JP3124433B2 - 摩擦部材の製造方法 - Google Patents

摩擦部材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車、産業用機械のブ
レーキ、クラッチ等に使用されるディスクブレーキパッ
ド、ドラムブレーキシュー、或いはクラッチ板等、鉄系
金属の裏金とその表面に一体に接合された摩擦材からな
る摩擦部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車のディスクブレーキ、
ドラムブレーキ等に使用されるブレーキパッド、ブレー
キシュー等の摩擦部材は、鋼等の鉄系金属からなる裏金
の表面に、接着剤により摩擦材を一体に接着することに
よって一般に製造されている。
【0003】そして、これらの摩擦部材は、回転するデ
ィスクロータ、ブレーキドラムを押圧しその摩擦力によ
って制動を行うため、摩擦材と裏金との間には大きな剪
断力が加わる。そのため、摩擦材と裏金との間には強い
接着力が必要である。そして、長期間の使用、或いは塩
害地走行等によって接合面に錆が発生すると、その接着
力が低下し、ついには摩擦材が裏金から剥れて思わぬ危
険に陥る恐れがある。
【0004】このように、摩擦材と裏金との接合面は強
固な接着力と優れた耐食性を有することが要求される
が、このような要求は、自動車の高速化、高級化に伴う
摩擦材の熱負荷等の増大、或いは摩擦材の品質の向上に
よる長寿命化等によって、ますます厳しいものとなって
きている。
【0005】このような要求に対し、裏金に予め軟窒化
処理を施してその表面にFe−C−N系を主体とする化
合物層を形成し、この化合物層に接着剤を介して摩擦部
材を接着することが知られている(例えば特公昭53−
47218号公報)。そして、これによれば、その化合
物層は耐食性に優れ、また網目状の微細な凹凸構造を有
するため、摩擦材と裏金の接合面の耐食性と接着性は著
しく向上されることができる。
【0006】そして、この裏金の軟窒化処理を含む摩擦
部材の製造は、具体的には、次のように一般になされて
いる。即ち、裏金を軟窒化処理し、冷却、水洗した後、
その水分を除去するために水置換防錆油にて処理する。
次いで、摩擦材を接着する前に、その水置換防錆油をト
リクロロエチレン等の有機溶剤で洗浄し、脱脂する。以
後は、一般的な摩擦部材の製造方法に準じて、摩擦材の
接着、後処理等の処理を行う。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、裏金を
軟窒化処理し、その表面にFe−C−N系を主体とする
化合物層を形成する工程を含む摩擦部材の製造方法によ
れば、それによって耐食性、接着性に優れた摩擦部材を
得ることができる。
【0008】しかしながら、そのような軟窒化処理工程
を含む従来の方法は、水洗によって裏金の表面に付着し
た水分を取除く手段として水置換防錆油を用いているた
めに、その後の処理として塩素系有機溶剤での洗浄、脱
脂が必要である等、手間や工数がかかり、またそのため
に摩擦部材の製造コストも高くなる傾向にあるものであ
った。ただし、そのように水置換防錆油が用いられてい
たのは、水洗後の裏金をそのまま熱風等で乾燥する場合
には、軟窒化処理による上記の多孔質の化合物層に浸透
した水分を完全に除去するために、比較的高温度の長い
時間の乾燥が必要であるだけでなく、特に裏金に窪み等
があると水が溜まりやすく、乾燥時の熱によって錆が発
生する恐れがあるためである。
【0009】そこで、この方法の改善策として、特開平
5−230438号公報では、軟窒化処理し、冷却、水
洗した後の裏金を、PH8〜9のエタノールアミンアニ
オン界面活性剤水溶液中に浸漬して防錆皮膜を形成し、
次いでそのまま摩擦材と接着することが提案されてい
る。
【0010】この提案の方法は、水置換防錆油による処
理やトリクロロエチレン等の有機溶剤による洗浄、脱脂
処理を必要としないので、従来の方法に比べて工程が簡
易であり、手間がかからず、しかも特別な設備を要しな
い利点がある。しかし、この方法によると、浸漬処理に
よって上記の界面活性剤水溶液が塗布された裏金にはフ
ェノール樹脂等の接着剤は塗布できないので、浸漬処理
後の裏金は水分を除去するために乾燥されなければなら
ないが、このために比較的高温度の長時間の乾燥が必要
であると共に、その界面活性剤の防錆力は余り強くない
ために、乾燥中に錆が発生する傾向があった。また、そ
の界面活性剤は接着剤としての作用はないために、これ
が裏金の表面に残存すると摩擦材との接着障害となる傾
向にあった。
【0011】そこで、本発明は、上記の先行技術による
方法を更に改善し、より簡易な工程で、耐食性、接着性
に優れた摩擦部材を得ることができる摩擦部材の製造方
法の提供を課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上述の点に
鑑み種々の比較検討を重ねた結果、軟窒化処理後、冷
却、水洗した裏金の乾燥手段として、乾燥手段自体とし
てはよく知られているが当分野では試みられることがな
かった減圧乾燥を採用することにより、簡易な工程で、
しかも耐食性と接着性に優れた摩擦部材を得ることがで
きることを見出だした。
【0013】即ち、請求項1にかかる発明の摩擦部材の
製造方法は、鉄系金属からなる裏金を軟窒化処理し、そ
の表面にFe−N−C系を主体とする化合物層を形成す
る軟窒化処理工程と、軟窒化処理後の裏金を冷却し、水
洗する冷却、水洗工程と、水洗後の裏金を減圧乾燥によ
り乾燥する減圧乾燥工程と、乾燥後の裏金の表面に摩擦
材を一体に接着する摩擦材接着工程とを具備するもので
ある。
【0014】また、請求項2にかかる発明の摩擦部材の
製造方法は、請求項1の軟窒化処理工程において、裏金
を、それに付着するプレス油、防錆油を洗浄によって除
去することなく、軟窒化処理するようにしたものであ
る。
【0015】更に、請求項3にかかる発明の摩擦部材の
製造方法は、請求項1または2の軟窒化処理工程におい
て、裏金を、低シアン塩浴により軟窒化処理するように
したものである。
【0016】
【作用】請求項1にかかる発明においては、水洗後の裏
金を減圧乾燥により乾燥するようにしているので、裏金
に付着する水分を短時間で、しかも比較的低い温度で除
去することができる。そのため、簡易に摩擦部材を製造
することができ、また、その乾燥中の裏金の錆の発生は
より減少されるので、耐食性、接着性に優れた摩擦部材
を得ることができる。
【0017】また、請求項2にかかる発明においては、
裏金を、それに付着するプレス油、防錆油を洗浄によっ
て除去することなく、軟窒化処理するようにしているの
で、裏金に付着するプレス油、防錆油は軟窒化処理中に
分解するため、軟窒化処理前の裏金の洗浄を廃止した
分、処理工程がより簡略化される。
【0018】更に、請求項3にかかる発明においては、
低シアン塩浴により裏金の軟窒化処理を行うため、上述
の作用に加えて、作業の安全性が高まり、また廃液の処
理がより簡便になる。
【0019】
【実施例】以下、本発明を、実施例と共に更に詳細に説
明する。
【0020】図1は本発明の摩擦部材の製造方法の製造
工程を概略的に示す工程図である。そして、図1のよう
に、本発明の摩擦部材の製造方法は、鉄系金属からなる
裏金を軟窒化処理し、その表面にFe−N−C系を主体
とする化合物層を形成する軟窒化処理工程Aと、軟窒化
処理後の裏金を冷却し、水洗する冷却、水洗工程Bと、
水洗後の裏金を減圧乾燥により乾燥する減圧乾燥工程C
と、乾燥後の裏金の表面に摩擦材を一体に接着する摩擦
材接着工程Dとを具備するものである。
【0021】軟窒化処理工程Aにおいて、鋼等の鉄系金
属からなる裏金の軟窒化処理は、従来から知られた任意
の方法で行うことができ、気相中で行う方法と塩浴中で
行う方法とのいずれによっても行うことができる。気相
中で行う方法の場合、軟窒化処理は、吸熱変成ガスとア
ンモニアガスとの混合ガスを含む500〜650℃の加
熱雰囲気中で30分〜8時間保持することによって、一
般に行うことができる。また、塩浴中で行う方法の場
合、軟窒化処理は、主としてシアン塩とシアン酸塩を含
む塩浴中で、例えば570〜610℃の温度で40〜1
50分処理することによって、一般に行うことができ
る。なお、この塩浴中で行う方法の場合、塩浴のシアン
濃度は従来では一般に18〜20%であるが、このシア
ン濃度を0.1〜6%とした低シアン塩浴によって軟窒
化処理を行うことが好ましい。このような低シアン塩浴
による軟窒化処理は作業上安全であり、また廃液処理が
簡便で、公害防止上好ましい。
【0022】この軟窒化処理によって裏金の表面にFe
−C−N系を主体とする化合物層が形成されるが、一般
に処理時間が長い程、また処理温度が高い程、この化合
物層はより厚く、また表面の凹凸がより深く形成され
る。そして、この化合物層の厚さは、裏金と摩擦材の接
合面の耐食性と密着性を十分なものとするために、一般
に少なくとも5μm、好ましくは10μm以上とするこ
とが適切である。ただし、50μm以上の厚さとするこ
とは、耐食性と密着性は既に十分すぎる程であるため
に、実用上一般には必要でない。
【0023】なお、この軟窒化処理工程Aにおいて、裏
金の軟窒化処理は、それに付着するプレス油、防錆油を
予め洗浄によって除去した後に行うことができるが、こ
の裏金の洗浄処理は省略することもできる。この場合、
裏金に付着したプレス油、防錆油は、軟窒化処理中に熱
分解して揮散する。そして、これによれば、洗浄処理が
省略された分、処理工程をより簡略化することができ
る。
【0024】次ぎに、冷却、水洗工程Bにおいて、軟窒
化処理された裏金を常温まで徐冷または急冷し、次い
で、裏金の表面に付着した夾雑物または塩浴剤を水洗し
て除去する。なお、この冷却と水洗とは合わせて行うこ
ともできる。
【0025】そして、減圧乾燥工程Cにおいて、水洗後
の裏金を、それに付着する水分を乾燥除去するために、
減圧乾燥する。この減圧乾燥は、任意の温度、圧力(気
圧)、時間で行うことができる。しかし、圧力(気圧)
は、低い程乾燥時間を短くすることができるため、乾燥
炉の処理能力等に応じてなるべく低いことが望ましい。
また、乾燥時の温度は、高い程乾燥時間を短くすること
ができるが、余り高い温度は水分による腐食反応を促進
するために好ましくはなく、そのため100℃以下とす
ることが望ましい。
【0026】以上のように裏金を処理した後の工程は従
来と同様であり、摩擦材接着工程Dにおいて、裏金の表
面にフェノール系樹脂等の接着剤を介して摩擦材を一体
に接着する。
【0027】ここで、摩擦材は、骨格を形成する繊維基
材、この繊維基材を結合保持する樹脂結合剤、及びこれ
らの繊維と結合剤とのマトリックス中に分散して充填さ
れる各種の充填剤から一般に構成される。そして繊維基
材としては、ガラス繊維等の無機質繊維、アラミド繊維
等の有機繊維、スチール繊維等の金属繊維、等を使用で
き、また、樹脂結合剤としては、フェノール系樹脂等の
熱硬化性樹脂、或いは架橋性ゴムを使用することができ
る。更に、充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシ
ウム等の体質充填剤、グラファイト、二硫化モリブデン
等の固体潤滑剤、カシュー油硬化物であるカシューダス
ト等の有機高分子粉末、等を使用でき、また、必要に応
じてシリカ等のアブレッシブ剤、或いはその他の摩擦調
整のための添加剤を使用することができる。
【0028】そして、このような摩擦材の接着は、予め
成形した、或いは予備成形した摩擦材を、接着剤を塗布
した裏金に加圧加熱することによって一般に行うことが
できる。また、接着剤を塗布した裏金上で摩擦材を形成
する材料の混合物を直接加圧加熱成形することによっ
て、摩擦材の成形と同時に摩擦材と裏金との接着を行う
こともできる。
【0029】[実施例1〜4,比較例1〜4]次に、本
発明をディスクブレーキ用のブレーキパッドの製造に適
用した実施例について、比較例と共に説明する。
【0030】なお、ここでは、ブレーキパッドの裏金と
して鋼材SHP45(JIS)からなるものを用い、ま
た、摩擦材は次の配合からなるものである。
【0031】
【表1】
【0032】〈実施例1〉裏金を、シアン濃度約20%
の塩浴中で、600℃で90分間軟窒化処理した。これ
によって、厚さ約14μmのFe−N−C系を主体とす
る化合物層、即ち軟窒化層が形成された。次いで、この
軟窒化処理後の裏金を急冷し、また水洗した後、減圧乾
燥によって乾燥した。この減圧乾燥は、80℃の温度
で、また圧力(気圧)60mmHgで、10分間行った。そ
して、この裏金に、フェノール樹脂を使用して、摩擦材
を常法により接着、接合し、ブレーキパッドを製造し
た。
【0033】〈実施例2〉実施例1と同一条件で、裏金
を軟窒化処理し、急冷、水洗後、減圧乾燥し、次いで、
この裏金に摩擦材を接着してブレーキパッドを製造し
た。ただし、減圧乾燥を、温度80℃、圧力5mmHgの条
件とし、5分間行った。
【0034】〈実施例3〉実施例2と同一条件で、裏金
を軟窒化処理し、急冷、水洗後、減圧乾燥し、次いで、
この裏金に摩擦材を接着してブレーキパッドを製造し
た。ただし、実施例1,2では、裏金を軟窒化処理する
前に、予めそれに付着するプレス油、防錆油を洗浄によ
って除去したが、本実施例では、この処理を省略し、裏
金を直接軟窒化処理した。なお、本実施例は、特に請求
項2の態様に相当するものである。
【0035】〈実施例4〉裏金を、シアン濃度約2%の
低シアン塩浴中で、600℃で180分間軟窒化処理し
た。これによって、実施例1〜3と同様に、厚さ約14
μmのFe−N−C系を主体とする化合物層、即ち軟窒
化層が形成された。その他の条件は実施例3と同一と
し、軟窒化処理した裏金を急冷、水洗後、減圧乾燥し、
次いで、この裏金に摩擦材を接着してブレーキパッドを
製造した。なお、本実施例は、特に請求項3の態様に相
当するものである。
【0036】〈比較例1〉裏金を実施例1と同一条件で
軟窒化処理し、急冷、水洗した後、裏金に付着する水分
を除くために、水置換性防錆油(NOX−RUST30
7 日本パーカライジング社製)にて処理し、次いで、
トリクロロエチレンにて洗浄した。後は実施例と同様に
摩擦材を接着して、ブレーキパッドを製造した。
【0037】〈比較例2〉裏金を実施例1と同一条件で
軟窒化処理し、急冷、水洗した後、裏金に付着する水分
を除くために、電熱乾燥炉で105℃×60分の乾燥処
理、即ち大気圧下での乾燥処理を行った。後は同様に摩
擦材を接着して、ブレーキパッドを製造した。
【0038】〈比較例3〉裏金を実施例1と同一条件で
軟窒化処理し、急冷、水洗した後、エタノールアミンア
ニオン界面活性剤(パーケム6003 日本パーカライ
ジング社製)の5重量%水溶液(PH8.5)に浸漬し
た。この浸漬処理を3分間行い、水切り後接着剤を塗布
しようとしたが、裏金の表面にはその水溶液が残留する
ため、接着剤の塗布ができなかった。したがって、この
比較例3では、ブレーキパッドを製造することができな
かった。
【0039】〈比較例4〉そこで、比較例4として、比
較例3におけるエタノールアミンアニオン界面活性剤水
溶液による浸漬処理後の裏金を、比較例2と同様に10
5℃×60分で乾燥処理した。後は同様に摩擦材を接着
して、ブレーキパッドを製造した。
【0040】〔評価試験〕以上のように得られた実施例
1〜4及び比較例1〜4のブレーキパッドについて、そ
の耐食性と接着性を評価するために、摩擦材を接着する
前の裏金の外観を目視にて観察すると共に、ブレーキパ
ッドの新品時における接着強度及び接着面積と、発錆試
験後における接着強度及び錆面積をそれぞれ測定した。
その結果を図2に示す。
【0041】なお、接着強度はJASO C 437−
84に準じて測定したものである。また、発錆試験は、
ブレーキパッドに5重量%濃度の塩水を72時間噴霧し
た後、室温で24時間放置する工程を1サイクルとし、
これを20サイクル繰返して行った。
【0042】図2の試験結果に示されるように、実施例
1〜4によって得られたブレーキパッドは、水置換性防
錆油にて処理した後トリクロロエチレンにて洗浄する比
較例1の従来方法によるものと比べて、水洗後の裏金に
付着する水分を除去する工程がはるかに簡易であるにも
かかわらず、これと同等或いはそれ以上の耐食性、接着
性を有することがわかる。またこれに対して、水洗後の
裏金に付着する水分を除去するために通常の乾燥処理を
行った比較例2及びエタノールアミンアニオン界面活性
剤水溶液による浸漬処理を行った比較例4は、比較例1
の方法より簡易ではあるが、特に過酷な腐食環境下では
耐食性及び接着性が不十分となる傾向が見られる。
【0043】このように、本実施例のブレーキパッドの
製造方法は、鉄系金属からなる裏金を軟窒化処理し、そ
の表面にFe−N−C系を主体とする化合物層を形成す
る軟窒化処理工程Aと、軟窒化処理後の裏金を冷却し、
水洗する冷却、水洗工程Bと、水洗後の裏金を減圧乾燥
により乾燥する減圧乾燥工程Cと、乾燥後の裏金の表面
に摩擦材を一体に接着する摩擦材接着工程Dとを具備す
るものである。したがって、水洗後の裏金を減圧乾燥に
より乾燥しているので、短時間で裏金に付着する水分を
除去することができ、ブレーキパッドの製造を簡易に行
うことができる。しかも、耐食性、接着性に優れたブレ
ーキパッドを製造することができる。
【0044】なお、本発明の摩擦部材の製造方法は、デ
ィスクブレーキ用のブレーキパッドだけでなく、ドラム
ブレーキ用のブレーキシュー、或いはクラッチ用のクラ
ッチ板等の摩擦部材の製造にも適用することができる。
【0045】
【発明の効果】以上のように、請求項1にかかる発明の
摩擦部材の製造方法は、鉄系金属からなる裏金を軟窒化
処理し、その表面にFe−N−C系を主体とする化合物
層を形成する軟窒化処理工程と、軟窒化処理後の裏金を
冷却し、水洗する冷却、水洗工程と、水洗後の裏金を減
圧乾燥により乾燥する減圧乾燥工程と、乾燥後の裏金の
表面に摩擦材を一体に接着する摩擦材接着工程とを具備
するものである。
【0046】したがって、水洗後の裏金を減圧乾燥によ
り乾燥するようにしているので、裏金に付着する水分を
短時間で、しかも低い温度で容易に除去することができ
る。このため、乾燥時の錆の発生を防止することがで
き、耐食性、接着性に優れた摩擦部材を製造することが
できると共に、水置換性防錆油による処理やその後のト
リクロロエチレン等の溶剤による洗浄処理を必要とする
複雑な工程の従来の方法に比して、はるかに簡易な工程
で摩擦部材を製造することができる。
【0047】また、請求項2にかかる発明の摩擦部材の
製造方法は、請求項1の軟窒化処理工程において、裏金
を、それに付着するプレス油、防錆油を洗浄によって除
去することなく、軟窒化処理するようにしたものであ
る。
【0048】したがって、軟窒化処理前の裏金の洗浄を
廃止した分、摩擦材の製造工程をより簡略化することが
できる。
【0049】更に、請求項3にかかる発明の摩擦部材の
製造方法は、請求項1または請求項2の軟窒化処理工程
において、裏金を、低シアン塩浴により軟窒化処理する
ようにしたものである。
【0050】したがって、軟窒化処理を作業上安全に行
うことができ、また、廃液処理を簡便に行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の摩擦材の製造方法の製造工程の
概略を示す工程図である。
【図2】図2は本発明の実施例及び比較例によって製造
されたブレーキパッドの評価試験結果を示す表図であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 鈴木 武 愛知県瀬戸市暁町3−50 旭千代田工業 株式会社 瀬戸暁工場内 (56)参考文献 特開 昭56−47561(JP,A) 特開 昭60−69336(JP,A) 特開 昭51−24533(JP,A) 特開 平5−230438(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16D 49/00 - 71/04 C08J 5/00 - 5/22 C23C 8/00 - 12/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系金属からなる裏金を軟窒化処理し、
    その表面にFe−N−C系を主体とする化合物層を形成
    する軟窒化処理工程と、 前記軟窒化処理後の裏金を冷却し、水洗する冷却、水洗
    工程と、 前記水洗後の裏金を減圧乾燥により乾燥する減圧乾燥工
    程と、 前記乾燥後の裏金の表面に摩擦材を一体に接着する摩擦
    材接着工程とを具備することを特徴とする摩擦部材の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記軟窒化処理工程において、前記裏金
    を、それに付着するプレス油、防錆油を洗浄によって除
    去することなく、軟窒化処理することを特徴とする請求
    項1記載の摩擦部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記軟窒化処理工程において、前記裏金
    を、低シアン塩浴により軟窒化処理することを特徴とす
    る請求項1または請求項2記載の摩擦部材の製造方法。
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