JP3153734B2 - 乳房カップ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、女性用衣類の乳房カッ
プに関するものである。特に本発明は、着用時の荷重に
よる型くずれや、着用後の人体の動きによる着崩れが少
なく、目的とした造型性を容易に維持することが出来、
しかも、良好な着用感を有する女性用衣類の乳房カップ
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、乳房カップを有する女性用衣
類、具体的には、例えばブラジヤー、ロングラインブラ
ジャー、ビスチエ、ボディスーツ、スリーインワン、ブ
ラテディ、ブラキャミソールあるいはブラスリップなど
の乳房カップを有する下着類や水着などの衣類は、着用
者の乳房に当てがわれる膨らみのある乳房カップを有し
ており、これらの乳房カップを有する衣類は、女性用の
被服として広く普及している。

【０００３】これらの乳房カップには、乳房の形状をよ
り美しく見せる目的で例えばバストを寄せたりアップさ
せたりという体型を補整する為の、造型機能が付与され
ているのが一般的である。

【０００４】しかし、これらの乳房カップを有する女性
用衣類はフィット性を高める為実際の人体の周径寸法よ
りその周径寸法は小さめに設定されているので、着用時
には少しテンションをかけ素材の伸縮性等を利用して水
平方向に引っ張り気味に着用されるのが普通であるが、
かかる水平方向の引っ張り力により乳房カップも引っ張
られ、カップの形状が崩れる傾向にあり、せっかくの造
型機能が効果的に発揮されない欠陥があった。又、着用
後も人体の動きに伴う乳房の揺動により次第に乳房が乳
房カップの所定箇所におさまらなくなると共に、乳房の
揺動に伴って動いた乳房カップの一部分が所定の位置に
戻らないことが重なって、着用中の乳房の揺動により次
第に乳房カップに皺などが発生し着崩れが生じる傾向に
ある。

【０００５】カップ部の変形を軽減する目的でブラジャ
ーのカップ部にカップ部の縦方向に亘って図１１で示す
ような弾力性細線や、図１２で示すような金属をコイル
状に形成した後偏平にした所謂スパイラルボーンを設け
たりという事が行われている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】図１３に乳房カップに
作用する曲げ応力を説明するため一本の芯材１３２を乳
房カップ１３０の上端から下端までほぼ縦方向に設けた
ブラジャーの左半身部分の概略図を示した。図中ａは水
平方向への曲げに対する応力で（以下、曲げ応力とい
う。）人体を正面から見た場合左右方向に働く応力であ
る。図中ｂは人体に対して垂直方向への曲げ応力で人体
表面に向かって働く応力である。

【０００７】図１３に示すように乳房カップに縦方向に
芯材が用いられる場合、着用時の水平方向への引っ張り
から乳房カップの型くずれを防ぐ為には図中ａで示す水
平方向の曲げ応力が大きく、乳房の上下方向の揺動に無
理なく対応し着崩れを防ぐ為には図中ｂで示すような人
体に対して垂直方向の曲げ応力は比較的小さい方が好ま
しい。

【０００８】従来から用いられている、前記図１１に示
す弾力性細線の場合その断面形状はほぼ円形であるので
曲げ応力ａとａに対し垂直方向に働く曲げ応力ｂはほぼ
同一であり効果的に乳房カップの型くずれや着崩れを防
止することは難しい。又、直径の小さい細線では必要と
するほどの曲げ応力を得ることは出来ないが、曲げ応力
を高める為に余り径を太くするとごろつき感が生じ着用
感が著しく低下すると共に芯材の重量も重くなるので、
実質上それ程径の太い細線を用いることは出来ず、従っ
て、細線を用いては必要とする曲げ応力を得ることは難
しい。

【０００９】又、従来から用いられている、前記図１２
に示すスパイラルボーンにおいては矢印Ａ−Ａ′で示し
た方向が芯材の幅方向であるが、通常芯材の偏平面３が
人体に向かう面となるように用いられるので、図１２の
幅方向Ａ−Ａ′の曲げ応力ａは図１３の水平方向への曲
げ応力ａ、図１２の幅方向Ａ−Ａ′に対して垂直方向に
働く厚み方向の曲げ応力ｂは図１３の人体に対して垂直
方向への曲げ応力ｂとなるが、スパイラルボーンの場合
図１２の幅方向の曲げ応力ａは厚み方向の曲げ応力ｂの
２倍程度でしかなく、乳房カップに用いて充分な水平方
向への曲げ応力を得ようとすると必然的に人体に対して
垂直方向への曲げ応力も大きくなり、その結果人体に対
する圧迫感が大きくなるなど著しく着用感が低下する。
この為、スパイラルボーンを用いては効果的に型くずれ
や着崩れを防止するような水平方向と人体に対する垂直
方向の曲げ応力のバランスを得ることは出来ない。

【００１０】本発明は、上記の問題点を解消し、着用時
の水平方向への引っ張りによる型くずれや、着用後の人
体の動きに伴う乳房の揺動による着崩れが少なく、目的
とした造型性を容易に維持することが出来、しかも、良
好な着用感を有する女性用衣類の乳房カップを提供する
ことを目的とするものである。

【００１１】また、そのほか後述する本発明の各好まし
い態様に於いては、前記目的のほかに、それぞれ各態様
に応じて更に次のような目的を有する。すなわち、更に
本発明は、型くずれや着崩れを防ぐ機能をより的確に発
揮し得る乳房カップを提供することを目的とするもので
ある。

【００１２】更に、本発明の別の目的は、より造型性が
高められた乳房カップを提供することを目的とするもの
である。また、更に、本発明の別の目的は、着用感がよ
り改善された、安価で製造が容易な乳房カップを提供す
ることを目的とする。

【００１３】また、更に、本発明の別の目的は、必要と
する曲げ応力を備えた芯材を用い、前記機能がより改善
された乳房カップを提供することを目的とする。また、
更に、本発明の別の目的は、より必要とする曲げ応力を
備えた芯材を用い、前記機能がより改善された乳房カッ
プを提供することを目的とする。

【００１４】また、更に、本発明の別の目的は、着用感
が良好で、洗濯などによる変形が少なく、前記機能がよ
り改善された乳房カップを提供することを目的とする。
また、更に、本発明の別の目的は、芯材の色を好ましい
色に加工することが出来、又、芯材が金属繊維糸の場合
は錆を防止することが出来ると共に、安全性も高められ
た乳房カップを提供することを目的とする。

【００１５】また、更に、本発明の別の目的は、より人
体の乳房の形状にフィットした乳房カップを提供するこ
とを目的とする。また、更に、本発明の別の目的は、適
度の柔軟性と剛性を有する芯材を備え、前記機能がより
改善された乳房カップを提供することを目的とする。

【００１６】また、更に、本発明の別の目的は、衣類へ
の芯材の加工が容易で、補整効果の高い着用感がより改
善された乳房カップを提供することを目的とする。ま
た、更に、本発明の別の目的は、衣類への芯材の加工が
容易で、乳房にフィットして着用感がより改善された乳
房カップを提供することを目的とする。

【００１７】また、更に、本発明の別の目的は、より必
要とする曲げ応力を有する芯材を備えた乳房カップを提
供することを目的とする。また、更に、本発明の別の目
的は、より着用感が良好となる曲げ応力を有する芯材を
備えた乳房カップを提供することを目的とする。

【００１８】また、更に本発明の別の目的は、前記機能
がより有効に発揮される衣類用の乳房カップを提供する
ことを目的とする。また、更に本発明の別の目的は、前
記機能がより有効に発揮される特定の衣類用の乳房カッ
プを提供することを目的とする。

【００１９】

【課題を解決するための手段】前記課題を達成するため
に、本発明の乳房カップの構造は次の構成を有するもの
である。

【００２０】（１）金属繊維糸及び／またはテグスから
なる糸状物を用いて組み紐状に構成した後偏平状に加工
した芯材を乳房カップ上端から下端まで女性用衣類の乳
房部においてほぼ縦方向に少なくとも一本延在させるよ
う用いたことを特徴とする乳房カップ。

【００２１】（２）芯材が延在する方向が垂直仮想線
（ｐ）よりも前中心側に角度１５度脇側に角度２５度の
範囲内での縦方向である前記（１）項に記載の乳房カッ
プ。 （３）芯材が乳頭点近傍を通るように延在する前記
（１）項または（２）項のいずれかに記載の乳房カッ
プ。

【００２２】（４）乳房カップに延在している芯材が一
本である前記（１）〜（３）項のいずれかに記載の乳房
カップ。 （５）糸状物が金属繊維糸である前記（１）〜（４）項
に記載の乳房カップ。

【００２３】（６）金属繊維糸の主たる素材が鉄、ステ
ンレススチール、アモルファス合金、または形状記憶合
金から選ばれた少なくとも１種の素材からなる繊維糸で
ある前記（１）〜（５）項のいずれかに記載の乳房カッ
プ。

【００２４】（７）金属繊維糸の主たる素材が形状記憶
合金である前記（１）〜（５）項のいずれかに記載の乳
房カップ。 （８）芯材が更に樹脂コーティング加工が施されてなる
芯材である前記（１）〜（７）項のいずれかに記載の乳
房カップ。

【００２５】（９）芯材が乳房の形状に合わせて人体か
ら外に向かう方向に凸状に成形されてなる芯材である前
記（１）〜（８）項のいずれかに記載の乳房カップ。 （１０）芯材を構成する糸状物の太さが１００〜５００
μｍである前記（１）〜（９）項のいずれかに記載の乳
房カップ。

【００２６】（１１）芯材の幅が２〜１０ｍｍ、厚みが
０．２〜１．５ｍｍで、幅が厚みの５〜１５倍である前
記（１）〜（１０）項のいずれか記載の乳房カップ。 （１２）芯材の幅が２〜５ｍｍ、厚みが０．４〜０．８
ｍｍで、幅が厚みの５〜７倍である前記（１）〜（１
０）項のいずれか記載の乳房カップ。

【００２７】（１３）芯材の幅方向の曲げ応力が厚み方
向の曲げ応力の３〜９倍である前記（１）〜（１２）項
に記載の乳房カップ。 （１４）芯材の厚み方向の曲げ応力が３〜１２ｇである
前記（１３）に記載の乳房カップ。

【００２８】（１５）女性用衣類が乳房カップを有する
下着類または水着である（１）〜（１４）項に記載の乳
房カップ。 （１６）乳房カップを有する下着類がブラジャーまたは
ボディスーツである前記（１５）項に記載の乳房カッ
プ。

【００２９】

【作用】

（１）本発明の女性用衣類の乳房カップは、金属繊維糸
及び／またはテグスからなる糸状物を用いて組み紐状に
構成した後偏平状に加工した芯材を用いているので乳房
カップの型くずれを防止しながらも良好な着用感が得ら
れるような幅方向と厚み方向の曲げ応力の望ましいバラ
ンスが得られる。すなわち、本発明の如く乳房カップの
ほぼ縦方向に芯材を延在させる場合には、衣類着用時の
水平方向への引っ張りによる乳房カップの型くずれを防
止するために、衣類の水平方向への曲げ応力となる芯材
の幅方向の曲げ応力がかなり大きいことが必要であり、
しかも人体に対して垂直方向への曲げ応力となる芯材の
厚み方向の曲げ応力は、それに伴なって余り大きくなる
と着用感が低下するので、芯材の厚み方向の曲げ応力が
比例して大きくなることは好ましくないが、本発明にお
いては組み紐状物を偏平状に加工した芯材を用いること
によって、芯材の幅方向の曲げ応力がかなり大きく、し
かも芯材の厚み方向の曲げ応力は乳房カップに必要な程
度の応力を維持することが出来るのである。従って、衣
類着用時に水平方向に引っ張り着用しても、水平方向へ
の曲げ応力が大とされているため、水平方向へ乳房カッ
プが引っ張られ乳房カップの形状が崩れることが防止出
来、乳房カップの造型機能が効果的に発揮されるととも
に、人体に垂直方向の曲げ応力は比較的小さいので、歩
行、腕の上げ下げなどの日常の人体の運動に伴う乳房の
動きは縦方向の揺動が主な動きとなるが、着用後の人体
の動きに伴うこの様な乳房の縦方向の揺動を押さえ込む
ことなく着用感を良好に保つことが出来る。又、芯材の
人体に垂直方向の曲げ応力は比較的小さく適度な柔軟性
を有するので、乳房の動きに対する乳房カップの追随性
も良くなり、乳房は上下動した後でも乳房カップの所定
の位置に容易に収まるので、着用中の乳房の揺動により
生じる着崩れも軽減出来る。さらに、本発明において
は、芯材が女性用衣類の乳房部においてほぼ縦方向に用
いられている乳房カップであるので、乳房の横方向の動
きを抑制することが出来、乳房を中央に寄せるよう補整
した場合、乳房が脇方向へ流れようとすることも防止し
て乳房カップの補整機能を保つことが出来る。更に、乳
房カップの上端から下端まで少なくとも一本の芯材が延
在するので、乳房カップに皺が発生することも防ぐこと
が出来、又、洗濯による型くずれも防止できる。

【００３０】（２）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が延在する方向が垂直仮想線（ｐ）よりも前中
心側に角度１５度脇側に角度２５度の範囲内での縦方向
である本発明の好ましい態様とすることにより、前述し
た縦方向に芯材を延材させたことによる型くずれや着崩
れを防ぐ機能が的確に発揮出来好ましい。

【００３１】（３）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が乳頭点近傍を通るように延在する本発明の好
ましい態様とすることにより、乳房カップのほぼ中央を
通るように芯材が延在するところとなり、前述した機能
を更に的確に発揮し得ると共に、乳房カップの乳頭点の
位置を好ましい位置に保つことが出来るので、より造型
性が高められた乳房カップを提供できる。

【００３２】（４）また、本発明の乳房カップに於い
て、乳房カップに延在している芯材が一本である本発明
の好ましい態様とすることにより、乳房を拘束する箇所
が最小限に抑えられるので着用感が良好で、しかも安価
で製造が容易な乳房カップを提供できる。

【００３３】（５）また、本発明の乳房カップに於い
て、糸状物が金属繊維糸である本発明の好ましい態様と
することにより、必要とされる曲げ応力が得られやすく
前述した本発明の機能をより的確に発揮し得る乳房カッ
プを提供できる。

【００３４】（６）また、本発明の乳房カップに於い
て、金属繊維糸の主たる素材が鉄、ステンレススチー
ル、アモルファス合金、または形状記憶合金から選ばれ
た少なくとも１種の素材からなる繊維糸である本発明の
好ましい態様とすることにより、これらの金属は繊維糸
とした場合に適宜の柔軟性と剛性を兼ね備えた繊維糸と
なるので、より必要とされる曲げ応力が得られやすく、
又、これらの素材は一般に芯材としてよく用いられる素
材であるので容易に入手する事が可能であり、より容易
に前述した本発明の機能を有する乳房カップを提供でき
る。

【００３５】（７）また、本発明の乳房カップに於い
て、金属繊維糸の主たる素材が形状記憶合金である本発
明の好ましい態様とすることにより、形状記憶合金は優
れた弾性を有するので、より乳房の動きに対する追随性
が増し着用感が向上すると共に、形状記憶合金の持つ形
状回復性により洗濯などによる変形が生じにくく、かつ
前述した本発明の機能を有する乳房カップを提供でき
る。

【００３６】（８）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が更に樹脂コーティング加工が施されてなる本
発明の好ましい態様とすることにより、芯材の色を衣類
に用いるのに好ましい色に加工することが容易に出来、
又、芯材として金属繊維糸を用いた場合は錆を防止する
ことが出来ると共に、芯材を構成する糸状物が衣類から
突き抜けた場合も安全であり、更に前述した本発明の機
能を有する乳房カップを提供できる。

【００３７】（９）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が乳房の形状に合わせて人体から外に向かう方
向に凸状に成形されてなる芯材である本発明の好ましい
態様とすることにより、より人体の乳房の形状にフィッ
トした乳房カップを提供できる。

【００３８】（１０）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材を構成する糸状物の太さが１００〜５００μｍ
である本発明の好ましい態様とすることにより、芯材へ
の加工がしやすく、又、適度の柔軟性と剛性を有し前述
した本発明の機能がより効果的に発揮される乳房カップ
を提供できる。

【００３９】（１１）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅が２〜１０ｍｍ、厚みが０．２〜１．５ｍ
ｍで、幅が厚みの５〜１５倍である本発明の好ましい態
様とすることにより、衣類への芯材の取り付け等の加工
が容易で、しかも着用時の違和感が少なく着用感が良好
に保ちながら乳房の補整効果の高い、かつ前述した本発
明の機能を有する乳房カップを提供できる。

【００４０】（１２）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅が２〜５ｍｍ、厚みが０．４〜０．８ｍｍ
で、幅が厚みの５〜７倍である本発明の好ましい態様と
することにより、衣類への芯材の取り付け等の加工が容
易で、しかも乳房にフィットして着用時の違和感がより
一層少なく着用感が良好であり、かつ前述した本発明の
機能を有する乳房カップを提供できる。

【００４１】（１３）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅方向の曲げ応力が厚み方向の曲げ応力の３
〜９倍である本発明の好ましい態様とすることにより、
芯材の最適な幅方向と厚み方向の曲げ応力のバランスが
得られ、すなわち、人体に垂直方向の厚み方向の曲げ応
力を小さく保ったまま衣類の水平方向の曲げ応力となる
幅方向の曲げ応力を大とすることが出来るので、乳房の
縦方向の動きを極端に押さえ込むことなく乳房カップの
水平方向の形態保持性を高めることが可能となり、より
前述した本発明の機能を有効に発揮しうる乳房カップを
提供できる。

【００４２】（１４）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の厚み方向の曲げ応力が３〜１２ｇである本発
明の好ましい態様とすることにより、幅方向と厚み方向
の曲げ応力を最適なバランスに保ったまま、乳房カップ
に用いるのに好ましい適度な柔軟性と剛性を有する曲げ
応力をもつ芯材とすることが出来、より人体に対しての
違和感が少なく着用感が良好な乳房カップを提供でき
る。

【００４３】（１５）また、本発明の乳房カップに於い
て、女性用衣類が乳房カップを有する下着類または水着
である本発明の好ましい態様とすることにより、下着類
は女性の体形補整機能が要求されかつ体形補整機能が発
揮されやすい比較的肌に近いかまたは直接肌に接して着
用される衣類であるので、前述した本発明の機能をより
的確に発揮し得る乳房カップを提供できる。また水着用
の乳房カップとすることにより、水着は下着類と同様に
直接肌に接して着用される衣類であり、また、女性の美
しいボディラインが強調される衣類であるので、下着類
と同様に本発明の機能をより的確に発揮し得る乳房カッ
プを提供できる。

【００４４】（１６）また、本発明の乳房カップに於い
て、乳房カップを有する下着類がブラジャーまたはボデ
ィスーツである本発明の好ましい態様とすることによ
り、下着類のうちでも特にブラジャーまたはボディスー
ツは女性の乳房の形をより美しく補整する機能がより重
要視される衣類であり、しかも直接肌に接して着用され
る衣類であるので、本発明の乳房カップがこれらの衣類
の乳房カップとして使用される場合には、前述した本発
明の機能をより的確に発揮し得る乳房カップを提供でき
る。なお、ここで本発明においてブラジャーとは通常の
概念のブラジャーは元より、ロングラインブラジャーや
ビスチエも含む概念で使用しているものである。

【００４５】

【実施例】以下、本発明の理解を容易にするために、図
面を参照しながら、具体例を挙げて本発明を説明する
が、本発明はこの具体例のもののみに限定されるもので
はない。

【００４６】図１は本発明の乳房カップに用いられる金
属繊維糸及び／またはテグスからなる糸状物を組み紐状
に構成した後偏平状に加工した芯材の平面概略図であ
る。１が芯材であり２は芯材を構成する金属繊維糸及び
／またはテグスからなる糸状物である。矢印Ａ−Ａ′で
示した方向が芯材１の幅方向であり、又３は芯材の偏平
面である。芯材が衣類に取り付けられる場合は、偏平面
３が人体に向かう面となるように用いられる。図２は図
１で示した芯材１の側面概略図である。Ｂ−Ｂ′で示し
た方向が芯材１の厚み方向である。

【００４７】本発明で用いられる芯材としては、幅方向
の曲げ応力を厚み方向の曲げ応力の３〜９倍とすると、
人体に垂直方向の厚み方向の曲げ応力を小さく保ったま
ま衣類の水平方向の曲げ応力となる幅方向の曲げ応力を
大とすることが出来、乳房の縦方向の動きを押さえ込む
ことなく乳房カップの水平方向の形態保持性を高めるこ
とが出来が好ましい。

【００４８】更に、芯材の厚み方向の曲げ応力を３〜１
２ｇとすると、乳房カップに用いるのに好ましい適度な
柔軟性と剛性を有する曲げ応力をもつ芯材とすることが
出来、人体に対しての違和感が少なく着用感が良好な乳
房カップとすることが出来好ましい。

【００４９】ここでいう曲げ応力とは、芯材から８ｃｍ
長の試験片を作成し、万力により端から３ｃｍのところ
を固定し、逆側の端から２ｃｍのところを押し棒にて１
ｃｍ押したときの荷重値を自記装置付引張試験機（島津
製作所株式会社製、“オートグラフＡＧ−Ｄ”）にて測
定した値を曲げ応力とする。厚み方向の曲げ応力とは芯
材を厚み方向に押した時の加重値で、幅方向の曲げ応力
とは芯材を幅方向に押した時の荷重値である。

【００５０】本発明の乳房カップに用いられる芯材を構
成する糸状物としては、金属繊維糸やテグスが用いられ
る。金属繊維糸としては鉄、ステンレススチール、アモ
ルファス合金、または形状記憶合金などが好ましく用い
られるが、これらの金属は繊維糸とした場合に適宜の柔
軟性と剛性を兼ね備えた繊維糸となり必要とされる曲げ
応力が得られやすく、又、これらの素材は一般に芯材と
してよく用いられる素材であるので容易に入手する事が
可能であることからも好ましい。特に、形状記憶合金を
用いた場合は、形状記憶合金は優れた弾性を有するの
で、より乳房の動きに対する追随性が増し着用感が向上
すると共に、形状記憶合金の持つ形状回復性により洗濯
などによる変形が生じにくくなり好ましい。尚、形状記
憶合金とは、金属の記憶回復の温度である変態点に達す
ると低温で変形していた形状が元の形に復元する性質を
もつ金属のことを言い、例えばニッケル・チタン系合金
や銅系合金が挙げられるが、乳房カップの芯材として用
いる場合には変態点をおよそ２５℃程度の低温に設定し
変態温度を越えると超弾性を示すようなニッケル・チタ
ン系合金が好ましく用いられる。すなわち、この様な金
属を用いると、洗濯等により変形しても着用時には元の
形状に回復し、しかも着用時の温度では超弾性の性質を
示すため人体の形状にフィットすると共に快適な付け心
地となる芯材を得ることが出来るのである。

【００５１】テグスとしては、ナイロン６、ナイロン６
６、あるいはポリエチレンテレフタレートやアラミド繊
維、又、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテル
ケトン、ポリフェニレンサルホン、ポリイミド等の高弾
性、強度特性を持つエンジニアプラスチックなどの素材
からなるテグスが座屈に強く、折れ曲がっても元の形に
回復しやすく、従って、耐洗濯性などが良好で、また、
ごく容易に入手できるのでコストが安いと言う点からも
好ましく用いられる。

【００５２】芯材を構成する糸状物は、糸状物がナイロ
ン、エポキシ樹脂などの適宜の樹脂により被覆されてい
るものを用いることも出来る。又、糸状物の形状は、単
繊維からなるものを用いてもよいし撚線状のものを用い
てもよく、目的や素材等に合わせて選択することが出来
る。

【００５３】尚、糸状物の太さとしては、素材の種類、
形状、使用目的等により異なるが、１００〜５００μｍ
程度、より好ましくは２００〜２５０μｍ程度（これら
の数値範囲に着いて更に好ましい範囲を設定する場合は
教えてください。）が芯材への加工がしやすく、又、適
度の柔軟性と剛性を有し好ましい。

【００５４】本発明の乳房カップに用いられる芯材は前
述したような素材よりなる糸状物を用いて、例えば、通
常用いられている組紐製造機にて筒状の組み紐に形成し
た後３５０℃〜４５０℃にてプレス機にて熱プレスして
偏平状に加工して得ることが出来る。

【００５５】この様にして得られた芯材においては幅方
向と厚み方向の曲げ応力の望ましいバランスが得られ
る。すなわち、芯材の幅方向の曲げ応力はかなり大き
く、しかも芯材の厚み方向の曲げ応力は乳房カップに必
要な程度の応力を維持することが出来るのである。従っ
て、本発明の如く乳房カップのほぼ縦方向に芯材を延在
させる場合には、衣類着用時の水平方向への引っ張りに
よる乳房カップの型くずれが防止出来て乳房カップの造
型機能が効果的に発揮されるとともに、着用後の人体の
動きに伴う乳房の縦方向の揺動を押さえ込むことなく着
用感を良好に保つことが出来、又、乳房の動きに対する
乳房カップの追随性も良くなるので乳房は上下動した後
でも乳房カップの所定の位置に容易に収まり着用中の乳
房の揺動により生じる乳房カップの着崩れも軽減する事
が可能となる。

【００５６】芯材は一種類の糸状物を組み紐状に構成し
てもよいし、複数の種類の糸状物を準備し混合して組み
紐状に構成してもよい。又、芯材はナイロンの粉末を付
与した後に熱処理する、ナイロンやエポキシ樹脂の溶液
またはエマルジョンに含浸する、熱収縮性のポリ塩化ビ
ニルやポリエチレン薄膜チューブをかぶせて熱収縮後密
着させるなどのコーティング加工を施してもよく、この
様にコーティング加工を行うと、芯材の色を衣類に用い
るのに好ましい色に加工することが出来、又、芯材を構
成する糸状物としてとして金属繊維糸を用いた場合は錆
を防止することが出来ると共に、芯材を構成する糸状物
が衣類から突き抜けた場合も安全であり好ましい。コー
ティング加工に用いられる樹脂やコーティングの方法
は、芯材に用いられる糸状物の素材、芯材の厚みや幅な
どにより選択すればよくここに挙げた樹脂によるコーテ
ィング加工に限られるものではない。

【００５７】尚、芯材はその幅が２〜１０ｍｍ、厚みが
０．２〜１．５ｍｍ、幅が厚みの５〜１５倍のものが、
衣類への芯材の取り付け等の加工が容易で、しかも着用
時の違和感が少なく着用感を良好に保ちながら乳房の補
整効果を高めることが出来好ましい。

【００５８】更に、芯材の幅を２〜５ｍｍ、厚みを０．
４〜０．８ｍｍ、幅が厚みの５〜７倍にすると、更に乳
房にフィットしてより一層着用感を良好にすることが出
来好ましい。

【００５９】次に、本発明の理解を容易にするために、
本発明の女性用衣類の乳房カップの構造についてその応
用例としてブラジャーを初めとして幾つかの例を挙げて
より具体的に説明するが、本発明はこの実施例のものの
みに限定されるものではなく、また、例えば、実施例に
挙げたもののほか、ビスチエ、スリーインワン、ブラテ
ディ、ブラキャミソールあるいはブラスリップなどの乳
房カップを有する下着類のみならず、他の各種の乳房カ
ップを有する女性用の衣類の乳房カップとしても同様に
適用できることは容易に理解されるところである。

【００６０】図３は本発明の乳房カップを備えたフルカ
ップタイプのブラジャーの表側から見た状態の正面図で
ある。図４はそのＣ−Ｃ′切断面の端面を示している端
面概念図である。図５は図３で一点鎖線で囲った部分の
拡大図である。

【００６１】図３に於て、３０は本発明の乳房カップ、
３１はカップ布、３２は芯材、３３は土台布、３４はバ
ック布、３５はストラップ、３６は乳房カップ前上辺
縁、３７はストラップ取付縁、３８は乳房カップ脇上辺
縁、３９は乳房カップくり、Ｔは乳頭点、ｐは垂直仮想
線、ｑは水平線を示している。

【００６２】芯材３２はカップ布の裏側に取り付けられ
表側からは見えないので点線で示している。図４で示す
よう、芯材３２は乳房カップ３０の裏側に於てバイアス
テープ４１で包み込んで縫製ライン４２でカップ布３１
に縫着され取り付けられている。その他、芯材の取り付
け方法としては芯材挿入用の袋状物に芯材を挿入するな
ど通常用いられている任意の方法が用いられる。

【００６３】芯材３２は、乳房カップ３０の上端から下
端まで、すなわち乳房カップ前上辺縁３６から乳房カッ
プくり３９の最下点近傍まで乳頭点Ｔの近傍を通り乳房
カップ３０のほぼ中央に延在している。

【００６４】本発明に於て乳房カップとは、衣類におい
て乳房の主なる部分を覆うように構成された膨出部分を
言うので、乳房カップ上端とは、膨出部分の上側の縁の
ことであり、本実施例においては乳房カップ前上辺縁３
６、ストラップ取付縁３７、乳房カップ脇上辺縁３８の
三つの縁を指して乳房カップの上端という。その他乳房
カップの形状や衣類のデザインにより、乳房カップ上端
の縁も異なる形状となるが、前述したように衣類に於て
乳房を覆う膨出部分の上側の縁を乳房カップ上端と考え
ればよい。また、乳房カップ下端とは、膨出部分の下側
の縁のことで、本実施例に於ては乳房カップくり３９を
指して乳房カップの下端という。乳房カップ下端も乳房
カップの形状や衣類のデザインにより異なる形状となる
が、乳房カップ上端と同様衣類に於て乳房を覆う膨出部
分の下側の縁を乳房カップ下端と考えればよい。

【００６５】又、芯材が乳房カップの上端から下端まで
延在するというのは、ほぼ上端から下端まで延在するこ
とを意味し、必ずしも、上端から下端まで延在させる必
要はなく、例えば、乳房カップ上辺に添って細幅の飾り
レースが取り付けられているような場合にはそのレース
部にまで芯材を延在させることは必ずしも必要ではな
い。

【００６６】尚、本発明に於て乳頭点とは、乳房カップ
を着用した場合乳頭に当接される衣類上の点を言い、通
常、乳房を覆う膨出部の最頂点近傍が乳頭点となる。本
実施例に於ては、芯材が乳頭点近傍を通るように延在す
るので、乳房カップのほぼ中央を通るように芯材が延在
するところとなり、乳房カップの乳頭点の位置を好まし
い位置に保つことが出来るので、乳房カップの造型性が
高めることが可能となる。

【００６７】本発明の乳房カップに於ては、芯材はほぼ
縦方向に延在することが必要であるが、芯材の延在する
方向について、図３の一点鎖線で囲った部分の拡大図で
ある図５を用いて説明する。水平線ｑは左右の乳房カッ
プの芯材の下端の中点５１を結ぶ線で垂直仮想線ｐは水
平線ｑに対して芯材の下端の中点５１を通る様に立てた
垂線である。芯材の中心線ｒは芯材３２の幅方向の中心
を通る線である。水平線ｑ′は水平線ｑに対し芯材の延
在する方向に幅１ｃｍで引いた平行線で、交点５２は芯
材の中心線ｒと水平線ｑ′の交点である。線分ｓは芯材
の下端の中点５１と交点５２を結ぶ線分である。本発明
に於て芯材の延在する方向は垂直仮想線よりも前中心側
に角度１５度脇側に角度２５度の範囲内での縦方向であ
ることが好ましいが、ここでいう角度とは垂直仮想線ｐ
と線分ｓのなす角の小さい方の角度αを言う。尚、本実
施例に於ては角度αは垂直仮想線ｐよりも前中心側の角
度５度である。

【００６８】この様に、芯材を乳房カップの上端から下
端まで女性用衣類の乳房部においてほぼ縦方向に延在さ
せることにより、乳房の横方向の動きを抑制することが
出来、乳房が脇方向へ流れようとすることも防止して乳
房カップの補整機能を保つことが可能となり、乳房カッ
プに皺が発生することも防ぐことが出来、又、洗濯によ
る型くずれも防止できる。更に、本実施例に於ては芯材
が延在する方向が垂直仮想線（ｐ）よりも前中心側に角
度１５度脇側に角度２５度の範囲内であるので、縦方向
に芯材を延材させたことによる型くずれや着崩れを防ぐ
機能が的確に発揮出来好ましい。

【００６９】本発明に於て、芯材は複数本用いられても
よいが、本実施例のように用いられる芯材が一本の場合
は、乳房を拘束する箇所が最小限に抑えられるので着用
感が良好で、しかも安価で製造が容易な乳房カップとす
ることが出来る。

【００７０】尚、本実施例では、ニッケル・チタン系形
状記憶合金からなる芯材で、日本工業規格（ＪＩＳ）Ｌ
４００６のＡＡカップからＣカップまでのサイズの乳
房カップには、太さ２００μｍの糸状物を組み紐状に構
成した後偏平状に加工し最後にナイロン１２でコーティ
ング加工された幅３ｍｍ、厚み０．４ｍｍで幅が厚みの
約７．５倍の芯材で、厚み方向の曲げ応力が３．４ｇ、
幅方向の曲げ応力が２９．９ｇで幅方向の曲げ応力は厚
み方向の曲げ応力の約８．８倍である芯材を用い、ま
た、Ｄカップ以上のサイズの乳房カップには、太さ２０
０μｍの糸状物を組み紐状に構成した後偏平状に加工し
最後にナイロン１２でコーティング加工された幅３ｍ
ｍ、厚み０．４ｍｍで幅が厚みの約７．５倍の芯材で、
厚み方向の曲げ応力が９．３ｇ、幅方向の曲げ応力が６
８．７ｇで幅方向の曲げ応力は厚み方向の曲げ応力の約
７．４倍である芯材を用いた。

【００７１】図６に、本発明の乳房カップを用いた別の
態様の乳房カップを備えたフルカップタイプのブラジャ
ーの表側から見た状態の斜視図を示した。図６の態様に
於いては、芯材２２は乳房カップ２０のストラップ取付
縁２７の中央辺りから乳房カップくり２９の最下点近傍
まで乳頭点Ｔの近傍を通り乳房カップのほぼ中央に延在
しており、図３の態様と主に異なる点は、芯材２２はス
トラップ２５にほぼ連結するように延在している点であ
る。

【００７２】本実施例に於て芯材６２の延在する方向は
垂直仮想線ｐに対し脇側の角度５度である。尚、本実施
例では図３の態様と同様の芯材を用いた。

【００７３】以上の態様とすることにより、芯材２２が
ストラップ取付縁２７から乳房カップくり２９まで延在
するので、衣類着用時に芯材２２はより人体の適切な箇
所に当接されると共に、ストラップ２５により人体上側
方向に引かれて固定されているので芯材の水平方向への
移動も少なく、従って、乳房カップ２０は、本発明の型
くずれや着崩れ防止機能がより好適に発揮され、目的と
する造型性を維持し着用感が良好な乳房カップとなる。

【００７４】図７に、本発明の乳房カップを用いた更に
別の態様の乳房カップを備えたフルカップタイプのブラ
ジャーの表側から見た状態の斜視図を示した。図３に示
した態様と主に異なる点は、芯材６２が乳房カップ６０
の乳房カップ脇上辺縁６８の中央辺りから乳房カップく
り６９の最下点近傍まで延在していて、図３の態様と異
なり芯材６２は乳頭点Ｔの近傍を横切らず乳房カップ６
０の脇寄りに延在している点である。

【００７５】本実施例に於て芯材６２の延在する方向は
垂直仮想線ｐに対し脇側の角度１５度である。尚、本実
施例では図３の態様と同様の芯材を用いた。

【００７６】以上の態様とすることにより、前記の態様
とほぼ同様に着用時の水平方向への引っ張りによる型く
ずれや、着用後の人体の動きに伴う乳房の揺動による着
崩れが少なく、目的とした造型性を容易に維持すること
が出来、しかも、良好な着用感を有する乳房カップとす
ることが出来る。

【００７７】更に、本態様に於ては芯材６２が乳房カッ
プ６０の下側から脇側に延在するので、衣類着用時には
芯材６２は乳房の下側から脇側に当接され乳房を下方か
ら持ち上げ脇から中央に向かって寄せる機能を有する。

【００７８】図８に、本発明の乳房カップを用いた更に
別の態様の乳房カップを備えた１／２カップタイプのブ
ラジャーの表側から見た状態の斜視図を示した。本態様
に於いては、乳房カップ上端は乳房カップ上辺縁７６と
なるが、芯材は７２と７２′の２本で、乳房カップ上辺
縁７６から乳房カップくり７９まで乳頭点Ｔ近傍を横切
らず前中心寄りに１本と脇寄りに１本の合わせて２本延
在する。

【００７９】本実施例に於て芯材７２の延在する方向は
垂直仮想線ｐに対し脇側の角度１０度である。又、芯材
７２′の延在する方向は垂直仮想線ｐに対し前中心側の
角度５度である。

【００８０】尚、本実施例では図３の態様と同様の芯材
を用いた。以上の態様とすることにより、乳房カップ７
０の前中心寄りに芯材７２′、脇寄りに芯材７２と２本
の芯材を有する乳房カップとなるので、本発明の着用時
の水平方向への引っ張りによる型くずれや、着用後の人
体の動きに伴う乳房の揺動による着崩れがより少なくな
り、目的とした造型性を更に確実に維持することが出来
る。

【００８１】更に、本態様に於ては芯材７２が乳房カッ
プ７０の下側から脇側に延在するので、衣類着用時には
芯材７２は乳房の下側から脇側に当接され乳房を下方か
ら持ち上げ脇から中央に向かって寄せる機能を有す
る。。

【００８２】図９に本発明の乳房カップを備えたボディ
スーツのほぼ前側から見た外観の斜視図を示した。本態
様に於いては、芯材８２は乳房カップ８０の乳房カップ
前上辺縁８６から乳房カップくり８９の最下点近傍まで
乳頭点Ｔの近傍を通り乳房カップ８０のほぼ中央に延在
している。

【００８３】本実施例に於て芯材８２の延在する方向は
垂直仮想線ｐに対し脇側の角度１０度である。尚、本実
施例では図３の態様と同様の芯材を用いた。

【００８４】以上の態様とすることにより、着用時の水
平方向への引っ張りによる型くずれや、着用後の人体の
動きに伴う乳房の揺動による着崩れが少なく、目的とし
た造型性を容易に維持することが出来、しかも、良好な
着用感を有する乳房カップとすることが出来る。

【００８５】図１０に本発明の乳房カップを備えた水着
のほぼ前側から見た外観の斜視図を示した。本態様に於
いては、乳房カップ上端は乳房カップ上辺縁９６と乳房
カップ脇上辺縁９８の二つの縁を指すが、芯材９２は乳
房カップ９０の乳房カップ上辺縁９６から乳房カップく
り９９の最下点近傍まで乳頭点Ｔの近傍を通り乳房カッ
プ９０のほぼ中央に延在している。

【００８６】本実施例に於て芯材９２の延在する方向は
垂直仮想線ｐに対し脇側の角度１５度である。尚、本実
施例では図３の態様と同様の芯材を用いた。以上の態様
とすることにより、着用時の水平方向への引っ張りによ
る型くずれや、着用後の人体の動きに伴う乳房の揺動に
よる着崩れが少なく、目的とした造型性を容易に維持す
ることが出来、しかも、良好な着用感を有する乳房カッ
プとすることが出来る。

【００８７】これらの本発明の実施例においては、説明
を簡略化するため乳房カップを構成するカップ布のパタ
ーンと接ぎ構造については触れていないが、従来用いら
れている任意のパターンと接ぎ構造を衣類のデザイン、
目的等に応じて選択すればよい。

【００８８】又、乳房カップの素材としてはレ−ス、織
物または編物など通常乳房カップに用いられている素材
が使用される。更に、乳房カップの裏側に、不織布、織
物、編物、連続気泡のポリウレタンフォーム等のプラス
チック発泡体などからなる裏カップを一重もしくは複数
設け多重構造の乳房カップとしてもよい。

【００８９】尚、芯材は実施例で説明したように乳房カ
ップの裏側に取り付けるほか表側に取り付けてもよく、
乳房カップが多重構造の場合にはその間に挾んで取り付
けるなど衣類のデザインや目的等に応じて適宜選定すれ
ば良い。

【００９０】

【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。

【００９１】（１）本発明は、着用時の水平方向への引
っ張りによる型くずれや、着用後の人体の動きに伴う乳
房の揺動による着崩れが少なく、目的とした造型性を容
易に維持することが出来、しかも、良好な着用感を有す
る女性用衣類の乳房カップを提供できる。

【００９２】（２）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が延在する方向が垂直仮想線（ｐ）よりも前中
心側に角度１５度脇側に角度２５度の範囲内での縦方向
である本発明の好ましい態様とすることにより、縦方向
に芯材を延材させたことによる型くずれや着崩れを防ぐ
効果が的確に発揮出来る乳房カップを提供出来る。

【００９３】（３）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が乳頭点近傍を通るように延在する本発明の好
ましい態様とすることにより、乳房カップのほぼ中央を
通るように芯材が延在するところとなり、前述した効果
と共に、乳房カップの乳頭点の位置を好ましい位置に保
つことが出来るので、より造型性が高められた乳房カッ
プを提供できる。

【００９４】（４）また、本発明の乳房カップに於い
て、乳房カップに延在している芯材が一本である本発明
の好ましい態様とすることにより、乳房を拘束する箇所
が最小限に抑えられるので着用感が良好で、しかも安価
で製造が容易な乳房カップを提供できる。

【００９５】（５）また、本発明の乳房カップに於い
て、糸状物が金属繊維糸である本発明の好ましい態様と
することにより、必要とされる曲げ応力が得られやす
く、目的とした造型性を容易に維持することが出来、し
かも、良好な着用感を有する女性用衣類の乳房カップを
提供できる。

【００９６】（６）また、本発明の乳房カップに於いて
金属繊維糸の主たる素材が鉄、ステンレススチール、ア
モルファス合金、または形状記憶合金から選ばれた少な
くとも１種の素材からなる繊維糸である本発明の好まし
い態様とすることにより、これらの金属は繊維糸とした
場合に適宜の柔軟性と剛性を兼ね備えた繊維糸となるの
で、より必要とされる曲げ応力が得られやすく、又、こ
れらの素材は容易に入手する事が可能であり、より容易
に前述した本発明の機能を有する乳房カップを提供でき
る。

【００９７】（７）また、本発明の乳房カップに於い
て、金属繊維糸の主たる素材が形状記憶合金である本発
明の好ましい態様とすることにより、形状記憶合金は優
れた弾性を有するので、より乳房の動きに対する追随性
が増し着用感が向上すると共に、形状記憶合金の持つ形
状回復性により洗濯などによる変形が生じにくく、かつ
前述した本発明の機能を有する乳房カップを提供でき
る。

【００９８】（８）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が更に樹脂コーティング加工が施されてなる本
発明の好ましい態様とすることにより、芯材の色を衣類
に用いるのに好ましい色に加工することが容易に出来、
又、芯材として金属繊維糸を用いた場合は錆を防止する
ことが出来ると共に、芯材を構成する糸状物が衣類から
突き抜けた場合も安全であり、更に前述した本発明の機
能を有する乳房カップを提供できる。

【００９９】（９）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材が乳房の形状に合わせて人体から外に向かう方
向に凸状に成形されてなる芯材である本発明の好ましい
態様とすることにより、より人体の乳房の形状にフィッ
トした乳房カップを提供できる。

【０１００】（１０）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材を構成する糸状物の太さが１００〜５００μｍ
である本発明の好ましい態様とすることにより、芯材へ
の加工がしやすく、又、適度の柔軟性と剛性を有し前述
した本発明の機能がより効果的に発揮される乳房カップ
を提供できる。

【０１０１】（１１）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅が２〜１０ｍｍ、厚みが０．２〜１．５ｍ
ｍで、幅が厚みの５〜１５倍である本発明の好ましい態
様とすることにより、衣類への芯材の取り付け等の加工
が容易で、しかも着用時の違和感が少なく着用感が良好
に保ちながら乳房の補整効果の高い、かつ前述した本発
明の機能を有する乳房カップを提供できる。

【０１０２】（１２）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅が２〜５ｍｍ、厚みが０．４〜０．８ｍｍ
で、幅が厚みの５〜７倍である本発明の好ましい態様と
することにより、衣類への芯材の取り付け等の加工が容
易で、しかも乳房にフィットして着用時の違和感が少な
くより一層着用感が良好であり、かつ前述した本発明の
機能を有する乳房カップを提供できる。

【０１０３】（１３）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の幅方向の曲げ応力が厚み方向の曲げ応力の３
〜９倍である本発明の好ましい態様とすることにより、
芯材の最適な幅方向と厚み方向の曲げ応力のバランスが
得られ、すなわち、人体に垂直方向の厚み方向の曲げ応
力を小さく保ったまま衣類の水平方向の曲げ応力となる
幅方向の曲げ応力を大とすることが出来るので、乳房の
縦方向の動きを極端に押さえ込むことなく乳房カップの
水平方向の形態保持性を高めることが可能となり、より
前述した本発明の機能を有効に発揮しうる乳房カップを
提供できる。

【０１０４】（１４）また、本発明の乳房カップに於い
て、芯材の厚み方向の曲げ応力が３〜１２ｇである本発
明の好ましい態様とすることにより、幅方向と厚み方向
の曲げ応力を最適なバランスに保ったまま、乳房カップ
に用いるのに好ましい適度な柔軟性と剛性を有する曲げ
応力をもつ芯材とすることが出来、より人体に対しての
違和感が少なく着用感が良好な乳房カップを提供でき
る。

【０１０５】（１５）また、本発明の乳房カップに於い
て、女性用衣類が乳房カップを有する下着類または水着
である本発明の好ましい態様とすることにより、前述し
た本発明の機能をより的確に発揮し得る乳房カップを提
供できる。

【０１０６】（１６）また、本発明の乳房カップに於い
て、乳房カップを有する下着類がブラジャーまたはボデ
ィスーツである本発明の好ましい態様とすることによ
り、前述した本発明の機能をより的確に発揮し得る乳房
カップを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の乳房カップに用いられる芯材の平面概
略図である。

【図２】図１の芯材の側面概略図である。

【図３】本発明の乳房カップを備えたフルカップタイプ
のブラジャーの表側から見た状態の正面図である。

【図４】図３のブラジャーのＣ−Ｃ′切断面の端面概念
図である。

【図５】図３のブラジャーの一部拡大図である。

【図６】本発明の別の態様の乳房カップを備えたフルカ
ップタイプのブラジャーの表側から見た状態の斜視図で
ある。

【図７】本発明の別の態様の乳房カップを備えたフルカ
ップタイプのブラジャーの表側から見た斜視図である。

【図８】本発明の別の態様の乳房カップを備えた１／２
カップタイプのブラジャーの表側から見た斜視図であ
る。

【図９】本発明の乳房カップを備えたボディスーツの表
側から見た斜視図である。

【図１０】本発明の乳房カップを備えた水着の表側から
見た斜視図である。

【図１１】従来の弾力性細線の外観図である。

【図１２】従来のスパイラルボーンの外観図である。

【図１３】乳房カップに作用する曲げ応力を説明するた
めのブラジャーの左半身部の概略図である。

【符号の説明】

１ 芯材 ２ 金属繊維糸及び／またはテグスからなる糸状物 ３ 芯材の偏平面 ２０ 乳房カップ ２２ 芯材 ２５ ストラップ ２７ ストラップ取付縁 ２９ 乳房カップくり ３０ 乳房カップ ３１ カップ布 ３２ 芯材 ３３ 土台布 ３４ バック布 ３５ ストラップ ３６ 乳房カップ前上辺縁 ３７ ストラップ取付縁 ３８ 乳房カップ脇上辺縁 ３９ 乳房カップくり ４１ バイアステープ ４２ 縫製ライン ５１ 芯材の下端の中点 ６０ 乳房カップ ６２ 芯材 ６８ 乳房カップ脇上辺縁 ６９ 乳房カップくり ７０ 乳房カップ ７２、７２′ 芯材 ７６ 乳房カップ上辺縁 ７９ 乳房カップくり ８０ 乳房カップ ８２ 芯材 ８６ 乳房カップ前上辺縁 ８９ 乳房カップくり ９０ 乳房カップ ９２ 芯材 ９６ 乳房カップ上辺縁 ９８ 乳房カップ脇上辺縁 ９９ 乳房カップくり １３０ 乳房カップ １３２ 芯材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平４−100902（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−14304（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−57905（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−104902（ＪＰ，Ａ) 特開 平７−252704（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−87006（ＪＰ，Ｕ) 「服飾辞典」文化出版局編・発行 1997年２月１日第１版第17刷発行 第 706頁、第226頁及び第915頁 「服装大百科事典」下巻 被服文化協 会編 文化服装学院出版局発行 昭和44 年３月20日初版発行 第158〜162頁 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A41C 3/10 - 3/14

Claims (16)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属繊維糸及び／またはテグスからなる
   糸状物を用いて組み紐状に構成した後偏平状に加工した
   芯材を乳房カップ上端から下端まで女性用衣類の乳房部
   においてほぼ縦方向に少なくとも一本延在させるよう用
   いたことを特徴とする乳房カップ。
2. 【請求項２】 芯材が延在する方向が垂直仮想線（ｐ）
   よりも前中心側に角度１５度脇側に角度２５度の範囲内
   での縦方向である請求項１に記載の乳房カップ。
3. 【請求項３】 芯材が乳頭点近傍を通るように延在する
   請求項１または２のいずれかに記載の乳房カップ。
4. 【請求項４】 乳房カップに延在している芯材が一本で
   ある請求項１〜３のいずれかに記載の乳房カップ。
5. 【請求項５】 糸状物が金属繊維糸である請求項１〜４
   のいずれかに記載の乳房カップ。
6. 【請求項６】 金属繊維糸の主たる素材が鉄、ステンレ
   ススチール、アモルファス合金、または形状記憶合金か
   ら選ばれた少なくとも１種の素材からなる繊維糸である
   請求項１〜５のいずれかに記載の乳房カップ。
7. 【請求項７】 金属繊維糸の主たる素材が形状記憶合金
   である請求項１〜５のいずれかに記載の乳房カップ。
8. 【請求項８】 芯材が更に樹脂コーティング加工が施さ
   れてなる芯材である請求項１〜７のいずれかに記載の乳
   房カップ。
9. 【請求項９】 芯材が乳房の形状に合わせて人体から外
   に向かう方向に凸状に成形されてなる芯材である請求項
   １〜８のいずれかに記載の乳房カップ。
10. 【請求項１０】 芯材を構成する糸状物の太さが１００
    〜５００μｍである請求項１〜９のいずれかに記載の乳
    房カップ。
11. 【請求項１１】 芯材の幅が２〜１０ｍｍ、厚みが０．
    ２〜１．５ｍｍで、幅が厚みの５〜１５倍である請求項
    １〜１０のいずれか記載の乳房カップ。
12. 【請求項１２】 芯材の幅が２〜５ｍｍ、厚みが０．４
    〜０．８ｍｍで、幅が厚みの５〜７倍である請求項１〜
    １０のいずれか記載の乳房カップ。
13. 【請求項１３】 芯材の幅方向の曲げ応力が厚み方向の
    曲げ応力の３〜９倍である請求項１〜１２のいずれかに
    記載の乳房カップ。
14. 【請求項１４】 芯材の厚み方向の曲げ応力が３〜１２
    ｇである請求項１３に記載の乳房カップ。
15. 【請求項１５】 女性用衣類が乳房カップを有する下着
    類または水着である請求項１〜１４のいずれかに記載の
    乳房カップ。
16. 【請求項１６】 乳房カップを有する下着類がブラジャ
    ーまたはボディスーツである請求項１５に記載の乳房カ
    ップ。