JP3169215B2 - タマネギとニンニクの雑種植物の生産方法 - Google Patents

タマネギとニンニクの雑種植物の生産方法

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JP3169215B2 JP31593999A JP31593999A JP3169215B2 JP 3169215 B2 JP3169215 B2 JP 3169215B2 JP 31593999 A JP31593999 A JP 31593999A JP 31593999 A JP31593999 A JP 31593999A JP 3169215 B2 JP3169215 B2 JP 3169215B2
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タマネギとニンニ
クの雑種植物の生産方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ネギ属の植物には、タマネギや
ネギ等、有性生殖によって繁殖するいわゆる種子繁殖性
のものと、ニンニクやワケギ等、種球(球根)によって
繁殖するいわゆる栄養繁殖性のものとがある。
【0003】そして、これら種子繁殖性の植物と栄養繁
殖性の植物とは、一般にその性質が顕著に相違するた
め、いずれか一方の遺伝形質を他方に導入できれば極め
て好都合である。
【0004】又、このような遺伝形質の導入は、上記の
ような種子繁殖性の植物と栄養繁殖性の植物間に限ら
ず、植物の品種改良の観点からは、種子繁殖性の植物相
互間,或いは栄養繁殖性の植物相互間で行われ、さらに
は同種の植物であって品種が異なる植物相互間で行われ
ることも奨励されるべきである。
【0005】ところで、一般にある植物種の遺伝形質を
他の植物に導入する手段の1つとして従来では交配法が
採用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方
法によれば、ごく近縁の植物相互間にしか使用できない
こと、及び作業時間や労力が多大となること等の問題点
もさることながら、そもそも上記のような栄養繁殖性の
植物については採用すること自体が不可能であるという
致命的な問題点がある。
【0007】本発明者等は、上述のような点に鑑み、任
意のネギ属の植物に新しい遺伝形質を導入するという観
点から、品種改良により上記のような種子繁殖性の植物
と栄養繁殖性の植物との雑種植物、特にタマネギとニン
ニクとの雑種植物を育成し、両者の遺伝形質の雑種植物
への導入を容易に行わしめることを課題としてなされた
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そして、本発明は、細胞
融合により上記のような課題を解決せんとするものであ
る。
【0009】すなわち、その課題解決のための手段は、
タマネギのカルスのプロトプラストとニンニクの葉身部
プロトプラストとを細胞融合し、その細胞融合後に、
蛍光顕微鏡におけるB領域の励起光を照射して発色の有
無により、及び細胞質リッチであるか否かにより、雑種
細胞を識別して摘出し、その後、摘出された雑種細胞を
培養して生育させることにある。
【0010】タマネギのプロトプラストとニンニクのプ
ロトプラストとを細胞融合させるために、先ずタマネギ
及びニンニクのそれぞれの融合材料を調製する。
【0011】融合材料としては、たとえば通常の植物
体、種球中の普通葉を置床して得られた無菌幼植物体,
生長点由来の植物体,カルスからの再分化植物体,生長
点由来のカルス,胚由来カルス,若しくはその他の器
官,組織由来のカルス等の任意の材料が使用可能であ
る。
【0012】特に、生長点由来の植物体,生長点由来の
カルス,胚由来のカルスを融合材料として使用した場合
には、プロトプラストやカルスレベルでの増殖能力や分
化能が増大するという効果がある。
【0013】又、生長点由来の植物体やカルスを用いた
場合、一般にウィルスに侵され易いネギ属植物をいわゆ
るウィルスフリー化することができるという利点があ
る。
【0014】次に、両融合材料をプロトプラスト化し、
その両プロトプラストの精製を行う。プロトプラスト化
の酵素処理液としては、植物の種類,融合材料の種類に
応じて任意のものが使用可能である。
【0015】次に、精製された両プロトプラストを融合
する。
【0016】その融合処理後の所望の雑種細胞を未融合
細胞と識別する際に、蛍光顕微鏡におけるB領域の励起
光を上記雑種細胞や未融合細胞の混合細胞に照射して発
色の有無により雑種細胞を識別する。
【0017】これをより詳細に説明すると、タマネギの
融合材料としてカルスを用い、ニンニクの融合材料とし
て植物体の葉身部を用いた場合、カルスの細胞の特性と
しては一般に細胞質リッチ(液胞が小さく細胞質が大き
いもの)なことであり、又、葉身部の細胞の特性として
は、一般に可視領域において緑色の葉緑体顆粒が存在す
ることである。従って、いわゆる細胞質リッチで且つ緑
色の葉緑体顆粒が存在するという両者の特性を併備して
いるものを、所望の雑種細胞として識別することも可能
ではある。
【0018】しかし、上記葉緑体顆粒は可視領域では緑
色ではあるが、特に葉緑体顆粒が少ない場合には、透明
なものとの識別が容易ではない。従って、雑種細胞と細
胞質リッチの未融合細胞とは必ずしも容易に識別できな
い。
【0019】そこで、本発明においては、蛍光顕微鏡に
おけるB領域の励起光を照射する。
【0020】すなわち、上記B領域の励起光を照射すれ
ば、上記緑色の葉緑体顆粒が赤色に発色する。従って、
このB領域の励起光の照射により、上記雑種細胞を細胞
質リッチな未融合細胞と識別することが非常に容易とな
る。
【0021】細胞質リッチでない葉身部の未融合細胞と
雑種細胞とは、その細胞の形態によって自ずから識別で
き、又、仮に識別できなくとも、その後の培養時の培地
の選定等によっても選抜が可能である。
【0022】尚、このようにして識別された雑種細胞
は、上記のような識別後に摘出されるのであるが、その
摘出前に予め培養しておくことにより、細胞壁が再生
し、活性も増大することから、摘出操作による細胞の損
傷が抑制される。この観点から、細胞融合後、雑種細胞
の摘出前に、未融合細胞と融合された雑種細胞とが混合
された状態で予め培養を行うことが好ましい。
【0023】さらに、前記雑種細胞の摘出後、保護培養
用のシャーレ内に配設されたフィルターリングの内部に
前記摘出された雑種細胞を入れ、且つそのシャーレ内の
フィルターリングの外部に、増殖能の高いタマネギのプ
ロトプラストを予め入れて増殖を行うことも可能であ
り、この場合には、フィルターリング内部の雑種細胞の
増殖が促進されることとなる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0025】(実施例1)本実施例は、タマネギとニン
ニクの雑種細胞の生産方法についての実施例であり、先
ず、その生産方法の操作手順について説明する。
【0026】(1) 融合材料の調製 先ず、タマネギとニンニクのそれぞれの融合材料を調製
する。
【0027】滅菌処理したタマネギの種子を、次に示す
改変BDS培地〔1.25×10-5Mの2,4−ジクロロフェ
ノキシ酢酸( 以下、2,4−Dと略す)を含む1%寒天
培地〕に置床する。
【0028】
【0029】これによって得られた葉身部生長点由来の
カルスを、改変BDS培地〔2.5 ×10-6Mの2,4−D
を含む液体培地〕で継代培養する。そして、このような
継代培養によって得られた懸濁培養カルスであって植え
継ぎ2日目のものをタマネギの融合材料として使用す
る。
【0030】一方、ニンニクについては、その種球を滅
菌処理して種球より普通葉を取り出し、これを改変BD
S培地〔ホルモンフリーな0.2 %ゲランガム培地〕に1
〜2週間置床する。これによって得られた無菌幼植物体
の葉身部をニンニクの融合材料として使用する。
【0031】そして、上記のようなタマネギの種子及び
ニンニクの種球の滅菌処理方法について説明すると、 (a) 先ず中性洗剤にてブラシを用いて種子及び種球を
1個ずつ洗浄する。尚、タマネギの種子については、ガ
ーゼでくるむ。 (b) 次に、これらを15〜20分間無菌水につけて脱泡し
た後、2%のオスバン水溶液中で15分間超音波洗浄す
る。 (c) 次に、無菌水にて3回洗浄した後、70%のエタノ
ール中に30〜60秒間浸漬し、その後、再度無菌水にて3
回洗浄する。 (d) 次に、2%アンチホルミンの5%水溶液中で15分
間の超音波洗浄を2回繰り返す。 (e) その後、無菌水によって6回以上洗浄することに
よって所望の播種が得られる。
【0032】尚、ニンニクについては、洗浄後にメスで
普通葉を摘出する。
【0033】(2) プロトプラストの精製 次に、上記のように滅菌処理したタマネギの懸濁培養カ
ルス及びニンニクの葉身部をプロトプラスト化し、その
精製を行う。
【0034】(イ)タマネギのプロトプラスト精製 先ず、タマネギのプロトプラストについての精製手順を
説明する。
【0035】(a) タマネギの懸濁培養細胞塊の約0.5g
に、その培養に用いた培地上清を除去した後に、次に示
す組成の酵素処理液を約25ml添加する。
【0036】(タマネギプロトプラスト酵素処理液) セルラーゼオノズカR−10(Yakult) 1.0 % マセロザイムR−10(Yakult) 0.5 % ドリセラーゼ(協和発酵) 0.5 % マンニトール 0.6 M MES Good's buffer (pH 5.6)
【0037】尚、上記酵素処理液の成分中、MESGoo
d's buffer とは、20mMのMES・H 2Oの4.265gと、5
mMのMgCl2・6H2Oの1.017gとを蒸留水に溶解して
1Lとし、NaOHでpH5.6 に調整したものである。
【0038】ここに、MESとは、2−(N−モルホリ
ン)エタンスルフォン酸である。
【0039】(b) 次に、上記の様にして得られた液を
約5〜6時間振とう処理する(100rpm)。
【0040】(c) 次に、上記のように処理した液を、
次のようなメッシュにおだやかにとおす。 i) 150 μm のメッシュ ii)90 μm のメッシュ iii)60 μm のメッシュ iv)40 μm のメッシュ v) 40 μm のメッシュ
【0041】上記i)〜v)のようなメッシュに通す操
作を順次行うことによって、粒径の粗いものは除去さ
れ、必要なもののみが残存する。
【0042】(d) 次に、上記のようにメッシュを通し
た液を、600rpmで3分間遠心分離する。
【0043】(e) そして、遠心分離した上澄を除去
し、沈澱残渣を洗浄液に懸濁する。この洗浄液として
は、0.5 Mのマンニトール22.77gと、2.5 mMのCaCl
2 0.09g とを蒸留水にて250mL とし、pH5.6 に調製し
たものを用いる。
【0044】(f) 次に、上記 (e)で得られた液を、10m
Lの遠沈管に入れ、600rpmで3分間遠心分離し、この操
作を3回繰り返す。
【0045】(g) その後、遠心分離及び上澄の除去に
よりタマネギのプロトプラストが精製されることとな
る。
【0046】(ロ)ニンニクのプロトプラスト精製 次に、ニンニクのプロトプラストの精製手順を説明す
る。
【0047】(a) ニンニクの無菌幼植物体をメスで約
3mmに切断する。
【0048】(b) 上記 (a)の切断によって得られた細
断片を次に示す約25mLの酵素処理液に懸濁する。
【0049】(ニンニクプロトプラスト酵素処理液) セルラーゼオノズカR−10(Yakult) 2.0 % マセロザイムR−10(Yakult) 0.5 % ドリセラーゼ(協和発酵) 1.0 % マンニトール 0.6 M MES Good's buffer (pH 5.6)
【0050】(c) 次に、上記の様にして得られた液に
て上記細断片を約5〜6時間振とう処理する(50rpm)。
【0051】(d) その後は、上記タマネギのプロトプ
ラストの (c)〜 (g)と同様の操作を行ってニンニクのプ
ロトプラストが精製されることとなる。
【0052】(3) 細胞融合 上記のようにして得られたタマネギのプロトプラストを
2×105cells /mLに調製するとともに、ニンニクプロ
トプラストのうち、グリーンプロトプラストが2×105c
ells /mLとなるようにそれぞれ調製して両プロトプラ
ストを1:1で混合する。この混合液を0.8mL とり、島
津細胞融合装置SSH−1を用いて電気融合処理を行っ
た。融合条件は次のとおりである。
【0053】 (細胞融合の条件) (a) 細胞泳動用高周波の周波数 1MHz (b) 細胞泳動用高周波電圧(VAC) 40V (c) オートモード時にVACを印加する時間 10 sec (d) パルス幅 30 microsec (e) 融合用方形波パルスの印加電圧 200V (f) 電場の強さ 1.00 KV/cm (g) パルス間隔に印加する高周波電圧 35V (h) オートモード時のパルス印加間隔 3sec (i) 印加パルス数 3回 (j) 印加パルス電圧の減衰率 80% (k) 最終パルス印加後の高周波印加時間 15 sec (l) 最終パルス印加後の高周波電圧減衰率 90%
【0054】(4) 培養 次に、上記のように融合処理したプロトプラスト懸濁液
を、次に示す改変8p培地( 2.5×10-6Mの2,4−D
を含む)に遠心置換を行い、この懸濁液0.5mLと40℃に
保温しておいた0.6 %Sea Plaqueアガロースを含む0.5m
L の改変8p培地( 2.5×10-6Mの2,4−Dを含む)
とを混合し、35mm径のシャーレに広げて固化させた。
【0055】 (改変8p培地の組成) (A) 無機塩(mg/L) NH4NO3 600 KNO3 1900 CaCl2・2H2O 600 MgSO4・7H2O 300 KH2PO4 170 KCl 300 Sequestrene330Fe(登録商標) 28 KI 0.75 H3BO3 3.00 MnSO4・H2O 10.00 ZnSO4・7H2O 2.00 Na2MoO4・2H2O 0.25 CuSO4・5H2O 0.025 CoCl2・6H2O 0.025 (B) 糖 グルコース 0.5M (C) ビタミン(mg/L) イノシトール 100 ニコチンアミド 1 塩酸ピリドキシン 1 塩酸チアミン 1 パントテン酸D−カルシウム 1 葉酸 0.4 パラアミノ安息香酸 0.02 ビオチン 0.01 塩化コリン 1.00 リボフラビン 0.20 アスコルビン酸 2.00 ビタミンA 0.01 ビタミンD3 0.01 ビタミンB12 0.02 (D) 有機酸(mg/L) 〔NH4OHによりpHが5.5 に調整されている。 〕 ピルビン酸ナトリウム 20 クエン酸 40 リンゴ酸 40 フマル酸 40 (E) カゼインの加水分解物及びココナツ水 ビタミンフリーカザミノ酸 250mg/L ココナツ水 20mL/L
【0056】この時のプロトプラスト密度は約1×105c
ells/mLであった。その後、25℃の暗室で約10日間静置
培養した。
【0057】そして、4〜5日おきに、上記改変BDS
培地を約0.05mL添加していった。
【0058】尚、上記改変8p培地においては、タマネ
ギプロトプラストのみが分裂し、コロニー形成するもの
で、ニンニクプロトプラストはコロニー形成まで至らな
い。
【0059】尚、全ての培地について、pHは5.6 ( Na
OH )に調整されている。又、すべての培地は、濾過除菌
されている。
【0060】そして、静置後に、アガロースゲルを切断
し、そのアガロースゲルの切断によって得られたビード
を0.8mL 改変BDS液体培地の入った35mm径のシャーレ
に3枚入れた。
【0061】その後、50rpm の振とう処理を25℃の暗室
で約30日間行う。
【0062】そして、コロニーが形成された後、これを
0.2 %ゲランガムを含む改変BDS培地(2.5 ×10-6
の2,4−Dを含む)に移行して25℃で静置培養する。
【0063】これによって小カルスが形成されることと
なる。
【0064】(5) カルスから植物への育成 (a) 増殖について 上記のような培養によって得られた小カルスのうち、1
個のカルスを5〜10mLの改変BDS液体培地入りの50mL
マイヤーに入れ、50rpm で振とうし、徐々に容器をスケ
ールアップしていった。
【0065】(b) 再分化について 次に、上記 (a)で得られたカルスを0.2 %ゲランガムを
含む改変MS培地(5.4 ×10-6MのNAA,8.9 ×10-6
MのBA)で25℃,1500〜2500LUXで培養した。
【0066】その後、約4ケ月で不定芽が形成された。
【0067】このようにして得られたカルスについて、
アイソザイムの電気泳動バンドパターンにより同定を行
った(参考写真1及び参考写真2)。
【0068】HY1及びHY2は上記のようにして形成
されたカルスのうち、任意に摘出した2つのカルスにつ
いての結果である。又、GとOはそれぞれニンニクカル
スとタマネギカルスについての結果である。
【0069】この結果からも明らかなように、HY1及
びHY2については、GとOの双方のバンドの位置に対
応してバンドが認められ、従って、HY1及びHY2
が、ニンニクとタマネギの雑種細胞であることが確認で
きた。
【0070】尚、電気泳動する酵素としては、NADH
脱水素酵素〔参考写真1〕、及びエステラーゼ〔参考写
真2〕を用いた。
【0071】尚、この改変MS培地においては、タマネ
ギのカルスは不定芽を形成しない。
【0072】(c) 雑種植物の育成 上記のような再分化によって得られた不定芽を0.2 %ゲ
ランガムを含む次に示す改変MS培地の1/2希釈培地
(ホルモンなし)に移し、発根を促し、幼植物体を得
た。
【0073】
【0074】この幼植物体をバーミキュライトに植え、
順化を行い、次いで培土に植え、完全な植物体を得た。
【0075】以上のような操作手順により、タマネギと
ニンニクとの雑種植物が生産されることとなる。
【0076】(実施例2)(イ)本実施例は、前記実施
例1の操作手順において、ニンニクのプロトプラスト調
製の操作として、上記(2) の(ロ)の操作に代えて次の
ような操作にて行う。
【0077】(a) 先ず、上記実施例1と同様に、ニン
ニクの無菌幼植物体を約3mmに切断し、次にその細断片
を上記改変MS液体培地(5.4 ×10-6Mのナフタレン酢
酸及び8.9 ×10-6M×ベンジルアデニンを含む)に浸
す。
【0078】(b) 次に、これを25℃の暗室で24時間浸
とう処理する(50rpm)。
【0079】(c) その後、酵素処理した後、上記実施
例1と同様の操作を行う。
【0080】尚、このニンニクプロトプラスト用の酵素
処理液としては、上記実施例1と同様のものを用いる。
【0081】(ロ)次に、本実施例においては、上記実
施例1における(4) の培養の操作に代えて、次のような
培養の操作を行う。
【0082】(a) 先ず、前記実施例1の(3) の操作に
て細胞融合処理を施したプロトプラスト懸濁液を改変8
p培地( 2.5×10-6Mの2,4−Dを含む)に置換し、
予め0.2 %ゲランガムを含む改変8p培地( 2.5×10-6
Mの2,4−Dを含む)の入った35mm径のシャーレに広
げ、これを25℃の暗室に静置した。
【0083】融合処理5日以内に、次のi),ii)のよ
うな特徴を持つ細胞を、径100 〜150 μm のマイクロピ
ペットにてマニュアルピックアップした。
【0084】i) 可視領域においては、細胞質リッチで
緑色の葉緑体顆粒が存在する。
【0085】ii) B領域の励起光下においては、葉緑
体色素の赤色顆粒が存在する。
【0086】(b) 上記のようにしてピックアップした
融合細胞を、図1に示した保護培養系シャーレ1内の中
央に配設されたメンブランフィルターリング2内に入れ
た。
【0087】(c) リング内は40℃に保温した0.3 %sea
plaque agarose を含む改変8p培地( 2.5×10-6Mの
2,4−Dを含む)を滴下しカバーした。
【0088】(d) 保護培養系シャーレ1には、予め1
%のseaplaque agarose (FMC Corporation)を含む
改変8p培地( 2.5×10-6Mの2,4−Dを含む)3mL
を入れ、培地が固化しないうちにメンブランフィルター
リング2を置床しておいた。
【0089】さらに、培地固化後、メンブランフィルタ
ーリング2外に最終濃度1×105cells/mLになるように
調製した0.3 %seaplaque agarose を含むタマネギプロ
トプラスト懸濁液〔改変8p培地( 2.5×10-6Mの2,
4−Dを含む)〕を2〜2.5mL広げた。4〜5日おきに
メンブランフィルターリング2外に改変BDS培地(2.
5×10-6Mの2,4−Dを含む)を0.15mL添加した。
【0090】(e) 次に、25℃の暗室で約10日間静置し
た。
【0091】(f) 上記 (e)の静置の後、50rpm で30日
間振とうした。
【0092】(g) これによって、コロニーが形成さ
れ、その形成されたコロニーを、カルス形成培地へ移行
した。
【0093】すなわち、図2のように、3日前から置床
した増殖能の高いタマネギ寒天カルス3をナースとした
保護培養系シャーレ4内に融合細胞由来コロニー5(リ
ング内コロニー)を移行し、25℃の暗室で約14日間静置
すると、小カルスが形成された。
【0094】以上のような培養の操作以外の操作は、上
記実施例1と同様に行う。
【0095】
【発明の効果】叙上のように、本発明においては、ネギ
属に属する2種の異なる植物であるタマネギとニンニク
のプロトプラストの細胞融合によって、新種であるタマ
ネギとニンニクの雑種食物を育種しうるに至った。
【0096】この結果、タマネギとニンニクのそれぞれ
の性質を具備した全く新規な雑種植物を提供することが
可能となった。
【0097】たとえば、次のようなことが可能となる。 i) ニンニクの有効成分(アリシン等)をタマネギに導
入する。 ii)タマネギの耐寒性,耐暑性をニンニクに導入する。 iii) タマネギの種子繁殖性を栄養繁殖性のニンニクに
導入する。
【0098】さらに、細胞融合によって雑種細胞が育成
されるため、従来の交配法によっては到底得られなかっ
た雑種植物が得られるという格別顕著な効果を有するに
至った。
【0099】さらに、細胞融合を利用する結果、交配法
のように作業時間や労力を要することもなく、又、季節
の制約もないという利点がある。
【0100】さらに、蛍光顕微鏡におけるB領域の励起
光を照射することにより、上述のように緑色の葉緑体顆
粒が赤色に発色し、雑種細胞を未融合細胞と識別するこ
とが非常に容易となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】保護培養系の概略図で、(イ)は平面断面図、
(ロ)は側面断面図をそれぞれ示す。
【図2】カルス形成時の操作を示す概略平面図。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−275631(JP,A) Theor.Appl.Gene t.,vol.64[2](1983),p. 119−122 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01H 1/00 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融合材料としてそれぞれ調製され、その
    融合材料からそれぞれ精製された、タマネギのカルスの
    プロトプラストとニンニクの葉身部のプロトプラストと
    を細胞融合し、その細胞融合後に、蛍光顕微鏡における
    B領域の励起光を照射して発色の有無により、及び細胞
    質リッチであるか否かにより、雑種細胞を識別して摘出
    し、次に、摘出された雑種細胞を保護培養用のシャーレ
    内に配設されたフィルターリング内に入れ、且つ前記シ
    ャーレ内の前記フィルターリングの外部にタマネギのプ
    ロトプラストを入れて培養してカルスを形成し、その
    後、得られたカルスを、雑種のカルスは再分化するがタ
    マネギのカルスは再分化しないような培地で培養するこ
    とにより、雑種のカルスのみを選別すると同時に、雑種
    のカルスを再分化して雑種植物を生育させることを特徴
    とするタマネギとニンニクの雑種植物の生産方法。
  2. 【請求項2】 細胞融合後、雑種細胞の摘出前に、未融
    合細胞と雑種細胞とが混合された状態で予め培養を行う
    請求項1記載のタマネギとニンニクの雑種植物の生産方
    法。
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