JP3148375B2 - 悪路用大型ラジアルタイヤ - Google Patents

悪路用大型ラジアルタイヤ

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JP3148375B2
JP3148375B2 JP19451292A JP19451292A JP3148375B2 JP 3148375 B2 JP3148375 B2 JP 3148375B2 JP 19451292 A JP19451292 A JP 19451292A JP 19451292 A JP19451292 A JP 19451292A JP 3148375 B2 JP3148375 B2 JP 3148375B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、悪路走行用の大型ラジ
アルタイヤに関し、特に、ベルト剛性や総強力を一定値
以上に保持しながら、カットセパレーション性を高め、
耐摩耗性、耐BES性を良好に保つ大型ラジアルタイヤ
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、大型ラジアルタイヤの交錯層に
は、3+9+15+1の構造のスチールコード等を用い
るのが一般的であったが、ゴムの浸透(ペネトレーショ
ン)が不充分のため悪路走行時、カット部分から水が侵
入し、水分による銹発生、接着不良からカットセパレー
ションを生じ易いという問題があった。
【0003】この欠点を解消するため、ゴムが完全に浸
透できるコードも発明されているが、この場合、ベルト
剛性や総強力をある一定値以上にする必要があるため、
どうしてもフィラメント径が太くなり、曲げ剛性が高く
なり、悪路を走行した時ベルトエンドから亀裂が生じ易
く、又この亀裂がつながり易くなるという欠点があっ
た。
【0004】もし曲げ剛性を柔らかくするために、フィ
ラメント径を小さくした2層撚りコードを使用した場
合、総強力が小さすぎて、カットバースト性が悪くなっ
たり、引張剛性が小さ過ぎて接地部のずれが大きくなり
耐摩耗性が悪くなる。それを補うため打込み数を多くす
ると、コードとコードの間の距離が短くなりすぎ、ベル
トエンドに生ずる亀裂がつながり易くなり、耐ベルトエ
ッジセパレーション性(以下耐BES性と略す、ベルト
のエッジ部分からゴムとコードが剥れて来る現象を生じ
難くする性質)が大幅に低下する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ベル
ト剛性や総強力を一定値以上に保持しつつ、3層撚りコ
ードのみを使用した場合のゴムペネトレーションの不足
によるカットセパレーション及び2層撚りコードのみを
使用した場合の強力を保持するため、打込み数を多くし
たり、フィラメント径を太くすることによる耐BES性
の課題を解決したスチールコードを打ち込んだベルトレ
イヤーをベルト交錯層に用いた悪路走行用大型ラジアル
タイヤを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の課題
を解決するため鋭意研究を行った結果、ゴムペネトレー
ションの良好なコードと、曲げ剛性の柔らかいコードと
をある一定の間隔で交互に打ち込んだベルトレイヤーを
交錯層に用い、両者の欠点を相補えば解決し得ることを
見い出して本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は、次の(1)〜(7)
に存する。 (1) コアが1〜2本で、シースが5〜7本であって
スパイラルを持たない2層撚りスチールコードと、3層
撚りスチールコードとを交互に打ち込んだベルトレイヤ
ーをベルト交錯層に用いた大型ラジアルタイヤ。
【0008】(2) 前項1において下記で定義される
式(I)における2層撚りコードの値Aと3層撚りコー
ドの値Bのそれぞれの値の合計が2.7×10-1以下で
ある大型ラジアルタイヤ。 AおよびB=d4×N ………(I) 但し、d:フィラメント径(mm)、N:フィラメント本
数 フィラメント径が異なる場合には、夫々の合計(d1 4×
1+d2 4×N2……)とする。
【0009】(3) 請求項1又は2において、コード
間隔が0.7mm以上、1.4mm以下で打込み、ベルトレ
イヤー50mm当りに占めるコード総断面積SA+SB(下
記で定義される(II)における2層撚りコードの総断面
積SAと3層撚りコードの総断面積SBの合計)が16m
2以上である大型ラジアルタイヤ。 コード総断面積(SAおよびSB)=(d/2)2×π×N×U ………(II) 但し、d:フィラメント径(mm)、N:フィラメント本
数、 U:打込み数(本/50mm)〔ベルトレイヤー内の総打
込み本数を50mm当りに換算した値〕
【0010】(4) 2層撚りコードと3層撚りコード
のコード径の差が0.12mm以下である前項1,2,3
の何れかに記載の大型ラジアルタイヤ。
【0011】(5) 2層撚りコードにおけるコアが1
本、シースが5本である前項1,2,3,4の何れかに
記載の大型ラジアルタイヤ。
【0012】(6) 2層撚りコードにおけるコアが2
本、シースが7本である前項1,2,3,4の何れかに
記載の大型ラジアルタイヤ。
【0013】(7) 2層撚りコードのコアが型付けさ
れている前項1,2,3,4,5,6の何れかに記載の
大型ラジアルタイヤ。
【0014】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明
において、コアを1〜2本の2層撚りコードにするの
は、コアが3本以上の場合、コアの中心にゴムが入らな
いからであり、シースを5〜7本にする理由は、4本以
下ではベルト剛性をある一定値にするためには、コア径
が太くなりすぎ、曲げ剛性が高くなり、悪路での耐BE
S性が極端に悪くなるからである。また、8本以上にす
ると、ゴムが極端に入り難くなるためである。好ましく
は、コア1本の場合、シースは5本、コア2本の場合、
シースは7本が最適である。
【0015】本発明において、2層撚りコードのフィラ
メント径をdmm、フィラメント本数をNとした時d4×
NをAで表し、3層撚りコードの場合、同じくフィラメ
ント径をdmm、フィラメント本数をNとした時、d4×
NをBで表した時、このA+Bの値は、A+B≦2.7
×10-1とすることが望ましい。このA+Bの値が、
2.7×10-1を越えると(A+B>2.7×10-1
なると)、ベルト全体としての曲げ剛性が大きくなり過
ぎ、悪路クラックが発生し易くなる。この場合、いくら
柔らかいコードを用いても悪路耐BES性が悪くなる。
また、B値は0.8×10-1以下になる方が好ましい。
【0016】更に、本発明において、コード間隔(g)
は、0.7mm以上、1.4mm以下(0.7≦g≦1.
4)で打込み、ベルトレイヤー50mm当りに占めるコー
ド総断面積SA+SB(2層撚りコードの総断面積SA
3層撚りコードの総断面積SBの合計)はSA+SB≧1
6mm2とすることが好ましい。なお、コード間隔
(g)、コード断面積(SAおよびSB)は下記のとおり
である。 コード間隔(g)=50/U−コード径(mm) コード総断面積(SAおよびSB)=(d/2)2×π×N×U ………(II) 但し、d:フィラメント径(mm)、N:フィラメント本
数、 U:打込み数(本/50mm)〔ベルトレイヤー内の総打
込み本数を50mm当りに換算した値〕 このベルトレイヤー50mm当りに占めるコード総断面積
(SA+SB)が16mm2未満であると、複合体としての
引張り剛性が大幅に低下し、耐BES性や耐摩耗性が悪
くなる。コード間隔(g)が0.7mm未満になると、い
くらこのようなベルトレイヤーを使用しても耐BES性
が悪くなり、また、1.4mm超になると、複合体として
の引張り剛性が低下し、耐BES性が悪くなる。
【0017】ゴムの浸透性をよりよくするには、コア1
本に対してはシース5〜6本が最適であり、コアを型付
けするとよりゴムの浸透性が向上する。型付けの方法と
しては、クリンプト方式やヘリカル方式等がある。コア
2本に対しても、同様の理由でシースは7本が最適であ
り、同じようにコアを型付けすると、ゴムの浸透性が高
くなる。
【0018】2層撚りコードと3層撚りコードのコード
径の差は、0.12mm以下とすることが好ましく、こ
のコード径の差が0.12mm超になると、同じ溝幅のゴ
ムロールを使用した場合、細い方のコードの打込み乱れ
が生じ易くなり、また、例えそのようなゴムロールを設
計しても、コーティングゴムゲージは一定にしなければ
ならず、そのため、やはり細いところのベルトレイヤー
のトータルゲージがうすくなりすぎて、打込み乱れが生
じ易くなる。この2層撚りスチールコードと、3層撚り
スチールコードとを、前記コード間隔で交互に打ち込ん
だベルトレイヤーを打ち込む角度としては、通常の打込
み角度でよく、円方向65〜74ーの範囲でベルト交錯
層に用いればよい。
【0019】
【実施例】以下に、実施例によって、本発明を更に具体
的に説明するが、本発明はこの実施例によって何等限定
されるものではない。対照例は、一般に使用されている
構造で3+9+15×0.23+1のコード構造のもの
である。特性値は、すべてこの構造の場合を100にし
て、指数表示した。耐カットセパレーション性、耐悪路
セパレーション性、耐ベルトエッジセパレーション性
(耐BES性)は指数が小さい程良く、耐摩耗性は指数
が大きい程良い。また、実車によるフィーリングを評価
した結果を、振動、操縦安定性について「問題あり」、
「問題なし」に分けた。
【0020】下記表1、表2、表3、表4に示す最上の
第I欄は、2層撚りコードのコード構造α、A値、コー
ド径a、SA、ゴムペネトレーションの各値を示し、第
II欄は3層撚りコードのコード構造β、B値、コード
径b、SB、ゴムペネトレーションの各値を示す。ゴム
ペネトレーションの値は、ベルトよりコアを取り出し表
面に附着しているゴムの割合を目視で判断して、「%」
で表示したものである。
【0021】第III欄は、コアに型付けした場合、コア
が1本の場合、図1に示したdc :コアフィラメント素
線径(mm)、Lc:振幅(mm)、型付け率Rc=Lc/d
c、Pc:波長(mm)を示し、コアが2本撚り場合、図2
に示したdc´:1×2の長径(mm),Lc´:撚り線の
振幅(mm)、型付け率Rc´=Lc´/dc´、Pc:波長
(mm)を示す。
【0022】第IV欄は、本発明で使用するその他の特性
値A+B、50mm当りの打込み本数で定義される打込み
数U(本/50mm)、コード(打込み)間隔(mm)、ベ
ルトレイヤーに占めるコード総断面積(mm2)、コード
径の差(mm)を夫々示す。
【0023】第V欄は、耐カットセパレーション性、悪
路耐BES性、耐BES性、耐摩耗性及び振動、操縦安
定性等についての本発明のベルト交錯層を用いた大型ラ
ジアルタイヤの特性値を示した。これらの値は5%前後
は差がないと見てよい。
【0024】この第5欄における耐カットセパレーショ
ン性、悪路耐BES性、耐BES性の評価は、下記評価
法により評価した。 (評価法) 耐カットセパレーション性 1000R20悪路、良路両領域用パターンを悪路で完
全摩耗まで走行させ、第4と第3ベルト間で剥ぎ、第3
ベルト側のカットセパレーションの大きさをコードの接
着不良長さと本数で計りタイヤ全周で測定し、対照例と
対比して比較した。
【0025】耐悪路BES性 前記タイヤを、やはり第3ベルトのエンドを見て、セパ
レーションのつながり率で評価した。100本コードを
見て、何本つながっているかを調べ、指数が小さいのを
良とした。
【0026】耐BES性 1000R20リブ系タイヤで作り、山坂を完全摩耗ま
で走行させ、対照コード、試作コードごとに周上3ヶ所
(タイヤの両側)1ヶ所20本分ベルトエンド亀裂長さ
を測定し、対照コードと対比して指数表示した。指数が
小であれば良である。
【0027】耐摩耗性 対照コード、試作コードを使用したタイヤを試作し、ド
ライブ軸に夫々各2本づつ装着し、良路を走行させるス
クラッチテストを行い、ドライブ利用率を評価し、対照
タイヤ対比で指数表示した。指数大であれば良である。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】比較例1は、全て2+7のゴムペネコード
を使用した例で、A+Bの値が本発明の規定値である
0.27より高い為、耐悪路BES性が悪くなってい
る。実施例1は、2+7×0.37と3+9+15×
0.23+1を組み合せた例で、ゴムペネが良いため、
耐カットセパレーション性が良くなっており、その割に
3+9+15×0.23+1を使用しているため、耐悪
路BES性は悪くなっていない。比較例2は、A+Bが
高くなりすぎている例で、耐悪路BES性が大幅に低下
している。
【0033】実施例2は、コアにクリンプトコアを使用
している例で、ゴムペネが更によくなっており、耐カッ
トセパレーション性が向上している。また、実施例3
は、フィラメント径が細くなっている2+7のクリンプ
トコアの場合である。この例は、実施例であるが、2層
コードと3層撚りコードのコード径に0.15mmの差が
あるため、打込み乱れを生じてしまい、振動、操縦安定
性が多少劣っている。実施例4は、更に細いフィラメン
トを使用した2+7の例である。実施例5は、クリンプ
トコアを使用した1+6の例である。
【0034】比較例3は、コードの打込み間隔が密のた
め、耐悪路BES性、耐BES性とも大幅に悪くなって
いる。比較例4は、コードの打込み間隔が広すぎるた
め、ベルト引張り剛性が弱くなり、耐BES性が悪くな
っており、耐摩耗性も悪くなっている。比較例5は、コ
ード総断面積が小さいため、ベルト剛性が低下し、耐B
ES性も、耐摩耗性も悪くなっている。
【0035】
【発明の効果】本発明では、ベルト剛性や総強力を一定
値以上に保持しながら、3層撚りコードのみを使用した
場合のゴムペネトレーションの不足によるカットセパレ
ーションを防ぎ、一方、2層撚りコードのみを使用した
場合の、強力を保持するために打込み数を多くしたり、
フィラメント径を太くすることによる耐BES性が劣化
する課題を解決した悪路走行用大型ラジアルタイヤを提
供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、1本のコアにクリンプト型付けをし、
N本のシースを設ける場合の型付け率Rc、素線径dc、
振幅Lc、ピッチPcの説明図。
【図2】図2は、2本の撚り線コアにクリンプト型付け
をし、N本のシースを設ける場合の型付け率Rc´、素
線径dc´、振幅Lc´、ピッチPc´の説明図である。
【図3】図3は、2本撚りコード(2+7)と3本撚り
コード(3+9+15+1)をコード間隔gで交互に打
ち込んだベルレイヤーの説明図である。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コアが1〜2本で、シースが5〜7本で
    あってスパイラルを持たない2層撚りスチールコード
    と、3層撚りスチールコードとを交互に打ち込んだベル
    トレイヤーをベルト交錯層に用いた大型ラジアルタイ
    ヤ。
  2. 【請求項2】 請求項1において、下記で定義される式
    (I)における2層撚りコードの値Aと3層撚りコード
    の値Bのそれぞれの値の合計が2.7×10-1以下であ
    る大型ラジアルタイヤ。 AおよびB=d4×N ………(I) 但し、d:フィラメント径(mm)、N:フィラメント本
    数 フィラメント径が異なる場合には、夫々の合計(d1 4×
    1+d2 4×N2……)とする。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、コード間隔が
    0.7mm以上、1.4mm以下で打込み、ベルトレイヤー
    50mm当りに占めるコード総断面積SA+SB(下記で定
    義される(II)における2層撚りコードの総断面積SA
    と3層撚りコードの総断面積SBの合計)が16mm2
    上である大型ラジアルタイヤ。 コード総断面積(SAおよびSB)=(d/2)2×π×N×U ………(II) 但し、d:フィラメント径(mm)、N:フィラメント本
    数、 U:打込み数(本/50mm)〔ベルトレイヤー内の総打
    込み本数を50mm当りに換算した値〕
  4. 【請求項4】 2層撚りコードと3層撚りコードのコー
    ド径の差が0.12mm以下である請求項1,2,3の何
    れかに記載の大型ラジアルタイヤ。
  5. 【請求項5】 2層撚りコードにおけるコアが1本、シ
    ースが5本である請求項1,2,3,4の何れかに記載
    の大型ラジアルタイヤ。
  6. 【請求項6】 2層撚りコードにおけるコアが2本、シ
    ースが7本である請求項1,2,3,4の何れかに記載
    の大型ラジアルタイヤ。
  7. 【請求項7】 2層撚りコードのコアが型付けされてい
    る請求項1,2,3,4,5,6の何れかに記載の大型
    ラジアルタイヤ。
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