JP3166641B2 - 乗員拘束装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、シートベルト装
置とエアバッグ装置を有する乗員拘束装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車等の車両に用いられる乗員拘束装
置として、シートベルト装置とエアバッグ装置が知られ
ている。シートベルト装置は、座席に着座した乗員の体
に装着されるベルト部材と、ベルト部材を巻取るリトラ
クタなどを備えている。ＥＬＲと呼ばれるリトラクタ
（Emergency Locking Retractor ）は、ベルト部材を乗
員の体に装着する際にはベルト部材の繰出しを許容し、
車両に所定値を越える加速度が生じたときにロック状態
に切換わってベルト部材の繰出しを阻止するように構成
されている。

【０００３】図５，図６に示すように自動車用シートベ
ルト装置１のベルト部材２は、座席下部側に設けられた
バックル部材３にベルト部材２のタング部材４を着脱可
能に挿着するようにしている。また、ベルト部材２の中
間部分は車体のピラー上部に設けられたショルダーベル
トアンカー（スルーアンカー）５を経由して下方に延
び、ベルト部材２の余分な長さ分をリトラクタ６が巻取
るようになっている。リトラクタ６は車体のピラー下部
に内蔵されている。

【０００４】一方、エアバッグ装置は、乗員の前方に装
備されるフロントエアバッグと、座席の側部に装備され
るサイドエアバッグとが知られている。図５に示すよう
にサイドエアバッグ８は、車両に側突荷重が作用したと
きにインフレータが発生するガスによって乗員の胴体側
部に展開するサイド部８ａと、胴体側部から頭側部に向
かって車両の車室内側壁と乗員との間に展開する頭部８
ｂとを備えて構成されている。このようなエアバッグ装
置とシートベルト装置を装備した車両は、衝突の際に乗
員を保護する上で有効である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】自動車等の座席は周知
のシートスライド機構等によって前後方向の位置を可変
設定できるように車両の床に取付けられているため、サ
イドエアバッグ８が展開したときに、座席の位置によっ
ては、タング部材４からショルダーベルトアンカー５に
至るショルダーベルト部２ａがサイドエアバッグ８の上
部８ｃと干渉することがある。特にリトラクタ（ＥＬ
Ｒ）を備えたシートベルト装置のように、ベルト部材を
乗員の体に締付ける機能を有するものにおいて、側突と
同時にベルト部材２がロックされると、サイドエアバッ
グ８の上方への展開に影響がでることも考えられる。

【０００６】従ってこの発明の目的は、エアバッグが展
開する際に、エアバッグ上部がベルト部材と干渉するよ
うな位置にあってもエアバッグを所望形状に展開できる
ような乗員拘束装置を提供することにある。

【０００７】上記の目的を果たすための本発明の乗員拘
束装置は、車体のピラー下部に内蔵されたリトラクタか
ら同ピラーの上部に設けられたショルダーベルトアンカ
ーを経由して座席に着座した乗員の腰部に向かって斜め
に装着されるショルダーベルト部を有するベルト部材
と、上記ベルト部材に設けられたタング部材と、車両の
車体側に設けられて上記タング部材が着脱可能に装着さ
れるバックル部材と、上記車両に側突荷重が作用したと
きに上記乗員の側部から頭部に向かって上記車両の車室
内側壁と上記乗員との間に展開するエアバッグとを有す
る乗員拘束装置において、上記バックル部材の基端側に
は上記側突時に車室内側壁に生じる変形を検出する変形
検出手段を有し、上記変形検出手段は上記変形を検出し
たときに上記乗員の体に対する上記ベルト部材の締付け
を弛めるように上記バックル部材を変位させることを特
徴とするものである。

【０００８】上記変形検出手段は、例えば車室内側壁が
車室方向に潰れる際に車内側に移動するシートクロスパ
イプ等の変形検出部材が採用される。そしてこの変形検
出部材に、可撓性を有しかつ引張強度の高い連結部材を
介してバックル部材の基部を連結することにより、側突
時に生じる変形検出部材の挙動に連動して上記連結部材
とバックル部材がベルト部材を弛める方向に変位するよ
うに構成される。

【０００９】上記シートベルト装置はリトラクタ（ＥＬ
Ｒ）を具備しているとよい。リトラクタはベルト部材を
巻取る機能を有するとともに、ベルト部材を乗員の体に
装着する際にはベルト部材の繰出しを許容しかつ車両に
所定値を越える加速度が生じたときロック状態に切換わ
って上記ベルト部材の繰出しを阻止するようになってい
る。このリトラクタによって、ベルト部材が乗員の体に
フィットする長さに巻取られる。

【００１０】本発明の乗員拘束装置を備えた車両に乗車
する場合、通常のシートベルト装置と同様にベルト部材
を乗員に装着する。万一の前突時等において車両に所定
値を越える減加速度が作用した場合、ベルト部材によっ
て乗員が拘束される。また、リトラクタを有するシート
ベルト装置では、リトラクタがロック状態に切換わるこ
とによってベルト部材の繰出しが阻止され、乗員が拘束
される。この車両にフロントエアバッグが装備されてい
る場合には、インフレータが発生するガスによってフロ
ントエアバッグが展開する。

【００１１】万一の側突時には、車両の側面方向からの
衝撃が所定値を越えたときにサイドエアバッグ用のイン
フレータが着火し、発生するガスによってサイドエアバ
ッグが乗員の胴体側部から頭部を保護できる領域に展開
する。また、変形検出手段が移動することによってベル
ト部材が弛む方向にバックル部材が変位する。このた
め、ベルト部材がサイドエアバッグの上部と干渉する位
置にあっても、エアバッグは所定形状に展開する。

【００１２】

【発明の実施の形態】図１に示すように本発明の一実施
形態の乗員拘束装置は、図５および図６に示すものと同
様にシートベルト装置１とサイドエアバッグ８とを備え
ている。シートベルト装置１は、座席１０に着座した乗
員の体に装着されるベルト部材２と、このベルト部材２
を巻取るリトラクタ６（図２に示す）を備えている。

【００１３】リトラクタ６は、後述するように、ベルト
部材２を乗員の体に装着する際にベルト部材２の繰出し
を許容し、車両に所定値を越える加速度が生じたときロ
ック状態に切換わってベルト部材２の繰出しを阻止する
ように構成されている。このリトラクタ６によって、ベ
ルト部材２は乗員の体にフィットする長さまで自動的に
巻取られる。なお、図１は右ハンドル車の助手席側を示
し、図５は運転席側を示しているためシートベルト装置
１の左右の位置関係が逆になっているが、両者の基本的
な構成は同等である。

【００１４】上記ベルト部材２は、座席下部側に設けら
れたバックル部材３にタング部材４を着脱可能に挿着す
るようにしている。ベルト部材２の中間部分は車体のピ
ラー上部に設けられたショルダーベルトアンカー５を経
由して下方に延び、ベルト部材２の余分な長さ分をリト
ラクタ６が巻取るようになっている。リトラクタ６は車
体のピラー下部に内蔵されている。

【００１５】バックル部材３の基部は、鋼線を撚り合わ
せたワイヤ等のように引張強度が高くかつ可撓性を有す
る連結部材１２を介して、シートクロスパイプ１３に連
結されている。シートクロスパイプ１３は座席１０の下
部において車体の幅方向（左右方向）に沿って配置され
ている。

【００１６】図２に示すようにシートクロスパイプ１３
の端面１４は、インナパネルなどの車体の内側壁を構成
する部材１５に対向する位置に設けられており、万一の
側突時には図３に示すように車体側の部材１５によって
シートクロスパイプ１３が押されて車内側に移動するよ
うになっている。

【００１７】シートクロスパイプ１３はシートフレーム
１７に対して車体の幅方向に移動可能に支持されてお
り、シートクロスパイプ１３が矢印Ｆ方向に押されたと
きに連結部材１２がバックル部材３の方向に変位するよ
うに構成されている。但しこのシートクロスパイプ１３
は、通常の使用状態では上記方向に移動しないように適
度な固定強度にて動き止めがなされており、側突時のよ
うに側面方向から大きな荷重が作用したときのみシート
クロスパイプ１３が上記方向に移動するようにしてい
る。

【００１８】従ってこのシートクロスパイプ１３は、側
突時の車体側部の変形を検出するための変形検出手段と
して機能する。シートクロスパイプ１３は必要に応じて
補助フレーム１８などによって支持されている。また、
シートフレーム１７には必要に応じて連結部材１２を案
内するためのガイド部材１９ａ，１９ｂが設けられてい
る。

【００１９】一方、サイドエアバッグ８は、車両に側突
荷重が作用したときにインフレータが発生するガスによ
って乗員の胴体側部に展開するサイド部８ａと、胴体側
部から頭側部に向かって車両の車室内側壁と乗員との間
に展開する頭部８ｂとを備えて構成されている。また、
必要に応じてフロントエアバッグ（図示せず）も装備さ
れている。

【００２０】図４に示すようにリトラクタ６は、一般的
なＥＬＲと同様に、ハウジング２０の内部にベルト部材
２を巻取るためのボビン２１を有している。ボビン２１
は、渦巻ばねを用いた巻取り機構２２によって、ベルト
部材２を巻取る方向（図４において矢印Ｒ1 方向）のト
ルクを発生するようにしている。ベルト部材２はハウジ
ング２０の上方に引き出される。ボビン２１の巻取り軸
２３にロッキングラチェット２４が設けられている。ロ
ッキングラチェット２４の側方に逆止爪（パウル）２５
が設けられている。

【００２１】ハウジング２０の側面に取着されるカバー
３０の内側には、ラチェット部３１を有するフライホィ
ール３２と、ロックアームアセンブリ３３と、ラッチカ
ップ３４などが収容されている。ロックアームアセンブ
リ３３は巻取り軸２３と一体に回転するが、フライホィ
ール３２とラッチカップ３４は巻取り軸２３に対して相
対回転可能である。逆止爪２５は、ラッチカップ３４が
所定方向（矢印Ｒ2 方向）に回動したときにロッキング
ラチェット２４と噛合う方向に動くようになっている。
フライホィール３２の外周部に設けられたラチェット部
３１と対向する位置に、ウエイト４０によって作動する
アクチュエータ爪４１を有する加速度センサ４２が設け
られている。

【００２２】乗員がシートベルト装置１を装着する際の
ようにベルト部材２をゆっくりと引き出すときには、巻
取り軸２３と一体にロックアームアセンブリ３３とフラ
イホィール３２が矢印Ｒ3 方向に回転する。この場合、
フライホィール３２とロックアームアセンブリ３３との
相対的な位置関係が変化しないから、ロックアームアセ
ンブリ３３の歯３３ａがラッチカップ３４に係合しな
い。このためラッチカップ３４は止まったままであり、
従って逆止爪２５はロッキングラチェット２４の方向に
移動しない。

【００２３】衝突時等において乗員が速く移動すること
によりベルト部材２が高速で引き出されようとするとき
には、巻取り軸２３の回転速度に対してフライホィール
３２の回転が遅れる。この場合、フライホィール３２と
ロックアームアセンブリ３３との相対的な位置関係が変
化する。その結果、ロックアームアセンブリ３３の歯３
３ａがラッチカップ３４に係合し、ラッチカップ３４が
矢印Ｒ2 方向に回動するため逆止爪２５がロッキングラ
チェット２４に噛合う方向に移動することにより、巻取
り軸２３の回転がロックされる。

【００２４】また、車両に所定値を越える加速度（減加
速度）が前後方向あるいは車幅方向（左右方向）に作用
すると、加速度センサ４２のウエイト４０が慣性によっ
てアクチュエータ爪４１を押し上げるため、アクチュエ
ータ爪４１がフライホィール３２のラチェット部３１に
噛合い、フライホィール３２の回転を阻止する。このた
め、ベルト部材２を高速で引き出した場合と同様に、ロ
ックアームアセンブリ３３やラッチカップ３４が作動
し、逆止爪２５がロッキングラチェット２４に噛合う方
向に移動することにより、巻取り軸２３の回転がロック
される。すなわちロッキングラチェット２４と逆止爪２
５等はリトラクタ６のロック機構を構成する。

【００２５】上記構成の乗員拘束装置を備えた車両に乗
車する場合、通常のシートベルト装置と同様にベルト部
材２を乗員に装着する。そして前突時等に車両に所定値
を越える減加速度が作用すると、リトラクタ６がロック
状態に切換わることによってベルト部材２の繰出しが阻
止され、乗員が拘束される。この車両にフロントエアバ
ッグが装備されている場合には、インフレータが発生す
るガスによってフロントエアバッグが展開する。

【００２６】側突時には、車両の側面方向からの加速度
が所定値を越えたときにサイドエアバッグ用のインフレ
ータが着火し、発生するガスによってサイドエアバッグ
８が展開する。このときに衝突相手車両等の障害物によ
って車体の内側壁を構成する部材１５が車内側に変形す
ると、図３に示すようにシートクロスパイプ１３が車内
側に押される。

【００２７】このため連結部材１２が矢印ｆ方向に移動
し、ベルト部材２が弛む方向にバックル部材３が変位す
ることにより、リトラクタ６がロック状態にあっても乗
員の体に対するベルト部材２の拘束が解かれる。このた
め、ベルト部材２がサイドエアバッグ８の上部と干渉す
る位置にあっても、エアバッグ８が所定形状に展開する
ことができる。

【００２８】なお、変形検出手段は、要するに側突荷重
が作用したときにベルト部材２を弛める方向にバックル
部材３を変位させることができるものであればよいか
ら、シートクロスパイプ１３以外の部材を用いて種々の
態様で実施できることは言うまでもない。

【００２９】

【発明の効果】本発明によれば、側突時にサイドエアバ
ッグが展開する際に、例えばリトラクタ（ＥＬＲ）など
がロック状態に作動しても、シートベルト装置のベルト
部材の拘束を解くことができるため、ベルト部材がエア
バッグと干渉するような位置にあってもエアバッグを所
望形状に展開できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施形態を示すシートベルト装置
を備えた自動車用座席の斜視図。

【図２】 図１に示された座席の正面図。

【図３】 図１に示された座席の側突時の作動態様を示
す正面図。

【図４】 リトラクタの分解斜視図。

【図５】 シートベルト装置とサイドエアバッグを備え
た乗員拘束装置を示す斜視図。

【図６】 図５に示された乗員拘束装置の側面図。

【符号の説明】

１…シートベルト装置 ２…ベルト部材 ３…バックル部材 ４…タング部材 ６…リトラクタ ８…エアバッグ １０…座席 １２…連結部材 １３…シートクロスパイプ（変形検出手段）

フロントページの続き (56)参考文献 西独国特許出願公開2653124（ＤＥ, Ａ１) 西独国特許出願公開2442726（ＤＥ, Ａ１) 西独国特許出願公開2423294（ＤＥ, Ａ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B60R 22/12 - 22/48 B60R 21/16 - 22/32

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車体のピラー下部に内蔵されたリトラクタ
   から同ピラーの上部に設けられたショルダーベルトアン
   カーを経由して座席に着座した乗員の腰部に向かって斜
   めに装着されるショルダーベルト部を有するベルト部材
   と、 上記 ベルト部材に設けられたタング部材と、 車両の車体側に設けられて上記タング部材が着脱可能に
   挿着されるバックル部材と、 上記車両に側突荷重が作用したときに上記乗員の側部か
   ら頭部に向かって上記車両の車室内側壁と上記乗員との
   間に展開するエアバッグと、 を有する乗員拘束装置において、 上記バックル部材の基端側には上記側突時に車室内側壁
   に生じる変形を検出する変形検出手段を有し、 上記変形検出手段は上記変形を検出したときに上記乗員
   の体に対する上記ベルト部材の締付けを弛めるように上
   記バックル部材を変位させることを特徴とする乗員拘束
   装置。
2. 【請求項２】上記変形検出手段は、 上記車両の車室内側壁が車室方向に潰れる際に車内側に
   移動するシートクロスパイプであり、 上記シートクロスパイプに可撓性を有する連結部材を介
   してバックル部材の基部を連結し、 側突時に生じる上記シートクロスパイプの挙動に連動し
   て上記連結部材とバックル部材が上記ベルト部材を弛め
   る方向に変位するように構成されることを特徴とする請
   求項１記載の乗員拘束装置。