JP3123056B2 - 合成糖脂質特異性モノクローナル抗体 - Google Patents

合成糖脂質特異性モノクローナル抗体

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は新規な糖脂質誘導体を認識するモノクローナ
ル抗体及び該モノクローナル抗体を産生するハイブリド
ーマ細胞系に関するものである。
[従来の技術] スフィンゴ糖脂質の糖鎖は、癌に関連した抗原決定部
位として細胞表面に存在していることが知られている。
すなわち、細胞が癌化することにより、糖脂質糖鎖が変
化し、正常細胞では見られないような糖脂質が癌細胞表
面に検出されることが報告されている。
[発明が解決しようとする課題] 糖蛋白質の糖鎖は、糖脂質と同様に細胞が癌化すると
癌性変化を起こすことが知られている。特にムチン型糖
蛋白質は血清中に分泌されることが知られており、癌関
連抗原として非常に有用である。ところが、ムチン型糖
蛋白質を抗原としてモノクローナル抗体を作成すると、
蛋白質部分に関する抗体が得られ、糖鎖に関する抗体は
得ることが困難であった。従って、ムチン型糖蛋白質糖
鎖に対する抗体を得るための抗原となる化合物を開発
し、モノクローナル抗体を作成することは重要な技術的
課題である。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは上記課題に関し鋭意検討した結果本発明
に到達した。すなわち本発明は、式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer で表わされる糖脂質誘導体を認識するモノクローナル抗
体、及び、動物のリンパ球と動物の骨髄腫細胞系との融
合により生成され、該モノクローナル抗体を産生するハ
イブリドーマである。以下本発明を詳細に説明する。
本発明のモノクローナル抗体は、式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer で表される合成糖脂質に対して特異的に反応する。本発
明の具体例としてはF1α−75、F1α−50および、F1α−
87と名づけた3種類のハイブリドーマの産生するモノク
ローナル抗体が挙げられる。これらのモノクローナル抗
体はイムノグロブリン(Ig)のクラス(アイソタイプ)
IgMκに属する。これらのモノクローナル抗体は特にGal
NAcα部分の構造を特異的に認識するものである。
本発明のモノクローナル抗体はケーラーら(Kohler,
G.)の方法[Nature 256,495−497(1975)]に従い、
動物を抗原で免疫し、脾臓細胞を取り出し、これと動物
のミエローマ細胞とを融合して得たハイブリドーマ細胞
を培養することにより製造することができる。
ここで本発明に用いられる抗原としては式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer で表される合成糖脂質であり、動物の腹腔内に数回に分
けて免疫する。この免疫の際、免疫増強剤(アジュバン
ト)としては不完全アジュバントまたは、完全アジュバ
ントのいずれも使用でき、例えば油、乳化剤、結核死
菌、サルモネラ死菌およびこれらの混合物である。
免疫用動物としては、ヒト、ウサギ、マウス、ラット
などほとんどの動物が使用できるが、好ましくはマウ
ス、より好ましくはBALB/c系マウスである。マウスの飼
育および、脾臓細胞の採取は常法に従う。
一方、ミエローマ細胞としては、ヒト、ウサギ、マウ
ス、ラットなどほとんどの動物のミエローマ細胞が使用
できるが、好ましくは、BALB/c系マウス由来のP3/X63−
AG8U1(P3U1)が用いられる。
上記で得られた脾臓細胞とミエローマ細胞を細胞融合
する。融合剤としては、ポリエチレングリコールなどが
使用できる。
融合細胞(ハイブリドーマ)の選択は、免疫処置に用
いたと同じ合成糖脂質と反応する培養上清を産生する細
胞を選択すればよい。融合細胞のクローン化は、限界希
釈法、メチルセルロース法、軟アガロース法などにて行
う。このようにして、本発明のモノクローナル抗体を産
生するハイブリドーマが得られる。クローン化されたハ
イブリドーマを通常の動物細胞の培養と同様にして培養
すれば、培地中に本発明の抗体が生産されるので、回
収、精製して本発明の抗体を得ればよい。
[発明の効果] 本発明のモノクローナル抗体はヒトまたは動物の癌関
連糖鎖抗原の検出、例えば、ELISA、RIAなどを用いた糖
鎖抗原の検出に使用できる。また、本発明のモノクロー
ナル抗体をアフィニティークロマトグラフィーに用いて
結合性抗原を精製することができる。さらに放射性同位
元素で標識したモノクローナル抗体を腫瘍の検出に用い
ることもでき、高用量のモノクローナル抗体で腫瘍の治
療に用いることができる。さらに、化学療法剤とモノク
ローナル抗体を結合させれば癌細胞に対する毒性の特異
性を高めることができる。
[実施例] 本発明を以下の実施例で詳細に説明するが、本発明は
これら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1 抗原の製造) 式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer およびその異性体、式(2) Galβ1→4GlcNAcβ1 (2) →6GalNAcβ1→1Cer で表される糖脂質誘導体は、平成2年2月28日付特許出
願「糖脂質およびその製造法」(出願人:東ソー株式会
社)の方法によって得ることができた。
(実施例2 天然源からの糖脂質の調製) ヒトO型赤血球からの中性糖脂質混合物を以下に記載
されたように調製した。即ちカンナギ(Kannagi,R.)ほ
か、プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンス・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.US
A)80,2844−48,1983;カンナギ(Kannagi,R.)ほか、ジ
ャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Bi
ol.Chem.)、257、14865−874、1982;および、カンナギ
(Kannagi,R.)ほか、ジャーナル・オブ・バイオロジカ
ル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、259、8444−451、
1984に従って調製した。
(実施例3 モノクローナル抗体作製手順) 合成糖脂質誘導体(1)をRIBI社製のキットを用い、
モノフォスフォリルリピッドAとジミコール酸トレハロ
ースの乳状液に吸着させ、BALB/cマウスの反復腹腔内免
疫処置に用いた。免疫処置プロトコルは第0日8μg、
第7日16μg、第14日23μg、最終二次免疫第28日23μ
gであった。3日後、脾臓細胞を回収し、マウス骨髄腫
P3/X63−AG8−U1(P3U1)と融合させた。モノクローナ
ル抗体作製手順は、ケーラー(Kohler,G.)ほか、ネイ
チャー(Nature)、256、459−497、1975の方法に準じ
た。
融合細胞のクローニングにおいて、培養上澄の固相酵
素免疫検定の抗原として、免疫処置に用いたと同じ合成
糖脂質誘導体(1)を用いた。合成糖脂質誘導体と反応
性の3つのクローン、即ちF1α−50、F1α−75およびF1
α−87とを選択した。これらのクローンは、共にIgM抗
体(IgMκ)を分泌したので回収、精製し、3種のモノ
クローナル抗体を得た。
(実施例4 モノクローナル抗体と種々の糖脂質との反
応性の評価) 上記3種のモノクローナル抗体と種々の糖脂質との反
応性を評価するため、固相酵素免疫検定及びTLC免疫染
色を行った。
固相酵素免疫検定は、96ウエル培養平板に式(1)ま
たは式(2)の糖脂質抗原を固定化し、希釈倍率2-1〜2
-11の濃度のモノクローナル抗体を反応させた後、未反
応の抗体を除去し、次いで、ペルオキシダーゼ結合ヤギ
抗マウスIgG(重鎖および軽鎖結合性)またはペルオキ
シダーゼ結合ヤギ抗マウスIgM(μ鎖結合性)を添加
し、未反応の抗体を除去した後、基質を加え、500nmに
おける吸光度を測定した。即ち、ハコモリほか(Hakomo
ri,S.and Kannagi,R.)により「実験免疫学ハンドブッ
ク(Handbook of Experimental Immunology)1巻」、
ウェアほかブラックエル・サイエンティフィック・パブ
リッシング社(Blackwell Scientific Pub.Inc.Bosto
n),1986に記載された標準法により行った。またカンナ
ギほか(Kannagi.R,)、ジャーナル・オブ・バイオロジ
カル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)258,8934−8942,1
983に記載の方法も参照した。
TLC免疫染色は、はじめにマグナニ(Magnani,J.L.)
ほか、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Bio
chm.)、109、399−402、1980に記載され、後に改良さ
れた(カンナギ(Kannagi,R.)他、ジャーナル・オブ・
バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、25
7、14865−874、1982)ように、ベーカー(Baker)HPTL
Cプレート(ベーカー(Baker,Phillipsburg,NJ)製)お
よび125IプロテインAを用いて行った。即ち実施例1,2
で得られたヒトO型赤血球由来中性糖脂質混合物及び式
(1),(2)で表される糖脂質誘導体をHPTLCプレー
トにスポットし、展開した後、本発明のモノクローナル
抗体を反応させ、未反応の抗体を除去した後、免疫反応
生成物を検出した。また対照として、3種の糖脂質をHP
TLCで展開した後、オルシノール発色させ、HPTLC上での
移動度を測定した。
(実施例5 TLC免疫染色及び固相酵素免疫検定により
確認されたモノクローナル抗体の得異性) 得られたハイブリドーマ、F1α−50、F1α−75および
F1α−87により生成されたモノクローナル抗体の得異性
はTLC免疫染色法により確認された。結果を第1〜4図
に示す。第1図は対照として各糖脂質の移動度を示して
いる。第2図、第3図および第4図に示すように、3つ
の抗体は式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer で表される合成糖脂質誘導体(第2図、第3図および第
4図中のレーン2)とよく反応するが、式(2) Galβ1→4GlcNAcβ1 (2) →6GalNAcβ1→1Cer で表される非常に類似した構造の立体異性体(第2図、
第3図および第4図中のレーン3)および、O型赤血球
から調製した糖脂質(第2図、第3図および第4図中の
レーン1)とは反応しなかった。
また固相酵素免疫検定の結果、ペルオキシダーゼ結合
ヤギ抗マウスIgGを用いた場合、反応は検出されなかっ
た。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGを用いた場
合の結果を示す第5図、第6図および第7図から明らか
なように、3つのハイブリドーマF1α−75、F1α−50お
よびF1α−87により生成されたモノクローナル抗体のい
ずれも、式(1)で表される糖脂質に高い反応性を示し
たが、式(2)で表される糖脂質には非常に低い反応性
しか示さなかった。
以上のことから、本発明のモノクローナル抗体は、式
(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer という構造のうち、GalNAcαという構造を特異的に認識
する抗体であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、オルシノール発色による糖脂質のTLC上の移
動度を示す図、第2図、第3図および第4図は、TLC染
色により確認されたF1α−75、F1α−50およびF1α−87
由来モノクローナル抗体の特異性を示す図、第5図、第
6図および第7図は、固相酵素免疫検定により確認され
たF1α−75、F1α−50およびF1α−87由来モノクローナ
ル抗体の特異性を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 C07K 16/00 - 16/46 BIOSIS/WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1) Galβ1→4GlcNAcβ1 (1) →6GalNAcα1→1Cer で表わされる糖脂質誘導体を認識するモノクローナル抗
    体。
  2. 【請求項2】動物のリンパ球と動物の骨髄腫細胞系との
    融合により生成され、特許請求の範囲第1項記載のモノ
    クローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
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