JP3162683B2 - 転写因子、nf−il6/lapの活性を調整する化合物を同定する方法 - Google Patents

転写因子、nf−il6/lapの活性を調整する化合物を同定する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子発現調節の
分野に関し、特に、転写因子、NF-IL6/LAPによる遺伝子
の調節および活性化に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの真核遺伝子は、誘発可能な、細胞
の種類に特異的なまたは構造的な態様で調節される。遺
伝子発現の調節に深く関与している様々な種類の構造成
分が存在する。配列特異的DNA結合タンパク質に結合
するために働く、遺伝子の近傍または遺伝子内に存在す
るシス−作動性成分、またはトランス−作動性因子が存
在する。タンパク質のDNAへの結合は、遺伝子転写の
開始、維持またはダウンレギュレーションに寄与してい
る。
【0003】遺伝子を制御するシス−作動性成分は、プ
ロモーター、エンハンサーまたはサイレンサーと呼ばれ
る。プロモーターは転写開始部位の次に配置され、方向
依存的態様で機能し、一方、エンハンサーおよびサイレ
ンサーは、プロモーターの活性を調節し、転写開始部位
へのその方向性と距離に関して柔軟性がある。
【0004】細胞外シグナルは、多くの種類の転写因子
の活性を調節する。シグナル調節性転写因子の重要な1
群はBZipタンパク質であるが、これは、それぞれD
NA結合と二量体化のために必要な保存的ベーシック
(B)ドメインおよびロイシンジッパー(Zip)ドメ
インのためにこのように呼称される。この種類の転写活
性タンパク質で良く研究されている幾つかの例には、転
写因子のAP−1/jun/fosファミリーおよびC
REB/ATFタンパク質が含まれるが、これらは、そ
れぞれTPA(12−O−テトラデカノイルフォルボー
ル−13−アセテート)反応成分およびサイクリックA
MP(cAMP)反応成分(CRE)と結合する。BZ
ipタンパク質による調節は、DNA結合機能や転写活
性化機能に限らず、ある細胞で発現される因子の発現レ
ベルやレパートリーにも影響を与える種々の複雑なメカ
ニズム、転写メカニズム、一時的および翻訳後メカニズ
ムを含む。
【0005】NF-IL6/LAP(核因子−インターロイキン6
/リンホカイン活性化タンパク質)は、転写アクチベー
ター(活性化物質)のbZIPファミリーのメンバーの
1つである。NF-IL6/LAPタンパク質は肝臓の核内に極め
て豊富であり、そこでは、このタンパク質は急性期反応
の主要な調節因子と考えられてきた。これはインターロ
イキン6(IL−6)および他の炎症仲介物質によって
誘発される。NF-IL6/LAPはまた、IL−1および細菌性
リポ多糖類(LPS)に反応してIL−6プロモーター
の活性化に関与する。NF-IL6/LAPは、インターロキン6
(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)、顆粒
球コロニー刺激因子(G−CSF)および腫瘍壊死因子
α(TNF−α)を含む幾つかのサイトカイン遺伝子の
誘発に深く関与している。これらの遺伝子は、NF-IL6/L
AP認識配列を含むシス−作動性成分を含む。
【0006】長年の間、遺伝子の発現またはそのメッセ
ージのタンパク質産物への翻訳に変化を与える能力につ
いて、種々の薬剤が調べられてきた。現存の治療薬のも
つ1つの問題は、無差別的に作用し、健常な細胞に新生
細胞と同じように影響を与えるということである。これ
は多くの化学療法に関する主要な問題で、このような場
合には、主として健常な細胞に対する毒性薬剤の作用の
ために重篤な副作用が存在する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述の観点から、その
遺伝子の発現産物が細胞増殖性疾患と深い関係にある遺
伝子の過剰発現に関連した異常細胞に特異的な標的を同
定する必要性が、健常細胞に対す潜在的なマイナスの影
響を減少させるために存在する。本発明は、そのような
標的を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はNF-IL6/LAPの部
位特異的翻訳後修飾の予期せぬ発見に基づき、これは、
例えばサイトカイン遺伝子のような種々の標的遺伝子を
活性化するその能力を強化する。その修飾とは、NF-IL6
/LAPの105番のセリン残基におけるリン酸化である。
本発明は、核因子−インターロイキン6/リンホカイン
活性化タンパク質(NF-IL6/LAP)のアミノ酸残基105
のリン酸化状態に影響を与えることによりNF-IL6/LAPの
活性を調整する化合物を同定する方法であって、 (c)該化合物およびNF-IL6/LAPを含む成分を、該成分
が相互に作用するために十分な条件下でインキュベート
し;さらに (d)アミノ酸残基105のリン酸化状態の差異によっ
てNF-IL6/LAPのリン酸化状態に対する該化合物の作用が
示されることに鑑み、該残基のリン酸化状態をインキュ
ベートの前後で比較する という工程を有することを特徴とする方法である。本発
明は、トランス型活性化活性を有し、105番残基でア
ミノ酸置換したNF-IL6/LAPのアミノ酸配列を有するポリ
ペプチドを提供する。
【0009】本発明は、NF-IL6/LAPに付随する免疫病理
学的または細胞増殖性疾患をもつ対象者に、NF-IL6/LAP
活性を調整する試薬を治療的に有効な量で投与すること
による当該疾患の治療方法を提供する。
【0010】本発明はまた、約75位から約125位ま
でのアミノ酸に対応し、さらにそのリン酸化部位である
105位のセリン残基を含むNF-IL6/LAP上の領域を含む
合成ペプチドを提供する。さらに、本発明は、残基10
5のセリンがリン酸化不能アナログ(例えばアラニン)
で置換されているペプチドを提供する。このペプチド
は、NF-IL6/LAP活性化量を減少させたい場合に、天然に
生じるNF-IL6/LAPをリン酸化するキナーゼに対して競合
的阻害物質または擬似基質として有用である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、転写因子NF-IL6/LAPの
活性化ドメイン内の特定部位の発見に基き、この部位
は、リン酸化されるとNF-IL6/LAP認識部位を含む遺伝子
を活性化させるというNF-IL6/LAPの能力を増強する。NF
-IL6/LAPは遺伝子の特定部位に結合するトランス型活性
化タンパク質であるので、NF-IL6/LAPの活性化の調節
は、正常な遺伝子発現、細胞増殖制御および炎症におい
て重要であろう。セリン残基105という特定のリン酸
化部位の発見は、NF-IL6/LAP認識部位を含むこのような
遺伝子の遺伝子発現の制御手段を提供するかもしれな
い。
【0012】本発明は、野性型NF-IL6/LAPのアミノ酸配
列を有するポリペプチドを提供するが、105位のアミ
ノ酸が、トランス型活性化活性を強化または減少させる
アミノ酸で置換されていてもよい。好ましくは、その活
性を強化したい場合は、負に帯電したアミノ酸、例えば
アスパラギン酸またはグルタミン酸に置換される。NF-I
L6/LAP活性を減少させたい場合は、中性アミノ酸に置換
される。好ましくは、中性アミノ酸はアラニンである。
野性型NF-IL6/LAPのトランス型活性化活性を強化または
減少させる他のアミノ酸で、105位のセリンを置換す
ることもできる。置換できる他のアミノ酸には、化学的
に製造されまたは修飾され、NF-IL6/LAPトランス型活性
化活性を変化させることができる合成アミノ酸が含まれ
る。
【0013】本発明のポリペプチドのアミノ酸の一次配
列におけるマイナーな修飾は、本明細書に開示した特定
のポリペプチドと比較して実質的に同等の活性を有する
ポリペプチドを生じるかもしれない。そのような修飾
は、例えば部位指向突然変異によるような意図されたも
のであっても、また偶発的なものであってもよい。この
ような修飾によって製造される全てのペプチドは、当該
ポリペプチドの生物学的活性が依然として存在する限り
本発明に含まれる。例えば、そのようなポリペプチド
が、天然のNF-IL6/LAPリン酸化部位(Ser105)に
対して依然として競合的抑制物質として作用することも
あり、認識されにくいリン酸化部位(Ala105)を
提供することもあり、トランス型活性化を高める部位
(Asp105)を提供することもある。さらに、1つ
または2つ以上のアミノ酸の欠失はまた、その活性を顕
著に変化させることなく、生じた分子の構造修飾をもた
らすことが可能である。これによって、より広い利用性
を有する、より小さな活性分子の開発がもたらされるで
あろう。例えば、その生物学的活性に不要であろうアミ
ノ末端またはカルボキシ末端のアミノ酸を除去すること
が可能である。
【0014】本発明のNF-IL6/LAPポリペプチドはまた、
このポリペプチドの保存的変形も含む。上記のセリン1
05リン酸化部位における限定的置換に加え、本発明
は、本発明のポリペプチドのその他のアミノ酸配列にお
ける保存的変形をも包含する。本明細書で用いられてい
るように、 ∧保存的変形”とは、1つのアミノ酸残基
を別の生物学的に同様な残基と置換することを指す。保
存的変形の例には、例えばイソロイシン、バリン、ロイ
シンまたはメチオニンのような1つの疎水性残基を別の
ものに置換すること、または1つの極性残基を別のもの
に置換すること例えば、リジンをアルギニンに、アスパ
ラギン酸をグルタミン酸に、またはアスパラギンをグル
タミンに置換することなどを含む。 ∧保存的変形”は
また、置換ポリペプチドに対して作製された抗体が未置
換ポリペプチドと免疫的に反応するならば、未置換親ア
ミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用する場合も含む。
【0015】本発明はまた、配列番号1のアミノ酸配列
をもつ合成ペプチドおよびその保存的変形を提供する。
この配列は、NF-IL6/LAPポリペプチドのアミノ酸75−
125をもち、リン酸化およびそれに続くNF-IL6/LAPの
活性化のための部位となる105位のセリンを含む(Ak
iraら、EMBO J., 6:1897(1990);Descombes ら、Genes&
Dev., 4:1541(1990); Poliら、Cell, 63:643(1990))。
本明細書で用いられているように、 ∧合成ペプチド”
という用語は、完全に天然で生じるタンパク質分子を含
まないペプチドを指す。このペプチドは、化学合成、遺
伝子組み換え技術または完全抗体のフラグメント化のよ
うな技術を用いて人間の仲介によって製造されるという
ことにおいて ∧合成”である。
【0016】本発明はまた、配列番号1の配列を有する
ペプチドであって、天然のNF-IL6/LAPの105位のセリ
ンが修飾されているものを含む。例えば、修飾の1つ
は、セリンをアラニンで置換するものであり、それによ
ってこのペプチドのリン酸化を低下させる傾向を与え
る。本発明はまた、配列番号1の配列を有するペプチド
であって、天然のNF-IL6/LAPの105位のセリンを負に
帯電したアミノ酸によって置換し、それによってトラン
ス型活性化の活性が強化されているものを含む。NF-IL6
/LAPのトランス型活性化の活性を強化するそのような負
に帯電したアミノ酸の例には、アスパラギン酸およびグ
ルタミン酸が含まれる。
【0017】本発明のペプチドは、α−アミノ基のt−
BOCまたはFMOC保護のような通常的に用いられて
いる方法によって合成できる。この方法は両方とも、ペ
プチドのC−末端から始まり、ただ1つのアミノ酸が各
段階で付加される多段合成を伴う(Coliganら、免疫学
の今日のプロトコル(Currenet Protocols in Immunolog
y)、ウィリーインターサイエンス、(1991)、ユニット9
参照)。本発明のペプチドはまた、0.1−1.0mM
olアミン/gポリマーを含むコポリ(スチレン−ジビ
ニルベンゼン)を用いて、メリーフィールド並びにスチ
ュワートおよびヤンの記載(Merrifield J. Am. Chem.
Soc., 85:2149(1962); Stewart & Young固相ペプチド合
成(Solid Phase Peptide Synthesis)、フリーマン、サ
ンフランシスコ(1969)、27-62ページ)にしたがって、
既知の固相ペプチド合成によって合成できる。化学合成
の終了時には、ペプチドは脱保護され、液体HF−10
%アニゾールにより0℃約1/4−1時間で処理してポ
リマーから切断される。試薬を蒸発させた後、1%酢酸
溶液でポリマーからペプチドを溶出させ、続いて凍結乾
燥させて粗物質が得られる。通常は、この粗物質は例え
ば、溶媒として5%酢酸を用いてセファデックスG−1
5でゲル濾過して精製できる。このカラムの適切な分画
を凍結乾燥して、均質なペプチドまたはペプチド誘導体
が得られるが、続いてアミノ酸分析、薄層クロマトグラ
フィー、高性能液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分
光分析、分子回転、溶解性および固相エドマン分解によ
る定量のような標準的技術によって性状を決定できる。
【0018】本発明はまた、本発明のNF-IL6/LAPポリペ
プチド並びに配列番号1の合成ペプチドおよび前述のそ
の改造型をコードするポリヌクレオチドを提供する。本
明細書で用いられるように、 ∧ポリヌクレオチド”と
は、分離フラグメント形または大型構築物の成分として
のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの
ポリマーを指す。本発明のポリペプチドをコードするD
NAは、cDNAフラグメントからまたはオリゴヌクレ
オチドから組み立てることができるが、これは、組換え
体転写ユニット中で発現させることができる合成遺伝子
を提供する。本発明のポリヌクレオチド配列は、DN
A、RNAおよびcDNA配列を含む。
【0019】本発明のDNA配列はいくつかの方法によ
って得ることができる。例えば、このDNAは、当該技
術分野で周知のハイブリダイゼーション方法を用いて単
離することができる。これらには以下の手段が含まれる
が、これに限定されるものではない:1)共通するヌク
レオチド配列を検出するためにゲノムライブラリーまた
はcDNAライブラリーに対してプローブをハイブリダ
イゼさせる、2)共通した構造物を検出するために発現
ライブラリーを抗体でスクリーニングする、3)ポリメ
ラーゼ鎖伸長反応(PCR)によって合成する。
【0020】ハイブリダイゼーション法は、混合標識合
成オリゴヌクレオチドプローブを用いることによって、
組換え体クローンをスクリーニングするについて有用で
ある。この場合、各プローブは、変性した二本鎖DNA
の異種混合物を含むハイブリダイゼーションサンプル中
の特異的なDNA配列に対して潜在的に完全な相補性を
有する。そのようなスクリーニングのために、ハイブリ
ダイゼーションは、好ましくは、一本鎖DNAまたは変
性二本鎖DNAのいずれかで実施される。対象ポリペプ
チドに関連するmRNA配列の存在量が極めて少ない材
料起源から得られたcDNAを検出する場合に、ハイブ
リダイゼーションは特に有用である。言い換えれば、非
特異的結合を避けることを目的とした厳格なハイブリダ
イゼーション条件を用いることによって、混合物中のた
だ1つの完全に相補的なプローブに対して標的DNAを
ハイブリダイズさせることによって、特異的cDNAク
ローンを、例えばオートラジオグラフィーによって可視
化させることができる(Wallanceら、Nucleic Acid Res
earch, 9:879(1981))。
【0021】本発明のNF-IL6/LAPポリペプチドをコード
する特異的DNA配列の作製はまた以下によって達成で
きる:1)ゲノムDNAから二本鎖DNA配列を単離す
る、2)対象ポリペプチドに必要なコドンを提供するた
めに、DNA配列を化学的に製造する、3)真核ドナー
細胞から単離したmRNAの逆転写によって二本鎖DN
Aをインビトロで合成する。後者の場合は、一般的にc
DNAと呼称されるmRNAに相補的な二本鎖DNAが
最後に形成される。組換え体工程で使用される特異的な
DNA配列を作製するこれら3通りの方法のうち、ゲノ
ムDNA単離物の単離が最も共通性が少ない。これは、
哺乳類ポリペプチドを細菌で発現させたいと考える場合
に、イントロンの存在ゆえに特にそうである。
【0022】所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の
完全な配列が分かっている場合は、DNA配列の合成は
しばしば最良の方法である。所望のポリペプチドのアミ
ノ酸残基の完全な配列が分からない場合、DNA配列の
直接的合成は不可能で、最良の方法はcDNA配列の合
成である。対象cDNA配列を単離する標準的な方法の
うち、とりわけ、高レベルの遺伝子発現をもつドナー細
胞で豊富なmRNAの逆転写に由来するプラスミドまた
はファージ保有cDNAライブラリーが用いられる。ポ
リメラーゼ鎖伸長反応技術と組み合わせて用いる場合
は、発現産物が極めて稀であってもクローニングが可能
である。ポリペプチドのアミノ酸配列の大半が分かって
いる場合は、標的cDNAに存在が推定される配列を複
製した標識一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNAプ
ローブ配列を作製して、DNA/DNAハイブリダイゼ
ーション工程に用いることができる。この工程は、一本
鎖形に変性させたcDNAのクローニングコピーで実施
される(Jayら、Nucl. AcidRes. 11:2325(1983))。
【0023】cDNA発現ライブラリー例えばラムダg
t11は、NF-IL6/LAPに特異的な抗体を用いて、少なく
とも1つのエピトープを有するNF-IL6/LAPポリペプチド
を間接的にスクリーニングすることができる。そのよう
な抗体はポリクローナルかモノクローナルで、NF-IL6/L
APcDNAの存在を示唆する発現産物を検出するために
用いることができる。
【0024】ポリヌクレオチド配列は遺伝暗号から推定
できるが、コドンの縮退(degeneracy)は考慮されなけれ
ばならない。本発明のポリヌクレオチドには、遺伝暗号
の結果として縮退した配列も含まれる。天然には20個
のアミノ酸が存在し、そのうちの大半は、1つ以上のコ
ドンによって特定される。したがって、NF-IL6/LAPのア
ミノ酸配列が機能的なポリペプチドを生じるかぎり(少
なくともポリヌクレオチドのセンス鎖において)、全て
の縮退ヌクレオチド配列が本発明に含まれる。
【0025】本発明のポリペプチドまたは合成ペプチド
(配列番号1)をコードするポリヌクレオチド配列を、
原核細胞または真核細胞のいずれかで発現させることが
できる。宿主には、細菌、酵母、昆虫および哺乳類生物
が含まれる。原核細胞で真核細胞配列またはウイルス配
列を有するDNA配列を発現させる方法は、当該技術分
野で周知である。宿主で発現と増殖が可能な生物学的に
機能を有するウイルスおよびプラスミドDNAベクター
は、当該技術分野で周知である。そのようなベクター
は、本発明のDNA配列を組み入れるために用いられ
る。
【0026】ポリヌクレオチドをコードするDNA配列
は、適切な宿主細胞にDNAを移すことによってインビ
トロで発現させることができる。 ∧宿主細胞”とは、
ベクターが増殖し、そのDNAを発現させることができ
る細胞である。この用語はまた対象の宿主細胞の一切の
子孫を含む。増殖中に変異が生じるので、全ての子孫が
親細胞と同一であるとは限らないことは理解されるとこ
ろである。しかしながら、 ∧宿主細胞”という用語が
用いられる場合には、そのような子孫も含まれる。適切
な移入の方法、言い換えれば、宿主中で外来DNAが持
続的に維持される方法は、当該技術分野で周知である。
【0027】本発明では、NF-IL6/LAPポリヌクレオチド
配列は組換え体発現ベクターに挿入してもよい。 ∧組
換え体発現ベクター”という用語は、プラスミド、ウイ
ルス、または遺伝配列の挿入または組み込みによって操
作された当技術分野で既知の他の運搬体を指す。そのよ
うな発現ベクターは、挿入された遺伝配列の宿主による
効率的転写を促進するプロモーターを含む。発現ベクタ
ーは、典型的には、形質転換細胞の表現型選別を可能に
する特定遺伝子の他に複製起点、プロモーターを含む。
本発明の使用に適したベクターには以下のものが含まれ
るが、これらに限られるものではない:細菌での発現に
T7主体発現ベクター(Rosenbergら、Gene 56:125(198
7))、哺乳類細胞での発現にpMSXND発現ベクター
(Lee & Nathans, J. Biol. Chem. 263:3521(1988))、
昆虫細胞での発現にバキュロウイルス由来ベクター。D
NAセグメントは、調節成分例えばプロモーター(例え
ばT7、メタロチオネインI、またはポリヘドリンプロ
モーター)に機能できるように連結されて存在する。
【0028】ベクターは、発現ベクターを含む宿主細胞
を識別するために、表現型として選別できるマーカーを
含むことができる。原核細胞の発現ベクターとして典型
的に用いられるマーカーの例には、アンピシリン(β−
ラクタマーゼ)、テトラサイクリンおよびクロラムフェ
ミコール(クロラムフェニコールアセチルトランスフェ
ラーゼ)に対する抗生物質耐性遺伝子が含まれる。哺乳
類発現ベクターで代表的に用いられるマーカーの例に
は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコ
シドホスホトランスフェラーゼ(neo、G418)、
ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)、ハイグロ
マイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、
チミジンキナーゼ(TK)およびキサンチングアニンホ
スホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT、gp
t)に対する遺伝子を含む。
【0029】組換え体DNAによる宿主細胞の形質転換
は、当業者に周知の通常の技術によって実施できる。宿
主が原核細胞(例えば大腸菌)である場合、DNAの取
り込み能力をもつコンピテント細胞は、増殖期後に採取
し続いて当業者に周知の技術で塩化カルシウム法で処理
した細胞から調製できる。また別には、MgCl2また
はRbClを用いてもよい。形質転換は、宿主細胞のプ
ロトプラストを形成してから実施してもよいし、また電
気的穿孔によって実施してもよい。
【0030】宿主が真核細胞の場合は、リン酸カルシウ
ム共沈、通常の機械的方法例えばマイクロインジェクシ
ョン、電気的穿孔、リポゾーム封入プラスミドの挿入、
またはウイルスベクターのようなDNAのトランスフェ
クション方法が用いられる。真核細胞はまた、本発明の
ポリペプチドをコードするDNA配列とともに、選別可
能な表現型をコードする第二の外来DNA分子例えばヘ
ルペスシンプレックスチミジンキナーゼ遺伝子を同時ト
ランスフェクトすることができる。別の方法は、真核細
胞ウイルスベクター例えばシミアンウイルス40(SV
40)またはウシパピローマウイルスを用いて、一時的
に真核細胞を感染または形質転換させ、当該タンパク質
を発現させる(真核細胞ウイルスベクター(Eukaryotic
Viral Vectors)、コールドスプリングハーバー研究所、
Gluzman編(1989))。哺乳類宿主細胞の例には、CO
S、BHK、293およびCHO細胞が含まれる。
【0031】本発明で提供されるポリペプチドまたはそ
のフラグメントを発現した宿主細胞の単離および精製
は、調製用クロマトグラフィーおよび免疫学的分離(モ
ノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む)を
含む通常の手段によって実施できる。
【0032】さらに、NF-IL6/LAPのためのリボザイムヌ
クレオチド配列も本発明に含まれる。リボザイムは、D
NA制限エンドヌクレアーゼと同じ態様で特異的に他の
一本鎖RNAを切断する能力を有するRNA分子であ
る。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の修
飾を通して、RNA分子の特異的ヌクレオチド配列を認
識し、これを切断する分子を創出することができる(Ce
ch、J. Amer. Med. Assn., 260:3030(1988))。このアプ
ローチの主要な利点は、それらは配列特異的であるが故
に、特定の配列をもつmRNAのみが不活性化されると
いうことである。例えば、NF-IL6/LAPのリン酸化部位の
周辺の領域およびこの部位を含む領域にリボザイムを誘
導することができる。
【0033】リボザイムには2つの基本的なタイプが存
在する、すなわちテトラヒメナ型(Hasselhoff、Natur
e, 334:585(1988))と ∧ハンマーヘッド" 型である。テ
トラヒメナ型リボザイムは、4 塩基の長さの配列を認識
し、一方、 ∧ハンマーヘッド”型リボザイムは、長さ
が11−18塩基の配列を認識する。認識配列が長けれ
ば長いほど、そのような配列がもっぱら標的mRNA種
にのみ生じる可能性は高くなる。結果として、ハンマー
ヘッド型リボザイムは、特異的mRNA種を不活性化す
るについてテトラヒメナ型リボザイムより好ましく、1
8塩基認識配列は、より短い認識配列より好ましい。
【0034】本発明で提供される抗体は、本発明のポリ
ペプチドまたはペプチドと免疫反応性を有しまたはこれ
と結合する。実質的に、個々のモノクローナル抗体調製
物だけでなく、異なるエピトープ特異性をもつモノクロ
ーナル抗体の集合物から成る抗体が提供される。モノク
ローナル抗体は、当技術分野で既知の方法によって該タ
ンパク質フラグメントを含む抗原から作製される(Kohl
erら、Nature, 256:495(1975);分子生物学の今日の手法
(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubel
ら、(1989))。
【0035】本発明のNF-IL6/LAPポリペプチドに結合す
る抗体は、問題の小ペプチドを含む完全なポリペプチド
またはフラグメントを用いて調製することができる。動
物を免疫するために用いられる配列番号1のようなポリ
ペプチドまたはペプチドは、cDNAの翻訳または化学
合成から得られ、精製して所望の場合には単体タンパク
質に共役させることができる。ペプチドに化学的に共役
させる通常用いられる単体には、キーホールリンペット
のヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清
アルブミン(BSA)および破傷風毒素が含まれる。続
いてこの共役ペプチドを動物(例えばマウス、ラットま
たはウサギ)の免疫に用いる。
【0036】所望の場合には、ポリクローナル抗体はさ
らに、例えば抗体をそれに対して作製させたポリペプチ
ドまたはペプチドを結合させたマトリックスに結合さ
せ、さらに溶出させることによって精製することができ
る。当業者には、モノクローナル抗体に限らずポリクロ
ーナル抗体の精製および/または濃縮のための免疫分野
で普通の種々の技術は知りえるところであろう(例え
ば、Coliganら、免疫学の今日の手法(Currenet Protoco
ls in Immunology)、ウィリーインターサイエンス、(19
91)、ユニット9 参照、この文献は参照により本明細書
に含まれる)。
【0037】本発明で用いられる ∧抗体”という用語
は、完全な分子の他にそのフラグメント、例えばFa
b、F(ab’)2およびFvを含むが、これらは、エ
ピトープ決定基に結合することができる。これらの抗体
フラグメントは、選択的にその抗原またはレセプターに
結合するなんらかの能力を保持し、以下のように定義さ
れる: (1)Fabとは、1つの抗体分子の一価の抗原結合フ
ラグメントを含むフラグメントで、完全抗体を酵素パパ
インで消化して、1個の完全な軽鎖と1個の重鎖の一部
分を得ることによって製造できる; (2)Fab’とは、完全な抗体をペプシンで処理し、
続いて還元して完全な軽鎖1個と重鎖の一部分を得るこ
とによって調製できる抗体フラグメントで、1個の抗体
分子から2個のFab’フラグメントが得られる; (3)(Fab’)2とは、完全抗体を酵素ペプシンで
処理し、その後の還元を行わないで得られるフラグメン
トであり、F(ab’)2は、2個のジスルフィド結合
によって一緒に保持された2個のFab’フラグメント
の二量体である。 (4)Fvは2本の鎖として発現された、軽鎖の可変領
域と重鎖の可変領域を含む遺伝子工学的に創出されたフ
ラグメントと定義される; (5)単鎖抗体( ∧SCA”)とは、遺伝子融合させ
た単鎖分子として適切なリンカーで連結させた、軽鎖の
可変領域と重鎖の可変領域を含む遺伝子工学創出分子と
定義される。
【0038】これらのフラグメントを作製する方法は当
技術分野で既知である(例えば、Harlow & Lane,抗体(A
ntibodies):実験室マニュアル、コールドスプリングハ
ーバー、ニューヨーク(1988)を参照のこと、この文献は
参照により本明細書に含まれる) 。
【0039】本発明で用いられるように、 ∧エピトー
プ”という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上
の一切の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通
常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性
な表面分族から成り、さらに通常は、特異的電荷特性の
他に特異的な三次元構造特性を有する。
【0040】また、抗イディオタイプ技術を用いて、エ
ピトープを模倣するモノクローナル抗体を製造すること
も可能である。例えば、第一のモノクローナル抗体に対
して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体
は、第一のモノクローナル抗体が結合するエピトープの
∧イメージ”である超可変領域内の結合ドメインを有
するであろう。したがって、本発明では、NF-IL6/LAPポ
リヌクレオチドまたは配列番号1の合成ペプチドに結合
する抗体から製造された抗イディオタイプ抗体は、NF-I
L6/LAP認識部位を含有する遺伝子のリン酸化およびその
後の活性化に必要なNF-IL6/LAP上の部位に対して競合的
な抑制物質として作用することができ、したがって特定
の遺伝子を活性化しないようにNF-IL6/LAPを妨げる。
【0041】本発明のNF-IL6/LAPトランス型アクチベー
タータンパク質は、タンパク質の活性に影響を与える化
合物または組成物の識別スクリーニングの方法として有
用である。したがって、ある実施例では、NF-IL6/LAPに
影響を与える組成物を識別する方法を提供し、この方法
は、被験組成物とNF-IL6/LAPを含む成分を、当該成分が
相互に作用するために十分な条件下でインキュベート
し、続いて当該組成物がトランス型活性化の活性に対し
て有する作用を測定することを含む。NF-IL6/LAPに対し
て認められる作用は、抑制性か刺激性(stimulate) かの
いずれかである。例えば、トランス型活性化活性の増加
または減少は、成分混合物に放射性化合物例えば32P
−ATPを添加し、NF-IL6/LAPまたはセリン105を含
む本発明のペプチド(配列番号1)のセリン105への
放射能取り込みを調べることによって測定し、当該化合
物がトランス型活性化を抑制するか、刺激するかを決定
することができる。この方法はまた、セリン105での
置換を含むNF-IL6/LAPポリペプチドにおける組成物の影
響を測定するためにも有用である。また別に、他の標識
もNF-IL6/LAPに対する組成物の影響を決定するために用
いることができる。例えば、放射性同位元素、蛍光化合
物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレーター
または酵素を用いることができる。当業者には他の適切
な標識について理解し、または日常的な実験を用いてそ
のような標識を確認することが可能であろう。
【0042】本発明はまた、NF-IL6/LAP関連免疫病理学
的疾患の治療方法を提供するが、この方法は、当該疾患
をもつ対象者にNF-IL6/LAP活性を調整する試薬を治療的
有効量で投与することを含む。 ∧免疫病理学的疾患”
という用語は、免疫反応または一般に免疫の状態に深く
関与する一切の疾患を指す。
【0043】本発明の方法は、免疫病理学的疾患につい
て上記に述べたように、NF-IL6/LAPに関連する細胞増殖
性疾患の治療にも同様に用いることができる。 ∧治療
的に有効な量”という用語は、例えば使用するポリペプ
チド、ペプチド、ポリヌクレオチドまたはモノクローナ
ル抗体の量が、NF-IL6/LAP関連疾患を緩和するために十
分な量であるという意味である。 ∧細胞増殖性疾患”
という用語は、悪性だけでなく非悪性細胞増殖も意味
し、後者はしばしば周囲の組織と形態学的に異なる外観
を呈する。例えば、本方法は、種々の器官系(例えば、
肺、乳房、リンパ系、胃腸管および泌尿生殖管)の悪性
疾患の他、腺癌(例えば殆どの大腸癌、腎細胞癌、前立
腺癌、肺の非小細胞癌、小腸の癌および食道癌のような
悪性疾患を含む)を治療するために有用であろう。
【0044】本方法はまた、非悪性または免疫関連細胞
増殖疾患、例えば乾癬、尋常性天疱瘡、ベーチェット症
候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、虚血性心疾
患、透析後症候群、白血病、リューマチ様関節炎、後天
的免疫不全症候群、脈管炎、脂質組織球症、敗血症性シ
ョックおよび一般の炎症の治療に有用である。本質的に
は、病因学的にNF-IL6/LAPと連携している一切の疾患が
この処置に感受性を有すると考えられる。
【0045】本発明の方法による免疫病理学的疾患の治
療は、NF-IL6/LAP活性を調節する試薬の投与を含む。
∧調整”という用語は、NF-IL6/LAPが過剰にリン酸化さ
れている場合にはNF-IL6/LAPの抑制を意味し、そのリン
酸化が低下している場合はNF-IL6/LAP活性の増強を意味
する。免疫病理学的または細胞増殖性疾患が過剰リン酸
化に連関している場合は、例えば配列番号1のペプチド
のような抑制性試薬を、細胞内の天然のNF-IL6/LAPの競
合的抑制物質として用いることができる。例えば、NF-I
L6/LAP(Ser105)または(Asp105)ペプチ
ドを細胞に導入し、NF-IL6/LAPキナーゼによるリン酸化
に対して競合させることができる。これらのペプチド
は、転写因子として作用することができないであろう。
さらに、NF-IL6/LAP結合抗体または、本発明のペプチド
に結合するモノクローナル抗体に結合する抗イディオタ
イプ抗体もまた、本発明の治療方法で用いられる。免疫
病理学的疾患がNF-IL6/LAPの低リン酸化と結びついてお
り、NF-IL6/LAP認識部位を含む遺伝子の発現レベルの低
下と一致する場合は、105位に負に帯電したアミノ酸
を含む本発明のポリペプチドは本方法で有用であろう。
【0046】NF-IL6/LAP認識部位を含む遺伝子には、サ
イトカイン遺伝子が含まれる。したがって、本発明の方
法は、サイトカイン遺伝子の発現と連関している免疫病
理学的疾患の治療に有用である。これらの遺伝子の例に
は、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキ
ン8(IL−8)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−C
SF)および腫瘍壊死因子α(TNF−α)が含まれ
る。
【0047】本発明の抗体は、注射または時間をかけた
緩慢な輸液によって非経口的に投与できる。本発明のモ
ノクローナル抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、
髄腔内または経皮的に投与できる。
【0048】本発明のペプチドは、モノクローナル抗体
の投与について記載した方法で投与できる。ペプチドの
体内送達について好ましい方法には、微小球体もしくは
類タンパク質中への被包化による経皮的な方法、肺への
エアーゾル送達による方法、またはイオン浸透療法もし
くは経皮的電気穿孔による経皮的方法が含まれる。他の
投与方法も当業者には知りえるところである。
【0049】本発明のペプチドまたは抗体の注射投与用
調製物は、滅菌水溶液または非水性溶液、懸濁液および
乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、植物油例えばオリーブ
油、および注射可能有機エステル例えばオレイン酸エチ
ルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶
液、乳濁液または懸濁液を含み、食塩水および緩衝性媒
体が含まれる。注射用担体には、塩化ナトリウム溶液、
リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリ
ウム、乳酸加リンゲル、不揮発油が含まれる。静脈内用
担体は、液体と栄養補充物、電解質補充物(例えばリン
ゲルデキストロースを基礎としたようなもの)などを含
む。保存料および他の添加物、例えば抗菌剤、抗酸化
剤、キレート剤および不活性ガスなど)もまた存在して
もよい。
【0050】ポリヌクレオチド配列は、当業者に既知の
種々の技術によって治療として投与できる。そのような
治療は、増殖性疾患をもつ動物の細胞中にNF-IL6/LAPポ
リヌクレオチドを導入することによって治療効果を達成
するであろう。NF-IL6/LAPの送達(デリバリー)は、組
換え体発現ベクター例えばキメラウイルスまたはコロイ
ド分散系を用いて達成できる。ヌクレオチド配列の治療
的送達のために特に好ましいものは、標的設定(targete
d liposome) リポゾームの使用である。本明細書で教示
したように遺伝子治療に利用できる種々のウイルスベク
ターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニ
アまたは好ましくはレトロウイルスのようなRNAウイ
ルスを含む。好ましくは、レトロウイルスベクターは、
ネズミまたはニワトリのレトロウイルスから派生したウ
イルスである。ただ1つの外来遺伝子を挿入できるレト
ロウイルスベクターの例には以下が含まれるが、但しこ
れらに限定されるものではない:モロニーネズミ白血病
ウイルス(MoMuLV)、ハーベーネズミ肉腫ウイル
ス(HaMuSV)、ネズミ乳癌ウイルス(MuMT
V)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。さらに別
の多数のレトロウイルスで多くの遺伝子を組み込むこと
が可能である。これらのベクターの全ては、選択可能な
マーカー用遺伝子を移送(transfer) または組み込むこ
とができ、それによって、形質導入細胞を同定および増
殖させることができる。特定の標的細胞上のレセプター
に対するリガンドをコードする別の遺伝子とともに、NF
-IL6/LAP配列をウイルスベクターに挿入することによっ
て、例えばこのベクターは標的特異的となる。例えば
糖、糖脂質またはタンパク質をコードするポリヌクレオ
チドを挿入することによって、レトロウイルスベクター
を標的特異的にすることができる。好ましい標的設定
は、レトロウイルスベクターを標的にする抗体を用いて
達成される。当業者には、NF-IL6/LAPポリヌクレオチド
を含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能
にするために、レトロウイルスゲノムに挿入できる特異
的ポリヌクレオチド配列を知ることができ、または不都
合な実験を行うことなく容易に確かめることができる。
【0051】組換え体レトロウイルスは不完全であるの
で、感染性ベクター粒子を産生するために補助が必要で
ある。この補助は、例えばLTR内の調節配列の制御下
でレトロウイルスの全ての構造遺伝子を発現するプラス
ミドを含むヘルパー細胞株を用いることによって提供で
きる。これらのプラスミドは、封入メカニズムが被包化
のためのRNA転写物を認識可能とするヌクレオチド配
列を欠いている。封入シグナルが欠失しているヘルパー
細胞株には、例えばΨ2、PA317およびPA12が
含まれるが、これらに限定されるものではない。これら
の細胞株は、ゲノムが封入されないので空ウイルス粒子
(ビリオン)を産生する。封入シグナルは完全である
が、構造遺伝子が他の対象遺伝子で置き換えられている
細胞にレトロウイルスベクターが導入されると、ベクタ
ーは封入され、ベクタービリオンが産生される。この方
法で産生されたベクタービリオンは、続いて組織細胞株
例えばNIH3T3細胞の感染に用いられ、大量のキメ
ラレトロビリオンが産生される。
【0052】NF-IL6/LAPポリヌクレオチドのためのまた
別の標的設定送達システムは、コロイド分散系である。
コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、
微小球体、ビーズ、並びに、油中水滴乳濁液、ミセル、
混合ミセルおよびリポゾームを含む脂質基材システムが
含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポゾームで
ある。リポゾームは人工膜担体で、これはインビトロお
よびインビボでの送達用担体として有用である。サイズ
が0.2−4.0μmの範囲の大型単ラメラ小胞(LU
V)が大型巨大分子を含む水性緩衝液の相当な部分を被
包することができることが示されている。RNA、DN
Aおよび完全なビリオンが水を含む内部に被包化され、
生物学的に活性化形で細胞に送達される(Fraleyら、Tr
ends Biochem. Sci., 6:77(1981))。哺乳類細胞の他
に、植物、酵母および細菌細胞にポリヌクレオチドを送
達するためにもリポゾームは用いられた。リポゾームを
効率的な遺伝子伝達用担体にするために、以下の特性が
なければならない:(1)対象遺伝子の生物学的活性を
損なうことなく当該遺伝子を高効率で被包化する;
(2)非標的細胞に較べ、標的細胞に優先的かつ実質的
に結合する;(3)高効率で標的細胞の細胞質に担体の
水性成分を送達する;(4)遺伝情報を正確にかつ効果
的に発現させる(Manninoら、Biotechniques 6:682(198
8))。
【0053】リポゾームの標的設定は解剖学的および機
械的因子を基に分類されている。解剖学的分類は選択
性、例えば器官特異性、細胞特異性およびオルガネラ特
異性のレベルに基づく。機械的標的設定は、それが受動
的であるか能動的であるかによって区別できる。受動的
標的設定は、類洞毛細管を含む器官内の細網内皮系(R
ES)細胞に分布しようとするリポゾームの本来の傾向
を利用する。他方受動的標的設定は、リポゾームに特異
的なリガンド例えばモノクローナル抗体、糖、糖脂質ま
たはタンパク質を共役させることによって、または本来
生じる局在部位以外の器官および細胞タイプに標的を設
定するためにリポゾームの構成またはサイズを変更する
ことによってリポゾームを変化させることを必要とす
る。
【0054】NF-IL6/LAPの特異的リン酸化部位としての
セリン105の発見によって、当業者がNF-IL6/LAPをリ
ン酸化する特異的タンパク質キナーゼを見分けることが
可能になった。例えば、候補キナーゼをNF-IL6/LAPとと
もにインキュベートし、セリン105におけるリン酸塩
の取り込みを測定しNF-IL6/LAPタンパク質キナーゼを同
定する。
【0055】
【実施例】以下の実施例は本発明を詳述することを目的
とするものであって、制限することを目的とするもので
はない。これらは代表的なものであるが、当業者に既知
の他の方法もまた選択的に用いることができる。 〔実施例1〕PKC経路の活性化はNF-IL6/LAPの部位特
異的リン酸化を誘発するHepG2細胞の半集密(subco
nflent) 培養物に、記載(P. Descombesら、Genes & De
v., 4:1541(1990); C.R. Mullerら、Cell, 61:278(199
0))にしたがってリン酸カルシウム法を用いてpCMV
−LAP(wt)(1.0μg)(Descombesら、上掲
書)、pGDM8(3.0μg)およびpGDM8−P
KCα(3.0μg)(G.Jamesら、J. Cell Biol., 116:
863(1992))をトランスフェクトした。トランスフェク
ション後、細胞を40時間培養液のみで保持し、〔32
P〕−オルソホスフェート(2.5mCi/ml)で4
時間標識付けした。表示の通り最後の20分間TPA
(100ng/ml)を添加した。RIPA緩衝液(放
射性免疫沈降緩衝液(Radio Immune Precipitation Buff
er))で細胞を溶解し、特異的抗体(Descombesら、上掲
書(1990))でNF-IL6/LAPを免疫沈降させ、さらに記載
(B. Binetruyら、Nature 351:122(1991))にしたがっ
てSDS−ポリアクリルアミド−ゲル−電気泳動によっ
て分離した。ニトロセルロース上にブロットを移した
後、インビボ標識LAPをトリプシンで消化した。消化
ペプチドをメンブレンから溶出させ、TLCプレートに
滴下し、記載(W.J. Boyleら、Enzymol., 201:110(199
1))にしたがって二次元電気泳動によって分離した。記
載の方法を(Descombesら、上掲書(1990))を用いて、
32P標識でトランスフェクトしたHepG2細胞から
核抽出物を調製し、抗LAP抗体(Descombesら、上掲
書(1990))を用いてウェスタンブロッティングで分析し
た。抗原抗体複合物は、ECL検出系(アマシャム)を
用いて可視化した。CMV−LAPは、NF-IL6/LAPのオ
−プンな読み枠の二番目のATGで始まる肝臓において
大半が翻訳されるNF-IL6/LAP形をコードする(P. Desco
mbesら、Cell 67:569(1991))。
【0056】NF-IL6/LAP活性の翻訳後制御を調べるため
に、12−0−テトラデカノイル−フォルボール−13
−アセテート(TPA)およびPKCを用いた。この系
の感受性を増強させるために、NF-IL6/LAPをコードする
CMV−LAP発現ベクター(Descombesら、上掲書(19
90))を、PKCα発現ベクター(G.Jamesら、J. CellBi
ol., 116:863(1992))の存在下で、無視できる量の内在
性タンパク質を発現させているHepG2ヘパトーマ細
胞に同時トランスフェクトした。TPAによるPKCα
の活性化は、NF-IL6/LAPの全リン酸化において少量では
あるが再現性のある増加をもたらしたが(図1、レーン
3と4を比較)、その発現レベルに対しては影響を与え
なかった(図2)。HepG2細胞にCMV−LAP発
現ベクターを一時的にトランスフェクトし、〔32P〕
−オルソホスフェートとともにインキュベートし、32
P標識NF-IL6/LAPを抗LAP抗体を用いて免疫沈降によ
って精製した。細胞をpUC19(図1、レーン1)、
pCDM8−0(レーン2;空の発現ベクター)または
pCDM8−PKCα(レーン3および4)のいずれか
で同時トランスフェクトした。レーン4で用いた細胞は
採取前に20分間TPA(100ng/ml)で刺激し
た。
【0057】平行実験で、HepG2細胞を擬似トラン
スフェクト(レーン1)またはCMV−LAP発現ベク
ター(レーン2−5)でトランスフェクトした。細胞を
pUC19(レーン2)、pCDM8−0(レーン3)
またはpCDM8−PKCα(レーン4および5)で同
時トランスフェクトした。レーン5で用いた細胞は、採
取前に20分間TPA(100ng/ml)で処理し
た。核抽出物を調製し、10μgのサンプルを抗LAP
抗体を用いてウェスタンブロットで調べた。免疫ブロッ
トは、PKCαの存在下または非存在下で、他に翻訳さ
れた(alternatively translated)LIPタンパク質の産
生を示さなかった(Descombesら、上掲書(1990))。免
疫精製NF-IL6/LAPのトリプシン消化二次元リンペプチド
解析(w.J.Boyleら、Meth. Enzymol., 201:201(1991))
によって、TPAによるPKCαの活性化はNF-IL6/LAP
の部位特異的リン酸化を刺激することが示された(図
3)。
【0058】インビボ標識NF-IL6/LAPのトリプシン消化
リンペプチドマップ。等量のNF-IL6/LAPを、パネルA
(レーン3および4)で述べたようにトランスフェクト
し、TPAで処理(+)または未処理(−)のHepG
2細胞から単離した。得られたペプチドを高電圧電気泳
動(水平方向)で、続いて上昇薄層クロマトグラフィー
(垂直方向)で分離し、オートラジオグラフィーによっ
て可視化した。PKC活性化後、リンペプチドIおよび
3の両方のレベルが増加した。しかしながらリンペプチ
ドIのみが、別の細胞タイプのTPA処理に反応して再
現性をもって増加した。再現性をもって観察されたNF-I
L6/LAP由来リンペプチドにのみ番号を付与した;他のリ
ンペプチドは夾雑タンパク質に由来する可能性が高い。
矢印は起点を示す。
【0059】内在性および一時的に発現させたNF-IL6/L
APの両方が、異なる細胞タイプにおいてそれらのリン酸
化部位で同様な変化を受けることを確認するために、P
KCαを安定的に発現し、内在性NF-IL6/LAPを発現する
ことが分かっているラット線維芽細胞株でこのような実
験を繰り返した。HepG2細胞で認められたように、
TPAは内在性および一時的発現の両方のNF-IL6/LAPの
部位特異的リン酸化を刺激した。幾つかのリンペプチド
のレベルはTPA処理後増加したが、両方の細胞タイプ
で共通で、しかも内在性および一時的発現NF-IL6/LAPの
両方に生じた唯一の変化は32PペプチドIのレベルの
上昇であった(図3)。 〔実施例2〕NF-IL6/LAPのPKC刺激リン酸化部位 105位にアラニンまたはアスパラギン酸のためのコド
ンを含む変異体NF-IL6/LAPクローンを、標準的な部位指
向変異技術(Ausubelら、Current Protocols in Molecu
lar Biology, ユニット8 ウィリーインターサイエンス
(1989)) を用いて作製した。HepG2細胞を一時的に
pCMV−LAP(wt)またはpCMV−LAP(A
la105)でトランスフェクトし、〔32P〕−オル
ソホスフェート(2.5mCi/ml)で4時間標識付
けした。図1〜図3で述べたようにTPA(100ng
/ml)で処理した後、細胞をRIPA緩衝液で溶解さ
せた。等量の細胞溶解物から抗LAP抗体で免疫沈降に
よって野性型および変異体NF-IL6/LAPを単離した(Desc
ombesら、上掲書(1990))。トリプシン消化の後、実施
例1図1〜図3で述べたように二次元電気泳動でペプチ
ドを分離した。
【0060】リンペプチドIの移動位置は、先の実験で
そのリンアクセプターとしてのSer105を含むこと
が観察されたリンペプチドのそれと同一のようであっ
た。Ser105が実際TPA応答リン酸化部位である
か否かを決定するために、コドンをアラニンに置換し
た。野性型(wt)NF-IL6/LAPまたはNF-IL6/LAP(Al
a105)を発現しているベクターをHepG2細胞へ
トランスフェクトし、〔32P〕−オルソホスフェート
でインビボ標識した後、得られたタンパク質を単離し
た。図4に示したように、AlaによるSer105の
置換はリンペプチドIの出現を妨げた。 〔実施例3〕Ser105のリン酸化後のNF-IL6/LAPの活性化 主要なTPA応答リン酸化部位としてのSer105を
同定した後、NF-IL6/LAP活性に対するそのリン酸化の影
響を調べた。NF-IL6/LAP反応性レポーター遺伝子を活性
化するwtNF-IL6/LAPの能力を、Ala105変異体の
該レポーター遺伝子を活性化させる能力と比較した(図
5〜図11)。
【0061】NF-IL6/LAP反応性D−CATレポータープ
ラスミド3μg(Descombesら、上掲書(1990); C.R. Mu
llerら、Cell, 61:279(1990))を、pCMV−LAP
(wt)、pCMV−LAP(Ala105)およびp
CMV−LAP(Asp105)発現ベクターの量を増
加させながら、HepG2細胞に同時トランスフェクト
した。48時間後に細胞を採取し、CAT活性を求め
た。結果は3回の実験の平均である(図5)。
【0062】第二の実験では、HepG2細胞を3μg
のD−CATレポーター並びに、表示の通りpCMV−
LAP(wt)、pCMV−LAP(Ala105)、
pCDM8およびpCDM8−PKCα発現ベクター
(各々1μg)で同時トランスフェクトした。トランス
フェクション後20時間で表示の通り、血清枯渇細胞を
TPA(100ng/ml)で刺激した。トランスフェ
クション後40時間して細胞を採取し、CAT発現を測
定した。結果は3回の実験の平均である(図6)。
【0063】次に、各々1μgのpCDM8−0(レー
ン1)、pCMV−LAP(wt)+pCDM8−PK
Cα(レーン2と3)、pCMV−LAP(Ala10
5)+pCDM8−0(レーン4)、pCMV−LAP
(Asp105)+pCDM8−0(レーン5)でHe
pG2細胞を同時トランスフェクトした。細胞の核抽出
物をトランスフェクション後20時間して調製した。レ
ーン3の細胞は採取前20分TPA(100ng/m
l)で刺激した。移動度シフトアッセーを、アルブミン
プロモーターのD部位(オリゴD)(Descombesら、上
掲書(1990))に広がる32P標識オリゴヌクレオチドを
15pg用いて実施した。NF-IL6/LAPおよび非特異的
(NS)タンパク質DNA複合体の移動位置は、遊離
(F)プローブと同様に表示した。図は、プローブの約
10%が特異的にNF-IL6/LAPによって移動した代表的な
ゲル移動アッセーを示す(図7)。
【0064】別の実験では、一定量(15pg)の32
P標識オリゴDを、上記と同じ条件下で核抽出物の量を
増加(μg)させながらインキュベートした。特異的に
結合したプローブの分画をアンビス(Ambis)ゲルスキャ
ナーで定量し、核抽出物量の関数として作図した。50
%占有に必要な核抽出物量を表示した(図8〜図11)。
【0065】細胞を2回氷冷リン酸緩衝食塩水で洗浄し
た後、ディグナムら(Dignamら、Nucleic Acids Res.,
11:1475(1983))にしたがい僅かに改造して核抽出物を調
製した。前述のように(Descombesら、上掲書(199
0))、アルブミンプロモーターのD部位に広がる32P
標識オリゴヌクレオチドとともに核抽出物をインキュベ
ートした。遊離DNAおよびDNA−タンパク質複合体
を6%ポリアクリルアミドゲル上で解析した。
【0066】Ser105のリン酸化に続くNF-IL6/LAP
の増加した活性は、増加したDNA結合親和性によるか
否かを調べるために、移動度シフトアッセーを実施し
た。種々のNF-IL6/LAPベクターでトランスフェクトした
細胞の核抽出物を増量しながら、NF-IL6/LAP認識部位に
広がる32P標識オリゴヌクレオチドとともにインキュ
ベートした。特異的結合は、wtと変異体NF-IL6/LAP発
現ベクターの両方の一時的なトランスフェクションによ
って顕著に増加した(図7)。TPA処理およびSer
105のAlaまたはAspによる置換は、DNA結合
活性に全く影響を与えなかった(図8〜11)。結合の特
異性は競合実験および抗体スーパーシフト実験によって
明らかにされた。
【0067】両方のタンパク質(wtおよびAla10
5)は発現され(図7)、極めて同じようなレベルで核
に移動したが、wtタンパク質は、Ala105変異体
よりも効果的な、NF-IL6/LAP認識配列に連結させたCA
Tレポーターのアクチベーターであった(S. Akiraら、
EMBO J. 9:1897(1990); Descombesら、上掲書(1990);
C.R. Mullerら、上掲書(1990))。NF-IL6/LAP発現ベク
ターとのPKCα発現ベクター同時トランスフェクショ
ンおよびTPA処理は、トランス型活性化を5倍増加さ
せ、一方、NF-IL6/LAP(Ala105)によるトランス
型活性化は影響されなかった(図6)。トランス型活性
化に対するSer105リン酸化効果は負に帯電した残
基の導入によって模倣することができる;変異体NF-IL6
/LAP(Asp105)は、wtタンパク質よりアクチベ
ーターとして数倍強力であった(図5)。これらの結果
は、Ser105のリン酸化はNF-IL6/LAPの活性化機能
に影響を与えることを強く示唆している。 〔実施例4〕Ser105のリン酸化はNF-IL6/LAPの活性化機能を強
化する Ser105のリン酸化がNF-IL6/LAPの活性化機能を強
化することを確認するために、wtおよび変異体(すな
わち、N−末端活性化ドメインのAla105、Asp
105(Descombesら、上掲書(1990))の両方をGAL
4DNA結合ドメイン(Sadowskiら、Nucleic Acids Re
s., 17:7639(1989))に融合させた(図12〜14)。
【0068】GAL4融合タンパク質を構築するため
に、pET8c−LAP(Ser105)およびpET
8c−LAP(Ala105)(Descombesら、上掲書
(1990))のNcoI−EcoRIフラグメントを、pS
G424ベクター(Sadowskiら、上掲書(1989))の改造
体由来のGAL4DNA結合ドメイン(aa1−14
7)のコード配列を含むBspHI−EcoRIフラグ
メントによって置き換えた。キメラLAP−GAL4の
オープンな読み枠をBglII/EcoRI消化により
切り出し、GAL4DNA結合ドメインを除去したpS
G424ベクターでクローニングした。
【0069】NF-IL6/LAP(aa21−144)のトラン
ス型活性化ドメイン(黒枠)を酵母GAL4DNA結合
ドメイン(aa1−147)のN−末端(斜線枠)を連
結し、キメラアクチベーターLAP/GAL4を作製し
た(図12)。
【0070】次にGAL4応答レポーター5xGAL4
−LUC(3μg)をpSV40−LAP(Ser10
5)/GAL4、pSV40−LAP(Ala105)
/GAL4またはpSV40−LAP(Asp105)
/GAL4発現ベクター(Descombesら、上掲書(199
0))の量を増しながら同時トランスフェクトした。40
時間後、細胞を採取し、ルシフェラーゼ活性を求めた。
pSV40−LAP(Ser105)/GAL4ととも
に5xGAL4−LUCレポーターを同時トランスフェ
クトして得られた最大ルシフェラーゼ活性を100%と
考えた。結果は2回の実験の平均である(図13)。
【0071】表示のように、SV40−LAP(Ser
105)/GAL4(10ng)、pSV40−LAP
(Ala105)/GAL4(10ng)、pCDM8
−PKCα(100ng)とともに、5xGAL4−L
UCレポーター(3μg)を同時トランスフェクトし
た。トランスフェクション後、細胞を20時間血清枯渇
させ、続いて20時間TPA(100ng/ml)で処
理するか、または未処理のままにした。細胞抽出物を調
製し、ルシフェラーゼ活性を求めた。結果は別個の3回
の実験の平均を示す(図14)。
【0072】GAL4応答レポーター(5xGAL4−
LUC)を活性化させるLAP(Ser105)/GA
Lの能力は、LAP(Ala105)/GAL4のそれ
と極めて類似しており、両者とも、GAL4DNA結合
ドメイン単独より50−200倍活性が高かった(図1
3)。対照的に、LAP(Asp105)/GAL4は
LAP(Ser105)/GAL4より3倍活性が高か
った。LAP(Ser105)/GAL4の活性はPK
Cαの活性化によって4倍刺激され、一方、LAP(A
la105)/GAL4の活性は微かに増加しただけで
あった(図14)。これらの結果は、NF-IL6/LAPの活性化
の潜在能力はSer105のリン酸化、その部位への負
電荷の導入によって模倣される作用によって直接強化さ
れることを示している。
【0073】Ser105は精製PKCによってインビ
トロでリン酸化されないので、この残基のリン酸化に反
応するタンパク質キナーゼはPKC自体であることはな
いであろう。さらに、専ら核に存在する(G. Jamesら、
J. Cell Biol., 116:863(1992))PKCαの構造的に活
性化された誘導体は、NF-IL6/LAP活性またはリン酸化を
刺激しない。しかしながら、この誘導体は、他の核タン
パク質、例えばミオジェニック(L. Liら、Cell, 71:11
81(1992) のリン酸化および活性化に影響を与えること
ができる。PKCの活性化は、Ser105におけるNF
-IL6/LAPのリン酸化に対して直接反応するものを含む下
流側のタンパク質キナーゼの活性化をもたらす可能性が
最も高い。本発明では、PKC活性化は、炎症仲介物に
よって誘発される可能性があるシグナリング応答の一部
分を模倣するために役立つ。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、NF-IL6/L
APの活性を調整する化合物を同定する方法を提供する。
前述の実施例の記載は、本発明の範囲を詳述することを
目的とし、制限するためのものではない。実際、当業者
には、本明細書に記載されたものを基礎としてさらに別
の具体例を不適切な実験を行うことなく容易に考案する
ことができるであろう。
【0075】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Michael Karin, Christian Trautwein <120> 転写因子、NF−IL6/LAPの調節 <130> 5555-247 <140> PCT/US94/08194 <141> 1994-07-20 <150> US 08/096,177 <151> 1993-07-20 <160> 2 <210> 1 <211> 153 <212> DNA <220> <221> CDS <222> (1) ... (153) <223> NF-IL6/LAP peptide gene <400> 1 gcg gac ttc gcc gcg ccc gcg ccc gcg cac cac gac ttc ctt tcc gac 48 Ala Asp Phe Ala Ala Pro Ala Pro Ala His His Asp Phe Leu Ser Asp 5 10 15 ctc ttc gcc gac gac tac ggc gcc aag ccc acc aag aag ccg tcc gac 96 Leu Phe Ala Asp Asp Tyr Gly Ala Lys Pro Thr Lys Lys Pro Ser Asp 20 25 20 tac ggt tac gtg agc ctc ggc cgc gcg ggg gcc aag gcc gca ccg ccc 144 Tyr Gly Tyr Val Ser Leu Gly Arg Ala Gly Ala Lys Ala Ala Pro Pro 35 40 45 gcc tgc ttc 153 Ala Cys Phe 50 <210> 2 <211> 51 <212> PRT <220> <221> CDS <222> (1) ... (153) <223> NF-IL6/LAP peptide <400> 2 Ala Asp Phe Ala Ala Pro Ala Pro Ala His His Asp Phe Leu Ser Asp 1 5 10 15 Leu Phe Ala Asp Asp Tyr Gly Ala Lys Pro Thr Lys Lys Pro Ser Asp 20 25 30 Tyr Gly Tyr Val Ser Leu Gly Arg Ala Gly Ala Lys Ala Ala Pro Pro 35 40 45 Ala Cys Phe 50
【図面の簡単な説明】 図1〜3は、PKC経路の活性化が、NF-IL6/LAPの部位
特異的リン酸化を誘発することを示す。
【図1】CMV−LAPをトランスフェクトし、さらに
pUC19、pCDM8−0またはpCDM−PKCα
のいずれかでトランスフェクトしてTPAで処理し、3
2P−NF-IL6/LAPで標識したHepG2細胞の免疫沈降
を示す。
【図2】TPAで刺激したHepG2細胞のウェスタン
ブロッティングを示す。
【図3】インビボ標識NF-IL6/LAPのトリプシン消化リン
ペプチドマップを示す。
【図4】pCMV−LAP(wt)またはpCMV−L
AP(Ala105)でトランスフェクトし、TPAで
処理したHepG2細胞の二次元電気泳動分析を示す。
図5〜11はCATアッセーの結果で、セリン105の
リン酸化はその活性化機能を強化することを示す。
【図5】CATレポータープラスミド並びにpCMV−
LAP(wt)、pCMV−LAP(Ala105)お
よびpCMV−LAP(Asp)プラスミドを同時トラ
ンスフェクトしたHepG2細胞のCAT活性を示す。
【図6】CATレポータープラスミド並びにpCMV−
LAP(wt)、pCMV−LAP(Ala105)、
pCDM8およびpCDM8−PKCαで同時トランス
フェクトし、さらに血清枯渇させTPAで刺激したHe
pG2細胞のCAT活性を示す。
【図7】pCDM8−0、pCMV−LAP(wt)+
pCDM8−PKCα、pCMV−LAP(Ala10
5)+pCDM8−0およびpCMV−LAP(Asp
105)+pCDM8−0で同時トランスフェクトした
HepG2細胞の移動度シフトアッセーを示す。図8〜
11は、同時トランスフェクトに用いるpCMV−LA
Pとして
【図8】pCMV−LAPのみ
【図9】CMV−LAP + TPA処理
【図10】pCMV−LAP(Ala105位置換)
【図11】pCMV−LAP(Asp105位置換)を用
いたHepG2細胞の、一定量(15pg)の32P標
識オリゴDプローブを50%占有するために必要な核抽
出物を示す。
【図12】キメラ活性化因子LAP/GAL4を作製する
ために、酵母GAL4DNA−結合ドメイン(aa1−
147)のN−末端に連結させたNF-IL6/LAP(aa21
−144)のトランス型活性化ドメインの模式図を示
す。
【図13】GAL4応答性レポーター5xGAL4−LU
CおよびpSV40−LAP(Ser105)/GAL
4、pSV40−LAP(ALA105)/GAL4ま
たはpSV40−LAP(Asp105)/GAL4発
現ベクターでトランスフェクトした細胞のルシフェラー
ゼ活性を示す。
【図14】図13と同じであるが、プラスミドpCDM8−
PKCαもまたトランスフェクトした。
【図15】NF-IL6/LAPのヌクレオチド配列および推定アミ
ノ酸配列を示す。アミノ酸配列75〜125には下線を
引いた。
フロントページの続き (72)発明者 トラウトヴァイン、クリスティアン ドイツ連邦共和国 デー−30171 ハノ ーヴァー フライリグラト ストリート 13 (56)参考文献 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,89(1992)p.1473−1476 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,90(1993)p.2207−2211 Genes Dev.,4(1990) p.1541−1551 J.Biol.Chem.,267 (1992)p.19396−19403 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/15 A61K 38/00 C12N 15/09 ZNA G01N 33/50 BIOSIS(DIALOG) MEDLINE(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】核因子−インターロイキン6/リンホカイ
    ン活性化タンパ ク質(NF-IL6/LAP)のアミノ酸残基1
    05のリン酸化状態に影響を与えることによりNF-IL6/L
    APの活性を調整する化合物を同定する方法であって、 (a)該化合物およびNF-IL6/LAPを含む成分を、該成分
    が相互に作用するために十分な条件下でインキュベート
    し;さらに (b)アミノ酸残基105のリン酸化状態の差異によっ
    てNF-IL6/LAPのリン酸化状態に対する該化合物の作用が
    示されることに鑑み、該残基のリン酸化状態をインキュ
    ベートの前後で比較するという工程を有する、上記方
    法。
  2. 【請求項2】 前記作用がNF-IL6/LAP活性の抑制であ
    る、請求の範囲第1項の方法。
  3. 【請求項3】 前記作用がNF-IL6/LAP活性の刺激であ
    る、請求の範囲第1項の方法。
  4. 【請求項4】 NF-IL6/LAPのアミノ酸残基105のリン
    酸化状態に影響を与えることによりNF-IL6/LAPの活性を
    調整する化合物を同定する方法であって、 (a)該化合物およびNF-IL6/LAPを含む成分を、PKC経路
    活性化条件下に置き、該成分が相互に作用するために十
    分な条件下でインキュベートし;さらに (b)アミノ酸残基105のリン酸化状態の差異によっ
    てNF-IL6/LAPのリン酸化状態に対する該化合物の作用が
    示されることに鑑み、該残基のリン酸化状態をインキュ
    ベートの前後で比較するという工程を有する、上記方
    法。
  5. 【請求項5】 前記作用がNF-IL6/LAP活性の抑制であ
    る、請求の範囲第4項の方法。
  6. 【請求項6】 前記作用がNF-IL6/LAP活性の刺激であ
    る、請求の範囲第4項の方法。
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