。また、炭素短繊維の添加による摩擦係
数の低下がテトラポット型酸化亜鉛ウィスカの添加によ
る摩擦係数の増大により相殺され、上記高強度及び高弾
性率でしかも適度な摩擦係数が得られる。
の発明において、結晶構造がオニオン構造の炭素短繊維
として、結晶層厚が25〜200オングストロームのも
のを採用したことを特徴とする。
ームに設定したのは、200オングストロームを超える
と摩擦係数が低くなり過ぎ傾向にあるとともに、補強効
果が低下する一方、25オングストローム未満では逆に
摩擦係数が高くなり過ぎて良好な摩耗摩擦特性が得られ
ないからである。
炭素短繊維の結晶層厚により、その高強度及び高弾性率
が確保される。
の発明において、アラミド短繊維を添加したことを特徴
とする。
テトラポット型酸化亜鉛ウィスカと同様に繊維質強化材
であるが、特に耐衝撃性付与材として用いられるもので
あり、上記炭素短繊維等と同様に繊維、撚り糸、チップ
状クロス及びクロス等の形状で使用される。このアラミ
ド短繊維は、常温時の曲げ強度及び曲げ弾性率を向上さ
せ、かつ上記炭素短繊維では得られない衝撃強度を向上
させ、また、耐摩耗性の向上にも寄与し、しかも相手材
の損傷の問題も生じない。また、その添加量は用途目的
により上記炭素短繊維及びテトラポット型酸化亜鉛ウィ
スカの添加量との関係で適宜決定すればよい。
限定されないが、直径は10〜15μm、繊維長は0.
1〜10mmが好ましい。直径をこのような範囲に設定
したのは、10μm未満では機械的強度が低下する一
方、15μmを超えると混練時に発熱が著しく起こって
加工安定性が損なわれるからである。また、繊維長をこ
のような範囲に設定したのは、長すぎると加工性、分散
性が悪くなって強度や衝撃性を阻害するという問題を生
ずる一方、短すぎると補強効果がなくなることからであ
る。
いては上記炭素短繊維と同様である。つまり、撚り糸、
チップ状クロス及びクロス形状の繊維はそのまま使用し
てもよいが、接着剤で固めて使用すれば、撚り糸、チッ
プ状クロス及びクロス形状の繊維が材料製造中に解ける
のを防止し、またこれらの繊維の縦方向、横方向への引
張り強度や強力を高めることができて好ましい。
アラミド短繊維により特に衝撃強度が高まる。
の発明において、アラミド短繊維として、下記の化学式
で表される芳香族ポリエーテルアミド繊維(3,4′−
ジアミドジフェニルエーテル共重合体繊維)で、かつ繊
維長が0.1〜5.0mmのものを採用したことを特徴
とする。
ミドジフェニルエーテル共重合体繊維は、そのエーテル
結合の存在によって、例えば、同じアラミド短繊維であ
るポリパラフェニレンテレフタールアミド繊維よりも成
形体の曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度、耐薬品性、並
びに耐熱性を向上させることになる。因みに、上述の他
のアラミド短繊維としてのポリパラフェニレンテレフタ
ールアミド繊維の場合、湿熱時の加水分解の問題もあ
る。
いては、0.1〜5.0mmのなかでも0.1〜3.0
mmが好ましく、その理由は前述した如くである。
アラミド短繊維による特性である衝撃強度が確保され
る。
の発明において、フェノール樹脂100重量部に対し無
機摩擦調節材を1〜25重量部添加したことを特徴とす
る。
ト、二硫化モリブデン又はカーボンウィスカー等が好適
なものとして挙げられ、通常は粉末状のものが使用され
る。この無機摩擦調節材を上述のような添加割合にした
のは、25重量部を超えると摩擦係数が低くなり過ぎて
ブロックVベルトのような動力伝動用の成形材料には適
さなくなる一方、1重量部未満では摩擦係数低減の効果
が期待できなくなるからである。
成形体の摩擦係数が適度に低くなり、相手材との摺動に
よる騒音が低く抑えられる。特に、高温時においても炭
素短繊維と相俟って成形体に良好な摩擦摩耗特性が与え
られる。また、この無機摩擦調節材によって成形体が補
強される。
ル樹脂成形材料を用いた樹脂摺動部材に関するものであ
り、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか
1項に記載のフェノール樹脂成形材料で樹脂摺動部材を
構成したことを特徴とする。
ベルト式無段変速装置を構成するブロックVベルトAと
呼ばれる高負荷伝動用Vベルトや、制動装置としてのデ
ィスクブレーキにおいて制動板を両側から挟み付けるブ
レーキパッド等である。
曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強度が高く、しかも適度
な摩擦係数の樹脂摺動部材が得られる。
の発明において、樹脂摺動部材を、エンドレスの張力帯
と、この張力帯にベルト長手方向全長に亘って所定ピッ
チで並んで取り付けられた多数のブロックとで構成し、
ベルト走行時、上記各ブロックのベルト幅方向両側面が
プーリのベルト溝側面と摺接する高負荷伝動用Vベルト
とする。そして、上記各ブロックの少なくともプーリと
摺接する部分をフェノール樹脂成形材料で構成したこと
を特徴とする。
る部分の摩擦係数は、ブロックのV角度(図1に符号α
を付して示す)にもよるが、V角度αが26°の場合に
おいて0.16〜0.30、好ましくは0.18〜0.
23になるようにフェノール樹脂成形材料の配合を決定
する。このような範囲に設定したのは、0.30を超え
るとプーリBからのベルト抜け性が悪くなって騒音が大
きくなったり、耐久性が低下するからであり、一方、
0.16未満になるとベルトのスリップが大きくなって
伝動安定性が悪くなるからである。
良好なベルト伝動特性が付与され、高荷重下においても
かかる特性が維持可能となる。
いて図面に基づいて説明する。
た樹脂摺動部材の一例として、乾式のベルト式無段変速
装置に用いられるブロックVベルトAと呼ばれる高負荷
伝動用Vベルトを示す。
一対の張力帯であって、この各張力帯1は保形ゴム層2
を備えてなり、この保形ゴム層2の内部には、心線3が
ベルト長手方向にスパイラル状にかつ平行に埋設されて
いる。
凹溝4がベルト長手方向全長に亘って所定ピッチで並ん
で形成されているとともに、下面にも多数の第2凹溝5
がベルト長手方向全長に亘って所定ピッチで並んで形成
されている。さらに、上記保形ゴム層2の上下両面には
帆布6が被着されている。
れた多数のブロック7がベルト長手方向全長に亘って所
定ピッチで並んで取り付けられている。具体的には、こ
の各ブロック7のベルト幅方向両側面には、嵌合溝8が
「コ」の字形に切欠き形成され、この両嵌合溝8に上記
各張力帯1を嵌合するようになっている。また、各ブロ
ック7のベルト幅方向両側面には、プーリBのベルト溝
側面b1に摺接する摺接部9が各嵌合溝8を挟むように
形成されている。
第1凹溝4に係合する多数の第1凸部10がベルト長手
方向全長に亘って所定ピッチで並んで形成されていると
ともに、下面にも張力帯1の各第2凹溝5に係合する多
数の第2凸部11がベルト長手方向全長に亘って所定ピ
ッチで並んで形成されている。そして、上記各ブロック
7の嵌合溝8に張力帯1を嵌合させて各ブロック7の第
1凸部10を各張力帯1の第1凹溝4に係合させるとと
もに、各ブロック7の第2凸部11を各張力帯1の第2
凹溝5に係合させることにより、各ブロック7を張力帯
1にベルト長手方向全長に亘って所定ピッチで並んで係
止固定するようになっている。この係止固定状態で、上
記各張力帯1は各ブロック7の摺接部9から所定寸法だ
け側方に突出しており、図1に示すように、この突出部
はベルト走行時にプーリBのベルト溝側面b1に圧接し
て実質的に両側の摺接部9と面一になされる。
ルミニウム合金製の略「H」形に形成された金属部材1
2を備えてなり、この金属部材12の表面全体には、以
下の実施例で具体的に説明するが、この発明の特徴であ
るフェノール樹脂成形材料からなるフェノール樹脂層1
3が接着剤層14を介して積層されている。
は、固定シーブ及び可動シーブからなる駆動側及び従動
側の2つの変速プーリB間に巻き掛けられてベルト式無
段変速装置を構成し、ベルト走行時、ブロック7のベル
ト幅方向両側面(摺接部9)がプーリBのベルト溝側面
b1と摺接するようになっている。
具体的に示す。表1に示す配合からなるフェノール樹脂
成形材料を用いてテストピースを作成し、各種の実験を
行った。このテストピースの成形方法については、特に
制限はなく、慣用されている方法の中から任意の方法を
用いることができるが、本例では、フェノール樹脂成形
材料をヘンシェルミキサー等で均一に分散混合してから
表面温度90℃の2本の熱ロールで5分間混練後プリプ
レグを作成し、得られたプリプレグをペレット化し、こ
れを成形材料としてインジェクション成形により得た。
その結果を表1に示す。なお、このフェノール樹脂成形
材料には表1に掲載していないが、硬化剤として適量の
ヘキサメチレンテトラミンやその他の添加剤が添加され
ている。表1のデータは以下に示す方法に従って測定し
た。表1中、比較例4は炭素短繊維の添加量が多過ぎる
ためペレット化できず、データを得ることができなかっ
た。
ト衝撃強度 JIS K6911 ここで曲げ強度及び曲げ弾性率は、10mm角棒のテス
トピースを使用して支点間距離64mm、荷重速度2m
m/mmで測定した。また、アイゾット衝撃強度とはノ
ッチ付アイゾット衝撃強度であり、テストピースは金型
により成形時にノッチを設けたものを使用した。
わち、実施例1〜5及び比較例1〜3,6,7では、フ
ェノール樹脂100重量部に対する炭素短繊維の添加量
が請求項1で特定した25〜120重量部の範囲内にあ
るため、曲げ弾性率及び曲げ強度が共に高い値を示した
が、比較例5では、炭素短繊維の添加量が15重量部と
少ないため、曲げ弾性率及び曲げ強度が共に低い値しか
示さなかった。また、テトラポット型酸化亜鉛ウィスカ
を添加していない比較例1〜3では、炭素短繊維の添加
量が増加するとアラミド短繊維を添加しているにも拘ら
ず、アイゾット衝撃強度が低下しているが、テトラポッ
ト型酸化亜鉛ウィスカを添加している実施例1〜5では
アラミド短繊維の添加の有無に拘らず高いアイゾット衝
撃強度を得ることができ、アラミド短繊維を添加してい
る実施例3〜5ではさらにアイゾット衝撃強度が高くな
っている。
テトラポット型酸化亜鉛ウィスカの両者を添加している
ため、摩擦係数はVベルトのV角度αが26°の場合に
おいて要求される0.16〜0.30の範囲内にあり、
Vベルトにした場合の伝動性に支障を来たさないが、テ
トラポット型酸化亜鉛ウィスカを添加していない比較例
2,3では、炭素短繊維の添加量の増加によって摩擦係
数が低下し過ぎ、V角度αが26°の場合においてスリ
ップが大きくなってVベルトとして使用できないことが
実験的に検証されている。なお、より高い摩擦係数とす
るには炭素短繊維に対するテトラポット型酸化亜鉛ウィ
スカの添加割合を多くすればよい。
ば、フェノール樹脂100重量部に対し結晶構造がオニ
オン構造の炭素短繊維を25〜120重量部、三次元方
向に展開した形状を有する針状単結晶体からなるテトラ
ポット型酸化亜鉛ウィスカを3〜60重量部添加してフ
ェノール樹脂成形材料を構成したので、上記炭素短繊維
の添加による摩擦係数の低下を上記テトラポット型酸化
亜鉛ウィスカの添加により相殺して、高強度及び高弾性
率でしかも適度な摩擦係数で耐久性及び伝動効率に優れ
た樹脂摺動部材(高負荷伝動用Vベルト)を成形するこ
とができる。
Claims (7)
- 【請求項1】 フェノール樹脂100重量部に対し結晶
構造がオニオン構造の炭素短繊維が25〜120重量
部、三次元方向に展開した形状を有する針状単結晶体か
らなるテトラポット型酸化亜鉛ウィスカが3〜60重量
部添加されていることを特徴とするフェノール樹脂成形
材料。 - 【請求項2】 請求項1記載のフェノール樹脂成形材料
において、結晶構造がオニオン構造の炭素短繊維は、結
晶層厚が25〜200オングストロームであることを特
徴とするフェノール樹脂成形材料。 - 【請求項3】 請求項1記載のフェノール樹脂成形材料
において、 アラミド短繊維が添加されていることを特徴とするフェ
ノール樹脂成形材料。 - 【請求項4】 請求項3記載のフェノール樹脂成形材料
において、 アラミド短繊維は、下記の化学式で表される芳香族ポリ
エーテルアミド繊維であり、 【化1】 かつ繊維長が0.1〜5.0mmであることを特徴とす
るフェノール樹脂成形材料。 - 【請求項5】 請求項1記載のフェノール樹脂成形材料
において、 フェノール樹脂100重量部に対し無機摩擦調節材が1
〜25重量部添加されていることを特徴とするフェノー
ル樹脂成形材料。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフ
ェノール樹脂成形材料で構成されていることを特徴とす
るフェノール樹脂成形材料を用いた樹脂摺動部材。 - 【請求項7】 請求項6記載のフェノール樹脂成形材料
を用いた樹脂摺動部材において、 エンドレスの張力帯と、この張力帯にベルト長手方向全
長に亘って所定ピッチで並んで取り付けられた多数のブ
ロックとで構成され、ベルト走行時、上記各ブロックの
ベルト幅方向両側面がプーリのベルト溝側面と摺接する
高負荷伝動用Vベルトであり、 上記各ブロックの少なくともプーリと摺接する部分がフ
ェノール樹脂成形材料で構成されていることを特徴とす
るフェノール樹脂成形材料を用いた樹脂摺動部材。
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1997
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