JP3146697B2 - エンジンの動弁機構用カムフォロア装置の外輪 - Google Patents

エンジンの動弁機構用カムフォロア装置の外輪

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JP3146697B2 JP30584892A JP30584892A JP3146697B2 JP 3146697 B2 JP3146697 B2 JP 3146697B2 JP 30584892 A JP30584892 A JP 30584892A JP 30584892 A JP30584892 A JP 30584892A JP 3146697 B2 JP3146697 B2 JP 3146697B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明に係るエンジンの動弁機
構用カムフォロア装置の外輪は、例えば自動車用エンジ
ンの動弁機構中に組み込んだ状態で使用する。
【0002】
【従来の技術】自動車用エンジンには各種の構造のもの
があるが、往復ピストン型エンジンの場合は、一部の2
サイクルエンジンを除き、総てクランクシャフトの回転
と同期して開閉する吸気弁及び排気弁を設けている。
【0003】これら吸気弁及び排気弁を駆動する為の動
弁機構としては各種の構造のものが存在するが、例えば
図4に示したSOHC型のものに就いて説明すると、ク
ランクシャフト16の1/2の速度で回転する(4サイ
クルエンジンの場合)1本のカムシャフト17により、
ロッカーアーム18、18を介して吸気弁19及び排気
弁20を往復駆動する様にしている。クランクシャフト
16と同期して回転するカムシャフト17に固設したカ
ム21、21は、ロッカーアーム18、18の端部と摺
接しつつ、吸気弁19及び排気弁20を往復駆動する。
【0004】ところで、近年、エンジン運転時に於ける
カム21、21の周面とロッカーアーム18、18等の
相手側部材の対向部分との摩擦力を低減し、エンジン運
転時に於ける燃料消費率の低減を図る為、上記対向部分
に、カム21、21の回転に伴なって回転するカムフォ
ロア装置を設ける事が行なわれる様になった。
【0005】即ち、図5〜図7に示す様に、カム21と
対向するロッカーアーム18の端部に互いに間隔をあけ
て設けた1対の支持壁部22、22に、軸23の両端部
を支持固定し、この軸23の周囲に、ころ24、24を
介するか又は軸23に直接接触する短円筒状の外輪25
を設け、この外輪25の外径面とカム21の外径面とを
互いに当接させて、カム21の回転に伴ない外輪25
が、軸23を中心として回転する様にしている。
【0006】この様な外輪25を設け、カム21とこれ
に対向する部材との間の摩擦を、滑り摩擦から転がり摩
擦に変える事で、燃料消費率が減少する。
【0007】ところで、上述の様なカムフォロア装置を
エンジンの動弁機構中に組み込んだ場合、そのままで
は、外輪25の外径面によりカム21の外径面に加えら
れる変動荷重に起因して、上記カム21の外周面にピッ
チング等の損傷が生じ易い。
【0008】この為、雑誌『自動車工学』1989年7
月号の特集記事「ローラロッカーアームとフリクション
低減効果」の第39頁にも記載されている様に、カム2
1を含むカムシャフト17を、耐ピッチング性に優れ
た、焼き入れ鋳鉄、チル鋳鉄、焼き入れ鋼、或は焼結合
金の様な、高強度・高硬度の金属材料により造る事が行
なわれている。
【0009】一方、特公平1−30008号公報には、
転動面の表面にRmax が0.3〜1.5μmでランダム
方向の擦傷を形成すると共に、表層部に50kgf/mm2
上の残留応力層を形成した軸受転動体に関する発明が記
載されている。
【0010】又、特開平3−117723〜5号公報に
は、バレル加工により表面に多数の凹みをランダムに形
成し、表層部の硬度を内部の硬度に比べて高くすると共
に、表層部に圧縮残留応力を生じさせる発明が記載され
ている。
【0011】又、特開平3−199716号公報には、
相手部材と接触する表面に表面硬化処理層を設けると共
に、圧縮残留応力のピーク値の深さと、剪断応力分布の
ピーク値の深さとを一致させた軸受が記載されている。
【0012】又、特開平4−54312号公報には、シ
ョット・ピーニング加工により、圧縮残留応力を表面部
分で100kgf/mm2 以上とし、表面下300μmの部分
で40kgf/mm2 以上とした軸受部品に関する発明が記載
されている。
【0013】更に、特公平2−17607号公報には、
金属成品の表面に、成品硬度と同等以上の硬度を有す
る、40〜200μmのショットを、噴射速度100m/
sec 以上で噴射し、表面付近の温度をA3 変態点以上に
上昇させる、表面加工処理法に関する発明が記載されて
いる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記雑誌
『自動車工学』に記載されている様に、単にカム21を
含むカムシャフト17を、焼き入れ鋳鉄の様な、高強度
・高硬度な金属材料により造った場合、今度は上記カム
21の外径面と接触する外輪25の外径面にピーリング
が発生し易い。
【0015】即ち、焼き入れ鋳鉄等の固い金属材料によ
り造られたカム21の外径面の仕上加工は、通常の鋳鉄
の仕上加工に比べて難しく、工業的な表面加工方法によ
った場合は、上記カム21の外径面には図9に示す様
に、多数の微小突起が形成され、上記外径面の表面粗さ
が0.4μmRa〜0.8μmRa程度と、比較的粗くなっ
てしまう。一方、外輪25は、カム21よりも更に硬い
軸受鋼により造られているが、形状がカム21を設けた
カムシャフト17に比べて単純である為、表面の超仕上
加工が容易であり、従って外輪25の外径面は、図8〜
9に示す様に、表面粗さが0.05μmRa前後と、滑ら
かに仕上げられる。この為、外輪25の外径面に保持さ
れる潤滑油26の量は限られたものになる。
【0016】この様に潤滑油26の量が限られると、カ
ムフォロア装置を構成し、エンジンの運転時にカムの外
径面と滑りながら転がり接触する外輪の場合、ピーリン
グの発生により寿命が短くなる場合がある。即ち、SO
HC型、DOHC型エンジンの様に、動弁機構がエンジ
ン上部に存在する場合、この動弁機構への潤滑油の供給
が必ずしも十分に行なわれず、運転時に於ける潤滑条件
が厳しくなる。この様な条件の下で、上記外輪25の外
径面とカム21の外径面とが、滑りながら転がり接触し
た場合、外輪25の外径面に、深さが2〜10μmのピ
ーリングが発生し、外輪25の外径面の寿命が短くなっ
てしまう。
【0017】この場合に、特開平4−54312号公報
に記載された軸受部品に関する発明を、外輪25に適用
しても、潤滑条件が厳しいと、摩擦条件を問わず、耐ピ
ーリング性が不十分となる。又、特開平3−19971
6号公報に記載されたものは、摩擦条件が転がり摩擦だ
けの場合には特に問題がないが、滑り摩擦が生じた場合
には耐ピーリング性が不良となる。又、特公平1−30
008号公報、特開平3−117723〜5号公報に記
載されたものも、潤滑条件が厳しく、接触部の荷重が大
きい等、使用条件が厳しくなると、やはり耐ピーリング
性が不十分となる。又、特公平2−17607号公報に
記載されたものも、そのままではやはり十分な耐ピーリ
ング性を得る事は出来ない。
【0018】更に、前記各公報の他に、特開昭52−1
7525号公報、同56−150622号公報、特公昭
63−44505号公報には、微小粒径のショットを高
速で被加工面に噴射する加工法、若しくは加工物に関す
る発明が記載されている。但し、これら各公報の何れに
も、十分な耐ピーリング性を有する外輪を得られる技術
は記載されていない。
【0019】この様な事情に鑑みて本発明者は先に、表
面からの深さが0〜50μmの範囲を表層部とした場合
に、この表層部の最大圧縮残留応力が50〜110kgf/
mm2、硬度がHv830〜Hv960であり、在留オーステ
ナイトの割合が7容量%以上であり、表面に微細で連続
的な凹凸が形成されており、この凹凸を構成する凹部の
面積が外径面の面積全体に占める割合を80%と仮定し
た場合に於ける、上記凹凸を構成する凸部の真円換算径
を15μm以下とした、転がり摺動部品に関する発明
(特願平4−216562号)を行なった。
【0020】この先発明に係る転がり摺動部品を上記カ
ムフォロア装置を構成する外輪として使用すれば、深さ
が2〜10μmのピーリングが発生するのを防止して、
外輪の外径面の寿命を増大させる事が出来る一方、新た
に次に述べる様な、解決すべき問題が発生する。
【0021】即ち、外径面がカム21と接触し、内径面
が軸23又はころ24と接触する外輪の表面全体を、上
記先発明の様な性状とした場合、カム21の外径面並び
に外輪の外径面部分でのピーリング発生防止を図れる
が、バレル加工又は超仕上加工により表面を平滑にされ
た、上記ころ24の転動面部分で、ピーリングが発生し
易くなったり、或は超仕上加工によりやはり表面を平滑
にされた軸23の外径面が摩耗し易くなる。
【0022】本発明のエンジンの動弁機構用カムフォロ
ア装置の外輪は、上述の様な事情に鑑みて発明されたも
のである。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明のエンジンの動弁
機構用カムフォロア装置の外輪は、エンジンのクランク
シャフトと同期して回転するカムシャフトに固定された
金属製のカムと、このカムに対向して設けられ、このカ
ムの動きを受ける部材に間隔をあけて形成した1対の支
持壁部と、この1対の支持壁部の間に掛け渡す状態で固
定された軸と、この軸の周囲に回転自在に支承された外
輪とから成るエンジンの動弁機構用カムフォロア装置を
構成する。
【0024】特に、本発明によるエンジンの動弁機構用
カムフォロア装置の外輪は、外径面からの深さが0〜5
0μmの範囲を表層部とした場合に、この表層部の最大
圧縮残留応力が50〜110kgf/mm2 であり、同じく表
層部の硬度がHv830〜Hv960であり、表層部の残留
オーステナイトの割合が7容量%以上であり、外径面に
微細で連続的な凹凸が形成されており、この凹凸を構成
する凹部の面積が外径面の面積全体に占める割合を80
%と仮定した場合に於ける、上記凹凸を構成する凸部の
真円換算径を15μm以下とし、且つ、内径面は、超仕
上加工を施されている事を特徴としている。
【0025】尚、凹凸を構成する凹部の面積が外径面の
面積全体に占める割合を80%と仮定した場合に於け
る、上記凹凸を構成する凸部の真円換算径が15μm以
下であるとは、次の様な概念である。即ち、表面の粗さ
曲線は例えば図3に示す様に表わされるが、表面と平行
な仮想の直線aを考えて、この直線aよりも下を凹部
1、1とし、上を凸部2、2とする。そして、多数の凹
部1、1の開口面積の合計が、当該凹部1、1が存在す
る外径面全体の面積の80%となる位置に、上記直線a
を設定したと仮定して、この直線aよりも上に存在する
凸部2、2の真円換算径を15μm以下となる様に、上
記粗さ曲線で表わされる表面の凹凸を規制する。
【0026】
【作用】本発明の外輪は先ず第一に、その外径面に深さ
が2〜10μm程度のピーリングが発生するのを有効に
防止して、耐久性を向上させる事が出来る。
【0027】更に詳しく説明すると、ピーリングの発生
を防止する為には、厳しい潤滑条件の下で使用した場合
でも接触部分に油膜切れが発生しない様にし、仮に油膜
切れが発生した場合でも、短時間であればピーリング発
生に結び付かない様にする事が必要である。即ち、接触
部分に油膜切れが発生した場合には、接触面同士が直接
接触(金属接触)し、外輪の外周面に加わる荷重の殆ど
は、相手部品の表面と接触した、少数の微小突起(凸
部)により支える事になって、各微小突起には大きな応
力が集中すると共に接線力が加わる。
【0028】そして、この応力集中と接線力とに基づい
て、上記外輪の外径面表面に微小なクラックが発生し、
このクラックが進展してピーリングとなる。単に摩耗を
防止する為には、部品表面の硬度を高くすれば良いが、
徒に硬度を高くすると、応力集中に基づいて、ピーリン
グに結び付くクラックが発生し易くなる。
【0029】本発明の外輪の外径面の場合、表面に油膜
を形成させ易くする事で、潤滑条件が厳しい場合にも油
膜切れを発生し難くすると共に、仮に油膜切れが発生し
た場合にも、短時間であればピーリングに結び付く様な
クラックが発生しない様に出来る。
【0030】即ち、本発明の外輪の外径面の場合、表面
に微細で連続的な凹凸が形成されている為、厳しい潤滑
条件の下でも、接触面部分に効果的な油膜形成を行なう
事が出来て、油膜切れの発生を抑える事が出来る。又、
上記凹凸を構成する凹部の面積が外径面の面積全体に占
める割合を80%と仮定した場合に於ける、上記凹凸を
構成する凸部の真円換算径を15μm以下としたので、
上記油膜形成を効率化すると同時に、相手部品の表面と
接触する微小突起である凸部の数を多くして、各凸部に
加わる荷重を低減し、耐ピーリング性の向上が図れる。
【0031】即ち、上記凸部の真円換算径が15μmを
上回った場合、単位面積あたりの凸部及び凹部の数が少
なくなって、外輪の外径面に形成される油膜が不均一と
なり易いだけでなく、相手部品からの荷重を少ない凸部
で受ける事になり、この凸部にピーリングに結び付くク
ラックが発生し易くなる。そこで、本発明の外輪の外径
面の場合、上述の様に、凹凸を構成する凸部の真円換算
径を15μm以下に限定した。
【0032】又、表層部の硬度をHv830〜Hv960の
範囲に規制したので、仮に前記接触部分に油膜切れが生
じた場合でも、短時間であれば、摩耗を抑えつつ、ピー
リングに結び付くクラックの発生を防止出来る。上記硬
度がHv830未満の場合、クラックが発生しない代わり
に摩耗が著しくなり、反対に硬度がHv960を越えた場
合には、摩耗が抑えられる代わりにクラックが発生し易
くなって、何れにしても寿命の低下を来す。
【0033】又、最大圧縮残留応力を大きくする事は、
仮にクラックが発生した場合でも、このクラックがそれ
以上進展するのを防止し、クラックがピーリングに結び
付かない様にする為に重要である。但し、外輪の外径面
の表面に、最大圧縮残留応力が110kgf/mm2 を越える
様な加工を施した場合には、この表面の硬度がHv960
を越えてしまう為、最大圧縮残留応力の最大値を110
kgf/mm2 とした。反対に、最大圧縮残留応力が50kgf/
mm2 未満の場合は、クラックの進展を防止する効果が小
さ過ぎる為、最大圧縮残留応力の最小値を50kgf/mm2
とした。
【0034】更に、延性を有するオーステナイトが多く
残留していた場合には、クラックの発生防止効果を期待
出来るが、残留率が7容量%以下の場合には、クラック
発生防止の効果をあまり期待出来ない。又、上記最大圧
縮残留応力及び硬度の値を、それぞれ前記した範囲に納
める為にも、オーステナイトの残留率を7容量%を越え
る値とする事が必要である。
【0035】即ち、表層部の最大圧縮残留応力と硬度と
が、それぞれ上限値、即ち110kgf/mm2 、Hv960を
越えない様にする為の十分条件として、加工に伴なうオ
ーステナイトの分解率(加工に伴なってオーステナイト
が減少する割合)を30%以下に抑える事がある。一
方、表面加工前に於いて、SUJ2等の軸受鋼中に含まれる
オーステナイトの割合は、11容量%程度である。従っ
て、最大圧縮残留応力と硬度とが上限値を越えない様に
する為には、加工後に於けるオーステナイトの割合が7
容量%を越える事が必要である。尚、ショット・ピーニ
ングによる加工が弱過ぎた場合、最大圧縮残留応力と硬
度とが、それぞれの下限値、即ち、50kgf/mm2 、Hv8
30に達しない。
【0036】更に、本発明によるエンジンの動弁機構用
カムフォロア装置の外輪は、内径面に超仕上加工を施し
ている為、この内径面と、バレル加工又は超仕上加工を
施されたころ又は軸の外径面との間の油膜パラメータΛ
(=h/σ、h:EHL油膜厚さ、σ:合成粗さ)を大
きくして、外輪の内径面ところ又は軸の外径面との長寿
命化を図れる。即ち、外輪の外径面及び内径面を、それ
ぞれ相手面の性状に応じて、最適の加工法により加工す
る事によって、外輪全体の耐久性並びにころ又は軸の耐
久性向上を図れる。
【0037】
【実施例】次に、本発明の外輪を造る為に外径面を所定
の性状に加工する方法の1例と、本発明の効果を確認す
る為に本発明者が行なった実験とに就いて説明する。
【0038】実験を行なうに関して、下表に示す様に、
5種類の本発明品と7種類の比較品との、合計12種類
の試験片を用意した。試験片の素材は何れも軸受鋼(SU
J2)であり、外径面に所望の処理を施すのに先立って、
通常行なうのと同様の焼き入れ処理(800〜850℃
で加熱後、油冷)、焼き戻し処理(150〜200℃)
を施した。試験片の大きさは、外径が20mm、内径が1
3mm、厚さ(幅)が8mmの短円筒状とした。
【0039】
【表1】
【0040】比較品に属する試験片8は、外輪の外径面
を研磨用のクロスで研磨する事で磨いたのみで、外輪の
外径面を硬化させる為のショット・ピーニング加工を施
していない。又、比較品と本発明品とに属する、試験片
1〜7、9〜12の11種類の試験片に就いては何れ
も、特開平4−54312号公報に記載されている発明
の場合と同様に、図1に示す様な装置を用いてショット
・ピーニング加工を施す事で、外輪の外径面を硬化さ
せ、表層部に大きな圧縮残留応力を発生させた。
【0041】図1に示したショット・ピーニング装置の
構造と作用とに就いて簡単に説明すると、ホッパ3から
加圧タンク4内に投入された微細なショット粒5は、給
気管6からこの加圧タンク4内に送り込まれる圧縮空気
に押されてミキサ7内に押し込まれる。そして、分岐管
8を通じてこのミキサ7に送られる圧縮空気に押されて
ノズル9に送られ、このノズル9から被加工面に向けて
勢い良く吹き付けられる。この結果、被加工面が硬化
し、この被加工面に圧縮残留応力が生じると共に、この
被加工面に微小な凹凸が形成される。
【0042】尚、ショット粒5としては、試験片1〜
7、9〜12の何れに就いても、平均粒径が0.03〜
0.7mmのアルミナ粒を使用した。又、ショット粒5の
投射速度(ノズル9から噴出するショット粒5の初速
度)は、32〜180m/sec とした。この投射速度の調
整は、上記分岐管8の途中に設けた調整弁10の開度を
調整する事で行ない、この投射速度の調整に基づき、各
試験片1〜7、9〜12の表面に生じる圧縮残留応力、
硬度及び残留オーステナイト量の調整を行なった。
【0043】又、試験片8及び試験片1〜5は、上記シ
ョット・ピーニング加工後、内径面に超仕上加工を施し
ている。試験片6〜7、9〜12は、ショット・ピーニ
ング加工のままである。ショット・ピーニング加工は、
一度に8個ずつ行ない、表層部の硬度、表層部の最大残
留応力、表層部の残留オーステナイト量、凹部の面積率
及び凸部の真円換算径の総てに就いて、ほぼ同じ試験片
を8個ずつ作成した。
【0044】この様にして得られた12種類8個ずつ、
合計96個の試験片1〜12の総てに就いて、図2に示
す様な試験装置による耐久試験を行なった。
【0045】この試験装置は、モータにより回転駆動さ
れる回転軸11の外径面2個所位置に、互いに間隔をあ
けて2個の相手リング12、12を固定している。この
相手リング12、12の間隔に合わせて押圧片13の片
面に設けた、1対の支持片14、14には、それぞれ1
個ずつの試験片15、15を、それぞれ複数個ずつのこ
ろを介して、回転自在に支承し、各試験片15、15の
外径面と上記相手リング12、12の外径面とを接触さ
せている。この結果、上記回転軸11の回転に伴なって
各試験片15、15が回転する。従って、図2に示した
試験装置では、同時に2個の試験片15、15の耐久試
験を行なう。
【0046】上記回転軸11の回転速度は、各試験片1
5、15の回転速度が5100r.p.m となる様に調整し
た。又、上記押圧片13は回転軸11に向けて、356
kgfの力で押圧した。従って、各試験片15、15の外
径面と各相手リング12、12の外径面との接触部に
は、それぞれ178kgf のラジアル荷重が加わる。又、
各相手リング12、12の外径面の性状は、試験開始前
に於いて、表面硬度がHRC 60〜61、表面の平均粗さ
Raが0.38〜0.45であった。更に、上記接触部の
潤滑は、10W−30の鉱物油をはねかける事で行なっ
た。
【0047】試験は400時間打ち切りで行ない、途中
で所定時間毎に中断して各試験片15、15の外径面を
観察し、ピーリング発生の有無を検査した。ピーリング
の発生が観察された場合には、その時点で当該試験片1
5、15に関する耐久試験を終了した。前記表にこの結
果を、試験打ち切り時間として記載した。尚、同一種類
の試験片8個に就いて打ち切り時間が異なった場合に
は、最も打ち切り時間が短かったものを記載した。又、
試験打ち切り時間が400時間であるとは、最後迄ピー
リングが発生しなかった事を表わしている。
【0048】尚、凹部の面積率を80%として凸部の真
円換算径を求める作業は、倍率200倍の光学顕微鏡に
より得られた画像を解析する事により行なった。この
際、光学顕微鏡により得られた画像に、輪郭を強調し明
瞭化する為の画像処理を行ない、凹部の面積率の設定作
業は、光源の明るさ及び2値化レベルを調節する事によ
り行なった。又、凸部の定量は、設定した2値化レベル
を上回るもの(明るい部分)に就いて抽出した2値化像
に対して行なった。
【0049】上記耐久試験の結果を表わす前記表の記載
から明らかな通り、本発明の外輪の外径面は、潤滑条件
が厳しい場合にも、十分な耐ピーリング性を得られる。
又、表には記載しなかったが、本発明品の場合、ピッチ
ングが発生する時間も300時間以上と、比較品に比べ
て長く、この面からも優れた耐久性を有する事を確認出
来た。
【0050】尚、前記表で各数値の後ろに記載した符号
の内、○は当該数値が本発明の限定範囲に含まれている
事を、×は当該数値が本発明の限定範囲から外れている
事を、それぞれ表わしている。又、表層部の最大残留応
力の内、+は引っ張り残留応力である事を、−は圧縮残
留応力である事を、それぞれ表わしている。
【0051】又、試験を打ち切った時点にて、試験片1
5、15を分解し、各試験片15、15を支承している
ころの転動面(外径面)にピーリングが発生しているか
否かを確認した。この結果、前記表に示す様に、外輪の
内径面にショット・ピーニングを施しただけのものは、
ころの転動面にピーリングを発生したが、超仕上加工を
施したものは、ピーリングが発生しなかった。
【0052】そこで、総てのころの転動面にピーリング
が発生しなかったものを◎とし、1本でもピーリングが
発生したものを×として、それぞれ前記表のころ転動面
評価の欄に記載した。
【0053】
【発明の効果】本発明のエンジンの動弁機構用カムフォ
ロア装置の外輪は、以上に述べた通り構成されるが、外
輪の外径面が強化されると共に油膜形成能力の優れた粗
さ形状を形成する為、外輪の外径面にピーリングが発生
する事を防止して、この外輪の耐久性を向上させる事が
出来る。又、外輪の内径面は超仕上加工の為、粗さが小
さく、ころ又は軸の外径面との間の油膜パラメータが大
きくなり、寿命延長が期待出来る。従って外輪を組み込
んだカムフォロア装置全体としての耐久性の向上が図れ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ショット・ピーニング装置の略縦断面図。
【図2】耐久試験装置の半部縦断面図。
【図3】表面形状限定の概念を説明する為の粗さ曲線。
【図4】エンジンの動弁機構の1例を示す斜視図。
【図5】図4に示した動弁機構に組込んだカムフォロア
装置の側面図。
【図6】図5のA−A断面図(転がり軸受の場合)。
【図7】図5のA−A断面図(すべり軸受の場合)。
【図8】従来の外輪の外径面に形成された加工痕を示す
模式図。
【図9】図8の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 凹部 2 凸部 3 ホッパ 4 加圧タンク 5 ショット粒 6 給気管 7 ミキサ 8 分岐管 9 ノズル 10 調整弁 11 回転軸 12 相手リング 13 押圧片 14 支持片 15 試験片 16 クランクシャフト 17 カムシャフト 18 ロッカーアーム 19 吸気弁 20 排気弁 21 カム 22 支持壁部 23 軸 24 ころ 25 外輪 26 潤滑油
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 33/34 F01L 1/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンのクランクシャフトと同期して
    回転するカムシャフトに固定された金属製のカムと、こ
    のカムに対向して設けられ、このカムの動きを受ける部
    材に間隔をあけて形成した1対の支持壁部と、この1対
    の支持壁部の間に掛け渡す状態で固定された軸と、この
    軸の周囲に回転自在に支承された外輪とから成るエンジ
    ンの動弁機構用カムフォロア装置を構成する上記外輪で
    あって、外径面の表面からの深さが0〜50μmの範囲
    を表層部とした場合に、この表層部の最大圧縮残留応力
    が50〜110kgf/mm2 であり、同じく表層部の硬度が
    Hv830〜Hv960であり、表層部の残留オーステナイ
    トの割合が7容量%以上であり、外径面に微細で連続的
    な凹凸が形成されており、この凹凸を構成する凹部の面
    積が外径面の面積全体に占める割合を80%と仮定した
    場合に於ける、上記凹凸を構成する凸部の真円換算径を
    15μm以下とし、且つ、内径面は、超仕上加工を施さ
    れている事を特徴とするエンジンの動弁機構用カムフォ
    ロア装置の外輪。
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