JP3159276B2 - 新規なシルクライク木綿織物 - Google Patents

新規なシルクライク木綿織物

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JP3159276B2 JP06845193A JP6845193A JP3159276B2 JP 3159276 B2 JP3159276 B2 JP 3159276B2 JP 06845193 A JP06845193 A JP 06845193A JP 6845193 A JP6845193 A JP 6845193A JP 3159276 B2 JP3159276 B2 JP 3159276B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、なめらかでソフトであ
る新規なシルクライク木綿織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】繊維製品の品質は、以前の耐久性的性能
から人間の心を豊かにする感性的性能へと移行傾向が見
られ、木綿織物においても感性指向にともないシルクラ
イク調のものの開発・検討が行われてきた。この目的の
一手段として繊維長が長く、繊度の小さい高級原綿を使
った細番手の織物の開発が行われている。しかしなが
ら、従来の木綿原綿の繊維長、繊度は品種などで異な
り、繊維長の短いものでは細番手の紡績糸の製造は難し
いことはもちろんのこと、たとえ繊維長が長く繊度は小
さいと言われる海島綿においても、それを使った織物の
品質性能はまだ不十分で満足できるものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑みて行われたものであり、繊維長が長く繊度の
小さいものを使って作った、なめらかでソフトでかつド
レープ性のある新規なシルクライク木綿織物の提供を目
的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、有効繊維長が
1.8インチ以上、マイクロネヤ繊度が3.8(μg/
inch)以下の綿繊維を含む英式綿番手100番〜2
50番の紡績糸を用いたカバーファクタ20から50の
織物であって、KES−FB2試験機による曲げ剛性値
(B)のたて方向とよこ方向の平均値が0.015〜
0.040(gf・cm2 /cm)、KES−FB1試
験機によるせん断剛性値(G)のたて方向とよこ方向の
平均値が0.50〜1.00(gf/cm・degre
e)及びKES−FB4試験機の平均摩擦係数(MI
U)のたて方向とよこ方向の平均値が0.1〜0.3、
平均粗さ係数(SMD)のたて方向とよこ方向との平均
値が1.0〜2.0(μ)の範囲にあることを特徴とす
る新規なシルクライク木綿織物である。
【0005】以下、本発明を詳細に説明する。本発明
は、繊維長の長い原綿(たとえば、平均繊維長1.6イ
ンチ、平均マイクロネヤ繊度3.8(μg/inch)
の海島綿のごときもの)を引き揃えて繊維長の長い部分
を取り出して集め、この原綿を好ましくは30重量%以
上、さらに好ましくは35重量%以上を含む英式綿番手
が100番〜250番の紡績糸となすものであるが、こ
の場合の有効繊維長は1.8インチ以上、マイクロネヤ
繊度は3.8(μg/inch)以下、好ましくは有効
繊維長2.0インチ〜2.5インチ、マイクロネヤ繊度
は3.2〜3.5(μg/inch)である。ここに、
有効繊維長1.8インチ未満であると英式綿番手が10
0番〜250番のような高級細番手である紡績糸の製造
工程の操業性が著しく悪くなる。なお、前記の繊維長の
長い綿繊維100%を用いた紡績糸とすることが特に好
ましい。
【0006】またマイクロネヤ繊度が3.8をこえると
英式綿番手が100番〜250番のような高級細番手で
ある1本の紡績糸の中の糸本数が少なくなり紡績糸の製
造が難しくなる。より係数については、甘より、強ねん
糸など顧客要求によって設定が異なるがインチ方式で
3.0〜4.0が好ましい。
【0007】原綿を引き揃えて、その中から繊維長の長
い部分を採集する方法としては手で原綿を引き揃えて一
定繊維長のものを取り出す方法でもよいし、機械的には
カード機通過後コーマ工程で短い繊維長のものを除く方
法でもよい。また、紡績糸の製造方法は、綿糸の製造に
通常用いられているカード機、コーマ機、練条機、粗紡
機、精紡機等が揃っているものであれば何でもよい。
【0008】これらの単糸または双糸の高級細番手の紡
績糸をたて糸とよこ糸に用いて作成したカバーファクタ
が20〜50の織物で、好ましくは25〜40である。
20未満であると風合い的には“たらたら”“すけす
け”となりシルクライクでなくなる。他方、50を越え
ると“ごわごわ”“ぱりぱり”となりシルクライクとし
て好ましくない。
【0009】かつKES−FB2試験機による曲げ剛性
値のたて方向とよこ方向の平均値が0.015〜0.0
40(gf・cm2/cm)であり、好ましくは0.0
20〜0.035(gf・cm2/cm)である。0.
015未満であると風合い的には“たらたら”となりシ
ルクライクでなくなる。他方、0.040を越えると
“ごわごわ”となりシルクライクとして好ましくない。
【0010】また、KES−FB1試験機によるせん断
剛性値のたて方向とよこ方向の平均値が0.50〜1.
00(gf・degree)、好ましくは0.60〜
0.90(gf・degree)である。0.50未満
であると風合い的には“たらたら”となりシルクライク
でなくなる。他方、1.00を越えると“ごわごわ”と
なりドレープ性もなくなりシルクライクとして好ましく
ない。
【0011】KES−FB4試験機の平均摩擦係数のた
て方向とよこ方向の平均値は0.1〜0.3であり、
0.1未満であると風合い的には非常に“つるつる”と
なりシルクライクでなくなる。他方、0.3を越えると
“ざらざら”となりシルクライクとして好ましくない。
【0012】平均粗さ係数のたて方向とよこ方向の平均
値は1.0〜2.0(μ)の織物であり、1.0未満で
あると風合い的には非常に“すべすべ”となりシルクラ
イクでなくなる。他方、2.0を越えると“がさがさ”
となりシルクライクとして好ましくない。このような条
件を備えたなめらかでソフトでかつドレープ性のある新
規なシルクライク木綿織物を提供するものである。
【0013】製織工程並びに製織された織物(生機)の
仕上げ加工においても通常、木綿織物の製織並びに仕上
げ加工に用いられている装置であれば何でもよい。製織
された生機の糸の混み密度を表わすパラメータであるカ
バーファクタ(K)は数1で表される。
【0014】
【数1】
【0015】ここで、nは1循環中の組織点、Stは1
循環中のたて糸本数、Swは1循環中のよこ糸本数、a
はたて糸番手、bはよこ糸番手、Tはたて糸密度、wは
よこ糸密度である。
【0016】製織された織物(生機)の風合いについて
は、市販されているKES試験機を使用して風合いに関
連した織物の諸特性を計測して評価するものである。風
合いに関連した織物と特性としては種々あるが、やわら
かさ、ソフトさに関してはKES−FB2試験機により
曲げ剛性値及びKES−FB1試験機によるせん断剛性
値を各々試験機に設定された標準条件で測定し、そのた
て方向とよこ方向の値の平均値で表した。
【0017】曲げ剛性値は、図1に示すように測定サン
プル3をチャック1及びチャック2(チャック間距離;
1cm)に把持し、サンプル3の曲げ曲率0〜+2.5
〜0〜−2.5〜0となるようにチャック2を動かし、
図2に示すような曲げモーメント〜曲率曲線を得る。0
→+2.5の曲げ変形過程での曲げモーメント〜曲率曲
線における曲率0.5と1.5の曲げモーメントの増加
値(4)並びに0→−2.5の曲げ変形過程での曲げモ
ーメント〜曲率曲線における曲率−0.5と1.5間の
曲げモーメントの増加値(5)の絶対値の平均値で表わ
す。
【0018】せん断剛性値は、図3に示すように測定サ
ンプル8をチャック6及びチャック7(チャック間距
離;5cm)に把持し、サンプルのせん断角度0〜+8
〜0〜−8〜0となるようにチャック7を動かし、図4
に示すようにせん断力〜せん断角度曲線を得る。0→+
8せん断変形過程でのせん断力〜せん断角度曲線におけ
るせん断角度+0.5と5.0間のせん断力の増加値9
並びに0→−8のせん断変形過程でのせん断力〜せん断
曲線におけるせん断角度−0.5と−5.0間のせん断
力の増加値10の絶対値の平均値で表わす。
【0019】また、なめらかさについては、KES−F
B4試験機による表面摩擦係数及び表面粗さ係数を各試
験機に設定された標準条件で測定し、そのたて方向とよ
こ方向の値の平均値で表わした。
【0020】表面摩擦係数は、図5に示すように測定サ
ンプル14の一端をチャック11及びチャック12に把
持する。チャック11は回転可能で回転によりサンプル
が動くようになっている。サンプルの上に摩擦子15を
置いてサンプルを動かし、摩擦子にかかる摩擦力を力計
16で測定し、図6に示すような摩擦力〜変位の図形を
得る。この図形より得られる平均摩擦力18を摩擦子の
重量で割り算して表面摩擦係数を求める。
【0021】表面粗さ係数は、図7に示すように図5と
同様に測定サンプルの一端をチャック11及びチャック
12に把持し、その上に接触子19を置く。サンプル1
4を動かし図8に示すように接触子の厚さ方向の変位〜
サンプルの移動方向の変位の図形を得る。この図形の斜
線の部分の大きさから数2より表面粗さ係数(SMD)
を求める。
【0022】
【数2】
【0023】ここで、∫iはi=OからXまでの積分値
であり、Taは測定厚みの平均値である。
【0024】風合いに関連した官能テストは、約50c
m×50cmの大きさの織物を本発明品と比較品のそれ
ぞれについて準備し、それを風合い判定の専門家に提示
しながらなめらかさ、ソフトさに関して一対比較法で判
定するものである。評価結果として、よりなめらかある
いはよりソフトのものを○、そうでない方を×で表し
た。
【0025】
【実施例】
実施例1、比較例1 海島綿の綿塊を開繊した後、フラットカード機に通して
スライバーを作り、それを繊維長の長いものだけが残る
ように設定したコーマ機にかけて繊維長の長いものだけ
を残し、さらにそれを練条機ならびに粗紡機にかけて5
番手相当の粗糸を作製した。ついで精紡機でこの粗糸に
約40倍のドラフトをかけ、57回/インチの下よりを
かけて200番手相当の単糸を作製した。さらに、50
回/インチの上よりをかけて双糸を作製した。コーマ機
通過後のスライバにおける木綿の繊維長は、ソータによ
る方法で測定したところ、1.8インチ〜2.0インチ
までの間で分布しており有効繊維長は1.92インチで
あった。またマイクロネヤ法による繊度は3.4(μg
/inch)であった。
【0026】たて糸として11100本の前記双糸を準
備して整経し、豊田自動織機社製の織機を使って生機を
作製した。生機を過酸化水素溶液で漂白した後、一般に
行われているシルケット加工、ソフナー等の仕上げ加工
剤での処理を行い織物として仕上げた。得られた織物よ
り20cm×20cmの大きさの試料片3枚をとり、K
ES試験機を使って風合いに関連した織物の特性とし
て、目付け、伸長特性、曲げ特性、せん断特性、厚み・
圧縮特性、表面摩擦特性を測定した。目付けは、重量を
計ってgf/m2で表示した。また、伸長特性、厚み・
圧縮特性はKES試験機の測定方法して定められた標準
方法で測定した。
【0027】比較例1 海島綿を使用してフラットカード機に通してスライバー
を作り、それを通常の条件に設定したコーマ機にかけて
繊維長の長いものだけを残し、さらにそれを練条機なら
びに粗紡機にかけて5番手相当の粗糸を作製した。これ
らの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、57回/インチ
の下よりをかけて200番手相当の単糸を作製した。さ
らに、50回/インチの上よりをかけて双糸を作製し
た。実施例1と同様な方法で200番手双糸の作製及び
織物の作製を行った。海島綿の繊維長はソータ法で測定
した結果、最低繊維長は1.1インチから最高繊維長は
2.0インチであり有効繊維長は1.6インチであっ
た。風合いに関連した織物の諸特性の測定した結果及び
官能テスト結果は、実施例1とともに表1に示す。
【0028】得られた織物の諸特性の測定値を表1に示
す。比較例1に示した従来の木綿原綿(海島綿)を用い
て作製した高級綿番手のものに比べ、表面がなめらか
(平滑)で滑りがよく(織物特性のMIU,SMDが小
さい)、ソフト(曲げやわらかい)でしなやか、ドレー
プ性もある(B,G,2HGが小さい)また、風合いの
官能テストにおいてもしなやかでソフトであると云う評
価結果となっている。
【0029】
【表1】
【0030】実施例2 海島綿の綿塊を開繊した後、フラットカード機に通して
スライバーを作り、それを繊維長の長いものだけが残る
ように設定したコーマ機にかけて繊維長の長いものだけ
を残したスライバを作製し、また一方、0.7d×51
mmのポリエステルステープルファイバをフラットカー
ド機にかけてスライバーを作り、それらを練条機で木綿
原綿とポリエステルステープルファイバとの重量比を5
0対50の割合で混合したスライバを作製して、実施例
1で示した方法と同様な方法で200番手単糸を合わせ
た双糸を作製した。ポリエステル・綿混織物であるため
生機の漂白は、次亜塩素酸ソーダ溶液で行ったがそれ以
外の仕上加工条件は実施例1と同様に行った。得られた
布帛の諸特性の測定値を比較例2の結果とともに表2に
示す。
【0031】比較例2 海島綿の綿塊を開繊した後、フラットカード機に通して
リボンラップを作り、それを繊維長の長いものだけが残
るように条件設定したコーマ機にかけて繊維長の長いも
のだけを残したスライバを作製し、また一方、0.7d
×51mmのポリエステルステープルファイバをフラッ
トカード機にかけてスライバを作成した。それらを練条
機で木綿原綿とポリエステルステープルファイバとの重
量比を50対50の割合で混合したスライバを作製し
て、実施例2で示した方法と同様な方法に行い織物を作
製した。風合いに関連した織物の諸特性の測定した結果
及び官能テスト結果は、実施例2の結果とともに表2に
示す。
【0032】表2の結果から明らかなように、従来の繊
維長の長い木綿原綿(海島綿)を使ったものに比べ、多
少表面がなめらか(平滑)で滑りがよく(MIU,SM
Dが小さい)、ソフト(曲げやわらかい)で、ドレープ
性もあり(G,2HGが小さい)その効果が明らかに認
められる。また、風合いの官能テストにおいてもしなや
かでソフトであると云う評価結果となっている。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】本発明は、有効繊維長が1.8インチ以
上、マイクロネヤ繊度が3.8(μg/inch)以下
の綿繊維からなる英式綿番手100番〜250番の紡績
糸を用いたカバーファクタ20〜50の織物であって、
KES−FB2試験機による曲げ剛性値(B)のたて方
向とよこ方向の平均値が0.015〜0.040(gf
・cm2/cm)、KES−FB1試験機によるせん断
剛性値(G)のたて方向とよこ方向の平均値が0.50
〜1.00(gf/cm・degree)及びKES−
FB4試験機の平均摩擦係数(MIU)のたて方向とよ
こ方向の平均値が0.1〜0.3、平均粗さ係数(SM
D)のたて方向とよこ方向との平均値が1.0〜2.0
(μ)であることを特徴とする新規なシルクライク木綿
織物をつくることにより、なめらかでソフトでかつドレ
ープ性があり、高級指向の感性に対応できるシルクライ
クな織物を消費者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】曲げ剛性値の測定機におけるチャックとサンプ
ル部分を示す略側面図である。
【図2】曲げ剛性値の測定における曲げモーメント〜曲
率曲線を示した説明図である。
【図3】せん断剛性値の測定機におけるチォックとサン
プル部分を示す略側面図である。
【図4】せん断剛性値の測定におけるせん断力〜せん断
角度曲線を示した説明図である。
【図5】表面摩擦係数の測定機におけるチャック、サン
プル及び摩擦子部分の側面図である。
【図6】表面摩擦係数の測定における摩擦力〜変位曲線
を示した説明図である。
【図7】表面粗さ係数の測定機におけるチャック、サン
プル及び接触子部分の側面図である。
【図8】表面粗さ係数の測定における厚み〜変位曲線を
示す説明図である。
【符号の説明】
1 チャック,2 チャック, 3 サンプル、4 曲
率0.5と1.5間の曲げモーメントの増加値、5 曲
率−0.5と−1.5間の曲げモーメントの増加値,6
チャック、7 チャック,8 サンプル、9 せん断
角度+0.5と5.0間のせん断力の増加値、10 せ
ん断角度−0.5と−5.0間のせん断力の増加値、1
1 チャック,12 チャック、13 フリーローラ、
14 サンプル、15 摩擦子、16 力計、17 支
持台、18 平均摩擦力、19接触子
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D03D 1/00 - 27/18 D02G 1/00 - 3/48 D02J 1/00 - 13/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有効繊維長が1.8インチ以上、マイク
    ロネヤ繊度が3.8(μg/inch)以下の綿繊維を
    含む英式綿番手100番〜250番の紡績糸を用いたカ
    バーファクタ20〜50の織物であって、KES−FB
    2試験機による曲げ剛性値(B)のたて方向とよこ方向
    の平均値が0.015〜0.040(gf・cm2 /c
    m)、KES−FB1試験機によるせん断剛性値(G)
    のたて方向とよこ方向の平均値が0.50〜1.00
    (gf/cm・degree)及びKES−FB4試験
    機の平均摩擦係数(MIU)のたて方向とよこ方向の平
    均値が0.1〜0.3、平均粗さ係数(SMD)のたて
    方向とよこ方向との平均値が1.0〜2.0(μ)の範
    囲にあることを特徴とする新規なシルクライク木綿織
    物。
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