JP3169534B2 - 浸水検出方法 - Google Patents

浸水検出方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容器内の液体の有
無及びその量を検出する浸水検出方法に関し、例えば、
開閉器等の屋外に設置される密閉形電力機器のケース内
部の浸水を検出する方法に関する。なお、以下では、
「水」以外の液体が容器内に存在する場合にも「浸水」
と表現し、本発明は「水」を含む各種の液体をその検出
対象としている。
【0002】
【従来の技術】従来、容器内の液体の有無やその量を検
出する原理は、次のようなものである。すなわち、液体
が入った容器の外部から内部へトランスデューサにより
超音波を送信すると、容器の材料、液体、空気の音響イ
ンピーダンスがそれそれ相違することにより、容器と液
体との境界面、及び液体と容器内部の空気との境界面
(液面)からの多重反射波を生じる。このため、容器内
に液体が存在しなければ、容器と空気との境界面からの
多重反射波のみがトランスデューサによって受信される
が、容器内に液体が存在する場合には、容器と液体との
境界面からの多重反射波に続いて液面からの多重反射波
も受信されることになる。
【0003】従って、最初の多重反射波からある時間を
おいて次の多重反射波を受信した場合には、容器内に液
体が存在すると判断でき、また、超音波の送信タイミン
グから2段目の多重反射波を受信するまでの時間を計測
することで液体の量(深さ)を求めることが可能にな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように従来では、
容器内の液体の有無やその量の多少を、もっぱら多重反
射波の有無に依存して検出している。従って、何らかの
原因でノイズが混入したり、最初の多重反射波の波形が
尾を引いているような場合にはこれらを液体による多重
反射波と誤認するおそれがある。また、容器内に少量の
液体が存在する場合には、最初の多重反射波と次の多重
反射波とが時間的に接近して受信されるため、両者の識
別が困難になり、検出上の限界を生じていた。
【0005】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたもので、その目的とするところは、ノイズ等による
誤検出をなくし、しかも検出精度を向上させた浸水検出
方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】液体と空気と
の境界面、つまり液面からの超音波の反射波は、固体と
空気との境界面からの反射波と異なって振幅方向及び時
間軸方向に変動している。これは、液面には常に微小な
波動が存在するので、反射波の振幅及び継続時間が安定
しないためである。本発明は上記の点に着目してなされ
たものであり、請求項1記載の第1の発明は、容器内に
その底部外側から超音波を送信し、その反射波(多重反
射波)を受信して容器内の液体を検出する浸水検出方法
において、容器の境界面から反射して振幅方向への変動
を伴わない反射波、および、浸水の水面から反射して振
幅方向への変動を伴う反射波をともに受信して波形を取
得する作業を複数回行い、超音波の送信時を基準とする
時間軸表現の複数の波形のうち振幅方向に変化する波形
部分を比較して予め定められた範囲を越えて振幅方向に
変化すると判断される場合に振幅方向への変動を伴う反
射波であるとして容器内の液体を検出するものである。
【0007】請求項2記載の第2の発明は、上記第1の
発明において、超音波を送信してから振幅方向に変動す
る反射波を受信するまでの時間を複数回求めてその平均
時間を算出し、この平均時間に基づいて、容器内の液体
の量を求めるものである。
【0008】上記第1及び第2の発明において、振幅方
向に変動する反射波が受信された場合には、その変動が
液面の波動によるものとして容器内の液体の存在を認識
し、また、この液体による反射波が受信されるまでの時
間から液面の高さ、つまり液体の量を求める。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形
態を説明する。図1は、本発明の実施形態に用いられる
浸水検出装置の構成を示すものである。図において、1
は開閉器のケース等の容器であり、その内部には浸水に
より水(液体)Wが存在するものとする。2は超音波を
送受信するトランスデューサであり、超音波振動子を備
えている。
【0010】トランスデューサ2には検出器本体8が接
続されており、この検出器本体8において、3はトラン
スデューサ2を駆動して超音波を送信するためのパルス
送信回路、4は多重反射波を受信したトランスデューサ
2の出力電気信号を増幅検波する受信回路、5は受信回
路4のアナログ出力信号をディジタル信号に変換するA
/Dコンバータ、6はA/Dコンバータ5の出力信号を
記憶するRAM等のメモリ、7はメモリ6内のデータを
用いて最終的に容器1内の水Wの有無及びその量を演算
により検出するコンピュータである。
【0011】次に、この実施形態による水Wの検出原理
を説明する。図2は図1を簡略化したものである。図2
において、トランスデューサ2から送信された超音波
は、容器1と水Wとの境界面により反射して多重反射波
1となり、また、水Wと空気との境界面(水面)によ
り反射して多重反射波E2となる。
【0012】ここで、従来では多重反射波E2の有無に
基づいて水Wの存在及び量を検出していた。しかるに本
実施形態では、水面には僅かながら常時、波動が存在す
ることに着目し、多重反射波E2が振幅方向及び時間軸
方向に沿って変動することを検出してこの多重反射波E
2が水面からのものであることを認識する。同時に、ト
ランスデューサ2により超音波を送信してから多重反射
波E2を受信するまでの時間(例えば平均時間)に基づ
いて、水Wの量を演算により求める。
【0013】図3は上記多重反射波E1,E2の一例を示
すものであり、水面からの多重反射波E2は、水面の波
動により振幅方向及び時間軸方向に沿って矢印a,bで
示すごとく変動する。これは、図4に示すように、波動
を有する水面からの反射波のエネルギーがトランスデュ
ーサ2に有効に返ってくるまでの時間に周期性があるこ
とに起因している。なお、図3において、E1は容器1
と水Wとの境界面からの多重反射波である。この図は時
刻t0に超音波を送信した場合のものであるが、送信波
と多重反射波E1のうちの初期のものは振幅がスケール
オーバーしていて図示されていない。
【0014】多重反射波E2の振幅方向及び時間軸方向
の変動を検出する具体的な方法としては、次のようなも
のがある。例えば、図3において、多重反射波E1が消
滅する時刻t1は、容器1の底板の板厚や音速等により
予め算出もしくは実際に検出可能である。従って、少な
くとも時刻t1以後に振幅方向及び時間軸方向に変動す
る多重反射波が検出されれば、その反射波は水面からの
ものと推定できる。
【0015】その検出方法としては、まず、超音波を1
回送信するたびに、時刻t1以後に一定時間間隔(Δ
t)で受信信号をサンプリングする。そして、ある値を
持つサンプリングデータ(振幅をEM2とする)が現わ
れたら(このサンプリングデータは水面からの多重反射
波E2の一部である可能性がある)、その振幅EM2を記
憶しておく。この測定処理を複数回行って各回の上記振
幅EM2を比較し、これら複数の振幅EM2の間に一定値
以上の差が存在すれば、上記サンプリングデータは振幅
が変動していて水面からの多重反射波E2の一部である
と推定できるので、容器1内に水Wが存在することが判
明する。
【0016】上記サンプリングデータは、図3の時刻t
2のデータのように必ずしも最大値である必要はなく
(実際上、最大値となることはまれである)、多重反射
波E2が継続する時間内の任意の時刻t2'のデータであ
ればよい。
【0017】更に、水Wの量については、多重反射波E
2が立ち上がった時刻t2Sを検出してその平均値を算出
すれば、トランスデューサ2と水面との間の超音波の往
復時間を求めることができ、これから水面の高さすなわ
ち水Wの量を算出可能である。なお、多重反射波E2
立ち上がり時刻t2Sを厳密に検出するためには、サンプ
リング間隔Δtをできるだけ小さくすることが必要であ
る。
【0018】次に、容器1内に存在する水Wの量と多重
反射波との関係を更に考察する。ここでは、例として鉄
製容器内に水Wが入っている場合を説明する。いま、鉄
における音速を6000〔m/s〕、水における音速を
1500〔m/s〕、超音波の周波数を10〔MHz〕
とする。図5における超音波の送信波(送信パルスは
半波)は、周波数が10〔MHz〕であるから図6に示
すように波長は0.05〔μs〕となり、これを水深に
換算すると0.0375〔mm〕となる。
【0019】鉄製の容器1の板厚を2.3〔mm〕とし
た場合、この板厚分を超音波が伝播するのに要する時間
1は、数式1のとおりである。
【0020】
【数1】 t1=0.23×2/(6000×100)≒0.8〔μs〕
【0021】上記時間t1は水深に換算すると0.6
〔mm〕となり、超音波は図5に示すように,,
,……と多重反射しながら減衰していく。この様子を
示したのが図7である。
【0022】仮りに、容器1内の水深が10〔mm〕の
場合、水面からの反射波は送信波から14〔μs〕だ
け遅れて受信されるため、時間軸をワイドレンジにして
表示する必要がある。このため、容器1の鉄による多重
反射波E1は時間軸に沿って凝縮され、図8に示すよう
になる。なお、送信波形に比べて多重反射波形は振幅が
非常に小さいので、図8のうち破線により囲んだ部分が
表示可能な部分となっている。
【0023】以上のようにして、図9(実質上、図3と
同様)のような多重反射波が受信され、表示される。こ
の図9において、多重反射波E1よりも時間的に前の極
小領域(水深換算で0.0375〔mm〕)は送信波成
分であり、他は鉄による多重反射成分となる。従って、
送信パルスの波長に相当する0.0375〔mm〕以下
の水深を持つ水Wは原理上、検出できないことになる
が、0.0375〔mm〕以上の水深を持つ水Wは検出
可能である。但し、極めて少量の水Wからの多重反射波
(図9にE2'として示す)は、鉄の多重反射波の中に埋
没することとなる。
【0024】しかし、この場合でも、多重反射波E2'を
含んだ多重反射波E1が振幅方向及び時間軸方向に変動
しているはずであるから、水Wが存在することを検出す
るのは可能である。更に、極めて少量の水Wからの多重
反射波が鉄の多重反射波の中に埋没していない場合に
は、水Wからの多重反射波が振幅方向及び時間軸方向に
変動していることに基づいて、水深が深い場合と同様に
水Wの存在及びその量を検出可能である。これにより、
鉄からの多重反射波E1が尾を引いている場合やノイズ
が混入した場合と水Wからの多重反射波とを確実に判別
することができる。
【0025】なお、本発明は、あるレベルを越えた多重
反射波のみを検出する、いわゆるゲート検出方法と併用
することにより、容器からの多重反射波に埋没した少量
の水Wからの多重反射波の検出や、ノイズとの判別を一
層正確に行うことができる。更に、本発明は多重反射波
の振幅方向の変動のみ、または時間軸方向の変動のみを
検出することにより浸水の検出が可能であるが、多重反
射波が時間軸方向に変動する場合には振幅方向の変動を
伴うため、何れにしても振幅方向の変動を検出すれば所
期の目的を達成することができる。
【0026】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、液面
からの反射波が振幅方向及び時間軸方向に変動すること
に着目して容器内の液体の有無及びその量を検出するも
のである。従って、容器からの反射波が尾を引いていた
り反射波形中にノイズが混入したとしても、これらの波
形は変動を伴っていないため、液面からの反射波と確実
に区別することができ、液体の有無及びその量を正確に
検出することができる。更に、容器内に少量の液体が存
在する場合にも、実用上支障ない程度の検出精度を確保
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態が適用される浸水検出装置の
構成図である。
【図2】図1の概略的な説明図である。
【図3】多重反射波の説明図である。
【図4】水面の波動状態の説明図である。
【図5】送信波及び多重反射波の説明図である。
【図6】超音波の送信波形を示す図である。
【図7】送信波及び多重反射波の波形図である。
【図8】送信波及び多重反射波の表示例の説明図であ
る。
【図9】多重反射波の説明図である。
【符号の説明】
1 容器 2 トランスデューサ 3 パルス送信回路 4 受信回路 5 A/Dコンバータ 6 メモリ 7 コンピュータ 8 検出器本体 W 水 E1,E2,E2' 多重反射波
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松岡 正憲 東京都千代田区有楽町一丁目7番1号 東光電気株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−348274(JP,A) 特開 昭63−42424(JP,A) 特開 平4−317609(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01V 1/00 G01F 23/28 G01M 3/24 G01N 29/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 容器内にその底部外側から超音波を送信
    し、その反射波を受信して容器内の液体を検出する浸水
    検出方法において、容器の境界面から反射して振幅方向への変動を伴わない
    反射波、および、浸水の水面から反射して振幅方向への
    変動を伴う反射波をともに受信して波形を取得する作業
    を複数回行い、超音波の送信時を基準とする時間軸表現
    の複数の波形のうち振幅方向に変化する波形部分を比較
    して予め定められた範囲を越えて振幅方向に変化すると
    判断される場合に振幅方向への変動を伴う反射波である
    として容器内の液体 を検出することを特徴とする浸水検
    出方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の浸水検出方法において、 超音波を送信してから振幅方向に変動する反射波を受信
    するまでの時間を複数回求めてその平均時間を算出し、
    この平均時間に基づいて、容器内の液体の量を求めるこ
    とを特徴とする浸水検出方法。
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