JP3135299B2 - 樹脂成形体 - Google Patents

樹脂成形体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械的強度に優れ、低
い摩擦係数と高い限界PV値を示す樹脂成形体に関する
ものである。
【0002】本発明の熱可塑性樹脂成形体は、耐摩耗性
で摩擦音の少ない成形体であり、自動車などの歯車、カ
ム、チェーンガイド、ギアなどのように高荷重下で、摺
動摩擦を伴う成形体として有用である。
【0003】
【従来の技術】最近、プラスチック摺動部材の用途分野
は拡大されており、非潤滑系で高加重下で、激しい摩擦
を受けるベアリング、雰囲気温度の高い条件下に使用さ
れるブッシング又は部品の軽薄短小化に伴なう肉厚の薄
い摺動部品などの分野に用途分野が拡大しており、プラ
スチックの摺動部材に対する要求性能も厳しいものにな
ってきている。
【0004】ポリアミド樹脂はその機械的性質、耐熱
性、電気特性、摺動特性を生かし、多くの分野に使用さ
れている。最近は自動車の軽量化、組立て工程合理化か
ら、金属に変わる自動車部品としても用いられるように
なった。
【0005】しかしながら、自動車のエンジンルーム内
の厳しい環境下で使用されるギア、プリー、チェーンガ
イドなどの摩擦を伴う摺動部材にポリアミド樹脂を用い
る場合には、金属に比べ高加重、高摺動速度条件下で
摺動摩擦熱により軟化が生じ、限界PV値がこれらの、
用途に用いるには小さいこと。樹脂の摩耗量が多く、
長時間使用するには耐久性に劣ること。摩擦係数が、
摩擦速度に対して変化し、安定した摺動特性を示さず、
摩擦音などが発生するなどの問題があり、高度の摺動性
能の要求される部品には使用できなかった。
【0006】これまでポリアミド樹脂に炭素繊維を配合
することで、機械的強度、限界PV値がある程度向上す
ること(特開昭49−18782)やチタン酸カリウム
繊維と高密度ポリエチレンを配合して摺動性が向上する
(特開平2−54853)ことが開示されているが、摩
擦線速度の低いところで摩擦係数を低下させることや摩
擦音に関する明確な記載はなく、耐熱性でかつ機械的強
度に優れた摩擦係数の低い、摩擦音のしない熱可塑性樹
脂成形体は知られていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低摩擦係数
で、摩擦係数の線速度依存性が小さく、かつ限界PV値
が高く、しかも、機械強度に優れ、摩擦音のしない樹脂
成形体を得ることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の
結果、ポリアミド樹脂と特定のポリオレフィンからなる
樹脂組成物に無機充填剤を配合した組成物が摩擦係数を
低下させ、さらには、摺動時の摩擦音の少ないことを見
出だし本発明に至った。すなわち、本発明は、(A)ポ
リアミド樹脂20〜95重量、(B)ポリプロピレン
樹脂80〜90重量%と高密度ポリエチレン樹脂10〜
20重量%からなる混合物に酸無水物を0.1〜5.0
重量%付加させてなる変性ポリオレフィン樹脂3〜40
重量、および(C)未変性ポリオレフィン樹脂1〜7
0重量からなる熱可塑性樹脂組成物100重量部と無
機充填剤5〜150重量部からなる樹脂成形体に関する
ものである。
【0009】本発明の熱可塑性樹脂成形体はポリアミド
樹脂と特定のポリオレフィン樹脂と無機充填剤とを溶融
混合して得られた成形体であるが、本発明に使用するポ
リアミド樹脂(A)としては、ナイロン4、ナイロン
6、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン
11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン1212など
の脂肪族ポリアミドやナイロン4T(T:テレフタル
酸)、ナイロン4I(I:イソフタル酸)、ナイロン6
T、ナイロン6I、ナイロン12T、ナイロン12I等
のような半芳香族ポリアミドや、これらの混合物、共重
合体などを例示することができる。上記樹脂の製造方法
は、常法による技術を用いて行なうことができる。例え
ば、溶液重合、溶融重合、界面重合などを例示すること
ができる。上記樹脂の分子量は、好ましくは数平均分子
量で5000から100000、さらに好ましくは、1
0000から50000までのものである。数平均分子
量5000以下のものは、機械的強度が低く、1000
00以上のものは成形時の流動性が悪くなる。
【0010】本発明で言う、変性ポリオレフィン(B)
とは、ポリプロピレン樹脂80〜90重量%と高密度ポ
リエチレン樹脂10〜20重量%からなる樹脂混合物に
酸無水物を変性ポリオレフィン基準で0.1〜5.0重
量%付加させてなるものである。ここに用いるポリプロ
ピレン樹脂としては、ポリプロピレン、エチレンプロピ
レン共重合物、エチレンプロピレンジエン共重合物など
が挙げられ、MFR0.1〜1.0g/10分程度の物
が好ましい。また、ここに用いる高密度ポリエチレン樹
脂としては、MFR10〜25g/10分程度のものが
好ましい。これらポリオレフィンを変性するのに用いら
れる酸無水物としては、例えば、マレイン酸、コハク
酸、イタコン酸、ハイミック酸の酸無水物などを例示す
ることができる。これらのうち、無水マレイン酸を用い
るのが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂中の高密度ポ
リエチレン樹脂量を10〜20重量%と限定した理由
は、その量が10重量%よりも少ないと酸無水物で変性
する際の分子量低下が大きく、20重量%を越えると最
終的に得られる成形体のウエルド部強度が低くなるから
である。
【0011】変性ポリオレフィン樹脂の酸無水物の付加
量を変性ポリオレフィン樹脂基準で0.1〜5.0重量
%とした理由は、0.1%未満ではポリアミド樹脂のア
ミノ末端基との反応性が乏しくなり、ウエルド強度並び
に耐衝撃性が発現されないからである。5重量%を越え
ると量的効果が認められないばかりか、ゲル化、着色な
どの問題が生じるからである。
【0012】変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、例
えば、あらかじめポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹
脂と無水マレイン酸および過酸化物を所定量定量し、ブ
レンダーなどを用いて混合したものを2軸押出し機など
で溶融混合することで製造できるが、この方法に限られ
たものではない。
【0013】本発明に使用する未変性ポリオレフィン
(C)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
ブテン、ポリヘキセン、エチレンプロピレン共重合体、
エチレンプロピレンジエン共重合体、スチレンブタジエ
ン共重合体、スチレンブタジエン共重合体の水素化物、
スチレンイソプレン共重合体の水素化物などがあげられ
る。上記成分(A)、(B)、(C)の配合割合は、ポ
リアミド樹脂20〜95重量、変性ポリオレフィン樹
脂3〜40重量、および未変性ポリオレフィン樹脂1
〜70重量である。ポリアミド樹脂量を20〜95重
(好ましくは30〜80重量)とした理由は、配
合量が下限より少ないと、ポリアミド樹脂(A)の本来
有する機械的性質を低下させるためであり、また、前記
上限より多い場合には、摺動性の改善が成されないため
である。
【0014】同様に(B)を3〜40重量(好ましく
は、15〜35重量)とした理由は配合量が前記下限
より少ないと(B)の配合による(A)と(C)との相
溶性の改善効果が見られず、とくにウエルド強度が低下
するからであり、また、前記上限よりも多い場合には
(B)の配合による量的効果が認められないためであ
る。
【0015】さらに、(C)を1〜70重量(好まし
くは10〜60重量)とした理由は、配合が前記下限
より少ないと、摺動性能、とくに摩擦係数を小さくする
効果が認められないためであり、また前記上限よりも多
い場合には、耐熱性の低下が認められるためである。
【0016】成分(A),(B)および(C)からなる
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(B)および/または
(C)成分の平均分散粒子経が20μm以下の組成物で
ある。この平均分散粒子経が20μmを越えると、ウエ
ルド強度の低下が著しいばかりでなく、安定した摩擦係
数を示さない。好ましい平均分散粒子経は10μm以下
である。さらに好ましくは5μm以下である。
【0017】本発明の無機充填剤(D)としては、ポリ
アミド樹脂/変性ポリオレフィン樹脂/未変性ポリオレ
フィン樹脂からなる樹脂組成物に配合した際、剛性の向
上がはかれるばかりでなく、低摩擦速度における摩擦係
数を小さくさせるものであり、例えば、ガラス繊維、炭
素繊維、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム、
アスペスト、炭化ケイソ、セラミック繊維、窒化ケイソ
などの繊維状強化剤、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、
カオリン、クレー、バイロトフィライト、ベントナイ
ト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、ネフェリ
ンシナイト、タルク、アタルパルジャイト、ウオラスナ
イト、PMF、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸カ
ルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アン
チモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸
化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビー
ズ、ガラスパウダー、石英、石英ガラスなどの強化充填
剤をあげることができる。充填剤の配合量は、前記
(A)+(B)+(C)の熱可塑性樹脂100重量部に
対して5〜150重量部、好ましくは10〜100重量
部である。150重量部を越えると加工性が悪くなるた
めに成形品の表面がいちじるしくそこなわれ、5重量部
未満では剛性向上が認められなく、また低摩擦速度にお
ける摩擦係数の改善効果も認められない。
【0018】本発明の樹脂成形体に、通常の熱可塑性樹
脂に添加される添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、紫
外線吸収剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、染料、顔料、界
面活性剤、可塑剤、他のポリマー等を必要に応じて配合
することも特に制限されるものではない。
【0019】本発明の樹脂成形体の調製は、ブラベンダ
ー、ニーダー、バンパリーミキサー、2軸あるいは単軸
の押し出し機等の技術によって達成される。
【0020】本発明の樹脂成形体は、射出成形、押し出
し成形、ブロー成形などの技術で成形され用いられる。
【0021】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はそ
の要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるもの
ではない。
【0022】本発明に用いた原料および試験方法を次に
示す。
【0023】(1)原料 ポリアミド樹脂 ポリアミド66樹脂(旭化成工業株式会社製、数平均分
子量約20000) ポリプロピレン樹脂 旭化成(株)製PP ホモポリマー MFR=0.5 高密度ポリエチレン樹脂 旭化成(株)製 サンテック HDPE MFR=19 ポリオレフィン樹脂 旭化成(株)製PP ホモポリマー MFR=30 無水マレイン酸 日本油脂(株)製 クリスタルMAN 有機過酸化物 日本油脂(株)製 パーヘキサ25B ガラス繊維 旭ファイバーガラス社製 JAFT−IIA (2)試験方法 引張試験(1/8inch) ASTM D638に従い試験を行った。
【0024】曲げ試験(1/8inch) ASTM D790に従い試験を行った。
【0025】摩擦摩耗試験 摩擦摩耗試験機は鈴木式摩擦摩耗試験機によって測定を
行った。測定条件は、成形品の面圧を10kg/cm2
に保ち、摩擦係数が15分間安定したことを確認した後
に、次の測定すべき線速度に変化させて行った。第1表
の摩擦係数は、限界PV値の摩擦係数を示した。第2表
の摩擦係数は、測定線速度の摩擦係数を示す。
【0026】実施例、比較例に用いる変性ポリオレフィ
ン樹脂(B)の製造方法を以下に示す。
【0027】製造例1 実施例1〜3、比較例5〜7に用いる変性ポオレフィ
ン樹脂(B)は、ポリプロピレン樹脂を85重量
ポリエチレン樹脂を15重量部を混合して、混合物1
00重量部にたいして、無水マレイン酸0.5重量
部、有機過酸化物0.2重量部を添加し、ドライブレ
ンドしたものを70mmφ単軸押出し機(L/D=3
0.5)にて、シリンダー温度180℃、スクリュウ回
転数80rpmで途中ベント孔より脱気を行いながら溶
融重合し、樹脂ペレットを得た。この様にして得られた
変性ポリオレフィン樹脂(B)の無水マレイン酸グラフ
ト量を表1に示す。
【0028】製造例2 比較例3に用いる変性ポリオレフィン樹脂(B)は、
無水マレイン酸を0.2重量部とした以外は、製造例1
と同様に製造し、樹脂ペレットを得た。この様にして得
られた変性ポリオレフィン樹脂(B)の無水マレイン酸
グラフト量を表1に示す。
【0029】製造例3 比較例4に用いる変性ポリオレフィン樹脂(B)は、
ポリプロピレン樹脂を80重量部、ポリエチレン樹脂
を20重量部とした以外は、製造例1と同様に製造し、
樹脂ペレットを得た。この様にして得られた変性ポリオ
レフィン樹脂(B)の無水マレイン酸グラフト量を表1
に示す。
【0030】実施例1 ポリアミド樹脂65重量部、製造例1で作った変性ポ
リオレフィン樹脂25重量部、ポリプロピレン樹脂1
0重量部からなる樹脂100重量部にたいしてガラス
繊維を12重量部添加したものを池貝鉄工(株)PCM
−45mmφ2軸押出し機(L/D=33.5)にて溶
融混合して得られた樹脂ペレットを日精樹脂(株)PS
−40E射出成形機により射出成形を行い各試験におけ
る試験片を作成した。その結果を表1および表2に示
す。
【0031】実施例2 実施例1のガラス繊維を26重量部とした以外は、実
施例1と同様に行った。その結果を表1および表2に示
す。
【0032】実施例3 実施例1のガラス繊維を50重量部とした以外は、実
施例1と同様に行った。その結果を表1および表2に示
す。
【0033】比較例1 ポリアミド樹脂を100重量部だけ用いた以外は、実
施例1と同様に行った。その結果を表1および表2に示
す。
【0034】比較例2 ポリアミド樹脂を65重量部、ポリオレフィン樹脂
を35重量部用いた以外は、実施例1と同様に行った。
その結果を表1に示す。
【0035】比較例3 ポリアミド樹脂を65重量部、製造例2で作った変性
ポリオレフィン樹脂を35重量部用いた以外は、実施例
1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0036】比較例4 ポリアミド樹脂を65重量部、製造例3で作った変性
ポリオレフィン樹脂を35重量部用いた以外は、実施例
1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0037】比較例5 ポリアミド樹脂を65重量部、製造例1で作った変性
ポリオレフィン樹脂を35重量部用いた以外は、実施例
1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0038】比較例6 ポリアミド樹脂を65重量部、製造例1で作った変性
ポリオレフィン樹脂10重量部、ポリオレフィン樹脂
25重量部を用い、70mmφ単軸押出し機を用いた以
外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示
す。
【0039】比較例7 実施例1のガラス繊維を0重量部(無添加)とした以
外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1および
表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂お
よび無機充填剤からなる本発明の樹脂成形体は、線速度
に依存した極大値の摩擦係数が低下し、摩擦音がなくな
る効果がある。さらに、限界PV値を低下させず、摩擦
音がなく摩擦係数の低下したものであり、かつ、機械的
強度、剛性にも優れているために、自動車部品(スター
タモーターギア、ワイパーモーターギア、チェインガイ
ド)や産業ロボットなどのギアなどのに好適に用いるこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 77/00 - 77/12 C08L 23/00 - 23/36 C08K 3/00 - 13/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリアミド樹脂20〜95重量
    、(B)ポリプロピレン樹脂80〜90重量%と高密
    度ポリエチレン樹脂10〜20重量%からなる混合物に
    酸無水物を0.1〜5.0重量%付加させてなる変性ポ
    リオレフィン樹脂3〜40重量、および(C)未変性
    ポリオレフィン樹脂1〜70重量からなる熱可塑性樹
    脂組成物100重量部と無機充填剤5〜150重量部か
    らなる樹脂成形体。
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