JP3159583B2 - 太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

太陽電池およびその製造方法

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    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は太陽電池およびその製
造方法に関する。より詳しくは、Si(シリコン)単結
晶を用いた太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】太陽電池は近未来のクリーンなエネルギ
ー源の重要な候補として目され、その開発と製造に拍車
がかかりつつある。特に、Si(シリコン)単結晶を基
板とする太陽電池は、高い変換効率が期待できること
と、経済性に優れていることから、様々なアプローチで
研究開発がなされている。
【0003】この種のSi単結晶を基板とする太陽電池
は、一般に図4に示すように、p型Si基板101の表
面(受光面)101aにP(リン)等の不純物を含むn
+層102、裏面101bにB(ボロン)等の不純物を
含むp+層103を備えている。n+層102,p+層1
03は、それぞれ熱拡散によって基板全面に形成されて
いる。上記n+層102の表面には櫛型のパターンを持
つn側電極104、p+層103側には基板の略全面に
わたるp側電極105が設けられ、さらに、n+層10
2の表面(受光面101a)には反射防止膜106が設
けられている。
【0004】この太陽電池の変換効率は、例えば地上用
のものでは、量産レベルで18%程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、太陽電池に
おいては変換効率が最も重要な特性であり、高効率化が
大きな課題となっている。上記18%という変換効率
は、将来の普及を考えた場合、まだまだ低いと考えられ
ている。
【0006】これまで、上記太陽電池を高効率化するた
めに多くの提案がなされている。そのひとつに、図5に
示すように、n側電極104の直下に局所的に、n+
102の深さよりも深いn++領域(高濃度n型不純物領
域)102′を設ける試みがある。なお、この例では、
n側電極104は、基板表面101aに形成された酸化
膜107の開口107aを通してn++領域102′に電
気的に接続されている。この構造の詳細なコンピュータ
・シミュレーションの結果、高効率化のためには、n+
層102は深さ0.1〜0.3μm、キャリア濃度0.
5〜1×1019/cm3、n++領域102′は深さ2μ
m、キャリア濃度5×1019/cm3程度が適切である
ことが報告されている(ザ・プロシーディング・オブ・
ツウェンティファースト・フォトボルテイック・スペシ
ャリスツ・コンファレンス(TheProceeding of 21s
t Photovoltaic Specialists Conference),P23
4)。
【0007】しかし、本発明者らのグループによる試作
実験の結果では、上記提案された構造による改善効果は
見出されず、試作した太陽電池の変換効率は図4に示し
た従来の太陽電池のそれと同等か、むしろ下回るもので
あった。本発明者らは、この実験結果について様々な解
析と考察を実施した結果、図5の構造には次の問題点が
あることを見出した。すなわち、n+層102の深さよ
りもn++領域102′の深さが深いため、p型基板1中
に空乏層109が均一には形成されず、n+層102直
下の部分109aとn++領域102′直下の部分109
cとの間に、空乏層幅が変化する部分109bが形成さ
れる。この空乏層109b内にはポテンシャル勾配が生
じており、p型基板101内で発生した電子の一部は、
直進せず、上記ポテンシャル勾配の影響を受けて、図中
に矢印で示すようにポテンシャル勾配に沿ってn++領域
102′に到達する。このため、図4に示した太陽電池
の場合に比べて空乏層内での滞在時間が長くなり、空乏
層を通過する間に電子が再結合する割合が増加する。こ
の結果、変換効率が改善されないのである。この傾向
は、結晶欠陥や残量不純物を多く含み、これらが再結合
中心として働くような低品質基板や、多結晶基板を用い
た場合、特に顕著になる。上記報告ではこのポテンシャ
ル勾配の影響が考慮されておらず、シミュレーションが
不適切だったと思われる。
【0008】そこで、この発明の目的は、空乏層のポテ
ンシャル勾配の影響を無くして変換効率を高めることが
できる太陽電池およびその製造方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に記載の太陽電池は、1×1015/cm3
乃至1×1016/cm3の範囲内のキャリア濃度を持つ
p型Si基板の一方の面に、その面から均一な深さで略
全面に形成されたn型不純物層と、上記n型不純物層の
表面に所定のパターンで設けられた電極を有する太陽電
池において、上記n型不純物層の表面側で上記電極直下
の領域に、上記n型不純物層の不純物濃度よりも高不純
物濃度に、かつ、上記n型不純物層の深さよりも浅いか
又は同一の深さを持つようイオン注入された高濃度n型
不純物領域を備えたことを特徴としている。
【0010】また、請求項2に記載の太陽電池の製造方
法は、1×1015/cm3乃至1×1016/cm3の範囲
内のキャリア濃度を持つp型Si基板の一方の面に、n
型不純物を拡散して、その面から均一な深さで略全面に
n型不純物層を形成する工程と、上記n型不純物層の表
面に、イオン注入法によりn型不純物を所定のパターン
で導入して、上記n型不純物層の深さの均一性を維持し
ながら、上記n型不純物層の不純物濃度よりも高不純物
濃度で、かつ、上記n型不純物層の深さよりも浅いか又
は同一の深さを持つ高濃度n型不純物領域を形成する工
程と、上記高濃度n型不純物領域の表面に、この領域の
パターンと略同一のパターンを持つ電極を形成する工程
を有することを特徴としている。
【0011】
【作用】請求項1の太陽電池では、n型不純物層の深さ
が均一で、かつ高濃度n型不純物領域の深さがn型不純
物層の深さよりも浅いか又は同一になっているので、図
2に例示するようにn型不純物層(n+層)2の基板側
接合面に生ずる空乏層9の幅が均一になるか、又は、図
3に例示するように空乏層9のうち電極4直下の部分9
bが他の部分9aに比して狭い状態になる。空乏層の幅
は接合面を挟む層の不純物濃度で決定されるからであ
る。この結果、基板1中で発生した電子はn型不純物層
(n+層)2へ向かって垂直に直進するようになる。こ
の結果、従来(図5のもの)に比して、空乏層内での電
子の滞在時間が短くなり、空乏層を通過する間に電子が
再結合する割合が減少する。したがって、変換効率が高
まる。
【0012】また、請求項2の太陽電池の製造方法で
は、上記高濃度n型不純物領域をイオン注入法により形
成しているので、注入不純物の加速電圧を調節すること
によって、上記n型不純物層の深さの均一性を維持しな
がら、上記高濃度n型不純物領域の深さを上記n型不純
物層の深さよりも浅いか又は同一の深さに容易に設定で
きる。したがって、高変換効率の太陽電池が容易に作製
される。
【0013】
【実施例】以下、この発明の太陽電池およびその製造方
法を実施例により詳細に説明する。
【0014】図1(h)は一実施例の太陽電池の断面を示
している。この太陽電池は、p型Si基板1の一方の面
(受光面)1aに、その面1aから均一な深さで全面に
P(リン)等の不純物を含むn+層2を備えている。ま
た、他方の面1bに、その面1bから均一な深さで全面
にB(ボロン)等の不純物を含むp+層3を備えてい
る。上記n+層2の表面には櫛型のパターンで、n+層2
の不純物濃度よりも高不純物濃度で、かつ、n+層2の
深さよりも浅い深さを持つn++領域2′が設けられてい
る。このn++領域2′の直上に略同一のパターンを持つ
n側電極4が設けられている。n側電極4は、n+層2
表面に形成された酸化膜7の開口を通して、上記n++
域2′に電気的に接続されている。さらに、酸化膜7の
表面には反射防止膜6が設けられている。一方、p+
3側には基板の略全面にわたるp側電極5が設けられて
いる。
【0015】この太陽電池は例えば次のようにして作製
される。
【0016】まず、図1(a)〜(b)に示すように、p型S
i基板1の裏面1bに、B(ボロン)やAl(アルミニ
ウム)等のp型不純物を拡散して、均一な深さを持つp
+層3を形成する。
【0017】次に、同図(c)に示すように、基板1の表
面1aにP(リン)等のn型不純物を拡散して、均一な
深さを持つn+層2を形成する。ここで、p+層3,n+
層2を形成するための拡散は、気相拡散によっても良い
し、各不純物材料を含むペーストの塗布焼成によっても
良い。
【0018】次に、同図(d)に示すように、p側電極を
形成すべき櫛型の領域に、イオンイン注入法により、p
(リン)等のn型不純物をドーピングする。これによ
り、n+層2の表面に、n+層2の不純物濃度よりも高不
純物濃度で、かつ、n+層2の深さよりも浅い深さを持
つn++領域2′を形成する。イオン注入法を採用してい
るので、注入不純物の加速電圧を調節することによっ
て、n+層2の深さの均一性を維持しながら、n++領域
2′の深さをn+層2の深さ以下に容易に設定すること
ができる。
【0019】次に、同図(e)に示すように、基板表面1
aに全面に酸化膜7を形成する。続いて、同図(f)に示
すように、フォトリソグラフィおよびエッチングを行っ
て、n++領域2′上にそれぞれ開口7aを形成する。な
お、n++領域2′を形成する前に酸化膜7およびその開
口7a形成し、この酸化膜7をマスクとしてイオン注入
を行って上記n++領域2′を形成しても良い。
【0020】次に、同図(g)に示すように、n++領域
2′の直上に、この領域2′と略同一の櫛型パターンを
持つn側電極4を形成する一方、p+層3側に全面にp
側電極5を形成する。ここで、n側電極4のパターン形
成は、フォトリソグラフィによっても良いし、スクリー
ン印刷によっても良い。
【0021】次に、同図(h)に示すように、酸化膜7の
表面に反射防止膜6を形成する。熱処理を施した後、破
線Dに沿って所定の寸法にダイシングする。これによ
り、太陽電池の作製を完了する。
【0022】このように、n+層2の深さを均一にし、
かつn++領域2′の深さをn+層2の深さよりも浅くし
ているので、図2に示したように、n+層2の基板側接
合面に生ずる空乏層9の幅が均一になり、この結果、基
板1中で発生した電子はn+層2へ向かって垂直に直進
するようになる。したがって、従来(図5のもの)に比
して、空乏層内での電子の滞在時間が短くなり、空乏層
を通過する間に電子が再結合する割合が減少する。した
がって、従来に比して変換効率を高めることができる。
この効果は、図3に示したように、n++領域2′の深さ
がn+層2の深さと同一になるまで保持される。
【0023】Si単結晶を基板とする太陽電池では、光
電流の大部分は基板1内から発生したものである。した
がって、この発明による変換効率改善の効果は大きいと
期待される。現在、本発明者らはこの発明の効果を数値
計算によるシミュレーションと実験で確認しようとして
いる。電子の空乏層9内における滞在時間が短くなるこ
とは、同品質の基板で空乏層幅が短くなったこととして
近似できる。空乏層9内での再結合に起因する飽和電流
値を、n++層2′のキャリア濃度約1×1020/c
3、p型Si基板1側キャリア濃度約1×1015/c
3〜約1×1016/cm3の条件で計算したところ、空
乏層幅を短くすることによって、飽和電流値を約1桁低
減できる可能性があることがわかった。本発明者らは、
これは開放電圧で数10mV、曲線因子で約0.03程
度の改善に相当するものと考えている。
【0024】なお、この実施例では、基板表面1aに酸
化膜7によるパッシベーションを施したが、当然なが
ら、酸化膜7を省略することもできる。この発明の効果
は、酸化膜7の有無によらず認められる。
【0025】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の太
陽電池では、n型不純物層の深さを均一にし、かつ高濃
度n型不純物領域の深さをn型不純物層の深さよりも浅
いか又は同一にしているので、n型不純物層の基板側接
合面に生ずる空乏層の幅を均一にできる。又は、空乏層
のうち電極直下の部分を他の部分に比して狭い状態にで
きる。この結果、基板中で発生した電子はn型不純物層
へ向かって垂直に直進するようになる。したがって、従
来(図5のもの)に比して、空乏層内での電子の滞在時
間を短くでき、空乏層を通過する間に電子が再結合する
割合を減少させることができる。したがって、変換効率
を高めることができる。
【0026】また、請求項2の太陽電池の製造方法で
は、上記高濃度n型不純物領域をイオン注入法により形
成しているので、注入不純物の加速電圧を調節すること
によって、上記n型不純物層の深さの均一性を維持しな
がら、上記高濃度n型不純物領域の深さを上記n型不純
物層の深さよりも浅いか又は同一の深さに容易に設定で
きる。したがって、高変換効率の太陽電池を容易に作製
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例の太陽電池の作製工程お
よび完成後の太陽電池の構造を示す図である。
【図2】 上記太陽電池の要部を示す断面図である。
【図3】 上記太陽電池の要部を示す断面図である。
【図4】 従来の一般的な太陽電池の構造を示す図であ
る。
【図5】 提案された従来の太陽電池の構造を示す図で
ある。
【符号の説明】
1 p型Si基板 2 n+層 2′ n++領域 3 p+層 4 n側電極 5 p側電極 6 反射防止膜 7 酸化膜

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1×1015/cm3乃至1×1016/c
    3の範囲内のキャリア濃度を持つp型Si基板の一方
    の面に、その面から均一な深さで略全面に形成されたn
    型不純物層と、上記n型不純物層の表面に所定のパター
    ンで設けられた電極を有する太陽電池において、 上記n型不純物層の表面側で上記電極直下の領域に、上
    記n型不純物層の不純物濃度よりも高不純物濃度に、か
    つ、上記n型不純物層の深さよりも浅いか又は同一の深
    さを持つようイオン注入された高濃度n型不純物領域を
    備えたことを特徴とする太陽電池。
  2. 【請求項2】 1×1015/cm3乃至1×1016/c
    3の範囲内のキャリア濃度を持つp型Si基板の一方
    の面に、n型不純物を拡散して、その面から均一な深さ
    で略全面にn型不純物層を形成する工程と、 上記n型不純物層の表面に、イオン注入法によりn型不
    純物を所定のパターンで導入して、上記n型不純物層の
    深さの均一性を維持しながら上記n型不純物層の不純物
    濃度よりも高不純物濃度で、かつ、上記n型不純物層の
    深さよりも浅いか又は同一の深さを持つ高濃度n型不純
    物領域を形成する工程と、 上記高濃度n型不純物領域の表面に、この領域のパター
    ンと略同一のパターンを持つ電極を形成する工程を有す
    ることを特徴とする太陽電池の製造方法。
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