JP3141809B2 - 液滴噴射装置 - Google Patents

液滴噴射装置

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JP3141809B2
JP3141809B2 JP3528497A JP3528497A JP3141809B2 JP 3141809 B2 JP3141809 B2 JP 3141809B2 JP 3528497 A JP3528497 A JP 3528497A JP 3528497 A JP3528497 A JP 3528497A JP 3141809 B2 JP3141809 B2 JP 3141809B2
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジエット用
記録ヘッドのために開発された装置であるが、インクジ
エット用記録ヘッドのほかにも、小型電気回路あるいは
集積回路の導電性被膜形成、その他微細な印刷を行うた
めの装置として広く利用することができる。本発明は、
本願出願人が先に出願した特許出願、特願平7−213
442号(本願出願時において未公開、以下「先願」と
いう)に開示した技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】本願出願人は、上記先願において新しい
原理に基づく液滴噴射装置を開示した。この液滴噴射装
置は、噴射液供給口および噴射開口部を有する噴射室
と、この噴射室内に充填された噴射液に圧力を印加する
加圧手段とを備えた装置であって、この噴射開口部はそ
の圧力により噴射開口部で噴射液が空気に接触する噴射
液の表面に表面波を形成させ、その表面波の作用によっ
て噴射開口部の径より小さい径の液滴を噴射させるもの
である。噴射液の表面に表面波を形成させるには、その
噴射開口部の形状として、図15に例示するような断面
形状を開示した。図15は液滴噴射装置の構成を示す図
である。噴射液供給口1、噴射開口部2、加圧板3、圧
電アクチュエータ4、噴射室5、インクタンク6を備え
ている。
【0003】噴射室5内のインクに圧電アクチュエータ
4により駆動される加圧板3に機械的変位を与えると、
噴射室5に蓄えられたインクの圧力が変化し、噴射開口
部2のインク表面に表面波が発生する。その表面波は噴
射開口部2の周囲から中央部へと推移し、中央部で互い
に干渉して高い波高となりインクの液滴がその表面から
離脱するに至る。インクはインクタンク6から噴射液供
給口1を通り噴射室5に供給される。
【0004】この現象を概念的に説明すると、静止する
水面に水滴を落とすと、その水滴の落下点を中心にリン
グ状の表面波が拡がってゆく。本発明の噴射開口部2の
インク表面ではちょうどこの逆の現象が生じているので
あって、噴射開口部2の周囲から開口中心に向かう表面
波を発生させると、これがこの噴射開口部2の中心に集
中し、インク滴が表面を離脱することになる。
【0005】図16は液滴噴射装置を複数備えた印字記
録装置のノズル部分を説明する構造図である。図16に
示すように、液滴噴射装置141 〜14n の噴射開口部
2を複数並べてそれぞれのインクの噴射を制御すること
により、この噴射開口部2の前面を矢印方向に通過する
紙に印字を行うことができる。これにより、印字記録装
置のヘッドを構成することができる。
【0006】この新しい原理に基づく装置では、噴射開
口部の径より小さい径の液滴を噴射させることができる
から、工作精度をゆるやかに設定して口径の大きい噴射
開口部を設けても、小さい液滴を噴射させることにより
高い解像度の印字あるいは印刷を行うことが可能にな
る。すなわち、安価にかつ簡便に高い解像度の装置を提
供することができる。そのほか、噴射開口部の径を大き
くすることができることから、液づまりが発生しにく
く、周囲の環境変化に対して適応力の高い装置を得る、
すなわち利用可能な温度範囲や湿度範囲などが拡大され
る。さらに、液体の性質についてもその制約条件が緩和
され、各種のインクに対して適応可能とすることができ
るなど優れた特長がある。
【0007】本願発明者らは、この新しい原理に基づく
液滴噴射装置についてさまざまな試験を行った。そして
この原理の液滴噴射装置はかなり有効であることを試験
により確認した。実用的な印字記録装置の規格は、読み
やすい日本語の活字を印刷するためには少なくとも約3
00dpi(dots per inch) 以上の解像度が必要とされ
る。以下、本発明では、300dpi以上の実用的な印
字記録装置を開発することを目標として研究を進めた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ここで実用的な装置を
得るために最も重要な課題は、噴射開口部から噴射液が
そのまま吐出するのではなく、その開口部の表面に表面
波を形成させることである。しかもその表面波を実用的
な温度や湿度などの環境条件下でつねに安定に形成させ
るにはどのようにすればよいか、ということである。こ
れには、(1)開口部の機械的な構造あるいは形状が大
きく影響するとともに、(2)噴射液の粘度、表面張
力、密度その他液体としての物理的性質が関係し、さら
に(3)噴射室に印加する圧力を制御する技術が必要で
ある。
【0009】本発明はこのうち上記(1)開口部の機械
的な構造あるいは形状について、数多くの試験を行った
中から達成された条件およびそれに基づく装置構造を開
示するものである。すなわち、本発明は、噴射液供給口
および噴射開口部を有する噴射室と、この噴射室内に充
填された噴射液に圧力を印加する加圧手段とを備え、前
記噴射開口部はこの圧力により前記噴射開口部の噴射液
表面に表面波を形成させ前記噴射開口部の径より小さい
径の液滴を噴射させる形状に形成された液滴噴射装置に
おいて、実用的な安定した装置を得るために、前記開口
部の機械的な構造あるいは形状について有効なものを提
供することを目的とする。本発明は、小型かつ簡便であ
り、解像度の高い液滴噴射装置を提供することを目的と
する。本発明は300dpi以上の実用的な印字記録装
置を得ることを目的とする。本発明は、小型電気回路あ
るいは集積回路の導電性被膜形成、その他微細な印刷を
行うための装置として広く利用することができる液滴噴
射装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は液滴噴射装置で
あって、噴射液供給口および噴射開口部を有する噴射室
と、この噴射室内に充填された噴射液に圧力を印加する
加圧手段とを備え、前記噴射開口部はこの圧力により前
記噴射開口部の噴射液表面に表面波を形成させ前記噴射
開口部の径より小さい径の液滴を噴射させる形状に形成
された液滴噴射装置である。本発明の特徴とするところ
は、前記噴射室は、前記噴射開口部に向けて口径が狭く
なりかつ噴射方向に垂直な平面断面の形状が円形または
正多角形の壁面を備えたところにある。
【0011】すなわち、噴射開口部の中心部で表面波が
合波するためには、噴射開口部の形状は円形または正多
角形が適している。この噴射開口部は噴射室の壁面の端
部に形成されているので、噴射室の平面断面の形状もま
た円形または正多角形とすることが適当である。
【0012】前記壁面が前記噴射方向に垂直な平面との
なす角度θ(図1参照)が65度以下に設定され、前記
噴射開口部は、その直径Dがこの噴射開口部から噴射さ
れる所望の液滴直径の1.25倍以上に設定されること
が望ましい。試験の結果からさらに望ましくは、角度θ
は、60度以下、15度以上の範囲に設定されることが
よい。
【0013】発明者らは、先願の液滴噴射装置について
実用的な装置を開発するにあたり、上記角度θおよび直
径Dの値について最適な値を得ることができた。一般的
に、液滴噴射装置で用いるインクは水性インクの場合に
は、その粘度は1.5cP〜5cP程度、油性インクで
は8cP〜15cP程度、ホットメルトインクでは8c
P〜15cP程度である。表面張力は何れの場合でも1
0〜70dyn/cm程度であり、このような種々のイ
ンクを用いて吐出実験を行ったところ、角度θが大きく
なり、65度を越えると、液体の自由表面上に表面波を
形成できなくなること、すなわち液体が柱状に突出する
ことがわかった。この角度θを小さくしてゆくと噴射開
口部に表面波を形成することが可能であり、さらに詳し
く調査した結果、角度θを60度より小さく設定する
と、液体が筒状に突出する現象はほとんど発生しなくな
ることがわかった。すなわち、角度θを60度より小さ
く設定することで、液体に印加した圧力の大部分が表面
波の形成に用いられ、同心円状の良好な表面波が効率よ
く形成されることがわかった。この下側の限界は噴射室
の容積や隣接するインクタンクとの係わりなど工作上の
問題に加え、開口部付近の肉厚の低下で強度や剛性が低
下すること等により定まる。現実的な構造から例えばθ
=15度程度が下限になる。
【0014】さらに、表面波を干渉させて液滴を吐出さ
せるためには直径Dの大きさは、吐出する液滴の所望直
径の1.25倍以上必要となることがわかった。すなわ
ち、この値より小さいと形成された表面波は表面張力に
よりまとまってしまい、良好な表面波を形成することが
できなくなる。この値より大きくすると良好な表面波が
形成され、この値をさらに大きくすると噴射開口部を加
工する加工コストは小さくなる。一方この値を大きくす
ると、隣接する噴射開口部との距離の制約を受けるこ
と、インクの蒸発が大きくなること、形成された表面波
が表面を伝搬するときに減衰すること、などが配慮され
なければならない。現実的な構造としてこの値は吐出す
る所望の最大液滴径の3倍程度が上限になる。
【0015】一方、噴射室の壁面が印加された圧力によ
り変位することがあると、表面波の発生が妨げられる。
すなわち、噴射室内の壁面の角度θを60度より小さく
していくと、液体に印加した圧力の大部分が表面波の形
成に用いられ、表面波が効率よく形成されるが、その一
方で、噴射開口部付近の肉厚が低下するため、壁面の強
度や剛性が低下する。この剛性低下によって、噴射開口
部のエッジ付近が液滴噴射にともない上下に変位するよ
うになり、表面波の発生効率が低下したり、液滴噴射が
不安定になるなどの問題が生じるようになる。
【0016】したがって、噴射室の壁面をナイフエッジ
に形成することにより、噴射室壁面の剛性を高くするこ
とができる。すなわち、噴射室の壁面は噴射開口部に向
けてだんだん狭くなるが、途中から、外に向けて開くよ
うに形成することができる。このとき、実質的な噴射開
口部は噴射室の直径が最も狭くなる部分である。
【0017】また、噴射室に印加する圧力による壁面の
変位を防止する補強部材を噴射開口部周囲に設けること
も有効である。この構造により、噴射室の壁面が圧力に
したがって変位することがなくなり、有効に表面波を形
成することが可能になる。この場合に補強部材の開口は
液面上の表面波の発生および噴射開口部からの液滴噴射
を妨げないような形状であれば任意の形状に設定するこ
とができる。補強部材の開口は、噴射開口部の開口径よ
り小さい液滴が有効に通過するのであれば噴射開口部の
開口径より小さい形状であってもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
【0019】
【実施例】
(第一実施例)本発明第一実施例の構成を図1を参照し
て説明する。図1は本発明第一実施例装置の構成図であ
る。
【0020】本発明は液滴噴射装置であって、噴射液供
給口1および噴射開口部2を有する噴射室5と、この噴
射室5内に充填された噴射液に圧力を印加する加圧手段
としての加圧板3とを備え、噴射開口部2はこの圧力に
より噴射開口部2の噴射液表面に表面波を形成させ噴射
開口部2の径より小さい径の液滴を噴射させる形状に形
成された液滴噴射装置である。
【0021】ここで、本発明の特徴とするところは、噴
射室5は、噴射開口部2に向けて口径が狭くなりかつ噴
射方向に垂直な平面断面の形状が円形または正多角形の
壁面を備えたところにある。
【0022】この壁面が前記噴射方向に垂直な平面との
なす角度θが65度以下に設定され、噴射開口部2は、
その直径Dがこの噴射開口部2から噴射される所望の液
滴の直径の1.25倍以上に設定されている。
【0023】図1に示した液滴噴射装置では、所望の液
滴の直径は約70μmであり、噴射開口部2の直径Dは
100μmとした。また、噴射室5の壁面が液滴の噴射
方向に垂直な平面とのなす角度θは60度とした。液滴
の直径を約70μmとし、滴速を4m/秒とすれば、一
般に、コート紙上に直径120μmのドットを形成する
ことができる。これによりおよそ300dpi(dots pe
r inch) の解像度を得ることができる。
【0024】噴射室5の平面断面の形状を円形または正
多角形とした理由を説明すると、噴射開口部2の中心部
で表面波が合波するためには、噴射開口部2の形状は円
形または正多角形が適していることは自明である。この
噴射開口部2は噴射室5の壁面の端部に形成されている
ことから噴射室5の平面断面の形状もまた円形または正
多角形とすることが適当であることがわかる。
【0025】ここで、角度θ≦65度、直径D≧1.2
5×液滴直径、という結論を得た過程を説明する。発明
者らは、先願の液滴噴射装置について実用的な装置を開
発するにあたり、図1に示すように、角度θを60度、
直径Dを100μmとした液滴噴射装置と、図4に示す
ように、角度θを70度、直径Dを80μmとした液滴
噴射装置とを試作した。ここで、図4は所望の結果を得
られなかった試作装置を示す図である。図2および図3
は、図1に示した角度θを60度、直径Dを100μm
とした液滴噴射装置における液滴形成過程を示す図であ
る。図1に示すように、圧電アクチュエータ4により駆
動される加圧板3の機械的変位により噴射開口部2の周
囲に形成された表面波は、図2に示すように噴射開口部
2の中心部で合波されて液柱を形成する。その液柱の形
成速度および高さが液滴を離脱させるために十分な条件
に達すると、図3に示すように、液滴7が離脱する。こ
のときの液滴7の直径は約70μmであり、所望の結果
を得ることができた。
【0026】図5および図6は、図4に示した角度θを
70度、直径Dを80μmとした液滴噴射装置における
液滴形成過程を示す図である。図4に示す液滴噴射装置
では、角度θおよび直径D以外のパラメータ(圧電アク
チュエータ4に印加する単発パルス幅等)はすべて図1
に示した液滴噴射装置と同一の条件とした。図4に示す
ように、圧電アクチュエータ4により駆動される加圧板
3の機械的変位により噴射開口部2には、インク表面が
その表面張力により凸形に盛り上がる。このとき、イン
ク表面に表面波の存在は確認できない。図5に示すよう
に、その盛り上がりはさらに液柱を形成する。その液柱
の形成速度および高さが液滴を離脱させるために十分な
条件に達すると、図6に示すように、液滴7´が離脱す
る。このときの液滴7´の直径は80μmである。液滴
7´の直径は噴射開口部2の直径Dとほぼ等しく、所望
の液滴の直径である70μmは得られなかった。
【0027】このような試作結果に基づき、種々のパラ
メータを基礎にシミュレーションを行った。このパラメ
ータをコンピュータ装置に入力し、コンピュータ装置上
で表面波の発生する状況のシミュレーションを行うこと
を試みた。以下のシミュレーションは、角度θおよび直
径D以外のパラメータ(圧電アクチュエータ4に印加す
る単発パルス幅等)はすべて同一の条件の下に行った。
図7は角度θを90度に設定された噴射室5を有する液
滴噴射装置を示す図である。図7に示すように、角度θ
を90度とすると、加圧板3の機械的変位による圧力は
噴射室5内のインクを均等に噴射開口部2に向かい押し
上げる力として働き、噴射開口部2のインク表面に表面
波を発生させることはできない。
【0028】このように、インク表面に表面波を発生さ
せることができない状態では、図4〜図6に示した液滴
7の形成過程を辿ることになり、所望の結果を得ること
はできない。
【0029】図8は角度θを85度に設定された噴射室
5を有する液滴噴射装置を示す図である。発明者らは、
角度θを90度から減じながらシミュレーションを行っ
た。図8に示すように、角度θを90度より減ずること
により、噴射室5の壁面がテーパを形成し、加圧板3の
機械的変位にしたがって噴射室5内のインクは壁面に近
いほど圧力が大きくなるとともにその流速も大きくな
る。
【0030】図9は角度θを65度に設定された噴射室
5を有する液滴噴射装置を示す図である。角度θを65
度としてシミュレーションを行ったとき、初めて表面波
の発生を確認することができた。これは、噴射室5の壁
面のテーパが、壁面近くのインクの圧力および流速を表
面波が発生するために十分な値まで上昇させたことを示
している。さらに、図10は角度θを35度に設定され
た噴射室5を有する液滴噴射装置を示す図であるが、角
度θが65度を下回った時点から角度θが35度となっ
た時点でも表面波の発生を確認することができた。
【0031】さらに、角度θは35度以下となっても表
面波の発生をシミュレーションにより確認することがで
きたが、角度θの減少に伴い、噴射室5またはインクタ
ンク6の容量を減ずる必要や、噴射開口部2付近の強度
および剛性が低下する課題があるため、角度θの下限は
15度に設定することが実用上適当であるものと考えら
れる。さらに、液体が筒状に突出する現象を抑制し、印
加した圧力に対して表面波を効率よく形成するには、角
度θは15度〜60度に設定することがよい。
【0032】このように、インク表面に表面波を発生さ
せることができれば、図1〜図3に示した液滴7の形成
過程を辿ることができるため、所望の結果を得ることが
できる。
【0033】次に、噴射開口部2の直径が液滴7の直径
の1.25倍以上に設定されることが適当である理由に
ついて説明する。ここでは、噴射室5の壁面が液滴7の
噴射方向に垂直な平面とのなす角度θは60度とした。
図11は直径Dが液滴7の直径の1.25倍より小さい
液滴噴射装置における表面波発生状況を示す図である。
圧電アクチュエータ4により駆動される加圧板3の機械
的変位により噴射開口部2のインク表面に発生した表面
波は、噴射開口部2の直径が小さいために互いに接近し
た位置に発生する。このため互いの表面張力にしたがっ
て吸引される。
【0034】図12は直径Dが液滴7の直径の1.25
倍より小さい液滴噴射装置における表面波発生後の状況
を示す図である。図11に示すように、互いの表面張力
にしたがって吸引された表面波は互いに干渉することな
く、図12に示すように一体化してしまう。図11に示
した状態では、一時的に表面波が発生したかのように見
えるが、すぐに表面波は消滅してしまう。このため、図
12に示すようにインク表面が凸形に盛り上がった状態
となる。この図12に示す状態は、図4に示した状態と
同じであり、その後は、図5および図6に示した液滴7
の形成過程を辿ることになり、所望の結果を得ることは
できない。
【0035】このように、液滴噴射を行うためには、噴
射開口部2のインク表面に発生した表面波が、互いの表
面張力により吸引されない距離を保つことが重要である
ことがわかる。この現象についても、コンピュータ装置
によるシミュレーションの結果、液滴直径の1.25倍
以上の直径を有する噴射開口部2を用いることにより、
噴射開口部2のインク表面に発生した表面波が、互いの
表面張力により吸引されないことがわかった。
【0036】このように、液滴直径の1.25倍以上の
直径を有する噴射開口部2を用いることにより図1〜図
3に示した液滴7の形成過程を辿ることになり、所望の
結果を得ることができる。
【0037】本発明第一実施例における液滴直径は約7
0μmであるので、噴射開口部2の直径Dは100μm
とした。さらに、噴射開口部2の直径Dが大きいと、良
好な表面波が形成され、この値をさらに大きくすると噴
射開口部2を加工する加工コストは小さくなる。一方こ
の値を大きくすると、隣接する噴射開口部2との距離の
制約を受けること、インクの蒸発が大きくなること、形
成された表面波が表面を伝搬するときに減衰すること、
などが配慮されなければならない。現実的な構造として
この値は吐出する所望の最大液滴径の3倍程度が上限に
なる。
【0038】(第二実施例)本発明第二実施例の液滴噴
射装置を図13および図14を参照して説明する。図1
3および図14は本発明第二実施例の液滴噴射装置の構
成図である。噴射室5内の壁面の角度θを60度より小
さくしていくと、液体に印加した圧力の大部分が表面波
の形成に用いられ、表面波が効率よく形成されることは
既に述べたとおりである。このとき、噴射室5内の壁面
の角度θを小さくしていくと、噴射開口部2付近の肉厚
が低下するため、強度や剛性が低下する。この剛性低下
によって、噴射開口部2のエッジ付近が液滴噴射にとも
ない上下に変位するようになり、表面波の発生効率が低
下したり、液滴噴射が不安定になる。本発明第二実施例
は、この強度や剛性の低下を補償するための例を示すも
のである。本発明第二実施例は角度θを35度に設定し
た例を示す。
【0039】図13に示した構成によれば、補強プレー
ト8によって噴射開口部2の変位を拘束することができ
る。このため、表面波の発生効率を向上させることがで
きることがわかった。補強プレート8によって形成され
る第二の壁面9は、表面波発生の初期段階で、噴射開口
部2の周囲に発生する表面波による液面の盛り上がり
が、その表面張力により第二の壁面9に吸引されること
がないような形態とすることが必要である。したがっ
て、図13に示す例では、噴射開口部2の直径よりも僅
かに大きな直径で第二の壁面9が設けられている。
【0040】また、図14に示す例では、噴射室5およ
び噴射開口部2を加工する段階で、噴射室5の壁面の一
部をナイフエッジとする加工を施すことにより、噴射開
口部2よりも液面に近い部分に実質的な噴射開口部2′
を形成することができる。このように加工することによ
り、角度θが小さくなっても実質的な噴射開口部2′の
強度や剛性が低下することはない。壁面の一部をナイフ
エッジとする理由は、前述したように、実質的な噴射開
口部2′の周囲に発生する表面波による液面の盛り上が
りが、その表面張力により壁面に吸引されることがない
ような形態とするためである。
【0041】(実施例まとめ)本発明第一実施例では、
所望の液滴直径を70μmとして説明したが、図1で示
した液滴噴射装置における圧電アクチュエータ4に印加
する単発パルス幅をさらに短く制御することにより、7
0μmよりも小さな直径を有する液滴7を形成すること
ができる。これにより、300dpi以上の解像度を有
する印字記録装置を実現することができる。
【0042】また、本発明第一および第二実施例では、
インクを噴射する印字記録装置として液滴噴射装置を説
明したが、インクの代わりに導電性を有する液体(溶解
したインジウム等)を用い、小型電気回路あるいは集積
回路のバンプ(導電性被膜)形成に利用することもでき
る。さらに、本発明第一および第二実施例の液滴噴射装
置は、その他微細な印刷を行うための装置として広く利
用することができる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
小型かつ簡便であり、解像度の高い液滴噴射装置を実現
することができる。本発明では、噴射開口部の径より小
さい径の液滴を噴射することができるから、噴射開口部
の工作精度は低くすることができ、安価に製造すること
ができる。また、噴射開口部が大きいことからインクが
固まりにくく、インク詰まりによる不良が激減する。本
発明により、300dpi以上の解像度を有する実用的
な印字記録装置を市場で安価に販売することができる。
さらに、小型電気回路あるいは集積回路の導電性被膜形
成、その他微細な印刷を行うための装置として広く利用
することができる液滴噴射装置を実現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例装置の構成図。
【図2】角度θを60度、直径Dを100μmとした液
滴噴射装置における液滴形成過程を示す図。
【図3】角度θを60度、直径Dを100μmとした液
滴噴射装置における液滴形成過程を示す図。
【図4】所望の結果を得られなかった試作装置を示す
図。
【図5】角度θを70度、直径Dを80μmとした液滴
噴射装置における液滴形成過程を示す図。
【図6】角度θを70度、直径Dを80μmとした液滴
噴射装置における液滴形成過程を示す図。
【図7】角度θを90度に設定された噴射室を有する液
滴噴射装置を示す図。
【図8】角度θを85度に設定された噴射室を有する液
滴噴射装置を示す図。
【図9】角度θを65度に設定された噴射室を有する液
滴噴射装置を示す図。
【図10】角度θを35度に設定された噴射室を有する
液滴噴射装置を示す図。
【図11】直径Dが液滴の直径の1.25倍より小さい
液滴噴射装置における表面波発生状況を示す図。
【図12】直径Dが液滴の直径の1.25倍より小さい
液滴噴射装置における表面波発生後の状況を示す図。
【図13】本発明第二実施例の液滴噴射装置の構成図。
【図14】本発明第二実施例の液滴噴射装置の構成図。
【図15】液滴噴射装置の構成を示す図。
【図16】液滴噴射装置を複数備えた印字記録装置のノ
ズル部分を説明する構造図。
【符号の説明】
1 噴射液供給口 2 噴射開口部 2′実質的な噴射開口部 3 加圧板 4 圧電アクチュエータ 5 噴射室 6 インクタンク 7、7´ 液滴 8 補強プレート 9 第二の壁面 141 〜14n 液滴噴射装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−314664(JP,A) 特開 平6−115069(JP,A) 特開 平6−238884(JP,A) 特許2927266(JP,B2) 特許2927265(JP,B2) 特許2927264(JP,B2) 特許2861980(JP,B2) 特許2842320(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/135 B41J 2/045 B41J 2/055

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 噴射液供給口および噴射開口部を有する
    噴射室と、この噴射室内に充填された噴射液に圧力を印
    加する加圧手段とを備え、前記噴射開口部はこの圧力に
    より前記噴射開口部の噴射液表面に表面波を形成しこの
    発生した前記表面波を周囲から前記開口部の中央に向か
    って集中させ前記表面波の干渉の作用によって前記噴射
    開口部の径より小さい径の液滴を噴射させる形状に形成
    された液滴噴射装置であって、 前記噴射室は、前記噴射開口部に向けて口径が狭くなり
    かつ噴射方向に垂直な平面断面の形状が円形または正多
    角形の壁面を有することを特徴とする液滴噴射装置。
  2. 【請求項2】 前記壁面が前記噴射方向に垂直な平面と
    のなす角度θ(図1参照)が65度以下に設定され、 前記噴射開口部は、その直径Dがこの噴射開口部から噴
    射される所望の液滴直径の1.25倍以上に設定された
    請求項1記載の液滴噴射装置。
  3. 【請求項3】 前記角度θは、60度以下に設定された
    請求項2記載の液滴噴射装置。
  4. 【請求項4】 前記噴射室の壁面がナイフエッジに形成
    された請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴噴射装
    置。
  5. 【請求項5】 前記圧力による前記壁面の変位を防止す
    る補強部材を前記噴射開口部周囲に設けた請求項1ない
    し4のいずれかに記載の液滴噴射装置。
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