JP3134008B2 - スクロール式圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば空気調和機の
冷凍サイクルを構成する圧縮機として用いられるスクロ
ール式圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】たとえば、空気調和機の冷凍サイクルを
構成する圧縮機においては、通常のロータリ式圧縮機と
比較して、運動騒音が極めて低く、かつ吸込弁や吐出弁
など不要で部品点数が少なくてすみ、しかも圧縮性能の
よいスクロール式圧縮機が多用される傾向にある。この
種のスクロール式圧縮機は、図４に示すような構成部品
からなる圧縮機構部を備えている。

【０００３】すなわち、１は支持フレームであって、こ
の上面部にはキー溝２が設けられる凹陥部３が形成され
る。中心部には、枢支孔４を備えたボス部５が設けられ
る。周面には吸込孔６が開口し、凹陥部３内に連通す
る。

【０００４】支持フレーム１の凹陥部３内には、オルダ
ムリング７を介して旋回スクロール翼８が収容される。
上記オルダムリング７の下面側のキー部７ａは、上記凹
陥部３に設けられるキー溝２に掛合する。また、オルダ
ムリング７上面側に設けられるキー部７ｂは、旋回スク
ロール翼８下面側に設けられる図示しないキー溝に掛合
する。

【０００５】上記旋回スクロール翼８は、鏡板部９の上
面側に渦巻状の翼部１０が一体に突設され、下面側に上
記支持フレーム１の枢支孔４内に挿入されるボス部１１
が一体に突設されてなる。

【０００６】これらオルダムリング７および旋回スクロ
ール翼８を覆うように、支持フレーム１の上面に固定ス
クロール翼１２が載設される。この固定スクロール翼１
２は、鏡板部１３の下面側に、旋回スクロール翼８の翼
部１０と噛合する図示しない翼部が一体に設けられてな
る。

【０００７】上記固定スクロール翼１２の鏡板部１３周
端側には複数の取付用孔１４…が、かつ支持フレーム１
の凹陥部３外周には複数のねじ孔１５…が、それぞれ所
定間隔を存して設けられ、固定スクロール翼１２を支持
フレーム１上に載置した状態で互いに連通する。

【０００８】そして、対向する取付用孔１４とねじ孔１
５に、図示しない固定ボルトを螺挿することにより、固
定スクロール翼１２は支持フレーム１に取付け固定さ
れ、圧縮機構部１６の組立がなされる。

【０００９】なお、このような組み込み時において、固
定スクロール翼１２と旋回スクロール翼８の位置を正確
に出すための位置決め手段として、支持フレーム１のね
じ孔１５近傍位置に一対の位置決めピン１７，１７が突
設され、これと対向する固定スクロール翼１２のボルト
孔１４近傍位置に一対の位置決め用孔１８，１８が設け
られる。

【００１０】そして、支持フレーム１の位置決めピン１
７，１７に固定スクロール翼１２の位置決め用孔１８，
１８を嵌挿し、固定スクロール翼１２を位置決めしてか
ら、固定ボルトの螺挿作業を行うこととなる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】ところで、スクロール
式圧縮機においては、上述した圧縮機構部１６の組立作
業性に問題がある。

【００１２】すなわち、位置決めピン１７，１７および
位置決め用孔１８，１８は、支持フレーム１の軸心に対
称な位置、すなわち、互いに１８０°の間隔を存して設
けられる。したがって、固定スクロール翼１２を支持フ
レーム１に対して１８０°反対側に取付けてしまう、誤
作業が発生する恐れがある。

【００１３】旋回スクロール翼８の翼部１０の位置によ
っては、翼部１０先端に固定スクロール翼１２の翼部先
端が当接して、組み込みが不可能になる。もしくは、翼
部１０相互の噛合が可能となる場合もあり、一応は組み
込みができてしまう。

【００１４】前の場合は、当然、作業者が気がついて組
み込み作業を中断し、固定スクロール翼１２を位置決め
ピン１７から引き抜き、改めて固定スクロール翼１２を
１８０°回動して位置を変え、組み直す。したがって、
余分な労力を費やすこととなる。

【００１５】後の場合は、作業者が気がつかずにそのま
ま作業を継続してしまい、それ以降の工程で異常が判明
することが多い。最後まで気がつかない場合は、試験運
転の際に発見される。すなわち、各スクロール翼８，１
２の噛合位置に対する上記吸込孔６の位置が正反対であ
るところから、設定圧縮条件が得られない。

【００１６】このような誤作業防止対策として、たとえ
ば、固定ボルトが螺挿する取付用孔１４およびねじ孔１
５のピッチを、部分的に不等間隔とすることにより、位
置決めピン１７に対する位置が１８０°ずれる誤りが無
くなる。

【００１７】ただし、この場合は、必要な取付用孔１４
…およびねじ孔１５…の数が多いところから、不等間隔
のピッチ設定作業が非常に面倒であり、作業性が低下し
て、大量生産に不適である。

【００１８】本発明は上記事情に着目してなされたもの
であり、その目的とするところは、支持フレームにオル
ダムリングおよび旋回スクロール翼を組み込んだ状態
で、固定スクロール翼を取付固定する際の、固定スクロ
ール翼の位置決め確認を容易にでき、作業性の向上化を
得るとともに、コストに悪影響を与えることのないスク
ロール式圧縮機を提供しようとするものである。

【００１９】

【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため
第１の発明は、支持フレームに、旋回スクロール翼を組
み込むとともに固定スクロール翼を取付固定し、固定ス
クロール翼の渦巻状の翼部と、旋回スクロール翼の渦巻
状の翼部とを噛合させ、これら翼部と各スクロール翼の
鏡板部とで圧縮空間を形成し、旋回スクロール翼を旋回
運動させて、圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して
吐出するスクロール式圧縮機において、上記支持フレー
ムに対する固定スクロール翼の位置決めを、支持フレー
ムと固定スクロール翼の軸心線に対して非対称の位置に
備えた一対の位置決めピンによりなすことを特徴とする
スクロール式圧縮機である。

【００２０】第２の発明は、上記支持フレームに対する
固定スクロール翼の位置決めを、互いにその直径を異な
らせた一対の位置決めピンによりなすことを特徴とする
スクロール式圧縮機である。

【００２１】

【作用】第１の発明で、一対の位置決めピンを、支持フ
レームと固定スクロール翼の軸心線に対して非対称の位
置に備えたので、正規の位置以外は、支持フレームに対
する固定スクロール翼の位置が合わず、したがって固定
スクロール翼の位置決めを誤ることがない。

【００２２】第２の発明で、一対の位置決めピンを、互
いに直径を異ならせたので、たとえ１８０°対称の位置
に位置決めピンを設けても、支持フレームに対する固定
スクロール翼の位置決めを誤ることがない。

【００２３】

【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面にもとづい
て説明する。図２に一部省略したスクロール式圧縮機を
示し、たとえば冷凍装置に用いられるものとして説明す
る。

【００２４】図中２０は密閉ケースであり、この密閉ケ
ース２０内上部に支持フレーム２１が設けられ、回転軸
２２を回転自在に枢支している。上記回転軸２２には後
述する圧縮機構部２３が連結され、下部にはステータ２
４とロータ２５とからなる電動機部２６が設けられる。

【００２５】上記圧縮機構部２３は、支持フレーム２１
に取付け固定される固定スクロール翼２７と、回転軸２
２上端の偏心部に枢支される旋回スクロール翼２８と、
この旋回スクロール翼２８の自転を規制し旋回運動のみ
行わせるオルダムリング２９とから構成される。

【００２６】上記固定スクロ−ル翼２７の上面は凹陥状
に形成され、中央部には吐出ポート３１が設けられ、さ
らに、吐出ポート３１を囲繞するバルブカバー３２が載
設される。

【００２７】固定スクロール翼２７周面一部には、上記
バルブカバー３２で囲繞される空間室と外周面とを貫通
する吐出孔３３が設けられ、ここに密閉ケース２０を貫
通する吐出管３４が接続される。吐出管３４は、冷凍装
置の図示しない凝縮器に連通する。一方、上記密閉ケー
ス２０側部には、冷凍装置の図示しない蒸発器と連通す
る吸込管３５が接続され、この開口端は密閉ケース２０
内部に対向している。

【００２８】上記固定スクロール翼２７および旋回スク
ロール翼２８は、互いに、鏡板部３６，３７と、この鏡
板部３６，３７に一体に設けられる渦巻状の翼部３８，
３９とから構成される。

【００２９】これら翼部３８，３９相互は噛合されると
ともに、上記固定スクロール翼鏡板部３６と上記旋回ス
クロール翼鏡板部３７相互とで囲繞される、圧縮空間Ｓ
が形成される。

【００３０】しかして、このようにして構成されるスク
ロール式圧縮機において、電動機部２６に通電して圧縮
機構部２３を駆動すると、吸込管３５から被圧縮ガスで
ある低圧の冷媒ガスが密閉ケース２０内に導入され、充
満する。この冷媒ガスは、支持フレーム２１に設けられ
る吸込通路を介して、圧縮空間Ｓの外周側に吸込まれ
る。

【００３１】上記圧縮空間Ｓに吸込まれた冷媒ガスは、
旋回スクロール翼２８の旋回運動にともなって中心部に
移送され、かつ空間容量が減少することにより圧縮され
る。所定圧まで上昇したところで、吐出ポート３１から
バルブカバー３２内へ吐出され、さらに吐出管３４を介
して外部の凝縮器に導かれる。上記電動機部２６は、負
荷に応じた最適な運転周波数に制御され、最適な条件で
の空気調和をなす。このような作用をなすスクロール式
圧縮機は、圧縮機構部２３の組立を、図１に示すように
して行う。

【００３２】上記支持フレーム２１には、上記オルダム
リング２９および旋回スクロール翼２８を組み込む凹陥
部４０が設けられるとともに、この周囲の上端面には、
複数のねじ孔４１…が等間隔で開口する。さらに、凹陥
部４０周囲上端面には、一対の位置決めピン４２ａ，４
２ｂが突設される。

【００３３】ここでは、上記位置決めピン４２ａ，４２
ｂの直径および突出高さは、互いに同一に設定される。
ただし、互いの位置は、支持フレーム２１と固定スクロ
ール翼２７の軸心線に対して非対称の位置に設定しなけ
ればならない。

【００３４】なお説明すれば、一方の位置決めピン４２
ａと支持フレーム２１中心０とを結ぶ軸線Ｌａに対し
て、他方の位置決めピン４２ｂと支持フレーム２１中心
０とを結ぶ軸線Ｌｂは所定方向に所定角度θだけ位置を
ずらせて突設される。

【００３５】固定スクロール翼２７の鏡板部３７周端に
は、ねじ孔４１…と同一間隔を存して複数の取付用孔４
３…が設けられ、さらに、位置決めピン４２ａ，４２ｂ
と対向する位置に一対の位置決め用孔（一方のみ図示）
４４が設けられる。

【００３６】特に、上記位置決めピン４２ａ，４２ｂ
と、位置決め用孔４４の位置設定では、単純に１８０°
位置をずらせて設ける場合と比較して、ある程度手間が
かかることは避けられないが、その数が一対であること
に限定されるので、加工作業性の低下は極く僅かです
む。

【００３７】実際の組立にあたっては、支持フレーム２
１の凹陥部４０内にオルダムリング２９と旋回スクロー
ル翼２８を組み込んだ後、固定スクロール翼２７を支持
フレーム２１に載置する。

【００３８】そして、支持フレーム２１のねじ孔４１…
に固定スクロール翼２７の取付用孔４３…を対向させ、
これらに図２にのみ示す固定ボルト４５を螺挿して、固
定スクロール翼２７の取付固定をなす。上記固定スクロ
ール翼２７の位置を支持フレーム２１に対して正しく設
定するために、上記位置決めピン４２ａ，４２ｂと位置
決め用孔４４が設けられる。

【００３９】すなわち、支持フレーム２１上に固定スク
ロール翼２７を載置する際に、支持フレーム２１の位置
決めピン４２ａ，４２ｂに固定スクロール翼２７の位置
決め用孔４４を対向し、嵌挿する。

【００４０】このとき、一対の位置決めピン４２ａ，４
２ｂおよび位置決め用孔４４を、支持フレーム２１と固
定スクロール翼２７の軸心線に対して非対称の位置に備
えたので、互いの位置が合致し、かつ嵌挿可能であるの
は、全周３６０°の範囲で１ケ所でしかない。換言すれ
ば、作業者が、支持フレーム２１に対する固定スクロー
ル翼２７の取付位置を錯誤することがなく、常に確実に
正しい位置決めができる。

【００４１】また、図３に示すように、各位置決めピン
１４２ａ，１４２ｂを１８０°間隔を存して配置し、か
つ互いの直径を大小異ならせてもよい。当然、図示しな
いが、対応する位置決め用孔の直径も異なることにな
る。

【００４２】このような構成であっても、位置をずらせ
た組み込みが不可能となり、上記実施例と同様の効果を
得られる。しかも、位置決めピン１４２ａ，１４２ｂお
よび位置決め用孔の位置設定が容易である。

【００４３】また、同様に、各位置決めピンを１８０°
間隔を存して配置し、かつ互いに軸心からの距離を異な
らせておけば、位置をずらせた組み込みが不可能とな
り、同様の効果を得られる。

【００４４】さらに、先に図１に示したような、軸心線
に対して非対称の位置設定の位置決めピンで、さらにそ
の上に、図３に示したように互いの直径を大小異ならせ
たものであってもてもよい。当然、対向する位置決め用
孔の位置および直径も異なることとなる。

【００４５】このようにすれば、各位置決めピンと位置
決め用孔との判別が一目瞭然になり、支持フレーム２１
上に固定スクロール翼２７を載置する前に、対応する位
置の判断が容易につく。

【００４６】なお、各実施例において、位置決めピン４
２ａ，４２ｂ，１４２ａ，１４２ｂを支持フレーム２１
側に設け、位置決め用孔４４を固定スクロール翼２７側
に設けたが、逆に、位置決めピンを固定スクロール翼２
７側に設け、位置決め用孔を支持フレーム２１に設ける
ようにしてもよい。

【００４７】いずれの実施例においても、支持フレーム
２１に対して固定スクロール翼２７を取付固定した後
は、上記位置決めピン４２ａ，４２ｂ，１４２ａ，１４
２ｂは不要なものとなるので、抜き取っても全く支障が
ない。

【００４８】上記スクロール式圧縮機は、必ずしも冷凍
サイクルを構成する機器に備えられるものに限定され
ず、他の種類の被圧縮ガスもしくは空気を圧縮する場合
にも用いることができる。

【００４９】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、一
対の位置決めピンを、支持フレームと固定スクロール翼
の軸心線に対して非対称の位置に備え、もしくは、互い
に直径を異ならせて、支持フレームに対する固定スクロ
ール翼の位置決めをなすようにしたから、固定スクロー
ル翼を取付固定する際の、固定スクロール翼の位置決め
確認を容易にでき、作業性の向上化を得るとともに、コ
ストに悪影響を与えずにすむなどの効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、スクロール式圧縮機
の圧縮機構部要部の分解した斜視図。

【図２】同実施例の、スクロール式圧縮機を一部省略し
た縦断面図。

【図３】他の実施例の、支持フレームの斜視図。

【図４】従来例の、スクロール式圧縮機の圧縮機構部要
部の分解した斜視図。

【符号の説明】

２１…支持フレーム、２８…旋回スクロール翼、２７…
固定スクロール翼、４２ａ，４２ｂ，１４２ａ，１４２
ｂ…位置決めピン、４４…位置決め用孔。

フロントページの続き (72)発明者 笹原 豊 静岡県富士市蓼原336番地 株式会社東 芝富士工場内 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F04C 18/02 311

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】支持フレームに、旋回スクロール翼を組み
   込むとともに固定スクロール翼を取付固定し、固定スク
   ロール翼の渦巻状の翼部と、旋回スクロール翼の渦巻状
   の翼部とを噛合させ、これら翼部と各スクロール翼の鏡
   板部とで圧縮空間を形成し、旋回スクロール翼を旋回運
   動させて、圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮して吐
   出するスクロール式圧縮機において、支持フレームに対
   する固定スクロール翼の位置決め用として、支持フレー
   ムと固定スクロール翼の軸心線に対して非対称の位置に
   一対の位置決めピンを備えたことを特徴とするスクロー
   ル式圧縮機。
2. 【請求項２】支持フレームに、旋回スクロール翼を組み
   込むとともに固定スクロール翼を取付固定し、固定スク
   ロール翼の渦巻状の翼部と、旋回スクロール翼の渦巻状
   の翼部とを噛合させ、これら翼部と各スクロール翼の鏡
   板部とで圧縮空間を形成し、旋回スクロール翼を旋回運
   動させて、上記圧縮空間に被圧縮ガスを吸込み、圧縮し
   て吐出するスクロール式圧縮機において、支持フレーム
   に対する固定スクロール翼の位置決め用として、互いに
   直径を異ならせた一対の位置決めピンを備えたことを特
   徴とするスクロール式圧縮機。