JP3122481U - バリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】表面が滑らかで耐摩耗性にも優れたバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズを提供する。
【解決手段】レンズ本体1の少なくとも一方には、金属材料mが真空蒸着により薄膜状に付着した金属付着層2が形成されており、かつ、この金属付着層2の上に更にジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の重合硬化層3が形成されて、金属付着層2の表面が保護されて構成しているという技術的手段を採用した。
【効果】ジエチレングリコールビスアリルカーボネート特有の展延性と注型性能を利用して金属付着層の表面を被覆して保護するように構成したことにより、削剥を防止すると共に、一様に滑らかであって付着ムラがないので、厚み差による光の干渉による虹模様が浮かび上がることがなく、対面者から眺めても異様な感じを与えずに見栄えも良い。
【選択図】図1

Description

本考案は、眼鏡やサングラスなどに用いる金属蒸着加工レンズ、並びに、その製造方法技術の改良、更に詳しくは、表面が滑らかで耐摩耗性にも優れたバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズに関するものである。
周知のとおり、サングラスには偏光レンズが広く採用されており、この偏光レンズにあっては、従来よりレンズに偏光フイルムを貼着して構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、近年では、レンズ加工技術の進歩によって、レンズの外側表面に金属材料を真空蒸着で付着せしめて、可視光線を反射することができるようにした金属蒸着加工レンズが開発されており、高機能であり、光沢金属の場合は装飾性もあって非常に人気が高い。
しかしながら、この金属蒸着加工レンズは、不意の接触などで表面の金属付着層が削剥し易くて耐摩耗性に乏しいため、取扱いには十分に注意を払わねばならないという問題があった。
そこで、従来、金属付着層の表面を保護するために、溶融した樹脂材料にレンズを浸して付着させる手法(ディップ法)があったが、この手法によると、樹脂材料の粘性による展延不均衡によって表面に一様に付着せず、成形品には不可避的に付着ムラが生じてしまい、厚み差による光の干渉による虹模様が浮かび上がってしまい、対面者から眺めると、異様な感じを与えて見栄えが悪くなるという問題があった。
特開2001−350122号公報 (第3−5頁、第1−3図)
本考案は、従来の金属蒸着加工レンズに上記の如き問題があったことに鑑みて為されたものであり、表面が滑らかで耐摩耗性にも優れたバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズを提供することを技術的課題とする。
また、本考案は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート〔Dietylene glycol bis allyl carbonate〕を主成分とするキャスティング・レジン(casting resin )の低粘性と高展延性を巧みに利用することによって、表面が滑らかで耐摩耗性にも優れたバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズを効率的かつ経済的に製造する方法を提供することを技術的課題とする。
本考案者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
即ち、本考案は、レンズ本体1の少なくとも一方には、金属材料mが真空蒸着により薄膜状に付着した金属付着層2が形成されており、かつ、この金属付着層2の上に更にジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の重合硬化層3が形成されて、当該金属付着層2の表面が保護されて構成しているという技術的手段を採用したことによってバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズを完成させた。
また、本考案は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金属付着層2の表面に形成されたジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の重合硬化層3の層厚を平均約0.1mmにするという技術的手段を採用した。
更にまた、本考案は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズ本体1をポリカーボネート樹脂系材料で作製するという技術的手段を採用した。
更にまた、本考案は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金属付着層2を構成する金属材料mが、クロム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化ジルコン、二酸化チタン、アルミナ、金を単独または混合したものであるという技術的手段を採用した。
更にまた、本考案は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズ本体1と重合硬化層3とを含む当該レンズ全体をハードコーティング層4で積層被覆するという技術的手段を採用した。
本考案にあっては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート特有の展延性と注型性能を利用して金属付着層の表面を被覆して保護するように構成したことによって、削剥を防止すると共に、一様に滑らかであって付着ムラがないので、厚み差による光の干渉による虹模様が浮かび上がることがなく、対面者から眺めても異様な感じを与えずに見栄えも良い。
したがって、本考案は、レンズ製品として画期的であるとともに、製造方法としても効率的で経済的であることから、その産業上の利用価値は頗る大きい。
本考案の実施形態を具体的に図示した図面に基いて更に詳細に説明すると次のとおりである。
本考案の金属蒸着加工レンズを図1に基いて説明する。図中、符号1で指示するものはレンズ本体であり、このレンズ本体1の使用材料としてプラスチック(ポリカーボネート)を採用する。ただし、ガラス製のものであっても良いし、また、偏光フィルムなどを張り付けて構成したものや、色レンズを採用することもできる。
また、符号2で指示するものは金属付着層であり、この金属付着層2は前記レンズ本体1の少なくとも一方(本実施形態では、凸球面側)に、金属材料mが真空蒸着により薄膜状に付着して形成されている。更にまた、符号3で指示するものは重合硬化層であり、この重合硬化層3は前記金属付着層2の外側(凸球面側)に更に形成されたジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の層であり、当該金属付着層2の表面が保護されて構成されている。
ちなみに、本実施形態のレンズLは、直径70mmの円形を成しており、前記レンズ本体1の層厚は3mm、前記金属付着層2の層厚は1μm、前記レンズ本体1凸球面最外層の重合硬化層3は層厚が0.1mmに構成されている。
なお、図面上は表わしていないが、本実施形態のレンズにおける前記金属付着層2の凸球面側にはポリビニルブチラール(polyvinyl butyral )が極く薄く塗布してあり、金属付着層2と重合硬化層3との接合力を強化してある。
〔変形例〕
次に、本実施形態におけるレンズの変形例を図2に基いて説明する。上記との差異は、重合硬化層3の凸球面側とレンズ本体1の凹球面側とにハードコーティング層4・4(層厚=0.05mm/株式会社トクヤマ:「TS-56T」) が被覆形成されている点に存する。
また、レンズ本体1の凸球面側の重合硬化層3を厚肉レンズ状に分厚く構成することができ、この際、分厚くした重合硬化層3を増厚量に対応してポリカーボネート樹脂のレンズ本体1を薄くする。
ちなみに、レンズLは、直径70mmの円形を成しており、前記レンズ本体1の層厚は3mm、前記金属付着層2の層厚は1μm、前記レンズ本体1凸球面最外層の重合硬化層3は層厚が3mm、ハードコーティング層4・4の層厚は0.05mmに構成してある。
このように設計を変更すれば、レンズ本体1の凸球面側の重合硬化層3は光学的に均整なジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の厚肉レンズ状注型組織で組成することにより、レンズ本体1を組成するポリカーボネート樹脂の優れた耐衝撃性と相俟って強靱かつ軽量にすることができる。
〔製造例〕
次に、図2〜図6に図示する説明図を参照しながら、本考案のバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズの製造方法を以下に説明する。
まず、常法に従い真空蒸着を行い、レンズ本体1の凸球面側に金属付着層2を作製する。具体的には、レンズ本体1を真空蒸着機のチャンバーV内に入れ、このチャンバーV内の雰囲気を10-5トル(torr)程度においた状態で、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr2 O 3 )、二酸化珪素(SiO 2 )、二酸化ジルコン(ZrO 2 )、二酸化チタン(TiO 2 )、アルミナ(Al2 O 3 )、金(Au)などの金属材料mを加熱手段H1(本実施形態では、電子銃)で1100〜1800(K)に加熱して蒸発させ、偏光レンズ本体1の凸球面側に付着させる。
このようにして、蒸発させる金属材料mの性質と膜の厚さによって単層を形成させるが、材料の性質と膜の厚さの異なる層を重ねて多層の膜を形成することができ、また、例えば、金属光沢を有する材料を選択すれば、鏡のような表面光沢を呈せしめて装飾性が得られると共に、可視光線の一部(青色や緑色)を反射させる機能を得ることができる。
次に、重合硬化層を作製する方法を以下に説明する。図3において、符号Dはガラス製のキャスティング・ダイであって、その上面には平滑な凹球面形のキャビティCを備える。
そして、前記キャビティCの中心部にキャスティング・レジンRを 0.4ccを滴下する。ここに使用されるキャスティング・レジンRは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(日本油脂製モノマー「RAV-7AT」) とジイソプロピルパーオキシジカーボネート[Di-isopropyl peroxydicarbonate](日本油脂製の重合開始剤「RAV-7BT」)とを、前者60重量部に対し後者6重量部を混合して調製した溶液であり、その粘度は13.5 cps(25℃)である。
次に、上記キャスティング・ダイDのキャビティCに滴下したキャスティング・レジンRの上に、前記レンズ本体1を、金属付着層2の凸球面側を当該キャビティCの中心に位置するように載置して重ね合わせる。すると、前記レジンRは金属付着層2の凸球面側に一様に展延してレジン部R’を形成する。なお、金属付着層2の表面には予めポリビニルブチラール樹脂を接着剤として極く薄く塗布しておくものとする。
こうしてキャスティング・ダイDの上に配置されたレンズは、図4に示すように、当該ダイDと共に遠赤外線加熱機H2の中にセットして初期重合条件として35〜50℃で3時間ほど保持し、初期重合が完了したところで90℃前後の温度に昇温させて5時間ほど加熱して重合反応させる。なお、図5において、符号h・h…はセラミック製の遠赤外線放射素子である。
そして、重合反応が完了したならば、加熱機H2から上記キャスティング・ダイDを取り出す。このダイDのキャビティCの上には、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート・モノマーが重合硬化し全体が一体化してレンズ素型Lbを形成している。このレンズ素型LbはキャビティC面に付着してはいるが、キャビティCのガラス面とは離型性が良いので、図6に示すように、ダイDの裏面に軽くショックを与えると、簡単に剥がれる。こうして取り出されたレンズ素型Lbに、バリ取り、洗浄などの仕上げ処理を施すことによって製品として完成する。
本考案の実施形態は概ね上記のように構成されるが、本考案は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「実用新案登録請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、金属付着層2はレンズ本体1の凸球面のみに形成するに限らず、凹球面だけにも、また凸球面および凹球面の両面にも形成することがあるので、これら凸球面および/または凹球面にも重合硬化層3を形成することができる。
また、キャスティング・レジンに重ねて接合させるに接着剤として、レンズ本体1の表面にポリビニルブチラール樹脂を塗布する例を挙げたけれども、この接着剤は必ずしも必須のものではなく、また接着剤を使用する場合においても、透明性が良好でジエチレングリコールビスアリルカーボネートとの接合性さえ満足すれば如何なるものでもよく、例えばポリビニルアルコール樹脂を接着剤として用いることも可能であって、当然に本考案の技術的範囲に属する。
更にまた、本考案においてキャスティング・レジンRとして用いるジエチレングリコールビスアリルカーボネートのモノマーの中に、各種の顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、あるいはこれらを組み合せて練り混んでレンズを製造することも当然に可能であり、これもまた本考案の技術的範囲に属するものと云える。
本考案の実施形態の金属蒸着加工レンズの端面図である。 本考案の実施形態の変形例の金属蒸着加工レンズの端面図である。 本考案の実施形態において、レンズ本体の表面に金属蒸着をしようとする状態を表わした工程説明図である。 キャスティング・ダイのキャビティーにキャスティング・レジンを滴下して弯曲球面形のレンズを載置しようとする状態を表わした工程説明図である。 金属付着層の凸球面側にキャスティング・レジンを展延せしめた状態を表わした工程説明図である。 図5の状態にあるレンズ素型を遠赤外線加熱炉中で重合硬化させる工程を表わした重合工程説明図である。 キャスティング・ダイから重合処理されたレンズ素型を取り外す状態を表わした説明図である。
符号の説明
1 レンズ本体
2 金属付着層
3 重合硬化層
4 ハードコーティング層
m 金属材料
C キャビティ
D キャスティング・ダイ
R キャスティング・レジン
R’ レジン部
Lb レンズ素型
L レンズ
H1 加熱手段
H2 遠赤外線加熱機
h 遠赤外線放射素子

Claims (5)

  1. レンズ本体1の少なくとも一方には、金属材料mが真空蒸着により薄膜状に付着した金属付着層2が形成されており、かつ、この金属付着層2の上に更にジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の重合硬化層3が形成されて、当該金属付着層2の表面が保護されて構成していることを特徴とするバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ。
  2. 金属付着層2の表面に形成されたジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂の重合硬化層3の層厚が平均約0.1mmであることを特徴とする請求項1記載のバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ。
  3. レンズ本体1がポリカーボネート樹脂系材料で作製されていることを特徴とする請求項1または2記載のバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ。
  4. 金属付着層2を構成する金属材料mが、クロム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化ジルコン、二酸化チタン、アルミナ、金を単独または混合したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ。
  5. レンズ本体1と重合硬化層3とを含む当該レンズ全体がハードコーティング層4で積層被覆されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のバリアー被膜を備えた金属蒸着加工レンズ。
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