JP3170595B2 - Wx遺伝子発現の確認方法およびモチコムギの作出方法 - Google Patents

Wx遺伝子発現の確認方法およびモチコムギの作出方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】〔発明の背景〕
【産業上の利用分野】本発明は、穀物、特にコムギの
遺伝子発現の確認方法ならびにこの確認方法を利用す
ることができるモチコムギの作出方法およびこの作出方
法によって得られるモチコムギに関するものである。
【0002】
【従来の技術】種子にモチ性が認められる作物として
は、イネ、トウモロコシ、オオムギ、ジャガイモ、ア
ワ、ソルガムなどが知られており、普通(ウルチ)系統
のものにおいてはWxタンパク質が存在しているのに対
して、モチ性系統ではこのWxタンパク質の存在が見ら
れない。Wxタンパク質はWx遺伝子の発現産物であっ
てアミロース合成に関与するデンプン合成酵素(Granule
Bound Starch Synthase : GBSS)としての機能を有す
る。このWx遺伝子は、イネなどの2倍体植物ではには
1種の遺伝子として存在しており、低率(10-4)では
あるが突然変異によって欠落し(植物育種学、上巻、基
礎編藤巻ら著、培風館、第80〜82頁、1992
年)、これによってWxタンパク質が産性されず普通系
統のものがモチ性となる。これに対して、コムギでは3
種のWx遺伝子を有する6倍体のもの(普通系統)およ
び2種のWx遺伝子を有する4倍体のもの(マカロニ種
など)が存在していることが知られている。6倍体であ
る普通系コムギ(Triticum aestivum L.、ゲノム構成A
ABBDD)では、3種のWx遺伝子Wx−A1Wx
−B1およびWx−D1を染色体腕7AS、4ALおよ
び7DS上に持つことがサザン法によって確認されてい
る(Chaoら、Theor.Appl.Genet. 、第78巻、495〜
504頁、1989年)が、Wx遺伝子の発現産物であ
るWxタンパク質は、SDS−PAGE法による電気泳
動によって単一のバンドとしてしか検出されていない
(山守ら、育種学雑誌、40巻(別冊1)第410〜4
11頁、1990年)。また、6倍体コムギ(普通系
統)および4倍体コムギ(マカロニ系統など)について
は現在のところモチ性のものは知られていない。
【0003】〔発明の概要〕
【発明が解決しようとする課題】コムギにおける3種の
Wx遺伝子Wx−A1Wx−B1およびWx−D1
発現の有無を個々に確認できる分析方法が確立できれ
ば、この分析方法を利用して特定のWx遺伝子の発現を
欠いた変異体を見つけ出し、適当な変異体の組合わせを
選択して交配することにより、コムギにおいてWxタン
パク質が産性されない、すなわちWx遺伝子の発現を欠
いたモチ性系統のものを作出することができる。本発明
は穀物、特にコムギにおける3種の遺伝子の発現の有無
を個々に確認できる分析方法および3種のWxタンパク
質が産性されないモチコムギを作出する手段を提供する
ことを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】従来のSDS−PAGE
法でWxタンパク質が単一のバンドとしてしか検出され
ない原因は、コムギの胚乳中では1種のWx遺伝子しか
発現していないためか、あるいは、複数の遺伝子が発現
しているがその産物の分子量が同一もしくは近接するこ
とによりSDS−PAGE法では分離できず単一のタン
パク質として検出されるため、の2点が考えられる。そ
こで本発明者等は、コムギのChinese Spri
ng(CS)およびそのnullisomic−tet
rasomic(NT)系統のWxタンパク質を二次元
電気泳動法を用いて解析することによって、3種遺伝子
由来の産物を検出することに成功した。この知見をもと
に本発明を完成するに至った。すなわち、本発明による
Wx遺伝子発現の確認方法は、穀物のWx遺伝子の発現
産物である複数のWxタンパク質を二次元電気泳動法を
用いて分離することを特徴とするものであり、この好ま
しい態様は、コムギWx遺伝子の発現産物であるWxタ
ンパク質Wx−A1Wx−B1およびWx−D1を二
次元電気泳動法を用いて分離することを特徴とするもの
であり、このさらに好ましい態様は、二次元電気泳動法
が等電点電気泳動とSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動との組合わせのものである。また、本発明による
モチコムギの作出方法は、コムギWx遺伝子Wx−A
Wx−B1およびWx−D1を有しそのうちの2種
の遺伝子の発現を欠いた6倍体コムギ変異体と残りの1
種の遺伝子の発現を欠いた6倍体コムギ変異体(好まし
くは、両変異体のWx遺伝子の発現を上記の確認方法で
確認したもの)を交配し、その後代において上記3種の
遺伝子の発現を欠いた個体を得ることを特徴とするもの
であり、この好ましい態様は、交配がWx遺伝子Wx−
A1およびWx−B1の発現を欠いたコムギ変異体と
遺伝子Wx−D1の発現を欠いたコムギ変異体との組
合わせによるものである。本発明によるモチコムギの別
の作出方法は、コムギWx遺伝子Wx−A1Wx−B
およびWx−D1を有しそのうちの2種の遺伝子A1
およびB1の発現を欠いた6倍体コムギ変異体と、二粒
系コムギゲノム構成AABB個体(好ましくは、変異体
Wx遺伝子の発現を上記の確認方法で確認したもの)
とを交配し、その後代において上記2種の遺伝子の発現
を欠いた4倍体個体を得ることを特徴とするものであ
る。本発明はまた、上記作出方法によって得られるモチ
コムギに関するものでもある。
【0005】〔発明の具体的説明〕普通系コムギ(Trit
icum aestivum L.(遺伝子型:AABBDD))におけ
る3種のWx遺伝子Wx−A1Wx−B1およびWx
−D1は3つの別々の染色体腕7AS、4ALおよび7
DS上に存在しており(Chaoら、1989年、前記)、
このWx遺伝子の発現によって産生されるWxタンパク
質(Wx−A1Wx−B1およびWx−D1)は、デ
ンプン粒に結合したタンパク質でアミロース合成に関与
するデンプン合成酵素(顆粒性澱粉合成酵素(Granule B
ound StarchSynthase : GBSS) )である。Wx遺伝子発現の確認方法 本発明によるWx遺伝子発現の確認方法は、穀物のWx
遺伝子の発現産物である複数のWxタンパク質を二次元
電気泳動法を用いて分離することを特徴とするものであ
り、特に、コムギにおけるWx遺伝子の発現産物である
Wxタンパク質A1、B1およびD1を二次元電気泳動
法を用いて分離することを特徴とするものであることは
前記したところである。従来のSDS−PAGEによる
電気泳動では、上記3種のWxタンパク質が単一のバン
ドとしてしか検出できなかったが、本発明における二次
元電気泳動法により、これら3種のWxタンパク質を個
々に分離確認すること、すなわち3種のWx遺伝子の発
現の有無を確認することが可能となった。本発明による
二次元電気泳動は、具体的にはたとえばタンパク質の有
する固有の当電点の差を利用して分離を行う等電点電気
泳動およびタンパク質の分子量の差を利用して分離を行
うSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以後、S
DS−PAGEともいう)との組合わせによるものであ
る。等電点電気泳動とSDS−PAGEの組合わせによ
る二次元電気泳動の好ましい方法は、基本的にはO´F
arrel1の二次元電気泳動法に従って実施すること
ができる。二次元電気泳動の方法は、基本的には、分析
しようとする試料、すなわちコムギ種子のデンプン(好
ましくは精製されたもの)について一次元目の泳動とし
て等電点電気泳を行った後、泳動方向を90度変えて二
次元目の電気泳動としてSDS−PAGE(ビスアクリ
ルアミド濃度を下げたゲルを用いたSPS−PAGE
(後述))を行って目的のWxタンパク質を二次元方向
に分離し、分離試料について染色操作を施した後に染色
パターンを解析することによってWxタンパク質の有
無、すなわちWx遺伝子(Wx−A1Wx−B1
x−D1)の発現の有無を確認することができる。
【0006】(1)デンプン試料の調製Wx 遺伝子発現の確認のための試料としてのコムギデン
プンの調製は、デンプンを分離精製するための合目的的
な任意の方法を用いることができ、このような方法とし
てはたとえば、EchtおよびSchwartzの方法(Genet
ics,99,275〜284,1981年)があげら
れ、この方法に基づいて粗製デンプンまたは精製デンプ
ンを得ることができる。EchtおよびSchwartzの方法に基
づく調製法の概要は次の通りである。まず、各種系統の
種子(通常は胚を取り除いた完熟種子)を粉砕した後に
ふるい(通常60μm)にかけ、この粉に冷却した緩衝
液または水、好ましくは緩衝液(たとえばドデシル硫酸
ナトリウムを含む緩衝液(SDS緩衝液:後記(2) 参
照)を4℃程度に冷却したもの)を加え、ホモジナイズ
した後適当なフィルター(ミラクロスなど)で濾過す
る。瀘液を遠心洗浄(通常15000rpm で5分間)
し、上清(後に可溶性タンパク質サンプルとして利用で
きる)を除き、蒸留水およびアセトンなどで同様の洗浄
をした後に乾燥(エバポレーターによる真空乾燥など)
を行う。この方法において乾燥以外の操作は全て低温下
(通常4℃下程度)で行い、乾燥させたデンプンは使用
されるまでは−20℃程度の低温で保存されることが望
ましい。この方法の詳細は後記実験例に記載されてい
る。調製された粗デンプンまたは精製デンプンは、次に
一次元目の電気泳動に供するための試料に調製する必要
がある。この調製は次のような方法によって行うことが
できる。上記のように調製されたデンプン(好ましくは
精製デンプン)に対してLysis緩衝液(たとえば、
尿素(通常8M)、ノニデット(Nonidet)- P40(界
面活性剤を主成分として含む、通常2%)、アンフォリ
ン(Ampholine 、ポリアミノポリカルボン酸を主成分と
して含む、通常2%)、β−メルカプトエタノール(通
常5%)、ポリビニルピロリドン(通常5%)からなる
緩衝液)を一定の割合で(通常デンプン10mgに対し
て300μl程度)加え、通常、100℃で2分間熱処
理を加えて氷中などの低温で10分間程度冷却するかあ
るいは加熱を加えずに室温で1時間程度放置する。これ
を遠心(通常15000rpm で10分間)することによ
り、上清を電気泳動用の試料とすることができる。この
ようにして得られたデンプン溶出液を好ましくは100
〜300μ、より好ましくは200μl程度の量で一次
元目の電気泳動、好ましくは等電点電気泳動に供試す
る。試料としての上清の量は通常の泳動の場合には10
〜20μlであり、このような量では最終的にWxタン
パク質のスポットの確認が極めて困難であるが、上記の
ような量を使用することによって3種のWxタンパク質
のスポットの確認が可能となる。なお、デンプン試料の
濃度の大小に対応してこの使用量を変化させることがで
きる。
【0007】(2)等電点電気泳動 等電点電気泳動の具体的な操作方法は、基本的には前記
O'Farrel1 の方法に従うことができるが、一般的な操作
の概要は以下に示す通りである。まず、泳動用の支持溶
液を作成する。支持溶液は、アクリルアミドを基本とす
るゲル(通常30%)溶液が好ましい。ゲル用溶液とし
ては、通常この目的に用いられる任意のものが適用でき
るが、下記のような組成配合のものが一般的である。 尿素 30%アクリルアミド溶液(高純度品) 純水 10%NP−40 アンフォライン(pH3.5〜10) アンフォライン(pH5〜8) 10%過硫酸アンモニウム TEMD(テトラメチルエチレンジアミン) 上記の配合およびアンフォラインの組合せは、必要に応
じて支持溶液としての機能を維持する範囲で任意に変化
させることができる。次に、ゲル溶液を垂直に立てた等
電点電気泳動用ガラス管に注入してゲル化させ、上側に
前記Lysis緩衝液を重層する。一方の陽極電極槽に
酸性溶液(たとえば0.01Nリン酸溶液)を入れ、他
方の陰極電極槽に塩基性溶液(たとえば0.02N N
aOH)を入れて適当な条件で予備通電した後、デンプ
ン試料を前記したように100〜300μl、より好ま
しくは200μl程度ゲル上に重層する。適当な泳動条
件、通常、400V(定電圧)で16〜18時間、必要
に応じて更に800V(定電圧)で1時間程度泳動を行
う。泳動条件は全体で5000〜10000V・時間と
なるようにすることが望ましい。泳動終了後、ガラス管
よりゲルを抜き出して適当な緩衝液(たとえばSDS緩
衝液:0.1MトリスHCl(pH6.8)、2.3%
SDS、5%β−メルカプトエタノール、10%グリセ
ロール)で平衡化し、これを二次元目のSDS−PAG
Eのために使用する。
【0008】(3)SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動(SDS−PAGE) SDS−PAGEの具体的な操作方法については一般的
な文献もしくは書物、(たとえばLaemmli:Nature, 22
7;680〜685,1970年)の方法を参照するこ
とができるが、好ましくはLaemmli の変法である低ビス
濃度SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(Hiran
o,J.Protein chem.8:115〜130,1989およ
びKagawa and Hirano,Japan J.Breed.38:327〜3
32,1988)を参照することができる。操作の概要
は以下に示す通りである。まず、泳動用の分離ゲル用溶
液を作成する。分離ゲル用溶液としては、下記のような
組成配合のものが一般的である。 分離ゲル用緩衝液 分離ゲル用アクリルアミド溶液 純水 10%過硫酸アンモニウム TEMD 分離ゲル用アクリルアミド溶液は通常次のような配合で
ある。 分離ゲル用アクリルアミドストック液(アクリルアミ
ド:ビス=30:0.135: アクリルアミド(電気泳動用) メチレンビスアクリルアミド(電気泳動用) 純水 分離ゲル用緩衝液は通常下記のような配合である。 分離ゲル用緩衝液(1Mトリス・HCl pH8.8/
0.27%SDS): トリス(電気泳動用) SDS 純水 このように調製した分離ゲル溶液を泳動用のガラス板の
間に注入してゲル化させる。濃縮ゲル用溶液を調製す
る。濃縮ゲル用溶液としては、下記のような組成配合の
ものが一般的である。 濃縮ゲル用緩衝液 3ml 濃縮ゲル用アクリルアミド溶液 1ml 純水 2ml 10%過硫酸アンモニウム 30μl TEMD 20μl 濃縮ゲル用アクリルアミド溶液は通常次のような配合で
ある。 濃縮ゲル用アクリルアミドストック液(アクリルアミ
ド:ビス=30:0.8) アクリルアミド(電気泳動用) メチレンビスアクリルアミド(電気泳動用) 純水 濃縮ゲル用緩衝液としては、通常次のような配合が用い
られる。 分離ゲル用緩衝液(0.25Mトリス・HCl pH
6.8/0.2%SDS): トリス(電気泳動用) SDS 純水 このように調製した濃縮ゲル用溶液を分離ゲル上に注入
してゲル化させる。電気泳動用アガロース(高純度のも
のが望ましい)用溶液(通常SDS緩衝液中アガロ−ス
1%(W/V))を濃縮ゲル上に加えてゲル化させる。
分離ゲル用溶液および濃縮ゲル用溶液の配合割合は、必
要に応じてそれらの機能を維持する範囲で任意に変化さ
せることができる。泳動用緩衝液槽に泳動用緩衝液を加
えて適当な泳動条件、通常ゲル1枚当たり20mA(定
電流)で泳動を行う。この時、コントロールとしてブロ
ムフェノールブルー(BPB)などの色素を標準物質と
して泳動用緩衝液に加えておくことが望ましい。泳動用
緩衝液は通常次のような配合である。 電気泳動用緩衝液: トリス グリシン SDS 純水 標準物質を目安として適当な時点で泳動を停止し、分離
ゲルを取り出した後に染色操作を行う。染色方法は、タ
ンパク質を染色するためのものであれば一般的に用いら
れる任意の方法が可能であり、たとえば、クマシーブリ
リアントブルーによる染色などがある。上記したような
二次元電気泳動により得られる結果(Chinese-Spring(C
S)およびそのnullisomic-tetrasomic(NT) 系統を用いた
Wxタンパク質の二次元電気泳動法による解析)は図1
〜2に示される通りであり、3種のWxタンパク質の存
在の有無を個々に確認できることがわかる。すなわち、
図1に示される通り、コムギChinese-Spring(CS)系統の
タンパクは高分子量と低分子量の二つのサブユニットグ
ループ(SG)に分かれること、高分子量のSGはN7
AT7B、N7AT7Dでは検出されないこと、N4A
T4B、N4AT4Dでは低分子量SGの酸性側のサブ
ユニットが薄くなるか欠失していること、一方N7DT
7A、N7DT7Bでは逆に塩基性側のサブユニットが
欠失していること、が認められる。これらの結果より、
明らかに高分子量のSGは7A染色体上のWx−A1
伝子にコードされていることが、また、低分子量のSG
は4A染色体上のWx−B1遺伝子および7D染色体上
Wx−D1遺伝子にコードされており各々の遺伝子由
来のSGの等電点は若干異なるため両者のサブユニット
が部分的に重なった形になっていることも明かになっ
た。これらの結果を単純なダイアグラムにすると図2の
ようになる。また、図3は、3種遺伝子のうちWx−A
だけが発現していない変異個体(wx)、Wx−A
およびWx−B1の両方が発現していない変異個体
(wxAB)、Wx−D1だけが発現していない変異個
体(Wx)における泳動図およびそのダイアグラムを
示すものである。
【0009】モチコムギの作出方法 前述のように、普通系コムギ(Triticum aesutivum L.
)には3種のWx遺伝子、すなわちWx−A1Wx
−B1およびWx−D1(遺伝子型AABBDD)が存
在しており、このWx遺伝子の発現産物であるWxタン
パク質、すなわちWx−A1Wx−B1およびWx−
D1タンパク質は、デンプン粒に結合したタンパク質で
あってアミロース合成に関与するデンプン合成酵素であ
る。従って、コムギにおいてこのタンパク質が欠失する
とアミロースが合成されず、アミロペクチンだけからな
るデンプン、すなわちモチデンプンになる。本発明は、
モチコムギの作出方法にも関するものであり、この作出
方法は基本的に、3種のWx遺伝子のうちの特定のWx
遺伝子の発現を欠いた適当な組み合わせによる6倍体コ
ムギ変異体同士の交配によりすべてのWx遺伝子の発現
を欠いた6倍体個体を作出するもの、および特定のWx
遺伝子の発現を欠いた6倍体個体と4倍体(二粒系)コ
ムギゲノム構成AABB個体との適当な組み合わせによ
る交配により4倍体個体を作出するものである。これら
の作出方法は、上述してきたような本発明によるWx
伝子の確認方法の確立により、コムギにおける3種のW
x遺伝子の発現の有無、すなわちWx遺伝子発現産物も
しくはWx−A1、Wx−B1およびWx−D1タンパ
ク質の存在の有無が個々に確認できるようになり、これ
によって本発明作出方法が可能になった。なお、本発明
において「個体」とは、植物体および種子の両者を包含
するものである。
【0010】(1)6倍体モチコムギの作出方法 本発明による6倍体モチコムギの作出方法は、コムギW
x遺伝子Wx−A1Wx−B1およびWx−D1を有
しそのうちの2種の遺伝子の発現を欠いた6倍体コムギ
変異体と、残りの1種の遺伝子の発現を欠いた6倍体コ
ムギ変異体とを交配し、その後代において上記3種の遺
伝子の発現を欠いた個体を得ることを特徴とするもので
あり、必要となる上記変異体は、代表的には前記したよ
うな本発明によるWx遺伝子発現の確認方法を用いるこ
とによって所望の組合わせのものを選択することができ
る。Wx遺伝子Wx−A1Wx−B1およびWx−D
のうちの2種の発現を欠いた6倍体コムギ変異体とし
ては、Wx−A1Wx−B1Wx−B1Wx−D
、およびWx−A1Wx−D1の組合わせのものが
ありうるが、その代表例としては、Wx−A1タンパク
質とWx−B1タンパク質の発現を同時に欠く変異体で
ある。従って、6倍体モチコムギの作出方法の代表例
は、Wx−A1タンパク質とWx−B1タンパク質の発
現を共に欠いているがWx−D1タンパク質の発現能力
を維持している6倍体変異体と、Wx−A1タンパク質
とWx−B1タンパク質の発現能力を共に有しているが
Wx−D1タンパク質の発現のみを欠いた6倍体変異体
とを交配することによって全て(3種)のWx遺伝子の
発現を欠いた、すなわち3種のWxタンパク質の産性の
ないモチ性の個体を得るものである。この作出方法の具
体的な内容を以下に説明する。Wx−A1タンパク質と
Wx−B1タンパク質の発現を共に欠いているがWx−
D1タンパク質の発現能力を維持している6倍体コムギ
(たとえば、パンコムギ関東107号)の遺伝子型をa
abbDDと表記すれば、Wx−D1タンパク質の発現
のみを欠いたコムギはAABBddと表記することがで
きる。この両者を通常の方法によって交配することによ
り、一代雑種個体(F種子)を得ることができる。コ
ムギの交配によるF種子の生産方法に関しては一般的
な文献あるいは書物(たとえば植物遺伝学実験法、常脇
恒一郎編集、p278〜279、1982年)を参照す
ることができるが、基本的な操作手順は次のようにす
る。片方のコムギが開花する2〜3日前におしべをピン
セットなどで取り去り(除雄)、パーチメント袋(硫酸
紙)をかぶせる。2〜3日後に袋をはずし、このコムギ
のめしべに他方のコムギの花粉を毛筆ふでなどでふりか
ける。他からの花粉の飛来を避けるため再び袋をかぶせ
る。交配が成功していれば30〜40日後に種子が得ら
れる。このようにして得られるF種子は3種の遺伝子
に関してヘテロ(すなわち3性雑種)になるので、その
遺伝子型はAaBbDdと表記される。次に、このF
個体を自家受粉させて雑種第2代(F個体)を得る。
コムギの自家受粉による種子生産方法については一般的
な文献あるいは書物(たとえば上記植物遺伝学実験法、
第277頁を参照することができるが、基本的な操作手
順は、他からの花粉の飛来を避けるため開花1〜3日前
にパーチメント(硫酸紙)袋をかぶせるようにする。上
記のようにして得られるF種子の一粒づつについて、
電気泳動法によりWxタンパク質の存在の有無を分析す
る。電気泳動は、本発明によるWx遺伝子の確認方法に
おける二次元電気泳動法を用いればよい。電気泳動分析
の結果Wxタンパク質が検出されないモチ性のコムギ個
体を選抜する。Wx遺伝子は互いに異なる3つの染色体
上にあるので(Chaoら、Theor.Appl.Genet. 第78巻、
495〜504頁、1989年、前記)、このF世代
においてはメンデルの法則(分離および独立の法則)に
従って1/64(=1/4×1/4×1/4)の割合で
遺伝子型aabbddのコムギ個体が得られる。すなわ
ち3性雑種のF世代においてはメンデルの法則により
遺伝子型AD、Add、AbbD、a
aB、Abbdd、aaBdd、aabbd
D、aabbD、aabbddの個体がそれぞれ2
7:9:9:9:3:3:3:1(計64)の比で分離
し(「育種学」、松尾孝嶺著、養賢堂、98頁、197
8年)(ここで、AはAAまたはAa、BはBBま
たはBb、DはDDまたはDdを表す)、従って、F
種子において1/64の割合で遺伝子型aabbdd
のコムギ個体が得られる。このコムギの表現型は3種の
Wxタンパク質(A1、B1、D1)発現が欠失したも
のであり、従って、このコムギ個体はWxタンパク質の
発現を欠いたモチコムギとなる。最終的に得られるWx
タンパク質の発現を欠いたコムギ種子(粉)についてア
ミロース含量を測定し、そのモチ性(アミロース0%)
を確認する。アミロース量の測定方法に関しては、一般
的な文献あるいは書物(たとえば黒田ら、育種学雑誌、
第39巻(別冊2)142〜143頁、1989年)を
参照することができ、通常ヨード・ヨードカリ呈色反応
が用いられる。交配の組合わせとして、Wx−B1タン
パク質とWx−D1タンパク質の発現を欠いた6倍体変
異体とWx−A1タンパク質のみの発現を欠いた6倍体
変異体との組合わせ、およびWx−A1タンパク質とW
x−D1タンパク質の発現を欠いた6倍体変異体とWx
−B1タンパク質のみの発現を欠いた6倍体変異体との
組合わせの場合においても、上述した方法と同様にして
それぞれF世代において1/64の割合でWxタンパ
ク質発現を欠いたモチコムギを得ることができる。また
交配の一方の変異体である2種の遺伝子の発現を欠いた
6倍体変異体としては、上記の他に1種づつ遺伝子の発
現を欠いたものの交配によって得られたものを使用する
ことも可能である。このようにして得られるモチ性F
個体およびその後代の個体(F以後の種子または植物
体)はすべてモチコムギとなり、本発明はこれらもすべ
て包含するものである。
【0011】(2)4倍体モチコムギの作出方法 本発明による4倍体モチコムギの作出方法は、コムギ
遺伝子Wx−A1Wx−B1およびWx−D1を有
しそのうちの2種の遺伝子A1およびB1の発現を欠い
た6倍体コムギ変異体と、二粒系コムギゲノム構成AA
BB個体とを交配し、その後代において上記2種の遺伝
子の発現を欠いた4倍体個体を得ることを特徴とするも
のである。必要となる上記6倍体コムギ変異体は、本発
明によるWx遺伝子発現の確認方法を用いることによっ
て所望のものを選択することができ、また4倍体コムギ
は従来知られているものの中から所望のものを選択する
ことができる。この4倍体モチコムギの作出方法は言い
換えれば、Wx−A1タンパク質とWx−B1タンパク
質の発現を共に欠いているがWx−D1タンパク質の発
現能力を維持している6倍体変異体と、二粒系コムギゲ
ノム構成AABB個体とを交配することによって全ての
遺伝子(2種)の発現を欠いた、すなわちWxタンパク
質の産生のないモチ性のコムギ個体を得るものである。
この作出方法の具体的な内容を以下に説明する。6倍体
コムギと4倍体コムギの交雑後代から4倍体コムギが出
現することは古くから知られており(「小麦の合成」、
木原均著、274〜293頁、講談社、1973年)、
いくつかの4倍体コムギが得られている。Wx−A1タ
ンパク質とWx−B1タンパク質の発現を同時に欠いた
6倍体コムギ(染色体数2n=42)(たとえばパンコ
ムギ関東107号)の遺伝子型をaabbDDと表記す
れば、Wx−A1タンパク質とWx−B1タンパク質の
発現能力を持つ4倍体コムギ(染色体数2n=28)
(マカロニ種など)はWx−D1遺伝子を得たないので
AABBと表記することができる。この両者を通常の方
法によって交配することによりF個体を得ることがで
きる。コムギの6倍体コムギと4倍体の交配によるF
種子の生産方法に関しては一般的な文献あるいは書物
(たとえば前記植物遺伝学実験法、278〜279頁)
を参照することができるが、基本的な操作手順は(1)
の6倍体もチコムギの作出方法において前記した方法の
ようにする。このようにして得られるF種子の遺伝子
型はAaBbDとなる。次に、このF個体を自家受粉
させてF個体を得る。コムギの自家受粉による種子生
産方法については(1) 6倍体コムギの作出方法の場合と
同様である。上記のようにして得られるF種子の一粒
づつについて、電気泳動法によりWxタンパク質の存在
の有無を分析する。電気泳動は、本発明によるWx遺伝
子の確認方法における二次元電気泳動法を用いればよ
い。また、アミロースの測定(ヨー素・ヨードカリ呈色
反応など)によればより簡単に確認することができる。
実際には、種子を分析用と次世代の植物体栽培のために
胚を含む部分を分けておく必要がある。電気泳動分析あ
るいはアミロース測定の結果Wxタンパク質が検出され
ないモチ性のコムギ個体を選抜する。上記のF個体の
遺伝子型において、A・aおよびB・bに関してのみ注
目すれば、これらは対をなしているので、メンデルの法
則により後代のFにおいて遺伝子型aabbの個体が
1/64(=1/4×1/4)の割合で得られ、Dに関
しては対をなしていないので、この遺伝子(Wx−D
)が座乗している染色体(7D)はF世代以降に脱
落するものがある(前記、「小麦の合成」274〜29
3頁、1973年、14頁6行)。従ってaabbの個
体の中にWx−D1も欠いた個体が出現する。Wx−D
の欠失はこれが座乗する染色体(7D)の欠落の結果
であるので、6倍体コムギではWx−D1はなくなら
ず、染色体数の減少した4倍体コムギにおいてすべての
Wxタンパク質(この場合はWx−A1タンパク質とW
x−B1タンパク質の2種)をなくすことが可能とな
る。このように染色体を欠落したものは正常な6倍体コ
ムギに復帰することはなく、減少の方向に進み4倍体と
なる(前記「小麦の合成」274〜293頁、1973
年、14頁6行)。すなわち、染色体数の減少した4倍
体コムギでのみWxタンパクの削除された個体が得られ
る。このコムギ個体はWxタンパク質の発現を欠いたモ
チコムギとなる。最終的に得られるWxタンパク質の発
現を欠いたコムギ種子について、染色体数(2n=2
8)およびアミロース含量を測定し(通常ヨウ素・ヨウ
素カリ呈色反応)、そのモチ性(アミロース0%)を確
認する。アミロース量の測定方法に関しては、一般的な
文献あるいは書物(たとえば黒田ら、育種学雑誌、前
出)を参照することができる。また染色体数の測定に関
してはたとえば前記植物遺伝学実験法、284〜286
頁を参照することができ、その方法は基本的には、発芽
した種子の根を前処理(氷水(0℃)中24時間程度浸
漬)し、固定液(たとえば、酢酸:エチルアルコール=
1:3の比からなる液)で固定した後、それを酢酸カー
ミン(カーミンを1%になるように45%酢酸に溶かし
たもの)に浸して、染色体を染め、顕微鏡でその数を数
えるものである。また交配の一方の変異体である2種の
遺伝子の発現を欠いた6倍変異体としては、上記の他に
1種づつ遺伝子の発現を欠いたものの交配によって得ら
れたものを使用することも可能である。このようにして
得られるモチ性F個体およびその後代の個体(F
後の種子または植物体)はすべてモチコムギとなり、本
発明はこれらもすべて包含するものである。
【0012】
【実施例】以下は、実施例によって本発明を更に詳細に
説明するものであるが、本発明はこれによって限定され
るものではない。例1 :コムギWx遺伝子発現(Wxタンパク質)の確認 (1)デンプンの精製 デンプン精製は、EchtとSchwartzの方法に
もとづいて行われた。まず、各品種系統の完熟種子から
胚を取り除き、粉砕した後に60μmのふるいを通して
粉を準備した。粉200mg当り1mlの割合で冷却し
たドデシル硫酸ナトリウムを含むバッファー(SDS−
buffer:0.1m Tris−HCI,pH6.
8,2.3%,SDS,5%β−mercapto e
thanol,10%glycerol)を加え、2分
間ホモジェンイザーをかけた後ミラクロスを用いて濾過
した。次に濾液を15000rpmで5分間遠心して、
上清を捨て、再びSDS−buhherを加えて懸濁
し、再び遠心をかけた。この操作を3回繰り返した後、
蒸留水を加えて同様な操作を2回、さらに蒸留水をアセ
トンに変えて3回行い、最後にロタリーエバポレーター
により真空乾燥を行った。乾燥以外の操作は全て4℃下
で行い、乾燥させたデンプンは、−20℃で使用まで保
存された。上述の様に、精製されたテンプン10mgに
300mlのLysis−buffer(8M Ure
a,2%Nonidet−P40,2%Ampholi
ne pH3.5〜10,5% β−mercapto
ethanol,5%polyvinylpyrrol
idone)を加え、100℃で2分間熱処理を加えて
氷中で10分間冷却する(あるいは加熱を加えず、室温
で1時間放置する)。15000rpmで10分間遠心
し、上清200μlを1次元目であるIEF(等電点電
気泳動)に供試する。 (2)二次元電気泳動 二次元電気泳動を次の操作方法に従って実施した。一次
元目の等電点電気泳動用ガラス管を用意し、底部をバラ
フィルムでシールする。紙タオルを底に敷いたガラス管
立てに、垂直に立てる。100mlビーカー中に試薬を
以下の順に混合し、一次元目のゲル溶液を調製する。 (100数本分) 尿素 4.8g 30%アクリルアミド溶液(高純度品) 1.16ml 純水 2.84ml 10%NP−40 2.0ml アイフォライン(pH3.5〜10) 0.25ml アイフォライン(pH5〜8) 0.25ml 10%過硫酸アンモニウム 15μl TEMED 10μl 10mlの注射器を用いて、ガラス管の上部より1cm
の高さまで、ゲル溶液を注入する。このとき、ガラス管
中に気泡が入らないように注意し、気泡が入ってしまっ
たら、ガラス管を軽く振って気泡を除く。ゲルの上部に
純水を重層する。2〜3時間放置して、ゲル化する。ゲ
ルに重層した水を注射器で除き、10μlのLysis
緩衝液をゲルに重層する。陽極側電極層(下側)に0.
01Nリン酸を入れ、ガラス管のLysis緩衝液の上
に0.02N NaOHを静かに重層し、陰極側電極層
(上側)も0.02NNaOHで満たす。200V(定
電圧)で15分間、300V(定電圧)で15分間、4
00V(定電圧)で30分間、予備通電する。予備通電
終了後、一旦、陰極側電極槽(上側)の溶液を除き、ガ
ラス管中の溶液を注射器で抜き取る。エッペンドルフ・
チューブにサンプルを準備する。調製した試料の200
μlに重層する。残存するNaOHと試料が反応して沈
澱が生じることもあるので注意する。その上に、3倍に
希釈したLysis緩衝液を10μl重層し、更に、
0.02NNaOHを重層する。400V(定電圧)で
16〜18時間、泳動する。800V(定電圧)で1時
間、泳動する。(全体で5000〜10000V・時間
となるようにする。)純水を満たした注射器で、ゲルと
ガラスの間に水を注入しながら、静かにゲルを抜き出
す。このとき、陽極側に銅線等を入れると、後で酸性側
/塩基性側の確認が容易にできる。小型サンプル管に泳
動後のゲルを入れ、SDSサンプル緩衝液を5mlを加
えて30分間、振とうしてゲルを平衡化する。液を交換
して、更に、30分間振とうして平衡化する。 二次元目分離ゲル(15%)を下記の配合で調製する(1枚分) 分離ゲル用緩衝液 6.3ml 分離ゲル用アクリルアミド溶液 8.5ml 純水2.0ml 10%過硫酸アンモニウム 120μl TEMED 20μl 分離ゲル用アクリルアミド溶液および分離ゲル用緩衝液
は次のように作成する。 分離ゲル用アクリルアミドストック液 (アクリルアミド:ビス=30:0.135) アクリルアミド(電気泳動用) 30g メチレンビスアクリルアミド(電気泳動用) 0.135g 純水に溶かして100mlとし、遮光して保存。 分離ゲル用緩衝液(1Mトリス・HCl pH8.8/0.27%S DS) トリス(電気泳動用) 12.11g SDS 0.27g 約80mlの純水に溶かし、塩酸によりpHを8.8に
調整する。最終容量を10mlとする。二次元目用のガ
ラス板の間に、上から約3cmの高さまで注入する。約
1mlの純水が静から重層して、30分間放置する。 二次元目濃縮ゲルを下記の配合で調製する(1枚分) 濃縮ゲル用緩衝液 3ml 濃縮ゲル用アクリルアミド溶液 1ml 純水 2ml 10%過硫酸アンモニウム 30μl TEMED 20μl 濃縮ゲル用緩衝液および濃縮ゲル用アクリルアミド溶液
は次のように作成する。 濃縮ゲル用アクリルアミドストック液 (アクリルアミド:ビス=30:0.8) アクリルアミド(電気泳動用) 30g メチレンビスアクリルアミド(電気泳動用) 0.8g 純水に溶かして100mlとし、遮光して保存。 分離ゲル用緩衝液(0.25Mトリス・HCl pH6.8/0.2 %SDS) トリス(電気泳動用) 3.03g SDS 0.2g 約80mlの純水に溶かし、塩酸によりpHを6.8に
調整する。最終容量を10mlとする。これを分離ゲル
の上に注入する。高純度の電気泳動用アガロースをSD
Sサンプル緩衝液に1%(W/V)になるように加え
て、湯浴中で加熱して溶解する。濃縮ゲルの上に、アガ
ロース溶液を加えて、そこに平衡化した一次元目のゲル
を静かに、気泡を入れないようにして乗せる。このと
き、ゲルを乗せるための適当なアクリル板を作成してお
くと便利である。泳動用緩衝液槽に泳動用緩衝液を加え
て、ゲル1枚辺り20mA(定電流)で泳動する。電気
泳動用緩衝液は次のように作成する。 電気泳動用緩衝液 トリス 3.0g グリシン 14.4g SDS 1.0g 純水に溶かして1000mlとする。 上部緩衝液槽にBPBを少量加えておく。BPBがゲル
の下部から5mmのところまで移動したら(約4時間
後)、泳動を停止する。分離ゲルを取り出し、クマシー
ブリリアントブルーR250あるいは銀染法で染色す
る。上述の二次元電気泳動の結果は図1〜2に示されて
いる。図1〜2は、コムギChinese Sprin
g(CS)およびそのnullisomic−tetr
asomic(NT)系統を用いたWxタンパク質の二
次元電気泳動による解析結果を示すものである。図1に
示される通り、(i)コムギChinese−Spri
ng(CS)系統のタンパクは高分子量と低分子量の二
つのサブユニットグループ(SG)に分かれた。(i
i)高分子量のSGはN7AT7B、N7AT7Dでは
検出されなかった。(iii)N4AT4B、N4AT
4Dでは低分子量SGの酸性側のサブユニットが薄くな
るか欠失していた。一方(iv)N7DT7A、N7D
T7Bでは逆に塩基性側のサブユニットが欠失してい
た。これらの結果より、明らかに高分子量のSGは7A
染色体上のWx−A1遺伝子にコードされていること
が、また低分子量のSGは4A染色体上のWx−B1
伝子および7D染色体上のWx−D1遺伝子にコードさ
れており、各々の遺伝子由来のSGの等電点は若干異な
るため両者のサブユニットが部分的に重なった形になっ
ていることも明かになった。これらの結果を単純なダイ
アグラムにして図2に表した。国内品種、系統のWxタ
ンンパクをこのダイアグラムに当てはめてみたところ、
3遺伝子のうちWx−A1だけが発現していない変異個
体、Wx−A1およびWx−B1の両方が発現していな
い変異個体が存在することが確認された(図3)。図3
中のA3−B3は、Wx−D1遺伝子のみが発現してい
ない変異個体における泳動図およびそのダイアグラムを
示す。
【0013】例2:6倍体モチコムギの製造 例1の二次元電気泳動法によって確認された、Wx−A
1タンパクとWx−B1タンパクを同時に欠きWx−D
1タンパクはある6倍体パン小麦(例えば関東107
号、遺伝子型:aabbDD)と、Wx−D1のみを欠
いたコムギ(遺伝子型:AABBdd)の両者を一般的
な方法に従い、次のようにして交配してF個体を得
る。片方のコムギが開花する2〜3日前におしべをピン
セットで取り去り(除雄)、パーチメント袋(硫酸紙)
をかぶせる。2〜3日後に、袋をはずし、このコムギの
めしべに他方のコムギの花粉を毛筆ふででふりかける。
他からの花粉の飛来を避けるために再び袋をかぶせる。
30〜40日後に3性雑種個体(F1 )(遺伝子型:A
aBbDd)を得る。得られる3性雑種個体(F1 )を
一般的な方法に従い他からの花粉の飛来を避けるための
開花2〜3日前にパーチメント(硫酸紙)袋をかぶせる
ようにして自家受粉させてF2 種子を得る。得られるF
2 種子についてWxタンパク質の存在の有無を一粒づつ
電気泳動法または後記アミロース測定法で分析する。電
気泳動法による分析は前記例1に記載の方法に従って行
う。最終的に得られるWxタンパク質が検出されないコ
ムギを選抜し、このF2 種子(粉)についてアミロース
含量を測定してそのモチ性(アミロース0%)を確認す
る。アミロース含量の測定は、一般的な方法に従い(黒
田ら、育種学雑誌、前出)ヨード・ヨードカリ呈色反応
を用いて行う。このような方法により、F1 種子に対し
て1/64の割合でWxタンパクおよびアミロースを欠
いたモチコムギ(遺伝子型:aabbdd)が得られ
る。
【0014】例3:4倍体モチコムギの製造 例1の二次元電気泳動法によって確認された、6倍体パ
ンコムギ(染色体数2n=42)のWx−A1とWx−
B1を同時に欠いたコムギ(例えば関東107号)(遺
伝子型:aabbDD)と4倍体マカロニコムギ(2n
=28)(遺伝子型:AABB)の両者を一般的な方法
に従い、次のようにして交配してFの個体を得る。片
方のコムギが開花する2〜3日前におしべをピンセット
で取り去り(除雄)、パーチメント袋(硫酸紙)をかぶ
せる。2〜3日後に袋をはずし、このコムギのめしべに
他方のコムギの花粉を毛筆ふででふりかける。他からの
花粉の飛来を避けるため再び袋をかぶせる。30〜40
日後F雑種個体(遺伝子型:AaBbD)を得る。得
られるF雑種個体を一般的な方法に従い他からの花粉
の飛来を避けるために開花1〜3日前にパーチメント袋
をかぶせるようにして自家受粉させてF種子を得る。
得られるF種子についてWxタンパク質の存在の有無
を一粒づつ電気泳動法または後記アミロース測定法で分
析する。電気泳動法による分析は前記例1に記載の方法
に従って行う。最終的に得られるWxタンパク質が検出
されないコムギを選抜し、このF種子(粉)について
染色体数(2n=28)およびアミロース含量を測定し
てそのモチ性(アミロース0%)を確認する。アミロー
ス含量の測定は例2と同様の方法で行い、染色体数の確
認は一般的な方法に従い次のようにして行う。発芽した
種子の根が2〜3cmに伸びた時、先端から1〜2cm
を切ってこれを水を満たした管ビンへ入れる。管ビンご
と氷水(0℃)に24時間つける。根を固定液(酢酸:
エチルアルコール=1:3)の比からなる)を入れた管
ビンに浸す。3〜7日後に根を取り出し、酢酸カーミン
(カーミンを1%になるように45%酢酸に煮沸して溶
かしたもの)に30分〜1時間ひたす。この管ビンごと
あぶり、つづいて根をとり出し、先端1〜2mmをスラ
イドガラスの上へ切り取り、45%酢酸を一滴たらす。
カバーガラスをかけ、上からつまようじなどで軽くたた
き、根を散らばらせ、カバーガラスの上から指で押しつ
ぶす。これを顕微鏡で観察し染色体を数える。このよう
な方法により、Wxタンパクおよびアミロースを欠く染
色体数の減少した4倍体モチコムギ(遺伝子型:aab
b)が得られる。
【0015】
【発明の効果】本発明により、穀物、特にコムギにおけ
る3種のWx遺伝子(Wx−A1Wx−B1Wx−
D1)の発現の有無を確認する二次元電気泳動法を用い
た方法が確立された。このWx遺伝子発現の確認方法を
利用して、3種のWx遺伝子のうちの特定のWx遺伝子
の発現を欠いた適当な組合わせによる6倍体コムギ変異
体同士の交配によりすべてのWx遺伝子の発現を欠く6
倍体個体を、また、特定のWx遺伝子の発現を欠いた6
倍体コムギと特定のWx遺伝子を有する4倍体コムギの
適当な組合わせによる交配によりWx遺伝子の発現を欠
く4倍体個体を、すなわちWxタンパク質が産性されな
いモチコムギを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チャイニーズ・スプリング(Chinese Spring)
品種およびそのnullisomic-tetrasomic(NT) 系(6種)
におけるWxタンパク質の二次元泳動パターンを示す説
明図。矢印は同じ位置を示す。
【図2】図1の泳動パターンを単純化したダイアグラム
を示す説明図。
【図3】Wx−A1遺伝子の発現を欠く変異個体、Wx
−A1およびWx−B1遺伝子の両者の発現を欠く変異
個体、およびWx−D1遺伝子の発現を欠く変異個体の
それぞれのWxタンパク質の電気泳動パターンおよびそ
れを単純化したダイアグラムを示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 育種学雑誌、第41巻 別冊1号 (1991),P.240−241 Tbeor.Appl.Gene t.,Vol.78(1989),P.495− 504 Biochomical Genet ics,Vol.31,No5.1/2, 1993

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コムギWx遺伝子Wx−A1Wx−B1
    およびWx−D1を有しそのうちの2種の遺伝子Wx−
    A1およびWx−B1の発現を欠いた6倍体コムギ変異
    体と、二粒系コムギゲノム構成AABB個体とを交配
    し、その後代において上記2種の遺伝子の発現を欠いた
    4倍体個体を得ることを特徴とする、4倍体モチコムギ
    の作出方法。
  2. 【請求項2】上記変異体のWx遺伝子発現の有無を、W
    xタンパク質Wx−A1Wx−B1およびWx−D1
    を二次元電気泳動法を用いて分離することによって確認
    する、請求項1記載の作出方法。
  3. 【請求項3】二次元電気泳動法が等電点電気泳動とSD
    S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動との組合わせであ
    る、請求項2記載の作出方法。
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