JP3164606B2 - ビーム直進形マイクロ波管装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ジャイロトロン、ク
ライストロン、あるいは進行波管のようなマイクロ波電
力を発振あるいは増幅するビーム直進形マイクロ波管装
置に係わり、とくにコレクタ部の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】上記のようなビーム直進形マイクロ波管
装置は、周知の通り、電子ビームを発生する電子銃部、
そのビーム下流に配置された共振空胴部又は遅波回路の
ような高周波作用部、さらにそのビーム下流に配置され
たコレクタ部、電子ビーム集束用磁界装置、および各部
に動作電圧を与える電源装置とを有して構成される。

【０００３】ところで近来は、高周波出力電力の増大が
顕著であり、高周波作用部を経て用済みになった電子ビ
ームを、コレクタ電極壁になるべく均等に分散させて捕
捉することが必要になっている。そのために、コレクタ
電極の外周に電磁コイルを配置し、この電磁コイルに交
流電流を流し、その掃引磁界により電子ビームを分散さ
せる技術が、例えば特開昭６２−２７８７３２号公報や
特開平１−２９４３３０号公報等で知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このような、電子ビー
ム掃引用電磁コイルに流す電流は、通常、５０Ｈｚ又は
６０Ｈｚの商用電源を周波数はそのままで適当な電圧に
変換して供給している。なお、上記公報には１０〜１０
０Ｈｚの正弦波を供給する例が示されている。しかしな
がら、コレクタ電極、あるいはそれを冷却するための冷
却ジャケットは、銅あるいはステンレス鋼のような金属
の円筒であり、電磁コイルで発生される交流磁界によっ
てこれらコレクタ電極やジャケットに誘導電流が発生す
る。

【０００５】この誘導電流は、電子ビームを掃引、拡散
させるコレクタ電極内側の磁界を打ち消して磁界強度を
弱めるとともに、コレクタ電極やジャケット自身にジュ
ール熱を発生させる。このジュール熱の発生は、電磁コ
イルに流す電流の周波数が大きいほど大きくなり、無視
できないものとなる。

【０００６】この発明は、以上のような不都合を解消
し、コレクタ電極の内壁に捕捉される電子ビームを良好
に分散させるとともにコレクタ電極や冷却ジャケットへ
の誘導電流の発生、それによるジュール熱の発生を抑制
することができるビーム直進形マイクロ波管装置を提供
することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明は、コレクタ部
のまわりに配置してコレクタ部に入射する電子を交番磁
界により掃引する電磁コイルに流す電流の掃引周波数
を、５Ｈｚ以下（０を含まない）に設定したビーム直進
形マイクロ波管装置である。

【０００８】

【作用】この発明によれば、電磁コイルに流す電流の掃
引周波数が５Ｈｚ以下というように低いため、コレクタ
電極や冷却ジャケットへの誘導電流の発生がきわめて小
さく、したがってそれらに発生するジュール熱も無視で
きる程度に抑制され、より一層小さい電磁コイル電流で
コレクタ電極内壁に捕捉される電子ビームを良好に分散
させることができる。

【０００９】

【実施例】以下、図面を参照してこの発明をジャイロト
ロンに実施した例を説明する。図１に示すように、ジャ
イロトロン本体11は、中空電子ビームを発生する電子銃
部12、そのビーム下流に配置された図示しない共振空胴
を有する高周波作用部、さらにそのビーム下流の横方向
に配置された高周波出力部13、および最下流に配置され
た釣鐘状の銅製コレクタ電極14及びステンレス鋼製蒸発
冷却用ジャケット15を有するコレクタ部16を備えてい
る。電子銃部の外周には電子ビーム集束用電磁コイル1
7、高周波作用部には共振空胴のミリ波電界と相互作用
する電子をサイクロトロン周波数で回転させる磁場を発
生する超伝導コイル18がそれぞれ配置されている。

【００１０】そこで、コレクタ部16の外周には、４個の
リング状電磁コイル19,20,21,22 がコレクタ軸の方向に
所定間隔で縦列配置されている。これらの電磁コイル
は、コレクタ部のまわりに設置された複数本の支柱23,2
4 に、複数対のナット25,25 …によって軸方向位置が変
えられるように取り付けられている。それによって、各
電磁コイルは最適な位置に調整、設定できる。そして、
ビーム最上流の電磁コイル19と、ビーム最下流の電磁コ
イル22には直流電源26,27 から直流電流が供給される。
それによって、コレクタ電極の内側の直流磁界の分布を
入射電子ビームがほどよく集束あるいは拡散するように
調節設定される。これら２個の電磁コイルの間に配置し
た残り２個の電磁コイル20,21 は、適当な軸方向間隔で
配置され、これら両コイルには交流電源28から交番電流
が供給される。この供給交番電流の掃引周波数は、５Ｈ
ｚ以下に設定されている。各２個の電磁コイル20,21 か
ら発生する磁界は、コレクタ電極14の内側空間に前記周
波数で変化し、入射電子ビームのコレクタ電極内壁への
衝突位置を掃引、分散させる。

【００１１】なお、２個の電磁コイル20,21 は、好まし
くは、図２及び図３に示すように金属製の半断面コ字状
に整形したボビン31の円周方向の少なくとも１カ所を切
断してここに薄い樹脂絶縁物32を挟み、導線33をコイル
状に例えば５００ターン巻いたものである。このよう
に、ボビン31を円周方向に少なくとも１カ所電気的に切
断してあるため、ボビンに発生する誘導電流をさらに低
減することができる。

【００１２】図４及び図５に示す実施例の電磁コイル20
(21)は、そのボビン31の外周部を少し残して少なくとも
１カ所にスリット33を形成したものである。このスリッ
ト33によって、ボビンに発生する誘導電流をさらに低減
することができる。

【００１３】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
コレクタ部のまわりに配置した電磁コイルに流す電流の
掃引周波数を５Ｈｚ以下に設定しているため、コレクタ
電極や冷却ジャケットへの誘導電流の発生を小さくで
き、それらに発生するジュール熱を無視できる程度に抑
制することができる。したがって、より一層小さい電磁
コイル電流でコレクタ電極内壁に捕捉される電子ビーム
を良好に掃引、分散させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例を示す概略縦断面図である。

【図２】この発明の実施例の一部を示す半断面図であ
る。

【図３】図２の要部を示す横断面図である。

【図４】この発明の他の実施例の一部を示す半断面図で
ある。

【図５】図４の要部を示す横断面図である。

【符号の説明】11 …ジャイロトロン本体、12…電子銃部、13…高周波作
用部、16…コレクタ部、19,20,21,22 …電磁コイル、28
…電源。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 恒岡 まさき 茨城県那珂郡那珂町大字向山801番地の １ 日本原子力研究所那珂研究所内 (72)発明者 假家 強 栃木県大田原市下石上1385番の１ 株式 会社東芝那須電子管工場内 (56)参考文献 特開 平１−294330（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−278732（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−149631（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01J 23/027 - 23/033 H01J 25/00

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電子銃部、そのビーム下流に配置された高
   周波作用部、そのビーム下流に配置されたコレクタ部、
   および前記コレクタ部のまわりに配置されてコレクタ部
   に入射する電子を交番磁界により掃引する電磁コイル、
   および該電磁コイルに電流を供給するコイル付勢電源と
   を具備するビーム直進形マイクロ波管装置において、 上記電磁コイルに流す電流の掃引周波数が、５Ｈｚ以下
   に設定されていることを特徴とするビーム直進形マイク
   ロ波管装置。