JP3159849B2 - ポリカーボネートの製造法 - Google Patents

ポリカーボネートの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エステル交換触媒の存
在下で2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮
合させ、着色の無い高分子量のポリカーボネートを製造
する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】高分子量
ポリカーボネートは、幅広い用途、特に射出成形用又は
窓ガラスの代わりのガラスシートとしての用途を有する
汎用エンジニアリングサーモプラスチックである。ポリ
カーボネートは、一般的に耐熱性、透明性、耐衝撃性に
優れていると言われている。
【0003】ポリカーボネートの製造法は、2価ヒドロ
キシ化合物とホスゲンを界面重縮合させて反応させるホ
スゲン法、あるいは2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエス
テルを溶融状態で反応させるエステル交換法などが一般
的に知られている。
【0004】エステル交換法における代表的な例として
は、2価フェノールと炭酸ジエステルにエステル交換触
媒を加えて、加熱減圧下、フェノールを留出させながら
プレポリマーを合成し、最終的に高真空下、 290℃以上
に加熱してフェノールを留出させ高分子量のポリカーボ
ネートを得る(米国特許第 4345062号)方法が挙げられ
る。
【0005】エステル交換法では、効率よく反応を進行
させるために、反応初期段階では通常の攪拌翼を有する
槽型反応器にてプレポリマーを合成し、引き続いてベン
ト付き横型押出器のような装置において重縮合反応を行
ない、高分子量のポリカーボネートを製造することが知
られている。
【0006】しかしながら、高分子量のポリカーボネー
トは他のエンジニアリングプラスチックとは異なって溶
融粘度が極めて大きいため、反応条件として 280℃以上
の高温を必要とし、また沸点の高い1価ヒドロキシ化合
物を留去させるために高真空(1〜10-2torr)を必要と
するため、設備の面からも工業化は難しく、さらに生成
するポリカーボネートの色相、耐熱性、成形滞留安定
性、耐水性及び耐候性などに好ましくない影響を及ぼす
という問題点があった。
【0007】樹脂の着色ということに関しては、反応器
材質の影響が明らかになっており、反応液と接触する材
質がステンレス系のものであると、樹脂に着色が見られ
ることが、特開昭55−142025号などの特許において開示
されている。反応器材質の影響をなくすために、特開平
2−153923号には、材質と反応液との接液部の全表面積
の少なくとも90%以上を占める割合で、ガラス、ニッケ
ル、タンタル、クロム、テフロンのうち1種または2種
以上から構成されていることが好ましいと記載されてい
る。また特開平4−72327 号には、接液部の材質が、銅
及び/又はニッケルの含有量が85重量%以上である金属
又は合金からなることが好ましいと記載されている。ま
た、本発明者らはFeの含有量が20重量%以下の材質の有
用性を特開平4−88017 号において開示している。しか
しながら、これらの方法においては、樹脂の着色を無く
するという点においては効果が見られるものの、実質的
に高価な材質を用いなければならなかったり、また複雑
な形状の装置を使用する際には、特殊材質を使用すると
加工性や入手の容易さ等の点において困難な場合が多
く、装置価格が上がったりするため、結局のところそれ
らがそのまま製品のコストアップにつながってしまうと
いう問題点があった。このような理由から、よりコスト
のかからないポリカーボネートの製造法の出現が強く望
まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金属材質
の関与した樹脂の着色原因を調べた結果、金属−重合触
媒−1価ヒドロキシ化合物の3種混合系で著しい着色が
発現されることをつきとめた。ここで、1価ヒドロキシ
化合物とは、2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと
をエステル交換反応させる際に副生するものである。そ
こで、これら3種の組合せにおいて、いくつかの金属を
用いて実験を行った結果、鉄を用いた場合が最も着色が
著しかった。しかしながら、これら3種の組合せのう
ち、1種でも欠けると着色度としては顕著なものにはな
りにくいことが判明し、このような知見をもとに、重合
反応の後期において鉄含量の多い材質が使用出来ること
を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち本発明は、2価ヒドロキシ化合物
と炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒の存在下で溶
融重縮合させてポリカーボネートを製造するに際して、
反応混合物と接触する材質が、第1重縮合反応工程では
Fe含量20重量%以下であり、かつ第2重縮合反応工程で
はFe含量20重量%超であることを特徴とするポリカーボ
ネートの製造法に関する。
【0010】つまり、反応混合物中に多量の1価ヒドロ
キシ化合物が存在している重合初期においては、接液部
の材質としては鉄含量の少ないものを用いる必要がある
が、重合の進行に伴い1価ヒドロキシ化合物を系外へ減
圧留去させるため、重合後期においては反応混合物中の
1価ヒドロキシ化合物の量は少なくなり、そのため鉄含
量の多い材質を用いても樹脂に着色が見られないわけで
ある。特に、重合後期は高粘度の樹脂を攪拌する必要が
あるため、一般に複雑な形状の反応器を用いるが、鉄含
量の多い材質が使用可能であるため、装置コスト、ひい
ては製品コストが安価にできうる。
【0011】次に、本発明に係わるポリカーボネートの
製造方法について詳細に説明する。まず、第1重縮合反
応工程とは2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと
を、エステル交換触媒の存在下で溶融重縮合させてポリ
カーボネートを製造するに際しての、重合の初期反応を
行う工程であり、最終的にこの工程で得られるポリマー
の極限粘度〔η〕は 0.1〜0.4dl/g である。ここで、極
限粘度〔η〕はポリマーの 0.5%塩化メチレン溶液を、
20℃にてウベローデ粘度計を用いて測定したものであ
る。また、この工程で得られるポリマー中の一価フェノ
ールの濃度は、10ppm 以上であっても差し支えない。
【0012】また、第2重縮合反応工程とは、第1重縮
合反応工程のあとに引きつづきエステル交換反応を行う
重合の後期の反応を行う工程であり、最終的にこの工程
で得られるポリマーの極限粘度〔η〕は 0.3〜1.0dl/g
である。また、第2重縮合反応工程で得られるポリマー
中の一価フェノールの濃度は、10,000ppm 以下である必
要がある。この濃度は好ましくは1,000ppm以下であるの
が良く、さらに好ましくは100ppm以下であるのが良い。
一価フェノールがポリマー中に10,000ppm 以上存在して
いると、ポリマーに著しい着色が見られるようになる。
【0013】第1重縮合反応工程および第2重縮合反応
工程は、それぞれ複数個の反応器および配管などから構
成されていてもよい。
【0014】本発明では、第1重縮合反応工程におい
て、エステル交換反応を行う反応装置における少なくと
も反応混合物が実質的に接触する部分の材質が、Fe含量
20重量%以下、好ましくはFe含量10重量%以下である必
要がある。このような材質の具体例としては、ハステロ
イB(ニッケル64重量%、クロム1重量%、モリブデン
28重量%、鉄5重量%)、ハステロイC-276(ニッケル
59重量%、クロム15.5重量%、モリブデン16重量%、鉄
5.5 重量%)、ハステロイG-30 (ニッケル43重量%、
モリブデン7重量%、鉄20重量%、クロム22重量%、ア
ルミニウム12重量%)、インコネル600 (ニッケル76重
量%、クロム15.5重量%、鉄8重量%)、インコネル65
7 (ニッケル48重量%、クロム50重量%)、キュプロニ
ッケルC-7150 (ニッケル30重量%、銅70重量%)、ニ
ッケル200 (ニッケル99.5重量%、炭素0.08重量%)、
モネル400 (ニッケル66.5重量%、銅31.5重量%、鉄2
重量%)等の金属材質や、ガラス、テフロン等を挙げる
ことができる。このような鉄の含有量が20%以下の組成
の材質を形成する部分は、全体をこれらの材質で一体形
成してもよいが、メッキや溶射、クラッドなどによりそ
の表面にこれらの材質の層を形成しても同様な効果を得
ることができる。またこれらの材質は、鉄の含有量が20
%以下の材質からいくつかを選択して組み合せて使用す
ることも可能である。
【0015】また本発明では、第2重縮合反応工程にお
いて、エステル交換反応を行う反応装置における少なく
とも反応混合物が実質的に接触する部分の材質は、Fe含
量20%超、更にはFe含量30%以上のものでよい。このよ
うな材質の具体例としては、SUS-304 (ニッケル8重量
%、鉄74重量%、クロム18重量%)、SUS-316 (ニッケ
ル12重量%、モリブデン2重量%、鉄68重量%、クロム
18重量%)、SS(鉄 100重量%)、インコロイ825 (ニ
ッケル42重量%、モリブデン 2.2重量%、鉄30重量%、
クロム21.5重量%、銅 2.2重量%)、インコロイ800
(ニッケル32.5重量%、鉄46.5重量%、クロム21重量
%)、カーペンター20(ニッケル35重量%、モリブデン
2.5重量%、鉄37重量%、クロム20重量%、銅 3.5重量
%)などが挙げられる。また、これらの材質は第1重縮
合反応工程と同様に一体形成してもよいが、メッキや溶
射、クラッドなどを施しても良い。
【0016】次に、溶融エステル交換反応によるポリカ
ーボネートの製造工程について、1例を図に示してこれ
を参照しながら簡単に説明する。図1は、溶融エステル
交換反応によるポリカーボネートの製造工程の1例を示
すもので、第1反応器(1) 及び第2反応器(2) を用いた
例である。それぞれの反応器は攪拌翼(3) 、加熱ジャケ
ット(4) 、真空配管(5) 、ギアポンプ(6) 、凝縮器(7)
、窒素導入管(8) を具備している。真空配管は、反応
の進行に伴い副生する1価ヒドロキシ化合物を反応器か
ら除去するものであり、凝縮器にてこれら1価ヒドロキ
シ化合物を凝縮させ回収分離する。真空配管の材質とし
ては、SUS-316 、SUS-316L、SUS-304 、SUS-304Lにカニ
ゼン(Kanigen) 鍍金 (無電解ニッケル鍍金) を施すこと
が好ましい。ギアポンプは生成した樹脂を送るための装
置である。
【0017】第1反応器は、一般的に槽型のものが用い
られる。また、第2反応器は高粘度の樹脂を扱うため、
ベント付き横型押出器のような装置を使用するのが好ま
しい。一般的に、第1重縮合反応工程はバッチ方式であ
るのに対して、第2重縮合反応工程はポリマーの製造能
力を増すために連続方式である。しかし両反応器ともバ
ッチ式、連続式のいずれの方式でも行うことができる。
第1反応器と第2反応器の間は配管で接続されていても
く、配管の材質としては、SUS-316 、SUS-316L、SUS-
304 、SUS-304Lにカニゼン(Kanigen) 鍍金 (無電解ニッ
ケル鍍金) を施すことが好ましい。また、第1反応器か
ら一旦樹脂を取り出して固化させ、これを再び溶融して
第2反応器へ送り込んでもよい。後者の場合は、樹脂溶
融装置と第2反応器との間に脱気装置を組み込んでいて
もよい。ここでいう脱気装置とは薄膜蒸発器のようなも
のであってもよいし、ベント付きの押出器タイプのもの
であってもよい。脱気装置は常圧で使用してもよいが、
好ましくは減圧状態で使用するのがよい。
【0018】次に、本発明における重合条件について説
明する。まず、2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル
を第1反応器に送り込み、これに触媒を加えてエステル
交換反応を進行させる。第1重縮合反応工程における反
応温度は、60〜約300 ℃までの範囲である。好ましくは
130〜280 ℃の範囲である。 130℃未満であると反応速
度が遅くなり、 280℃を越えると副反応が起こりやすく
なる。また、反応時の反応槽内の圧力は、常圧から 0.1
torrの範囲である。この圧力が高すぎると、副生する1
価ヒドロキシ化合物を効率よく除去することができず、
また逆に圧力が低すぎると、モノマーである炭酸ジエス
テルもしくは2価ヒドロキシ化合物が留出してしまい、
結果的に反応性末端のモル比が変化するために、高分子
量のポリマーを得ることが困難となってしまう。
【0019】次に、第2重縮合反応工程について説明す
る。まず、第1反応器で得られた樹脂を、溶融状態でギ
アポンプを用いて第2反応器へ送り込む。第2重縮合反
応工程における反応温度は 200〜約 310℃までの範囲で
ある。好ましくは 220〜300℃の範囲である。 220℃未
満であると反応速度が遅くなる上に、樹脂の溶融粘度が
高くなるため、副生する1価ヒドロキシ化合物を効率的
に除去することが困難となってしまう。 300℃より高い
と副反応が起こり易くなる。また、反応時の反応器内の
圧力は、10torr以下である。好ましくは1torr以下であ
る。さらに好ましくは、0.5torr 以下である。この圧力
が高すぎると、副生する1価ヒドロキシ化合物を効率よ
く除去することが出来ない。
【0020】本発明の方法において、原料の一つとして
用いられる2価ヒドロキシ化合物の代表例としては、2,
2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2 −
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタ
ン、2,2 −ビス−(4−ヒドロキシフェニル)オクタ
ン、4,4'−ジヒドロキシ−2,2,2 −トリフェニルエタ
ン、2,2 −ビス−(3,5 −ジブロモ−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパン、2,2 −ビス−(4−ヒドロキシ−3
−メチルフェニル)プロパン、2,2 −ビス−(4−ヒド
ロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2 −
ビス(4−ヒドロキシ−3−sec.ブチルフェニル)プロ
パン、2,2 −ビス(4−ヒドロキシ−3−tert.ブチル
フェニル)プロパン、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフ
ェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,1'−ビス−
(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベン
ゼン、1,1'−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロ
ヘキサンなどが挙げられる。
【0021】これらのうち、特に2,2 −ビス−(4−ヒ
ドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0022】さらに、これらのなかから選択された2種
又は3種以上の2価ヒドロキシ化合物を組み合わせた共
重合ポリカーボネートを製造することも可能である。
【0023】また、炭酸ジエステルの代表例としては、
ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビ
ス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカー
ボネート、ジナフチルカーボネート、ジエチルカーボネ
ート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、
ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これ
らのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】本発明でポリカーボネートを製造するに際
して上記のような炭酸ジエステルは、反応系中に存在す
る2価ヒドロキシ化合物と当モル必要である。一般に高
分子量のポリカーボネートを生成するためには、カーボ
ネート化合物1モルと2価ヒドロキシ化合物1モルが反
応しなければならない。ジフェニルカーボネートを用い
た場合、フェノール2モルが前記反応によって生じる。
これら2モルのフェノールは反応系外に留去される。
【0025】しかしながら、生成した1価ヒドロキシ化
合物を反応を進めるために系外へ留去させる際、同時に
モノマーである炭酸ジエステルも留去してしまう場合が
あるために、用いられる炭酸ジエステルは2価フェノー
ル1モルに対して、1.01〜1.5 モル、好ましくは、 1.0
15〜1.20モルの量で用いられるのが望ましい。
【0026】本発明では、上記のような2価ヒドロキシ
化合物と炭酸ジエステルとを用いてエステル交換触媒の
存在下でポリカーボネートを製造するに際して、反応系
に末端封止剤として炭酸ジエステル化合物、エステル化
合物、フェノール化合物等を添加することも可能であ
る。これらの末端封止剤の使用量は、2価ヒドロキシ化
合物に対して0.05〜10モル%、好ましくは1〜5モル%
であるのがよい。
【0027】本発明に使用しうるエステル交換触媒とし
ては、電子供与性アミン化合物、アルカリ金属化合物及
びアルカリ土類金属化合物、ホウ酸塩等が挙げられる。
そして、Na、K 、Be、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Al、Cr、M
o、Fe、Co、Ni、Ag、Au、Sn、Sb、Pb、Pt、Pdなどの金
属及びアルコラート、酸化物、炭酸塩、酢酸塩、水素化
物等も使用できる。
【0028】電子供与性アミン化合物の代表例として
は、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジエチルアミノ
ピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−アミノピリジ
ン、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジ
ン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2
−メトキシイミダゾール、1−メチルイミダゾール、イ
ミダゾール、アミノキノリン、4−メチルイミダゾー
ル、ジアザビシクロオクタン(DABCO)などが挙げられ
る。
【0029】アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属
化合物の代表例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リ
チウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水
素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸
リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウ
ム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリ
酸リチウム、ステアリン酸カリウム、水素化ホウ素ナト
リウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウ
ム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸
カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化
マグネシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素カルシウ
ム、炭酸水素マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシ
ウム、炭酸マグネシウム、酢酸バリウム、酢酸カルシウ
ム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステア
リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙
げられる。
【0030】ホウ酸塩の代表例としては、二ホウ酸ナト
リウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六
ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸リ
チウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム、メタホ
ウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、
六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム、メタホウ酸アン
モニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウ
ム、八ホウ酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ
酸テトラメチルアンモニウム、ホウ酸アルミニウムカリ
ウム、ホウ酸カドミウム、ホウ酸銀、ホウ酸銅、ホウ酸
鉛、ホウ酸ニッケル、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マン
ガンなどが挙げられる。
【0031】これらのエステル交換触媒は、単独で用い
てもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。ま
た、複数を組み合わせて使用する場合は、それら触媒の
添加時期は、モノマー仕込み時に同時に添加してもよい
し、反応中段階的に添加してもよい。
【0032】エステル交換触媒の使用量は、反応系に存
在する2価フェノール1モルに対して10-8〜10-1モルを
必要とするが、好ましくは10-7〜10-2モルである。10-8
モル未満であると触媒作用が少なくポリカーボネートの
重合速度が遅くなり10-1モルを越えると生成するポリカ
ーボネート中に残存する率が高くなるのでポリカーボネ
ートの物性低下をまねきやすい。
【0033】また、反応混合物に添加するホウ酸もしく
はホウ酸エステルの代表例としては、ホウ酸、ホウ酸ト
リフェニル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホ
ウ酸ブチル、ホウ酸トリトリールなどが挙げられる。こ
れらのホウ酸もしくはホウ酸エステルは反応の初期に添
加していてもよいし、反応中または反応終了後に添加し
てもよい。これらのホウ酸もしくはホウ酸エステルは、
塩基性の重合触媒を中和し、ポリマーの熱安定性を増す
効果がある。これらのホウ酸もしくはホウ酸エステルの
使用量は、用いる触媒1モルに対して1×10-2〜1×10
3 モル必要である。1×10-2モル未満であると熱安定化
に効果がなく、1×103 モルを越えると重合度が上がら
なくなるので好ましくない。
【0034】
【実施例】以下に本発明を実施例について説明するが、
本発明はこれらの実施例によって限定されるものではな
い。
【0035】まず、実施例および比較例の中で記載した
極限粘度〔η〕、色相、ポリマー中の1価ヒドロキシ化
合物の濃度の測定および評価方法について示す。 極限粘度〔η〕:ポリマーの 0.5%塩化メチレン溶液
を、20℃にてウベローデ粘度計を用いて測定して評価し
た。 色相:UVスペクトロメトリーにより、ポリマーの10%
塩化メチレン溶液の380nmと580nm における吸光度の差
380 −A580 を測定して評価した。色相値としては、
1.0以下であれば好ましい。 ポリマー中の1価ヒドロキシ化合物の濃度 固定相としてシリコンOV−210 を用いてガスクロマト
グラフィー(島津製作所 GC−14A)で測定を行っ
た。
【0036】実施例1 2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4.57kg
(20モル)、ジフェニルカーボネート4.39kg(20.5モ
ル)と4−ジメチルアミノピリジン0.489g(0.004 モ
ル)を20リットルのハステロイC-276製(Fe含有量 5.5
重量%)の槽型反応器に入れ、窒素下 160℃で溶融させ
よく攪拌し徐々に減圧にしながら昇温して、生成するフ
ェノールを留去させながら、最終的に1torr、 260℃に
して反応を進行させプレポリマーを得た。プレポリマー
の極限粘度〔η〕は0.3dl/g 、色相値はA380 −A580
=0.06、プレポリマー中のフェノール濃度は350ppmであ
った。このプレポリマーを反応器の下部よりギヤポンプ
を経由して、 280℃、0.1torrにコントロールされたス
テンレス(SUS-316) 製(Fe含有量68重量%)の横型重縮
合反応槽に送りこみ、滞留時間50分にて連続的に反応を
行った。得られた樹脂は無色透明であった。ポリマーの
極限粘度〔η〕は0.5dl/g 、色相値はA380 −A580
0.09、ポリマー中のフェノール濃度は30ppm であった。
【0037】実施例2 2,2 −ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン22.8g
(0.1 モル)、ジフェニルカーボネート21.9g (0.1025
モル)と酢酸カリウム0.098mg (1×10-6モル) をイン
コネル 600製(Fe含有量8重量%)のフラスコにいれ窒
素下、 180℃で溶融させよく攪拌し徐々に減圧にしなが
ら昇温させ、最終的に1torr、 260℃にし、生成するフ
ェノールを留去させて、無色透明なプレポリマーを得
た。プレポリマーの極限粘度〔η〕は0.35dl/g、色相値
はA380 −A580 =0.07、プレポリマー中のフェノール
濃度は830ppmであった。このプレポリマーを次にインコ
ロイ800製(Fe含有量46.5重量%)のフラスコに入れ、
280℃、0.1torr にて反応を行った。得られた樹脂は無
色透明であった。ポリマーの極限粘度〔η〕は0.52dl/
g、色相値はA380 −A580 =0.08、ポリマー中のフェ
ノール濃度は20ppm であった。
【0038】実施例3 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を4−ジ
メチルアミノピリジン2.48mg(2×10-5モル)及び水酸
化ナトリウム0.02mg (5×10-7モル) に変更した以外
は、実施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂
は無色透明であった。その他の結果を表1に示す。
【0039】実施例4 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を四ホウ
酸ナトリウム0.145mg(7.2×10-7モル)に変更した以外
は、実施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂
は無色透明であった。その他の結果を表1に示す。
【0040】実施例5 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を水酸化
ナトリウム0.16mg (4×10-6モル)に変更した以外は、
実施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂は無
色透明であった。その他の結果を表1に示す。
【0041】実施例6 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を酢酸カ
リウム0.05mg(5×10-7モル)に変更し、反応初期に更
にホウ酸0.31mg (5×10-6モル)を添加した以外は、実
施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂は無色
透明であった。その他の結果を表1に示す。
【0042】比較例1 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を4−ジ
メチルアミノピリジン2.48mg(2×10-5モル)に変更し
た以外は、実施例2と同様な重合実験を行った。得られ
た樹脂は赤色であった。その他の結果を表1に示す。
【0043】比較例2 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を水酸化
ナトリウム0.16mg (4×10-6モル)に変更した以外は、
実施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂は赤
色であった。その他の結果を表1に示す。
【0044】比較例3 反応器の材質を表1に示すものに変更し、触媒を酢酸カ
リウム0.05mg(5×10-7モル)に変更した以外は、実施
例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂は赤色で
あった。その他の結果を表1に示す。
【0045】比較例4 反応器の材質を表2に示すものに変更し、触媒を水酸化
ナトリウム0.16mg (4×10-6モル)に変更した以外は、
実施例2と同様な重合実験を行った。得られた樹脂は赤
色であった。その他の結果を表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融エステル交換反応によるポリカーボネート
の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 第1反応器 2 第2反応器 3 攪拌翼 4 加熱ジャケット 5 真空配管 6 ギアポンプ 7 凝縮器 8 窒素導入管

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2価ヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル
    とを、エステル交換触媒の存在下で溶融重縮合させてポ
    リカーボネートを製造するに際して、反応混合物と接触
    する材質が、第1重縮合反応工程では鉄含量20重量%以
    下であり、かつ、第2重縮合反応工程では鉄含量20重量
    %超であることを特徴とするポリカーボネートの製造
    法。
  2. 【請求項2】 第1重縮合反応工程で得られるポリマー
    の極限粘度〔η〕が0.1〜0.4dl/g であり、かつ、第2
    重縮合反応工程で得られるポリマーの極限粘度〔η〕が
    0.3〜1.0dl/g であることを特徴とする請求項1記載の
    ポリカーボネートの製造法。
  3. 【請求項3】 第1重縮合反応工程で得られるポリマー
    中の一価ヒドロキシ化合物の濃度が 10ppm以上であり、
    かつ、第2重縮合反応工程で得られるポリマー中の一価
    ヒドロキシ化合物の濃度が 10,000ppm以下であることを
    特徴とする請求項1または2記載のポリカーボネートの
    製造法。
  4. 【請求項4】 エステル交換触媒として電子供与性アミ
    ン化合物及び/又は、アルカリ金属化合物又はアルカリ
    土類金属化合物を用いることを特徴とする請求項1〜3
    のいずれか1項に記載のポリカーボネートの製造法。
  5. 【請求項5】 エステル交換触媒としてホウ酸塩を用い
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載
    のポリカーボネートの製造法。
  6. 【請求項6】 反応混合物にホウ酸を添加することを特
    徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカー
    ボネートの製造法。
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